(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6118059
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】電子式ガスメータ
(51)【国際特許分類】
G01F 3/22 20060101AFI20170410BHJP
【FI】
G01F3/22 D
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-222812(P2012-222812)
(22)【出願日】2012年10月5日
(65)【公開番号】特開2014-74677(P2014-74677A)
(43)【公開日】2014年4月24日
【審査請求日】2015年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100060690
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 秀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100070002
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100110733
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥野 正司
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【弁理士】
【氏名又は名称】朴 志恩
(72)【発明者】
【氏名】川島 定
(72)【発明者】
【氏名】北澤 拓也
【審査官】
山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−195865(JP,A)
【文献】
特開平11−232582(JP,A)
【文献】
特開平11−142212(JP,A)
【文献】
特開2011−027671(JP,A)
【文献】
特開2003−185487(JP,A)
【文献】
特開2006−284401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/00−25/00
G01D 3/00− 4/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスの積算流量を演算する流量演算手段と、前記流量演算手段により演算された積算流量が表示される表示手段と、前記流量演算手段による積算流量の演算で用いられる補正値の書き換えを禁止する電子封印を行う電子封印手段と、を備えた電子式ガスメータにおいて、
前記電子封印手段による電子封印前に前記表示手段に封印されていないことを示す印を表示させ、前記電子封印手段による電子封印後に前記表示手段に表示された前記印を消す表示制御手段を
さらに備えたことを特徴とする電子式ガスメータ。
【請求項2】
ガスの積算流量を演算する流量演算手段と、前記流量演算手段により演算された積算流量が表示される表示手段と、前記流量演算手段による積算流量の演算で用いられる補正値の書き換えを禁止する電子封印を行う電子封印手段と、を備えた電子式ガスメータにおいて、
前記電子封印手段による電子封印前に前記表示手段に前記積算流量の法定計量単位を複数表示させ、前記電子封印手段による電子封印後に前記表示手段に表示された前記複数の法定計量単位のうち1つのみを残し、その他を消す表示制御手段
をさらに備えたことを特徴とする電子式ガスメータ。
【請求項3】
前記表示制御手段は、前記電子封印手段による電子封印前に前記表示手段に前記積算流量の同一の法定計量単位を複数表示させる
ことを特徴とする請求項2に記載の電子式ガスメータ。
【請求項4】
積算流量の表示桁数を記憶する記憶手段をさらに備え、
前記表示制御手段が、前記電子封印手段による電子封印後に前記表示手段に表示された前記複数の法定計量単位のうち前記記憶手段に記憶された表示桁数に対応する位置に表示された1つのみを残し、その他を消す
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の電子式ガスメータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子式ガスメータに係り、特に、積算流量の演算で用いられる補正値の書き換えを禁止する電子封印を行う電子式ガスメータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記電子式ガスメータには、超音波式や熱式などの流速センサと、マイクロコンピュータと、が内蔵され、マイクロコンピュータが、流速センサにより検出されたガスの流速から積算流量を演算して、演算したガスの積算流量を表示器に表示させている。この電子式ガスメータは、工場においていくつかの工程を経て出荷される。その工程は大きく分けて初期設定工程、器差調整工程、検定・検査工程、出荷前設定工程となっており、各工程を正常に通過しなければ電子式ガスメータは次の工程に移行することができない。
【0003】
電子式ガスメータは、上記器差調整工程において器差補正が行われ、積算流量の演算に用いられるゼロ点補正値、流量補正値(補正値)が設定される。それぞれの補正値は計量メータとしての計量を構成する最重要ファクタであり、この補正値が変更されると計量に大きなズレが生じるため、電子式ガスメータは全ての工程を経た後、補正値を変更できないように電子的な封印を行っている。電子封印を行う際に、工程において補正値の書き込みの抜けが生じないように出荷前設定工程においてゼロ点補正値、流量補正値が正常に書き込まれていることを確認した上で電子封印を行っている。この電子封印完了をもって出荷可能のサインとなる。しかしながら、現在外観上において電子封印が実施済みか否かを判別できる要素がない。
【0004】
この問題を解決するために、例えば特許文献1に示すように電子封印前は表示器に積算流量の法定計量単位を表示させず、電子封印後に法定計量単位を表示させるものが提案されている。しかしながら、電子封印前は法定計量単位が表示されていないだけなので、表示器を見ても電子封印前であるか直感的に分かりにくい、という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−195865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、直感的に電子封印されているか否かを一目で判断できる電子式ガスメータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するための請求項1記載の発明は、ガスの積算流量を演算する流量演算手段と、前記流量演算手段により演算された積算流量が表示される表示手段と、前記流量演算手段による積算流量の演算で用いられる補正値の書き換えを禁止する電子封印を行う電子封印手段と、を備えた電子式ガスメータにおいて、前記電子封印手段による電子封印前に前記表示手段に封印されていないことを示す印を表示させ、前記電子封印手段による電子封印後に前記表示手段に表示された前記印を消す表示制御手段をさらに備えたことを特徴とする電子式ガスメータに存する。
【0008】
請求項2記載の発明は、
ガスの積算流量を演算する流量演算手段と、前記流量演算手段により演算された積算流量が表示される表示手段と、前記流量演算手段による積算流量の演算で用いられる補正値の書き換えを禁止する電子封印を行う電子封印手段と、を備えた電子式ガスメータにおいて、前記電子封印手段による電子封印前に前記表示手段に前記積算流量の法定計量単位を複数表示させ、前記電子封印手段による電子封印後に前記表示手段に表示された前記複数の法定計量単位のうち1つのみを残し、その他を消す
表示制御手段をさらに備えたことを特徴とす
る電子式ガスメータに存する。
請求項3記載の発明は、前記表示制御手段は、前記電子封印手段による電子封印前に前記表示手段に前記積算流量の同一の法定計量単位を複数表示させることを特徴とする請求項2に記載の電子式ガスメータに存する。
【0009】
請求項
4記載の発明は、
積算流量の表示桁数を記憶する記憶手段をさらに備え、前記表示制御手段が、前記電子封印手段による電子封印後に前記表示手段に表示された前記複数の法定計量単位のうち前記記憶手段に記憶された表示桁数に対応する位置に表示された1つのみを残し、その他を消すことを特徴とする請求項
2又は3に記載の電子式ガスメータに存する。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように請求項1記載の発明によれば、封印前は印が表示されているため、直感的に電子封印されていないことが一目で判断できる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、封印前は複数の法定計量単位が表示されているため、直感的に電子封印されていないことが一目で判断できる。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、表示桁数を変更できるガスメータを流用して、直感的に電子封印されていないことが一目で判断できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の電子式ガスメータの一実施形態を示すブロック図である。
【
図2】(A)は電子封印前における電子式ガスメータを構成する表示器の表示例を示し、(B)は電子封印後における家庭用の電子式ガスメータを構成する表示器の表示例を示し、(C)は電子封印後における業務用の電子式ガスメータを構成する表示器の表示例を示す。
【
図3】
図1に示すCPUの処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の電子式ガスメータについて
図1を参照して説明する。同図に示すように、電子式ガスメータ1は、配管に流れるガスの流速を検出する流速センサ2と、ガスの積算流量などを表示する表示手段としての表示器3と、外部との通信を行うための通信部4と、不揮発性のメモリである記憶手段としてのEEPROM5と、電子式ガスメータ1全体の制御を司るマイクロコンピュータ(以下μCOM)6と、を備えている。
【0015】
上記流速センサ2は、例えば超音波式や熱式などの周知のものが用いられ、μCOM6が出力するサンプリング信号に応じて駆動して、その検出結果をμCOM6に供給する。表示器3は、液晶表示器などが用いられ、
図2(A)に示すように、5桁の大数字セグメント部31と、1桁の中数字セグメント部32と、1桁の小数字セグメント部33と、が右から順に並べて表示できるようになっている。各数字セグメント部31〜33は各々、7セグメントから構成され、1から9までの数字をセグメント表示できるようになっている。
【0016】
また、表示器3は、4桁目の大数字セグメント部31の右下に設けられた小数点34及び右上に設けられた法定計量単位35(請求項中の印に相当)と、5桁目の大数字セグメント部31の右下に設けられた小数点36及び右上に設けられた法定計量単位37(請求項中の印に相当)と、がセグメント表示できるようになっている。以上の表示器3によれば、
図2(B)に示すように4桁表示の家庭用電子式ガスメータ1と、
図2(C)に示すように5桁表示の業務用電子式ガスメータ1とで兼用することができる。
【0017】
通信部4は、工場設備(例えばパソコン)と通信を行うためのインタフェースであり、工場設備からの電文を受信する。EEPROM5は、積算流量の演算に用いられる補正値(例えばゼロ点補正値や流量補正値)や、積算流量の表示桁数などが記憶されている。なお、積算流量の表示桁数としては、家庭用の電子式ガスメータ1には4桁が記憶され、業務用の電子式ガスメータ1には5桁が記憶されている。
【0018】
μCOM6は、周知のように、予め定めたプログラムに従って各種の処理や制御などを行う中央演算処理装置(CPU)6Aと、CPU6Aのためのプログラム等を格納した読み出し専用のメモリであるROM6Bと、各種のデータを格納するとともにCPU6Aの処理作業に必要なエリアを有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM6Cと、を有している。
【0019】
上記CPU6Aは、出荷前に通信部4を介して器差補正電文を受信すると後述する流量演算処理で用いられるゼロ点補正値や流量補正値を設定して、EEPROM5内に記憶させる器差補正を行い、その後、通信部4を介して電子封印電文を受信すると器差補正で設定したゼロ点補正値や流量補正値の書き換えを禁止するように電子封印フラグをオンして電子封印する。上記器差補正は、試験配管に基準流量を流したときに電子式ガスメータ1が基準流量を演算できるようにゼロ点補正値や流量補正値などを調整する作業を言う。また、上記電子封印は、検定、検査に合格した電子式ガスメータ1のみに実行される。
【0020】
CPU6Aは、出荷後は流量演算手段として働き、流速センサ2からの検出結果に基づいてガス流量の演算を行い、演算したガス流量を積算して、表示器3に表示する流量演算処理を行う。この流量演算処理においてCPU6Aは、EEPROM5に記憶された補正値を用いてガス流量の補正を行う。
【0021】
また、CPU6Aは、電子封印前で電子封印フラグがオフしている場合は、
図2(A)に示すように、小数点34及び法定計量単位35と、小数点36及び法定計量単位37と、の双方を表示させ、電子封印後で電子封印フラグがオンしている場合は、
図2(B)及び(C)に示すように、小数点34及び法定計量単位35と、小数点36及び法定計量単位37と、のうちEEPROM5に記憶された積算流量の表示桁数に対応する位置に表示された1つのみを残し、その他を消す。
【0022】
次に、上記概略で説明した電子式ガスメータ1の詳細な動作について
図3のフローチャートを参照して説明する。電源供給を開始すると、CPU6Aは、電子封印フラグがオンしているか否か判定する(ステップS1)。電子封印フラグがオフしていれば(ステップS1でN)、CPU6Aは、電子封印前であると判断して、
図2(A)に示すように、数字セグメント31〜33を全て「0」と表示すると共に小数点34及び法定計量単位35と、小数点36及び法定計量単位37と、の双方を表示する(ステップS2)。
【0023】
その後、CPU6Aは、通信部4から器差補正電文を受信すると(ステップS3でY)、上述した器差補正を行う(ステップS4)。次に、通信部4から電子封印電文を受信すると(ステップS5でY)、CPU6Aは、電子封印手段として働き、電子封印フラグをオンして電子封印を行い(ステップS6)、EEPROM5に記憶された積算流量の表示桁数を判別する(ステップS7)。
【0024】
そして、CPU6Aは、表示桁数が4桁であれば(ステップS7で4桁)、家庭用の電子式ガスメータ1であると判定して
図2(B)に示すように4桁に対応する位置に表示された小数点34及び法定計量単位35を残して、5桁に対応する位置に表示された小数点36及び法定計量単位37を消して(ステップS8)、処理を終了する。
【0025】
これに対して、CPU6Aは、表示桁数が5桁であれば(ステップS7で5桁)、業務用の電子式ガスメータ1であると判定して
図2(C)に示すように5桁に対応する位置に表示された小数点36及び法定計量単位35を残して、4桁に対応する位置に表示された小数点34及び法定計量単位37を消して(ステップS9)、処理を終了する。
【0026】
一方、電源供給後、CPU6Aは、電子封印フラグがオンしてれば(ステップS1でY)、電子封印後であると判断して、上述したステップS7に直ちに進む。以上のことから明らかなように、ステップS2、ステップS7〜S9でCPU6Aは請求項中の表示制御手段として働き。
【0027】
上述した実施形態によれば、CPU6Aが、電子封印前に表示器3に複数(2つ)の法定計量単位35及び37を表示させ、電子封印後に表示器3に表示された複数の法定計量単位35及び37のうち1つのみを残し、その他を消しているので、封印前は複数の法定計量単位が表示されているため、直感的に電子封印されていないことが一目で判断できる。
【0028】
また、上述した実施形態によれば、CPU6Aが、電子封印後に表示器3に表示された複数の法定計量単位35及び37のうちEEPROM5に記憶された積算流量の表示桁数に対応する位置に表示された1つのみを残し、その他を消しているので、表示桁を変更できるガスメータを流用して、直感的に電子封印されていないことが一目で判断できる。
【0029】
なお、上述した実施形態によれば、2つの法定計量単位35及び37のうち何れかを一方を請求項中の封印がされていないことを示す印としていたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば「封印前」など表示していると明らかに違和感を演出できる印を封印前に表示させ、封印後に消灯させるようにしてもよい。
【0030】
また、上述した実施形態によれば、EEPROM5に積算流量の表示桁数そのものを記憶させていたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、業務用か家庭用かを示す情報など表示桁数が判別できる情報であればよい。
【0031】
また、上述した実施形態によれば、4桁目の位置に法定計量単位35を5桁目の位置に法定計量単位37を表示させて、電子式ガスメータ1を業務用と家庭用とで兼用させていたが、本発明はこれに限ったものではない。兼用はできないが、法定計量単位は複数表示できるようにすればよく、例えば家庭専用の電子式ガスメータ1であれば4桁目の位置に複数の法定計量単位を表示させ、電子封印後に1つのみを残して、他を消灯させることも考えられる。
【0032】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 電子式ガスメータ
3 表示器(表示手段)
5 EEPROM(記憶手段)
6A CPU(電子封印手段、表示制御手段)
35 法定計量単位(印)
37 法定計量単位(印)