特許第6118068号(P6118068)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6118068化粧料容器およびそれを用いた化粧製品の製法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6118068
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】化粧料容器およびそれを用いた化粧製品の製法
(51)【国際特許分類】
   A45D 33/00 20060101AFI20170410BHJP
【FI】
   A45D33/00 615C
   A45D33/00 650E
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-240917(P2012-240917)
(22)【出願日】2012年10月31日
(65)【公開番号】特開2014-90733(P2014-90733A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000158781
【氏名又は名称】紀伊産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】出雲 秀司
(72)【発明者】
【氏名】小松 冨士夫
(72)【発明者】
【氏名】松原 太一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 三紀
【審査官】 青木 良憲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−329030(JP,A)
【文献】 実公平03−033287(JP,Y2)
【文献】 実開平01−092911(JP,U)
【文献】 実開平02−112209(JP,U)
【文献】 実開平03−027411(JP,U)
【文献】 特開平11−000223(JP,A)
【文献】 特開2005−245758(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/023049(WO,A1)
【文献】 特開2001−178531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に化粧料充填用凹部が形成され、下面に上記化粧料充填用凹部内に連通する化粧料バック充填用の貫通孔が形成され、上記化粧料充填用凹部が形成されていない部分に、中皿下面側から上方に向かって肉盗み部が、平行に延びる複数の帯状リブを残した状態で形成された中皿と、上面に、上記中皿を収容するための中皿収容用凹部が形成された容器本体と、この容器本体の上面を蓋する蓋体と、上記中皿の下面に貼着するためのシート状のガイドシールとを備えた化粧料容器であって、上記化粧料充填用凹部が、複数の化粧料をバック充填するための複数の区画を有し、上記化粧料バック充填用の貫通孔が複数、上記化粧料充填用凹部内の区画ごとに形成されており、上記化粧料充填用凹部の各区画内に複数の化粧料がそれぞれバック充填された状態で、上記中皿下面の、上記複数の貫通孔の開口を全て含み、肉盗み部が形成されていない部分と帯状リブの端面にまたがった略全面に、上記ガイドシールが貼着され、上記中皿のガイドシール貼着面と上記容器本体の中皿収容用凹部底面とが、接着剤層を介して一体的に接合されるようになっていることを特徴とする化粧料容器。
【請求項2】
上記帯状リブの幅が0.2〜2mmに設定されており、隣り合う帯状リブの間隔が0.5〜5mmに設定されている請求項記載の化粧料容器。
【請求項3】
上記中皿と中皿収容用凹部との間に配置される透明プラスチックシートからなる保護シートを備え、この保護シートの一部が、上記中皿収容用凹部内に入り込んで、中皿と中皿収容用凹部との間に挟持され、その残部が、上記中皿収容用凹部内に収容される中皿の上面を、開閉自在に覆うようになっている請求項1または2記載の化粧料容器。
【請求項4】
請求項1記載の化粧料容器を用いて化粧製品を製造する方法であって、上面に、複数の化粧料を充填するための複数の区画を有する化粧料充填用凹部が形成され、下面に、上記凹部内に連通する化粧料バック充填用の貫通孔が複数、上記化粧料充填用凹部内の区画ごとに形成され、上記化粧料充填用凹部が形成されていない部分に、中皿下面側から上方に向かって肉盗み部が、平行に延びる複数の帯状リブを残した状態で形成された中皿と、上面に、上記中皿を収容するための中皿収容用凹部が形成された容器本体と、この容器本体の上面を蓋する蓋体と、上記中皿の下面に貼着するためのシート状のガイドシールとを準備する工程と、上記中皿の化粧料充填用凹部の各区画内に、中皿下面側から、上記各貫通孔を経由させて複数の化粧料をそれぞれバック充填する工程と、上記中皿下面の、上記複数の貫通孔の開口を全て含み、肉盗み部が形成されていない部分と帯状リブの端面にまたがった略全面に、上記ガイドシールを貼着する工程と、上記中皿収容用凹部の底面に、この部分に対峙する中皿下面における貫通孔の配置を考慮することなく接着剤層を形成する工程と、上記複数の化粧料が充填された中皿を、上記中皿収容用凹部内に嵌入して上記接着剤層により接合一体化する工程と、上記容器本体の上面を蓋体で蓋する閉蓋工程とを備えたことを特徴とする化粧製品の製法。
【請求項5】
上記帯状リブの幅が0.2〜2mmに設定されており、隣り合う帯状リブの間隔が0.5〜5mmに設定されている中皿を準備するようにした請求項記載の化粧製品の製法。
【請求項6】
透明プラスチックシートからなる保護シートを準備し、上記中皿を中皿収容用凹部内に嵌入するより前に、上記保護シートの一部を上記中皿収容用凹部内に入り込ませ、その残部を中皿収容用凹部の上方もしくは側方に延ばした状態で配置する工程と、上記中皿を容器本体の中皿収容用凹部に嵌入して中皿と中皿収容用凹部との間に上記保護シートの一部を挟み込むとともに、上記保護シートの、中皿収容用凹部の上方もしくは側方に延ばした部分を中皿上面側に倒して中皿上面を開閉自在に覆うようにする工程とを備えた請求項4または5記載の化粧製品の製法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンパクトケース等の化粧料容器およびそれを用いた化粧製品の製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アイシャドウやファンデーション等の粉末化粧料を収容して携帯するための化粧料容器として、化粧料充填用中皿と、上面に上記中皿を収容するための凹部が形成された容器本体と、この容器本体の上面を蓋する蓋体とからなるコンパクトケース等が汎用されている。そして、上記中皿と容器本体の凹部とは、通常、ホットメルト接着剤等の接着剤を、凹部底面に滴下もしくは塗工し、その上に中皿を嵌入することによって、接合一体化されるようになっている。
【0003】
上記中皿への化粧料の充填は、粉末状の化粧料をアルコール等の溶剤でスラリー状にし、これを中皿凹部に充填したのち、溶剤を除去して固化させる湿式充填方式が知られている。また、最近は、湿式充填方式のなかでも、特に、化粧料の充填を、中皿下面側から行うバック充填方式が多用されている。
【0004】
上記バック充填方式によれば、中皿の上面開口に、賦形用の型を配置することにより、充填された化粧料の表面に適宜の凹凸形状を賦形することができるため、化粧料表面に、アイキャッチ効果の高い、印象的なデザインを、簡単に付与することができるという利点を有している。
【0005】
しかし、この方式では、中皿下面に、化粧料充填用の貫通孔が形成されるため、中皿と、容器本体の中皿収容用凹部とを接着剤層によって接合する場合、接着剤がこの貫通孔から内側に侵入して化粧料の品質を損なうおそれがある。そこで、例えば、上記貫通孔を小さなシールで塞ぐことが提案されている。また、シールで塞ぐのではなく、接着剤層を形成する際に、その配置が中皿側の貫通孔と重ならないよう注意して接着剤を滴下もしくは塗工することが行われている。
【0006】
ところで、最近、上記中皿の化粧料充填用凹部を、複数の区画に区分して各区画ごとに異なる化粧料を充填したものが多く出回っており、そのような中皿においても、区分された各区画ごとに、その凹部内に化粧料をバック充填することが行われている(例えば、下記の特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−50679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、化粧料充填用凹部が複数の区画に区分された中皿は、例えば図6(a)に示すように、各区画(化粧料は図示せず)1ごとに、その下面に化粧料充填用の貫通孔2が形成されているため、この中皿3を、容器本体の凹部内に嵌入して固定する際、いちいち貫通孔2の開口に小さなシールを貼着することは、煩雑な手間を要するため好ましくない。また、貫通孔2に重ならないよう注意して接着剤層を形成する場合、貫通孔2の配置によっては、接着剤層が、ごく小さい面積になり、充分な接着力が得られなくなるおそれがある。
【0009】
しかも、中皿3に、化粧料充填用凹部として複数の区画1を設けたものは、その区画1の輪郭が、特殊な輪郭形状にデザインされているものが多いため、図6(a)のA−A′断面図である図6(b)に示すように、凹状の区画1が形成されていない部分には、射出成形上の必要から、中皿3の下面側から上向きに凹んだ肉盗み部4が設けられる。このため、中皿3の下面において、接着剤層を形成することのできるスペースがますます制限され、充分な接着力を得ることが容易でないという問題がある。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、バック充填用の貫通孔が下面に複数形成された中皿であっても、広い接着面積で強固に容器本体と接合一体化することができる化粧料容器およびそれを用いた化粧製品の製法の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明は、上面に化粧料充填用凹部が形成され、下面に上記化粧料充填用凹部内に連通する化粧料バック充填用の貫通孔が形成され、上記化粧料充填用凹部が形成されていない部分に、中皿下面側から上方に向かって肉盗み部が、平行に延びる複数の帯状リブを残した状態で形成された中皿と、上面に、上記中皿を収容するための中皿収容用凹部が形成された容器本体と、この容器本体の上面を蓋する蓋体と、上記中皿の下面に貼着するためのシート状のガイドシールとを備えた化粧料容器であって、上記化粧料充填用凹部が、複数の化粧料をバック充填するための複数の区画を有し、上記化粧料バック充填用の貫通孔が複数、上記化粧料充填用凹部内の区画ごとに形成されており、上記化粧料充填用凹部の各区画内に複数の化粧料がそれぞれバック充填された状態で、上記中皿下面の、上記複数の貫通孔の開口を全て含み、肉盗み部が形成されていない部分と帯状リブの端面にまたがった略全面に、上記ガイドシールが貼着され、上記中皿のガイドシール貼着面と上記容器本体の中皿収容用凹部底面とが、接着剤層を介して一体的に接合されるようになっている化粧料容器を第1の要旨とする。
【0012】
また、本発明は、そのなかでも、特に、上記帯状リブの幅が0.2〜2mmに設定されており、隣り合う帯状リブの間隔が0.5〜5mmに設定されてい化粧料容器を第の要旨とする。
【0013】
さらに、本発明は、それらのなかでも、特に、上記中皿と中皿収容用凹部との間に配置される透明プラスチックシートからなる保護シートを備え、この保護シートの一部が、上記中皿収容用凹部内に入り込んで、中皿と中皿収容用凹部との間に挟持され、その残部が、上記中皿収容用凹部内に収容された中皿の上面を、開閉自在に覆うようになっている化粧料容器を第の要旨とする。
【0014】
そして、本発明は、上記第1の要旨である化粧料容器を用いて化粧製品を製造する方法であって、上面に、複数の化粧料を充填するための複数の区画を有する化粧料充填用凹部が形成され、下面に、上記凹部内に連通する化粧料バック充填用の貫通孔が複数、上記化粧料充填用凹部内の区画ごとに形成され、上記化粧料充填用凹部が形成されていない部分に、中皿下面側から上方に向かって肉盗み部が、平行に延びる複数の帯状リブを残した状態で形成された中皿と、上面に、上記中皿を収容するための中皿収容用凹部が形成された容器本体と、この容器本体の上面を蓋する蓋体と、上記中皿の下面に貼着するためのシート状のガイドシールとを準備する工程と、上記中皿の化粧料充填用凹部の各区画内に、中皿下面側から、上記各貫通孔を経由させて複数の化粧料をそれぞれバック充填する工程と、上記中皿下面の、上記複数の貫通孔の開口を全て含み、肉盗み部が形成されていない部分と帯状リブの端面にまたがった略全面に、上記ガイドシールを貼着する工程と、上記中皿収容用凹部の底面に、この部分に対峙する中皿下面における貫通孔の配置を考慮することなく接着剤層を形成する工程と、上記複数の化粧料が充填された中皿を、上記中皿収容用凹部内に嵌入して上記接着剤層により接合一体化する工程と、上記容器本体の上面を蓋体で蓋する閉蓋工程とを備えた化粧製品の製法を第の要旨とする。
【0015】
また、本発明は、そのなかでも、特に、上記帯状リブの幅が0.2〜2mmに設定されており、隣り合う帯状リブの間隔が0.5〜5mmに設定されている中皿を準備するようにした化粧製品の製法を第の要旨とする。
【0016】
さらに、本発明は、それらのなかでも、特に、透明プラスチックシートからなる保護シートを準備し、上記中皿を中皿収容用凹部内に嵌入するより前に、上記保護シートの一部を上記中皿収容用凹部内に入り込ませ、その残部を中皿収容用凹部の上方もしくは側方に延ばした状態で配置する工程と、上記中皿を容器本体の中皿収容用凹部に嵌入して中皿と中皿収容用凹部との間に上記保護シートの一部を挟み込むとともに、上記保護シートの、中皿収容用凹部の上方もしくは側方に延ばした部分を中皿上面側に倒して中皿上面を開閉自在に覆うようにする工程とを備えた化粧製品の製法を第の要旨とする。
【発明の効果】
【0017】
すなわち、本発明の化粧料容器は、バック充填方式によって複数の化粧料が複数の化粧料バック充填用の貫通孔から充填される中皿を有する化粧料容器であって、その中皿下面の略全面に、シート状のガイドシールを貼着し、このガイドシール貼着面と、容器本体の中皿収容用凹部とを、接着剤層を介して接合一体化できるようにしたものである。この構成によれば、中皿下面に形成されるバック充填用の貫通孔の数や配置にかかわらず、容器本体の中皿収容用凹部内に、広い面積で接着剤層を形成することができるため、中皿と容器本体とを強固に接合一体化することができる。また、広い面積で形成された接着剤層と、中皿の下面に貼着されたガイドシールとが相俟って、優れた衝撃吸収・緩衝機能を奏するため、容器本体や蓋体が強い衝撃や振動を受けても、中皿への衝撃は小さく、中皿内の化粧料にひび割れや損傷が生じにくいという効果を奏する。
【0018】
そして、本発明の化粧料容器は、特に、上記中皿の、化粧料充填用凹部が形成されていない部分に、中皿下面側から上方に向かって肉盗み部が、平行に延びる複数の帯状リブを残した状態で形成されており、上記中皿下面の、肉盗み部が形成されていない部分と帯状リブの端面にまたがって、上記ガイドシールが貼着されている。したがって、中皿の下面に、肉盗み部が大きく、あるいは不規則に形成されたものであっても、上記帯状リブを利用することによって、ガイドシールが、中皿下面の略全面にしっかりと貼着されるため、好適である。
【0019】
また、そのなかでも、特に、上記帯状リブの幅が0.2〜2mmに設定されており、隣り合う帯状リブの間隔が0.5〜5mmに設定されているものは、ガイドシールを、よりしっかりと貼着保持することができ、しかも中皿の補強効果にも優れているため、好適である。
【0020】
さらに、本発明のなかでも、特に、上記中皿と中皿収容用凹部との間に配置される透明プラスチックシートからなる保護シートを備え、この保護シートの一部が、上記中皿収容用凹部内に入り込んで、中皿と中皿収容用凹部との間に挟持され、その残部が、上記中皿収容用凹部内に収容された中皿の上面を、開閉自在に覆うようになっているものは、中皿と中皿収容用凹部とを接合一体化する接着剤層によって、上記保護シートの抜け止めを同時に行うことができるため、得られる化粧製品において、保護シートが抜けにくくなり、好適である。
【0021】
そして、本発明の化粧製品の製法によれば、中皿下面に形成されるバック充填用の貫通孔の数や配置にかかわらず、容器本体の中皿収容用凹部内に、適宜の配置で広い面積の接着剤層を形成することができるため、中皿と中皿収容用凹部との接合一体化が強固になされ、中身である化粧料に対する衝撃吸収・緩衝効果にも優れた化粧製品を、効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施の形態である化粧料容器を用いた化粧製品を示す縦断面図である。
図2】(a)は上記実施の形態に用いる中皿の平面図、(b)はその底面図を示している。
図3】上記化粧製品の製造方法を説明する斜視図である。
図4】本発明の他の実施の形態である化粧料容器を用いた化粧製品の製造方法を説明する斜視図である。
図5】(a)は本発明に用いられるガイドシールの変形例を示す断面図、(b)は他の変形例を示す部分的な断面図である。
図6】(a)従来の、化粧料充填用凹部として複数の区画が設けられている中皿の一例を示す平面図、(b)はそのA−A′断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
つぎに、本発明の一実施の形態である化粧料容器を用いた化粧製品について説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限られるものではない。
【0024】
図1は、本発明の一実施の形態である化粧料容器を用いた化粧製品の断面図を示している。この化粧製品に用いられる化粧料容器は、容器本体10と、容器本体10の上面を蓋する蓋体11とを備えたコンパクトケースタイプの化粧料容器であって、上記蓋体11の内側面には、鏡12が取り付けられている。そして、上記蓋体11の前端部に突設された係合爪11aと、容器本体10の前端部に設けられた切欠き13内の係合突部10aとの係脱によって、蓋体11の開閉が行われるようになっている。
【0025】
そして、上記容器本体10の上面には、中皿20を収容するための凹部15が設けられており(図3参照)、その凹部15内に、化粧料30が充填された中皿20が収容されている。
【0026】
上記中皿20は、その平面図である図2(a)に示すように、外形が、平面視横長の長方形状で、その上面に、化粧料30を充填するための凹部31が設けられている(製品化の際に充填される化粧料30は図示せず)。この凹部31は、図示のとおり、全体としては、その平面視形状が横方向に延びた長円状で、その内側に設けられた仕切り壁32によって、大小4つの区画33に分割されている。
【0027】
そして、上記各区画33内には、それぞれ、中皿20の下面から化粧料30を充填するための貫通孔40が形成されており、各区画33の凹部内と中皿20の下面が連通している。
【0028】
また、上記中皿20の下面は、その底面図である図2(b)に示すように、中皿20全体の周縁部20aと、化粧料充填用の凹部31を構成する部分と、四隅の、斜め方向に平行に延びる複数の帯状リブ41とを残した状態で、中皿20の下面側から上面側に向かって、いわゆる肉盗み部50が形成されている。上記肉盗み部50が形成されている部分を、図2(b)において斜線Xで示す。
【0029】
そして、上記肉盗み部50が形成されていない、化粧料充填用の凹部31を構成する部分と、四隅の帯状リブ41とを利用して、中皿20の下面の略全面に、鎖線で示すように、シート状のガイドシール60が貼着されている。
【0030】
上記ガイドシール60は、厚み50μmの透明プラスチックシート(ポリエチレンテレフタレート製)からなり、中皿20の下面よりも一回り小さい外形寸法に設定されている。ちなみに、この例では、中皿20下面の外形寸法が42mm×62mmであるのに対し、このガイドシール60の外形は、38mm×58mmの外形寸法に設定されている。これは、ガイドシール60を中皿20の下面に貼着する際、ガイドシール60が多少ずれても、中皿20の下面からガイドシール60がはみ出すことがなく、中皿20を、容器本体10の中皿収容用凹部15内にスムーズに嵌入することができるよう考慮したものである。
【0031】
そして、上記中皿20の下面の、ガイドシール60貼着面と、前記容器本体10の中皿収容用凹部15の底面15a(図1に戻る)とが、ホットメルト接着剤等の接着剤層70を介して、一体的に接合されている。
【0032】
上記の構成によれば、中皿20の下面に、バック充填用の複数個の貫通孔40と、肉盗み部50とが形成されているにもかかわらず、その略全面に、ガイドシール60が貼着されているため、容器本体10の中皿収容用凹部15内に、広い面積で接着剤層70が形成されており、中皿20と容器本体10とが強固に接合一体化されている。
【0033】
しかも、広い面積で形成された接着剤層70と、中皿20の下面に貼着されたガイドシール60とが相俟って、優れた衝撃吸収・緩衝機能を奏するため、容器本体や蓋体に強い衝撃や振動を受けても、中皿への衝撃は小さく、中皿20内の化粧料30にひび割れや損傷が生じにくいという効果を奏する。
【0034】
さらに、上記中皿20の下面において、化粧料充填用の凹部31が形成されていない部分に肉盗み部50が形成されているにもかかわらず、四隅に、斜め方向に平行に延びる複数の帯状リブ41が設けられているため、中皿20の下面より一回り小さい寸法のガイドシール60でありながら、この帯状リブ41の端面を利用することにより、全体としてしっかりと中皿20の下面に貼着されている。
【0035】
なお、上記の例において、中皿20の下面に貼着するガイドシール60は、できるだけ嵩張らず、しかも取り扱いやすい柔軟性と一定の強度とを有していることが望ましく、ポリエチレンテレフタレート製のシートの外、例えばポリプロピレン等のオレフィン系樹脂製シートを用いることができる。透明である必要はない。
【0036】
そして、上記ガイドシール60の厚みは、上記の例に限らず、10〜300μmに設定することが好適である。薄すぎると中皿20への貼り付け作業性が悪くなり、逆に、厚すぎると化粧料容器内で嵩張って好ましくない。
【0037】
また、上記ガイドシール60の大きさは、すでに述べたように、中皿20の下面よりも一回り小さい寸法に設定することが好適である。ただし、容器本体10との充分な接着面積を確保する必要から、中皿20の下面の面積に対し、その50〜98%を覆う程度に設定することが好適であり、とりわけ80〜95%に設定することが最適である。
【0038】
つぎに、上記ガイドシール60を中皿20の下面に貼着するための接着剤(図1において図示を省略)は、ガイドシール60の材質と、中皿20の材質とを勘案して、両者を接合するのに適した接着剤を、適宜選択することができる。ただし、この接着剤は、中皿20の下面に開口する貫通孔40内に入り込まないよう、通常、ガイドシール60側に、ごく薄く塗工されて皮膜化されており、その表面の粘着性を利用して、中皿20に貼着される。
【0039】
そして、上記中皿20の、ガイドシール60貼着面と、容器本体10の中皿収容用凹部15の底面15aとを接合一体化するための接着剤層70に用いられる接着剤としては、上記ガイドシール60の材質と、容器本体10の材質とを勘案して、両者を接合するのに適したものを、適宜選択することができる。特に、衝撃吸収・緩衝機能を得る上で、硬化後にクッション性のある弾性体となるものが好ましく、例えば、ポリウレタン系ホットメルト接着剤や、ゴム系ホットメルト接着剤等が好適に用いられる。
【0040】
また、上記接着剤層70の厚みは、衝撃吸収・緩衝機能を得るために、例えば50〜3000μmに設定することが好適である。そして、上記の接着剤層70による、中皿20の下面(正確にはガイドシール60貼着面)と容器本体10の中皿収容用凹部15との接着面積は、中皿20の下面の面積に対し、50〜95%程度になるよう設定することが、接着強度の点から好適である。このように、上記ガイドシール60を介在させることにより、中皿20の下面に貫通孔40や肉盗み部50が設けられているにもかかわらず、中皿20の下面に対して大きな割合で接着面積を確保することができることが、本発明の大きな特徴である。
【0041】
さらに、上記の例において、肉盗み部50とともに帯状リブ41を設けておくこと、中皿20の周縁部20aと、化粧料充填用の凹部31との間に大きく肉盗み部50が形成される場合、特に好ましい。すなわち、前述のように、この帯状リブ41を利用して、ガイドシール60を、中皿20の下面のすみずみまでしっかりと貼着することができるからである。
【0042】
しかも、上記帯状リブ41は、とりわけ、中皿20の下面において、その四隅に設けることが、角部においてガイドシール60を剥げにくくするとともに、中皿20自体の強度を高める効果を発揮することになり、好適である。
【0043】
このような帯状リブ41は、その補強作用と、ガイドシール60貼り付け場所確保の点から、その幅〔図2(b)においてWで示す〕を、0.2〜2mmに設定することが好適である。また、互いに隣り合う帯状リブ41の間隔〔図2(b)においてPで示す〕を、0.5〜5mmに設定することが好適である。
【0044】
つぎに、上記化粧製品の製法の一例を説明する。すなわち、まず、図2(a)、(b)に示す中皿20を準備し、この中皿20の化粧料充填用の各区画33内に、貫通孔40を経由させて化粧料30を充填する。また、上記中皿20を収容するための中皿収容用凹部15が形成された容器本体10と、この容器本体10の上面を蓋するための蓋体11とを準備し、両者を連結して、蓋体11を開いた状態にする(図3参照)。
【0045】
そして、上記中皿20の下面の、上記貫通孔40の開口を含む略全面に、片面に接着剤層が設けられたガイドシール60を貼着した後、上記容器本体10の中皿収容用凹部15の底面15aに、ホットメルト接着剤等の接着剤70a(この例では液状)を数ヶ所滴下する。このとき、従来であれば、この部分に対向する中皿20の下面における貫通孔40や肉盗み部50の配置を確認して、その対向位置を避けるように接着剤70aを滴下するところ、この製法によれば、このような確認作業が不要で、そのまま、適宜の配置に接着剤70aを滴下することができる。
【0046】
つぎに、化粧料30が充填された中皿20(下面にガイドシール60付)を、上記容器本体10の中皿収容用凹部15内に嵌入し、凹部底面15aと中皿20下面のガイドシール60貼着面との間で接着剤70aを、鎖線で示すように薄く広げた状態で硬化させ、接着剤層70として、中皿20と容器本体10の凹部底面15aとを接合一体化する。そして、蓋体11を閉じて容器本体10の上面を蓋することによって、目的とする化粧製品を得ることができる。
【0047】
このように、上記製法によれば、中皿20の下面に形成されるバック充填用の複数の貫通孔40の配置や肉盗み部50の配置にかかわらず、容器本体10の中皿収容用凹部15内に、適宜の配置で広い面積の接着剤層70を形成することができるため、中皿20と中皿収容用凹部15とが強固に接合一体化され、しかも衝撃吸収・緩衝性に優れた化粧製品を、簡単に、効率よく製造することができる。
【0048】
なお、このような化粧製品では、中皿20の上面を、透明なプラスチックシートからなる保護シートで覆って、化粧料30を保護するとともに容器内がこぼれた化粧料で汚れないようにすることが、一般に行われているが、上記保護シートの脱落や紛失を防止するために、最近は、上記保護シートの一部を、容器本体10の中皿収容用凹部15内に入り込ませて挟んだものが提案されている。
【0049】
本発明の化粧料容器を用いた化粧製品においても、例えば図4に示すように、下面にガイドシール60(図1参照)が貼着された中皿20と、容器本体10の中皿収容用凹部15との間に、中皿20の上面を保護するための保護シート80を挟み込んだ構成にすることができる。
【0050】
その場合は、上記保護シート80として、図示のように、中皿20の上面を被覆するためのカバー部81と、容器本体10の中皿収容用凹部15内に入り込ませるための延長部82とを備えたものを準備し、その延長部82を、上記中皿収容用凹部15内に入り込ませ、カバー部81を、中皿収容用凹部15の側方に延ばした状態で、容器本体10に装着する。なお、上記保護シート80の延長部82のうち、容器本体10の中皿収容用凹部15の底面に敷き込む部分は、平面視が四角枠状で、中央部が大きく開口した形になっている。
【0051】
つぎに、上記中皿収容用凹部15内に、ホットメルト接着剤等の接着剤70aを数ヶ所滴下した後、化粧料30が充填された中皿20(下面にガイドシール60付)を、上記容器本体10の中皿収容用凹部15内に嵌入し、凹部底面15aと中皿20下面のガイドシール60貼着面との間で接着剤70aを、鎖線で示すように薄く広げ、硬化させて接着剤層70として、中皿20と容器本体10の凹部底面15aとを接合一体化する。そして、上記保護シート80のカバー部81を、中皿20の上面に沿うよう折り込み、蓋体11を閉じて容器本体10の上面を蓋することによって、目的とする化粧製品を得ることができる。
【0052】
本発明において、上記のように、中皿20と容器本体10の中皿収容用凹部15との間に保護シート80を挟み込むと、従来に比べて広い接着面積の接着剤層70によって、中皿20の下面(ガイドシール60付)と容器本体10の中皿収容用凹部15とが、強固に一体化されているため、上記保護シート80も、強固に挟み込まれることとなり、保護シート80がずれたり抜けたりすることがなく、長期にわたって良好に使用することができる。
【0053】
なお、上記のように、保護シート80を用いる場合には、接着剤層70を形成する接着剤70aとして、粘着タイプのものではなく、完全硬化型のものを用いることが好適である。すなわち、粘着タイプのものであると、せっかく広い面積に接着剤層70を形成していても、保護シート80を強く引っ張ると抜けてしまうおそれがあるからである。
【0054】
また、本発明において、中皿20の下面に貼着するガイドシール60として、例えば図5(a)に示すように、側方にシート部分が延長されたものを用いることにより、ガイドシール60が、上記保護シート80を兼ねるようにすることができる。
【0055】
すなわち、この例では、ガイドシール60に、中皿20の下面に貼着するためのシール部91と、容器本体10の中皿収容用凹部15(図4参照)の側壁に沿って立ち上がるための立ち上がり部92と、中皿20の上面を覆うためのカバー部93とを設け、上記シール部91の、中皿20の下面と対向する部分に、接着剤層94を設ける。そして、この接着剤層94を介して、ガイドシール60を中皿20の下面に貼着した後、このガイドシール60付きの中皿20を、接着剤70aが滴下された容器本体10の中皿収容用凹部15内に嵌入することにより、目的とする化粧製品を得ることができる。
【0056】
さらに、本発明において、図5(b)に示すように、上記ガイドシール60の両面に接着剤層95、接着剤層96が形成されたものを用いることにより、容器本体10の中皿収容用凹部15内に接着剤70aを滴下する等して接着剤層70を形成することを省略することができる。すなわち、上記ガイドシール60の上面に形成された接着剤層95を利用して、ガイドシール60を中皿20の下面に貼着することができる。そして、上記ガイドシール60の下面に形成された接着剤層96を利用して、ガイドシール60付の中皿20を、容器本体10の中皿収容用凹部15内に接合一体化することができる。この構成によれば、本発明による化粧製品を、より簡便に製造することができる。
【0057】
なお、図4に示すように、上記ガイドシール60付中皿20と、容器本体10の中皿収容用凹部15との間に、保護シート80を挟み込む場合には、上記接着剤層96として、比較的厚みのある、クッション性のある接着剤層を用いることが望ましい。すなわち、上記接着剤層96は、中皿収容用凹部15内において、凹部底面15aと、凹部15内に入り込んだ保護シート80の延長部82との両方に接合する必要があり、そのためには、保護シート80の厚み分に相当する高低差に追従しなければならないからである。このように、接着剤層96にクッション性をもたせることは、この部分における衝撃吸収・緩衝性能を高めることになり、好適である。
【0058】
また、図5(a)に示すように、上記ガイドシール60が、カバー部93を有し、従来の保護シート80を兼ねる構成になっている場合は、上記ガイドシール60のうち、中皿20の下側に配置される部分にのみ、上記接着剤層95、96を形成するようにしなければならない。この場合も、上記と同様に優れた効果を奏する。
【0059】
なお、本発明の化粧料容器は、バック充填によって複数の化粧料が複数の区画内にそれぞれ充填される中皿20と、上面に、この中皿20を収容する中皿収容用凹部15が形成された容器本体10と、この容器本体10の上面を蓋する蓋体11と、ガイドシール60とを備え、上記中皿の下面に肉盗み部と帯状リブとが形成された構造になっていれば、どのような化粧料容器であっても差し支えなく、容器本体10と蓋体11との連結構造、開閉構造、各部材の形状等は、上記の例に限るものではない。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、バック充填によって複数の化粧料が複数の区画内にそれぞれ充填される中皿と、上面に、この中皿を収容する中皿収容用凹部が形成された容器本体と、この容器本体10の上面を蓋する蓋体とを備え、上記中皿の下面に肉盗み部と帯状リブとが形成されており、上記中皿と中皿収容用凹部とが、接着剤層を介して一体的に接合されるようになっている化粧料容器の提供に利用することができる。
【符号の説明】
【0061】
10 容器本体
11 蓋体
15 中皿収容用凹部
20 中皿
30 化粧料
31 凹部
40 貫通孔
60 ガイドシール
70 接着剤層
図1
図2
図3
図4
図5
図6