(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
圧縮変位率xの変化量Δxに対する圧縮荷重Fの変化量ΔFの比率(ΔF/Δx)の値が0以上0.35以下である平滑変位領域Pが2個以上存在する請求項1に記載の歯磨剤用顆粒。
圧縮変位率xの変化量Δxに対する圧縮荷重Fの変化量ΔFの比率(ΔF/Δx)の値が連続して0以上0.35以下である平滑変位領域P内において、圧縮変位率xの変化量Δxpが2%以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の歯磨剤用顆粒。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の歯磨剤用顆粒は、(A)水不溶性粉末材料、及び(B)珪酸ナトリウムを含む水溶性無機結合剤を含有する。かかる水不溶性粉末材料(A)としては、歯の研磨剤に通常用いられるものが好ましく、具体的には無機材料が好ましい。ここで、「水不溶性」とは、水100gに対する溶解量(20℃)が1g以下であることを意味する。具体的には、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、ゼオライト、シリカ、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、リン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、及び炭酸マグネシウム等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0012】
これら水不溶性粉末材料(A)の中でも、得られる歯磨剤用顆粒の物性を向上させ、ブラッシング時ストローク数の少ない早い段階でも高い汚れ除去能を発揮でき、歯垢や着色汚れ等の汚れを十分に除去することができ、つるつる感、汚れ落ち感を向上させることが可能であり、効果的に泡立ちを高めて使用感の向上を図ることもできる観点から、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、ゼオライト、及びシリカから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、軽質炭酸カルシウム及び重質炭酸カルシウムから選ばれる1種又は2種がより好ましく、重質炭酸カルシウムがさらに好ましい。
【0013】
水不溶性粉末材料(A)の平均粒子径は、顆粒崩壊後の歯垢又は汚れ除去の観点から、好ましくは0.1μm以上であり、より好ましくは0.5μm以上であり、さらに好ましくは0.8μm以上であり、またさらに好ましくは1μm以上である。また異物感を減らす観点から、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下、またさらに好ましくは5μm以下である。また、水不溶性粉末材料(A)の平均粒子径は、好ましくは0.1〜20μm、より好ましくは0.5〜15μm、さらに好ましくは0.8〜10μmであり、またさらに好ましくは1〜5μmである。
なお、平均粒子径は、実施例記載の方法により測定することができる。
【0014】
水不溶性粉末材料(A)の含有量は、段階的な崩壊挙動を実現する観点、及び研磨力を高める観点から、本発明の歯磨剤用顆粒中に、乾燥状態で好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは60質量%以上であり、またさらに好ましくは85質量%以上である。また歯に対する損傷を抑制する観点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98.5質量%以下、さらに好ましくは98質量%以下、またさらに好ましくは97.5質量%以下である。また、水不溶性粉末材料(A)の含有量は、本発明の歯磨剤用顆粒中に、乾燥状態で好ましくは40〜99質量%であり、より好ましくは50〜98.5質量%であり、さらに好ましくは60〜98質量%であり、またさらに好ましくは85〜97.5質量%である。
【0015】
本発明の歯磨剤用顆粒に含有される水溶性無機結合剤(B)は、本発明の効果を良好に発揮させるため、珪酸ナトリウムを含む。珪酸ナトリウムを含有することにより、顆粒内に様々な大きさの空隙を散在させることができ、さらに散在している様々な大きさの空隙中の水分のpHがアルカリ性になるため、歯垢を十分に除去することができるとともに、つるつる感及び汚れ落ち感を向上させることができる。かかる珪酸ナトリウムとしては、メタ珪酸ナトリウム(Na
2SiO
3)、オルト珪酸ナトリウム(Na
4SiO
4)、二珪酸ナトリウム(Na
2Si
2O
5)、四珪酸ナトリウム(Na
2Si
4O
9)及びそれらの水和物が挙げられる。
珪酸ナトリウムは、一般にNa
2O・nSiO
2・mH
2Oの分子式で表される。係数n(Na
2Oに対するSiO
2の分子比)はモル比と呼ばれ、下記式(I)で表すことができる。
モル比=質量比(SiO
2質量%/Na
2O質量%)×(Na
2Oの分子量/SiO
2の分子量)・・・(I)
珪酸ナトリウムとしては、通常、JIS K1408に記載の珪酸ソーダ1号、2号、3号の他、種々のモル比の水ガラスを使用することができるが、中でも珪酸ソーダ3号がさらに好ましい。
【0016】
珪酸ナトリウムの物性は前記モル比(係数n)によって異なるが、医薬部外品原料規格への適合性、本発明の効果を良好に発揮させる観点、及び得られる歯磨剤用顆粒のpHをアルカリ性にする観点から、前記モル比(係数n)は、好ましくは2.0以上であり、より好ましくは2.4以上であり、さらに好ましくは2.8以上であり、またさらに好ましくは3.0以上であり、好ましくは4.0以下であり、より好ましくは3.5以下であり、さらに好ましくは3.4以下であり、またさらに好ましくは3.3以下である。そして、前記モル比(係数n)は、好ましくは2.0〜4.0であり、より好ましくは2.4〜3.5であり、さらに好ましくは2.8〜3.4であり、またさらに好ましくは3.0〜3.3である。
【0017】
本発明の歯磨剤用顆粒に含有される水溶性無機結合剤(B)中の珪酸ナトリウム(純分)は、水溶性無機結合剤として水不溶性粉末材料を顆粒化させる観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、ハンドリング性及び液滴として噴霧し、粗大粒子を抑制する観点及び顆粒の湿式崩壊強度を高める観点から、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。そして、前記水溶性無機結合剤(B)中の珪酸ナトリウム(純分)は、好ましくは10〜60質量%であり、より好ましくは20〜50質量%であり、さらに好ましくは30〜40質量%である。
なお、水溶性無機結合剤(B)中の珪酸ナトリウム(純分)はメーカーの規定値による。
【0018】
本発明の歯磨剤用顆粒に含有される水溶性無機結合剤(B)中の珪酸ナトリウム(固形分)は、水溶性無機結合剤として水不溶性粉末材料を顆粒化させる観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上であり、ハンドリング性及び液滴として噴霧し、粗大粒子を抑制する観点及び顆粒の湿式崩壊強度を高める観点から、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。そして、前記水溶性無機結合剤(B)中の珪酸ナトリウム(固形分)は、好ましくは20〜80質量%であり、より好ましくは30〜70質量%であり、さらに好ましくは40〜60質量%である。
なお、珪酸塩水溶液中の珪酸塩(固形分)は、実施例記載の方法により求めることができる。
【0019】
本発明の歯磨剤用顆粒中の珪酸ナトリウム(固形分)の含有量は、顆粒の乾燥状態及び水中での崩壊強度、歯磨剤中での安定性の観点や、段階的な崩壊挙動を実現する観点から、乾燥状態で好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上であり、さらに好ましくは1.5質量%以上であり、またさらに好ましくは2質量%以上である。また収率を高める観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下、またさらに好ましくは10質量%以下である。また、本発明の歯磨剤用顆粒中の珪酸ナトリウムの含有量は、好ましくは0.5〜30質量%であり、より好ましくは1〜20質量%であり、さらに好ましくは1.5〜15質量%であり、さらに好ましくは2〜10質量%である。
【0020】
本発明の歯磨剤用顆粒において、水不溶性粉末材料(A)に対する成分(B)珪酸ナトリウム(固形分)の質量比(珪酸ナトリウム(固形分)/水不溶性粉末材料(A))は、水不溶性粉末材料を顆粒化し、崩壊強度等を高める観点、及び段階的な崩壊挙動を実現する観点から、好ましくは1/99以上であり、より好ましくは2/98以上であり、さらに好ましくは2.5/97.5以上であり、またさらに好ましくは3/97以上である。また粗大粒子を減少させて、歯垢除去効果を高める観点から、かかる質量比は、好ましくは60/40以下であり、より好ましくは50/50以下であり、さらに好ましくは40/60以下であり、またさらに好ましくは30/70以下であり、またさらに好ましくは15/85以下である。そして、かかる質量比は、好ましくは1/99〜60/40であり、より好ましくは2/98〜50/50であり、さらに好ましくは2.5/97.5〜40/60であり、またさらに好ましくは3/97〜30/70であり、またさらに好ましくは3/97〜15/85である。
【0021】
本発明の歯磨剤用顆粒は、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて、上記成分以外に水不溶性無機結合剤、水不溶性有機結合剤、有機繊維、薬用成分、着色剤等を含有することができる。
上記成分以外の他の成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合せて用いてもよい。
【0022】
本発明の歯磨剤用顆粒は、微小圧縮試験機を用いて圧子を一定速度で降下させることにより、圧縮荷重Fを0gfから顆粒が崩壊する崩壊荷重F
maxまで負荷して下記式(1)で表される圧縮変位率xと圧縮荷重Fとの関係を求めたときに、圧縮変位率xの変化量Δxに対する圧縮荷重Fの変化量ΔFの比率(ΔF/Δx)の値が連続して0以上0.35以下である平滑変位領域Pが1個以上存在し、最初の平滑変位領域Pに到達するまでのΔF/Δxの値が6.0以下であり、かつ崩壊荷重F
maxが30gf以下である。
圧縮変位率(%)={圧縮変位d(μm)/圧縮荷重Fを負荷する前の歯磨剤用顆粒
の粒子径r(μm)}×100・・・(1)
【0023】
本発明の歯磨剤用顆粒は、上記のような特性を有することによって、微小圧縮試験機を用いた場合と同様、口腔内においても歯ブラシ等で荷重を負荷した際に段階的な崩壊挙動を示す。これは、かかる顆粒が、様々な粒径の中間粒子が凝集して一粒の顆粒となっているため、様々な大きさの空隙が顆粒内に散在しており、荷重が負荷されるにつれて顆粒内に散在する空隙の近傍から崩れ始めていくためであると考えられる。そして、顆粒が最終的に崩壊するまでの間に、時間を追うごとに顆粒の形態が変化することとなる。したがって、本発明の歯磨剤用顆粒を用いた使用場面では、歯ブラシの負荷によって一挙に崩壊することなくブラッシング時間の間中、顆粒の形態が徐々に変化しながら細粒化されていくこととなり、これらが歯と歯の隙間のような狭小な領域に侵入しながら歯ブラシからの荷重を効果的に伝達し、ブラッシング時ストローク数の少ない早い段階でも高い汚れ除去能を発揮でき、歯垢又は汚れ除去能を十分に発揮させることができ、つるつる感、汚れ落ち感を向上させることができる。
【0024】
本発明の歯磨剤用顆粒が上記のような特性を有することを確認するにあたり、まず、微小圧縮試験機を用いて圧子を一定速度で降下させることにより、顆粒に負荷を与えはじめ、圧縮荷重Fを0gfから増大させながら圧縮変位d(μm)を測定して圧縮変位率x(%)を求め、また顆粒が最終的に崩壊し圧縮荷重Fが最大となる点、すなわち崩壊荷重F
max(gf)を測定して、圧縮変位率xと圧縮荷重Fとの関係を求める。測定に用いる微小圧縮試験機としては、例えばMCT−W500(株式会社島津製作所製)が挙げられる。具体的には、微小圧縮試験機の試験台に顆粒1個を配置し、試験機に備えられた圧子を一定速度で垂直に降下させていくことにより、圧子と試験台との間に挟んだ顆粒に圧縮荷重Fを負荷して0gfから次第に増大させ、顆粒が崩壊して崩壊荷重F
maxに達するまで負荷していく。圧子は、例えば0.1〜0.2gf/分の範囲内で速度を一定に保持しながら降下させるのがよい。圧縮変位率xと圧縮荷重Fとの関係を求める際、例えば
図1の模式図に示すように、圧縮荷重Fを縦軸に、圧縮変位率xを横軸にプロットしてグラフ化した、圧縮荷重F−圧縮変位率x図を用いるのが好ましい。
なお、圧縮荷重Fを負荷する前の歯磨剤用顆粒の粒子径r(μm)は、微小圧縮機にて顆粒の粒子径を2辺測定し、平均値を算出したものを用いる。
【0025】
本発明の歯磨剤用顆粒は、圧縮変位率xと圧縮荷重Fとの関係を求めたときに、圧縮変位率xの変化量Δxに対する圧縮荷重Fの変化量ΔFの比率(ΔF/Δx)の値が連続して0以上0.35以下である平滑変位領域Pが1個以上存在する。ΔF/Δxの値が連続して0以上0.35以下である平滑変位領域Pとは、顆粒に圧縮荷重Fを負荷し続けているにもかかわらず、顆粒内に様々な大きさの空隙が顆粒内に散在することによって顆粒が崩壊するまでの間にその一部が変形したり欠けたり割れたりしながら圧縮変位d(μm)を増大させつつ負荷を緩和又は吸収し、結果的に圧縮荷重Fの変化量ΔFが大きくならないのに対して、圧縮変位率xの変化量Δxが増大し、ΔF/Δxの値が0以上0.35以下の範囲内で変位し続ける領域をいう。例えば、圧縮変位率xと圧縮荷重Fとの関係を求める際に、
図1に示す圧縮荷重F−圧縮変位率x図を用いた場合、
図1の曲線Aにおける平滑変位領域P
1や平滑変位領域P
2に示されるように、平滑変位領域Pは、縦軸方向(圧縮荷重F)の変動幅が大きくならないのに比べ、横軸方向(圧縮変位率x)の変動幅は大きくなるため、圧縮荷重F−圧縮変位率x図において横軸方向に平滑な領域として示される。
【0026】
上記平滑変位領域P内において、圧縮変位率xにおける変化量Δx
pは、好ましくは2%以上であり、より好ましくは5%以上であり、好ましくは70%以下であり、より好ましくは50%以下である。また、好ましくは2〜70%であり、より好ましくは5〜50%である。圧縮変位率xにおける変化量Δx
pとは、平滑変位領域P領域のなかでの開始点における圧縮変位率xと終了点における圧縮変位率xとの差(変化量)を意味する。例えば、
図1において、平滑変位領域P内における圧縮変位率xの変化量Δx
pは、平滑変位領域Pの圧縮変位率x方向の幅として示される。平滑変位領域P内において、圧縮変位率xの変化量Δx
pがこのような値を示すことにより、顆粒に圧縮荷重Fが負荷されていくなかで、より安定的に負荷を緩和又は吸収することが可能となり、段階的な崩壊挙動をより効果的に示すことができる。
【0027】
本発明の歯磨剤用顆粒は、圧縮荷重Fを0gfから負荷しはじめて崩壊荷重F
maxに達するまでの間に平滑変位領域Pが1個以上存在するのであって、好ましくは2個以上存在し、より好ましくは3個以上存在する。平滑変位領域Pが数多く存在するほど、より多様な形態を伴うこととなる。このように、本発明の歯磨剤用顆粒において、圧縮変位率xと圧縮荷重Fとの関係を求めたときに、顆粒内に空隙が散在することによって圧縮変位d(μm)を増大させながら負荷を緩和又は吸収する平滑変位領域Pを経由し、さらなる負荷に耐えきれなくなった時点で崩壊して細粒化され、崩壊荷重F
maxに達するまで、すなわち崩壊点Qに達するまでに段々と顆粒が変形又は欠けや割れを生じていくという段階的な崩壊挙動を示す。
図1の曲線Aでは、平滑変位領域P
1及び平滑変位領域P
2のように、2個の平滑変位領域Pが存在する場合を模式化している。
【0028】
さらに、本発明の歯磨剤顆粒は、圧縮変位率xと圧縮荷重Fとの関係を求めたときに、最初の平滑変位領域Pに到達するまでのΔF/Δxの値が6.0以下である。平滑変位領域Pが1個のみ存在する場合であっても、2個以上存在する場合であっても、最初の平滑変位領域Pに到達するまでの間におけるΔF/Δxの値が6.0以下であることを意味する。例えば、
図1の曲線Aにおいて、原点Oから変位しはじめて最初に現れる平滑変位領域P
1の開始点に達するまでのΔF/Δxの値に相当する。これは、圧縮荷重Fが0gfから増大しはじめたときからかかる負荷を、緩和又は吸収する特性を有することを意味しており、段階的な崩壊挙動と相まってブラッシング時ストローク数の少ない早い段階でも高い汚れ除去能を発揮でき、歯垢又は汚れ除去能を高めることができ、つるつる感、汚れ落ち感を向上させることができる。なお、圧縮変位率xと圧縮荷重Fとの関係を求めたときに、最初の平滑変位領域Pに到達するまでのΔF/Δxの値は、好ましくは6.0以下であり、より好ましくは5.5以下であり、好ましくは0.4以上であり、より好ましくは0.5以上である。
【0029】
本発明の歯磨剤用顆粒において、崩壊点Qにおける圧縮荷重である崩壊荷重F
maxは、30gf以下であって、好ましくは25gf未満であり、より好ましくは20gf未満であり、更に好ましくは15gf未満であり、好ましくは0.2gf以上であり、より好ましくは0.5gf以上であり、さらに好ましくは1gf以上、またさらに好ましくは3gf以上である。そして、崩壊点Qにおける圧縮荷重である崩壊荷重F
maxは、好ましくは0.2〜30gfであり、より好ましくは0.5gf〜25gfであり、さらに好ましくは1gf〜20gfであり、またさらに好ましくは3gf〜15gfである。このような崩壊荷重F
maxを有することにより、段階的な崩壊挙動を示しつつも過大な荷重を負荷することなく崩壊させることができ、歯と歯の隙間のように荷重が伝達しにくい狭小な領域にも効果的に顆粒を侵入させて、歯ブラシによる荷重を容易に伝達することができる。
【0030】
また、本発明の歯磨剤用顆粒の崩壊点Qにおける圧縮変位率xは20%以上であることが好ましく、22%以上であることがより好ましく、25%以上であることがさらに好ましく、90%以下であることが好ましく、85%以下であることがより好ましく、80%以下であることがさらに好ましい。そして、本発明の歯磨剤用顆粒の崩壊点Qにおける圧縮変位率xは、好ましくは20〜90%であり、より好ましくは22〜85%であり、さらに好ましくは25〜80%である。このような顆粒は、荷重を負荷した際に一挙に崩壊することなく長期間にわたって多様な形態を呈することができるとともに、崩壊荷重F
maxに達するまでの間に高い圧縮変位率を示して、高い効果を発揮することが可能となる段階的な崩壊挙動をより顕著に示すことができる。
【0031】
本発明の歯磨剤用顆粒の平均粒子径d
ave(μm)は、十分な研磨力を有する観点から、好ましくは50μm以上であり、より好ましくは75μm以上であり、さらに好ましくは100μm以上であって、口腔中での異物感を抑制する観点から、好ましくは500μm以下であり、より好ましくは450μm以下であり、さらに好ましくは400μm以下である。そして、歯磨剤用顆粒の平均粒子径d
ave(μm)は、好ましくは50〜500μmであり、より好ましくは75〜450μmであり、さらに好ましくは100〜400μmである。
なお、顆粒の平均粒子径d
aveは、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0032】
なお、
図1の曲線Bには、平滑変位領域Pの存在の認識が不可能であって、崩壊荷重F
maxが30gfを超える顆粒、すなわち一定の荷重を負荷したときに一挙に崩壊して崩壊点Qに達する従来の歯磨剤用顆粒を示している。
【0033】
本発明の歯磨剤用顆粒は、必要に応じて成分(B)の珪酸ナトリウムを含む水溶性無機結合剤を、水溶液(以下、水溶性無機結合剤水溶液という)とし、成分(A)の水不溶性粉末材料と混合し、好ましくは成分(A)に水溶性無機結合剤水溶液を添加して顆粒を形成させるとよい。なお、成分(A)と水溶性無機結合剤水溶液との量比(A/水溶性無機結合剤水溶液)が概ね10〜1、好ましくは8〜5の範囲で調製すると良好に顆粒化できるため、水溶性無機結合剤水溶液は、成分(B)の珪酸ナトリウムを含む水溶性無機結合剤を3倍量以下の水にて希釈して調製するとよい。また、水で希釈せず成分(A)の水不溶性粉末材料と混合し、好ましくは成分(A)に水溶性無機結合剤水溶液を添加して顆粒を形成させてもよい。水溶性無機結合剤水溶液は、空隙を効果的に形成しながら凝集して顆粒を形成させる観点から、緩和な速度で成分(A)の水不溶性粉末材料に添加するのが望ましい。
【0034】
具体的には、例えば、水溶性無機結合剤水溶液の添加速度は、当該水不溶性粉体材料(A)100質量部に対して、好ましくは35質量部/分以下であり、より好ましくは20質量部/分以下であり、さらに好ましくは10質量部/分以下であり、好ましくは0.5質量部/分以上であり、より好ましくは0.8質量部/分以上であり、さらに好ましくは1質量部/分以上である。上記の範囲は、JIS K1408に記載の珪酸ソーダ1号、2号又は3号を用いる場合に好適である。そして、前記水溶性無機結合剤水溶液の添加速度は、水不溶性粉体材料(A)100質量部に対して、好ましくは0.5〜35質量部/分であり、より好ましくは0.8〜20質量%であり、さらに好ましくは1〜10質量%である。
また、珪酸ナトリウム(固形分)の添加速度は、上記と同様の観点から、当該水不溶性粉体材料(A)100質量部に対して、好ましくは19質量部/分以下であり、より好ましくは11質量部/分以下であり、さらに好ましくは5.5質量部/分以下であり、好ましくは0.1質量部/分以上であり、より好ましくは0.2質量部/分以上であり、さらに好ましくは0.3質量部/分以上である。そして、前記珪酸ナトリウム(固形分)の添加速度は、水不溶性粉体材料100質量部に対して、好ましくは0.1〜19質量部/分であり、より好ましくは0.2〜11質量%であり、さらに好ましくは0.3〜5.5質量%である。
【0035】
上記のように、成分(A)に成分(B)を添加して顆粒を形成させるには、転動造粒法によって製造することが好ましい。転動造粒法によって製造することにより、従来より汎用されている噴霧造粒法よりも顆粒内により多くの空隙を散在させることが可能となり、上述した特性を有する段階的な崩壊挙動を示す顆粒を得ることができる。
【0036】
また、上記のような転動造粒包により顆粒を製造するには、容器回転型造粒機を用いるのが好ましい。かかる容器回転型造粒機としては、ドラム型造粒機及びパン型造粒機が挙げられる。ドラム型造粒機としては、ドラム状の円筒が回転して処理を行うものであれば特に限定されない。水平又はわずかに傾斜させたドラム型造粒機の他に円錐ドラム型造粒機、多段円錐ドラム造粒機等も使用可能である。これらの装置は、バッチ式、連続式いずれの方式でもよい。
【0037】
またさらに、上記のように、緩和な速度で水溶性無機結合剤水溶液を成分(A)の水不溶性粉末材料に添加するには、多流体ノズルを用いるのが好ましい。なお、多流体ノズルとは、液体と微粒化用気体(エアー、窒素等)を独立の流路を通してノズル先端部近傍まで流通させて混合・微粒化するノズルであり、具体的には、二流体ノズル、三流体ノズル、四流体ノズル等を挙げることができる。
【0038】
水溶性無機結合剤水溶液を多流体ノズルを用いて供給する際の水溶性無機結合剤水溶液の温度は、添加時の安定性の観点から、好ましくは5℃以上であり、より好ましくは10℃以上であり、好ましくは50℃以下であり、より好ましくは30℃以下である。そして、水溶性無機結合剤水溶液を多流体ノズルを用いて供給する際の水溶性無機結合剤水溶液の温度は、5〜50℃が好ましく、10〜30℃がより好ましい。
【0039】
得られた顆粒は、歯磨剤に配合した際における安定性を確保する観点から、さらに乾燥することが好ましい。かかる乾燥としては、具体的には、棚乾燥、流動層乾燥、減圧乾燥、マイクロ波乾燥等が挙げられる。なかでも、設備的な観点から、棚乾燥、流動層乾燥が好ましい。
【0040】
乾燥温度は、熱負荷の観点から、好ましくは60℃以上であり、より好ましくは70℃以上であり、さらに好ましくは80℃以上である。また、好ましくは200℃以下であり、より好ましくは150℃以下であり、さらに好ましくは110℃であり、またさらに好ましくは90℃以下である。そして、乾燥温度は、好ましくは60〜200℃であり、より好ましくは70〜150℃であり、さらに好ましくは80〜110℃であり、またさらに好ましくは80〜90℃である。
乾燥時間は、好ましくは10分以上であり、より好ましくは20分以上であり、さらに好ましくは30分以上であり、好ましくは24時間以下であり、より好ましくは20時間以下であり、さらに好ましくは5時間以下である。そして、乾燥時間は、好ましくは10分〜24時間であり、より好ましくは20分〜20時間であり、さらに好ましくは30分〜5時間である。
【0041】
本発明の歯磨剤は、上記歯磨剤用顆粒及び界面活性剤を含有する。このように段階的な崩壊挙動を示す歯磨剤用顆粒を界面活性剤とともに含有することにより、良好な泡立ちをもたらすとともに、歯と歯の隙間のような狭小な領域に至るまで歯垢又は汚れの除去作用を十分に及ぼすことができ、界面活性剤と相まって清掃効果を高め、本発明の歯磨剤を使用した後の口腔内において歯面につるつるとした感触を付与して使用感をも高めることができる。ここで、つるつるとした感触とは、歯面を舌でふれたときに、歯垢や汚れが付着しているような感触を得ることなく、歯の表面でなめらかに舌をすべらせることができる感触をいう。
【0042】
歯磨剤用顆粒の含有量は、かかる顆粒の崩壊挙動を十分に発揮させて歯垢又は汚れ除去効果を高めるとともに使用感を向上させる観点から、本発明の歯磨剤中に、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは3質量%以上であり、さらに好ましくは5質量%以上である。歯磨剤用顆粒の含有量は、異物感を感じることなく、また歯のエナメル質を傷つけることなく歯垢または汚れ除去効果を発揮させる観点から、本発明の歯磨剤中に、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下である。また、歯磨剤用顆粒の含有量は、本発明の歯磨剤中に、好ましくは1〜50質量%であり、より好ましくは3〜30質量%であり、さらに好ましくは5〜20質量%である。
【0043】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤を用いることができる。かかるアニオン性界面活性剤としては、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩;N−ラウロイルザルコシン酸ナトリウム、N−ミリストイルザルコシン酸ナトリウムなどのN−アシルザルコシン酸塩;N−パルミトイルグルタミン酸ナトリウムなどのN−アシルグルタミン酸塩、N−メチル−N−アシルタウリンナトリウム、N−メチル−N−アシルアラニンナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等が挙げられる。
【0044】
ノニオン界面活性剤としては、ショ糖脂肪酸エステルなどの糖脂肪酸エステル;マルチトール脂肪酸エステル、ラクチトール脂肪酸エステルなどの糖アルコール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ラウリン酸モノ又はジエタノールアミド、ミリスチン酸モノ又はジエタノールアミドなどの脂肪酸ジエタノールアミド;ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体等が挙げられる。
【0045】
両性イオン界面活性剤としては、N−ラウリルジアミノエチルグリシン、N−ミリスチルジアミノエチルグリシンなどのN−アルキルジアミノエチルグリシン、N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、2−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウムなどが用いられる。
【0046】
上記界面活性剤としては、良好な発泡性や使用感をもたらす観点から、アニオン界面活性剤がより好ましく、さらにラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩がさらに好ましい。
界面活性剤の含有量は、良好な泡立ちを確保して清掃効果や使用感を高めつつ、良好な香味をもたらす観点から、本発明の歯磨剤中に、好ましくは0.2質量%以上であり、より好ましくは0.3質量%以上であり、さらに好ましくは0.5質量%以上である。また、界面活性剤の含有量は、香味が損なわれるのを抑制する観点から、本発明の歯磨剤中に、好ましくは2.0質量%以下であり、より好ましくは1.7質量%以下であり、さらに好ましくは1.5質量%以下である。さらに、界面活性剤の含有量は、本発明の歯磨剤中に、好ましくは0.2〜2.0質量%であり、より好ましくは0.3〜1.7質量%であり、さらに好ましくは0.5〜1.5質量%である。本発明の歯磨剤中の、歯磨剤用顆粒及び界面活性剤の含有量比率(歯磨剤用顆粒/界面活性剤含有量)は、0.5〜250が好ましく、さらに2〜100が好ましく、またさらに4〜40が好ましい。アニオン界面活性剤の含有量は、泡立ちの良さや清掃効果や使用感を高めつつ、良好な香味をもたらす観点から、本発明の歯磨剤中に、好ましくは0.2質量%以上であり、より好ましくは0.3質量%以上であり、さらに好ましくは0.5質量%以上である。また、アニオン界面活性剤の含有量は、香味が損なわれるのを抑制する観点から、本発明の歯磨剤中に、好ましくは2.0質量%以下であり、より好ましくは1.7質量%以下であり、さらに好ましくは1.5質量%以下である。さらに、アニオン界面活性剤の含有量は、本発明の歯磨剤中に、好ましくは0.2〜2.0質量%であり、より好ましくは0.3〜1.7質量%であり、さらに好ましくは0.5〜1.5質量%である。アルキル硫酸塩の含有量は、泡立ちの良さや清掃効果や使用感を高めつつ、良好な香味をもたらす観点から、本発明の歯磨剤中に、好ましくは0.2質量%以上であり、より好ましくは0.3質量%以上であり、さらに好ましくは0.5質量%以上である。また、アルキル硫酸塩の含有量は、香味が損なわれるのを抑制する観点から、本発明の歯磨剤中に、好ましくは2.0質量%以下であり、より好ましくは1.7質量%以下であり、さらに好ましくは1.5質量%以下である。さらに、アルキル硫酸塩の含有量は、本発明の歯磨剤中に、好ましくは0.2〜2.0質量%であり、より好ましくは0.3〜1.7質量%であり、さらに好ましくは0.5〜1.5質量%である。
【0047】
本発明の歯磨剤はさらに粘結剤を含有してもよい。粘結剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、増粘性シリカ、モンモリロナイト、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、グアガム、ペクチン等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。本発明の歯磨剤における粘結剤の含有量は、上記成分を溶解・分散させながら口腔内で有効に拡散させ、段階的に崩壊する顆粒による歯垢又は汚れ除去効果を有効に発揮させ、つるつる感、汚れ落ち感を向上させることができ、良好な泡立ちをもたらす観点から、本発明の歯磨剤中に、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、さらに好ましくは0.7質量%以上であり、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以下である。また、本発明の歯磨剤における粘結剤の含有量は、本発明の歯磨剤中に、好ましくは0.1〜5質量%であり、より好ましくは0.5〜3質量%であり、さらに好ましくは0.7〜2質量%である。本発明の歯磨剤中の、歯磨剤用顆粒及び粘結剤の含有量比率(歯磨剤用顆粒/粘結剤含有量)は、上記成分を溶解・分散させながら口腔内で有効に拡散させ、段階的に崩壊する顆粒による歯垢又は汚れ除去効果を有効に発揮させ、つるつる感、汚れ落ち感を向上させることができ、良好な泡立ちをもたらす観点から、0.2〜500が好ましく、さらに1〜60が好ましく、またさらに2.5〜30が好ましい。
【0048】
本発明の歯磨剤はさらに湿潤剤を含有してもよい。湿潤剤としては、ソルビット、グリセリン、プロピレングリコール、1,3ブチレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシキリット、マルチット、ラクチット、エリスリトール等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。本発明の歯磨剤における湿潤剤の含有量は、上記成分を溶解・分散させながら口腔内で有効に拡散させ、段階的に崩壊する顆粒による歯垢又は汚れ除去効果を有効に発揮させ、良好な泡立ちをもたらす観点から、本発明の歯磨剤中に、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは15質量%以上であり、好ましくは70質量%以下であり、より好ましくは60質量%以下であり、さらに好ましくは50質量%以下である。また、本発明の歯磨剤における湿潤剤の含有量は、本発明の歯磨剤中に、好ましくは5〜70質量%であり、より好ましくは10〜60質量%であり、さらに好ましくは15〜50質量%である。
【0049】
本発明の歯磨剤はさらに水を含有してもよい。本発明の歯磨剤における水の含有量は、上記成分を溶解・分散させながら口腔内で有効に拡散させ、段階的に崩壊する顆粒による歯垢又は汚れ除去効果を有効に発揮させ、ブラッシング時ストローク数の少ない早い段階でも高い汚れ除去能を発揮でき、良好な泡立ちをもたらす観点から、本発明の歯磨剤中に、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは7質量%以上であり、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは45質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以下である。また、本発明の歯磨剤における水の含有量は、良好な溶解性や分散性、及び歯垢または汚れ除去能をもたらす観点から、本発明の歯磨剤中に、好ましくは3〜50質量%であり、より好ましくは5〜45質量%であり、さらに好ましくは7〜40質量%である。なお、かかる水分量は、配合した水分量及び配合した成分中の水分量から計算によって算出することもできるが、例えばカールフィッシャー水分計で測定することができる。カールフィッシャー水分計としては、例えば、微量水分測定装置(平沼産業(株))を用いることができる。この装置では、歯磨剤を5gとり、無水メタノール25gに懸濁させ、この懸濁液0.02gを分取して水分量を測定することができる。本発明の歯磨剤中の、歯磨剤用顆粒及び水の含有量比率(歯磨剤用顆粒/水含有量)は、良好な溶解性や分散性、及び歯垢または汚れ除去能をもたらす観点から、0.02〜15が好ましく、さらに0.1〜6が好ましく、またさらに0.2〜3が好ましい。
【0050】
本発明の歯磨剤は、上記以外の他の成分、例えば研磨剤、賦形剤、甘味剤、防腐剤、香料、薬用成分、着色剤、その他一般に使用されている成分を含有することができる。
上記の他の成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なお、本発明の歯磨剤は、上記成分を用い、常法により製造することができる。
【0051】
上述した本発明の実施態様に関し、さらに以下の歯磨剤用顆粒及び歯磨剤を開示する。
[1](A)水不溶性粉末材料、及び(B)珪酸ナトリウムを含む水溶性無機結合剤を含有する歯磨剤用顆粒であって、
微小圧縮試験機を用いて圧子を一定速度で降下させることにより、圧縮荷重Fを0gfから顆粒が崩壊する崩壊荷重F
maxまで負荷して下記式(1)で表される圧縮変位率xと圧縮荷重Fとの関係を求めたときに、圧縮変位率xの変化量Δxに対する圧縮荷重Fの変化量ΔFの比率(ΔF/Δx)の値が連続して0以上0.35以下である平滑変位領域Pが1個以上存在し、最初の平滑変位領域Pに到達するまでのΔF/Δxの値が6.0以下であり、かつ崩壊荷重F
maxが30gf以下である歯磨剤用顆粒。
圧縮変位率(%)={圧縮変位d(μm)/圧縮荷重Fを負荷する前の歯磨剤用顆粒の粒子径r(μm)}×100・・・(1)
【0052】
[2]圧縮変位率xの変化量Δxに対する圧縮荷重Fの変化量ΔFの比率(ΔF/Δx)の値が連続して0以上0.35以下である平滑変位領域Pが、1個以上存在するのであって、好ましくは2個以上存在し、より好ましくは3個以上存在する上記[1]の歯磨剤用顆粒。
[3]最初の平滑変位領域Pに到達するまでのΔF/Δxの値が、6.0以下である上記[1]又は[2]の歯磨剤用顆粒。
[4]圧縮変位率xと圧縮荷重Fとの関係を求めたときに、最初の平滑変位領域Pに到達するまでのΔF/Δxの値は、好ましくは6.0以下であり、より好ましくは5.0以下であり、好ましくは0.4以上であり、より好ましくは0.5以上である上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の歯磨剤用顆粒。
[5]崩壊荷重F
maxが30gf以下であって、好ましくは25gf未満であり、より好ましくは20gf未満であり、さらに好ましくは15gf未満であり、好ましくは0.2gf以上であり、より好ましくは0.5gf以上であり、さらに好ましくは1gf以上、またさらに好ましくは3gf以上である上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の歯磨剤用顆粒。
[6]に達した時、圧縮変位率xが20%以上であることが好ましく、22%以上であることがより好ましく、25%以上であることがさらに好ましく、90%以下であることが好ましく、85%以下であることがより好ましく、80%以下であることがさらに好ましい上記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の歯磨剤用顆粒。
[7]圧縮変位率xの変化量Δx
pが、好ましくは2%以上であり、より好ましくは5%以上であり、好ましくは70%以下であり、より好ましくは50%以下である上記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の歯磨剤用顆粒。
【0053】
[8]平均粒子径d
aveが、好ましくは50mμ以上であり、より好ましくは75μm以上であり、さらに好ましくは100μm以上であって、好ましくは500μm以下であり、より好ましくは450μm以下であり、さらに好ましくは400μm以下である上記[1]〜[7]のいずれか1項に記載の歯磨剤用顆粒。
[9]歯磨剤用顆粒中の水不溶性粉末材料(A)が、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、ゼオライト、シリカ、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、リン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、及び炭酸マグネシウムから選ばれる1種又は2種以上である上記[1]〜[8]のいずれか1項に記載の歯磨剤用顆粒。
[10]水不溶性粉末材料(A)の平均粒子径が、好ましくは0.1μm以上であり、より好ましくは0.5μm以上であり、さらに好ましくは0.8μm以上であり、またさらに好ましくは1μm以上であって、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下、またさらに好ましくは5μm以下である上記[1]〜[9]のいずれか1項に記載の歯磨剤用顆粒。
[11]歯磨剤用顆粒中の珪酸ナトリウム(固形分)の含有量が、乾燥状態で好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上であり、さらに好ましくは1.5質量%以上であり、またさらに好ましくは2質量%以上であって、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下、またさらに好ましくは10質量%以下である上記[1]〜[10]のいずれか1項に記載の歯磨剤用顆粒。
【0054】
[12]転動造粒法により得られる上記[1]〜[11]のいずれか1項に記載の歯磨剤用顆粒。
[13]成分(B)の珪酸ナトリウムを含む水溶性無機結合剤を水溶液とし、成分(A)の水不溶性粉末材料に添加することにより得られる上記[1]〜[12]のいずれか1項に記載の歯磨剤用顆粒。
[14]水溶性無機結合剤水溶液の添加速度は、当該水不溶性粉体材料(A)100質量部に対して、好ましくは35質量部/分以下であり、より好ましくは20質量部/分以下であり、さらに好ましくは10質量部/分以下であり、好ましくは0.5質量部/分以上であり、より好ましくは0.8質量部/分以上であり、さらに好ましくは1.0質量部/分以上である上記[13]の歯磨剤用顆粒。
【0055】
[15]上記[1]〜[14]のいずれか1項に記載の歯磨剤用顆粒、及び界面活性剤を含有する歯磨剤。
[16]界面活性剤が、アニオン性界面活性剤、ノニオン界面活性剤及び両性イオン界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上である上記[15]の歯磨剤。
[17]界面活性剤の含有量が、好ましくは0.2質量%以上であり、より好ましくは0.3質量%以上であり、さらに好ましくは0.5質量%以上であって、好ましくは2.0質量%以下であり、より好ましくは1.7質量%以下であり、さらに好ましくは1.5質量%以下である上記[15]又は[16]の歯磨剤。
[18]歯磨剤用顆粒の含有量が、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは3質量%以上であり、さらに好ましくは5質量%以上であって、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下である上記[15]〜[17]のいずれか1項に記載の歯磨剤。
【0056】
[19]歯磨剤用顆粒及び粘結剤の含有量比率(歯磨剤用顆粒/粘結剤含有量)は、0.2〜500が好ましく、さらに1〜60が好ましく、またさらに2.5〜30が好ましい上記[15]〜[18]のいずれか1項に記載の歯磨剤。
[20]さらに水を含有し、水の含有量は、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは7質量%以上であり、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは45質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以下である上記[15]〜[19]のいずれか1項に記載の歯磨剤。
[21]歯磨剤用顆粒及び水の含有量比率(歯磨剤用顆粒/水含有量)は、0.02〜15が好ましく、さらに0.1〜6が好ましく、またさらに0.2〜3が好ましい上記[20]の歯磨剤。
【実施例1】
【0057】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、表中に特に示さない限り、各成分の含有量は質量%を示す。また、各物性値の測定は、以下の方法により行った。
【0058】
(1)水不溶性粉末の平均粒子径の測定方法
水不溶性粉末の平均粒子径はレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(HORIBA社製、LA−920)にて、溶媒:イオン交換水、屈折率:1.2、循環速度4、循環3minの条件で測定した。
【0059】
(2)顆粒の平均粒子径
JISZ8801−1(2000年5月20日制定、2006年11月20日最終改正)規定の2000、1400、1000、710、500、355、250、180、125、90、63、45μmの篩を用いて5分間振動させた後、篩分け法による篩下質量分布について50%平均径を算出し、これを平均粒子径とする。具体的には、JISZ8801−1(2000年5月20日制定、2006年11月20日最終改正)規定の2000、1400、1000、710、500、355、250、180、125、90、63、45μmの篩を用いて受け皿上に目開きの小さな篩から順に積み重ね、最上部の2000μmの篩の上から100gの顆粒を添加し、蓋をしてロータップ型ふるい振とう機(HEIKO製作所製、タッピング156回/分、ローリング:290回/分)に取り付け、5分間振動させたあと、それぞれの篩及び受け皿上に残留した当該顆粒の質量を測定し、各篩上の当該顆粒の質量割合(%)を算出する。受け皿から順に目開きの小さな篩上の当該顆粒の質量割合を積算していき合計が50%となる粒子径を平均粒子径とする。
【0060】
(3)珪酸ナトリウムの固形分
試料2.5gをスポイトを用いてアルミ製の直径11.5cmの容器上に1滴が直径5〜10mm程度の液滴となるよう(液滴同士が極力重ならないよう)に滴下散布し、その後、赤外線水分計(株式会社ケット科学研究所製、FD240)を用い、湿量基準水分測定モードにて温度105℃、Autoの条件(測定値の変化量が、30秒間で0.05%以内になったときを最終測定値とみなして測定を終了)で測定した揮発自由水分を除くことで算出した。
【0061】
[実施例1〜3]
表1に示す含有量の顆粒となるよう、重質炭酸カルシウム(株式会社カルファイン製、商品名:ACE−25、平均粒子径約3μm)を邪魔板を有した75Lドラム型造粒機(φ40cm×L60cm)に投入し、ドラム回転数30r.p.m/フルード数0.2/ドラム角度12.6°の条件で混合しながら珪酸ナトリウム(富士化学工業株式会社製、商品名:3号珪酸ソーダ:Na
2・3SiO
2溶液、固形分38.5%、3倍量以下の水にて希釈、25℃)を外部混合型二流体ノズル1個(株式会社アトマックス製)を用いて噴霧添加し造粒した。なお、バッチサイズは8kgである。珪酸ナトリウム水溶液の添加速度は、3.3ml/分であった。
珪酸ナトリウム水溶液噴霧後、1分間混合を継続した後、ドラム型造粒機から排出し、電気式棚乾燥機を用いて80℃で90分間乾燥した後、顆粒(平均粒子径:327.9μm)を得た。
【0062】
得られた顆粒をランダムに5個抽出し、微小圧縮試験機(株式会社島津製作所製、商品名:MCT−W500、平面圧子Φ500μm、圧縮試験モード、圧子の降下速度0.10〜0.20gf/分で一定に保持)を用いて、まず顆粒の粒子径r(μm)を測定した後、圧縮変位d(μm)を測定することによって、圧縮変位率x(%)と圧縮荷重F(gf)との関係を求め、圧縮荷重F−圧縮変位率x図を作製することにより各々の顆粒の崩壊挙動を観察した。結果を表2及び
図2〜4に示す。
【0063】
[比較例1]
表1に示す含有量の顆粒となるよう、炭酸カルシウム(平均粒子径2〜5μm、トヨホワイト(東洋電化工業(株))、コロイダルシリカ(スノーテックスSK、日産化学(株))、セルロース(KCフロック W−400G、日本製紙ケミカル(株))及び水を混合して水スラリーとし、噴霧造粒機により送風温度約200℃、排風温度80〜90℃で噴霧造粒した。得られた顆粒を90μm/500μm(粒子径90〜500μm)のふるいで分級し、顆粒(平均粒子径:257.2μm)を得た。
得られた顆粒をランダムに5個抽出し、実施例1と同様にして、圧縮荷重F−圧縮変位率x図を作製することにより各々の顆粒の崩壊挙動を観察した。結果を
図5に示す。
【0064】
[比較例2]
表1に示す含有量の顆粒となるよう、炭酸カルシウム(平均粒子径2〜10μm、(株)ニューライム)と酸化亜鉛(平均粒子径0.3μm、微細酸化亜鉛(堺化学工業(株)))を装置(機器:ニューグラマシン SEG850型)内で混合し、転動造粒機で造粒する(造粒時間:8分、回転数:175rpm)。造粒時には適量の精製水を加え、造粒工程終了後、乾燥機内(ロータリーキルン)で20〜30分乾燥させ、顆粒(平均粒子径:200μm)を得た。
得られた顆粒をランダムに5個抽出し、実施例1と同様にして、圧縮荷重F−圧縮変位率x図を作製することにより各々の顆粒の崩壊挙動を観察した。結果を
図6に示す。
【0065】
[比較例3]
市販されている顆粒(製品名:COLITE 製造元:COSMO、平均粒子径:263.7μm)を用いた。
かかる顆粒をランダムに5個抽出し、実施例1と同様にして、圧縮荷重F−圧縮変位率x図を作製することにより各々の顆粒の崩壊挙動を観察した。結果を
図7に示す。
また、実施例1の歯磨剤用顆粒の断面写真を
図8に、比較例1の歯磨剤用顆粒の断面写真を
図9に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
表1〜2及び
図2〜7の結果から明らかなように、実施例1〜3の顆粒は、平滑変位領域Pが1個以上存在し、最初の平滑変位領域Pに到達するまでのΔF/Δxの値が6.0以下であり、かつ崩壊荷重F
maxが30gf以下であることから、比較例1〜3の顆粒に比して、段階的な崩壊挙動を示すものであることがわかる。
また、
図8〜9の結果より、実施例1の顆粒は、比較例1の顆粒に比して、様々な大きさの空隙が顆粒内に存在しており、荷重を付加していくにつれて段階的に崩壊する挙動を示す要因となっていることが確認された。
【0069】
[試験例1:歯垢除去能の評価]
歯間モデル(φ4のパスツールピペットを5本並べ接着固定)の溝に赤い口紅(オーブ:RD305)を塗り込む。その後、余分な口紅を歯ブラシ(チェック、花王株式会社製)と(食器洗い用洗剤)を用いてブラッシング洗浄(赤色が出なくなるまで)した。実施例1〜3及び比較例3で得られた顆粒を用い、表3に示す処方にしたがって各歯磨剤を調製した。各種歯磨剤サンプルをモデルの上に一定量取り、口紅が歯ブラシに付着しなくなるまで刷掃行った。モデルに残った口紅をエタノール90mlで10分間超音波洗浄し、抽出液を540nmにて吸光度を測定(Abs)した。なお、歯磨剤を使用せずに、口紅が歯ブラシに付着しなくなるまで刷掃を行い、モデルに残った口紅をエタノール90mlで10分間超音波洗浄し、抽出液540nmにて吸光度測定(Abs)したものを100%として評価した。
歯磨剤を使用しなかった場合(歯磨剤無)も含め、結果を
図10に示す。
【0070】
【表3】
【0071】
図10の結果より、実施例1〜3の顆粒は、比較例3の顆粒に比して、非常に高い歯垢汚れ除去能を示すことがわかる。
【0072】
[試験例2:使用感の評価]
実施例1〜3及び比較例1〜2で得られた顆粒を用い、表3に示す処方にしたがって各歯磨剤を調製した。得られた歯磨剤1g塗布し、歯ブラシ(チェック、花王株式会社製)を用いてブラッシングし、下記に示す基準にしたがってつるつる感、泡立ち感及び汚れ落ち感の評価を行い、1〜5の5段階によるポイント評価を行った。数値が高い程、良好な結果であることを示す。これを6名のパネラーについて行い、得られた結果からその平均値を求めた。
結果を表4に示す。
【0073】
《つるつる感》
歯面を舌でふれたとき、歯の表面でなめらかに舌をすべらせることができ、つるつるとした感触が得られた。
《泡立ち感》
口腔内で心地よい泡立ちを実感することができた。
《汚れ落ち感》
歯面を舌でふれたとき、歯垢や汚れが付着しているような感触が得られた。
【0074】
【表4】
【0075】
表4の結果より、実施例1〜3の顆粒を用いた歯磨剤は、比較例1〜2の顆粒を用いた歯磨剤に比して、優れた使用感をもたらすことがわかる。
【0076】
[試験例3:汚れ除去速度の評価]
顆粒を除いたクリアクリーンレギュラー(花王株式会社製)歯磨剤に、上記の顆粒を12質量%の含有量となるように配合して歯磨剤を調製した。歯間部モデル(溝凹凸:50μm×50μm)に口紅を付着させ、各歯磨剤を2g塗布し、歯ブラシ(チェック、花王株式会社製)を装着したブラッシングマシーン(ストローク30mm、ブラッシング圧100gf、速度120回/min、ブラシ角度90度)を用いてストローク数を10回、30回、50回、70回と次第に増加させ、ブラッシングを行った。
各々ブラッシング前の口紅の量を基準とし、ブラッシング後に歯間部モデルに残留する口紅の量を減じた量を汚れ除去量とみなして汚れ除去率(%)を求めた。結果を
図11に示す。
【0077】
図11の結果より、実施例1〜3の顆粒を用いた歯磨剤は、比較例1〜2の顆粒を用いた歯磨剤に比して、ストローク数の少ない早い段階でも高い汚れ除去能を発揮できることがわかる。