特許第6118093号(P6118093)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 川崎重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6118093-溶接ワイヤの収納容器 図000002
  • 特許6118093-溶接ワイヤの収納容器 図000003
  • 特許6118093-溶接ワイヤの収納容器 図000004
  • 特許6118093-溶接ワイヤの収納容器 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6118093
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】溶接ワイヤの収納容器
(51)【国際特許分類】
   B65H 75/16 20060101AFI20170410BHJP
   B23K 9/133 20060101ALI20170410BHJP
   B23K 9/12 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   B65H75/16
   B23K9/133 503C
   B23K9/12 301P
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-269664(P2012-269664)
(22)【出願日】2012年12月10日
(65)【公開番号】特開2014-114118(P2014-114118A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年7月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100086793
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(72)【発明者】
【氏名】松本 武志
(72)【発明者】
【氏名】荻原 翔
(72)【発明者】
【氏名】小椋 晃司
(72)【発明者】
【氏名】上場 貴博
【審査官】 松井 裕典
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−008965(JP,U)
【文献】 特開2001−179450(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0023392(US,A1)
【文献】 米国特許第01480728(US,A)
【文献】 特開2003−020170(JP,A)
【文献】 実開平01−147936(JP,U)
【文献】 国際公開第88/010230(WO,A1)
【文献】 英国特許出願公告第00667183(GB,A)
【文献】 米国特許第06508434(US,B1)
【文献】 米国特許第3907228(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 49/00−49/38
B65H 54/56−54/88
B65H 59/00−59/40
B65H 75/00−75/32
B23K 9/12
B23K 9/133
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接に使用されるアルミニウム合金のワイヤを収納し、ここから前記ワイヤが引き出される容器であって、
内筒と外筒の間の環状の収納部に前記ワイヤが巻回状態で収納される胴体と、
中央部に前記ワイヤを上方へ引き出すための引出し孔を有する傘形のカバーと、
前記胴体と前記カバーの間に挿入される円筒状のスペーサとを備え、
前記胴体と前記スペーサは、前記外筒の開口周縁部に設けた連結フランジと、前記スペーサの下端の開口周縁部に設けた連結用フランジとで連結され、
前記スペーサと前記カバーとは、前記スペーサの上端の開口周縁部に設けた連結フランジと、前記カバーの下端の開口周縁部に設けた連結用フランジとで連結され、
前記胴体と前記カバーとは、それぞれの連結用フランジで連結可能に設定されている、溶接ワイヤの収納容器。
【請求項2】
請求項1に記載の溶接ワイヤの収納容器において、前記スペーサに開閉自在な窓が設けられている溶接ワイヤの収納容器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の溶接ワイヤの収納容器において、前記カバーと前記スペーサが結合されて上部アセンブリが形成されており、この上部アセンブリが前記胴体の上に連結されている溶接ワイヤの収納容器。
【請求項4】
請求項3に記載の溶接ワイヤの収納容器において、前記上部アセンブリが前記胴体に、それぞれの連結用フランジを重ね合わせた状態で連結する環状の連結バンドにより、分離可能に連結されている溶接ワイヤの収納容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動溶接設備に用いられる溶接ワイヤを収納する収納容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動溶接設備の溶接ワイヤは、供給リールに螺旋状に巻回して収納され、ワイヤ送給装置により供給リールから順次引き出されて供給されるようになっていた。このリール式ワイヤ収納装置では、供給リールへの溶接ワイヤの巻き数が少ないことから、供給リールを交換する頻度が比較的多くなり、その交換毎に溶接作業を停止することになって自動溶接設備の稼働率が低下する。そこで、近年では、図3に示すような収納容器K1が用いられている。この収納容器K1は、同心状に配置された外筒31と内筒32との間に環状の収納部33を有する胴体30を有し、収納部33に溶接ワイヤ50を螺旋状に巻回して収納している。溶接ワイヤ50を収納した胴体30が納入業者から溶接現場に納入され、溶接現場において、外筒31の上部にカバー38を連結することにより、溶接ワイヤ50の収納容器K1が組み立てられる(特許文献1参照)。
【0003】
カバー38は、外筒31の上端開口と同一径の下端開口を有する、上方に向かって先細りの円錐台形状の傘形に形成されて、その下端縁に設けられた連結用フランジ41と外筒31の連結用フランジ42とを突き合わせた状態で、環状の連結バンド43により分離可能に連結される。胴体30は、外筒31および内筒32が後述する一定寸法に設定された規格品であり、リール式ワイヤ収納装置に比べて格段に多い巻き数の溶接ワイヤ50を収納できるものである。
【0004】
自動溶接設備を用いて自動溶接を行う溶接現場では、購入した胴体30の外筒31上に上述のようにカバー38を連結したのち、カバー38に設けられた窓37を覆う開閉蓋39を開け、窓37から中を覗きながら手を入れて、胴体30に収納されている溶接ワイヤ50の先端部を、カバー38の中央部(頂部)に形成された引出し孔40に挿通させて外部に引出す。この引き出された溶接ワイヤ50の先端部はワイヤ送給装置(図示せず)に順次引出せる状態に取り付けられる。また、胴体30内の溶接ワイヤ50の全てが使用されたときには、カバー38を胴体30から分離して、空の胴体30が溶接ワイヤ50の収納済みの新たな胴体30と交換される。
【0005】
自動溶接設備によるアルミニウム合金溶接を行う場合、線径が1.2mmのアルミニウム合金の溶接ワイヤ50が一般的に用いられている。この溶接ワイヤ50を収納した自動用溶接用の胴体30として、外径r1が510mmで高さh1が750mmの外筒31と、外径r2が305mmで高さh2が700mmの外筒42とを有するものが規格品として存在する。この胴体30に収納されている溶接ワイヤ50が、ワイヤ送給装置によりカバー38の引出し孔39から順次引き出される際に、摺接する内筒32の上端縁とカバー38の引出し孔40を結ぶ引出しラインの水平面に対する角度α1は約64°程度であり、溶接ワイヤ50が引出し孔40から円滑に順次引き出される。
【0006】
ところで、近年では、板厚の大きなアルミニウム合金部材の自動溶接を線径が太い2mmの溶接ワイヤを用いて行われており、図4に示す収納容器K2の胴体2に上述の線径が2mmの溶接ワイヤ51を収納したものが規格品として存在する。この規格品の胴体2は、外径R1が660mmで高さH1が750mmの外筒3と、外径R2が450mmで高さH2が700mmの内筒4とを有している。このように、胴体2は、線径が大きな溶接ワイヤ51を所要長さだけ収納するために、外筒3の外径R1および内筒4の外径R2が、図2の収納容器K1よりも大きく設定されている。カバー8は、連結すべき外筒3の形状が大きくなったのに伴い、下端開口が外筒3の外径R1に対応する大きな開口径を有する形状になっており、このカバー8にも、窓7、その開閉蓋9、および引出し孔10が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−179450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の線径が2.0mmのアルミニウム合金の溶接ワイヤ51を収納した収納容器K1から溶接ワイヤ51が引き出される場合、溶接ワイヤ51に捩れが生じて、カバー8の引出し孔10から溶接ワイヤ51が円滑に引き出されない事態が生じることがある。このような事態が溶接用ロボットによるTIG溶接やガスアーク溶接などの自動溶接を行っている際に発生すると、溶接ワイヤ51が供給されないことによって溶接が不能となり、溶接対象物に孔が開くなどの溶接不良が発生する。これに対し、引用文献1に開示されているワイヤ押えの技術、つまり収納容器内に収納されている溶接ワイヤの上面にガラス玉を敷き詰めて、収納容器内に残存する溶接ワイヤがカバーの引出し孔へ向けた引っ張り力に抗して浮き上がらないように押える技術は、2.0mmもの大きな線径の溶接ワイヤ51に対しては捩れの発生を防止できない。
【0009】
上述の溶接ワイヤ51の捩れの発生は、収納する溶接ワイヤ51の線径が大きくなったのに伴って内筒4の外径R2も大きくなったことにより、その内筒4の上端縁とカバー8の引出し孔10を結ぶ引出しラインの水平面に対する角度α2が約52°程度と小さくなる結果、溶接ワイヤ51が急峻な角度でに引き上げられることが一因であると思われる。そこで、内筒4の高さH2を低くして前記角度α2を大きくすることを試みたが、溶接ワイヤ51の捩れの発生を抑制できなかった。
【0010】
そこで、本発明は、コスト高とならない簡単な構成としながらも、線径の大きな溶接ワイヤをこれに捩れを生じることなく円滑に引き出すことができる溶接ワイヤの収納容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る溶接ワイヤの収納容器は、溶接に使用されるアルミニウム合金のワイヤを収納する容器であって、内筒と外筒の間の環状の収納部に前記ワイヤが巻回状態で収納される胴体と、中央部に前記ワイヤを上方へ引き出すための引出し孔を有する傘形のカバーと、前記胴体と前記カバーの間に挿入される円筒状のスペーサとを備えている。
【0012】
この溶接ワイヤの収納容器では、胴体とカバーの間に円筒状のスペーサが挿入されることにより、カバーの胴体に対する取付位置がスペーサの高さ分だけ高くなるから、胴体における溶接ワイヤが引き上げられる際に摺接する内筒の上端縁からカバーの引出し孔までの距離がスペーサの高さ分だけ長くなるとともに、内筒の上端縁とカバーの引出し孔を結ぶ引出しラインの水平面に対する角度が大きくなる。その結果、内筒の上方に溶接ワイヤが周囲に触れないフリーとなる長い空間が生じるとともに、溶接ワイヤが急峻な角度で引き上げられることがなくなる。したがって、大きな線径の溶接ワイヤを引き出す場合であっても、大きな捩れが生じにくく、小さな捩れは、引出し孔に達するまでの長い空間内で十分に回復する。これにより、捩れのない溶接ワイヤを円滑に引出し孔から引き出すことができる。しかも、この収納容器は、一定寸法の規格品である既存の胴体とこれに対応する寸法に形成された既存のカバーとをそのまま使用して、この胴体とカバーとの間に挿入するスペーサを付設するだけの簡単な構成であるから、コストの上昇を抑制できる。
【0013】
本発明において、前記スペーサに開閉自在な窓が設けられていることが好ましい。既存のカバーに設けられている窓を利用すると、窓がスペーサの高さ分だけ高い位置となって作業性が悪くなる。これに代えて、スベーサに窓を設けたことにより、窓の高さを従来のカバーに設けられていた窓と同じにすることができるので、好適な高さ位置の窓から中を覗きながら手を入れて溶接ワイヤをカバーの引出し孔から引き出す作業を行う際の作業性が向上する。
【0014】
本発明において、前記カバーと前記スペーサが結合されて上部アセンブリが形成されており、この上部アセンブリが前記胴体の上に載置されている構成とすることが好ましい。これにより、納入業者から納品される溶接ワイヤ入りの規格品の胴体に、カバーとスペーサが結合されてなる単一の上部アセンブリを被せればよいので、収納容器の組立作業性が向上する。
【0015】
上部アセンブリが胴体の上に載置される構成において、前記上部アセンブリが前記胴体に環状の連結バンドにより分離可能に連結されていることが好ましい。これにより、上部アセンブリを胴体に容易、かつ確実に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、カバーの胴体に対する取付位置がスペーサの高さ分だけ高くなるから、溶接ワイヤが引き上げられる際に摺接する内筒の上端縁からカバーの引出し孔までの距離がスペーサの高さ分だけ長くなって、その間に長い空間が確保されるとともに、内筒の上端縁とカバーの引出し孔を結ぶ引出しラインの水平面に対する角度が大きくなる。その結果、線径の大きな溶接ワイヤを引き出す場合であっても、捩れが生じることなく円滑に引き出すことができる。しかも、この収納容器は、一定寸法の規格品である既存の胴体とこれに対応する寸法に形成された既存のカバーとをそのまま使用して、この胴体とカバーとの間にスペーサを挿入するだけの簡単な構成であるから、コストの上昇を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る溶接ワイヤの収納容器が設けられた溶接設備を示す概略図である。
図2】同収納容器を示す一部破断した正面図である。
図3】従来の溶接ワイヤの収納容器を示す一部破断した正面図である。
図4】従来の他の溶接ワイヤの収納容器を示す一部破断した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。図1に示すように、アルミニウム合金の溶接ワイヤ51が収納容器Kからワイヤ送給装置26により引き出されて溶接用ロボット27に供給され、アルミニウム合金製の溶接対象物28に対する溶接が行われる。
【0019】
図2は収納容器Kの詳細を示し、同図において、図4と同一のものには同一の符号を付して、重複する説明を省略する。この収納容器Kに収納される溶接ワイヤ51は、アルミニウム溶接材として一般的なA5356を材質として、横断面円形の2.0mmの線径に形成されたものであり、捩れ易い性質を有する。収納容器Kは、規格品の胴体2と、図4に示した既存のものと同一形状の傘形のカバー8と、胴体2とカバー8との間に挿入された円筒状のスペーサ11とを備えている。後述するように、カバー8とスペーサ11とが結合されて上部アセンブリ20が形成される。
【0020】
外筒3および内筒4は、図4に示した規格品と同じ一定寸法の外径R1,R2および高さH1,H2を有する円筒であり、図2の外筒3と内筒4との間に溶接ワイヤ51の収納部12が形成されている。内筒4は、外筒3の内部に同心状に配置されて、内筒4の底壁部4aが外筒3の底板部3aに止め金(図示せず)により固定されている。カバー8は、引出し孔10を有しているが、窓7は備えていない。
【0021】
外筒3および内筒4は、いずれも段ボールのような紙を素材として有底円筒状に形成され、外筒3の開口周端部には、銅のような金属により形成された縁金状の連結用フランジ13が設けられている。この連結用フランジ13は、規格品の胴体2に設けられている既存のものである。図2のカバー8は、樹脂を素材として下端開口した円錐台状の傘形に形成され、下端の開口周端部には、銅のような金属により形成された横断面L字状の連結用フランジ14が設けられている。この連結用フランジ14は、図4にも示したように、従来のカバー8にも設けられている既存のものである。
【0022】
図2に示す新たに付設されたスペーサ11は、段ボールのような紙を素材として、外筒3の外径およびカバー3の開口端の外径に等しい外径を有する円筒状に形成され、所定箇所に窓17が設けられている。この窓17は、ヒンジ18により開閉動作される開閉蓋19により手動で開閉自在となっている。このスペーサ11の下端および上端の各開口周縁部にはそれぞれ、銅のような金属により形成された連結用フランジ21,22が設けられている。
【0023】
スペーサ11の上端の連結用フランジ22にカバー8の連結用フランジ14を重ね合わせた状態で、バックル23を有する環状の連結バンド24により両連結フランジ22,14が互いに連結されて、上部アセンブリ20が形成される。また、スペーサ11の下端の連結フランジ21を胴体2の連結用フランジ13に重ね合わせた状態で、バックル23を有する環状の連結バンド24により両連結フランジ21,13が互いに連結されて、スペーサ11を含む上部アセンブリ20が胴体2における外筒3に連結される。これにより、胴体2、スペーサ11およびカバー8からなる収納容器Kが組み立てられる。
【0024】
収納されている溶接ワイヤ51の全てを使用したときに胴体2の納入業者に返却する胴体2とは異なり、上部アセンブリ20は溶接現場に常時置かれている。したがって、溶接ワイヤ51が入った新しい胴体2の上に上部アセンブリ20を連結するだけで、つまり1回の連結作業で、3つの部分である胴体2、スペーサ11およびカバー8を有する収納容器Kを組み立てることができ、作業性がよい。
【0025】
窓17は、組み立て状態の収納容器Kにおいて、図4に示す従来の収納容器K2におけるカバー8に設けられた窓7と同一高さとなる、図2のスペーサ11上の位置に形成されている。溶接ワイヤ51の納入業者から納入された新たな胴体2に、スペーサ11とカバー3とを含む上部アセンブリ20を連結バンド24により連結して、収納容器Kの組み立てが完了したのちに、カバー8の開閉蓋19の開放により開いた窓17から中を覗きながら手を入れて、溶接ワイヤ51の先端部をカバー8の引出し孔10から引き出して、この溶接ワイヤ51の先端部を図1の自動溶接設備のワイヤ送給装置26に連結する。こうして、溶接ワイヤ51のセットが終了すると、溶接ワイヤ51が、ワイヤ送給装置26により収納容器Kから順次引き出されて、溶接用ロボット27の溶接トーチに所定速度で供給され、MIG溶接またはTIG溶接が自動的に行われる。
【0026】
図2に示す収納容器Kでは、胴体2とカバー8の間に円筒状のスペーサ11が挿入されることにより、カバー8の胴体2に対する取付位置がスペーサ11の高さ分だけ高くなるから、胴体2における溶接ワイヤ51が引き上げられる際に摺接する内筒4の上端縁から
カバー8の引出し孔10までの距離がスペーサ11の高さ分だけ長くなるとともに、内筒4の上端縁とカバー8の引出し孔10を結ぶ引出しラインの水平面に対する角度αが大きくなる。その結果、内筒4の上方に溶接ワイヤ51が周囲に触れないフリーとなる長い空間が生じるとともに、溶接ワイヤ51が急峻な角度で引き上げられることがなくなる。したがって、大きな捩れが生じにくく、小さな捩れは、引出し孔10に達するまでの長い空間内で十分に回復する。これにより、大きな線径の溶接ワイヤ51を引き出す場合であっても、捩れのない溶接ワイヤ51を円滑に引出し孔10から引き出すことができる。
【0027】
上記角度αは、実施形態において71°に設定したが、68°〜80°の範囲内に設定すれば、溶接ワイヤ51の捩れの発生を抑制する効果が得られる。この範囲内の角度αを設定するためには、上述のような外径R1=660mm、R2=450mm、高さH1=750mm、H2=700mmを有する外筒3および内筒4を含む規格品の胴体2に対して、付設するスペーサ11は、高さH3が200〜400mmの範囲内のものを用いる必要がある。
【0028】
また、この収納容器Kは、一定寸法の規格品である既存の胴体2とこれに対応する寸法に形成された既存のカバー8とをそのまま使用して、この胴体2とカバー8との間に挿入するスペーサ11を付設するだけの簡単な構成であるから、コストの上昇を抑制できる。これに対し、上述の68°〜80°の範囲内の角度αを設定できる高さを有する外筒を新たに設ける構成とした場合には、現存の規格品の胴体2とは異なる寸法の胴体を新たに作る必要があり、胴体2の種類の増大によってコスト高となる。
【0029】
また、スペーサ11を胴体2とカバー8との間に挿入することによってカバー8の位置が高くなるが、図4の従来のカバー8に設けられていた窓7と、図2のスペーサ11における窓17とを同じ高さとすることにより、窓17の位置が高くなり過ぎるのを防止している。これにより、作業に好適な高さの窓17から中を覗きながら手を入れて溶接ワイヤ51をカバー8の引出し孔10から引き出す作業の能率が向上するとともに、溶接ワイヤ51の残量も確認しやすい。
【0030】
収納済みの溶接ワイヤ51の全てを使用したときに溶接ワイヤ51の納入業者に返却する胴体2とは異なり、カバー8とスペーサ11とを結合した上部アセンブリ20は溶接現場に常時備えられている。したがって、納入業者から納入された溶接ワイヤ51入りの新しい胴体2に単一の上部アセンブリ20を溶接現場で被せて連結するだけで収納容器Kの組み立てが完了するので、収納容器Kの組立作業性が向上する。
【0031】
また、上部アセンブリ20が胴体2に環状の連結バンド24により分離可能に連結されているので、上部アセンブリ20を胴体2に容易、かつ確実に取り付けて収納容器Kを迅速に組み立てることができる。
【0032】
本発明は上述した実施形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能であり、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0033】
2 胴体
3 外筒
4 内筒
8 カバー
10 引出し孔
11 スベーサ
12 収納部
17 窓
20 上部アセンブリ
24 連結バンド
51 溶接ワイヤ
K 収納容器
図1
図2
図3
図4