(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
接合レンズに関しては、レンズ同士を貼り合わせる際、接着剤内に気泡が発生しないように、十分な接着剤を塗布する必要があるが、特許文献1に記載の構成では、接着剤が外周側に漏れてしまい、接合レンズをレンズホルダ内に配置する際、外側に漏出した接着剤の影響で接合レンズが傾いてしまう等の問題点がある。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、レンズ間への気泡の混入、レンズ間での隙間や剥離、レンズ間での偏芯等を防止でき、さらには、レンズ外側の接着剤の漏出を防止することのできる接合レンズ、および当該接合レンズを備えたレンズユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、第1レンズの凹
状のレンズ面と第2レンズの凸
状のレンズ面とが接着剤により接合された接合レンズにおいて、前記第1レンズおよび前記第2レンズはプラスチックレンズであって、前記第1レンズは、
前記凹状のレンズ面を外周側で囲む第1レンズ側外周領域を備え、前記第2レンズは、
前記凸状のレンズ面を外周側で囲む第2レンズ側外周領域を備え、前記第1レンズ側外周領域および前記第2レンズ側外周領域の一方側の外周領域には、他方側の外周領域に向けて突出して当該他方側の外周領域に当接する凸部が形成され、前記第1レンズ側外周領域には、前記レンズ面を囲むように周方向に延在する凹部が形成さ
れ、前記凸部は、前記他方側の外周領域のうち、前記凹部より径方向外側に当接していることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る接合レンズでは、第1レンズ側外周領域および第2レンズ側外周領域の一方側の外周領域には、他方側の外周領域に向けて突出して当該他方側の外周領域に当接する凸部が形成されているため、第1レンズのレンズ面と第2レンズのレンズ面との間隔を高い精度で制御することができる。このため、第1レンズのレンズ面と第2レンズのレンズ面との間での接着剤の厚さを薄くすることができるので、レンズ間の偏芯が発生しにくい。また、第1レンズのレンズ面と第2レンズのレンズ面との間での接着剤の厚さが薄くなりすぎることがないので、レンズ間での隙間や剥離が発生しにくい。また、第1レンズ側外周領域には、レンズ面を囲むように周方向に延在する凹部が形成されているため、気泡が残らないように十分な量の接着剤を塗布した場合でも、第1レンズに第2レンズを重ねた際、余剰の接着剤は凹部に溜まる。従って、接着剤がレンズの外側に漏出しない。
【0009】
また、前記凸部は、前記他方側の外周領域のうち、前記凹部より径方向外側の部分に当接している
。このため、凸部と他方側の外周領域との間に接着剤が介在しないので、凸部によって、第1レンズのレンズ面と第2レンズのレンズ面との間隔(第1レンズのレンズ面と第2レンズのレンズ面との間での接着剤の厚さ)を高い精度で制御することができる。
【0010】
本発明において、前記凸部は、前記第2レンズ側外周領域から突出して前記第1レンズ側外周領域に当接している構成を採用することができる。かかる構成によれば、第1レンズ側に接着剤を塗布する際、凸部に接着剤が被ることがないので、凸部によって、第1レンズのレンズ面と第2レンズのレンズ面との間隔(第1レンズのレンズ面と第2レンズのレンズ面との間での接着剤の厚さ)を高い精度で制御することができる。
【0011】
本発明において、前記凹部は、周方向で繋がって環状に形成されていることが好ましい。かかる構成によれば、周方向の全体にわたって、接着剤のレンズ外側への漏出を防止することができる。
【0012】
本発明において、前記凸部は、周方向で離間する複数個所に形成されていることが好ましい。かかる構成によれば、凸部を周方向の全域に形成した場合や、周方向の1個所に形成した場合に比較して、第1レンズのレンズ面と第2レンズのレンズ面との間隔(第1レンズのレンズ面と第2レンズのレンズ面との間での接着剤の厚さ)を高い精度で制御することができる。すなわち、凸部を周方向の全域に形成すると、周方向の全域にわたって高い精度とする必要があるが、凸部を周方向で離間する複数個所に形成した構成であれば、周方向の特定個所(凸部が形成されている個所)のみを高い精度とすればよい。また、凸部を周方向の1個所とすると、第1レンズと第2レンズとが傾いて接合されるおそれがあるが、凸部を周方向で離間する複数個所に形成した構成であれば、かかる傾きが発生しにくい。
【0013】
本発明において、前記接着剤は、前記第1レンズのレンズ面と前記第2レンズのレンズ面との間に位置する部分の厚さが3μmから20μmであることが好ましい。レンズ面同士の間に位置する部分の厚さが3μm未満の場合には、レンズ間での隙間や剥離が発生するおそれがある一方、レンズ面同士の間に位置する部分の接着剤の厚さが20μmを超える場合、第1レンズと第2レンズとの間で偏芯が発生しやすい。それ故、レンズ面同士の間に位置する部分の接着剤の厚さは、3μmから20μmであることが好ましい。
【0014】
本発明において、前記接着剤の屈折率と前記第1レンズを構成するレンズ材料の屈折率との差、および前記接着剤の屈折率と前記第2レンズを構成するレンズ材料の屈折率との差の少なくとも一方が0.05以下であることが好ましい。かかる構成によれば、接着剤の屈折率とレンズ材料の屈折率との差が光学特性に影響を及ぼしにくい。
【0015】
本発明において、前記接着剤は、弾性を有していることが好ましい。かかる構成によれば、第1レンズのレンズ材料の熱膨張係数と第2レンズのレンズ材料の熱膨張係数とが相違している場合でも、環境温度が変化したときの剥離が発生しにくい。
【0016】
本発明において、前記第1レンズ側外周領域には、前記凹部よりさらに径方向外側に外周側凹部が形成されていることが好ましい。かかる構成によれば、レンズ外側への接着剤の漏出をさらに外周側凹部によっても防止することができる。
【0017】
本発明に係る接合レンズを保持するレンズホルダを有するレンズユニットにおいて、前記レンズホルダは、前記第1レンズおよび前記第2レンズのうちの一方のレンズのみと接触状態にあって、他のレンズとは非接触状態にあることが好ましい。かかる構成によれば、環境温度の変化に伴って、レンズホルダやレンズに膨張や収縮が発生しても接合レンズでの剥離等の問題が発生しにくい。
【0018】
本発明において、前記レンズホルダは、前記一方のレンズの前記他方のレンズと接合されている面側、あるいは前記一方のレンズの前記他方のレンズと接合されている面とは反対側の面に接し、前記レンズホルダの内周面と前記一方のレンズの外周面との間には隙間が空いていることが好ましい。かかる構成によれば、環境温度の変化に伴って、レンズホルダやレンズに膨張や収縮が発生しても接合レンズでの剥離等の問題が発生しにくい。
【0019】
本発明において、前記第1レンズの外形寸法は、前記第2レンズの外形寸法より大であり、前記レンズホルダは、前記第1レンズおよび前記第2レンズのうち、前記第1レンズのみと接触状態にあって、前記第2レンズとは非接触状態にあることが好ましい。かかる構成によれば、第1レンズおよび第2レンズの一方のレンズとレンズホルダとが接触状態にある構造を実現しやすい。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る接合レンズでは、第1レンズ側外周領域および第2レンズ側外周領域の一方側の外周領域には、他方側の外周領域に向けて突出して当該他方側の外周領域に当接する凸部が形成されているため、第1レンズのレンズ面と第2レンズのレンズ面との間隔を高い精度で制御することができる。このため、第1レンズのレンズ面と第2レンズのレンズ面との間での接着剤の厚さを薄くすることができるので、レンズ間の偏芯が発生しにくい。また、第1レンズのレンズ面と第2レンズのレンズ面との間での接着剤の厚さが薄くなりすぎることがないので、レンズ間での隙間や剥離が発生しにくい。また、第1レンズ側外周領域には、レンズ面を囲むように周方向に延在する凹部が形成されているため、気泡が残らないように十分な量の接着剤を塗布した場合でも、第1レンズに第2レンズを重ねた際、余剰の接着剤は凹部に溜まる。従って、接着剤がレンズの外側に漏出しない。それ故、本発明によれば、レンズ間への気泡の混入、レンズ間での隙間や剥離、レンズ間での偏芯等を防止でき、さらには、レンズ外側の接着剤の漏出を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図面を参照して、本発明を適用した接合レンズおよび光学ユニットを説明する。なお、以下のレンズの説明において、物体側および像側のうちの少なくとも一方側が非球面であれば、他方側が球面であるか非球面であるかにかかわらず、「非球面レンズ」として説明する。
【0023】
(レンズユニットの構成)
図1は、本発明を適用したレンズユニットの説明図である。
図1に示すように、本形態のレンズユニット1は、撮像レンズ20と、撮像レンズ20を内側に保持する樹脂製のレンズホルダ30とを有している。本形態において、撮像レンズ20は、画角が150〜190°の広角レンズとして構成されている。
【0024】
撮像レンズ20は、4群の群を備えている。より具体的には、撮像レンズ20は、物体側(被写体側/前側)から順に、負のパワーを持つ第1群11と、負のパワーを持つ第2群12と、正のパワーを有する第3群13と、正のパワーを有する第4群14とを有しており、第3群13と第4群14との間に絞り91を有している。第2群12と第3群13との間には遮光シート93が配置され、第4群14より後側(像側/被写体側とは反対側)には、赤外線フィルタ(図示せず)や撮像素子(図示せず)が配置されている。
【0025】
撮像レンズ20は計5枚のレンズを有しており、4群5枚のレンズ構成を有している。より具体的には、第1群11は、負のパワーをもつ単レンズ21からなり、単レンズ21は、プラスチックレンズあるいはガラスレンズからなる。第2群12は、負のパワーをもつプラスチックレンズ22からなる。第3群13は、正のパワーをもつプラスチックレンズ23からなる。
【0026】
第4群14は、負のパワーをもつ第1レンズ24と正のパワーをもつ第2レンズ25との接合レンズ10からなる。本形態において、第1レンズ24および第2レンズ25はいずれも、プラスチックレンズからなり、第1レンズ24と第2レンズ25とでは、レンズ材料の屈折率が異なっている。
【0027】
かかる撮像レンズ20において、単レンズ21(第1群11)は、物体側の面が凸状の球面であり、像側の面が凹状の球面あるいは非球面である。プラスチックレンズ22(第2群12)は、物体側の面が凹状の非球面であり、像側の面が凸状の非球面である。プラスチックレンズ23は、物体側の面が凸状の非球面であり、像側の面が凸状の非球面である。
【0028】
接合レンズ10(第4群14)の第1レンズ24において、物体側の面24aは、凸状の非球面からなるレンズ面を備え、像側の面24bは凹状の非球面からなるレンズ面240を備えている。第2レンズ25において、物体側の面25aは、凸状の非球面からなるレンズ面250を備え、像側の面25bは、凸状の非球面からなるレンズ面を備えている。このため、第4群14は、第1レンズ24の像側の非球面(レンズ面240)と第2レンズ25の物体側の非球面(レンズ面250)とが接合された接合レンズである。
【0029】
(レンズホルダ30の構成)
レンズホルダ30は、樹脂製であり、光軸L方向において、最も後側に位置する底板部39と、底板部39の外周縁から前側(物体側)に延在する筒状胴部38と、筒状胴部38の前端で径方向外側に拡径する環状のフランジ部37と、筒状胴部38より大の径をもってフランジ部37の外周縁から前側(物体側)に延在する大径の筒部36とを有している。かかるレンズホルダ30において、底板部39の後端面には赤外線フィルタ(図示せず)が保持されている。
【0030】
レンズホルダ30の筒状胴部38の内周面のうち、後側部分には第4群14の外周端部が位置決めされる段部381が形成されており、段部381によって位置決めされた第4群14の前側に、絞り91、第3群13(プラスチックレンズ23)、遮光シート93および第2群(プラスチックレンズ22)がこの順に重ねられている。レンズホルダ30の筒部36の内側には第1群11(単レンズ21)が配置されており、単レンズ21は、フランジ部37の外周側に形成された段部361によって位置決めされている。
【0031】
レンズホルダ30は、接合レンズ10に関しては、第1レンズ24および第2レンズ25のうちの一方のレンズのみと接触状態にあって、他のレンズとは非接触状態にある。本形態では、第1レンズ24の外形寸法は、第2レンズ25の外形寸法より大であることから、レンズホルダ30の筒状胴部38は、第1レンズ24のみと接触状態にあって、第2レンズ25とは非接触状態にある。より具体的には、筒状胴部38の段部381は、第1レンズ24の第2レンズ25と接合されている面24bに接しており、筒状胴部38の内周面388と第1レンズ24の外周面248との間には隙間Gが空いている。なお、本形態では、筒状胴部38の内周面388と第1レンズ24の外周面248との間では、第1レンズ24の外周面248の厚さ方向の約2/3に相当する部分に隙間Gが空いている。
【0032】
(接合レンズ10の詳細構成)
図2は、本発明を適用した接合レンズ10の説明図であり、
図2(a)、(b)、(c)は、接合レンズ10の断面図、接合レンズ10の第1レンズ24を第2レンズ25側からみた平面図、および接合レンズ10の第2レンズ25を第1レンズ24側からみた平面図である。
図3は、本発明を適用した接合レンズ10の一部を拡大して示す説明図である。なお、
図2(b)には、第2レンズ25を一点鎖線で示してある。
【0033】
図2および
図3に示すように、第4群14は、第1レンズ24の凹面と第2レンズ25の凸面とが接着剤40により接合された接合レンズ10からなる。第1レンズ24および第2レンズ25は各々が略円形の平面形状を有している。本形態では、第1レンズ24の外形寸法(直径)は、第2レンズ25の外形寸法(直径)より大である。なお、第1レンズ24および第2レンズ25はいずれも、外周面に平坦面249、259を有しており、かかる平坦面249、259は、樹脂成形時にゲートが位置する個所である。
【0034】
第1レンズ24は、第2レンズ25と接合された面24b側に、凹状のレンズ面240と、レンズ面240を外周側で囲む第1レンズ側外周領域241とを備えており、かかる第1レンズ側外周領域241は光軸Lに垂直な面である。第2レンズ25は、第1レンズ24と接合された面25a側に、凸状のレンズ面250と、レンズ面250を外周側で囲む第2レンズ側外周領域251とを備えており、かかる第2レンズ側外周領域251は光軸Lに垂直な面である。
【0035】
本形態の接合レンズ10において、第1レンズ24の第1レンズ側外周領域241には、レンズ面240を囲むように周方向に延在する凹部243が形成されている。本形態において、凹部243は、周方向で繋がって環状に形成されている。また、凹部243は、レンズ面240から径方向外側に離間した位置に形成されている。このため、第1レンズ24の第1レンズ側外周領域241には、レンズ面240側から外縁に向かって、平坦な環状の内周側領域242、環状の凹部243、および環状の外周側領域244が形成されている。
【0036】
外周側領域244は、内周側領域242と同一の高さ位置にある第1領域245を有しているとともに、かかる第1領域245より一段低い第2領域246(外周側凹部)を備えている。第2領域246は、第1レンズ側外周領域241の外縁で周方向に連続して延在する外周部分246aと、かかる外周部分から周方向の複数個所で内側に向けて突出した張出部分246bとを備えており、張出部分246bには、第1レンズ24を成形する際の脱型用の押出ピン(図示せず)が当接する円形部246cが形成されている。本形態において、第2領域246は、凹部243より浅く、円形部246cの上端面は、第1領域245より低い位置にある。
【0037】
このように構成した第1レンズ24において、凹部243は、断面が略台形形状を有しており、凹部243の内面は、内周側の斜面243a、底部243b、および外周側の斜面243cを有している。このため、凹部243は底部243bに向かって溝幅が狭まっている。
【0038】
(凸部253の構成)
図4は、本発明を適用した接合レンズ10におけるレンズ面240、250の間隔と透過偏芯ばらつきの関係を示すグラフである。
【0039】
本形態の接合レンズ10では、第1レンズ側外周領域241および第2レンズ側外周領域251のうちの一方側の外周領域には、他方側の外周領域に向けて突出して他方側の外周領域に当接する凸部253が形成されている。本形態では、第1レンズ側外周領域241および第2レンズ側外周領域251のうち、第2レンズ側外周領域251には、第1レンズ側外周領域241に向けて突出して第1レンズ側外周領域241に当接する凸部253(
図2(a)では図示せず)が形成されている。ここで、凸部253は、第2レンズ側外周領域251の外周縁、およびレンズ面250から離間した位置に形成されている。このため、第2レンズ側外周領域251は、凸部253の内周側の平坦な内周領域252を備え、凸部253の外周側に平坦な外周領域254を備えている。また、凸部253は、第1レンズ側外周領域241のうち、環状の凹部243より径方向外側の部分に当接している。
【0040】
より具体的には、凸部253は、凹部243と部分的に重なる位置に形成されているが、凹部243内には当接していないため、凸部253は、第1レンズ側外周領域241のうち、環状の凹部243より径方向外側の部分に当接している。また、凸部253は、周方向で離間する複数個所に形成されている。本形態において、凸部253は、周方向で等角度間隔な3個所に形成されている。
【0041】
かかる凸部253は、第1レンズ側外周領域241に当接することにより、レンズ面240とレンズ面250との間隔を制御している。より具体的には、第1レンズ側外周領域241と第2レンズ側外周領域251との間隔は、レンズ面240とレンズ面250との間隔より大であるが、凸部253が第1レンズ側外周領域241に当接することにより、レンズ面240とレンズ面250との間隔は3μmから20μmに設定されている。従って、接着剤40は、第1レンズ24のレンズ面240と第2レンズ25のレンズ面250との間に位置する部分の厚さが3μmから20μmである。このため、接合レンズ10における透過偏芯ばらつき(第1レンズ24のレンズ面240の中心と第2レンズ25のレンズ面250の中心との偏芯量のばらつき)が小さい。
【0042】
より具体的には、接合レンズ10を製作する際のレンズ面240とレンズ面250との間隔を3μmから30μmに変化させたときのレンズ面240、250との間隔と、透過偏芯ばらつき(標準偏差σ)との関係を検討したところ、
図4に示す結果が得られた。
【0043】
図4から分かるように、レンズ面240、250との間隔が狭い程、透過偏芯ばらつきが小さくなる傾向にあり、レンズ面240、250との間隔が20μm以下であれば、標準偏差σを9μm以下にすることができる。
【0044】
但し、レンズ面240、250との間隔が3μm未満である場合、レンズ面240、250の間に隙間や剥離が発生するおそれがあることから、本形態では、レンズ面240、250との間隔を3μm以上、20μm以下に設定してある。
【0045】
(接着剤40の構成)
図5は、本発明を適用した接合レンズ10の空間周波数とMTF(Modulation Transfer Function)との関係を示すグラフである。本形態では、接着剤40の屈折率nを適正化するにあたって、レンズ面240、250との間隔d(レンズ面240、250との間に位置する接着剤40の厚さ)を3μm、10μm、15μm、20μm、25μmに変化させるとともに、接着剤40の屈折率nを1.485〜1.420の間で変化させた際の空間周波数とMTFとの関係を調査した。なお、今回の評価において、第1レンズ24に用いたレンズ材料の屈折率は1.5847であり、第2レンズ25に用いたレンズ材料の屈折率は1.52996である。また、
図5は、今回の評価結果のうち、レンズ面240、250との間隔dを20μmとし、接着剤40の屈折率nを1.485とした場合のデータであり、実線L1は像高が0mmの位置のデータであり、点線L2は像高が1.4mmのデータであり、一点鎖線L3は像高が1.8mmのデータである。また、今回の評価では、OTF係数(Optical Transfer Function係数)が0.3(30%)まで低下するまでを許容条件とした。このため、点線L2(像高が1.4mmの位置のデータ)では、ライン数が80本/mm以下で規格(0.3倍)を下回ると規格外となり、一点鎖線L3(像高が1.8mmの位置のデータ)では、ライン数が71本/mm以下で規格(0.3倍)を下回ると規格外となる。
【0046】
今回の評価の結果、レンズ面240、250との間隔dを変化させたとき、接着剤40の屈折率nが許容される範囲は以下の条件であった。
間隔d=3μmのとき、接着剤40の屈折率n=1.485〜1.420
間隔d=10μmのとき、接着剤40の屈折率n=1.485〜1.470
間隔d=15μmのとき、接着剤40の屈折率n=1.485〜1.480
間隔d=20μmのとき、接着剤40の屈折率n=1.485〜1.480
間隔d=25μmのとき、接着剤40の屈折率n=1.485
【0047】
すなわち、レンズ面240、250との間隔dが20μmを超えると、接着剤40の屈折率nとして許容される範囲が極めて狭くなるという知見を得た。それ故、レンズ面240、250との間隔dは、
図4を参照して説明した透過偏芯の観点、および接着剤40の屈折率nの許容範囲の観点から20μm以下であることが好ましい。また、接着剤40の屈折率nについては、第1レンズ24を構成するレンズ材料の屈折率との差、および第2レンズ25を構成するレンズ材料の屈折率との差の少なくとも一方が0.05以下であることが好ましい。
【0048】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の接合レンズ10では、第2レンズ側外周領域251には、第1レンズ側外周領域241に向けて突出して第1レンズ側外周領域241に当接する凸部253が形成されているため、第1レンズ24のレンズ面240と第2レンズ25のレンズ面250との間隔を高い精度で制御することができる。このため、第1レンズ24のレンズ面240と第2レンズ25のレンズ面250との間での接着剤40の厚さを薄くすることができるので、レンズ間の偏芯が発生しにくい。また、第1レンズ24のレンズ面240と第2レンズ25のレンズ面250との間での接着剤40の厚さが薄くなりすぎることがないので、レンズ間での隙間や剥離が発生しにくい。
【0049】
また、第1レンズ24と第2レンズ25とを接合するには、第1レンズ24の側に接着剤40を塗布した後、第1レンズ24に第2レンズ25を重ねる。ここで、第1レンズ側外周領域241には、レンズ面240を囲むように周方向に延在する凹部243が形成されているため、気泡が残らないように十分な量の接着剤を塗布した場合でも、余剰の接着剤40が凹部243に溜まる。従って、接着剤40が接合レンズ10の外側に漏出しない。また、凹部243は、周方向で繋がって環状に形成されているため、周方向の全体にわたって、接着剤40のレンズ外側への漏出を防止することができる。さらに、第1レンズ側外周領域241には、凹部243よりさらに径方向外側に第2領域246(外周側凹部)が形成されているため、レンズ外側への接着剤40の漏出をさらに第2領域246によっても防止することができる。それ故、接合レンズ10をレンズホルダ30内に設ける際、外側に漏出した接着剤40の影響で、接合レンズ10がレンズホルダ30内に傾いて配置されるという事態が発生しにくい。
【0050】
また、凸部253は、第1レンズ側外周領域241のうち、凹部243より径方向外側の部分に当接している。このため、凸部253と第1レンズ側外周領域241の第1領域245との間に接着剤40が介在しないので、凸部253によって、第1レンズ24のレンズ面240と第2レンズ25のレンズ面250との間隔(第1レンズ24のレンズ面240と第2レンズ25のレンズ面250との間での接着剤40の厚さ)を高い精度で制御することができる。また、接着剤40は、凸部253より内側全体に行きわたるので、第1レンズ24のレンズ面240と第2レンズ25のレンズ面250との間での接着剤40の厚さを高い精度で制御することができる。
【0051】
また、凸部253は、第2レンズ側外周領域251から突出して第1レンズ側外周領域241に当接している。このため、第1レンズ24の側に接着剤40を塗布する後、凸部253に接着剤40が被ることがないので、凸部253と第1レンズ側外周領域241の第1領域245との間に接着剤40が介在しない。従って、凸部253によって、第1レンズ24のレンズ面240と第2レンズ25のレンズ面250との間隔(第1レンズ24のレンズ面240と第2レンズ25のレンズ面250との間での接着剤40の厚さ)を高い精度で制御することができる。
【0052】
さらに、凸部253は、周方向で離間する複数個所に形成されている。このため、凸部253を周方向の全域に形成した場合や、周方向の1個所に形成した場合に比較して、第1レンズ24のレンズ面240と第2レンズ25のレンズ面250との間隔(第1レンズ24のレンズ面240と第2レンズ25のレンズ面250との間での接着剤40の厚さ)を高い精度で制御することができる。すなわち、凸部253を周方向の全域に形成すると、周方向の全域にわたって高い精度とする必要があるが、凸部253を周方向で離間する複数個所に形成した構成であれば、周方向の特定個所(凸部253が形成されている個所)のみを高い精度とすればよい。また、凸部253を周方向の1個所とすると、第1レンズ24と第2レンズ25とが傾いて接合されるおそれがあるが、凸部253を周方向で離間する複数個所に形成した構成であれば、かかる傾きが発生しにくい。
【0053】
また、接着剤40は、第1レンズ24のレンズ面240と第2レンズ25のレンズ面250との間に位置する部分の厚さが3μm以上であるため、レンズ間での隙間や剥離が発生しにくい。また、接着剤40は、第1レンズ24のレンズ面240と第2レンズ25のレンズ面250との間に位置する部分の厚さが20μm以下であるため、第1レンズ24と第2レンズ25との間に偏芯が発生しにくい。また、接着剤40は、第1レンズ24のレンズ面240と第2レンズ25のレンズ面250との間に位置する部分の厚さが20μm以下であるため、光学特性に影響を防止できる接着剤40の屈折率の許容範囲が広いという利点もある。より具体的には、接着剤40の屈折率と第1レンズ24を構成するレンズ材料の屈折率との差、あるいは接着剤40の屈折率と第2レンズ25を構成するレンズ材料の屈折率との差が0.05以下であればよく、かかる接着剤40であれば、接着剤40の屈折率とレンズ材料の屈折率との差が光学特性に影響を及ぼしにくい。
【0054】
また、レンズホルダ30は、接合レンズ10に関しては、第1レンズ24のみと接触状態にあって、第2レンズ25とは非接触状態にある。また、筒状胴部38の内周面と第1レンズ24の外周面248との間には隙間Gが空いている。このため、環境温度の変化に伴って、レンズホルダ30や接合レンズ10に膨張や収縮が発生しても、接合レンズ10の接合面(接着剤40)に大きな応力が加わらないので、剥離等の問題が発生しにくい。環境温度の変化に伴って、レンズホルダやレンズに膨張や収縮が発生しても接合レンズでの剥離等の問題が発生しにくい。
【0055】
[他の実施の形態]
上記接合レンズ10に用いる接着剤40としては、弾性を有しているものを用いることが好ましく、かかる構成によれば、第1レンズ24のレンズ材料の熱膨張係数と第2レンズ25のレンズ材料の熱膨張係数とが相違している場合でも、環境温度が変化したときの剥離が発生しにくい。
【0056】
上記接合レンズ10では、凸部253を第2レンズ25側に設けたが、第1レンズ側外周領域241に凸部を設け、凸部が第2レンズ側外周領域251に当接する構造を採用してもよい。
【0057】
上記実施の形態においては、4群5枚のレンズ構成を示したが、5群6枚等、いずれの構成の撮像レンズおよびレンズユニットに本発明を適用してもよい。