(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6118143
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】廃棄物の発酵分解装置
(51)【国際特許分類】
B09B 3/00 20060101AFI20170410BHJP
B01J 19/08 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
B09B3/00 DZAB
B01J19/08 C
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-51157(P2013-51157)
(22)【出願日】2013年3月14日
(65)【公開番号】特開2014-176785(P2014-176785A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2016年2月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】512051859
【氏名又は名称】愛和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085257
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 有
(74)【代理人】
【識別番号】100103126
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 修
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 久美
【審査官】
金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−230082(JP,A)
【文献】
特開2002−282822(JP,A)
【文献】
特開2000−246222(JP,A)
【文献】
特開2000−107733(JP,A)
【文献】
特開2011−230083(JP,A)
【文献】
特開2002−356391(JP,A)
【文献】
特開2008−284465(JP,A)
【文献】
特開2000−301112(JP,A)
【文献】
特開2006−297283(JP,A)
【文献】
特開平10−309559(JP,A)
【文献】
実開平02−125942(JP,U)
【文献】
特開2004−017026(JP,A)
【文献】
特開平07−328593(JP,A)
【文献】
特開平09−085213(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/037600(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00− 5/00
F26B 1/00−25/22
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撹拌部材が回転自在に収納された混合容器と、活性酸素種を含む空気を生成する電子化装置とを備えた廃棄物の発酵分解装置であって、前記混合容器の側壁には前記電子化装置からの空気供給管が接続され、この空気供給管が接続された側壁の内側には分気板が設けられ、この分気板の上端部は混合容器の側壁に溶接され、また分気板は下方に向かって徐々に混合容器の側壁との間隔が大きくなり、混合容器の側壁との間隔が大きくなった下端部が混合容器内に活性酸素種を含む空気を送り込む開口部とされ、また前記攪拌部材の回転方向を基準として、上流側に前記分気板の上端の溶接部が位置し、下流側に前記分気板の下端が位置する側に分気板が取付けられ、更に前記分気板の長さは混合容器の長さと略等しくされ、前記開口部は混合容器の全長に亘るスリット状の開口部であることを特徴とする廃棄物の発酵分解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜屑や木屑などを汚泥とともに活性酸素を利用して発酵分解する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生ゴミなどを好気性分解発酵菌を用いて分解し、コンポスト(堆肥)に変化させる装置として、特許文献1及び特許文献2に開示される装置が知られている。
【0003】
特許文献1に開示される装置は、箱型容器内に好気性分解発酵菌からなるバイオ菌床槽を設け、このバイオ菌床槽に上方から生ごみを投入するとともに、箱型容器内に配置した撹拌羽を回転させることで発酵を促進する構造になっている。
【0004】
また特許文献2には傾斜したコンベアを備えた走行可能な切替し装置を用いた堆肥製造装置が開示されている。この堆肥製造装置は生ゴミなどの堆肥原料を前記切替し装置のコンベアによって少しづつ移動させながら撹拌することで発酵を完了するものである。
【0005】
上記の特許文献1または2の処理装置における処理対象が野菜屑などであれば、短時間で発酵分解を完了させることができるが、もみ殻や木屑などのセルロースの含有量が多いものは処理時間が長くかかる。
【0006】
そこで、特許文献3には活性酸素を利用した有機物(野菜屑や木屑など)を低温(20〜60℃)で加水分解する装置が提案されている。
この装置は野菜屑や木屑などを投入するドラム状容器内に撹拌羽を設けるとともに、容器の底部に多孔管を配置し、容器外に設置した電子化装置によって発生した活性酸素を含む空気を前記多孔管から容器内に噴出させ、容器内の野菜屑や木屑などを加水分解する構造になっている。
【0007】
上記の電子化装置の構造は特許文献4に開示されている。即ち、電子化装置は、高電圧を流した放電針から電子を発生させる放電管の先端に電磁コイルを巻き付け、その中心に空気を流し込むことで空気中の酸素分子を励起させ、一重項酸素などの活性酸素種を生成するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−155090号公報
【特許文献2】特開2001−302380号公報
【特許文献3】実用新案登録第3150628号公報
【特許文献4】実用新案登録第3133388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献3及び4に開示されるように、酸素分子に磁力線を作用することで一重項酸素を生じさせ、この一重項酸素に遊離電子を加えることで二重項酸素即ちスーパーオキシド(・O
2−)を生成し、このスーパーオキシド(・O
2−)に水素を加えることで過酸化水素(H
2O
2)とし、この過酸化水素(H
2O
2)から酸化力が極めて強いヒドロキシラジカル(HO・)を生成し、このヒドロキシラジカル(HO・)によって有機物中の炭素原子と水素原子間の結合(C−H)を切断することで有機物を分解することで、今まで分解しにくかった木屑なども短時間のうちに分解することができる。
【0010】
しかしながら、特許文献3に開示される装置にあっては、ドラム状容器の底部に空気の電子化装置とつながる多孔管を配置し、しかも多孔管に形成される孔は上方に向かって開口している。このため、多孔管の孔が野菜屑や木屑で塞がり易く、メンテナンスが面倒となる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明に係る廃棄物の発酵分解装置は、撹拌部材が回転自在に収納された混合容器と、活性酸素種を含む空気を生成する電子化装置とを備え、前記混合容器の側壁には前記電子化装置からの空気供給管が接続され、この空気供給管が接続された側壁の内側には分気板が設けられ、この分気板の上端部は混合容器の側壁に溶接され、また分気板は下方に向かって徐々に混合容器の側壁との間隔が大きくなり、混合容器の側壁との間隔が大きくなった下端部が混合容器内に活性酸素種を含む空気を送り込む開口部となった構造である。
【0012】
前記分気板は混合容器の側壁の内側に配置されるため、攪拌部材と干渉しないようにすることが必要になる。このためには分気板の形状を円筒の一部をなす湾曲形状にするとともに、攪拌部材の回転方向を基準として上流側に前記分気板の上端部が溶接され、下流側に前記分気板の下端が位置するように分気板を取付けることが好ましい。
【0013】
また、混合容器の側壁と分気板との溶接部はゴミが引っかからないように、なるべく段差が生じないように面一に接続することが好ましい。
【0014】
また、混合容器の側壁内側面と分気板の外側面との間に形成される空気の供給路内にゴミが入って空気の供給路を塞ぐことがないようにするために、空気の供給路は攪拌部材の回転方向に沿って形成され、且つ下端の開口部は混合容器の底部よりも若干高い位置となるのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る廃棄物の発酵分解装置によれば、混合容器内に活性酸素種を含む空気を送り込む構造が、分気板を混合容器の側壁の内側に取り付け、この分気板と混合容器の側壁との間を活性酸素種を含む空気の供給路とし、分気板の下端と混合容器の側壁との間に形成されるスリット状の開口部から、活性酸素種を含む空気を混合容器内に噴出するようにしたので、特許文献3に開示された多孔パイプを用いる場合と比較して、均一且つ大量に活性酸素種を含む空気を混合容器内に送り込むことができる。したがって、反応処理時間を大幅に短縮することができる。
【0016】
【0017】
また本発明に係る発酵分解装置は、異臭の発生が少なく、装置の管理・維持も簡単で、コスト的にも有利である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る発酵分解装置を組み込んだ廃棄物処理システムの全体平面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
廃棄物処理システムは
図1の右端を原料の受入れ部1とし、この受入れ部1に隣接して発酵分解部2が設けられ、この発酵分解部2に隣接して発酵熟成ライン3が設けられ、この発酵熟成ライン3に隣接する左端を堆肥の取出し部4としている。
【0020】
前記発酵分解部2には本発明に係る発酵分解装置10を2基づつ2列に分けて配置している。
【0021】
発酵分解装置10は基台11に混合容器12が固定されている。この混合容器12は底部を断面U字状とし、上面に生ゴミや汚泥などの原料投入口13が形成され、この原料投入口13を蓋14で閉じている。
【0022】
また混合容器12の中心には水平軸15が挿通され、この水平軸15の両端が基台11に設けられた軸受16,16に回転自在に支持されている。また基台11にはモータ17が固設され、このモータ17の駆動軸に取付けたギヤ18と前記水平軸15に取付けたギヤ19間にチェーン20を掛け渡すことで水平軸15が回転せしめられる。
【0023】
前記水平軸15には水平軸15と一体的に回転する
図6に示す形状の撹拌部材21が取り付けられている。この撹拌部材21は水平軸15に一端が連結するアーム22とこのアーム22の外端部に固定されるブレード23からなる。尚、撹拌部材21の形状は図示したものに限定されない。
【0024】
また、混合容器12の底部には処理後の原料の取出し口24が形成され、この取出し口24を開閉する蓋25を動作せしめるシリンダユニット26が混合容器12の側壁外側面に取付けられている。
【0025】
前記原料の取出し口24の下方には発酵分解された原料を搬送するためのスクリューフィーダ27が配置され、このスクリューフィーダ27の端部には搬送されてきた原料を原料落下口28まで搬送するコンベア装置29が配置されている。
【0026】
一方、発酵分解装置10の近傍には活性酸素種を含む空気を生成する電子化装置30が配置され、混合容器12の側面に電子化装置30からの空気供給管が連結されるジョイント31が取付けられている。
【0027】
前記ジョイント31が取付けられた混合容器12の側面の内側には分気板32が設けられている。この分気板32の形状は混合容器12の底部側面と同様の湾曲形状をしている。そして、分気板32の上端は混合容器12の側壁内側面に溶接され、分気板32の下端部は混合容器12の底部よりも若干高い位置まで伸び、且つ下端部において最も分気板32と混合容器12の側壁内側面との間隔が大きくなるように分気板32と混合容器12の側壁内側面との間にスペーサ33を設けている。
【0028】
前記分気板32の長さは混合容器12の長さと略等しくされ、したがって、混合容器12の全長に亘って幅が例えば10mm程度のスリット状の開口部34が形成され、この開口部34から前記電子化装置30で生成されたヒドロキシラジカル(HO・)などの活性酸素種を含む空気が混合容器12内に送り込まれる。
【0029】
ここで、混合容器12内で撹拌されている原料が前記開口部34に入らないようにするには、撹拌部材21の回転方向を基準として、上流側に分気板32の上端の溶接部が位置し、下流側に分気板32の下端が位置する側に分気板32を取付けるようにする。
【0030】
以上において、原料として例えば下水汚泥(消化汚泥及び生汚泥)と木材チップとを100:40の割合で混合したものを用意し、これを混合容器12内に投入し、同時に電子化装置30から活性酸素種を含んだ空気を約8m
3/分(混合容器の容量が21m
3の場合)で供給する。
【0031】
混合容器12内では汚泥に含まれる好気性バクテリアによる分解の他に、供給された空気中に含まれるスーパーオキシド(・O
2−)、過酸化水素(H
2O
2)或いはヒドロキシラジカル(HO・)などの活性酸素種による有機物の分解が進行する。
【0032】
上記の混合容器12内での処理によりある程度原料の発酵分解が進行したならば、シリンダユニット26の作動で蓋25を移動し、混合容器12の底部の原料の取出し口24から原料をスクリューフィーダ27内に移し、スクリューフィーダ27またはベルトコンベアにより原料をコンベア装置29まで送り出し、コンベア装置29によって原料落下口28から発酵分解が進んだ原料を落下せしめる。
【0033】
原料落下口28にはトラクターが待ち受けており原料を受け取る。そして、受け取った原料を隣接する発酵熟成ライン3の床に積み上げる。発酵熟成ライン3の床に積み上げられた原料は移送装置40によって所定量づつ下流側(
図1において左側)へ送られる。
【0034】
即ち、移送装置40は斜めに傾斜したコンベア装置41を備えると共に発酵熟成ライン3に沿って設けられたレール42に走行可能に取り付けられている。
そして、発酵熟成ライン3の床に積み上げた原料はコンベア装置41によって下流側に送られると共に上方から床面上に落下せしめられる。これにより原料は撹拌され、更に発酵と分解が進む。
【0035】
発酵熟成ライン3に沿った原料の移動速度は3m/日程度であり、20日程度で熟成し堆肥となって取出し部4に到達する。堆肥の取出し部4では発酵分解が完了した原料を粒度選別機43にかけ、堆肥として不都合な大きな粒子が混じっている場合には取り除く。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明に係る発酵分解装置は、野菜屑などの生ゴミに限らず、木屑等が含まれる廃棄物も分解することができ、広い用途で適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
1…原料の受入れ部、2…発酵分解部、3…発酵熟成ライン、4…堆肥の取出し部、10…発酵分解装置、11…基台、12…混合容器、13…原料投入口、14…蓋、15…水平軸、16…軸受、17…モータ、18、19…ギヤ、20…チェーン、21…撹拌部材、22…アーム、23…ブレード、24…原料の取出し口、25…蓋、26…シリンダユニット、27…スクリューフィーダ、28…原料落下口、29…コンベア装置、30…電子化装置、31…ジョイント、32…分気板、33…スペーサ、34…開口部、40…移送装置、41…コンベア装置、42…レール、43…粒度選別機。