(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記二値パターン画像の取得は、複数の所定角度の各々について、該所定角度方向に延びる局所シワテクスチャをそれぞれ表す複数の二値パターン画像から、前記肌輝度画像に写るシワの方向性に対応する二値パターン画像を選択する、
請求項1に記載のシワ分析方法。
前記線分長情報として抽出される平均線分画素数とシワ状態が定量化されたシワ指標値との相関関係に基づいて、前記抽出された平均線分画素数に対応するシワ指標値を算出する、
ことを更に含む請求項1から7のいずれか1項に記載のシワ分析方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に挙げる各実施形態はそれぞれ例示であり、本発明は以下の各実施形態の構成に限定されない。
【0013】
[第1実施形態]
〔ハードウェア構成〕
図1は、第1実施形態におけるシワ分析装置10のハードウェア構成例を概念的に示す図である。第1実施形態におけるシワ分析装置10は、いわゆるコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)2、メモリ3、入出力インタフェース(I/F)4等を有する。メモリ3は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスク、可搬型記憶媒体等である。
【0014】
入出力I/F4は、入力部7、出力部9、他のコンピュータや他の装置と通信を行う通信装置等と接続される。入力部7は、キーボード、マウス等のようなユーザ操作の入力を受け付ける装置である。出力部9は、ディスプレイ装置やプリンタ等のようなユーザに情報を提供する装置である。なお、シワ分析装置10のハードウェア構成は制限されない。
【0015】
〔動作例(シワ分析方法)〕
図2は、第1実施形態におけるシワ分析装置10の動作例を示すフローチャートである。以下、
図2を用いて、第1実施形態におけるシワ分析方法を説明する。
シワ分析装置10により実行されるシワ分析方法は、
図2に示されるように、肌輝度画像を取得する工程(S21)、二値パターン画像を取得する工程(S22)、相関画像を生成する工程(S23)、二値化工程(S24)、細線化工程(S25)、情報抽出工程(S26)を含む。以下、これら各工程について詳述する。
【0016】
工程(S21)では、シワ分析装置10は、分析対象部位の肌輝度画像を取得する。分析対象部位には、例えば、見た目年齢を左右するシワが生じ易い目の下や目尻の所定範囲が選ばれる。但し、分析対象部位は制限されない。肌輝度画像は、肌の分析対象部位が写る画像であり、画素毎に明暗情報を持つ画像である。肌輝度画像は、一般的なカメラで撮像されたカラー画像がグレースケール化されることで得られるグレースケール画像であってもよい。また、肌輝度画像は、JPEG(Joint Photographic Experts Group)形式、GIF(Graphic Interchange Format)形式等の画像ファイルとして取得されてもよいし、各画素の明暗情報を羅列したデータとして取得されてもよい。本実施形態は、肌輝度画像のデータ形式を制限しない。シワ分析装置10は、当該肌輝度画像を、可搬型記録媒体、他の装置等から入出力I/F4を経由して取得することができる。
【0017】
工程(S22)では、シワ分析装置10は、局所シワテクスチャを表す二値パターン画像を取得する。シワ分析装置10は、二値パターン画像を自ら生成してもよいし、予め保持するメモリ3から取得することもできるし、可搬型記録媒体、他の装置等から入出力I/F4を経由して取得することもできる。二値パターン画像は、各画素の画素値が黒又は白に対応する値に設定される画像であり、局所シワテクスチャとしてシワに相当する線状の模様を持つ画像である。
【0018】
図3は、二値パターン画像の例を示す図である。
図3の例では、二値パターン画像は、縦5画素、横5画素の画像サイズを持ち、左上から右下へ延びる線状の模様を持つ。線状の模様は、
図3の例に制限されない。例えば、
図3の例では、線状模様が左上から右下へ延びるが、線状模様は上下方向(縦方向)であってもよいし、左右方向(横方向)であってもよい。また、二値パターン画像のサイズは、
図3の例よりも小さくてもよいし、大きくてもよい。また、二値パターン画像は、複数の線状模様を持つようにしてもよい。但し、二値パターン画像が表す線状模様が、肌輝度画像から抽出されるシワテクスチャに相当するため、当該線状模様が、局所シワテクスチャ、即ち、シワ一本分に相当するように、肌輝度画像に写る分析対象部位の大きさや肌輝度画像の画像サイズ等に応じて、二値パターン画像のサイズが決定されることが望ましい。
【0019】
また、二値パターン画像は、後述する相関画像にシワテクスチャ(シワ成分)を顕在化させるために用いられるため、二値パターン画像が持つ線状の模様の方向と、肌輝度画像に写るシワの方向とが一致しているのが望ましい。そこで、二値パターン画像が予め準備されている場合には、シワの方向性が二値パターン画像が持つ線状の模様の方向と合うように分析対象部位が撮像されることにより、肌輝度画像が生成されることが望ましい。
【0020】
本実施形態における二値パターン画像では、
図3に示されるように、黒で線状模様が示される。これは、肌輝度画像に写るシワテクスチャが、肌表面のくぼみに由来するため、一般的には、暗い輝度値で表わされるからである。よって、肌輝度画像においてシワテクスチャが明るい輝度値で表わされる場合、白で線状模様が示される二値パターン画像が利用され得る。以降の説明では、シワテクスチャが暗い輝度値で表われる肌輝度画像を対象として説明する。
【0021】
工程(S23)では、シワ分析装置10は、(S22)で取得された二値パターン画像を、(S21)で取得された肌輝度画像上でスライドさせながら、二値パターン画像と肌輝度画像との相関値を逐次算出することにより、相関画像を生成する。シワ分析装置10は、相関画像の生成において、算出された相関値を0以上255以下の画素値に線形的に割り当てる。結果、生成された相関画像の各画素は、算出された相関値に対応する画素値をそれぞれ持つ。これにより、二値パターン画像と相関が高い肌輝度画像内の領域から得られる画素値は相対的に明るい値となり、その相関が低い当該領域から得られる画素値は相対的に暗い値となる。このとき、0以下の相関値を示す部分は、シワ以外の肌テクスチャを表すため、その部分の画素値が0に設定される。二値パターン画像は局所シワテクスチャを表すため、相関画像では、シワ成分が明るい輝度で表わされ、シワ成分以外が暗い輝度で表わされる。但し、相関値と画素値との関係を上述の関係とは逆にし、シワ成分が暗い輝度で表わされ、シワ成分以外が明るい輝度で表わされる相関画像が生成されてもよい。
【0022】
図4は、相関画像の生成過程を示す図である。
図4に示されるように、シワ分析装置10は、二値パターン画像を肌輝度画像上で1画素ずつスライドさせ、二値パターン画像と、肌輝度画像の二値パターン画像と重なる領域との相関値を逐次算出し、算出された相関値を画素値に逐次変換する。シワ分析装置10は、この相関値に対応する画素値を各画素にそれぞれ設定していくことにより、相関画像を生成する。シワ分析装置10は、例えば、次の(式1)を用いて、相関値を算出する。但し、本実施形態は、相関値の算出式を以下の式に制限しない。
【0023】
【数1】
Rは相関値を示す。X
iは、肌輝度画像の二値パターン画像と重なる領域内の位置iの画素の値を示す。上線付きXは、肌輝度画像の二値パターン画像と重なる領域内の平均画素値を示す。Y
iは、二値パターン画像内の位置iの画素の値を示す。上線付きYは、二値パターン画像内の平均画素値を示す。Sは二値パターン画像の画像サイズ(画素数)を示す。
【0024】
工程(S24)では、シワ分析装置10は、(S23)で生成された相関画像を二値化し、二値化画像を生成する。シワ分析装置10は、二値化閾値を、例えば、判別分析法を用いて決定する。二値化閾値は、モード法等、他の方法により決定されてもよいし、予め決められメモリ3に保持されてもよい。
【0025】
工程(S25)では、シワ分析装置10は、(S24)で得られた二値化画像を細線化し、細線化画像を生成する。具体的には、シワ分析装置10は、二値化画像に表われる線状模様の線幅が1画素となるように、線状模様を示す画素値(白又は黒)を持つ画素の値を反転(背景化)していく。細線化アルゴリズムには、Hilditch、Deutsch、Zhang Suen、田村、鶴岡等の手法が利用されればよい。
【0026】
図5は、相関画像が二値化及び細線化される過程を示す図である。上述の工程(S24)及び(S25)が実行されることにより、相関画像が二値化画像に変換され、二値化画像が細線化画像に変換される。
【0027】
工程(S26)では、シワ分析装置10は、(S25)で得られた細線化画像から線分長情報を抽出する。線分長情報は、細線化画像に表われる線分の長さの特徴を示す情報である。ここで、細線化画像に表われる線分は、線分を示す画素値を持つ線成分画素の集合であって、8方向の少なくとも1つで隣接する線成分画素同士を集めた画素集合である。この線分の長さは、線分を形成する線成分画素の数(以降、線分画素数と表記する)で表すこともできるし、その線分の末端に位置する2つの線成分画素間の距離(以降、線分距離と表記する)で表すこともできる。
【0028】
よって、シワ分析装置10は、細線化画像から、上記線分長情報として、平均線分画素数、平均線分距離、代表線分数などを抽出することができる。平均線分画素数は、細線化画像に表われる全線分における上記線分画素数の平均であり、平均線分距離は、細線化画像に表われる全線分における上記線分距離の平均である。また、代表線分数は、例えば、所定閾値より大きい上記線分画素数又は上記線分距離を持つ線分の数である。本実施形態では、上記線分長情報が、細線化画像に表われる線分の長さの特徴を示す情報であればよく、その線分長情報の具体的内容を制限しない。
【0029】
図6は、線分長情報の抽出を概念的に示す図である。
図6には、或る1つの線分の長さが算出されている様子が例示されている。シワ分析装置10は、
図6に示されるような細線化画像から、上述のような線分(線成分画素の集合)を検出し、検出された各線分の長さをそれぞれ計算し、計算された各線分の長さに基づいて、当該線分長情報を算出する。
【0030】
〔処理構成〕
図7は、第1実施形態におけるシワ分析装置10の処理構成例を概念的に示す図である。第1実施形態におけるシワ分析装置10は、画像取得部11、パターン取得部12、相関処理部13、二値化部14、細線化部15、情報抽出部16、出力処理部17等を有する。これら各処理部は、例えば、CPU2によりメモリ3に格納されるプログラムが実行されることにより実現される。また、当該プログラムは、例えば、CD(Compact Disc)、メモリカード等のような可搬型記録媒体やネットワーク上の他のコンピュータから入出力I/F4を介してインストールされ、メモリ3に格納されてもよい。
【0031】
シワ分析装置10は、
図7に示される各処理部を用いて、上述のシワ分析方法を実行することができる。即ち、シワ分析装置10は、
図2に示されるように動作することができる。この場合、画像取得部11は工程(S21)を実行し、パターン取得部12は工程(S22)を実行し、相関処理部13は工程(S23)を実行し、二値化部14は工程(S24)を実行し、細線化部15は工程(S25)を実行し、情報抽出部16は工程(S26)を実行する。
【0032】
出力処理部17は、情報抽出部16により抽出された線分長情報の出力処理を行う。例えば、出力処理部17は、線分長情報を出力部9に出力させる。この出力は、画面表示、印刷、音声出力等である。また、出力処理部17は、線分長情報のデータを入出力I/F4を介して、可搬型記録媒体に格納(出力)してもよいし、他の装置に送信(出力)してもよい。このように、本実施形態は、線分長情報の出力形態を制限しない。
【0033】
シワ分析装置10は、分析対象部位の肌輝度画像を、シワ分析装置10自身で予め保持していてもよいし、シワ分析装置10自身で生成してもよいし、他のコンピュータや可搬型記録媒体等から入出力I/F4を介して取得してもよい。
【0034】
〔第1実施形態における作用及び効果〕
上述のように、第1実施形態では、分析対象部位が写る肌輝度画像と、局所シワテクスチャを表す二値パターン画像との相関値に対応する画素値を持つ相関画像が生成され、この相関画像が二値化及び細線化される。そして、その細線化画像から線分長情報が抽出される。抽出される線分長情報は、細線化画像に表われる線分の長さの特徴を示す情報である線分長情報が抽出される。
【0035】
二値パターン画像は局所シワテクスチャを表すため、上記相関画像により、分析対象部位に含まれるシワテクスチャが顕在化され、その相関画像に対する二値化及び細線化により、その顕在化されたシワテクスチャが細線化画像内において線分として表される。よって、細線化画像から抽出される線分長情報は、分析対象部位に含まれるシワの長さの特徴を示す情報となる。
【0036】
本発明者らは、シワの長さがシワ状態の1つの指標となると考え、上述のような画像解析で得られる線分長情報によりシワ状態を定量化できることを見出した。そして、本発明者らは、実施例として後述するように、当該線分長情報とシワ状態を定量化したシワ指標値との間に相関関係が存在することを検証した。ここで、シワ状態とは、シワが多い又は少ないと視認させる肌のテクスチャの状態を意味し、シワ感と表現することもできる。
【0037】
従って、第1実施形態によれば、複雑な物理モデルや特殊な設備を用いることなく、簡易な画像処理により、シワ状態が定量化されたシワ指標値の1つ(線分長情報)を抽出することができる。
【0038】
[第2実施形態]
以下、第2実施形態におけるシワ分析装置10及びシワ分析方法について、第1実施形態と異なる内容を中心に説明する。第2実施形態では、肌輝度画像を角度補正する処理が新たに追加される。以下、第1実施形態と同じ内容の説明は、適宜省略される。第2実施形態におけるシワ分析装置10のハードウェア構成は、
図1に示される第1実施形態と同じである。
【0039】
〔動作例(シワ分析方法)〕
以下、第2実施形態におけるシワ分析方法を
図8を用いて説明する。
図8は、第2実施形態におけるシワ分析装置10の動作例を示すフローチャートである。
図8では、
図2と同じ工程については同じ符号が付されている。
シワ分析装置10により実行される第2実施形態におけるシワ分析方法は、
図2に示される第1実施形態の方法に加えて、工程(S51)及び(S52)を更に含む。
【0040】
工程(S51)では、シワ分析装置10は、肌輝度画像に写るシワの方向性に関する角度情報を取得する(S51)。肌輝度画像に写るシワの方向性に関する角度情報は、入力画面等に基づいて入力部7をユーザが操作することにより入力されてもよい。例えば、シワ分析装置10は、ユーザに、角度の数値を入力させる入力画面を出力することができる。また、シワ分析装置10は、元の肌輝度画像を出力部9に表示させ、ユーザによる、その肌輝度画像を回転させる操作を検出し、その検出された操作から当該角度情報を取得することもできる。但し、肌輝度画像に写るシワの方向性に関する角度情報の取得手法は制限されない。
【0041】
シワ分析装置10は、肌輝度画像に対してフーリエ変換を適用することにより、角度毎のパワースペクトルの分布情報を算出し、この分布情報から、上記角度情報を取得することもできる。肌輝度画像に適用されるフーリエ変換としては、例えば、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform(FFT))や離散フーリエ変換(Discrete Fourier Transform(DFT))等が周知である。シワ分析装置10は、肌輝度画像の縦方向及び横方向にそれぞれフーリエ変換(2次元フーリエ変換)を適用することで、パワースペクトルを算出し、このパワースペクトルから角度毎のパワースペクトルの分布情報を抽出する。抽出される分布情報は、0度より大きくかつ180度未満の範囲に設定されればよい。肌輝度画像に写るシワの方向性が検出できればよく、180度より大きく360度未満の角度範囲から得られる情報は、0度より大きくかつ180度未満の角度範囲の情報と同等と考えることができるからである。
【0042】
例えば、シワ分析装置10は、当該分布情報の中の0度方向及び90度方向の情報を除いた分布情報から、ピークを示す角度を上記角度情報として取得すればよい。0度方向(180度方向を含む)及び90度方向(270度方向を含む)の成分は、画像の縦横成分に対応し、画像を周期信号として計算するフーリエ変換の特性上、シワの状態に関わらず高い値を示すため、それらの角度方向の成分は対象外とされても問題ない。
【0043】
図9は、肌輝度画像から角度毎のパワースペクトルの分布情報を算出する例を概念的に示す図である。
図9では、分布情報として角度ヒストグラムが示されている。また、
図9の例では、分布情報の角度間隔が1度に設定され、90度を除く1度から179度までの角度毎のパワースペクトルの分布情報が算出されている。
図9の例に示される分布情報(角度ヒストグラム)によれば、125度近辺でパワースペクトルのピークが発生しているため、例えば、125度が肌輝度画像に写るシワの方向性を示す角度情報として取得される。
【0044】
工程(S52)では、シワ分析装置10は、(S51)で取得された角度情報に基づいて、(S21)で取得された肌輝度画像を角度補正する。言い換えれば、シワ分析装置10は、肌輝度画像に写るシワの方向性に基づいて、肌輝度画像を角度補正する。具体的には、シワ分析装置10は、(S51)で取得された角度情報が示すシワの方向性が、二値パターン画像により表わされる局所シワテクスチャ(線状の模様)の方向性と合うように、肌輝度画像を角度補正する。
【0045】
図10は、肌輝度画像の角度補正の過程を示す図である。
図10に示されるように、シワ分析装置10は、肌輝度画像に写るシワの方向が所定角度方向を向くように、肌輝度画像を回転させる。
図9の例では、所定角度方向が左上と右下とを結ぶ斜め45度方向に設定されており、シワの方向性が左上と右下とを結ぶ斜め約30度方向を示していた元の肌輝度画像が、約15度右廻りに回転されている。また、
図9の例では、回転後の画像から、無回転の正方形の領域が切り出され、その領域が正規化画像として以後の処理で用いられる。
【0046】
工程(S23)において、シワ分析装置10は、(S52)で角度補正された肌輝度画像から、第1実施形態と同様に、相関画像を生成する。
【0047】
〔処理構成〕
図11は、第2実施形態におけるシワ分析装置10の処理構成例を概念的に示す図である。第2実施形態におけるシワ分析装置10は、第1実施形態の構成に加えて、角度情報取得部21及び角度補正部22を更に有する。角度情報取得部21及び角度補正部22についても、他の処理部と同様に、CPU2によりメモリ3に格納されるプログラムが実行されることにより実現される。
【0048】
シワ分析装置10は、
図11に示される各処理部を用いて、上述のシワ分析方法を実行することができる。即ち、シワ分析装置10は、
図8に示されるように動作することができる。この場合、角度情報取得部21は工程(S51)を実行し、角度補正部22は工程(S52)を実行する。また、角度情報取得部21は、工程(S51)として、肌輝度画像に対してフーリエ変換を適用することにより、角度毎のパワースペクトルの分布情報を算出することもできる。相関処理部13は、角度補正部22により角度補正された肌輝度画像と、パターン取得部12により取得された二値パターン画像とを用いて、相関画像を生成する。他の各処理部は、第1実施形態と同様である。
【0049】
〔第2実施形態における作用及び効果〕
上述のように、第2実施形態では、肌輝度画像に写るシワの方向性に基づいて、肌輝度画像が角度補正され、角度補正された肌輝度画像から相関画像が生成される。このように、第2実施形態によれば、肌輝度画像に写るシワの方向性と、予め準備されている二値パターン画像の局所シワテクスチャの方向性とが合わない場合でも、各方向性が合うように、肌輝度画像が角度補正されるため、肌輝度画像の撮像方法の制限をなくすことができる。即ち、シワの方向性を全く考慮せず、分析対象部位を撮像することで、肌輝度画像が生成されたとしても、第2実施形態によれば、シワ状態の1指標値となる線分長情報を高精度に抽出することができる。
【0050】
更に、肌輝度画像に写るシワの方向性を示す角度情報は、肌輝度画像を画像分析することにより、取得することもできる。具体的には、肌輝度画像に対してフーリエ変換を適用することにより、角度毎のパワースペクトルの分布情報が算出され、この分布情報から当該角度情報を取得することができる。このように画像分析を用いることで、肌輝度画像の角度補正に用いる角度情報を高精度に取得することができ、ひいては、線分長情報を高精度に抽出することができる。
【0051】
[第3実施形態]
以下、第3実施形態におけるシワ分析装置10及びシワ分析方法について、上述の各実施形態と異なる内容を中心に説明する。第3実施形態では、肌輝度画像の平滑化処理及び差分画像の算出処理並びに微小領域画素の除去処理が新たに追加される。以下には、上述の第2実施形態に、肌輝度画像の平滑化処理及び差分画像の算出処理並びに微小領域画素の除去処理が付加される形態を、第3実施形態として説明する。但し、これら新たな処理は、第1実施形態に追加されてもよい。以下、第1実施形態及び第2実施形態と同じ内容の説明は、適宜省略される。第3実施形態におけるシワ分析装置10のハードウェア構成は、
図1に示される第1実施形態と同じである。
【0052】
〔動作例(シワ分析方法)〕
以下、第3実施形態におけるシワ分析方法を
図12を用いて説明する。
図12は、第3実施形態におけるシワ分析装置10の動作例を示すフローチャートである。
【0053】
シワ分析装置10により実行される第3実施形態におけるシワ分析方法は、第2実施形態に加えて、工程(S61)、工程(S62)及び工程(S63)を更に含む。但し、
図12は、第2実施形態の方法に、第3実施形態における新たな工程(S61)、(S62)及び(S63)を追加した例を示すが、新たな工程(S61)、(S62)及び(S63)は、
図2に示される第1実施形態の方法に追加されることもできる。
図12では、
図2及び
図8と同じ工程については同じ符号が付されている。
【0054】
工程(S61)において、シワ分析装置10は、(S21)で取得された肌輝度画像に対して平滑化フィルタを適用する。平滑化フィルタとは、隣接する画素の輝度値の分布を滑らかにするフィルタであり、移動平均フィルタ、加重平均フィルタ、ガウシアンフィルタ等が存在する。本実施形態では、例えば、ガウシアンフィルタが利用される。
【0055】
工程(S62)において、シワ分析装置10は、(S61)で平滑化された肌輝度画像と、(S21)で取得された肌輝度画像との差分画像を算出する。これにより、工程(S52)では、シワ分析装置10は、(S62)で算出された差分画像に対して角度補正を行う。但し、(S61)及び(S62)は、工程(S52)の後に実施されてもよい。この場合、シワ分析装置10は、角度補正された肌輝度画像に対して平滑化フィルタを適用する。
【0056】
工程(S63)において、シワ分析装置10は、(S24)で生成された二値化画像において、シワテクスチャを表す画素値を持つ画素の中の微小領域画素の画素値を反転させる。ここで、微小領域画素とは、シワテクスチャを表す画素値を持つ1つ以上の画素により形成される領域であって、線分を形成し得ない小さな領域(微小領域)に含まれる画素を意味する。このような微小領域は、シワ以外のテクスチャ又はノイズである可能性が高いため、シワ分析装置10は、そのような微小領域に含まれる画素の画素値を反転させることで、その微小領域を除去する。
【0057】
例えば、シワ分析装置10は、シワテクスチャを表す画素値を持つシワ成分画素の中から、次のようにして、微小領域画素を検出することができる。シワ分析装置10は、8方向のいずれでも他のシワ成分画素と隣接しないシワ成分画素を微小領域画素として検出する。また、シワ分析装置10は、8方向の少なくとも1つで隣接するシワ成分画素の集合に含まれる画素数が所定数(例えば、3)以下となる集合を微小領域として検出し、その集合に含まれるシワ成分画素を微小領域画素として検出する。
【0058】
工程(S25)では、シワ分析装置10は、(S63)で微小領域画素の画素値が反転された二値化画像を細線化する。
図13は、微小領域除去の過程を示す図である。
図13に示されるように、二値化画像には、線分を形成し得ない微小領域(白色の領域)が存在する。微小領域が除去された二値化画像では、微小領域画素の画素値が反転されることで、微小領域が黒色化されている。この微小領域が除去された二値化画像が細線化され、細線化画像が生成される。
【0059】
〔処理構成〕
図14は、第3実施形態におけるシワ分析装置10の処理構成例を概念的に示す図である。第3実施形態におけるシワ分析装置10は、第2実施形態の構成に加えて、平滑化処理部24、差分算出部25及び微小領域除去部26を更に有する。平滑化処理部24、差分算出部25及び微小領域除去部26についても、他の処理部と同様に、CPU2によりメモリ3に格納されるプログラムが実行されることにより実現される。
【0060】
シワ分析装置10は、
図14に示される各処理部を用いて、上述のシワ分析方法を実行することができる。即ち、シワ分析装置10は、
図12に示されるように動作することができる。この場合、平滑化処理部24は工程(S61)を実行し、差分算出部25は工程(S62)を実行し、微小領域除去部26は工程(S63)を実行する。角度補正部22は、差分算出部25により算出された差分画像を角度補正する。細線化部15は、微小領域除去部26により微小領域画素が反転された二値化画像を細線化する。他の各処理部は、第2実施形態と同様である。
【0061】
〔第3実施形態における作用及び効果〕
第3実施形態では、肌輝度画像に対して平滑化フィルタが適用され、平滑化された肌輝度画像と元の肌輝度画像との差分画像が算出される。平滑化フィルタを適用することにより、肌輝度画像から、肌表面の凹凸形状以外に由来する肌テクスチャ(ノイズテクスチャ)を抽出することができる。抽出されるノイズテクスチャには、例えば、シミ、ソバカス、ホクロ等の色ムラ成分、及び、光源ムラ成分等が存在する。そして、上記差分画像の算出により、元の肌輝度画像からこのようなノイズテクスチャを除去することができ、結果として、肌表面の凹凸形状に由来する肌テクスチャを差分画像として高純度に抽出することができる。第3実施形態では、この差分画像から相関画像が生成される。
【0062】
従って、第3実施形態によれば、シワ成分とは関係性の薄い肌テクスチャが除去された画像から、線分長情報が抽出されるため、シワの分析精度を向上させることができる。
【0063】
更に、第3実施形態では、二値化画像で微小領域画素の画素値が反転されることで、二値化画像から、シワ以外のテクスチャ又はノイズを表している可能性の高い微小領域が除去される。従って、第3実施形態によれば、シワ成分とは関係性の薄い肌テクスチャが除去された画像から、線分長情報が抽出されるため、シワの分析精度を向上させることができる。
【0064】
[第4実施形態]
以下、第4実施形態におけるシワ分析装置10及びシワ分析方法について、上述の各実施形態と異なる内容を中心に説明する。第4実施形態では、線分長情報に対応するシワ指標値が算出される点において、上述の各実施形態と異なる。以下、上述の各実施形態と同じ内容の説明は、適宜省略される。第4実施形態におけるシワ分析装置10のハードウェア構成は、
図1に示される第1実施形態と同じである。
【0065】
〔動作例(シワ分析方法)〕
以下、第3実施形態におけるシワ分析方法を
図15を用いて説明する。
図15は、第4実施形態におけるシワ分析装置10の動作例を示すフローチャートである。
【0066】
シワ分析装置10により実行される第4実施形態におけるシワ分析方法は、上述の各実施形態に加えて、工程(S71)を更に含む。但し、
図15は、第3実施形態の方法に、第4実施形態における新たな工程(S71)を追加した例を示すが、工程(S71)は、
図2に示される第1実施形態の方法及び
図8に示される第2実施形態の方法に追加されることもできる。
図15では、
図12と同じ工程については同じ符号が付されている。以下、上述の各実施形態と異なる内容の工程を中心に、各工程について詳述する。
【0067】
工程(S71)において、シワ分析装置10は、線分長情報とシワ状態が定量化されたシワ指標値との相関関係に基づいて、(S26)で抽出された線分長情報に対応するシワ指標値を算出する。例えば、(S26)で線分長情報として平均線分画素数が算出される場合には、シワ分析装置10は、平均線分画素数とシワ状態が定量化されたシワ指標値との相関関係に基づいて、(S26)で抽出された平均線分画素数に対応するシワ指標値を算出する。シワ指標値は、例えば、シワが多いと視認されるシワ状態ほど大きくなり、シワが少ないと視認されるシワ状態ほど小さくなるような値に設定され、被評価者にとって把握し易い値に設定されることが望ましい。線分長情報とシワ指標値との相関関係は、関数形式、表形式等の所定の形式でデータ化され、メモリ3に格納される。この相関関係の詳細については、実施例の項において詳述する。
【0068】
〔処理構成〕
図16は、第4実施形態におけるシワ分析装置10の処理構成例を概念的に示す図である。第4実施形態におけるシワ分析装置10は、上述の各実施形態の構成に加えて、指標値算出部28を更に有する。指標値算出部28についても、他の処理部と同様に、CPU2によりメモリ3に格納されるプログラムが実行されることにより実現される。但し、
図16は、第3実施形態の処理構成に、指標値算出部28が新たに追加された処理構成の例を示す。
【0069】
シワ分析装置10は、
図16に示される各処理部を用いて、上述のシワ分析方法を実行することができる。シワ分析装置10は、
図15に示されるように動作することができる。この場合、指標値算出部28は上述の工程(S71)を実行する。また、出力処理部17は、線分長情報、及び、指標値算出部28により算出されたシワ指標値の少なくとも一方の出力処理を行う。他の各処理部は、上述の各実施形態と同様である。
【0070】
〔第4実施形態における作用及び効果〕
第4実施形態では、線分長情報から変換されるシワ指標値が算出される。従って、第4実施形態によれば、線分長情報よりも、被評価者にとって把握し易いシワ状態の定量値を算出し、出力することができる。
【0071】
[第5実施形態]
以下、第5実施形態におけるシワ分析装置10及びシワ分析方法について、上述の各実施形態と異なる内容を中心に説明する。第5実施形態では、シワ状態を示す他の指標として、方向性エントロピーが算出され、方向性エントロピー及び線分長情報から総合的にシワ状態が判定される点において、上述の各実施形態と異なる。以下、上述の各実施形態と同じ内容の説明は、適宜省略される。第5実施形態におけるシワ分析装置10のハードウェア構成は、
図1に示される第1実施形態と同じである。
【0072】
〔動作例(シワ分析方法)〕
以下、第5実施形態におけるシワ分析方法を
図17を用いて説明する。
図17は、第5実施形態におけるシワ分析装置10の動作例を示すフローチャートである。
【0073】
シワ分析装置10により実行される第5実施形態におけるシワ分析方法は、第4実施形態に加えて、工程(S81)及び(S82)を更に含む。但し、
図17は、第4実施形態の方法に、第5実施形態における新たな工程(S81)及び(S82)を追加した例を示すが、当該新たな工程は、第1実施形態から第3実施形態の各方法に追加されることもできる。
図17では、
図15と同じ工程については同じ符号が付されている。
【0074】
工程(S81)では、シワ分析装置10は、(S62)で算出された差分画像に対してフーリエ変換を適用することにより、角度毎のパワースペクトルの分布情報を算出する。この分布情報の算出については上述のとおりである。但し、分布情報の角度間隔は制限されない。当該角度間隔は、小さい程、分析精度が向上するため、5度未満の小さい間隔に設定されることが望ましい。
【0075】
また、工程(S81)では、シワ分析装置10は、0度方向及び90度方向の成分が除去された状態で、上記分布情報を算出することが望ましい。これは、上述したとおり、0度方向(180度方向を含む)及び90度方向(270度方向を含む)の成分が、フーリエ変換の特性上、シワの状態に関わらず高い値を示すからである。このように縦横成分を除外することで、当該分布情報からシワ成分以外のノイズ成分を除去することができ、シワ分析の精度を向上させることができる。シワ分析装置10は、0度以上180度未満の範囲の分布情報を算出した後、その分布情報から0度及び90度の成分を除去するようにしてもよい。また、分布情報の角度範囲は、0度より大きくかつ180度未満の範囲に設定されればよい。肌輝度画像に写るシワテクスチャの方向性が検出できればよく、180度より大きく360度未満の角度範囲から得られる成分は、0度より大きくかつ180度未満の角度範囲の成分と同等と考えることができるからである。
【0076】
工程(S82)では、シワ分析装置10は、(S81)で算出された分布情報から、角度毎のパワースペクトルの分布の偏りの大きさを示す方向性エントロピーを算出する。例えば、(S81)で算出される、角度毎のパワースペクトルの分布が確率密度分布と仮定され、方向性エントロピーが、確率変数(角度)が持つ情報エントロピーHとして下記式により算出される。下記式において、p
iは、角度iのヒストグラム値であり、nは、データの個数であり、180に設定される。上記式で算出される方向性エントロピーは、ヒストグラムが特定の角度に偏っている場合に、小さい値を取り、ヒストグラムが全体的に分散している場合に、大きい値を取る。但し、方向性エントロピーの算出方法は、角度毎のパワースペクトルの分布の偏りの大きさを算出することができる手法であれば、以下の式に限定されない。
【数2】
【0077】
工程(S71)では、シワ分析装置10は、(S26)で抽出された線分長情報と、(S82)で算出された方向性エントロピーとに基づいて、シワ状態が定量化されたシワ指標値を算出する(S83)。このとき、シワ分析装置10は、線分長情報と方向性エントロピーとの各々に重み付けし、その重み付けされた各値の統計値(和や積や平均など)に基づいて、シワ指標値を算出することができる。
【0078】
〔処理構成〕
図18は、第5実施形態におけるシワ分析装置10の処理構成例を概念的に示す図である。第5実施形態におけるシワ分析装置10は、上述の各実施形態の構成に加えて、分布算出部31及びエントロピー算出部32を更に有する。分布算出部31及びエントロピー算出部32についても、他の処理部と同様に、CPU2によりメモリ3に格納されるプログラムが実行されることにより実現される。但し、
図18は、第4実施形態の処理構成に、分布算出部31及びエントロピー算出部32が新たに追加された処理構成の例を示す。
【0079】
シワ分析装置10は、
図18に示される各処理部を用いて、上述のシワ分析方法を実行することができる。シワ分析装置10は、
図17に示されるように動作することができる。この場合、分布算出部31は上述の工程(S81)を実行し、エントロピー算出部32は上述の工程(S82)を実行する。また、指標値算出部28は、情報抽出部16により抽出された線分長情報と、エントロピー算出部32により算出された方向性エントロピーとに基づいて、シワ状態が定量化されたシワ指標値を算出する。他の各処理部は、上述の各実施形態と同様である。
【0080】
〔第5実施形態における作用及び効果〕
上述のように、第5実施形態では、分析対象部位が写る肌輝度画像に対してフーリエ変換が適用されることで、角度毎のパワースペクトルの分布情報が算出され、この分布情報の方向性エントロピーが算出される。角度毎のパワースペクトルの分布は、肌輝度画像に写る肌(分析対象部位)のテクスチャの方向性を示す。強い方向性を持つテクスチャが存在する場合、そのテクスチャの方向と直交する特定方向に偏って高周波成分が表われる。一方、肌のテクスチャが方向性を持たない場合、或る特定方向に高周波成分が偏ることはなく、高周波成分は分散する。よって、角度毎のパワースペクトルの分布の偏りの大きさを示す方向性エントロピーは、肌輝度画像に写る肌のテクスチャの方向性の強さを示すと言える。
【0081】
本発明者らは、シワが方向性を持つ肌テクスチャであると考え、上述のような画像解析で得られる方向性エントロピーによってもシワ状態を定量化できることを更に見出した。即ち、本発明者らは、シワ状態を表す指標として、シワの長さの特徴量である線分長情報と、シワの方向性の特徴量である方向性エントロピーとが別々に存在し得ることを見出した。
【0082】
第5実施形態では、線分長情報と方向性エントロピーとから、シワ状態が定量化されたシワ指標値が算出される。従って、第5実施形態によれば、シワの長さとシワの方向性という2つの特徴量に基づいて、総合的なシワ指標値が算出されるため、シワ状態を高精度に反映する指標値を算出することができる。
【0083】
[変形例]
上述の各実施形態において、シワ分析装置10は、固定的に所定の二値パターン画像を取得するようにしてもよいし、複数の二値パターン画像から、肌輝度画像に適する二値パターン画像を選択するようにしてもよい。具体的には、シワ分析装置10は、複数の所定角度の各々について、所定角度方向に延びる局所シワテクスチャをそれぞれ表す複数の二値パターン画像から、肌輝度画像に写るシワの方向性に対応する二値パターン画像を選択するようにしてもよい。
【0084】
図19は、二値パターン画像の変形例を示す図である。上述の場合、
図3に示される左上から右下への斜め方向に対応する二値パターン画像に加えて、
図19に示されるように、上下方向、左右方向、逆斜め方向などに対応する複数の二値パターン画像が提供される。シワ分析装置10は、このような複数の二値パターン画像を自ら生成してもよいし、予め保持するメモリ3から取得することもできるし、可搬型記録媒体、他の装置等から入出力I/F4を経由して取得することもできる。
【0085】
更に、シワ分析装置10は、第2実施形態のように肌輝度画像から得られる角度毎のパワースペクトルの分布情報を用いて、肌輝度画像に写るシワの方向性(角度)を推定し、上述の複数の二値パターン画像の中から、この角度に対応する二値パターン画像を選択することもできる。この場合、シワ分析装置10は、当該分布情報の中の0度方向及び90度方向の情報を除いた分布情報から、ピークを示す角度を上記角度情報として取得すればよい。
【0086】
[補足]
上述の説明で用いた複数のフローチャートでは、複数の工程(処理)が順番に記載されているが、各実施形態で実行される工程の実行順序は、その記載の順番に制限されない。図示される工程の順番は、内容的に支障のない範囲で変更することができる。
【0087】
また、上述の各実施形態の印象判定方法には、人によって実施される工程が含まれてもよいし、工程間の移行が人の判断や操作により実施されてもよい。例えば、シワ分析装置10は、線分長情報として細線化画像をそのまま出力し、出力された細線化画像から、人が、細線化画像に表われる線分の長さの特徴(線分長情報)を視認するようにしてもよい。また、複数の二値パターン画像から肌輝度画像に対応する1つの二値パターン画像の選択は、人により実施されてもよい。この場合、実施者は、肌輝度画像に写るシワの方向性を視認し、その方向性に応じて適切な二値パターン画像を選択することができる。更に、微小領域画素の除去についても人によって実施されてもよい。この場合、実施者は、二値化画像を見て、その二値化画像の中から微小領域を見つけ、この微小領域を形成する画素を指定する。シワ分析装置10は、この実施者に二値化画像を提示し、実施者により指定された微小領域画素の画素値を反転するようにすればよい。
【0088】
上述のシワ分析方法は、肌輝度画像に対する画像処理により得られる客観的データ(線分長情報)と、その肌輝度画像から人が受けるシワ状態の統計的データとの間の相関性を用いることで、シワの状態を画像処理のみで容易に分析することができるという一定の効果を反復継続して実現する方法である。従って、例え、人によって実施される工程が含まれていたとしても、上述のシワ分析方法は、全体として、自然法則を利用した技術的思想と言える。
【0089】
また、上述の各実施形態及び各変形例は、内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。
【0090】
以下に実施例を挙げ、上述の各実施形態及び各変形例を更に具体的に説明する。本発明は以下の各実施例から何ら限定を受けない。
【実施例】
【0091】
図20は、二値パターン画像の画像サイズと相関画像との関係を示す図である。符号P1、P2及びP3は相関画像を示し、符号PT1、PT2及びPT3は二値パターン画像を示す。二値パターン画像PT1は3×3の画像サイズを持ち、二値パターン画像PT2は5×5の画像サイズを持ち、二値パターン画像PT3は7×7の画像サイズを持つ。相関画像P1、P2及びP3は、上記(式1)を用いて生成される、64×64の画像サイズを持つ肌輝度画像と、下部に示される二値パターン画像PT1、PT2及びPT3との相関画像である。
【0092】
図20の例によれば、いずれの二値パターン画像を用いた場合でも、多くのシワテクスチャが抽出されている。強いて言えば、相関画像P1にはシワテクスチャ以外の成分も多く抽出されてしまっており、相関画像P3では抽出できていないシワテクスチャが見受けられる。よって、
図20の例によれば、5×5の画像サイズを持つ二値パターン画像PT2が分析に利用されることが望ましい。このように、二値パターン画像の画像サイズは、取得される肌輝度画像に応じて、ノイズ成分が少なくかつ多くのシワテクスチャが抽出されるように、適切なサイズに設定されることが望ましい。
【0093】
更に、20名の肌輝度画像を用いた官能評価により、線分長情報としての平均線分画素数とシワ状態との間に相関関係、及び、方向性エントロピーとシワ状態との間に相関関係が存在することが検証された。この検証では、目の下の所定領域が分析対象部位に選ばれ、20名の肌輝度画像を3名の評価者に見せ、各評価者に、視認されるシワ量が少ない画像から多い画像へ昇順に順位付けさせ、平均順位を各肌輝度画像のシワ状態ポイントとした。一方で、上述の第5実施形態の方法で、各肌輝度画像の平均線分画素数(線分長情報)及び方向性エントロピーがそれぞれ算出された。
【0094】
図21は、平均線分画素数とシワ状態との相関関係を示すグラフである。
図22は、方向性エントロピーとシワ状態との相関関係を示すグラフである。上記官能評価の結果として、横軸がシワ状態ポイントを示し、縦軸が平均線分画素数を示す2次元グラフ上、及び、横軸がシワ状態ポイントを示し、縦軸が方向性エントロピーを示す2次元グラフ上に、20名の肌輝度画像に対応する点(ひし形ドット)がプロットされた。結果、
図21及び
図22に示されるように、平均線分画素数とシワ状態との間に正の相関(相関係数r=0.574)があり、かつ、方向性エントロピーとシワ状態との間に負の相関(相関係数r=−0.565)があることが証明された。そして、上述のように算出される線分長情報及び方向性エントロピーの双方が、シワ状態を表すシワ指標値となり得ることが検証された。
【0095】
上述の第4実施形態は、
図21に示される相関関係、又は、
図21に示される方法で得られる相関関係を用いて、線分長情報に対応するシワ指標値を算出するようにすればよい。
図21の例の場合には、シワ状態ポイントがシワ指標値として算出されればよい。なお、本実施例では、平均線分画素数が線分長情報として利用される例のみが示されたが、平均線分距離や代表線分数等が線分長情報として利用されても、それらは、シワ状態と相関を持つ。
【0096】
また、上述の官能評価で用いられた肌輝度画像は、被験者の肌の分析対象部位の法線方向から40度の方向から照明を照らした状態で撮像された。上述の各実施形態、各変形例及び実施例では、肌表面の形状に由来する肌テクスチャ(シワ状態)が分析対象であるため、分析対象の肌テクスチャが画像に表われ易いように、照明角度が調整されることが望ましい。例えば、肌の分析対象部位の法線方向から、30度から50度の範囲に照明角度が設定されることが望ましい。
【0097】
上記の各実施形態、変形例及び実施例の一部又は全部は、次のようにも特定され得る。但し、上述の各実施形態、変形例及び実施例が以下の記載に制限されるものではない。
【0098】
<1> 分析対象部位の肌輝度画像を取得し、
局所シワテクスチャを表す二値パターン画像を取得し、
前記二値パターン画像を前記肌輝度画像上でスライドさせながら、前記二値パターン画像と前記肌輝度画像との相関値を逐次算出することにより、相関画像を生成し、
前記相関画像を二値化することで二値化画像を生成し、
前記二値化画像を細線化することで細線化画像を生成し、
前記細線化画像から線分長情報を抽出する、
ことを含むシワ分析方法。
【0099】
<2> 前記肌輝度画像に写るシワの方向性に基づいて、前記肌輝度画像を角度補正する、
ことを更に含み、
前記相関画像の生成は、前記角度補正された肌輝度画像から、前記相関画像を生成する、<1>に記載のシワ分析方法。
<3> 前記肌輝度画像に対してフーリエ変換を適用することにより、角度毎のパワースペクトルの分布情報を算出する、
ことを更に含み、
前記角度補正は、前記分布情報から得られるシワの方向性が、前記二値パターン画像により表わされる前記局所シワテクスチャの方向性に合うように、前記肌輝度画像を角度補正する、<2>に記載のシワ分析方法。
<4> 前記二値パターン画像の取得は、複数の所定角度の各々について、該所定角度方向に延びる局所シワテクスチャをそれぞれ表す複数の二値パターン画像から、前記肌輝度画像に写るシワの方向性に対応する二値パターン画像を選択する、<1>に記載のシワ分析方法。
<5> 前記肌輝度画像に対してフーリエ変換を適用することにより、角度毎のパワースペクトルの分布情報を算出する、
ことを更に含み、
前記二値パターン画像の取得は、前記複数の二値パターン画像から、前記分布情報に対応する二値パターン画像を選択する、<4>に記載のシワ分析方法。
<6> 前記二値化画像において、シワテクスチャを表す画素値を持つ画素の中の微小領域画素の画素値を反転させる、
ことを更に含み、
前記細線化画像の生成は、前記微小領域画素の画素値が反転された二値化画像を細線化する、<1>から<5>のいずれか1つに記載のシワ分析方法。
<7> 前記肌輝度画像に対して平滑化フィルタを適用し、
前記平滑化フィルタ適用後の肌輝度画像と前記肌輝度画像との差分画像を算出する、
ことを更に含み、
前記相関画像の生成は、前記差分画像から、前記相関画像を生成する、<1>から<6>のいずれか1つに記載のシワ分析方法。
<8> 前記線分長情報として抽出される平均線分画素数とシワ状態が定量化されたシワ指標値との相関関係に基づいて、前記抽出された平均線分画素数に対応するシワ指標値を算出する、ことを更に含む<1>から<7>のいずれか1つに記載のシワ分析方法。
<9> 前記肌輝度画像に対してフーリエ変換を適用することにより、角度毎のパワースペクトルの分布情報を算出し、
前記分布情報から、角度毎のパワースペクトルの分布の偏りの大きさを示す方向性エントロピーを算出し、
前記線分長情報と前記方向性エントロピーとから、シワ指標値を算出する、ことを更に含む<1>から<8>のいずれか1つに記載のシワ分析方法。
<10> 分析対象部位の肌輝度画像を取得する画像取得部と、
局所シワテクスチャを表す二値パターン画像を取得するパターン取得部と、
前記二値パターン画像を前記肌輝度画像上をスライドさせながら、前記二値パターン画像と前記肌輝度画像との相関値を逐次算出することにより、相関画像を生成する相関処理部と、
前記相関画像を二値化することで二値化画像を生成する二値化部と、
前記二値化画像を細線化することで細線化画像を生成する細線化部と、
前記細線化画像から線分長情報を抽出する情報抽出部と、
前記情報抽出部により抽出された前記線分長情報の出力処理を行う出力処理部と、
を備えるシワ分析装置。
<11> 前記肌輝度画像に写るシワの方向性に基づいて、前記肌輝度画像を角度補正する角度補正部、
を更に含み、
前記相関処理部は、前記角度補正部により角度補正された肌輝度画像から、前記相関画像を生成する、<10>に記載のシワ分析装置。
<12> 前記肌輝度画像に対してフーリエ変換を適用することにより、角度毎のパワースペクトルの分布情報を算出する角度情報取得部、
を更に備え、
前記角度補正部は、前記分布情報から得られるシワの方向性が、前記二値パターン画像により表わされる前記局所シワテクスチャの方向性に合うように、前記肌輝度画像を角度補正する、<11>に記載のシワ分析装置。
<13> 前記パターン取得部は、複数の所定角度の各々について、該所定角度方向に延びる局所シワテクスチャをそれぞれ表す複数の二値パターン画像から、前記肌輝度画像に写るシワの方向性に対応する二値パターン画像を選択する、<10>に記載のシワ分析装置。
<14> 前記パターン取得部は、前記肌輝度画像に対してフーリエ変換を適用することにより、角度毎のパワースペクトルの分布情報を算出し、前記複数の二値パターン画像から、該分布情報に対応する二値パターン画像を選択する、<13>に記載のシワ分析装置。
<15> 前記二値化画像において、シワテクスチャを表す画素値を持つ画素の中の微小領域画素の画素値を反転させる微小領域除去部、
を更に備え、
前記細線化部は、前記微小領域画素の画素値が反転された二値化画像を細線化する、<10>から<14>のいずれか1つに記載のシワ分析装置。
<16> 前記肌輝度画像に対して平滑化フィルタを適用する平滑化処理部と、
前記平滑化フィルタ適用後の肌輝度画像と前記肌輝度画像との差分画像を算出する差分算出部と、
を更に備え、
前記相関処理部は、前記差分画像から、前記相関画像を生成する、<10>から<15>のいずれか1つに記載のシワ分析装置。
<17> 前記線分長情報として抽出される平均線分画素数とシワ状態が定量化されたシワ指標値との相関関係に基づいて、前記抽出された平均線分画素数に対応するシワ指標値を算出する指標値算出部、
を更に備える<10>から<16>のいずれか1つに記載のシワ分析装置。
<18> 前記肌輝度画像に対してフーリエ変換を適用することにより、角度毎のパワースペクトルの分布情報を算出する分布算出部と、
前記分布情報から、角度毎のパワースペクトルの分布の偏りの大きさを示す方向性エントロピーを算出するエントロピー算出部と、
前記線分長情報と前記方向性エントロピーとから、シワ指標値を算出する指標値算出部と、
を更に備える<10>から<17>のいずれか1つに記載のシワ分析装置。
<19> <1>から<9>のいずれか1つに記載のシワ分析方法を少なくとも1つのコンピュータに実行させるプログラム。