(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
液体または粉体と液体の混合体など、比較的粘度が高い物体を分散、混合または攪拌などをするための装置として、複数の攪拌ブレードを有する攪拌装置が用いられている。特許文献1には、従来の攪拌装置および攪拌ブレードの一例が開示されている。本文献に開示された構成においては、前記複数の攪拌ブレードは、攪拌装置の回転駆動部に取り付けられ、対象物体を収容した容器内において、各々が自転し、かつ公転させられる。
【0003】
攪拌ブレードは、攪拌装置の回転駆動部に取り付けられる取り付け部、この取り付け部から径方向に延びる天枠部、天枠部の下方に位置し回転軸周りに回転した姿勢とされた底枠部、天枠部の両端と底枠部の両端とを繋ぐ一対の側枠部、を有している。特許文献1においては、天枠部と底枠部とは、回転軸周りに90度ずれた位置関係となっている。また、一対の側枠部は、天枠部と底枠部の間においてねじれた形状とされている。
【0004】
特許文献1においては、2つの攪拌ブレードが互いに平行な回転軸を有するように取り付けられている。2つの攪拌ブレードを自転させる回転軸間の距離は、公転によらず一定である。2つの攪拌ブレードが自転すると、各々の側枠部どうしが互いにごく近接した部位を有する状態を維持する。天枠部と底枠部とが90度の角度をなす場合、各々の側枠部のいずれか一箇所どうしが近接する。側枠部の近接した部分どうしの隙間を適切に設定することにより、その隙間において対象物体に強いせん断力が作用する。これにより、対象物体の分散、混合または攪拌などを行うことができる。
【0005】
しかしながら、2つの攪拌ブレードのうち対象物体の分散、混合または攪拌などに顕著に寄与するせん断力を生じさせる部位は、上述したごく近接した部位に限られる。残りの部分は、公転および自転に応じて対象物体を比較的緩やかにかき混ぜているに過ぎず、有意なせん断力は発生させていない。このため、対象物体を十分に分散、混合または攪拌などをするには、相応の時間を要することが避けられない。また、近年、化学、医療、電子、セラミックス、食品、飼料など、攪拌装置が用いられる分野はますます広範囲となっており、対象物体の性状の多様化が著しい。対象物体の性状によっては、分散、混合または攪拌などをスムーズに完了させることが困難なケースが想定される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0014】
図1および
図2は、本発明に係る攪拌ブレードの一例である攪拌ブレードAが用いられる攪拌装置を示している。
図1は、攪拌装置Bの側面図であり、
図2は、攪拌装置Bの正面図である。攪拌装置Bは、回転駆動部61を有している。回転駆動部61は、攪拌装置Bに内蔵されたモータ(図示略)などの回転駆動源にギヤなどを介して連結されている。回転駆動部61は、2つの攪拌ブレードAが取り付け可能となっており、これらの2つの攪拌ブレードAの各々を自転させつつ、これらを公転させる構成とされている。回転駆動部61の下方には、容器62が配置可能となっている。容器62は、攪拌装置Bによって分散、混合または攪拌などをする対象物体を収容するものである。容器62内の対象物体について分散、混合または攪拌などを行う際には、2つの攪拌ブレードAが容器62の対象物体に浸された状態で、2つの攪拌ブレードAを公転および自転させる。
【0015】
図3〜
図7は、攪拌ブレードAを示している。
図3は、攪拌ブレードAを示す斜視図である。
図4は、攪拌ブレードAを示す正面図である。
図5は、攪拌ブレードAを示す側面図である。
図6は、攪拌ブレードを示す平面図である。
図7は、攪拌ブレードAを示す底面図である。なお、これらの図においては、攪拌ブレードAの自転中心である回転軸Ozが延びる方向がz方向とされ、z方向と直角であり後述する天枠部2および底枠部3が延びる方向をx方向、z方向およびx方向と直角である方向をy方向と、便宜上定義している。
【0016】
攪拌ブレードAは、攪拌装置Bに取り付けられた状態で、回転軸Oz周りに自転させられる。また、攪拌装置Bは、2つの攪拌ブレードAを自転させる2つの回転軸Ozを設定する構成とされており、これらの2つの回転軸Ozが公転する。攪拌ブレードAの材質は特に限定されないが、本実施形態においては、たとえばステンレスなどの金属からなる。攪拌ブレードAは、取り付け部1、天枠部2、底枠部3および一対の側枠部4を有している。攪拌ブレードAのサイズの一例を挙げると、z方向高さが140mm程度、x方向寸法が73mm程度である。
【0017】
取り付け部1は、攪拌ブレードAを攪拌装置Bの回転駆動部61に取り付けるために用いられる部位である。取り付け部1の形状およびサイズは、回転駆動部61の構成によって適宜設定されるが、本実施形態においては、回転軸Ozを中心軸とする円筒形状とされている。また、攪拌ブレードAを回転駆動部61に固定するためのボルトやピンなどを挿通させるための孔が適宜設けられている。取り付け部1のサイズの一例を挙げると、z方向高さが30mm程度、外径が30mm程度、内径が15mm程度である。
【0018】
天枠部2は、取り付け部1からx方向に延びており回転軸Ozを挟んで対称な形状である。本実施形態の2は、取り付け部1から斜め下方に延びているが、本発明が意図する機能を果たすためには、天枠部2は、回転軸Ozに対して直角である方向に延びていることが必須要件であり、z方向下方にも延びている形状は、たとえば回転駆動部61への取り付けや一対の側枠部4の形成の便宜などの事情による。天枠部2のz方向下端部の断面は、たとえば六角形状とされている。
【0019】
底枠部3は、取り付け部1および天枠部2に対してz方向下方に離間して配置されている。本実施形態においては、底枠部3は、たとえば断面が略三角形状の直棒状とされている。また、
図6および
図7に示すように、底枠部3は、z方向視において天枠部2と平行である。ただし、後述する一対の側枠部4の構成から理解される通り、底枠部3は、天枠部2に対して回転軸Oz周りに180度回転させられたものであると観念される。
【0020】
一対の側枠部4は、天枠部2の両端と底枠部3の両端とを連結している。ただし、本実施形態の場合、各側枠部4は、天枠部2の一端と、この一端とはx方向において反対側に位置する底枠部3の一端とを連結している。すなわち、
図6に示すように、側枠部4は、回転軸Oz周りのねじれ角α0が、180度とされている。2つの側枠部4は、互いの関係が回転軸Oz周りに180度回転させた軸対称であるといえる。また、
図4〜
図7に示すように、回転軸Ozが延びる方向を軸方向とした場合の径方向における、一対の側枠部4の外径Dは、z方向のいずれの部位においても一定とされており、本実施形態においては、たとえば73mm程度である。また、側枠部4のz方向高さは、たとえば110mm程度である。
【0021】
側枠部4は、弱ねじれ部41および強ねじれ部42を有している。弱ねじれ部41は、z方向において天枠部2側に位置し、本実施形態においては、
図4に示すように、側枠部4のz方向上側半分にあたる部位とされている。強ねじれ部42は、z方向において底枠部3側に位置し、本実施形態においては、側枠部4のz方向下側半分にあたる部位とされている。
図6に示すように、弱ねじれ部41の回転軸Oz周りのねじれ角α1は、強ねじれ部42の回転軸Oz周りのねじれ角α2よりも小である。このため、z方向の単位長さあたりの回転軸Oz周りのねじれ角が、弱ねじれ部41は強ねじれ部42に対して相対的に小であり、強ねじれ部42は弱ねじれ部41に対して相対的に大である関係となっている。本実施形態においては、ねじれ角α1が45度であり、ねじれ角α2が135度であり、z方向の単位長さあたりの回転軸Oz周りのねじれ角の比が1:3とされている。側枠部4の断面形状は、たとえば六角形状とされている。
【0022】
本実施形態においては、弱ねじれ部41は、z方向の単位長さあたりの回転軸Oz周りのねじれ角が一定とされている。また、強ねじれ部42は、z方向の単位長さあたりの回転軸Oz周りのねじれ角が一定とされている。このため、弱ねじれ部41と強ねじれ部42との境界部分には、z方向の単位長さあたりの回転軸Oz周りのねじれ角が不連続となった屈曲部43が形成されている。なお、屈曲部43のうち、たとえば
図3に表れている斜め上方向を臨む屈曲線の部分を、円滑な曲面としてもよい。この場合、攪拌後の攪拌ブレードAを洗浄する際に、屈曲部43に対象物体が残存しにくく、洗浄を適切に行うことができるという利点がある。
【0023】
次に、攪拌装置Bでの攪拌ブレードAを用いた攪拌工程について、
図8〜
図10を参照しつつ、以下に説明する。
【0024】
図8は、本説明において攪拌工程の初期状態と便宜上位置づけた状態である。同図(a)は、2つの攪拌ブレードAを斜め上方から見た斜視図であり、同図(b)は、平面図であり、同図(c)は、正面図であり、同図(d)は、斜め下方から見た斜視図である。まず、2つの攪拌ブレードAの回転軸Ozどうしの距離Lは、側枠部4の外径Dよりも小とされている。距離Lの一例を挙げると、側枠部4の外径Dが73mm程度の場合に、59mm程度に設定される。このため、同図(b)に示すように、2つの攪拌ブレードAは、z方向視において互いの一部どうしが重なる位置関係となっている。また、2つの攪拌ブレードAは、互いの回転軸Oz周りの回転位置が90度ずれた関係とされている。具体的には、図中左方の攪拌ブレードAの天枠部2が、z方向視において図中左右方向に沿った姿勢であるのに対し、図中右方の攪拌ブレードAの天枠部2は、図中上下方向に沿った姿勢である。
【0025】
上述した構成とされた2つの攪拌ブレードAの配置について、外径Dと距離Lとが上述した大小関係とされていること、および回転位置が90度ずれた関係とされていること、とにより、2つの攪拌ブレードAは、
図8において想像線で描かれた2つの円Pで囲まれた部位どうしがごく近接した状態となる。円Pにおける2つの攪拌ブレードAの隙間は、外径Dと距離Lとの関係によって設定され、本実施形態においてはたとえば2mm程度に設定されている。本実施形態においては、同図(b)において、図中左方の攪拌ブレードAの天枠部2が延びる方向に対して上方に45度回転した位置と、下方に45度回転した位置とにおいて、2つの攪拌ブレードAがごく近接している。より具体的には、2つの攪拌ブレードAの側枠部4の屈曲部43どうしがごく近接しているまた、2つの攪拌ブレードAの側枠部4の強ねじれ部42の下端から1/3程度に位置する部分どうしがごく近接している。
【0026】
攪拌装置Bにおいては、2つの攪拌ブレードAが、それぞれ回転軸Oz周りに自転させられる。自転の回転方向Nは、同一方向であり、回転速度も同一である。また、2つの攪拌ブレードAは、回転駆動部61によって互いの距離Lを維持したまま、容器62内を公転させられる。
図8〜
図10においては、自転による攪拌工程の機能を説明するものであり、これらの図に示された状態を保ったまま、実際には公転させられる。
【0027】
図9は、
図8から回転方向Nに2つの攪拌ブレードAが45度回転した状態を示している。同図に示された状態においても、同図(b)に示すように、z方向視において
図8(b)に示した位置とほぼ同じ位置に円Pが存在する。同図に示す状態においては、同図(a),(c),(d)に示すように、2つの攪拌ブレードAの側枠部4の上端および下端どうしが、z方向視での同じ方位においてごく近接している。また、2つの攪拌ブレードAの4の強ねじれ部42の上端から1/3程度に位置する部分どうしがごく近接している。同図に示す状態においては、側枠部4の上端および下端どうしがそれぞれごく近接することから、合計3つの円Pに囲まれた部分どうしがごく近接した状態となっている。なお、この3つの円Pが存在する状態は、同図に示された瞬間に生じるものであり、その前後においては速やかに2つの円Pが存在する状態となる。
【0028】
図10は、
図9から回転方向Nに2つの攪拌ブレードAが45度回転した状態を示している。同図に示された状態においても、同図(b)に示すように、z方向視において
図8(b)および
図9(b)に示した位置とほぼ同じ位置に円Pが存在する。同図に示す状態においては、同図(a),(c),(d)に示すように、2つの攪拌ブレードAの側枠部4の屈曲部43どうしがごく近接している。また、2つの攪拌ブレードAの側枠部4の強ねじれ部42の下端から1/3程度に位置する部分どうしがごく近接している。
【0029】
図8〜
図10に示した状態は、2つの攪拌ブレードAの状態を例示しているが、回転方向Nに同一速度で回転する構成であるため、この後の回転においても
図8〜
図10に示した状態と同様の状態、あるいはこれらの図に示された状態の途中にあたる状態を、継続して維持することとなる。このため、2つの攪拌ブレードAは、常に2つの円Pが存在する状態をとり、90度に一回の頻度で3つの円Pが出現する状態をとる。
【0030】
次に、攪拌ブレードAの作用について説明する。
【0031】
発明者らは、まず、ねじれ角α0を大きくすることにより、2つの攪拌ブレードAがごく近接する箇所(円P)を増やすことができることに着目した。すなわち、特許文献1に示された構成においては、ねじれ角α0が90度の構成に相当する。このような構成の場合、上述した説明における円Pで示される箇所のうち常時出現するものは1つのみである。したがって、対象物体に2つの攪拌ブレードの間において強いせん断力が生じるのも、一箇所のみとなる。これに対し、攪拌ブレードAによれば、常時2つの円Pが出現しており、対象物体には2箇所において強いせん断力が生じる。これにより、より短時間で分散、混合または攪拌などを行うことができる。
【0032】
ただし、ねじれ角α0を大きくするほど、側枠部4の全体においてz方向の単位長さあたりの回転軸Oz周りのねじれ角が大きくなる。発明者らは、これが分散、混合または攪拌などの効率化に効果的である一方、対象物体の性状によっては、ねじれた形状となった一対の側枠部4の内方に対象物体を囲い込んでしまい、一定以上の分散、混合または攪拌などが行えない事態が生じるケースがあることを発見した。たとえば、対象物体の粘度が顕著に高い場合や、粉体と液体との混合体であって、粉体の割合が比較的高く、流動性が比較的低い場合などである。このような対象物体であっても分散、混合または攪拌などの効率を高めるには、上述した円Pが出現する箇所を大きくすることが効果的である。そこで、発明者らは試験の結果、側枠部4の全長にわたってz方向の単位長さあたりの回転軸Oz周りのねじれ角を大きくするのではなく、側枠部4の下端側が相対的に単位長さ辺りのねじれ角が大きく、上端側が相対的に単位長さ辺りのねじれ角が小さい構成とすることにより、対象物体が2つの側枠部4の間に囲い込まれにくくすることができることを見出した。このため、側枠部4に弱ねじれ部41と強ねじれ部42とを形成している。強ねじれ部42が分散、混合または攪拌などの効率化に資するとともに、弱ねじれ部41が2つの側枠部4の間からの対象物体の排出を促していると考えられる。
【0033】
また、下端側に強ねじれ部42を有することにより、たとえば容器62の容量の数分の一程度の少量の対象物体に対して分散、混合または攪拌などを行う場合、強ねじれ部42のみが対象物体と接する状態とすることができる。これにより、少量の対象物体を効率よく分散、混合または攪拌などすることが可能である。
【0034】
なお、発明者らの知見によれば、分散、混合または攪拌などを効率よく行うとともに、対象物体の囲い込みを頻発させないことを意図した場合、ねじれ角α0は、180度〜
270度が好ましい。
【0035】
本発明に係る攪拌ブレードおよび攪拌装置は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る攪拌ブレードおよび攪拌装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0036】
側枠部4は、弱ねじれ部41および強ねじれ部42のみからなる構成に限定されない。弱ねじれ部41の上方側、弱ねじれ部41と強ねじれ部42との間、強ねじれ部42の下方側などに、弱ねじれ部41および強ねじれ部42以外の部位を有する構成であってもよい。弱ねじれ部41および強ねじれ部42は、z方向の単位長さあたりの回転軸Oz周りのねじれ角が一定とされているがこれに限定されない。たとえば、側枠部4の上端から下端に向かってz方向の単位長さあたりの回転軸Oz周りのねじれ角が徐々に大となる構成であってもよい。この場合、屈曲部43のような弱ねじれ部41と強ねじれ部42との明瞭な境界部分は存在しないが、側枠部4の適切な箇所を挟んで弱ねじれ部41および強ねじれ部42と観念しうる部位が存在する。また、たとえば弱ねじれ部41のねじれ角α1が0度であっても、弱ねじれ部41は強ねじれ部42に対してz方向の単位長さあたりの回転軸Oz周りのねじれ角が小であると観念される。また、底枠部3を有しない構成であってもよい。この場合、2つの側枠部4の一端が天枠部2の両端に連結され、2つの即枠部の他端は自由端となる。たとえば、対象物体の粘度が顕著に高く、固体に近い性状である場合、対象物体を収容した容器62に攪拌ブレードAを挿入する際、底枠部3が強い抵抗力を受けることを回避し、攪拌ブレードAをスムーズに挿入することができる。
【0037】
攪拌装置Bに取り付けられる攪拌ブレードAの数は2つに限定されず、3つ以上であってもよい。また、自転と公転とを組み合わせた機構は、分散、混合または攪拌などを効率よく行うのに適しているが、たとえば自転のみを行う構成に攪拌ブレードAを適用してもよい。また、攪拌装置Bの名称は、分散、混合または攪拌などを行う装置の便宜として定義されるものであり、攪拌のみを行う装置に限定されるものではない。