特許第6118283号(P6118283)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6118283
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】ボールバルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 5/10 20060101AFI20170410BHJP
   F16K 5/06 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   F16K5/10 C
   F16K5/06 Z
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-41267(P2014-41267)
(22)【出願日】2014年3月4日
(65)【公開番号】特開2015-166613(P2015-166613A)
(43)【公開日】2015年9月24日
【審査請求日】2016年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】野間口 謙雄
【審査官】 加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−047574(JP,A)
【文献】 特開2006−223418(JP,A)
【文献】 特開平05−033874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 5/00−5/22
F15D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通流路を有するボール弁体を備え、このボール弁体を弁軸を中心として回動させることによって、弁本体内を流れる流体に対する流量特性窓の開き量を調節するボールバルブにおいて、
前記ボール弁体の下流側に装着された別部材を備え、
前記別部材は、
前記弁軸の軸線と直交する貫通孔を有し、この貫通孔に前記流量特性窓を有し、前記貫通孔の壁面が前記流量特性窓の開口部から下流側の開口部に向かって滑らかに拡径している
ことを特徴とするボールバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、貫通流路を有するボール弁体を備えたボールバルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種の流体の流量制御、例えば空調用の冷温水の流量を制御するために使用される流量制御弁として、貫通流路を有するボール弁体をプラグとして備えたボールバルブが知られている。
【0003】
図6に特許文献1に開示されたボールバルブの要部を示す。このボールバルブ1(1A)は、流体2の流路3を形成する弁本体4と、この弁本体4の内部に配設されたボール弁体5と、このボール弁体5を弁本体4の外部から回転させる弁軸6等で構成されている。
【0004】
ボール弁体5は、弁軸6の軸線と直交する方向に貫通流路7を有し、弁本体4の内部中央に前後2つのシートリング8を介して弁軸6を中心として回転可能に配設され、外周面がシートリング8に接触する球面着座部を形成している。流体2は図示左(上流側)から右(下流側)へ流れる。
【0005】
ボール弁体5の貫通流路7は、弁軸6の軸線と直交する貫通孔からなり、この貫通孔(貫通流路)7の上流側の開口部7aが流量特性窓とされ、下流側の開口部7bが直径Dの円形とされている。
【0006】
図7(a)にボール弁体5を貫通流路7の上流側から見た図を示し、図7(b)にボール弁体5を貫通流路7の下流側から見た図を示す。上流側の開口部(流量特性窓)7aは、所定の流量特性を示す形状、この例では断面形状がボール弁体5の回転方向(矢印B方向)におおむね扇形となる形状とされている。また、流量特性窓7aの下流側は、円形の開口部7bに同径でつながる空洞(円柱状の空洞)とされている。
【0007】
ボール弁体5には、その上面中央に凹部9が形成されており、この凹部9に弁軸6の下端6aが嵌合固定されている。弁軸6は、弁本体4の中央の筒部10にOリング11を介して回転可能に挿通されており、その上端6bが筒部10の上方に突出している。この弁軸6が手動または駆動モータ等の駆動装置によって駆動されることにより、弁軸6を中心としてボール弁体5が矢印B方向またはその逆方向にほゞ90゜の角度範囲内で回動される。
【0008】
図6はボールバルブ1を全開とした状態を示している。この状態からボール弁体5を90゜回動させると、上流側の開口部7aと下流側の開口部7bが全閉状態となる。全閉と全開との中間開度においては、弁本体4内を流れる流体に対する上流側の開口部(流量特性窓)7aの開き量に応じた量の流体が流れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−113948号公報
【特許文献2】米国特許第6039304号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、図6に示された従来のボールバルブ1Aによると、ボール弁体5の流量特性窓7aの下流側が円柱状の空洞とされているので、流量特性窓7aを通過した流体の流れが流量特性窓7aの下流側で急拡大する。このため、流量特性窓7aの下流側での圧力損失が大きくなり、ボールバルブ1Aに流せる最大流量が小さくなるという問題があった。
【0011】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、流量特性窓の下流側での圧力損失を小さくし、流せる最大流量を増加させることが可能なボールバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような目的を達成するために本発明は、貫通流路を有するボール弁体を備え、このボール弁体を弁軸を中心として回動させることによって、弁本体内を流れる流体に対する流量特性窓の開き量を調節するボールバルブにおいて、ボール弁体の下流側に装着された別部材を備え、別部材は、弁軸の軸線と直交する貫通孔を有し、この貫通孔に流量特性窓を有し、貫通孔の壁面が流量特性窓の開口部から下流側の開口部に向かって滑らかに拡径していることを特徴とする。
【0015】
本発明では、流量特性窓の下流側の流路の壁面が上流側から下流側に向かって滑らかに拡径しているので、流量特性窓を通過した流体の流れが流量特性窓の下流側で急拡大することがない。これにより、流量特性窓の下流側での圧力損失が小さくなり、流せる最大流量を増加させることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、流量特性窓の下流側の流路の壁面を上流側から下流側に向かって滑らかに拡径させるようにしたので、流量特性窓の下流側での圧力損失を小さくし、流せる最大流量を増加させることが可能となる。この結果、必要な最大流量を流すことができるプラグの大きさを従来よりも小さくすることができ、バルブの小型軽量化、低トルク化による操作器の小型軽量化、低消費電力化につなげることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係るボールバルブの一実施の形態(実施の形態1)の要部を示す図である。
図2】実施の形態1のボールバルブにおけるボール弁体を貫通流路の上流側および下流側から見た図である。
図3】実施の形態1のボールバルブにおけるボール弁体を貫通流路の上流側および下流側から見た斜視図である。
図4】本発明に係るボールバルブの他の実施の形態(実施の形態2)の要部を示す図である。
図5】実施の形態1,2のボールバルブにおける流量特性窓の形状の変形例を示す図である。
図6】特許文献1に開示されたボールバルブの要部を示す図である。
図7】特許文献1に開示されたボールバルブにおけるボール弁体を貫通流路の上流側および下流側から見た図である。
図8】特許文献2に示された従来の別部材を用いたボールバルブの要部を示す図である。
図9】特許文献2に示されたボールバルブにおける別部材を上流側および下流側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明では、本発明の権利範囲に含まれないものも実施の形態として記載されているが、ここでは全て実施の形態として説明する。
【0019】
この実施の形態1のボールバルブ1(1B)において、ボール弁体5の貫通流路7は、弁軸6の軸線と直交する貫通孔からなり、この貫通孔(貫通流路)7の上流側の開口部7aが流量特性窓とされ、下流側の開口部7bが直径Dの円形とされている点では図6に示した従来のボールバルブ1Aと同じであるが、貫通孔(貫通流路)7の壁面7cを上流側の開口部(流量特性窓)7aから下流側の開口部7bに向かって滑らかに拡径させている点で異なっている。
【0020】
図2(a)にボール弁体5を貫通流路7の上流側から見た図を示し、図2(b)にボール弁体5を貫通流路7の下流側から見た図を示す。図3(a)にボール弁体5を貫通流路7の上流側から見た斜視図を示し、図3(b)にボール弁体5を貫通流路7の下流側から見た斜視図を示す。流量特性窓7aは、断面形状がボール弁体5の回転方向(矢印B方向)におおむね扇形となる形状とされており、流量特性窓7aの下流側の流路の壁面7cは、上流側から下流側に向かって滑らかに拡径している。
【0021】
この実施の形態1のボールバルブ1Bでは、流量特性窓7aの下流側の流路の壁面7cが上流側から下流側に向かって滑らかに拡径しているので、流量特性窓7aを通過した流体の流れが流量特性窓7aの下流側で急拡大することがない。これにより、流量特性窓7aの下流側での圧力損失が小さくなり、流せる最大流量を増加させることができるようになる。
【0022】
この結果、本実施の形態のボールバルブ1Bでは、必要な最大流量を流すことができるボール弁体(プラグ)5の大きさを従来よりも小さくすることができ、バルブの小型軽量化、低トルク化による操作器の小型軽量化、低消費電力化につなげることができるようになる。
【0023】
〔実施の形態2〕
実施の形態1のボールバルブ1Bでは、ボール弁体5の貫通流路7の上流側の開口部7aを流量特性窓としたが、実施の形態2のボールバルブでは、図4に示すように、ボール弁体5の下流側に別部材12を装着し、この別部材12に弁軸6の軸線と直交する貫通孔13を設け、この貫通孔13の上流側の開口部13aを流量特性窓とし、下流側の開口部13bを円形とし、貫通孔13の壁面13cを上流側の開口部(流量特性窓)13aから下流側の開口部13bに向かって滑らかに拡径させている。
【0024】
なお、この実施の形態2のボールバルブ1(1C)において、ボール弁体5の貫通流路7の上流側の開口部7a’および下流側の開口部7bはともに円形とされている。すなわち、ボール弁体5の貫通流路7は、同径でつながる円柱状の貫通孔とされている。また、別部材12は、弁本体4内に固定されており、流量特性窓13aの周囲をボール弁体5の球面に合わせた凹部12aとし、この凹部12aをボール弁体5の球面に着座させている。
【0025】
この実施の形態2のボールバルブ1Cでは、ボール弁体5の下流側に装着された別部材12の流量特性窓13aの下流側の流路の壁面13cが上流側から下流側に向かって滑らかに拡径しているので、ボール弁体5の貫通流路7を通過し、流量特性窓13aに入った流体の流れが流量特性窓13aの下流側で急拡大することがなく、流量特性窓13aの下流側での圧力損失が小さくなり、流せる最大流量を増加させることができるようになる。
【0026】
参考として、図8に特許文献2に示された従来の別部材を用いたボールバルブ1(1D)の要部を示す。このボールバルブ1Dでは、ボール弁体5の下流側に別部材14を装着し、この別部材14に弁軸6の軸線と直交する貫通孔15を設け、この貫通孔15の上流側の開口部15aを流量特性窓としているが、上流側の開口部15aと下流側の開口部15bとは同形状でつながっている。すなわち、この別部材14では、貫通孔15自体が流量特性窓とされている。図9(a)に別部材14を上流側から見た図を、図9(b)に別部材14を下流側から見た図を示す。
【0027】
このボールバルブ1Dでは、ボール弁体5の貫通流路7を通過し、別部材14の貫通孔(流量特性窓)15に入った流体の流れが流量特性窓15の下流側で急拡大する。このため、流量特性窓15の下流側での圧力損失が大きくなり、ボールバルブ1Dに流せる最大流量が小さくなるという問題がある。
【0028】
なお、上述した実施の形態1,2では、流量特性窓7a,13aを扇形としたが、必ずしも扇形としなくてもよく、図5(a),(b),(c)に示すような種々の形状が考えられる。また、流量特性窓7a,13aの下流側の流路の壁面7c,13cは、上流側から下流側に向かう途中から滑らかに拡径されていてもよい。
【0029】
また、上述した実施の形態1では、貫通孔7の上流側の開口部7aを流量特性窓としたが、流量特性窓は貫通孔7の途中に設けられていてもよい。同様に、実施の形態2でも、別部材12の貫通孔13の途中に流量特性窓が設けられていてもよい。この場合、貫通孔7(貫通孔13)の壁面を流量特性窓の開口部から下流側の開口部に向かって滑らかに拡径するようにすることは言うまでもない。
【0030】
〔実施の形態の拡張〕
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0031】
1…ボールバルブ、2…流体、3…流路、4…弁本体、5…ボール弁体、6…弁軸、7…貫通流路、7a…上流側の開口部(流量特性窓)、7b…下流側の開口部、7c…壁面、12…別部材、13…貫通孔、13a…上流側の開口部(流量特性窓)、13b…下流側の開口部、13c…壁面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9