(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図1及び
図2に示す実施形態の清掃用シート1は、硬質表面の清掃に好適に用いられるものである。清掃用シート1は、乾式タイプのものであり、洗浄液等の液体成分を実質的に含んでいない。実質的に含んでいないとは、清掃用シート1に占める液体成分の割合が3質量%以下であることを言う。清掃用シート1は、吸水層4と、掻き取り層5とを有している。つまり清掃用シート1は、吸水層4及び掻き取り層5からなる2層構造を有している。したがって、吸水層4と掻き取り層5との間には、他の別の層は介在していない。しかし、このことは、吸水層4と掻き取り層5との間に他の別の層を介在させることを妨げるものではなく、清掃用シート1の具体的な用途等に応じ、吸水層4と掻き取り層5との間に他の別の層を介在させてもよい。吸水層4と掻き取り層5とは、積層されて一体化されている。一体化の手段としては、例えば融着、接着剤を用いた接着、縫着など、種々の手段を採用することができる。
【0012】
清掃用シート1が吸水層4と掻き取り層5からなる2層構造を有していることで、清掃用シート1は、その一方の面が、吸水層4の表面から構成され、もう一方の面が、掻き取り層5の表面から構成されている。しかし、清掃用シート1の構造はこれに限られず、例えば吸水層4の各面に第1及び第2の掻き取り層5がそれぞれ配置されてなる3層構造の積層体から清掃用シート1を構成してもよい。このような構造の清掃用シート1は、その一方の面が、第1の掻き取り層5の表面から構成され、もう一方の面が、第2の掻き取り層5の表面から構成されている。
【0013】
清掃用シート1には、掻き取り層5の表面に凹凸を形成してもよい。例えば
図1に示すとおり、掻き取り層5の表面に、菱形格子状のヒートエンボス加工を施すことで、菱形格子状の凹部
8を形成してもよい。この菱形格子状の凹部
8によって取り込まれた領域は、凸部
9からなる非エンボス領域となっている。凹部
8は、ヒートエンボス加工による熱及び圧力の適用によって、凸部
9からなる非エンボス領域よりも圧密化している。このヒートエンボス加工は、掻き取り層5の表面に凹凸を形成することに加えて、掻き取り層5と吸水層4とを接合するためにも用いることができる。
【0014】
凹部
8のパターン形状は菱形格子状に限定されず、線状、点状、特定模様の任意の形状が採用され得る。凹部
8の総面積は、清掃用シート1の清掃面の面積に対して5%以上、特に10%以上であることが好ましい。また、50%以下、特に40%以下であることが好ましい。具体的には、凹部
8の総面積は、清掃用シート1の清掃面の面積に対して5%以上50%以下であることが好ましく、10%以上40%以下であることが更に好ましい(以下この値を凹部
8の面積率という)。凹部
8の面積率をこの範囲内に設定することで、清掃時の表面強度と清掃性とを首尾よく両立させることができる。
【0015】
清掃用シート1には、ミシン目(図示せず)が形成されていてもよい。ミシン目に沿って清掃用シート1を裁断することで、清掃用シート1を細分化して使用しやすい大きさにすることができる。清掃用シート1を使いやすい大きさや形状に細分化できる限り、ミシン目のパターン形状に特に制限はない。
【0016】
清掃用シート1を構成する一方の層である掻き取り層5は、太径繊維2を含んでいる。本発明において太径繊維2とは、繊度が10dtex以上150dtex以下である繊維のことを言う。繊度がこのように大きい繊維は、繊維の剛性が高くなるので、汚れに対する掻き取り性が十分に高いものとなる。この観点から、太径繊維2の繊度は10dtex以上、特に20dtex以上、とりわけ30dtex以上であることが好ましい。また、150dtex以下、特に130dtex以下、とりわけ120dtex以下であることが好ましい。具体的には、太径繊維2の繊度は、上述のとおり10dtex以上150dtex以下であることが好ましく、20dtex以上130dtex以下であることが更に好ましく、30dtex以上120dtex以下であることが一層好ましい。この範囲の繊度の太径繊維2を採用することで、清掃用シート1は、例えば鍋やフライパンにこびりついた汚れの掻き取り性に一層優れたものとなる。
【0017】
太径繊維2は短繊維であることも好ましい。これによって太径繊維2は曲がりにくくなり、そのことによっても剛性が向上する。また、太径繊維2として短繊維を用いることで、後述するとおり、エアレイ法によって掻き取り層5を首尾よく形成することができる。これらの観点から、太径繊維2の繊維長は、2mm以上であることが好ましく、3mm以上であることが更に好ましく、4mm以上であることが一層好ましい。また15mm以下であることが好ましく、8mm以下であることが更に好ましく、6mm以下であることが一層好ましい。具体的には、太径繊維2の繊維長は、2mm以上15mm以下であることが好ましく、3mm以上8mm以下であることが更に好ましく、4mm以上6mm以下であることが一層好ましい。この範囲の繊維長を採用することで、太径繊維2の剛性を十分に高くすることができる。また、掻き取り層5からの太径繊維2の脱落を効果的に防止することができる。更に、エアレイ法によって掻き取り層5を首尾よく形成することができる。
【0018】
太径繊維2は、掻き取り層5中に10質量%以上含まれる(掻き取り層5の構成繊維の中の太径繊維量)ことが、汚れに対する十分な掻き取り性能が発現する観点から好ましい。掻き取り性能は、掻き取り層5に占める太径繊維2の割合が30質量%以上、特に50質量%以上であることで一層高くなる。この観点から、掻き取り層5に占める太径繊維2の割合は100質量%であってもよい。場合によっては、後述するとおり、掻き取り層5に、太径繊維2以外の繊維を含有させてもよい。その場合、掻き取り層5に占める太径繊維2の割合は90質量%以下であることが好ましい。具体的には、掻き取り層5に占める太径繊維2の割合は10質量%以上100質量%以下であることが好ましく、10質量%以上90質量%以下であることが更に好ましく30質量%以上90質量%以下であることが一層好ましく、50質量%以上90質量%以下であることが更に一層好ましい。
【0019】
太径繊維2としては、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂、ナイロンなどのポリアミド系樹脂、各種金属、ガラスなどを原料とする繊維が用いられる。樹脂製の太径繊維2を用いる場合、その樹脂硬度は、ロックウェル硬さでR40〜R150の範囲が好ましい。特に、汚れの掻き取り性を向上させる点からは、R80〜R150の樹脂を用いることが好ましい。前記の各種原料のうち、2種の樹脂の組み合わせからなる複合繊維(芯鞘型複合繊維やサイド・バイ・サイド型複合繊維)を用いることもできる。特に太径繊維2として、清掃対象面(ステンレス、タイル、琺瑯、人工大理石等)への傷つき性がなく、かつ掻き取り性に優れているアクリル系繊維、ポリエステル系繊維、塩化ビニル系繊維、ポリアミド繊維及びポリオレフィン系繊維が好ましい。更に、繊維の脱落を防止する面からは、熱融着性繊維を用いることも好ましい。熱融着性繊維としては、例えば融点の異なる低融点樹脂と高融点繊維とからなり、かつ該低融点樹脂が繊維表面の少なくとも一部を形成している熱融着性複合繊維を用いることが好適である。低融点樹脂/高融点樹脂の組み合わせとしては、高密度ポリエチレン/ポリプロピレン、低密度ポリエチレン/ポリプロピレン、ポリプロピレン/エチレン・ブテン−1結晶性共重合体、高密度ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート、ナイロン−6/ナイロン−66、低融点ポリエステル/ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン/ポリエチレンテレフタレート等が例示できる。
【0020】
熱融着性複合繊維の形態は、並列型、鞘芯型、偏心鞘芯型、三層以上の多層型、中空並列型、中鞘芯型、異形鞘芯型、海島型等で、かつ低融点樹脂が繊維表面の少なくとも一部を形成した構造であればよい。前記熱融着性複合繊維のうち好ましいものは、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン・ブチレン−1結晶性共重合体、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンイソフタレートとの共重合ポリエステルなどの低融点ポリエステルから選ばれるいずれか1種の熱可塑性樹脂を低融点樹脂とし、ポリプロピレン又はポリエチレンテレフタレートを高融点樹脂とする並列型、鞘芯型、偏心鞘芯型の複合繊維である。特に、汚れの掻き取り性が良好になる点から、低融点ポリエステルとポリエチレンテレフタレートとの複合繊維を用いることが好ましい。
【0021】
太径繊維2として、捲縮性を有しているものを用いることもできる。これによって、清掃用シート1の厚み感(嵩高性)を向上させることができ、良好な拭き心地が得られる。捲縮形態としては、スパイラル型、ジグザグ型、U字型などがあり、これらのいずれもが好適に用いられる。
【0022】
太径繊維2は1種又は2種以上を用いることができる。清掃用シート1に2種以上の繊維が含まれている場合には、前記の繊維長及び繊度を満たす太径繊維が、合計で前記の含有量を満たすように含まれていることが好ましい。
【0023】
掻き取り層5中に、太径繊維2以外の繊維が含まれている場合、該繊維としては、太径繊維2よりも繊度の小さい細径繊維を用いることができる。細径繊維としては、太径繊維2よりも繊度が小さいことを条件として、繊度が0.5detx以上、特に1detx以上のものを用いることが好ましい。また繊度が5detx以下、特に3detx以下のものを用いることが好ましい。具体的には、繊度が0.5detx以上5detx以下、特に1detx以上3detx以下の繊維を用いることが好ましい。掻き取り層5中に、太径繊維2及び細径繊維が含まれている場合、掻き取り層5に占める細径繊維の割合は1質量%以上、特に5質量%以上であることが好ましく、50質量%以下、特に30質量%以下であることが好ましい。具体的には、掻き取り層5に占める細径繊維の割合は1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、特に5質量%以上30質量%以下であることが更に好ましい。掻き取り層5中に、太径繊維2に加えて細径繊維を含有させることで、掻き取り層5の研摩性ないし掻き取り性を維持しつつ、その坪量を小さくすることができる。
【0024】
細径繊維は、太径繊維2と同様に短繊維であることが好ましい。この場合、細径繊維の繊維長は、2mm以上であることが好ましく、3mm以上であることが更に好ましく、4mm以上であることが一層好ましい。また15mm以下であることが好ましく、8mm以下であることが更に好ましく、6mm以下であることが一層好ましい。具体的には、細径繊維の繊維長は、2mm以上15mm以下であることが好ましく、3mm以上8mm以下であることが更に好ましく、4mm以上6mm以下であることが一層好ましい。また細径繊維は、太径繊維2と同種又は異種の熱可塑性樹脂から構成されていることが好ましい。特に、細径繊維は熱融着性繊維から構成されていることが好ましい。
【0025】
掻き取り層5においては、太径繊維2の繊維交点が接合されている。そして、複数の太径繊維2が起立して、その先端部が掻き取り層5の表面に存在している。太径繊維2が起立するとは、太径繊維2の長手方向(繊維断面と直交する方向)が掻き取り層5の面内方向を0度(傾きなく繊維が横になっている)とすると、該面内方向と太径繊維2の長手方向とのなす角度が好ましくは30度以上、更に好ましくは45度以上傾斜していることをいう。太径繊維2が起立することで、掻き取り層5の表面には太径繊維2の一端が表面側から平面視できる。掻き取り層5に含まれる太径繊維2は、該太径繊維2のうち、好ましくは50%以上、更に好ましくは80%以上の本数のものが起立している。太径繊維2の繊維交点が接合されており、かつ太径繊維2の先端部が掻き取り層5の表面に存在していることで、掻き取り層5に十分な研磨性ないし掻き取り性が付与される。この場合、掻き取り層5を構成するすべての太径繊維2の先端部が掻き取り層5の表面に存在していることは要せず、目的とする程度の十分な掻き取り性能が発現する程度であればよい。
【0026】
掻き取り層5の表面に太径繊維2の先端部を存在させるためには、掻き取り層5をエアレイ法によって形成することが有利である。具体的には、短繊維からなる太径繊維2をエアレイ法によって堆積させてウェブを形成し、このウェブにおける太径繊維2の交点を接合することで、太径繊維2の先端部が掻き取り層5、すなわちエアレイド不織布の表面に存在しやすくなる。太径繊維2の交点を接合する手段としては、例えば接着剤を用いた接着や、熱融着を用いることができる。
【0027】
掻き取り層5の坪量は、20g/m
2以上、特に30g/m
2以上であることが好ましく、200g/m
2以下、特に150g/m
2以下であることが好ましい。具体的には、掻き取り層5の坪量の坪量は、20g/m
2以上200g/m
2以下であることが好ましく、30g/m
2以上150g/m
2以下であることが更に好ましい。掻き取り層5の坪量をこの範囲に設定することで、清掃用シート1は、キッチン周りや水周りのこびりつき汚れに対する汚れの除去性が一層高くなるので好ましい。
【0028】
掻き取り層5は、これを構成する太径繊維2どうしの間に空間を有している。かかる空間は、太径繊維2が起立して掻き取り層5に存在しかつ繊維交点が固定されていることで、太径繊維2間に該空間が維持され易い。この空間には、
図3に示すとおり、複数の研磨粒子6が存在している。研磨粒子6はかかる空間に存在し、研磨粒子6が繊維に接していても、接着剤などで固定されることなく存在する。なお、
図3中、符号7は、太径繊維2の交点を接着している接着剤又は融着部位を示している。研磨粒子6は、太径繊維2の掻き取り性能との相乗効果によって、掻き取り層5の研磨性能を向上させる目的で用いられる。研磨粒子6は、掻き取り層5から脱離可能に前記空間に存在している。研磨粒子6が脱離可能に存在しているとは、清掃用シート1を湿潤させないそのままの状態において、清掃用シート1に振動や折り曲げ等に起因する外力を加えたときに、清掃用シート1の掻き取り層5から研磨粒子6の少なくとも一部が脱落するような態様で、研磨粒子6が掻き取り層5中に存在していることを言う。したがって研磨粒子6は、例えば先に背景技術の項で述べた特許文献2に記載の技術と異なり、接合剤によって繊維に固着された状態になっていない。特に水や水溶液に触れて初めて研磨粒子が脱落するのではなく、乾燥状態で振動などの外力で簡単に脱落する点で特許文献2に記載の技術と異なる。このような態様で研磨粒子6を掻き取り層5中に存在させるための具体的な手段については後述する。
【0029】
〔研磨粒子の脱落量〕
掻き取り層5からの研磨粒子6の脱落の程度は次の方法で測定できる。清掃用シート1を10cm×10cmの正方形に切り出して試験片を得る。この試験片を、20℃±5℃の環境下において、掻き取り層が外方を向くループにする。ループは試験片のほぼ中央が弧を描くようにして、両端部同士は合掌させて把持部とする。把持部を上、ループを下側とし把持部を鉛直上方に位置させた状態下に、ループを上下に振動させる。上下動のストロークは1cmとし、周期は3回/秒とする。この上下動を1分間行う。この上下動によって脱落した物質を回収し、その質量(g)を測定する。その測定結果に100を乗じて、研磨粒子6の脱落量(g/m
2)とする。
【0030】
研磨粒子6は、掻き取り層5の厚み方向の全域にわたって均一に存在していることが好ましい。ただし、掻き取り層5の最表面を含む表面域5Aには研磨粒子6が実質的に存在していないことが有利である。該表面域5Aは、掻き取り層5を構成する複数の太径繊維2のそれぞれの先端部2Aの集合体で構成された表面厚さ方向の領域である。特に、掻き取り層5を構成する太径繊維2のうち、掻き取り層5の表面に先端部が存在している太径繊維2は、該先端部を含む先端域2Aに研磨粒子6が実質的に付着していないことが有利である。実質的に付着していないとは、太径繊維2の先端域を拡大(50±5倍)したときに5本の太径繊維を選んで該太径繊維の先端部に観察される研磨粒子6の数が、掻き取り層5の厚み方向の中央部での、その選んだ太径繊維2に観察される研磨粒子6の数に対して10%以下であることを言う。厚み方向中央部とは、掻き取り層5をその厚み方向に三等分したときの中央部分を言う。このような態様で研磨粒子6が存在していることに起因して、清掃対象面の汚れを掻き取り層5によって除去するときに、該清掃対象面に研磨粒子6が素早く、かつ多量に放出される。その結果、汚れを素早く、かつ確実に除去することを容易に行うことができる。掻き取り層5の最表面にまで研磨粒子6が存在していると、清掃対象面が湿潤している場合、掻き取り層5の最表面に存在している研磨粒子6が湿潤してしまい、掻き取り層5から脱落しづらくなってしまう。その結果、研磨粒子6が清掃対象面に素早く供給されづらくなってしまう。先端域とは、先端部から太径繊維2の直径の5倍以内の深さ領域とする。
【0031】
研磨粒子6は、掻き取り層5の質量に対して150質量%以上、特に200質量%以上存在していることが好ましい。また、掻き取り層5の質量に対して900質量%以下、特に750質量%以下存在していることが好ましい。具体的には、研磨粒子6は、掻き取り層5の質量に対して150質量%以上900質量%以下存在していることが好ましく、200質量%以上750質量%以下存在していることが更に好ましい。研磨粒子6がこの範囲の割合で掻き取り層5中に存在していることで、太径繊維2による掻き取り性との相乗効果で、掻き取り層5の研磨性能が一層向上する。
【0032】
研磨粒子6としては、水不溶性の粒子を用いることが好ましい。研磨粒子6は、そのモース硬度が3以上7以下であることが研磨性の点から好ましい。そのような研磨粒子6としては、例えば炭酸カルシウム、ゼオライト、シリカ(珪石粉)などが挙げられる。これらの研磨粒子6は単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。研磨粒子6はその平均粒子径が5μm以上、特に10μm以上であることが好ましい。また30μm以下、特に20μm以下であることが好ましい。具体的には、研磨粒子6の平均粒子径は5μm以上30μm以下であることが好ましい。研磨粒子はこのような平均粒子径を有しかつ粒子径に分布を有することが好ましい。この範囲の硬度及び平均粒子径の研磨粒子6を用いることにより、清掃対象面に傷が付くことを効果的に防止しつつ、十分な研磨効果を得ることができる。
【0033】
研磨粒子6の平均粒子径は、電気抵抗試験法(コールターカウンター法)で測定される。
【0034】
掻き取り層5には、上述した研磨粒子6に加えて、他の洗浄成分が含まれていてもよい。例えば汚れに対する洗浄効果を高めることを目的として、各種界面活性剤を用いることができる。具体的には、アルキルベンゼンスルホン酸等の陰イオン界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の非イオン界面活性を用いることができる。更に、すすぎ効果を高めることを目的として、アクリル酸、メタクリル酸、若しくはマレイン酸の重合体又はこれらの塩、並びにマレイン酸と他のビニル系モノマーとの共重合体又はこれらの塩などを用いることもできる。
【0035】
研磨粒子6は、例えば以下に述べる方法によって掻き取り層5中に存在させることができる。まず、常法に従い研磨粒子6が付与される前の状態の清掃用シートを準備する。付与とは研磨粒子が掻き取り層に存在させるよう塗布することをいう。清掃用シート1の具体的な製造方法は、例えば特開2003−61885号公報に記載されている。この準備とは別に、研磨粒子6を含むスラリーを準備する。スラリーの液媒体としては水を用いることが簡便である。スラリーの具体例は、例えば特開2006−104264号公報や特開2006−104265号公報に記載されている。研磨粒子6の分散の点からスラリーに微量の界面活性剤を含ませてもよい。その場合、スラリーの質量に対して好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10重量%以下の量で界面活性剤を含有させることが好ましい。界面活性剤は、スラリー中に含有させても良いが、含有させない方がより好ましい。スラリーに界面活性剤を微量含ませるか、又は含ませないことで、スラリーを塗布し乾燥後、研磨粒子6は掻き取り層5の繊維に固着することなく繊維間に剥離可能に保持される。固着することないとは、繊維に研磨粒子6が接着や融着で固定しておらず、かつ水溶液などの溶媒を使用しなくとも振動などを加えると、研磨粒子6の全部又は一部が掻き取り層5から脱落することを言う。
【0036】
研磨粒子6が付与される前の状態の清掃用シートのうち、掻き取り層5にスラリーを塗工する。塗工には例えばダイコータ、グラビアロールコータを用いることができる。この塗工によって、掻き取り層5には研磨粒子6を含む湿潤状態の塗膜が形成される。この塗膜が湿潤状態のうちに、掻き取り層5に、表面が平滑な部材を押し当てる。この押し当てによって、掻き取り層5を構成する太径繊維2で形成される空間内にスラリーを充填するとともに、掻き取り層5の表面域5Aからスラリーを除去する。その結果、掻き取り層5の最表面を含む表面域5Aに、研磨粒子6が実質的に存在しないようにする。それによって、掻き取り層5の表面に先端部が存在している太径繊維2について、該先端部を含む先端域2Aに研磨粒子6が実質的に付着していないようにする。本発明では、前述のとおり先端域とは、先端部から太径繊維の直径の5倍以内の領域(
図3中、符号2Aで示す領域)とする。
【0037】
前記の押し当てに用いられる部材としては、例えば合成樹脂製のフィルム、金属板、天然繊維糸、合成繊維糸などが用いられる。これらのうち、特に合成樹脂製のフィルムが好ましい。
【0038】
前記の押し当てによって、掻き取り層5の最表面を含む表面域5Aに、研磨粒子6が実質的に存在しないようにした後、塗膜を乾燥させる。塗膜の乾燥後、掻き取り層5の表面を拭き取り部材で拭き取る。この拭き取りによって、掻き取り層5の最表面を含む表面域5Aに、研磨粒子6が一層存在しないようにする。拭き取り部材としては、例えば各種の不織布や織布等の繊維シート、合成樹脂繊維を用いたブラシ、天然繊維を用いたブラシなどを用いることができる。
【0039】
次に、清掃用シート1における吸水層4について説明する。吸水層4は、水の吸収保持が可能な層である。この目的のために、吸水層3は親水性繊維3を含んで構成されていることが好ましい。親水性繊維としては、例えばセルロース系の繊維が好適に用いられる。その例としてはパルプ繊維、コットン繊維、レーヨン繊維等が挙げられ、特にパルプ繊維を用いることが好ましい。特にセルロース系の繊維として、針葉樹由来のパルプ繊維を用いることが、繊維3の脱落防止、及び適度なシート強度の発現の点から好ましい。
【0040】
吸水層4に含まれる親水性繊維3の繊維長は、該吸水層4の製造方法に応じて適宜適切な長さが選択される。例えば、吸水層4が、湿式抄紙法により製造される場合には、親水性繊維3の繊維長は0.1mm以上20mm以下、特に0.2mm以上15mm以下であることが好ましい。また、吸水層4が、エアレイ法により製造される場合には、親水性繊維3の繊維長は0.1mm以上15mm以下、特に0.3mm以上10mm以下であることが好ましい。エアレイ法の場合、繊維の交点は融着又は接着で接合されている。接着の場合、任意のバインダーを用いることができる。バインダーの具体例として、アクリロニトリル−ブタジエンゴムが挙げられる。
【0041】
吸水層4に占める親水性繊維3の割合は、10質量%以上100質量%以下、特に20質量%以上100質量%以下であることが、汚液の吸収性の点から好ましい。吸水層4に親水性繊維3以外の繊維が含まれる場合、該繊維としては、繊度が0.5dtex以上5detx以下、特に1dtex以上3detx以下で、かつ繊維長2mm以上15mm以下、特に3mm以上8mm以下の熱融着性繊維を用いることができる。これらの繊維は、吸水層4中に5質量%以上90質量%以下、特に10質量%以上80質量%以下含まれていることが好ましい。特に、掻き取り層5中に熱融着性繊維が含まれている場合は、該掻き取り層5と吸水層4との接合一体化を確実にする点から、前記熱融着性繊維を用いることが好ましい。該熱融着性繊維としては、例えば低融点のポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維、前述のような低融点樹脂と高融点樹脂とからなり、該低融点樹脂が繊維表面の一部を形成している複合繊維等を用いることができる。
【0042】
吸水層4の坪量は、30g/m
2以上、特に40g/m
2以上であることが好ましく、100g/m
2以下、特に80g/m
2以下であることが好ましい。具体的には、吸水層4の坪量の坪量は、30g/m
2以上100g/m
2以下であることが好ましく、40g/m
2以上80g/m
2以下であることが更に好ましい。吸水層4の坪量をこの範囲に設定することで、汚液の吸収保持を十分に行うことができる。また、掻き取り層5と吸水層4とを含む清掃用シート1の総坪量は、50g/m
2以上300g/m
2以下であることが好ましい。
【0043】
清掃用シート1は、先に述べたとおり、使用前の状態では乾式タイプのものである。使用に際しては、乾式のままとすることもでき、あるいは湿潤させて使用することもできる。湿潤させて使用する場合、清掃対象面、例えば硬質表面を水で湿潤させておき、湿潤状態の硬質表面を掻き取り層5で清掃し、次いで湿潤状態の該硬質表面の水分、つまり汚れを含んだ汚液を吸水層4で拭き取る、という手順で清掃を行うことができる。
【0044】
清掃用シート1による汚れの除去機構は、例えば湿潤させて使用する場合は次のとおりである。硬質表面を水で湿潤させておき、湿潤状態の硬質表面に、清掃用シート1における掻き取り層5側の面を押し当てて、こすりつける。これによって、
図4に示すとおり、掻き取り層5から研磨粒子6が放出されて清掃対象面Cに供給される。放出された研磨粒子6と、掻き取り層5の表面に多数存在している太径繊維2の先端部が、清掃対象面Cに存する汚れDを研摩ないし掻き取る。これらの作用によって、汚れDが清掃対象面Cから除去される。除去された汚れDは、水中に溶け込むかあるいは分散して、水とともに吸水層4に吸収される。このようにして、清掃対象面Cが清浄な状態となる。
【0045】
清掃用シート1においては、面内方向の通気度T
MDよりも垂直厚み方向の通気度T
VDの方が小さいことが好ましい。また、掻き取り層5の垂直厚み方向の通気度T
VDよりも吸水層4の垂直厚み方向の通気度T
VDの方が小さいことが好ましい。こうすることで、研磨粒子6は、掻き取り層5の繊維間に保持されるが、吸水層4側に裏抜けすることなく研磨粒子6が掻き取り層5内に留まり、清掃時には水などの液媒体を加えなくとも研磨粒子6が清掃対象面に放出されやすい。このように通気度を制御することで研磨粒6子の裏抜けを防止することで、清掃用シート1の厚み方向において研磨粒子6は掻き取り層5の裏面側(吸水層4)寄りの位置に相対的に多く存在し、表面側(清掃面側)に相対的に少ないか、又は存在しないようにすることが好ましい。垂直方向と面内方向の通気度比を制御するには、例えば構成繊維の起立の程度を制御させればよい。構成繊維を起立させることで、垂直方向の通気度が増え面内方向の通気度は低くなる。
【0046】
前記の比率T
MD/T
VDの値を、上述の範囲内に設定するためには、例えばエアレイ法で掻き取り層5を形成するときのエアレイの条件や、使用する太径繊維2の長さ及び繊度などを適切に調整して、更に前述のとおり掻き取り層5における太径繊維2の起立の程度や、太径繊維2の繊維存在密度をコントロールすればよい。
【0047】
清掃用シート1は、例えばその複数枚を規則的に積層して積層体となし、該積層体を包装材内に収容して清掃用シート包装体となすことができる。包装材は、清掃用シート1を該包装材内から取り出すための開口部と、該開口部を閉鎖するリシール可能な閉鎖部材とを備えていることが好ましい。前記の積層体においては、例えば清掃用シート1における吸水層4の側が上方を向くように、複数枚の清掃用シート1が規則的に積み上げられている。この状態の積層体を、吸水層4の側が開口部の側を向くように包装材内に収納することが好ましい。このような収納態様を採用することで、包装材内から清掃用シート1を指で摘まんで取り出すときに、指が受ける刺激感(起立した太径繊維2の先端が指を刺激する感覚)が減じられるので好ましい。この理由は、包装材内から清掃用シート1を指で摘まんで取り出すときに、指の腹は吸水層4と接触するだけであり、ちくちくとした刺激感を与えることのある掻き取り層5が指の腹と接触しづらいからである。吸水層側が判別しやすいよう、かき取り側であることを明示したり、印をつけておくことが好ましい。
【0048】
前記の包装材は、周縁部に開孔又はフックが設けられた別包装材に内封された別包装体であることが、中身の保護の点から好ましい。別包装体の開孔又はフックは別包装体を吊り下げ可能にする目的で設けられている。この別包装体は、これを店頭陳列する場合に、開孔又はフックによって容易に吊り下げ可能である点で有利である。また、この別包装体はリシール可能となっていてもよい。
【0049】
前記の包装材は、別包装材を用いずに直接、周縁部に開孔又はフックを設けてもよい。また、包装材リシール可能となっていてもよい。
【0050】
清掃用シート1の別の包装態様として、清掃用シート1が、包装材内に1枚収納されて個別包装されている清掃用シートの個別包装体が挙げられる。この個別包装体においては、開封し易いように切り込み線やミシン目が入っていてもよい。個別包装材の周縁部には開孔又はフックが設けられていることが好ましい。開孔又はフックは個別包装体を吊り下げ可能にする目的で設けられている。この個別包装体は、これを店頭陳列する場合に、開孔又はフックによって容易に吊り下げ可能である点で有利である。更に個別包装体を複数個列状に配列させて、1個目の個別包装体を開孔又はフックで吊り下げ可能とし、2個目以降は5個ないし10個を繋ぎ目又はミシン目で切り離し可能とした状態で、店舗に吊るして切り離すなどして販売することができる。
【0051】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば、これまでに説明してきた清掃用シート1は、乾式タイプのものであったが、これに代えて清掃用シート1に水、又は水と界面活性剤とを含む水性洗浄剤を含浸させて、湿式タイプのものとしてもよい。
【0052】
また前記実施形態においては、掻き取り層5中に研磨粒子6を施すときに、表面が平滑な部材を用い、研磨粒子6を含むスラリーの塗膜に該部材を押し当て、その後に、乾燥した塗膜を繊維シートで拭き取る操作を行ったが、該繊維シートで拭き取る操作は行わなくてもよい。
【0053】
上述した実施形態に関し、本発明は更に以下の清掃用シートを開示する。
<1>
掻き取り層と、パルプ繊維を含む吸水層とが積層されてなる清掃用シートであって、
前記掻き取り層は、太径繊維の繊維交点が接合されており、かつ複数の該太径繊維が起立して、その先端部が該掻き取り層の表面に存在しているエアレイド不織布からなり、
前記太径繊維は、その繊度が10dtex以上150dtex以下であり、かつ前記掻き取り層中に10質量%以上含まれており、
前記掻き取り層は、前記太径繊維どうしの間に空間を有し、該空間に研磨粒子が脱離可能に存在しており、
前記掻き取り層の表面に先端部が存在している前記太径繊維は、該先端部を含む先端域に、前記研磨粒子が実質的に付着していない、清掃用シート。
【0054】
<2>
前記掻き取り層中に、前記太径繊維と、該太径繊維よりも繊度の小さい細径繊維とを含有させた、前記<1>記載の清掃用シート。
<3>
前記掻き取り層に含まれる前記太径繊維が、熱融着性繊維である前記<1>又は<2>に記載の清掃用シート。
<4>
前記掻き取り層の表面に、凹凸が形成されている前記<1>ないし<3>のいずれか1に記載の清掃用シート。
<5>
前記凹部の総面積は、清掃用シートの清掃面の面積に対して好ましくは5%以上、更に好ましくは10%以上であり、好ましくは50%以下、更に好ましくは40%以下である前記<4>に記載の清掃用シート。
<6>
ミシン目が形成されている前記<1>ないし<5>のいずれか1に記載の清掃用シート。
【0055】
<7>
前記清掃用シートは硬質表面の清掃用であり、該清掃用シートは、乾式タイプのものであり、洗浄液等の液体成分を含んでいない前記<1>ないし<6>のいずれか1に記載の清掃用シート。
<8>
前記清掃用シートに占める前記液体成分の割合が3質量%以下である前記<7>に記載の清掃用シート。
<9>
前記掻き取り層の表面に、菱形格子状のヒートエンボス加工が施されている前記<1>ないし<8>のいずれか1に記載の清掃用シート。
<10>
前記太径繊維の繊度は好ましくは20dtex以上、更に好ましくは30dtex以上であり、好ましくは150dtex以下、更に好ましくは130dtex以下、一層好ましくは120dtex以下である前記<1>ないし<9>のいずれか1に記載の清掃用シート。
<11>
前記太径繊維は短繊維であり、その繊維長は、好ましくは2mm以上、更に好ましくは3mm以上であり、一層好ましくは4mm以上であり、また15mm以下であり、好ましくは8mm以下であり、特に好ましくは6mm以下である前記<1>ないし<10>のいずれか1に記載の清掃用シート。
【0056】
<12>
前記太径繊維の割合が好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、太径繊維以外の繊維を含有させる場合、太径繊維の割合は90質量%以下である前記<1>ないし<11>のいずれか1に記載の清掃用シート。
<13>
前記太径繊維として、捲縮性を有しているものを用い、捲縮形態としては、スパイラル型、ジグザグ型又はU字型である前記<1>ないし<12>のいずれか1に記載の清掃用シート。
<14>
掻き取り層中に、太径繊維以外の繊維が含まれている場合、該繊維として太径繊維よりも繊度の小さい細径繊維を用い、
細径繊維として、太径繊維よりも繊度が小さく、繊度が好ましくは0.5detx以上、更に好ましくは1detx以上のものを用い、繊度が好ましくは5detx以下、更に好ましくは3detx以下のものを用い、
掻き取り層に占める細径繊維の割合は好ましくは1質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である前記<1>ないし<13>のいずれか1に記載の清掃用シート。
<15>
掻き取り層中に、太径繊維以外の繊維が含まれている場合、該繊維として太径繊維よりも繊度の小さい細径繊維を用い、
細径繊維は、短繊維であり、細径繊維の繊維長は、好ましくは2mm以上、更に好ましくは3mm以上、一層好ましくは4mm以上であり、また好ましくは15mm以下、更に好ましくは8mm以下、一層好ましくは6mm以下であり、
細径繊維は、熱融着性繊維から構成されている前記<1>ないし<14>のいずれか1に記載の清掃用シート。
<16>
前記掻き取り層の坪量は、好ましくは20g/m
2以上、更に好ましくは30g/m
2以上であり、好ましくは200g/m2以下、更に好ましくは150g/m2以下である前記<1>ないし<15>のいずれか1に記載の清掃用シート。
【0057】
<17>
前記太径繊維のうち、掻き取り層の表面に先端部が存在している太径繊維は、該先端部を含む先端域に研磨粒子が実質的に付着しておらず、太径繊維の先端域を拡大したときに観察される研磨粒子の数が、掻き取り層の厚み方向の中央部での太径繊維に観察される研磨粒子の数に対して10%以下である前記<1>ないし<16>のいずれか1に記載の清掃用シート。
<18>
研磨粒子6は、掻き取り層の質量に対して好ましくは150質量%以上、更に好ましくは200質量%以上存在し、掻き取り層の質量に対して好ましくは900質量%以下、更に好ましくは750質量%以下存在している前記<1>ないし<17>のいずれか1に記載の清掃用シート。
<19>
研磨粒子として水不溶性の粒子を用い、該粒子のモース硬度が好ましくは3以上7以下であり、該研磨粒子が炭酸カルシウム、ゼオライト又はシリカ(珪石粉)であり、これらの研磨粒子は単独で又は2種以上組み合わせて用いられ、研磨粒子はその平均粒子径が好ましくは5μm以上、更に好ましくは10μm以上であり、好ましくは30μm以下、更に好ましくは20μm以下である前記<1>ないし<18>のいずれか1に記載の清掃用シート。
<20>
吸水層に親水性繊維が含まれ、該親水性繊維の繊維長は、吸水層が湿式抄紙法により製造される場合には、好ましくは0.1mm以上20mm以下、更に好ましくは0.2mm以上15mm以下であり、吸水層がエアレイ法により製造される場合には、好ましくは0.1mm以上15mm以下、更に好ましくは0.3mm以上10mm以下である前記<1>ないし<19>のいずれか1に記載の清掃用シート。
<21>
吸水層に親水性繊維が含まれ、吸水層に占める親水性繊維の割合は、好ましくは10質量%以上100質量%以下、更に好ましくは20質量%以上100質量%以下であり、吸水層に親水性繊維以外の繊維が含まれる場合、該繊維としては、繊度が好ましくは0.5dtex以上5detx以下、更に好ましくは1dtex以上3detx以下で、かつ繊維長が好ましくは2mm以上15mm以下、更に好ましくは3mm以上8mm以下の熱融着性繊維を用い、これらの繊維は、吸水層中に好ましくは5質量%以上90質量%以下、更に好ましくは10質量%以上80質量%以下含まれている前記<1>ないし<20>のいずれか1に記載の清掃用シート。
【0058】
<22>
吸水層の坪量は、好ましくは30g/m
2以上、更に好ましくは40g/m
2以上であり、好ましくは100g/m
2以下、更に好ましくは80g/m
2以下である前記<1>ないし<21>のいずれか1に記載の清掃用シート。
<23>
掻き取り層と吸水層からなる清掃用シートの総坪量は、好ましくは50g/m
2以上300g/m
2以下である前記<1>ないし<22>のいずれか1に記載の清掃用シート。<24>
面内方向の通気度T
MDよりも垂直厚み方向の通気度T
VDの方が小さく、掻き取り層の垂直厚み方向の通気度T
VDよりも吸水層の垂直厚み方向の通気度T
VDの方が小さい前記<1>ないし<23>のいずれか1に記載の清掃用シート。
<25>
清掃用シートの厚み方向において研磨粒子は掻き取り層の裏面側(吸水層)寄りの位置に相対的に多く存在し、表面側(清掃面側)に相対的に少ないか、又は存在しない前記<1>ないし<24>のいずれか1に記載の清掃用シート。
<26>
前記<1>ないし<25>のいずれか1に記載の清掃用シートを、使用前の状態では乾式タイプものとなし、使用に際しては、乾式のまま、あるいは湿潤させて使用し、
湿潤させて使用する場合、清掃対象面を水で湿潤させておき、湿潤状態の清掃対象表面を掻き取り層で清掃し、次いで湿潤状態の該清掃対象表面の水分を含む汚れを含んだ汚液を吸水層で拭き取る、清掃方法。
【0059】
<27>
清掃対象面である硬質表面を水で湿潤させておき、湿潤状態の硬質表面に、前記<1>ないし<25>のいずれか1に記載の清掃用シートにおける掻き取り層側の面を押し当てて、こすりつけ、これによって、掻き取り層から研磨粒子を放出させて清掃対象面Cに供給し、
放出された研磨粒子と、掻き取り層の表面に多数存在している太径繊維の先端部で、清掃対象面に存する汚れを研摩ないし掻き取り、汚れを清掃対象面から除去し、
除去された汚れを、水中に溶け込ませるかあるいは分散させて、水とともに吸水層に吸収し、このようにして、清掃対象面を清浄な状態とする、前記<26>に記載の清掃方法。
<28>
前記<1>ないし<25>のいずれか1に記載の清掃用シートが複数枚積層されて、包装材内に収納されている清掃用シート包装体であって、
前記包装材は、前記清掃用シートを取り出すための開口部と、該開口部を閉鎖するリシール可能な閉鎖部材とを備えており、
前記清掃用シートは、その吸水層の側が前記開口部の側を向くように前記包装材内に積層されている、清掃用シート包装体。
<29>
前記<1>ないし<25>のいずれか1に記載の清掃用シートが、包装材内に1枚収納されて個別包装されている清掃用シート包装体であって、
前記包装材の周縁部に開孔又はフックが設けられており、該開孔又は該フックによって吊り下げが可能になっている清掃用シート包装体。
<30>
前記<1>ないし<25>のいずれか1に記載の清掃用シートの製造方法であって、
研磨粒子が付与される前の清掃用シートにおける掻き取り層に、研磨粒子を含むスラリーを塗工して塗膜を形成し、
前記塗膜が湿潤状態のうちに、前記掻き取り層に、表面が平滑な部材を押し当てて、該掻き取り層の表面域からスラリーを除去する工程を有する、清掃用シートの製造方法。
<31>
前記塗膜を乾燥させた後、掻き取り層の表面域を繊維からなる拭き取り部材で拭き取る工程を更に有する前記<30>に記載の清掃用シートの製造方法。
【実施例】
【0060】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」及び「部」はそれぞれ「質量%」及び「質量部」を意味する。
【0061】
〔実施例1〕
(1)掻き取り層の製造
太径繊維(45g/m
2)と細径繊維(15g/m
2)を混合して原料を調整した。芯がポリエチレンテレフタレート(PET)で、鞘が低融点ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる芯鞘構造の熱融着性複合繊維(以下「PET・PET」と表記する。)を太径繊維として使用した。この太径繊維の繊度は56dtex、繊維長は5mmであった。細径繊維には、芯がポリエチレンテレフタレート(PET)で、鞘が低融点ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる芯鞘構造の熱融着性複合繊維(以下「PET・PET」と表記する。)を使用した。この細径繊維の繊度は2.2dtex、繊維長は5mmであった。この繊維原料からエアレイ法により坪量45g/m
2のウェブを形成した。このウェブにおける構成繊維どうしの交点を熱融着によって接着し、掻き取り層用エアレイド不織布を得た。
【0062】
(2)吸水層の製造
パルプ繊維(長さ加重平均繊維長2.5mm)20g/m
2と、熱融着性繊維としてのPET・PET複合繊維40g/m
2とを混合して原料を調製した。PET・PET複合繊維の繊度は2.2dtex、繊維長は5mmであった。この原料からエアレイ法によりウェブを形成した。
【0063】
(3)清掃用シートの製造
吸水層用繊維を含むエアレイ法によって形成されたウェブの片面に、掻き取り層用繊維を含むエアレイ法によって形成されたウェブを積層し、各ウェブの構成繊維同士の交点及び両ウェブ間を融着又はバインダーにより接着させて、吸水層用エアレイド不織布及び掻き取り層用不織布を形成するとともに、吸水層用エアレイド不織布とかき取り層用エアレイド不織布とを一体化させた。一体化の手段として、ヒートエンボスを用いた。ヒートエンボス加工のパターンは
図1に示すとおりとした。凹部の面積率は12%であった。掻き取り層の表面には、太径繊維の先端部が多数存在していた。このようにして得られた積層シートにおける掻き取り層に、研磨粒子を含むスラリーを塗工した。スラリーは、質量比で研磨粒子(炭酸カルシウム)を50%、界面活性剤を10%含み、残部が水からなるものであった。スラリーの塗工量は、乾燥後の固形分量が、以下の表1に示す値となるようにした。研磨粒子はその平均粒子径が20μmであった。スラリーの塗工によって形成された塗膜が湿潤状態のうちに、掻き取り層の表面を、ポリエチレンテレフタレートからなるフィルムで掻き取った。塗膜の乾燥後、掻き取り層の表面を坪量40g/m
2のパルプ不織布で拭き取った。このようにして目的とする清掃用シートを得た。顕微鏡観察の結果、この清掃用シートにおいては、掻き取り層の表面域に、研磨粒子が実質的に存在していなかった。
【0064】
〔実施例2ないし4並びに比較例1ないし3〕
以下の表1に示す条件を採用した以外は、実施例1と同様にして清掃用シートを得た。ただし比較例3のスラリーは、質量比で研磨粒子(炭酸カルシウム:平均粒径20μm)30%、界面活性剤30%残部が水からなるものを用いた。
【0065】
〔評価〕
得られた清掃用シートについて、研磨粒子の脱落量を上述の方法で測定した。また水垢汚れ洗浄力及び掻き取り感を以下の方法で評価した。それらの結果を以下の表1に示す。
【0066】
〔水垢汚れ洗浄力〕
ステンレス製(SUS304)プレートにSi水溶液(濃度160ppm)を90g/m
2塗布し、室温にて24時間風乾後、180℃90分加熱して、モデル水垢汚れを作成する。このモデル水垢汚れを各シートで5ないし20往復清拭し、清拭前後の状態を以下の基準で目視評価した。
○:汚れが残っていない
○△:光にかざすとわずかに見える
△:光にかざすとはっきり見える
×:容易にわかる
【0067】
〔掻き取り感〕
ステンレス製(SUS304)のプレートを清拭し、拭き心地を官能評価。
○:清拭面が点状に当たる。シャリシャリ感が強い。
○△:清拭面がやや広い点状に当たる。シャリシャリ感がやや強い。
△:清拭面が、広い点状に当たる。シャリシャリ感がやや弱い。
×:清拭面が、面状に当たる。シャリシャリ感が弱く、グリップ感が強い。
【0068】
【表1】
【0069】
表1に示す結果から明らかなとおり、各実施例の清掃用シートは、比較例の清掃用シートに比べて汚れの洗浄力が高く、かつ汚れの掻き取り感に優れたものであることが判る。比較例3では、得られたシートから研磨粒子が脱落することなく性能も劣る。この理由は、比較例3では、研磨粒子を繊維に付着させるときに用いたスラリーにおける界面活性剤の比率を高くしたことに起因して、研磨粒子が繊維に強固に付着したことによるものである。
【0070】
〔実施例5ないし10及び比較例4〕
以下の表2に示す条件を採用した以外は、実施例1と同様にして清掃用シートを得た。比較例4はスラリーを塗布しなかった(研磨粒子を含まない)。得られた清掃用シートについて、研磨粒子の脱落量を上述の方法で測定した。また水垢汚れ洗浄力及び掻き取り感を上述の方法で評価した。それらの結果を以下の表2に示す。
【0071】
【表2】
【0072】
表2に示す結果から明らかなとおり、各実施例の清掃用シートは、比較例の清掃用シートに比べて汚れの洗浄力が高く、汚れの掻き取り感に優れ、かつ泡立ち性が良好なものであることが判る。