(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6118390
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】遊技機
(51)【国際特許分類】
A63F 7/02 20060101AFI20170410BHJP
【FI】
A63F7/02 326G
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-248475(P2015-248475)
(22)【出願日】2015年12月21日
(62)【分割の表示】特願2012-29891(P2012-29891)の分割
【原出願日】2012年2月14日
(65)【公開番号】特開2016-64221(P2016-64221A)
(43)【公開日】2016年4月28日
【審査請求日】2015年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000154679
【氏名又は名称】株式会社平和
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤木 裕
【審査官】
瓦井 秀憲
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−325625(JP,A)
【文献】
特開2011−167456(JP,A)
【文献】
特開2001−190797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技機本体の正面側に設けられ、遊技球を貯留する貯留皿を有する上皿ユニットと、該上皿ユニットの下方に設けられ、遊技球を貯留する貯留皿を有する下皿ユニットとを備えた遊技機であって、
前記上皿ユニットの底部を構成する底面部材の鉛直下面は、前記遊技機本体の奥側から正面側に向かうに従って鉛直上方に傾斜しており、該底面部材のうち少なくとも鉛直下面は、ポリカーボネート、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ユリア樹脂、ケイ素樹脂、およびメラミン樹脂の群から選択される1または複数の樹脂で構成されており、
前記上皿ユニットの先端は、前記下皿ユニットの先端まで突出していることを特徴とする遊技機。
【請求項2】
遊技機本体の正面側に設けられ、遊技球を貯留する貯留皿を有する上皿ユニットと、該上皿ユニットの下方に設けられ、遊技球を貯留する貯留皿を有する下皿ユニットとを備えた遊技機であって、
前記上皿ユニットの底部を構成する底面部材の鉛直下面は、前記遊技機本体の奥側から正面側に向かうに従って鉛直上方に傾斜しており、該底面部材のうち少なくとも鉛直下面は、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアセタール、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、およびポリメタクリル酸メチルの群から選択される1または複数の樹脂に難燃剤を混合したもので構成されており、
前記上皿ユニットの先端は、前記下皿ユニットの先端まで突出していることを特徴とする遊技機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯留ユニットに対する火による器物損壊を抑制する遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、遊技機(パチンコ機)には、払い出された遊技球が貯留される貯留皿を有する貯留ユニットが、遊技機本体の正面側に設けられている。近年の遊技機には、貯留ユニットとして、払い出された遊技球を貯留するとともに発射機構に遊技球を供給する上皿ユニットと、上皿ユニットの鉛直下方に設けられ、上皿ユニットに貯留された遊技球が所定数を超えたときに、その超えた分の払い出された遊技球を貯留する下皿ユニットとが設けられている。このような上皿ユニットや下皿ユニットは、成形が容易であり、多種多様なデザインを施すことが可能な合成樹脂で構成されている。
【0003】
ところで、遊技者の中には、ライターやマッチで遊技機に火を付けたり、火のついたタバコを遊技機に押しつけたりして、遊技機に損傷を与える者(以下、単に不審者と称する)がいる。特に、上皿ユニットや下皿ユニットといった貯留ユニットの底部を構成する底面部材の鉛直下面は、周囲からの視認性が悪いため、いたずら目的や放火目的の器物損壊(以下、放火と称する)の対象となりやすい。また、遊技者は、下皿ユニットや球箱から上皿ユニットへ遊技球を移動するために、上皿ユニットと下皿ユニットの間や、下皿ユニットと球箱の間に手を入れることがある。したがって、火を付ける際の不審者の動作と、遊技球の移動を行う善意の遊技者の動作とは、区別がつきにくいこともあり、貯留ユニットの底部を構成する底面部材の鉛直下面は、放火の対象となりやすい。
【0004】
そこで、貯留ユニットの底面部材を中空形状とし、かかる中空の部分に炭酸水素ナトリウム等の消火剤を充填し、底面部材の鉛直下面を熱で溶けやすい材質で構成することで、鉛直下面が放火されたときに、鉛直下面が溶けて中空の部分が開放され消火剤が放出されて消火を行う技術が開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−156249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の技術では、放火後に遊技機の他の部分や他の遊技機への延焼を防止することはできるが、不審者による放火自体を抑制することはできない。
【0007】
また、演出の多様化に伴って、貯留ユニットには、演出操作装置やLED等の発光装置が設けられているものも多い。特に近年、よりダイナミックな演出を行うために、演出ボタン等の演出操作装置や発光装置が大型化する傾向にある。したがって、貯留ユニットにおいて、上述した特許文献1に記載された消火剤を充填するためのスペースを確保することが困難になってきている。
【0008】
本発明の目的は、貯留ユニットにおける底面部材の鉛直下面の周囲からの視認性を向上することで不審者による放火を抑制し、放火があったとしても延焼を防止可能な遊技機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の遊技機は、遊技機本体の正面側に設けられ、遊技球を貯留する貯留皿を有する上皿ユニットと、該上皿ユニットの下方に設けられ、遊技球を貯留する貯留皿を有する下皿ユニットとを備えた遊技機であって、前記上皿ユニットの底部を構成する底面部材の鉛直下面は、前記遊技機本体の奥側から正面側に向かうに従って鉛直上方に傾斜しており、該底面部材のうち少なくとも鉛直下面は、ポリカーボネート、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ユリア樹脂、ケイ素樹脂、およびメラミン樹脂の群から選択される1または複数の樹脂で構成されて
おり、前記上皿ユニットの先端は、前記下皿ユニットの先端まで突出していることを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の他の遊技機は、遊技機本体の正面側に設けられ、遊技球を貯留する貯留皿を有する上皿ユニットと、該上皿ユニットの下方に設けられ、遊技球を貯留する貯留皿を有する下皿ユニットとを備えた遊技機であって、前記上皿ユニットの底部を構成する底面部材の鉛直下面は、前記遊技機本体の奥側から正面側に向かうに従って鉛直上方に傾斜しており、該底面部材のうち少なくとも鉛直下面は、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアセタール、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、およびポリメタクリル酸メチルの群から選択される1または複数の樹脂に難燃剤を混合したもので構成されて
おり、前記上皿ユニットの先端は、前記下皿ユニットの先端まで突出していることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態における遊技機の開放状態の斜視図である。
【
図4】変形例の上皿ユニットを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0013】
図1は、本実施形態における遊技機1の開放状態の斜視図である。
図1に示すように、遊技機1は、略矩形状に組まれた四辺によって囲繞空間が形成される外枠2と、この外枠2に開閉自在に軸支され、不図示の遊技盤が保持される中枠3と、この中枠3と同様に、外枠2に開閉自在に軸支され、ガラス製または樹脂製の透過板4が保持される前枠5と、を備えている。
【0014】
図2は、遊技機1の正面図である。この図に示すように、前枠5の下部には、遊技機1の正面側に突出する操作ハンドル12が設けられている。この操作ハンドル12は、遊技者が回転操作可能に設けられており、遊技者が操作ハンドル12を回転させて発射操作を行うと、当該操作ハンドル12の回転角度に応じた強度で、不図示の発射機構によって遊技球が発射される。このようにして発射された遊技球は、遊技盤に設けられたレール間を上昇して遊技領域に導かれるとともに、遊技領域に設けられた入賞口に入賞することで、種々の遊技が進行制御され、また、遊技者に賞球として遊技球が払い出されることとなる。
【0015】
また、前枠5の上部位置や外枠2の最下部位置には、遊技機1の正面側に向けられたスピーカからなる音声出力装置22が設けられている。
【0016】
また、前枠5における遊技機1の幅方向略中央位置には、上皿ユニット(貯留ユニット)100が設けられている。上皿ユニット100は、遊技機1から払い出される賞球や、遊技機1とは別個に設置された遊技球貸出装置から貸し出される遊技球を貯留する。上皿ユニット100が遊技球で一杯になると、遊技球は吐出口30を通じて下皿ユニット200に導かれることとなる。
【0017】
下皿ユニット200は、上皿ユニット100の鉛直下方に設けられており、吐出口30を通じて導かれた遊技球を貯留する。また、下皿ユニット200の底面には、当該下皿ユニット200から遊技球を排出するための球抜き孔(不図示)が形成されている。この球抜き孔は、通常、開閉板(不図示)によって閉じられているが、球抜きつまみ201を図中左右方向にスライドさせることにより、当該球抜きつまみ201と一体となって開閉板がスライドし、球抜き孔から下皿ユニット200の下方に遊技球を排出することが可能となっている。そして、下皿ユニット200から排出された遊技球は、下皿ユニット200の鉛直下方(
図2中、Z軸方向)に配される不図示の球箱に貯留されることとなる。
【0018】
また、上皿ユニット100における遊技機1の幅方向略中央位置であって、かつ、透過板4よりも下方位置には、遊技者の押下操作を受け付けるボタンからなる演出操作装置110が設けられている。
【0019】
ところで、遊技者の中には、ライターやマッチで上皿ユニット100に火を付けたり、火のついたタバコを上皿ユニット100に押しつけたりして、遊技機1に損傷を与える不審者がいる。そこで、本実施形態では、上皿ユニット100の形状および材質を工夫することで、上皿ユニット100への放火を抑制し、また放火による上皿ユニット100からの延焼を防止する。以下、本実施形態にかかる上皿ユニット100について詳述する。
【0020】
(上皿ユニット100)
図3は、上皿ユニット100を説明するための図であり、
図2におけるXZ断面の部分拡大図である。
図3に示す矢印F方向を遊技機1の正面側とし、矢印R方向を遊技機1の奥側として説明する。
【0021】
図3に示すように、上皿ユニット100は、その上部であって、遊技機1における正面側に、ボタンからなる演出操作装置110を備えている。また、演出操作装置110の奥側には、遊技球を貯留する皿部120(貯留皿)が設けられている。さらに、上皿ユニット100の底部は、底面部材130によって構成されている。
【0022】
本実施形態において底面部材130の鉛直下面130aは、遊技機1(遊技機本体)の奥側から正面側に向かうに従って鉛直上方に傾斜している。すなわち、鉛直下面130aと、下皿ユニット200の皿部220の天面を含む水平面(
図3におけるXY平面、
図3中、破線で示す)との距離は、遊技機1の正面側の距離Lfが、遊技機1の奥側の距離Lrより大きい。
【0023】
上皿ユニット100の底面部材130の鉛直下面130aをこのように傾斜させることによって、鉛直下面130aを遊技機1の正面側に臨ませることができ、周囲からの視認性を向上させることが可能となる。これにより、周囲から見られているという心理的負荷を不審者に与えることができ、かかる心理的負荷を鉛直下面130aへの放火の抑止力として機能させることが可能となる。
【0024】
また、鉛直下面130aが遊技機1の正面側に向かうに従って鉛直上方に傾斜していることから、上皿ユニット100と下皿ユニット200との間に形成された空間Sに存在する気体が空間S中に滞留する事態を回避することができる。
【0025】
また、
図2に示すように、底面部材130の鉛直下面130aは、遊技機1本体の幅方向中央側が幅方向両端側よりも鉛直上方に位置する湾曲形状である。鉛直下面130aを湾曲形状にすることにより、上皿ユニット100と下皿ユニット200との間に形成された空間Sに存在する気体を整流して、遊技機1本体の幅方向(
図2中X軸方向)中央側に集めることができる。そうすると、不審者が空間Sにおいて放火を行った場合、放火によって生じた煙は、遊技機1本体の幅方向中央側に集められるとともに、鉛直下面130aの傾斜に従って空間Sから遊技機1の正面側に流出することとなる。これにより、周囲の遊技者や遊技場の従業員は、遊技機1への放火を早期に発見することが可能となる。
【0026】
また、底面部材130、下皿ユニット200の皿部220、および、前枠5における上皿ユニット100と下皿ユニット200との間に位置する背面部5aは、JIS K 7201「酸素指数法による高分子材料の燃焼試験法」に基づいた酸素指数が26以上の材料で構成されている。かかる材料は、例えば、ポリカーボネート(PC)、フェノール樹脂(PF)、フッ素樹脂(PFE)、ポリアミド(PA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ユリア樹脂(UF)、ケイ素樹脂(SI)、およびメラミン樹脂(MF)の群から選択される1または複数の樹脂が挙げられる。また、酸素指数が26未満の樹脂、例えば、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS)、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂(AS)、エポキシ樹脂(EP)、不飽和ポリエステル樹脂(UP)、ポリアセタール(POM)、ポリウレタン(PUR)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、およびポリメタクリル酸メチル(PMMA)の群から選択される1または複数の樹脂に、アンチモン化合物系、金属水酸化物系、ハロゲン化合物系、リン化合物系等の難燃剤を混合して酸素指数を26以上としたものを利用することもできる。
【0027】
このように、底面部材130、皿部220、および背面部5aを、酸素指数が26以上の材料で構成することにより、不審者によって放火されたとしても他の部材や他の遊技機1への延焼を防止することができる。特に、上述したように、上皿ユニット100には、演出操作装置110が設けられているため、底面部材130を酸素指数が26以上の材料で構成することにより、演出操作装置110の破損を防止することが可能となる。したがって、不審者によって放火されたとしても底面部材130のみを交換すればよく、放火後のメンテナンス性を向上させることができる。
【0028】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0029】
例えば、上述した実施形態において、貯留ユニットとして上皿ユニット100の底面部材130の鉛直下面130aが傾斜する場合を例に挙げて説明したが、貯留ユニットとして下皿ユニット200の底面部材230の鉛直下面230aが傾斜していてもよい。この場合も、鉛直下面230aは、遊技機1本体の奥側から正面側に向かうに従って鉛直上方に傾斜している。すなわち、鉛直下面230aと、下皿ユニット200の下方に位置するとともに球箱が載置される、島の台の上面を含む水平面との距離は、遊技機1の正面側の距離が、遊技機1の奥側の距離より大きい。
【0030】
また、この場合も、底面部材230のうち少なくとも鉛直下面230aは、酸素指数が26以上の材料で構成されるとよい。なお、この場合、外枠2における下皿ユニット200の下方に位置する背面部2a(
図2参照)を酸素指数が26以上の材料で構成するとよい。
【0031】
また、上述した実施形態において、鉛直下面130aと、下皿ユニット200の皿部220の天面を含む水平面との距離が、遊技機1の奥側から正面側に向かうに従って概ね一定の割合で漸増するように構成された底面部材130について説明した。しかし、鉛直下面130aが、遊技機1の奥側から正面側に向かうに従って鉛直上方に傾斜していればよく、例えば、
図4に示す変形例の上皿ユニット100のように、前枠5に向かって凸形状に湾曲していてもよい。すなわち、遊技機1の正面側から奥側に向かうに従って、鉛直下面130aと、下皿ユニット200の皿部220の天面を含む水平面との距離が小さくなる比率が、漸増するように湾曲していてもよい。このような変形例では、上皿ユニット100と前枠5との接触面積を大きくすることができ、上皿ユニット100の剛性を向上させることができる。
【0032】
また、底面部材130の鉛直下面130aに複数の羽根部で構成されるフィンを設けてもよい。フィンを設けることで、鉛直下面130aを放冷することができ、放火された場合であっても、鉛直下面130aを着火しにくくすることが可能となる。なお、フィンを設ける場合、羽根部間の距離を、タバコの径よりも小さくする(例えば、3mm)ことで、タバコが差し込まれてフィンに固定される事態を回避することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 …遊技機
100 …上皿ユニット(貯留ユニット)
120、220 …皿部(貯留皿)
130、230 …底面部材
130a、230a …鉛直下面
200 …下皿ユニット(貯留ユニット)