【実施例2】
【0022】
新たに合成されたペプチドの鎮痛作用の試験
【0023】
新たに合成されたペプチドの鎮痛作用が、以下の通り試験された。重量180−200gのラットの後頭下に、エーテル麻酔下で、マイクロディスペンサを用いて、10μlの生理食塩水中の試験ペプチドが注入された。対照動物は、同様に、等量の生理食塩水が注入された。20分後に、1:50の希釈での50mL(mcl)のホルマリン溶液が、右後足の背面に注入された。ペプチド注入及びホルマリン希釈の時間は、それより前であった。各ラットは、1回だけ使用された。疼痛反応のもっとも明確な行動の指標は、足のタッキング(tucking)、なめること、噛むこと及び震えることで表される。または、対照動物での6−7分間続く疼痛の第1の急性反応の後に、ラットは、足を引き下げ、身づくろい行動及び噛むことを止める休止時間が生じた。その後、疼痛反応の第2段階である、少なくとも前回以上の表現の反応が繰り返された。
【0024】
(疼痛反応の第1段階の開始)足をタッキングする時間、この反応の継続時間、休止時間及び反応の第2段階の開始時間−足を再びタッキングする又はしないことが、定量的データを得るために、視覚的に、記録された。ペプチドの後頭下注入法の場合は、ペプチドはホルマリン注射の20分前に注入され、鼻腔内法の場合、ペプチドはホルマリン注射の30分前に注入された。
【0025】
I.CT
16−21ペプチドの異なる位置での天然アミノ酸が、連続的に、「単純な」L−アラニンアミノ酸で置換されたときに、「L−アラニンスキャニング」が実施され、これが、ペプチド鎮痛作用にどのように作用するかが研究された。実施例1に従って合成された10個の合成ペプチドの活性が、実施例2に記載された技術により、対照(生理食塩水)及びCT
16−21と比較された。結果が表2及び表3に記載され、ここで、Ala−16、Ala−17、Ala−18などが、CT
16−21と同様のペプチドであり、ここでアラニンは対応する位置に存在する。
【0026】
【表2】
【0027】
【表3】
【0028】
表2、3に示すように、アミノ酸の位置18、特に、19及び21のL−アラニンによる置換が、特定のペプチド活性を低下させた。ラット1匹につき、0.1μgの可能な限り低投与量での疼痛反応の開始は、確実に、対照とは異ならない。しかし、位置19でのL−アラニンによる置換時の1μgの投与量と、ペプチド位置19及び20での置換の場合、0.1μgの投与量とでの疼痛反応の継続時間は、対照ラットでの疼痛反応の継続時間未満であった。さらに、元のペプチド及び位置18、19及び21でのアラニンによる置換の場合、疼痛反応の第2ピークの防止が、同じ比率で、観察されるようであった。これは、非等価な疼痛反応の第1及び第2ピークの機構及びペプチドでのアミノ酸置換の影響を示す。
【0029】
これに対して、位置16、17及び20でのL−アラニンによるアミノ酸の置換は、ペプチド鎮痛作用に対して本質的な影響を及ぼさず、場合によっては(例えば、位置17でのアラニンによりヒスチジンが置換されるとき)、疼痛反応の開始を遅らせる基準と、継続時間の基準に照らして、活性は、ある程度より高くなった。これは、活性を損失せずに、「単純」で安価なアラニンが、「複雑」で高価なヒスチジンアミノ酸の代替となる可能性を示す。位置17及び20でのL−アラニンによる天然アミノ酸の置換の場合にも、第2の反応ピークを有さない動物の相対数の増加の傾向が明らかになった。
【0030】
表2及び3に示されるデータから得ることができる主な結論は、以下の通りである:
1.L−アラニンによるサケカルシトニンの位置18、19及び21でのアミノ酸の置換は、元のペプチドの本質的な活性損失を引き起こす。
2.L−アラニンによる位置16、17及び20でのアミノ酸の置換は、元のペプチド活性に本質的に影響を与えない。
3.断片位置17でのアラニンによるヒスチジンの置換の場合に、ペプチド活性の増加の明確な傾向が観察される。
【0031】
II.CT
16−21ペプチドの異なる位置の天然アミノ酸が、「単純」なD−アラニンアミノ酸で連続して置換されたときに、「D−アラニンスキャニング」が実施され、ペプチド鎮痛作用にどのように影響するかについて研究された。対応する位置に、D−アラニン置換を有する実施例1により合成された合成ペプチドの活性が、実施例2の技術により、対照(生理食塩水)及びCT
16−21ペプチドと比較された。結果が、表4に記載される。
【0032】
【表4】
【0033】
表4に記載されるデータを分析すると、元のCT
16−21活性とは対照的に、CT
16−21ペプチドでのD−アラニンによるアミノ酸の置換は、鎮痛作用の増加を引き起こさなかったことに留意すべきである。これに関して、鎮痛作用は、置換のすべての変異体で、ある程度、維持される。しかし、例えば、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の断片が、この試験では、鎮痛作用をまったく示さないので、この反応は、非常に、特異的である。また、ジメチルヒドラジド誘導体を有する断片16−21のメチルエーテルの置換は、麻酔作用を生じる可能性のCT
16−21ペプチド断片を除去する。
【0034】
位置17でのD−Alaによるアミノ酸の置換及び位置16及び20でのL−Alaによるアミノ酸の置換の際に、鎮痛作用を特徴付ける全ての3つのパラメータの対照からの差異の信頼性のあるもっとも高い値が観察された。この変異体では、位置17でのD−ヒスチジンによる天然アミノ酸の置換の場合に観察された値に、活性は到達しなかったが、いくつかの動物は、反応の第2のピークを有さなかった。それにもかかわらず、後者は、鎮痛剤ペプチドのより費用のかかる形態である。
【0035】
表4に示されるデータから得ることができる主な結論は、以下の通りである:
4.CT
16−21でのD−アラニンによる天然アミノ酸の置換は、天然配列とは対照的に、本質的な活性度の変化につながらない。
5.位置17でのD−Alaによる置換及び位置16及び20でのL−Alaによる置換を有するペプチドが、もっとも活性な化合物である。
【0036】
III.可能性のあるペプチドの酵素分解の速度を減少させるために、天然のL−アミノ酸の対応するD−アミノ酸での置換により得られるペプチドの安定性(活性の継続時間)の増加の可能性が研究された。実施例2に記載された技術により、実施例1に従って合成された合成ペプチドの活性が、対照(生理食塩水)及び天然のペプチド断片CT
16−21と比較された。結果が、表5に記載される。
【0037】
【表5】
【0038】
表5に記載されるデータに基づき、位置17での天然アミノ酸のL−ヒスチジンのD−ヒスチジンによる置換の場合、CT
16−21対照ペプチドの鎮痛作用からの大きな差異が達成されることがわかり:この場合、ほぼ半数の動物は、非常に重要な疼痛反応の第2ピークを有さず、投与量を10倍に減少させるときに、かかる反応が維持される。疼痛反応の第1ピークの最も短い継続時間が、同様に、観察された。
【0039】
好ましくない置換のうちの1つは、望ましくない副反応、つまり、動物の麻痺を引き起こす位置16でのD−ロイシンによるL−ロイシンの置換であることに注意すべきである。
【0040】
表5に示されるデータから得ることができる主な結論は、以下の通りである:
6.対応するD−アミノ酸によるCT
16−21での天然のL−アミノ酸の置換は、位置17でのL−ヒスチジンのD−ヒスチジンによる置換を除いて、本質的な活性の増加を引き起こさなかった。この場合、活性が実質的に増加するのに対して、動物の半数は疼痛反応の第2ピークを有さなかった。
【0041】
IV.また、ペプチド末端配列の修飾による10個の得られたペプチドの安定性増大の可能性が、研究された。実施例2に記載された技術により、実施例1に従って合成された合成ペプチドの活性が、対照(生理食塩水)及びCT
16−21と比較された。結果が、表6に記載される。
【0042】
【表6】
【0043】
提供するデータによると、メチルエーテル及び特に、ヒドラジドで末端が修飾された配列(ペプチド)が、特に活性であった。
【0044】
表5に示されるデータから得ることができる主な結論は、以下の通りである:
6.メチルエーテル又はヒドラジドでの末端修飾により、ペプチドの活性を損なわずに、ペプチドの安定性を増加することができた。
【0045】
V.また、D体によるL体のアミノ酸及びL体によるD体のアミノ酸の置換を有するアミノ酸の逆配列を有する式IIに対応する式Iのレトロインバーソ型ペプチドが、研究された。かかるペプチドは、あらゆる種類のペプチダーゼに対する高い抵抗力により区別される(Mariotti et al.,European Patent EP0393786)。特に、配列D−Thr−D−Glu−D−Leu−D−Lys−D−His−D−Leu−NH
2レトロインバーソ型CT
16−21)及びD−Thr−D−Glu−D−Leu−D−15Lys−L−His−D−Leu−NH2(位置17でのL−ヒスチジンのD−ヒスチジンによる置換を有するレトロインバーソ型CT
16−21)が、研究された。実施例1により合成された合成ペプチドの活性が、実施例2に記載された技術により、対照(生理食塩水)及びCT
16−21と比較された。結果が、表7に記載される。
【0046】
【表7】
【0047】
提供するデータによると、鎮痛のために、式(I)のレトロインバーソ型ペプチドを使用することができる。
【0048】
表7に示されるデータから得ることができる主な結論は、以下の通りである:
7.D体によるL体のアミノ酸の置換及びL体によるD体のアミノ酸の置換を有するアミノ酸の逆配列を有する式(II)のレトロインバーソ型ペプチドが、高い鎮痛作用を有する。
【0049】
VI.カルシトニンのN末端での天然断片に存在しないL−Tyrアミノ酸配列の付加を有するペプチドが、実施例1に記載されたのと同じ方法で、合成された。合成された合成ペプチドの活性が、実施例2に記載された技術により、対照(生理食塩水)及びCT
16−21と比較された。結果が、表8に記載される。
【0050】
【表8】
【0051】
提供するデータによると、得られるペプチドは、疼痛反応の第2ピークの防止に効果的である。