【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の課題は本発明に従って請求項1ならびに請求項
17によって解決される。従属請求項によって好適な追加構成が定義される。
【0013】
周知の歯科用窯のいくつかは、モータによって駆動される窯天蓋を備える。それによって、焼成プログラムの開始に際して窯天蓋の自動的な閉鎖と、焼成サイクルの終了に際して極めて振動が少ない開放が可能になる。
【0014】
原則的に、固定式の窯天蓋とモータ駆動で下降する窯基礎部材にも適しているが、この解決方式には新しく焼成された歯科補綴部材が窯基礎部材の下降の間に回避不能な振動に曝されるという問題点がある。その振動の大きさは窯基礎部材の駆動のために使用されるギアの構造と材質に依存する。いずれの場合にしてもこの振動が冷却前の歯科補綴部材の品質に悪影響を与える。
【0015】
その限りにおいて、モータ駆動によって開放可能な窯天蓋と固定式の窯基礎部材が前提とされる。しかしながら本発明の原理は、上記の可動式窯基礎部材と固定式の窯天蓋の組合せにも容易に適用可能である。
【0016】
品質を改善すべき理由の探求の枠内において、製造する歯科補綴部材の最適な品質のために最適な焼成温度ならびに焼成持続時間等のパラメータの他に別の決定要素が重要な役割を果たすことが判明した。終了まで焼成した歯科補綴部材の冷却プロセスも長期的な品質に対して極めて大きな影響を与える。例えば、本質的な焼成プロセスの終了直後に焼成窯から焼成対象物を直接取り出すことによって発生し得る過度に急速な冷却により、焼成対象物内に内部圧力が発生する可能性があり、それが歪みならびにそれに伴う不良な寸法精度、または極端な場合圧力破断に通じる可能性がある。
【0017】
その種の圧力破断は最悪の場合製造から長期間経過後に使用ならびにそれよって生じる歯科補綴部材への点的な負荷によって発生し得る。
【0018】
過度に遅速な歯科補綴部材の冷却によっては前述したような品質への悪影響は生じないが、サイクル時間を遅延させその間該当する焼成窯を新しい焼成サイクルに使用できないため問題である。
【0019】
一方、例えば歯科用窯内に設けた送風機を使用した強制冷却によって達成可能である過度に急速な冷却は上述したような問題の原因となり、従ってこれも可能な限り回避すべきである。
【0020】
歯科用窯の内部を減圧あるいは真空にして、または保護用ガスを入れて稼働させる特殊な場合は、送風機開口部が、たとえ閉鎖可能であっても、減圧あるいは真空の形成を妨害するため、送風機の適用が不可能になる。
【0021】
焼成対象物の冷却はそれの質量、大きさならびに形状(例えば多様な表面構造によるもの)に依存して変化する。焼成物の体積に対する表面積の比率が大きい場合、焼成物の体積に対して表面積が小さい場合に比べてより高い冷却速度が実現する。加えて、使用される焼成物担持部材、場合によって使用される燃焼棒および保護ペースト、ならびに窯天蓋および窯基礎部材もそれぞれ冷却速度の変化に影響を与える。
【0022】
本発明によれば、窯の周囲環境条件の変動も本発明に従って補償し得ることである。従って、赤外線カメラとして形成することができる本発明に係る温度センサが低温な周囲環境温度による急激な冷却を検出し、また本発明に係る窯天蓋の駆動制御が温度勾配に基づいて例えば過度に急速な冷却に際しては窯天蓋を遅速に開放するかあるいは再び閉鎖することによって調節を実施することが極めて好適である。
【0023】
本発明に係る歯科用窯は固定式の窯基礎部材とそれに対して可動式の窯天蓋を備えるものとして記述されるが、それに代えて窯天蓋を固定式とし窯基礎部材を下降可能に設計し得ることも理解される。窯天蓋の駆動としては、その窯天蓋と窯基礎部材の間の相対動作も理解され、窯天蓋の開放としては前記窯基礎部材に対する相対動作も理解される。
【0024】
従って、前述した窯天蓋内に存在する送風機を使用した強制冷却の問題点を同時に回避する、前述した要件を考慮しながらの個別で迅速であるがそれにもかかわらず制御された(すなわちいずれにしても過度に急速でない)焼成プロセスの焼成物の冷却が要望される。
【0025】
前述した熱的あるいは機械的に生じる圧力破断あるいは過度に時間がかかる冷却による長いサイクル時間等の問題点は、以下に詳細に記述するように、本発明に係る解決方式によって意外なほど簡便に解決される。
【0026】
好適には赤外線カメラによって形成される、燃焼室の外部に配置された温度検出装置によって、前述したように歯科補綴部材あるいは焼成対象物が収容された例えばマッフル等の焼成物担持部材の温度が歯科用窯内への挿入に際して窯天蓋が完全に閉鎖されていない間検出される。好適にはその温度検出装置は、窯天蓋が極僅かに開放されている際でも窯内部の焼成対象物に対して直接的に光学的な接触を有するように配置される。
【0027】
この時間間隔は焼成対象物の燃焼室内への設置あるいはその焼成対象物の窯基礎部材上への載置から窯天蓋の完全な閉鎖(すなわち窯天蓋が焼成対象物を赤外線カメラの“視界”から遮蔽する)まで継続する間隔であり、この時間間隔に対して継続的な温度検出が実施される。時間に従った温度の検出によって温度経移あるいは温度勾配を判定することができる。
【0028】
その後窯天蓋を完全に閉鎖した際の燃焼室温度の測定は、当然燃焼室内に設置された温度センサ(例えば熱電対)によってのみ可能になる。
【0029】
窯天蓋中の焼成対象物と赤外線カメラの間の光学経路内に存在し、熱絶縁性であるが赤外線を可能な限り減衰させず従って赤外線透過性である窓を介して、窯天蓋を閉鎖している際の焼成対象物の温度測定を実施可能にすることもできる。
【0030】
焼成プロセスの終了後にプログラムに従って窯の加熱が停止され、焼成対象物の冷却が開始される。送風機等の装置手段を使用する必要なく冷却を加速するために、窯の制御によって制御しモータの支援によって窯天蓋を開放し燃焼室の外部に配置された赤外線カメラによって焼成対象物の温度を再び検出することが意外にも容易に可能となる。
【0031】
従って焼成対象物の温度の継続的な検出は、赤外線カメラと焼成対象物の間の光学的な接触を可能にするために充分な程の広さで窯天蓋が開放された時点において開始することができる。前述したように、焼成対象物の冷却が進行する際の温度勾配を判定することができる。
【0032】
窯天蓋をより大きく開放すると、それによって大きく窯天蓋から離間する焼成対象物への窯天蓋内およびそれの断熱材内に蓄積された残留熱の放射が減少し周囲空気と焼成物の間のより良好な熱交換が実施され得るため、より迅速な冷却が達成される。それに対して窯天蓋をより小さく開放した場合、発熱体と断熱材から焼成対象物への残留熱の放射によって焼成対象物がさらに後加熱され、また比較的きつく閉鎖された窯天蓋によって周囲環境と焼成物の間の温度均衡化が妨害される。この場合冷却曲線が著しく平坦になる。
【0033】
歯科用窯の制御装置の支援によって焼成対象物の実際の冷却速度と選択された処理プログラムの焼成プロフィール内で設定された最適な冷却速度との間の継続的な比較を実施することができる。窯の制御装置による窯天蓋モータの制御によって意外なほど簡便に焼成対象物の冷却速度の調節を次のように実施することができ、すなわち窯天蓋の開放を縮小(すなわち下降)することによって速度を低下させ、また窯天蓋の開放を拡大(すなわち上昇)することによって冷却速度を増加させることができる。
【0034】
多様な温度領域のために焼成対象物の最適な冷却速度を勿論多様にすることができる。プログラム制御された窯天蓋の開放あるいは上昇によって、例えば冷却の開始のためにより高い冷却速度を実施し、セラミックあるいはガラスの軟質から硬質状態への遷移臨界を示すものであるいわゆる変態温度の通過に際して冷却速度を著しく低減し、その後再び高速にして非臨界的な冷却を実施させることができる。
【0035】
同様に処理プログラムの焼成プロフィール内に設定された最終冷却温度に到達した際に、焼成物の取り出しが可能であることを示す信号が窯から発信され窯天蓋の完全な開放が未だ行われていない場合はそこで完全開放が実施される。
【0036】
本発明に係る実際の焼成物温度に依存した窯天蓋の開放位置の自動制御によって、熱圧力(歪み、破断)等の過度に急速に実施される冷却の悪影響を伴うことなく、本発明に従って可能な限り短いサイクル時間で最適な焼成物の冷却を実現することが可能になる。
【0037】
好適な構成形態によれば、温度センサが歯科補綴部材の温度を継続的に検出し、また制御装置が前記継続的に検出された温度センサ温度数値から温度勾配を算定する。
【0038】
好適な構成形態によれば温度センサを光学センサ、特に赤外線センサとする。
【0039】
好適な構成形態によれば、温度センサを二次元のセンサアレイ、特にサーモグラフィカメラとする。
【0040】
好適な構成形態によれば、温度センサを燃焼室の外部、特に窯基礎部材の上方側部に配置する。
【0041】
好適な追加構成形態によれば、窯天蓋が赤外線透過性の窓を備え、その窓を燃焼室内に存在する歯科補綴部材と温度センサの間の光学経路内に配置することを特徴とする。
【0042】
好適な構成形態によれば、駆動装置を使用して窯基礎部材に対する窯天蓋の相対位置を変更することによって歯科補綴部材の冷却速度を制御するように制御装置を適応させることを特徴とする。
【0043】
好適な構成形態によれば、温度センサによって焼成物担持部材の温度を検出可能である。
【0044】
好適な構成形態によればさらに、温度センサによって周囲環境温度、ならびに歯科補綴部材の寸法および/またはその歯科補綴部材を収容するマッフルの寸法を計測することもできる。
【0045】
好適な構成形態によれば、操作装置によって処理プログラムを選択可能であり、前記処理プログラムは制御装置内に記憶可能であり、また前記処理プログラム中に歯科補綴部材の冷却速度の目標値が予設定される。
【0046】
好適な構成形態によれば、歯科補綴部材の冷却速度が選択された処理プログラム中に予設定された目標値と比べて過度に大きい場合に窯天蓋を下降させるように制御装置を適用し、また歯科補綴部材の冷却速度が選択された処理プログラム中に予設定された目標値と比べて過度に小さい場合に窯天蓋を上昇させるかあるいは上昇を加速させるように制御装置を適応させる。
【0047】
好適な構成形態によれば、窯天蓋内に加熱装置を配置し、歯科補綴部材の冷却速度が選択された処理プログラム中に予設定された目標値と比べて過度に大きい場合に前記加熱装置を付勢するように制御装置を適応させる。
【0048】
好適な構成形態によればさらに、歯科用窯に冷却装置を設け、歯科補綴部材の冷却速度が選択された処理プログラム中に予設定された目標値と比べて過度に小さい場合に前記冷却装置を付勢するように制御装置を適応させる。
【0049】
好適な構成形態によれば、歯科用窯が制御装置に接続された信号発生装置をさらに備え、選択された処理プログラムによって予設定された歯科補綴部材の冷却温度を下回ったことを前記信号発生装置によって発信するように前記制御装置を適応させる。
【0050】
好適な構成形態によれば、温度センサによって歯科補綴部材の存在あるいは不在、ならびにその歯科補綴部材の取り出し時点を検出し、その検出結果を制御装置に伝送し、その制御装置が特にその結果を記憶する。
【0051】
好適な構成形態によれば、歯科用窯が窯基礎部材と駆動装置によって動作可能な窯天蓋を備え、前記窯天蓋が歯科補綴部材を収容するための燃焼室を備え、歯科用窯がさらに制御装置に接続された温度センサを備え、前記温度センサを前記燃焼室の外部に配置し、また前記制御装置が焼成プロセスの終了後に前記制御装置内に記憶された所与の数値に従って前記窯天蓋を開放し;前記温度センサが前記歯科補綴部材の温度を検出し;前記温度センサによって検出された歯科補綴部材の温度が前記制御装置内に記憶された数値を下回った場合に前記制御装置が前記駆動装置を使用して前記窯天蓋を完全に開放するか、および/または前記制御装置に接続された信号発生装置を介して使用者に信号を発信する。
【0052】
本発明のその他の詳細、特徴、ならびに種々の利点は添付図面を参照しながら以下に記述する実施例の説明によって明らかにされる。