(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。ただし、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書においては同一又は同様の機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0016】
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係るフィルターエレメント(以下「本フィルターエレメント」という。)1の概略図であり、
図2は、第一の巻きバネ状線材2の概略を示す図であり、
図3は、巻きバネ線材を延伸方向から見た場合の図である。
【0017】
これらの図で示すように、本フィルターエレメント1は、巻きバネ状線材2と、巻きバネ状線材2の中空部に配置される芯金3と、巻きバネ状線材2を挟む一対の貫通金具4と、を有して構成されており、芯金3に沿った貫通経路が形成されている。
【0018】
本実施形態において、第一の巻きバネ状線材2とは、所定の内径を保ちつつ巻きバネ状に巻かれた線材であって、隣接する線材部分が所定の距離をもって密に配置されているものである。フィルターエレメントとして構成され機能する際、巻きバネ状線材は実質的にフィルター部材として機能する。線材の材質としては、限定されるわけではないが、ステンレス鋼は錆びに強いため好ましい一例である。なおステンレス鋼である場合、限定されるわけではないが、オーステナイト系のステンレス鋼であることがより好ましく、例えばSUS316、SUS317を例示することができる。
【0019】
ここで巻きバネ状線材の「内径」とは、巻きバネ状線材の内周側と外周側に圧力差が生じていない状況で測定する円筒形状の中空の内側の径をいう(例えば
図3参照)。
【0020】
また、本フィルターエレメントにおいて、限定されるわけではないが、巻きバネ状線材2には、平坦部221を有する突起22が一定距離を開けて多数形成されており、また、巻きバネ状線材2には、突起22の平坦部221が形成される側と反対の側に平坦部23が形成されている。突起22を設けることで、巻きバネ状線材の線材同士の間のスペーサーとしての役割を担い、線材同士距離を一定に保つことができ、平坦部221を突起22及び線材に設けることで、隣接する線材との接触面積を確保し、線材同士が重なる又は座屈するといった問題を大幅に軽減させることができる。
図4に、巻きバネ状線材の断面図((A))及び隣接する線材の配置関係((B))を示しておく。
【0021】
なお、本実施形態では、突起及び線材自体それぞれに平坦部を設ける構成としているが、例えば
図5で示す断面図及びその配置関係図のように、突起に、線材の曲面に合わせた凹みを形成したものであっても良い。このようにすることで、線材自体には加工が不要になり、更には線材の回転や移動が起こるような状況であっても、巻きバネ状線材2の配置をより安定的なものとすることができる。なお
図5(A)は、巻きバネ状線材の断面図を、
図5(B)は、隣接する線材の配置関係を示している。
【0022】
また、本実施形態に係る芯金3は、一方向に延伸した部材であって、両端近傍に一対の貫通金具4を配置してなり、これらによって巻きバネ状線材2を挟み、巻きバネ状線材2を安定的に保持することができるものである。芯金3の材質は、限定されるわけではないが、上記巻きバネ状線材と同様に錆びに強いステンレス鋼を好適に採用することができる。また芯金の形状は、板状、線状、円柱状等、巻きバネ状線材2の内周側に配置可能となるよう一方向に延伸してなるものであればよく、限定されるわけではないが、巻きバネ状線材の変形を抑えるとともに、濾過された液体の流路を確保する観点から、板状であることは好ましく、更に、この板状の芯金を複数組み合わせた形状(例えば十字状)とすることはより好ましい。
図6に、本実施形態に係る芯金3の概略図を示しておく。なお
図6(A)は、芯金3の側面図であり、
図6(B)は芯金3を正面(フィルターエレメントにおける貫通孔の方向)から見た場合の図である。
【0023】
また本実施形態において、芯金の「幅」とは、芯金の延伸する一方方向に対して略垂直な方向における断面の最大のものをいい、具体的には、芯金が板状の場合はバネ状線材中に配置される部分の板の幅(
図6参照)を、芯金が円柱状であれば、その直径をいう。
【0024】
本実施形態において貫通金具4は、芯金の両端31、32近傍にそれぞれ配置されるものであって、一対となり巻きバネ状線材2を安定的に保持することができるとともに、貫通孔が形成された金具である。また限定されるわけではないが、貫通金具4の先端にはねじ溝が掘られており、後述の接続部剤に接続可能となっている。貫通金具4の構成は、限定されるわけではないが、それぞれ円筒状であってその内部に貫通孔が形成され、その内部に巻きバネ状線材2を当てるための段差面43を有して構成されていることが好ましい一例である。本実施形態に係る一方の貫通金具4の概略図を
図7に、貫通金具4、芯金3及び巻きバネ状線材2を組み合わせる場合の概略断面図を
図8に示しておく。なお
図7(A)は貫通金具4の側面図であり、
図7(B)は正面図である。貫通金具の材質としては、限定されるわけではないが、ステンレス鋼が錆びに強いため好ましい一例である。なおステンレス鋼である場合、限定されるわけではないが、オーステナイト系のステンレス鋼であることがより好ましく、例えばSUS316、SUS317を例示することができる。
【0025】
なお、
図8(A)で示すように、本実施形態におけるフィルターエレメントは、貫通金具4内に段差部43が設けられており、バネ状線材2を当てるとともに、芯金3の段差部31も内部の段差部に当てる。一方、貫通金具4の先端部分にも先端側が径の広くなる段差部44が設けられており、芯金3の先端の段差部32が引っ掛けられるようになっている。これにより、貫通金具4と芯金3を固定配置とし、バネ状線材を固定することができる。なお、この場合において、芯金3の挿入方法としては限定されるわけではないが、例えば芯金3を先端部分とそれ以外の部分のように複数の部材にわけ、それぞれを挿入後、ねじ止めや溶接などによって固定することで実現できる(
図8(B)参照。)。
【0026】
また本実施形態において、巻きバネ状線材2は、一対の貫通金具4の間に配置されるが、この一対の貫通金具との間に遊びを設けて配置されており、かつ、巻きバネ状線材2の中空部の内径は、芯金3の幅よりも10μm以上2mm以下の範囲で大きくなっている。芯金3の幅よりも10μm以上大きくすることで、外周側から圧力がかけられた場合に生じる座屈を防止することができるといった効果があり、2mm以下とすることで、巻きバネ状線材2の不必要な撓みを抑えることができる効果がある。また、遊びの大きさとしては、フィルターエレメントに加えられる圧力等や内径によって適宜調整可能であるが、例えば上記内径の条件の下で、貫通金具の段差面同士の間の距離の0.05%以上5%以下であることが好ましい。上記内径の条件の下で0.05%以上とすれば、外周側から圧力がかかり、内径が縮小して巻きバネ状線材の長さが長くなった場合であっても、一対の貫通金具4の間よりも不必要に長くなり座屈を起こすおそれを少なくすることができ、5%以下とすることで、巻きバネ状線材が長くなった場合でも巻きバネ線材が一対の貫通金具の間に遊びを生じさせてしまうことを防止することができる。
【0027】
また、本実施形態に係る巻きバネ線材2の両端は、研磨して平坦な面を設けておくことが好ましい。このようにすることで隙間漏れをより少なくし、濾過の効率を高くすることが可能となる。
【0028】
本フィルターエレメント1は、上記の構成によって、芯金3に沿った貫通経路が形成されたものとなっている。これにより、本フィルターエレメント1は、より長い構成が可能となるとともに、フィルターエレメントの延伸方向を重力方向に対して傾けて配置したとしても濾過能力が低下しにくくなる。具体的に説明すると、例えば本フィルターエレメント1をフィルターとして機能させる場合、一対の貫通金具4の貫通孔のそれぞれから流体を吸引する(例えば
図9参照)。すると、両方から吸引されるため、吸引力の分布は対象的かつ均一となり、吸引力の偏りは大幅に改善される。また、仮に吸引力の分布に偏りが生じたとしても、一対の流体の吸引量に差を設けることで分布を調節することができるようになる。一方、濾過後、巻きバネ状線材の周囲にゴミが付着することとなるが、上記吸引と反対に、一対の貫通金具4の貫通孔41から流体を供給し、巻きバネ状線材の周囲に付着したゴミを除去する(逆洗浄を行う)ことができる。従来、一方を閉止して一方向のみから流体の吸引、供給を行っていたため、例えば貫通していない(閉じた)側の金具近傍においては、逆洗浄が十分でない場合があり、また、バネ状線材内部に入ってしまった微量のゴミなどはバネ状線材外部に出ることができずこの貫通していない側の金具部分にたまってしまい、結局除去できない状態で残ってしまう虞があった、すなわち濾過効率において課題を有していたところ、本フィルターエレメントのように双方貫通金具とすることで、双方から流体の吸引、供給が可能となり、この結果、洗浄能力を相乗的に向上させることができ、巻きバネ上線材すなわちフィルターエレメントの長さを長くすることが可能となる。さらに、本フィルターエレメントは貫通孔の双方から吸引、供給が可能であるため、フィルターエレメントの延伸方向を重力方向に対して傾けて配置したとしても濾過能力が低下しにくくなるといった効果がある。
【0029】
ここで、本フィルターエレメントを用いた濾過装置、液体の濾過方法について
図10を用いて説明する。本図は、本フィルターエレメントを有する濾過装置A(以下「本濾過装置」という。)の概略を示す図である。本図で示すように、本濾過装置Aは、助剤タンクB、プリコートタンクC、筐体D、原液タンクE、廃液タンクF、処理液タンクG、を有して構成されている。本濾過装置を用いることで、汚れやゴミなどを含む液体を処理することができる。なお本実施形態において処理される液体は特に限定されるわけではないが、水や油を好適に処理することができる。
【0030】
本濾過装置Aにおいて、助剤タンクBは、濾過助剤を収納するタンクであって、プリコートタンクCに、助剤タンク−プリコートタンク接続配管B1を介して接続されており、プリコートタンクCに濾過助剤を必要に応じて供給する。なおこの助剤タンク−プリコートタンク接続配管B1には助剤供給装置B2及びバルブV21が備えられており、バルブV21を開き、助剤供給装置B2を駆動させることで助剤をプリコートタンクCに輸送することができる。なお助剤タンクB内に収容される助剤は粉末状であっても、この粉末が高濃度で濃縮された液状のものであっても良い。
【0031】
本実施形態において、プリコートタンクCは、濾過助剤を所望の濃度に調整するために用いられるタンクである。プリコートタンクCには、攪拌装置C1が備えられており、濾過助剤を攪拌することができる。またプリコートタンクCには筐体Dの空洞下部に接続するためのプリコートタンク−筐体接続配管C2が備えられており、このプリコートタンク−筐体接続配管C2の経路にはポンプP1、バルブV2、バルブV22が設けられている。なおバルブV22は、配管C2においてポンプP1及びバルブ2よりも筐体D側に配置され、逆流防止を行うために用いられ、筐体Dからの水がプリコートタンクC側に流入してしまうことを防止することができる。
【0032】
本実施形態において、筐体Dは、内部が空洞であり、この空洞部分に本フィルターエレメントを配置してなるものであり、本図では説明のため2つのフィルターエレメントで説明するが、一つであっても多数であってもよい。筐体D内において本フィルターエレメントは固定されており、一方の貫通金具は接続部材を介して第一のフィルター接続配管D11に接続され、筐体外部の主配管D1に接続されており、他方の貫通金具は接続部材を介して第二のフィルター接続配管D12に接続され、外部の主配管D1に接続されている。なお第一のフィルター接続配管D11、第二のフィルター接続配管D12のそれぞれには、バルブV10、V13がそれぞれ設けられており、バルブV10、V11の開閉を制御することで、主配管D1との接続を制御することができる。
【0033】
また本実施形態において筐体Dの下部には、筐体−廃液タンク接続配管D2が備えられており、排液タンクFに筐体D内に充填される液体等を排出することができる。なお、筐体−廃液タンク接続配管D2にはバルブV17が設けられており、このバルブV17の開閉を制御することで、この配管の接続を制御することができる。なお、筐体−廃液タンク接続配管D2のバルブV17より廃液タンクに近い側の部分は上記主配管D1と接続されている。なお本実施形態において、廃液タンクFとは、筐体D内に配置されるフィルターの周囲につけられた助剤や残ったゴミなどを下部から排出させる場合に、そのゴミ等を回収するために設けられるタンクである。
【0034】
また本実施形態において、筐体Dの空洞上部には、上記主配管D1に接続するための上部配管D3が備えられており、この上部配管D3にはバルブV3が備えられている。これにより、筐体D内部と主配管D1とを接続することができるようになる。この結果、主配管D1は、筐体D下部から筐体D上部まで循環する経路を形成することができる。
【0035】
本実施形態において、主配管D1は、本濾過装置内において様々な経路、ループを形成するために用いられる主要な配管である。本実施形態において、主配管D1は、上記筐体−廃液タンク接続配管D2に接続された位置アから第二のフィルター接続配管D12、第一のフィルター接続配管D11、上部配管D3にそれぞれ接続され、プリコートタンクCまで接続されている。この結果、筐体Dの下部からプリコートタンクCまでが接続されることとなる。
【0036】
主配管D1のこの経路において、主配管D1の、筐体−廃液タンク接続配管D2との接続位置アから第二のフィルター接続配管D12との接続位置イまでの間にはバルブV14が配置されている。これにより、第二のフィルター接続配管D12との接続位置イと筐体−廃液タンク接続配管D2との接続位置アの間をバルブV14の開閉によって制御することができるようになる。
【0037】
また主配管D1のこの経路において、主配管D1の、第二のフィルター接続配管D12との接続位置イと第一のフィルター接続配管D11との接続位置ウとの間には、二つのバルブV12、V11が備えられており、このバルブV11、V12の間の位置エには第一の洗浄用配管G1が接続されている。なお第一の洗浄用配管G1には、ポンプP2と、このポンプP2と主配管D1における二つのバルブV11、V12の間の位置エの間に配置されるバルブV15を有している。このバルブV15により、処理液タンクGとこのバルブV11、V12の間の位置エの間の経路の開閉を制御することができ、しかもこのポンプP2により処理液タンク中の処理液を主配管D1側に供給することができるようになる。
【0038】
また主配管D1のこの経路において、主配管D1の、第一のフィルター接続配管D12との接続位置ウと上部配管D3との接続位置オとの間には、二つのバルブV9、V7が配置されており、この二つのバルブV9、V7の間の位置カには処理液タンクに液体を供給するためのフィルター−処理液タンク接続配管D4が接続されている。この配管により、フィルターエレメントによって洗浄化された処理液を処理液タンク側に排出することができるようになる。つまりこの場合、第一のフィルター接続配管D11、第二のフィルター接続配管D12、主配管D1、フィルター−処理液タンク接続配管D4が処理液を処理タンクに排出するための主たる経路となる。なおこの二つのバルブV9、V7の間の位置カと処理液タンクの間には、バルブV8が設けられており、このバルブV8の開閉により、この経路の開閉を制御することができるようになっている。
【0039】
また主配管D1のこの経路において、主配管D1の、上部配管D3との接続位置オとプリコートタンクとの間には、二つのバルブV4、V5(プリコートタンクに近い側からV5、V4)が配置されており、この二つのバルブV4、V5の間の位置キには、原液タンクに液体を排出するための排出配管D5が接続されており、二つのバルブV4、V5の間の位置キと原液タンクEとを接続することができるようになる。この結果、筐体D内の液体を上部配管D3、主配管D1を介してプリコートタンクに戻すことができるとともに、主配管D1上に存在するバルブV5を閉じることでプリコートタンクではなく、排出配管D5を経由して原液タンクまで戻すことができるようになる。なお、排出配管D5において、二つのバルブV5、V4の間の位置キと原液タンクとの間には、バルブV6が配置されており、このバルブV6の開閉を制御することでこの排出配管D5の開閉を制御することができるようになる。
【0040】
また、本実施形態において、プリコートタンク−筐体接続配管C2のバルブV2とバルブ22の間の位置クには原液供給配管E1が接続されており、原液タンクから筐体D下部に原液を供給することができる。本実施形態において原液タンクEとは、処理対象となる原液を収納することができるタンクであって、この原液が筐体及びフィルターエレメントを経由することで濾過され、清浄な液体となった後、処理液タンクに収納されることとなる。本実施形態において処理液タンクGとは、上記の記載から明らかなとおり、フィルターエレメントを経由することでゴミや不純物等が取り除かれ清浄化された液体を収納することができるものである。なお、プリコートタンク−筐体接続配管C2のバルブV2とバルブ22の間の位置クと原液タンクの間にはバルブV1が配置され、このバルブV1の開閉を制御することでこの経路の開閉を制御することができるようになる。
【0041】
また、本実施形態において、処理液タンクGと、プリコートタンク−筐体接続配管C2のバルブV2とバルブV22の間の位置ケは、バルブV16を備えた第二の処理液配管G2によって接続されている。これにより、筐体Dの下部と処理液タンクとを接続することが可能となり、筐体D内を洗浄することが可能となる。
【0042】
また、本実施形態においては、更に、洗浄用エアーを供給するためのエアー用配管Hを有している。このエアー用配管Hは洗浄用エアーを供給するためのエアーコンプレッサ(図示省略)に接続されており、複数の分岐管H1、H2、H3に分岐され、一つはバルブV18を介して筐体Dの上部に(配管H1)、一つはバルブV20を介して筐体Dの下部に(H2)、一つはバルブV19を介して主配管D1の位置エに(H3)、それぞれ接続されている。これにより各々の位置にエアーを供給することができ、洗浄力を向上させることができる。
【0043】
本実施形態に係る濾過装置によると、このような配管システムを構成することで、フィルターエレメント内における吸引力の偏りをより少なくして、より長い構成が可能となるとともに、内部の洗浄も容易にし、フィルターエレメントの延伸方向を重力方向に対して傾けて配置したとしても濾過能力が低下しにくくなる。特に、このシステムによると、フィルターエレメントを筐体からわざわざ取り出さずともフィルターエレメント内部を洗浄することができるようになる。
【0044】
ここで、上記濾過装置を用いた濾過方法について説明する。
図11は、本方法におけるバルブの開閉制御、ポンプの駆動について説明する図である。
【0045】
(原位置、濾過助剤の投入)
まず説明のため、原位置として、全てのバルブは閉じた状態となっているが、バルブV21を開放して助剤供給装置B2を駆動し、助剤タンクBから助剤を助剤タンク−プリコートタンク接続配管B1を介してプリコートタンクCに供給する。なお、濾過助剤の供給作業が終了した後、このバルブV21は閉じる。なお、以後の説明において各工程において開放したバルブは、各工程の終了後とじるものとする。
【0046】
(プリコートタンク給水)
次に、第一の洗浄用配管G1のバルブV15、主配管D1のバルブV11、V9、V7、V4、V5を開放してポンプP2を駆動し、処理液タンク中にある清浄な処理液をプリコートタンク内に供給する。この給水作業は、助剤が所望の濃度になるまで続け、所望の濃度となったときに、各バルブを閉じ、ポンプP2の駆動を停止させる。
【0047】
(プリコート)
次に、プリコートタンクから、筐体D内にプリコート液を供給する。具体的には、プリコートタンク−筐体接続配管C2のバルブV2を開放し、ポンプP1を駆動し、筐体D内にプリコート液を供給する。一方、第一のフィルター接続配管D11のバルブV10、主配管D1のバルブV9、V7、V4、V5を開放し、フィルターエレメントを一度透過した液体をプリコートタンクまで戻す。この循環を繰り返させ、十分に助剤をフィルターエレメント周囲に付着させる。なおこの場合における液体の流れについて
図12に示しておく。
【0048】
(濾過)
次に、十分に助剤によるコーティングが終わったら、原液供給配管E1におけるバルブV1を開放し、ポンプP1を駆動し、プリコートタンク−筐体接続配管C2を介して筐体Dの下部に原液を供給する。一方、第一のフィルター接続配管D11のバルブV10、第二のフィルター接続配管D12のバルブV13、主配管D1のバルブV12、V11、V9、V8を開放し、フィルターエレメントを通過した処理液を処理液タンクGに排出させる。この際、フィルターエレメント周囲には助剤が配置されており、原液中に存在するゴミ等はこのフィルターエレメント及び助剤によって除去されることとなる。この場合の液体の流れを
図13に示しておく。本実施形態によると、フィルターエレメントの両端が開放端となっているため、処理能力が大幅に向上する。
【0049】
(クロスフロー)
なお、上記濾過工程において、フィルターエレメントの処理能力が原液の供給能力を下回ってきた場合、上記濾過工程において、上部配管D3のバルブV3を開放し、更に、主配管D1のバルブV4、排出配管D5のバルブV6を開放し、余剰の原液を原液タンクEに戻すことができる。この場合の液体の流れを
図14に示しておく。
【0050】
(エアー逆洗)
濾過処理によりフィルターエレメントの周囲にゴミが付着してくると、処理能力が低下する。このため、逆洗浄を行い、一度フィルターエレメント周囲を洗浄する。この際、洗浄用エアーを用いて逆洗浄を行うと、極めて効率的にフィルターエレメントの洗浄を行うことができる。まず、筐体D内部に液体が満たされた状態で、筐体−廃液タンク接続配管D2上のバルブV17と、洗浄用エアー配管Hの分岐管H1のバルブV18をあけ、洗浄用エアーを洗浄用エアー配管Hにより供給することで、筐体D内の圧力を高め、廃液タンクから液体を押し出すことができる。これにより、効率的にフィルターエレメント周囲の洗浄を行うことができる。
【0051】
(水洗浄)
次に、清浄な水を用いて、フィルターエレメント周囲を洗浄する。具体的には、第一の洗浄用配管G1のポンプP2を駆動するとともに、このバルブV15、主配管D1のバルブV11、V9、V7、上部配管D3のバルブV3を開放し、処理液から清浄な液体を筐体D内に供給し、フィルターエレメント周囲を洗浄する。なお、その洗浄した後の液体は、筐体−廃液タンク接続配管D3のV17を開放することで廃液タンクFに洗浄後の液体を排出する。この液体の流れを
図15に示しておく。
【0052】
(下バブリング洗浄)
次に、プリコートタンク−筐体接続配管C2のポンプP1を駆動し、第二の洗浄用配管G2のバルブV16を開放し筐体内に処理液タンクから浄化された処理液を筐体D内に入れるとともに、配管H2のバルブV20もあけ、洗浄用エアーをこのプリコートタンク−筐体接続配管C2内に同時に引き込む。この結果、筐体D内には下部から液体とともに気泡が提供され、この泡により、フィルターエレメント周囲をより強力に洗浄することができるようになる。なおこの筐体Dに供給された気泡の含まれる液体は、筐体D上部の上部配管D3のバルブV3、主配管D1のバルブV7、V9、V11、V12、V14を介して廃液タンクに排出される。この液体の流れを
図16に示しておく。このバブリングは、下部から気泡を供給するため、気泡が上昇する力を利用する洗浄となるため、非常に強力な洗浄となる。
【0053】
(上バブリング洗浄)
次に、第一の洗浄用配管G1のポンプP2を駆動し、この第一の洗浄用配管G1上のバルブV15を開放し、主配管D1のバルブV11、V9、V7、V3を開放し、処理液タンクG内の液体を筐体Dの上部から供給する一方、筐体−廃液タンク接続配管D2のバルブV17を開放し、廃液タンクにこの液体を排出させる。またこの際、配管H1のバルブV18を開放し、洗浄用エアーを筐体Dの上部から供給する。これにより清浄化された液体を筐体D上部から供給するとともに、エアーを上部から供給することで上から洗浄を行うことができるようになる。この液体の流れを
図17に示しておく。
【0054】
(フィルター内部洗浄(上))
今まではフィルター外部の洗浄を行っているが、本フィルターエレメントを使用すれば、フィルター内部の洗浄も行うことができるようになる。具体的には、まず、第一の洗浄用配管G1のポンプP2を駆動し、この第二の洗浄用配管G1のバルブV15を開放し、更に、主配管D1のバルブ12、第二のフィルター接続配管D12のバルブV13、第一のフィルター接続配管D11のバルブ10、主配管D1のバルブV9、バルブV7、V4、排出配管D5のバルブV6を開放し、処理液タンク内の清浄な処理液をフィルターエレメント内に下から供給し、原液タンクに排出させることができる。この工程における液体の流れについて
図18に示しておく。従来の一方が閉じたフィルターエレメントであれば、フィルターエレメント内の洗浄は一度筐体D内からフィルターエレメントを外して洗う必要があるが、本フィルターエレメントを用いることで、フィルターエレメントを用いずとも内部洗浄が可能となり、非常にメンテナンスが容易となるといった効果がある。なお、この場合において、洗浄用エアーをバルブV19を開放して供給させる構成としても良い。
【0055】
(フィルター内部洗浄(下))
上記フィルター内部洗浄では、フィルターエレメント内部において下から液体を供給することで洗浄を行ったが、今度は逆にフィルターエレメント内部において上から液体を供給することで洗浄を行う。具体的には、まず、第一の洗浄用配管G1のポンプP2を駆動し、この第一の洗浄用配管G1のバルブV15を開放し、主配管D1のバルブV11、第一のフィルター接続配管D11のバルブV10、第二のフィルター接続配管D12のバルブV13、主配管D1のバルブV14を開放し、処理液タンク内の清浄な処理液をフィルターエレメント内に上から供給し、主配管D1を介して廃液タンクFに排出させることができる。この液体の流れについて
図19に示しておく。このようにすることで、上記と同様、フィルターエレメントを筐体D内から外さずとも、フィルターエレメント内部の洗浄が可能となり、非常にメンテナンスが容易になると言った効果がある。なおこの場合において、洗浄用エアーをバルブ19を開放して供給させる構成としても良い。
【0056】
(エアー逆洗運転)
上記洗浄が終わった後、配管H1のバルブV18を開放し、洗浄用エアーを洗浄用エアー配管Hから導入し、筐体−廃液タンク接続配管D2のバルブV17を開放し、廃液タンク側にエアーを排出させる。これによりエアーによる逆洗浄ができる。
【0057】
以上の工程により、本濾過装置は、フィルターエレメント内における吸引力の偏りをより少なくして、より長い構成が可能となるとともに、内部の洗浄も容易にし、フィルターエレメントの延伸方向を重力方向に対して傾けて配置したとしても濾過能力が低下しにくくなる。特に、このシステムによると、フィルターエレメントを筐体からわざわざ取り出さずともフィルターエレメント内部を洗浄することができるようになる。
【0058】
(実施形態2)
本実施形態に係るフィルターエレメント1の概略を
図20に示す。本実施形態に係るフィルターエレメント1は、実施形態1とほぼ同様であるが、上記実施形態1に記載のフィルターエレメントを複数用い、これらを接続金具で接続している点が異なる。以下具体的に説明する。なお、下記において、上記実施形態1に係るフィルターエレメントにおける巻きバネ状線材2を第一の巻きバネ状線材2と、芯金3を第一の芯金3と、一対の貫通金具4を第一の一対の貫通金具4と、それぞれ呼ぶこととする。
【0059】
本実施形態に係るフィルターエレメント1は、第一の巻きバネ状線材2と、第一の巻きバネ状線材2の中空部に配置される第一の芯金3と、第一の巻きバネ状線材2を挟む一対の第一の貫通金具4と、を有し、第一の芯金3に沿った貫通経路が形成されて、一つのフィルター部材となっている。
【0060】
また本実施形態に係るフィルターエレメント1は、上記の第一の巻き状線材2、第一の芯材3、第一の一対の貫通金具4と同様の構成を別途有しており、これらを組み合わせて構成されている。すなわち、第二の巻きバネ状線材5と、第二のバネ状線材5の中空部に配置される第二の芯金と、第二の巻きバネ状線材5を挟む一対の第二の貫通金具7と、を有し、第二の芯金に沿った貫通経路が形成された一つのフィルター部材となっている。なお、本実施形態において「第一」及び「第二」はそれぞれ同様の構成ではあるが異なるフィルター部材であるということを意味するために用いられる修飾語であって、それ以上の意味は持たない。
【0061】
また本実施形態に係るフィルターエレメント1は、上記二つのフィルター部材を接続する接続金具を有している。具体的には、一対の第一の貫通金具4の一方と、一対の第二の貫通金具7の一方を接続する接続金具8と、を有している。なお本実施形態において、接続金具8はT字状となっており、この内部にT字状(三股状)の貫通経路が形成されている。
【0062】
本実施形態において、接続金具8は、上記フィルター部材を組み合わせるために用いられるものであり、二以上の接続口を有して貫通経路を形成している限りにおいて限定されるわけではないが、例えば本図で示すように三以上の接続口を有するものであることは好ましい。このようにすることで、例えば、
図21で示すように、接続金具8のフィルター部材が接続されていない接続口、各フィルター部材の貫通金具から流体を吸引することで、フィルターエレメントを全体的に均一に濾過機能を付すことができ、フィルターエレメントの長さを長くすることが可能となる。接続金具の材質としては、限定されるわけではないが、ステンレス鋼が錆びに強いため好ましい一例である。なおステンレス鋼である場合、限定されるわけではないが、オーステナイト系のステンレス鋼であることがより好ましく、例えばSUS316、SUS317を例示することができる。
【0063】
また本実施形態に係るフィルターエレメント1は、このような構成で多数のフィルター部材を接続させていくことが可能となる。この一例を
図22に示しておく。このようにすることで、より長距離とすることができるようになる。また、
図23で示すように、複数のバネ状線材を共通の貫通金具9で接続する構成とすることも好ましい一例である。
【0064】
また本実施形態に係るフィルターエレメント1では、接続金具8を用いることで、直線状のフィルター部材を複数組み合わせ、直線以外の形状を形成することもできるようになる。この一例を
図24に示しておく。このようにすることで、例えば複数のフィルターエレメントを平行に多数配置してなるフィルターエレメント1を実現することもできる。このようにすればより安定的に固定配置することができる。
【0065】
なお、本実施形態に係るフィルターエレメントは、上記実施形態1と同様、濾過装置内に配置し、濾過することができる。
【0066】
以上、本実施形態により、より長い構成が可能となるとともに、フィルターエレメントの延伸方向を重力方向に対して傾けて配置したとしても濾過能力が低下しにくいフィルターエレメントを提供することができる。特に、本実施形態では複数のフィルター部材を接続して配置することが可能となるため、濾過装置内に限られず例えば地中に埋め、土壌に浸透する浸透水の濾過等にも応用することができ非常に有用なものとなる。