特許第6118507号(P6118507)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6118507
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】分光計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/39 20060101AFI20170410BHJP
   G02F 1/37 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   G01N21/39
   G02F1/37
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-95961(P2012-95961)
(22)【出願日】2012年4月19日
(65)【公開番号】特開2013-224826(P2013-224826A)
(43)【公開日】2013年10月31日
【審査請求日】2015年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】学校法人慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々田 博之
(72)【発明者】
【氏名】大久保 章
(72)【発明者】
【氏名】岩國 加奈
【審査官】 塚本 丈二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−080860(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/092874(WO,A1)
【文献】 特表2008−507143(JP,A)
【文献】 GALLI, I. et al.,Ultra-stable, widely tunable and absolutely linked mid-IR coherent source,OPTICS EXPRESS,2009年,Vol. 17, No. 12,pp. 9582-9587
【文献】 OKUBO, S.,Absolute frequency list of the ν3-band transitions of metane at a relative uncertainty level of 10-11,OPTICS EXPRESS,米国,Optical Society of America,2011年11月21日,Vol. 19, No. 24,pp. 23878-23888
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/27
G01N 21/35−21/359
G01N 21/39
G02F 1/37
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のレーザー光を生成する第1のレーザー光源と、
第2のレーザー光を生成する第2のレーザー光源と、
前記第1のレーザー光及び前記第2のレーザー光が入射されたときに、前記第1のレーザー光と前記第2のレーザー光との差周波光を発生させる非線形光学結晶と、
所定周波数の差周波光が入射されたときに、該所定周波数の差周波光に共振するように設定された光共振器と、
前記第1のレーザー光と前記第2のレーザー光との前記非線形光学結晶直後の前記差周波光が前記所定周波数と一致するように、前記第1のレーザー光及び前記第2のレーザー光の少なくとも一方を安定化させる光周波数コムと、を有し、
前記第1のレーザー光源及び前記第2のレーザー光源は、一方が周波数固定とされ、他方が周波数可変とされた分光計測装置。
【請求項2】
前記第1のレーザー光及び前記第2のレーザー光は近赤外レーザー光であり、
前記差周波光は中赤外光である請求項1に記載の分光計測装置。
【請求項3】
前記光周波数コムは、前記第1のレーザー光及び前記第2のレーザー光の双方の安定化に用いられる請求項1又は2に記載の分光計測装置。
【請求項4】
前記光共振器は、駆動中の共振周波数が検出され、検出された該共振周波数に基づいて、その共振周波数が前記所定周波数に接近するようにフィードバック制御が行われる請求項1乃至のいずれか一項に記載の分光計測装置。
【請求項5】
第1のレーザー光を生成する第1のレーザー光源と、
第2のレーザー光を生成する第2のレーザー光源と、
前記第1のレーザー光及び前記第2のレーザー光が入射されたときに、前記第1のレーザー光と前記第2のレーザー光との差周波光を発生させる非線形光学結晶と、
所定周波数の差周波光が入射されたときに、該所定周波数の差周波光に共振するように設定された光共振器と、
前記第1のレーザー光と前記第2のレーザー光との前記非線形光学結晶直後の前記差周波光が前記所定周波数と一致するように、前記第1のレーザー光及び前記第2のレーザー光のいずれか一方の安定化に用いられるとともに、前記光共振器の安定化に用いられる光周波数コムと、を有する分光計測装置。
【請求項6】
前記第1のレーザー光及び前記第2のレーザー光は近赤外レーザー光であり、
前記差周波光は中赤外光である請求項5に記載の分光計測装置。
【請求項7】
前記光共振器は、駆動中の共振周波数が検出され、検出された該共振周波数に基づいて、その共振周波数が前記所定周波数に接近するようにフィードバック制御が行われる請求項5又は6に記載の分光計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、2つの近赤外レーザー光源を備え、差周波光を発生させて中赤外光を取得し、取得した中赤外光を光共振器に入射し、光共振器内の分子のスペクトル線の共鳴周波数に共振周波数と中赤外光の周波数を安定化させるとともに、光周波数コムを用いて2つの近赤外レーザー光の周波数を測定し、分子の遷移周波数を測定するようにした分光計測装置が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
光周波数コムは、光の周波数をスペクトル領域で正確な繰り返し周期で櫛のような目盛りで値付けすることができるため、正確に光の周波数を測定することができ、分子の遷移周波数の測定精度を高めることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】S. Okubo, H. Nakayama, K. Iwakuni, H. Inaba, H. Sasada, Optics Express, vol.19, pp. 23878 - 23888 (2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の非特許文献1に記載の構成では、差周波光がスペクトル線の共鳴周波数となるように、2つの近赤外レーザー光の周波数を常に制御する必要があるが、スペクトル強度が弱い場合、差周波光の周波数を分子の共鳴周波数に安定化することができず、分子の遷移周波数を測定するのは困難であるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、スペクトル強度が弱い場合でも、高感度、高分解能、広い同調波長領域及び高い周波数決定精度を実現できる分光計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る分光計測装置は、第1のレーザー光を生成する第1のレーザー光源と、
第2のレーザー光を生成する第2のレーザー光源と、
前記第1のレーザー光及び前記第2のレーザー光が入射されたときに、前記第1のレーザー光と前記第2のレーザー光との差周波光を発生させる非線形光学結晶と、
所定周波数の差周波光が入射されたときに、該所定周波数の差周波光に共振するように設定された光共振器と、
前記第1のレーザー光と前記第2のレーザー光との前記非線形光学結晶直後の前記差周波光が前記所定周波数と一致するように、前記第1のレーザー光及び前記第2のレーザー光の少なくとも一方を安定化させる光周波数コムと、を有し、
前記第1のレーザー光源及び前記第2のレーザー光源は、一方が周波数固定とされ、他方が周波数可変とされている
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スペクトル強度が弱い場合でも高感度、高分解能、広い同調波長領域及び高い周波数決定精度で分光計測を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態1に係る分光計測装置の一例を示した全体構成図である。
図2】本発明の実施形態2に係る分光計測装置の一例を示した全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【0011】
〔実施形態1〕
図1は、本発明の実施形態1に係る分光計測装置の一例を示した全体構成図である。図1において、実施形態1に係る分光計測装置は、シンセサイザー10と、光周波数コム20と、第1のレーザー光源30と、第2のレーザー光源31と、電気光学変調器40と、非線形光学結晶50と、光共振器60と、ブリュースター板70と、フォトダイオード80、81と、制御手段90とを有する。
【0012】
実施形態1に係る分光計測装置は、以下のような全体構成及び全体動作を有する。即ち、まずシンセサイザー10で繰り返し周波数frの正弦波が生成されて光周波数コムに送られ、光周波数コム20が第1のレーザー光源30と第2のレーザー光源31の安定化に用いられる。第1のレーザー光源30で発生したレーザー光は、電気光学変調器40を通過して変調された後、第2のレーザー光31とともに非線形光学結晶50に入射し、差周波光が発生する。非線形光学結晶50で発生した差周波光は、光共振器60に入射される。光共振器60からの反射光は、ブリュースター板70に反射されて光検出器80で検出され、制御手段90で光共振器60の共振周波数がフィードバック制御される。また、光共振器60からの透過光は、光検出器81で検出される。
【0013】
次に、個々の構成要素についてより詳細に説明する。
【0014】
シンセサイザー10は、任意の周波数の正弦波を持った信号を生成する手段である。本実施形態においては、シンセサイザー10は、所定の周波数frの正弦波を生成し、光周波数コム20に送る。
【0015】
光周波数コム20は、繰り返し周波数frを有する光パルスを生成するレーザーである。同時に、周波数軸上で一定間隔にスペクトルが並んだレーザーでもある。光周波数コム20は、一般的には、計測用に用いられ、測定対象となる光と周波数コム20とを重ね合わせ、両者のうなりから光の周波数を正確に測定する。そして、その測定結果に基づいて、レーザー光源の調整を行う。
【0016】
しかしながら、従来の分光計測装置では、スペクトル線の中心に光共振器60の共振周波数を安定化して第1のレーザー光と第2のレーザー光の周波数を計測していたため、系全体を安定化させることに直接的に光周波数コム20を利用することは行っていなかった。
【0017】
一方、本実施形態に係る分光計測装置においては、光周波数コム20は、第1のレーザー光源30及び第2のレーザー光源31が生成する第1のレーザー光及び第2のレーザー光の周波数の安定化のために用いられる。上述のように、光周波数コム20は、周波数軸上で、正確に一定間隔でスペクトルが並ぶので、これを用いて、第1のレーザー光及び第2のレーザー光の周波数を正確に一定の周波数とすることができる。つまり、光周波数コム20で与えられた周波数軸上の櫛状の目盛りを用いて、第1のレーザー光源30及び第2のレーザー光源31で発生する第1のレーザー光及び第2のレーザー光の周波数が、正確に設定された周波数となるように、最初の段階で調整することができる。上述のように、スペクトル線が弱いと、光共振器60の共振周波数をスペクトル線の中心に安定化できない可能性があるが、光周波数コム20の基準周波数としての精度は極めて高いので、これを基準にして第1のレーザー光及び第2のレーザー光の周波数を定めれば、正確に所定の周波数の差周波光を出力するこができる。
【0018】
第1のレーザー光源30は、第1のレーザー光を発生させる光源である。第1のレーザー光源30は、例えば、近赤外レーザー光を発生させる近赤外レーザー光源として構成されてもよい。
【0019】
同様に、第2のレーザー光源31は、第2のレーザー光を発生させる光源である。第2のレーザー光源31は、例えば、近赤外レーザー光を発生させる近赤外レーザー光源として構成されてもよい。
【0020】
第1のレーザー光源30及び第2のレーザー光源31は、例えば、第1のレーザー光と第2のレーザー光との差周波光を発生させることにより、中赤外光を発生させることができるような波長の近赤外レーザーを用いてもよい。例えば、第1のレーザー光源30で発生させる近赤外レーザー光の波長を1.5μm、第2のレーザー光源31で発生させる近赤外レーザー光の波長を1.06μmとしてもよい。
【0021】
第1のレーザー光源30及び第2のレーザー光源31は、所定の波長の近赤外光を出力することができれば、種々のレーザー光源を用いることができるが、例えば、外部共振器型半導体レーザーを用いるようにしてもよい。外部共振器型半導体レーザーは、周波数同調域が10THzと広く、これにより、中赤外光の周波数同調域を広げることができる。
【0022】
第1のレーザー光源30及び第2のレーザー光源31は、一方を周波数固定とし、他方を微調整のために周波数可変としてもよい。例えば、第1のレーザー光源30の波長を1.5μmに設定するとともに周波数可変とし、第2のレーザー光源31の波長を1.06μmにするとともに周波数同調域は狭くてもよい。
【0023】
電気光学変調器40は、電圧を印加することにより、第1のレーザー光の振幅、位相及び/又は偏光状態を制御する手段である。これにより、第1のレーザー光を所望の振幅、位相及び偏光状態を有するレーザー光に変調することができる。
【0024】
非線形光学結晶50は、第1のレーザー光及び第2のレーザー光が入射されたときに、第1のレーザー光と第2のレーザー光との差周波光である中赤外光を発生させるための手段である。なお、非線形光学結晶50は、用途に応じて種々の非線形光学結晶50を用いることができるが、例えば、非線形光学結晶50として、高効率の導波路型PPLN(Periodically Poled Lithium Niobate、周期分極ニオブ酸リチウム)を用いることもできる。
【0025】
光共振器60は、所定の波長を有する光が入射されたときに、光を共振させ、定在波を作り出すようにミラーが配置されたものである。光共振器60は、対向する一対のミラーを有し、ミラーの間隔が入射される光の半波長の整数倍の距離である条件を満たすと、入射された光がミラー間を何往復もし、定在波が形成される。非線形光学結晶50で得られた差周波光は線幅が広いが、光共振器60に入射して共振周波数に安定化することにより、線幅を狭めることができる。例えば、上述のように、第1のレーザー光の波長を1.5μm、第2のレーザー光の波長を1.06μmとした場合には、差周波光の線幅を50kHz以下に狭めることができる。また、光共振器60を試料セル(光共振器試料セル)としても用いることにより、実効吸収長を伸ばすことができる。同時に、光共振器60内では光の定在波が生じるため、定在波の腹では光電場が増強され、サブドップラー分解能のスペクトル信号が強くなる。これにより、検出感度を高めることができる。このように、光共振器60を用いることにより、光路長を長くすることができ、弱い光源から強い光を得ることが可能となり、分解能を向上させることができる。
【0026】
なお、従来は、光共振器60でスペクトル信号を十分に強くし、それにより発生するスペクトル信号波形の中心に差周波光の周波数を安定化して中心周波数を求めていたが、本実施形態に係る分光計測装置によれば、光周波数コム20により光共振器60に入射する差周波光の周波数を正確に定めることができるので、スペクトル信号が弱い場合であっても、中心周波数を求めることができる。
【0027】
光共振器60のミラーにピエゾ素子を設け、ピエゾ素子に三角波信号を入力することにより、ミラーの位置を調整可能に構成してもよい。駆動中の光共振器の共振周波数が予め設定された共振周波数とズレを生じた場合に、ミラー位置を調整して共振器長を変化させることにより、光共振器60の駆動中に変動した共振周波数を、設定された共振周波数に戻すような制御を行うことが可能となる。
【0028】
ブリュースター板70は、レーザー光をブリュースター角で入射させると、P偏光を透過し、S偏光を反射するビームスプリッタとして機能する。これにより、光共振器60で反射した差周波光を光検出器80に入射させることができる。
【0029】
光検出器80、81は、光共振器60からの光を検出するための手段である。光検出器80は、フィードバック制御用の検出手段であり、ブリュースター板70と制御手段90との経路の途中に設けられる。一方、光検出器81は、最終出力となる光の検出手段であり、光共振器60の後段に設けられる。
【0030】
光検出器80、81は、光共振器60からの光を検出できれば、種々の手段が用いられてよいが、例えば、フォトダイオードが用いられてもよい。
【0031】
制御手段90は、光検出器80からの検出結果に基づき、光共振器90の共振周波数をフィードバック制御するための手段である。制御手段90は、具体的には、光共振器60のミラーの位置を制御することにより共振器長を調整し、光共振器60の共振周波数を制御する。なお、光共振器60のミラー位置の制御は、制御手段90から光共振器60に制御信号を供給することにより行われてよい。
【0032】
制御手段90は、上述のような制御演算を行うことが可能なように、例えば、特定の用途のために設計された集積回路であるASIC(Application Specific Integrated Circuit)や、CPU(Center Processing Unit、中央処理装置)を搭載し、プログラムにより動作するマイクロコンピュータ等を含んで構成されてもよい。
【0033】
上述のように、第1のレーザー光源30及び第2のレーザー光源31により生成された第1のレーザー光及び第2のレーザー光は、光周波数コム20で一定の周波数とすることができ、それ故、非線形光学結晶50を経て光共振器60に入射される中赤外光も、周波数を一定とすることができる。よって、光検出器81からのスペクトル信号が小さくでも、正確に周波数を求めることができる。つまり、従来の分光計測装置では、光共振器60で十分に信号強度を高めないと、差周波光の周波数をスペクトル中央に安定できず、従って中心周波数を求めることが困難となる。しかしながら、本実施形態に係る分光計測装置においては、周波数は変化せず固定されているので、中心周波数を特定することができる。
【0034】
また、光共振器60に入射される中赤外光の周波数を一定とすることができるので、光共振器60のドリフトをフィードバック制御で是正すれば、大部分のドリフト要因を除去することができ、光共振器60を確実に安定化させることができるとともに、正確に周波数を測定することができる。
【0035】
このように、実施形態1に係る分光計測装置によれば、信号強度の小さいスペクトル線も高感度、高分解能、広い周波数同調領域及び高い周波数決定精度で分光計測を行うことができる。これにより、分子の遷移周波数を高精度で測定することができる。
【0036】
なお、図1においては、光周波数コム20を用いて、第1のレーザー光源30及び第2のレーザー光源31の双方を安定化させる例を挙げて説明したが、第1のレーザー光源30又は第2のレーザー光源31のいずれか一方のみを光周波数コム20で安定化させることも可能である。
【0037】
〔実施形態2〕
図2は、本発明の実施形態2に係る分光計測装置の一例を示した全体構成図である。実施形態2に係る分光計測装置は、シンセサイザー10と、光周波数コム21と、第1のレーザー光源30と、第2のレーザー光源31と、電気光学変調器40と、非線形光学結晶50と、光共振器60と、ブリュースター板70と、光検出器80、81と、制御手段91とを備える。
【0038】
なお、上述の構成要素のうち、シンセサイザー10、第1のレーザー光源30、第2のレーザー光源31、電気光学変調器40、非線形光学素子50及び光検出器80、81は、実施形態1に係る分光計測装置と同様であるので、同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0039】
実施形態2に係る分光計測装置においては、光周波数コム21が、第2のレーザー光源31の安定化には利用されているが、第1のレーザー光源30の安定化には直接的には利用されていない点で、実施形態1に係る分光計測装置と異なっている。また、光周波数コム21が、光共振器60の安定化に直接的に利用されている点で、実施形態1に係る分光計測装置と異なっている。更に、光検出器80から検出した光が、第1のレーザー光源30の安定化のためのフィードバック制御に用いられる制御ループが形成され、光共振器60単独の制御ループは形成されていない点で、実施形態1に係る分光計測装置と異なっている。
【0040】
以下、個々の内容について、より詳細に説明する。
【0041】
光周波数コム21の機能自体は実施形態1で説明した通りである。しかしながら、実施形態2に係る分光計測装置においては、第2のレーザー光源31の安定化の他、光共振器60の安定化に用いられている。実施形態2に係る分光計測装置においては、光周波数コム21は、第2のレーザー光の周波数の安定化の他、光共振器60に発生する温度や湿度の影響によるドリフトを抑制する役割を果たしている。このように、光共振器60を直接的に光周波数コム21で安定化させることにより、光共振器60の共振周波数を、設定された共振周波数で正確に固定することが可能となる。
【0042】
また、光共振器60からの光は、光検出器80により検出されるが、検出信号は、制御手段91に入力される。制御手段91は、光検出器80から受けた検出信号に基づいて、第1のレーザー光源30を安定化させるフィードバック制御を行う。ここで、光検出器80で検出された信号は、光周波数コム21を用いて安定化された周波数を有する信号であるので、第1のレーザー光源30を正確に安定化制御することができる。よって、実施形態2に係る分光計測装置においては、光周波数コム21は、直接的には第1のレーザー光源30の安定化に用いられていない構成となっているが、直接的に安定化に用いられた光共振器60からの光に基づいて第1のレーザー光源30の安定化制御が行われているため、間接的に第1のレーザー光源30の安定化に寄与する構成となっている。よって、実施形態1に係る分光計測装置と同様に、光周波数コム21をレーザー光の周波数安定化に用いることにより、高精度な周波数の測定を行うことができる。
【0043】
なお、制御手段91は、制御対象が光共振器60ではなく第1のレーザー光源30である点で、実施形態1における制御手段90と異なっているが、基本的な演算処理内容は制御手段90と類似しているので、制御手段90と同様の構成を有してよい。
【0044】
なお、光周波数コム21による第2のレーザー光源31の安定化は、実施形態1において説明した内容と同様であるので、その説明を省略する。
【0045】
実施形態2に係る分光計測装置によれば、光周波数コム21を第2のレーザー光源31及び光共振器60の安定化に用いることにより、信号強度の小さなスペクトル線も高感度、高分解能、広い同調波長領域及び高い周波数決定精度で分光計測を行うことができる。これにより、分子の遷移周波数を高精度に計測することができる。
【0046】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0047】
例えば、第1のレーザー光あるいは第2のレーザー光の周波数を変調して、光検出器81で検出された信号を位相敏感検波法で復調すれば、スペクトル信号の検出感度を、周波数決定精度を損なうことなく向上させることができる。
【符号の説明】
【0048】
10 シンセサイザー
20、21 光周波数コム
30、31 レーザー光源
40 電気光学変調器
50 非線形光学結晶
60 光共振器
70 ブリュースター板
80、81 光検出器
90、91 制御手段
図1
図2