(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリL−乳酸からなる一軸配向フィルムと、ポリD−乳酸からなる一軸配向フィルムとが、導電層を介して隣り合い、隣り合う一軸配向フィルムの主配向軸が同方向である請求項1に記載の圧電積層体。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(ポリ乳酸)
本発明におけるポリ乳酸は、光学純度が
80%以上のポリL−乳酸(PLLAと省略する場合がある)もしくはポリD−乳酸(PDLAと省略する場合がある)である。光学純度が下限未満では、圧電特性が低く、本発明の効果が発現され難い。ポリ乳酸の光学純度は、好ましくは
90%以上、より好ましくは
95%以上、さらに好ましくは
98%以上である。実質的にL−乳酸単位のみから構成されるポリL−乳酸もしくはD−乳酸単位のみから構成されるポリD−乳酸が特に好ましい。
またはPLLAもしくはPDLAとその他のモノマーとの共重合体も用いることができる。L−(D−)乳酸単位以外の単位の含有量は、好ましくは0〜10モル%、より好ましくは0〜5モル%、さらに好ましくは0〜2モル%である。
【0010】
具体的な共重合成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、グリコール酸、カプロラクトン、ブチロラクトン、プロピオラクトンなどのヒドロキシカルボン酸類、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−プロパンジオール、1,5−プロパンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、炭素数が2から30の脂肪族ジオール類、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、炭素数2から30の脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキノンなど芳香族ジオール、芳香族ジカルボン酸などから選ばれる1種以上のモノマーを選ぶことが出来る。
ポリ乳酸の融点は150℃以上190℃以下であることが好ましく、160℃以上190℃以下であることがさらに好ましい。このような態様であるとフィルムの耐熱性に優れる。また、ポリ乳酸の分子量は、重量平均分子量(Mw)で、8万から25万の範囲であることが好ましく、10万から25万以下であることがより好ましく、特に12万から20万の範囲にあることが好ましい。重量平均分子量Mwが上記数値範囲にあることで、フィルムの厚み斑が良好になり、より圧着後の剥離を抑えやすい。
【0011】
(一軸配向フィルム)
ポリ乳酸フィルムは、一軸配向フィルムであることが必要である。二軸配向フィルムや無配向フィルムでは、圧電特性が低く、後述の耐衝撃性改良剤を含有させる効果が十分に発現されない。
本発明における一軸配向フィルムとは、フィルムの面内方向におけるもっとも屈折率の高い方向を主配向方向としたとき、主配向方向の破断強度が120MPa以上で、フィルムの面内方向における該主配向方向と直交する方向の破断強度が、80MPa以下であるような偏った配向を有するフィルムを意味する。なお、主配向方向の破断強度の下限は、より好ましくは120MPa以上、さらに150MPa以上、特に180MPa以上が好ましく、他方上限は300MPa以下、さらに好ましくは250MPa以下であることが好ましい。主配向方向の破断強度が上記下限以上あることで、共振特性の向上効果を高くすることができる。破断強度が上記下限よりも低い場合は、共振特性の向上効果が低くなる。他方、主配向方向の破断強度の上限は特に制限されないが、製膜性などの点から300MPa以下であることが好ましい。
【0012】
また、
ポリ乳酸一軸配向フィルムの破断強度は、主配向軸方向に直交する方向は、80MPa以下であることが好ましい。破断強度が上記上限以下にあると、共振特性の向上効果を高くすることができる。主配向軸方向に直交する方向の破断強度が上記上限よりも高い場合は、共振特性の向上効果が低くなる。他方、主配向軸方向に直交する方向の破断強度の下限は特に制限されないが、製膜後の取り扱いなどの点から、30MPa以上、さらに50MPa以上であることが好ましい。なお、本発明において、説明の便宜上、ポリ乳酸フィルムの製膜方向を縦方向、MD方向と称することがあり、厚み方向をZ方向、製膜方向と厚み方向とに直交する方向を幅方向、横方向、TD方向と称することがある。
【0013】
(耐衝撃性改良剤)
本発明の特徴の一つは、ポリ乳酸一軸配向フィルムに、耐衝撃性改良剤を、ポリ乳酸一軸配向フィルムの質量を基準として、0.1〜10質量%の範囲で含有させたことにある。
本発明で用いられる耐衝撃性改良剤とは、ポリ乳酸の耐衝撃性改良に用いることのできるものであれば特に制限されないが、室温でゴム弾性を示すゴム状物質のことであり、例えば、下記の各種耐衝撃性改良剤などから選ばれる少なくとも1種のものを用いることができる。
【0014】
具体的な、耐衝撃性改良剤としては、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、各種アクリルゴム、エチレン−アクリル酸共重合体およびそのアルカリ金属塩(いわゆるアイオノマー)、エチレン−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(例えば、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酸変性エチレン−プロピレン共重合体、ジエンゴム(例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン)、ジエンとビニル単量体との共重合体およびその水素添加物(例えば、スチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレンランダム共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体、ポリブタジエンにスチレンをグラフト共重合せしめたもの、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体)、ポリイソブチレン、イソブチレンとブタジエンまたはイソプレンとの共重合体、天然ゴム、チオコールゴム、多硫化ゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、ポリウレタンゴム、ポリエーテルゴム、エピクロロヒドリンゴム、ポリエステル系エラストマーまたはポリアミド系エラストマーなどが挙げることができる。
【0015】
さらに、各種の架橋度を有するものや、各種のミクロ構造、例えばシス構造、トランス構造などを有するもの、コア層とそれを覆う1以上のシェル層から構成される多層構造重合体なども使用することができる。また、本発明において、耐衝撃性改良剤としては、上記具体例に挙げた各種の(共)重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体またはグラフト共重合体などのいずれも用いることができる。さらに、これらの(共)重合体を製造するに際し、他のオレフィン類、ジエン類、芳香族ビニル化合物、アクリル酸、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルなどの単量体を共重合することも可能である。
これらの耐衝撃性改良剤の中でも、アクリル単位を含む重合体や、酸無水物基および/またはグリシジル基を持つ単位を含む重合体が好ましい。ここでいうアクリル単位の好適例としては、メタクリル酸メチル単位、アクリル酸メチル単位、アクリル酸エチル単位またはアクリル酸ブチル単位を挙げることができ、酸無水物基やグリシジル基を持つ単位の好適例としては、無水マレイン酸単位またはメタクリル酸グリシジル単位を挙げることができる。
【0016】
(多層構造重合体)
耐衝撃性改良剤としては、本発明の効果の点で、コア層とそれを覆う1以上のシェル層から構成される多層構造重合体がより好ましい。なお、本発明において、多層構造重合体とは、コア層とそれを覆う1以上のシェル層から構成され、また、隣接する層が異種の重合体から構成される、いわゆるコアシェル型と呼ばれる構造を有する重合体である。また、多層構造重合体を構成する層の数は、特に限定されるものではなく、2層以上であればよく、3層以上または4層以上であってもよい。
【0017】
本発明で用いられる多層構造重合体としては、内部に少なくとも1層以上のゴム層を有する多層構造重合体であることが好ましい。ここで、ゴム層の種類は、特に限定されるものではなく、ゴム弾性を有する重合体成分から構成されるものであればよい。例えば、(メタ)アクリル成分、シリコーン成分、スチレン成分、ニトリル成分、共役ジエン成分、ウレタン成分またはエチレンプロピレン成分などを重合させたものから構成されるゴムを挙げることができる。好ましいゴムとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エチル単位、(メタ)アクリル酸ブチル単位、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル単位または(メタ)アクリル酸ベンジル単位などの(メタ)アクリル成分、ジメチルシロキサン単位やフェニルメチルシロキサン単位などのシリコーン成分、スチレン単位やα−メチルスチレン単位などのスチレン成分、アクリロニトリル単位やメタクリロニトリル単位などのニトリル成分またはブタンジエン単位やイソプレン単位などの共役ジエン成分を重合させたものから構成されるゴムである。また、これらの成分の他に、ジビニルベンゼン単位、(メタ)アクリル酸アリル単位またはブチレングリコールジアクリレート単位などの架橋性成分を共重合して架橋させた架橋ゴムも好ましい。これらの中でも、本発明の効果の点から、ゴム層としては、架橋ゴムが好ましく、ガラス転移温度が0℃以下の架橋ゴムであることがより好ましく、このようなゴム層の種類としては、アクリル酸エチル単位、アクリル酸−2−エチルヘキシル単位、アクリル酸ブチル単位、アクリル酸ベンジル単位、メタクリル酸アリル単位を適宜選択し併用して用いることがさらに好ましく、メタクリル酸アリル単位をゴム層構成単位の0.005〜3質量%の範囲で用いるのが特に好ましい。
【0018】
本発明における多層構造重合体において、ゴム層以外の層の種類は、熱可塑性を有する重合体成分から構成されるものであれば特に限定されるものではないが、透明性、耐熱性および耐衝撃性の点で、ゴム層よりもガラス転移温度が高い重合体成分であることが好ましい。熱可塑性を有する重合体としては、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位、グリシジル基含有ビニル系単位、不飽和ジカルボン酸無水物系単位、脂肪族ビニル系単位、芳香族ビニル系単位、シアン化ビニル系単位、マレイミド系単位、不飽和ジカルボン酸系単位およびその他のビニル系単位などから選ばれる少なくとも1種以上の単位を含有する重合体を挙げることができ、中でも、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位、不飽和グリシジル基含有単位および不飽和ジカルボン酸無水物系単位から選ばれる少なくとも1種以上の単位を含有する重合体が好ましく、さらに不飽和グリシジル基含有単位または不飽和ジカルボン酸無水物系単位から選ばれる少なくとも1種以上の単位を含有する重合体がより好ましい。
【0019】
本発明で用いられる多層構造重合体としては、シェル層の種類は、特に限定されるものではなく、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位、グリシジル基含有ビニル系単位、脂肪族ビニル系単位、芳香族ビニル系単位、シアン化ビニル系単位、マレイミド系単位、不飽和ジカルボン酸系単位、不飽和ジカルボン酸無水物系単位および/またはその他のビニル系単位などを含む重合体を挙げることができ、本発明の効果の点で、メタクリル酸メチル単位および/またはアクリル酸メチル単位を含む重合体から構成される多層構造重合体であることが好ましい。
【0020】
本発明で用いられる多層構造重合体としては、上述した条件を満たすものとして、市販品を用いてもよく、また、公知の方法により作製することもでき、市販品としては、例えば、三菱レイヨン製“メタブレン”、カネカ製“カネエース”、ロームアンドハース製“パラロイド”、ガンツ化成製“スタフィロイド”またはクラレ製“パラフェイス”などを挙げることができ、これらは、単独ないし2種以上を用いることができる。また、公知の方法としては、乳化重合法がより好ましい。製造方法としては、まず所望の単量体混合物を乳化重合させてコア粒子を作った後、他の単量体混合物をそのコア粒子の存在下において乳化重合させてコア粒子の周囲にシェル層を形成するコアシェル粒子を作る。さらに該粒子の存在下において他の単量体混合物を乳化重合させて別のシェル層を形成するコアシェル粒子を作る。このような反応を繰り返して所望のコア層とそれを覆う1以上のシェル層から構成される多層構造重合体を得る。各層の(共)重合体を形成させるための重合温度は、各層とも0〜120℃が好ましく、5〜90℃がより好ましい。
本発明で用いられる多層構造重合体としては、本発明の効果の点で、ガラス転移温度が0℃以下の構成成分を含むものであることがより好ましく、−30℃以下の構成成分を含むものであることがさらに好ましく、−40℃以下の構成成分を含むものであることが特に好ましい。なお、本発明において、上記ガラス転移温度は、示差走査熱量計を用い、昇温速度20℃/分で測定した値である。
【0021】
本発明において、多層構造重合体の平均一次粒子径は、特に限定されるものではないが、本発明の効果の点で、10〜10000nmであることが好ましく、さらに、20〜1000nmであることがより好ましく、50〜700nmであることが特に好ましく、100〜500nmであることが最も好ましい。
本発明において、耐衝撃性改良剤の配合量は、本発明の効果の点で、ポリ乳酸一軸配向フィルムの質量を基準として、0.1〜10質量%の範囲であることが必要である。下限未満では、圧着したときに剥離しやすかったり、電圧をかけたときの振動を安定させるのが困難になる。他方、上限を超えると圧電特性が低下する。そのような観点から、好ましい耐衝撃性改良剤の配合量の下限は、0.5質量%、さらに1質量%であり、他方上限は、9質量%、さらに8質量%である。なお、このような耐衝撃性改良剤を配合させることで、圧電特性を低下させることなく、耐衝撃性とは関係のない圧着後の剥離の抑制や、電圧をかけたときの振動が一定化する理由は定かではないが、得られたポリ乳酸一軸配向フィルムの配向を低下させずに、柔軟性を付与でき、結果圧着時の圧力が均等に伝わり、圧電積層体の界面に局所的に剥離しやすい部分や局所的に強直に圧着している部分が存在しなくなったためではないかと推定される。
以下
、一軸配向フィルムの好ましい態様について、説明する。
【0022】
(密度)
ポリ乳酸一軸配向フィルムの密度は、1.22〜1.27g/cm
3であることが好ましい。密度が上記数値範囲にあると、共振特性の向上効果を高くすることができる。密度が低い場合は、共振特性の向上効果が低くなる傾向にあり、他方、密度が高い場合は、共振特性の向上効果は高いもののフィルムの機械特性に劣る傾向にある。このような観点から、密度は、より好ましくは1.225〜1.26g/cm
3、さらに好ましくは1.23〜1.25g/cm
3である。
【0023】
(厚み)
一軸配向フィルムの厚みは、厚すぎると剛性が高くなりすぎて共振特性を奏さなくなってしまう傾向を考慮して、共振特性を奏する程度の厚さであれば特に限定されない。共振特性の観点からは薄い方が好ましい。特に、積層数を増加させる際には、各層の厚さを薄くして、積層フィルム全体としての厚さが厚くなりすぎないようにすることが好ましい。このような観点から、配向ポリ乳酸フィルム層の1層の厚みは、好ましくは15μm以下、さらに好ましくは12μm以下、特に好ましくは10μm以下である。厚みが上記数値範囲にあると、共振特性の向上効果を高くすることができる。他方、取り扱い性や剛性の観点からは厚い方が好ましく、例えば2μm以上が好ましく、さらに好ましくは3μm以上である。
【0024】
(添加剤等)
一軸配向フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲で、それ自体公知の添加剤や機能剤を含有していてもよく、例えば、耐加水分解抑制剤、滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤、顔料、蛍光蒼白剤、可塑剤、架橋剤、紫外線吸収剤、その他の樹脂等を必要に応じて添加することができる。
【0025】
例えば、本発明で使用するポリ乳酸は、カルボキシル基量は10当量/10
6g以下であることが、フィルムキャスティング時の安定性、加水分解抑制、重量平均分子量低下抑制の観点から好ましく、このような観点から、カルボキシル基量は5当量/10
6g以下であることがさらに好ましく、2当量/10
6g以下であることが特に好ましい。このような態様とするために、カルボキシル基封止剤を配合することが好ましい。カルボキシル基封止剤は、ポリ乳酸等のポリエステルの末端カルボキシル基の封止に加え、ポリエステルや各種添加剤の分解反応で生成するカルボキシル基、乳酸、ギ酸などの低分子化合物のカルボキシル基を封止し樹脂を安定化することができ、フィルム化時の樹脂温度を、流動斑を抑えるに足る温度まで昇温できる利点ももたらす。
【0026】
かかるカルボキシル基封止剤としては、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、イソシアネート化合物から選択される少なくとも1種の化合物を使用することが好ましく、なかでもカルボジイミド化合物が好ましい。
カルボキシル基封止剤の使用量は、各層を構成する樹脂において、ポリ乳酸100質量部あたり、0.01〜10質量部が好ましく、0.03〜5質量部がさらに好ましい。本発明においては、さらに封止反応触媒を使用してもよい。
【0027】
また
、一軸配向フィルムは、巻き取りや走行性を改良する目的で、これらフィルム中に滑剤を含有することができる。かかる滑剤としては、例えば乾式法で製造されたシリカ、湿式法で製造されたシリカ、ゼオライト、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、カオリン、カオリナイト、クレイ、タルク、酸化チタン、アルミナ、ジルコニア、水酸化アルミニウム、酸化カルシウム、グラファイト、カーボンブラック、酸化亜鉛、炭化珪素、酸化スズ等の無機粒子や、架橋アクリル樹脂粒子、架橋ポリスチレン樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、架橋シリコーン樹脂粒子等の有機微粒子を好ましく挙げることができる。滑剤としては、平均粒径が0.001〜5.0μmの微粒子が好ましく、1種類で使用することもできるし2種類以上併用することも可能である。また滑剤は、層Lまたは層Dの各層の質量に対して、0.01〜1.0質量%、さらに好ましくは0.1〜0.5質量%の範囲で配合することができる。
【0028】
(ポリ乳酸の製造)
つぎに
、一軸配向フィルムについて、その製造方法を説明する。本発明におけるポリL−乳酸およびポリD−乳酸を製造する方法は特別に限定されるものではなく、従来公知の方法が好適に使用できる。例えば、L−乳酸またはD−乳酸を直接脱水縮合する方法、L−またはD−乳酸オリゴマーを固相重合する方法、L−またはD−乳酸を一度脱水環化してラクチドとした後、溶融開環重合する方法等が例示される。なかでも、直接脱水縮合方法、あるいはラクチド類の溶融開環重合法により得られるポリ乳酸が、品質、生産効率の観点から好ましく、中でもラクチド類の溶融開環重合法が特に好ましく選択される。
【0029】
これらの製造法において使用する触媒は、ポリ乳酸が前述した所定の特性を有するように重合させることができるものであれば特に限定されず、それ自体公知のものを適宜使用できる。
得られたポリL−乳酸およびポリD−乳酸は、従来公知の方法により、重合触媒を除去したり、失活剤を用いて重合触媒の触媒活性を失活、不活性化したりするのが、フィルムの溶融安定性、湿熱安定性のために好ましい。
失活剤を用いる場合、その使用量は、金属含有触媒の金属元素1当量あたり0.3から20当量、より好ましくは0.5から15当量、さらに好ましくは0.5から10当量、特に好ましくは0.6から7当量とすればよい。失活剤の使用量が少なすぎると、触媒金属の活性を十分に低下させることができないし、また過剰に使用すると、失活剤が樹脂の分解を引き起こす可能性があり好ましくない。
【0030】
(押出工程)
上記の方法により得られたポリ乳酸に、耐衝撃性改良剤を配合し、所望により前述のカルボキシル基封止剤、滑剤、その他の添加剤等を配合し、ポリL−乳酸(層Lの場合。層Dの場合はポリD−乳酸とする。以下同様。)を主たる成分とする樹脂L(ポリL−乳酸を用いた場合。ポリD−乳酸を用いた場合は樹脂Dとする。以下同様。)を、押出機において溶融し、ダイから冷却ドラム上に押し出す。尚、押出機に供給する樹脂は、溶融時の分解を抑制するため、押出機供給前に乾燥処理を行い、水分含有量を100ppm以下程度にすることが好ましい。
押出機における樹脂温度は、樹脂が十分に流動性を有する温度、すなわち、樹脂Lの融点をTmとすると、(Tm+20)から(Tm+50)(℃)の範囲で実施されるが、樹脂が分解しない温度で溶融押し出しするのが好ましく、かかる温度としては、好ましくは200〜260℃、さらに好ましくは205〜240℃、特に好ましくは210〜235℃である。上記温度範囲であると流動斑が発生しにくい。
【0031】
(キャスティング工程)
ダイから押し出した後、フィルムを冷却ドラムにキャスティングして未延伸フィルムを得る。その際、静電密着法により電極より静電荷を印加させることによって冷却ドラムに十分に密着させて冷却固化するのが好ましい。この時、静電荷を印加する電極はワイヤー状或いはナイフ状の形状のものが好適に使用される。該電極の表面物質は白金であることが好ましく、フィルムより昇華する不純物が電極表面に付着するのを抑制することができる。また、高温空気流を電極或いはその近傍に噴きつけ電極の温度を170〜350℃に保ち、電極上部に排気ノズルを設置することにより不純物の付着を防ぐこともできる。
【0032】
(延伸工程)
前記で得られた未延伸フィルムは、一軸方向に延伸する。延伸方向は特に制限されないが、製膜方向、幅方向または製膜方向と幅方向に対して、それぞれ45度となるような斜め方向に延伸するのが好ましい。かかる延伸を行うには、未延伸フィルムを延伸可能な温度、例えば樹脂Lのガラス転移点温度(Tg)以上(Tg+80)℃以下の温度に加熱して延伸する。
主配向方向の延伸倍率は、好ましくは3倍以上、より好ましくは3.5倍以上、さらに好ましくは4.0倍以上、特に好ましくは4.5倍以上である。延伸倍率を上記上限以上にとすることによって変位量の向上効果を高くすることができる。一方、延伸倍率の上限は特に制限されないが、製膜性の点から10倍以下であることが好ましく、さらに8倍以下、特に7倍以下であることが好ましい。他方、主配向方向と直交する方向は、延伸を行う必要はないが、前述の破断強度の関係を満足する範囲で延伸を施してもよい。その場合の延伸倍率は1.5倍以下が好ましく、さらに1.3倍以下が好ましい。
【0033】
(熱処理工程)
上記で得られた配向ポリ乳酸フィルムは、熱処理することが好ましい。熱処理温度は、前述の延伸温度よりも高く、樹脂の融点(Tm)未満の温度で行えばよく、好ましくはガラス転移点温度(Tg+15)℃以上(Tm−10)℃以下、さらに好ましくは(Tg+20)℃以上(Tm−20)℃、特に好ましくは(Tg+30)℃以上(Tm−35)℃である。熱処理温度が上記範囲にあることで、厚み斑や表面の平坦性を良好にしつつ、主配向軸を揃えやすくなり、機械特性も優れたものとできる。熱処理時間は、好ましくは1〜120秒、さらに好ましくは2〜60秒である。
さらに本発明においては、熱処理工程において弛緩処理して、熱寸法安定性を調整することも可能である。
【0034】
(易接着処理)
かくして得られた配向ポリ乳酸フィルム層は、所望により従来公知の方法で、例えば表面活性化処理、例えばプラズマ処理、アミン処理、コロナ処理を施すことも可能である。
なかでも、後述の導電層Mとの密着性を向上し、圧電積層体の耐久性を高めるという観点から、配向フィルム層の少なくとも片面、好ましくは両面に、コロナ処理を施すことが好ましい。かかるコロナ処理の条件としては、例えば電極距離を5mmとした際に、好ましくは1〜20kV、さらに好ましくは5〜15kVの電圧で、好ましくは1〜60秒、さらに好ましくは5〜30秒、特に好ましくは10〜25秒行うとよい。また、かかる処理は大気中で行うことができる。
【0035】
[圧電積層体]
つぎに
、本発明
の圧電積層体について、以下に説明する。
本発明の圧電積層体は、上
記ポリ乳酸一軸配向フィルムと導電層とを交互に積層したものである。この際、隣り合う導電層は逆の電荷がかけられるようにしておき、一方隣り合うポリ乳酸一軸配向フィルムは、逆の電荷を掛けられた状態で、圧電特性が高めあうように主配向軸の向きを配置しておく。
例えば、ポリL−乳酸またはポリD−乳酸のいずれか一方からなる一軸配向フィルムが、導電層を介して隣り合い、隣り合う一軸配向フィルムの主配向軸が直交するように積層する。
またポリL−乳酸からなる一軸配向フィルムと、ポリD−乳酸からなるからなる一軸配向フィルムとが、導電層を介して隣り合い、隣り合う一軸配向フィルムの主配向軸が同方向であるように積層する。
【0036】
なお、本発明の圧電積層体は、隣り合うポリ乳酸一軸配向フィルムが上記のような関係を満足していればよく、全てのポリ乳酸一軸配向フィルムがL体もしくはD体のいずれかである態様、ポリ乳酸一軸配向フィルムがL体とD体とで、それらが交互に積層された態様、または部分的にそれらが組み合わさった態様のいずれであってもよい。
なお、本発明における隣り合う配向ポリ乳酸フィルムの主配向軸が直交するとは、ほぼ90度の角度であることを意味し、90度に近くなればなるほど圧電特性はより効果的に発現される。そのような観点から、好ましい隣り合う配向ポリ乳酸フィルムの主配向軸がなす鋭角の角度は、80度以上であることが好ましく、さらに85度以上であることが好ましく、特に88度以上であることが好ましい。また本発明における隣り合う配向ポリ乳酸フィルムの主配向軸が同方向とは、ほぼ0度の角度であることを意味し、0度に近くなればなるほど圧電特性はより効果的に発現される。そのような観点から、好ましい隣り合う配向ポリ乳酸フィルムの主配向軸がなす鋭角の角度は、10度以下であることが好ましく、さらに5度以下であることが好ましく、特に2度以下であることが好ましい。
【0037】
本発明の圧電積層体は、圧電特性を高くする観点から、ポリ乳酸一軸配向フィルムの合計層数は4以上であることが好ましく、さらに8以上あることが好ましく、特に10以上であることが好ましい。他方、ポリ乳酸一軸配向フィルムにある程度取扱い性を具備する厚さを持たせつつ、圧電積層体全体の厚みを、過度に強直にならないようにする観点から、合計総数の上限は、300以下、さらに200以下であることが好ましい。
【0038】
本発明の圧電体の積層構成について、
図1と2を用いて説明する。
図1と2は、本発明の圧電体の積層構成の一例を示す模式図である。
図1において、符号1は右マージン用の樹脂層で、配向ポリ乳酸フィルム層(1)で、符号2は左マージン用の樹脂層で配向ポリ乳酸フィルム層(1)に隣り合う配向ポリ乳酸フィルム層(2)をそれぞれ示す。本発明の圧電体は、このように、配向ポリ乳酸フィルム層(1)と(2)とが複数交互に積層されている。なお、
図2は、配向ポリ乳酸フィルム層(1)が3枚、配向ポリ乳酸フィルム層(2)が3枚、合計6枚の場合である。
符号3は、導電層Mを示す。本発明においては、配向ポリ乳酸フィルム層(1)と(2)の間に導電層M(3)を有する。また、圧電体の少なくとも一方の表面に導電層M(3)を有することが好ましく、さらにもう一方の表面に導電層M(3)を有していてもよい。
【0039】
配向ポリ乳酸フィルム層(1)と導電層M、および配向ポリ乳酸フィルム層(2)と導電層Mは、厚み1000nmを超える接着剤層を介さずに固着していることが好ましい。本発明においては、このような態様とすることにより、優れた共振特性を奏することができる。かかる観点から、本発明においては、厚み500nmを超える接着剤層を介さずに固着している態様が好ましく、厚み200nmを超える接着剤層を介さずに固着している態様がさらに好ましい。共振特性の観点から、最も好ましくは、接着剤層を介さずに固着している態様である。
本発明においては、上記のような積層構成を有していれば、本発明の目的を阻害しない範囲において、さらにその他の層を有していても良い。例えば、積層フィルムの表面に、積層フィルムの剛性を高めるための、例えばポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートのような芳香族ポリエステル層を有することができる。一方、共振特性の観点からは、このような層は、その厚みが薄いことが好ましく、有しないことが特に好ましい。
【0040】
(導電層M)
本発明における導電層Mは、本発明の圧電積層体が、電圧印加した際に圧電特性を示すことができる程度の導電性を有していれば、その種類は特に限定されないが、より好適に圧電特性および共振特性を示すことができるという観点から、金属または金属酸化物からなる層であることが好ましい。
かかる金属または金属酸化物としては、特に限定はされないが、インジウム、スズ、亜鉛、ガリウム、アンチモン、チタン、珪素、ジルコニウム、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、パラジウム、タングステンからなる群より選択される少なくとも1種の金属、または上記群より選択される少なくとも1種の金属の酸化物が好ましく用いられる。また、金属酸化物には、必要に応じて、さらに上記群に示された金属、または上記群に示された他の金属の酸化物を含んでいてもよい。例えば、酸化スズを含有する酸化インジウム、アンチモンを含有する酸化スズ等が好ましく用いられる。
【0041】
導電層Mの厚さは特に制限されないが、その表面抵抗値が好ましくは1×10
4Ω/□以下、より好ましくは5×10
3Ω/□以下、さらに好ましくは1×10
3Ω/□以下となるような厚みを選択すればよく、例えば、厚さ10nm以上とするのが好ましい。さらに、導電性と、層形成のし易さの観点から、15〜35nmであることが好ましく、より好ましくは20〜30nmである。厚さが薄すぎると、表面抵抗値が高くなる傾向にあり、かつ連続被膜になり難くなる。他方、厚すぎると、品質過剰であり、また圧電積層体の形成が困難となったり、圧電積層体の層間の強度が弱くなったりする傾向にある。
【0042】
(圧電積層体の製造)
本発明における圧電積層体の製造方法は、前述の製造方法で得た一軸配向フィルムの一方の面に導電層を形成した積層体を用意し、前述の主配向方向の関係となるように一軸配向フィルムと導電層とが交互になるように積層する。
導電層Mの形成方法としては特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。具体的には、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法を例示でき、優れた導電性を有する導電層を均一に、容易に得ることができるという観点から、蒸着法またはスパッタリング法を採用することが好ましい。なお、金属層を形成した後、必要に応じて、100〜150℃の範囲内でアニール処理を施して結晶化することができる。このため、層Lおよび層Dは、100℃以上、更には110℃以上の耐熱性を有することが好ましい。また、導電層Mは、配向フィルム層の両面に形成してもよいが、密着性の観点からは、片面のみに導電層Mを形成することが好ましい。その場合、隣り合う配向ポリ乳酸フィルム層を裏返して積層することから、配向ポリ乳酸フィルム層の一方の表面に導電層を形成したものと、配向ポリ乳酸フィルム層の他方の表面に導電層を形成したものとを用意するのが好ましい。
上記により得られた導電層Mを有する配向ポリ乳酸フィルム層を、本発明が規定する積層構成となるように積層して積層体を作成し、熱ラミネートにより固着する。ここで熱ラミネートは、接着剤層を用いずに行う。
【0043】
かかる熱ラミネートにおける温度条件は、(Tg−5)〜(Tsm+20)℃とすることが好ましい。ここでTgは、積層フィルムの形成に用いる配向フィルム層Lを構成する樹脂Lのガラス転移温度および配向フィルム層Dを構成する樹脂Dのガラス転移温度のうち、最も高いガラス転移温度を示す。また、Tsmは、積層フィルムの形成に用いる配向フィルム層Lのサブピーク温度および配向フィルム層Dのサブピーク温度のうち、最も低いサブピーク温度を示す。なお、サブピーク温度とは、フィルム製造プロセスにおける熱固定温度に起因する温度である。上記温度条件を採用することにより、優れた共振特性を奏する積層フィルムを得ることができる。また、同時に、積層フィルムの各層の密着性に優れる。温度が低すぎると密着性に劣る傾向にあり、他方高すぎると配向が崩れてしまい共振特性に劣る傾向にある。このような観点より、さらに好ましい温度条件はTg〜Tsm+15であり、特に好ましくはTg+10〜Tsm+10である。
【0044】
また、圧力条件は、1〜30MPa、2〜28MPa、5〜25MPaとすることが好ましい。これにより優れた共振特性を有しながら、密着性に優れた積層フィルムを得ることができる。圧力が低すぎると密着性に劣る傾向にあり、他方高すぎると共振特性に劣る傾向にある。
以上のような温度条件および圧力条件において、10〜600秒の熱ラミネートを行うことが好ましい。これにより優れた共振特性を有しながら、密着性に優れた積層フィルムを得ることができる。時間が短すぎると密着性に劣る傾向にあり、他方長すぎると共振特性に劣る傾向にある。このような観点より、さらに好ましい時間条件は30〜300秒であり、特に好ましくは60〜180秒である。
そして、本発明によれば、このような圧電特性を損なわないような条件で熱圧着しても、剥離などの問題がなく、高度に圧電特性を発現させることができる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら限定を受けるものではない。なお、実施例中の各値は以下の方法に従って求めた。
【0046】
(1)積層フィルムの剥離
積層フィルムの端部をしごく等して切欠をつくり、各層を剥離し、配向フィルム層Lおよび層Dを剥離して取り出し、各層についての物性評価に用いた。
【0047】
(2)密度
積層フィルムから剥離したフィルムサンプルについて、JIS規格 C2151に準じて測定した。
【0048】
(3)主配向方向
エリプソメーター(型式M−220 ; 日本分光)を用い、得られたフィルムを550nm単色光の入射角度を変化させた透過光測定に供し、フィルムを固定した試料台を、光軸を中心に光軸に対して垂直な面内にて回転させて、面内方向の最も屈折率の高い方向を求め、その方向を主配向方向とした。なお、幅方向を0°とし、製膜方向を90°として、主配向方向の角度を算出した。
【0049】
(4)ガラス転移温度(Tg)、サブピーク温度(Tsm)、融点(Tm)
製膜により得られた、積層フィルムとする前の配向フィルム層について、サンプル約10mgを測定用のアルミニウム製パンに封入して示差熱量計(TAinstruments社製商品名「DSC2920」)に装着し、25℃から10℃/分の速度で210℃まで昇温させ、フィルムのサブピーク温度(Tsm:℃)および融点(Tm:℃)を測定した。次いで、引き続き210℃で3分間保持した後、取り出し、直ちに氷の上に移して急冷し、このパンを再度示差熱量計に装着し、25℃から10℃/分の速度で昇温させて、フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度(Tg:℃)および融点(Tm:℃)を測定した。
【0050】
(5)導電性(表面抵抗値)
三菱化学社製、商品名:Lorester MCP−T600を用いて、JIS K7194に準拠して測定した。測定は、1つのフィルムから3つの測定用サンプル片を採取し、それぞれ任意の5箇所について実施し、それらの平均値を表面抵抗値(単位:Ω/□)とした。
【0051】
(6)剥離試験
各実施例で作成した長さ7cm幅3cmの圧電積層体を試験片とし、試験片の短辺A片側を固定し、
図3に示すように反対側短辺BをA側へ屈曲させて状態変化を観察する。
○:短辺Aと短辺Bを重ねても剥離なし
△:短辺Aと短辺Bを重ねると剥離が見られる
×:短辺Aと短辺Bを重ねる前に剥離が見られる
【0052】
(7)圧電特性
得られた圧電積層体の両方の短辺に、
図2に示すごとく、導電性接着剤(藤倉化成製、ドータイトD550)を塗布して電極(6)を形成し、圧電性構造体を作成した。これにより、各アルミ蒸着層において、マージンを有する側においてはかかる導電性接着剤とアルミ蒸着層とが短絡せず、マージンを有しない側においてはかかる導電性接着剤とアルミ蒸着層とが短絡した構成となる。
この圧電積層体のそれぞれの電極にアルミ箔を取り付け、
図4に示すように、圧電特性測定装置(12)(Agilent Technologies社製、商品名:プレシジョン インピーダンスアナライザ 4294A)に取り付け、二端子法によるアドミッタンスの共振測定を行った。この時、共振に影響が無いよう、
図4に示すように圧電積層体は円柱(11)の上に置き、机上面との接触面積が少なくなるように設置した。なお、アドミッタンスの共振測定は、等価回路パターンEにて圧電共振波形を測定する方法で行い、得られた各種パラメータから圧電率(単位:pC/N)を算出した。圧電率が高いほど圧電性能に優れることを意味する。
【0053】
(8)破断強度
東洋ボールドウィン社製テンシロンを使用し、23℃、65%RHの条件下で測定した。ここでいう破断強度とは、引張試験を行った際の試料破断時の荷重の値を試験前の試料の断面積で除した、単位断面積当りの応力の値を意味する。なお、試料幅は10mm、チャック間距離100mm、チャック間スピード100mm/分で測定は行った。
【0054】
[
合成例1]ポリL−乳酸(PLLA)の合成
真空配管、窒素ガス配管、触媒添加配管、L−ラクチド溶液添加配管、アルコール開始剤添加配管を具備したフルゾーン翼具備縦型攪拌槽(40L)を窒素置換した。その後、L−ラクチド30Kg、ステアリルアルコール0.90kg(0.030モル/kg)、オクチル酸スズ6.14g(5.05×10
−4モル/1kg)を仕込み、窒素圧106.4kPaの雰囲気下、150℃に昇温した。内容物が溶解した時点で、攪拌を開始、内温をさらに190℃に昇温した。内温が180℃を超えると反応が始まるため、冷却しながら内温を185℃から190℃に保持し1時間反応を継続した。さらに攪拌しつつ、窒素圧106.4kPa、内温200℃から210℃で1時間反応を行なった後、攪拌を停止しリン系の触媒失活剤を添加した。
【0055】
さらに20分間静置して気泡除去をおこなった後、内圧を窒素圧で2から3気圧に昇圧し、プレポリマーをチップカッターに押し出し、重量平均分子量13万、分子量分散1.8のプレポリマーをペレット化した。
さらに、ペレットを押出機で溶解させ、無軸籠型反応装置に15kg/hrで投入し、10.13kPaに減圧して残留するラクチドを低減処理し、それを再度チップ化した。得られたポリL−乳酸(PLLA)は、ガラス転移点温度(Tg)55℃、融点(Tm)175℃、重量平均分子量12万、分子量分散1.8、ラクチド含有量0.005質量%であった。
【0056】
[
合成例2]ポリD−乳酸(PDLA)の合成
また、L−ラクチドの代わりにD−ラクチドを使用する以外は
合成例1と同様にして、ガラス転移点温度(Tg)55℃、融点(Tm)175℃、重量平均分子量12万、分子量分散1.8、ラクチド含有量0.005質量%のポリD−乳酸(PDLA)を得た。
【0057】
[
参考例1]
合成例1で得られたPLLAを、乾燥機を用いて十分に乾燥させた後、ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社社製、コアシェル構造体(パラロイド
TMBPM−500)を5質量%添加し、押出機に投入し、220℃で溶融し、溶融樹脂をダイより押し出して単層のシート状に成形し、かかるシートを表面温度20℃の冷却ドラムで冷却固化して未延伸フィルムを得た。得られた未延伸フィルムを、75℃に加熱したロール群に導き、縦方向に1.1倍に延伸し、25℃のロール群で冷却した。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで保持しながらテンターに導き、75℃に加熱された雰囲気中で横方向に4.0倍に延伸した。その後テンター内で110℃の温度条件で30秒間の熱処理を行い、均一に徐冷して室温まで冷やして7μm厚みの一軸配向ポリL−乳酸単層フィルム(PLLA配向フィルム)を得た。
【0058】
[
参考例2]
合成例2で得られたPDLAを用いたほかは、
参考例1と同様な操作を繰り返した。
【0059】
[
参考例3〜6]
含有させる耐衝撃性改良剤の種類や量を、表1に示す通り、変更するほかは、
参考例1と同様な操作を繰り返した。
【0060】
[
参考例7〜10]
含有させる耐衝撃性改良剤の種類や量を、表1に示す通り、変更するほかは、
参考例2と同様な操作を繰り返した。
【0061】
[
参考例11]
平均粒子径2μmの架橋ポリメタクリル酸メチル粒子を、フィラーとして、フィルムの質量に対し、0.5質量%含有させたほかは
参考例1と同様な操作を繰り返した。
【0062】
[
参考例12]
平均粒子径2μmの架橋ポリメタクリル酸メチル粒子を、フィラーとして、フィルムの質量に対し、0.5質量%含有させたほかは
参考例2と同様な操作を繰り返した。
【0063】
[
参考比較例1]
耐衝撃性改良剤を添加しなかったほかは、
参考例1と同様な操作を繰り返した。
【0064】
[
参考比較例2]
耐衝撃性改良剤を添加しなかったほかは、
参考例2と同様な操作を繰り返した。
【0065】
[
参考比較例3]
耐衝撃性改良剤の添加量を15質量%に変更したほかは、
参考例1と同様な操作を繰り返した。
【0066】
[
参考比較例4]
耐衝撃性改良剤の添加量を15質量%に変更したほかは、
参考例2と同様な操作を繰り返した。
【0067】
【表1】
【0068】
表1中の、Aはローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社製、コアシェル構造体(パラロイド
TMBPM−500)、Bは株式会社クラレ製、熱可塑性エラストマー(クラリティLA2250)、Cはローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社製、コアシェル構造体(パラロイド
TMBPM−515)を意味する。
【0069】
[実施例13]
参考例1のPLLAフィルムと、
参考例2のPDLAフィルムとを、主配向軸に沿って長さが7cmの短冊状(幅は3cm)に裁断した。
次いで、
図1に示すように片方の短辺から1cmの領域(3cm×1cmの領域)をマージンとしてマスキングし、蒸着しない箇所を残した上で、残りの領域(3cm×6cmの領域)に表面抵抗値が10Ω/□となるような厚みで、それぞれ製膜時に冷却ドラムに接していなかった面にアルミ蒸着を施した。なお、導電層の厚みは50nmであった。また、マージンの位置はPLLA配向フィルムとPDLA配向フィルムとで、反対側の短辺においてマージンを作成した。
【0070】
(積層)
さらに、蒸着したPLLA配向フィルムとPDLA配向フィルムとを交互に、
図2に示すように各10枚ずつ、合計20枚を積層した。積層体は、110℃で20MPaの圧力を3分間かけて、熱ラミネートにより貼りあわせた。
【0071】
(電極)
得られた圧電積層体の両方の短辺に、
図2に示すごとく、導電性接着剤(藤倉化成製、ドータイトD550)を塗布して電極(6)を形成し、圧電性構造体を作成した。これにより、各アルミ蒸着層において、マージンを有する側においてはかかる導電性接着剤とアルミ蒸着層とが短絡せず、マージンを有しない側においてはかかる導電性接着剤とアルミ蒸着層とが短絡した構成となる。得られた圧電積層体の圧電特性と密着性を表2に示す。
【0072】
[実施例14−17、比較例5、6]
参考例1と2のフィルムの代わりに、表2に示す通り、
参考例3〜10または
参考比較例1〜4のフィルムを用いたほかは、実施例
13と同様な操作を繰り返した。得られた圧電積層体の圧電特性と密着性を表2に示す。
【0073】
[実施例18]
参考例2のフィルムの代わりに、
参考例1のフィルムを用い、主配向軸に対して直交方向に沿って長さが7cmの短冊状(幅は3cm)に裁断した。さらに
参考例2の代わりに用いる
参考例1のフィルムには、製膜時に冷却ドラムに接していた面にアルミ蒸着を施した他は、実施例13同様な操作を繰り返した。得られた圧電積層体の圧電特性と密着性を表2に示す。
【0074】
[実施例19、20]
積層数を表2に示す通り変更したほかは、実施例
13と同様な操作を繰り返した。得られた圧電積層体の圧電特性と密着性を表2に示す。
【0075】
[実施例21
〜23]
圧着条件を表2に示す通り変更したほかは、実施例13と同様な操作を繰り返した。得られた圧電積層体の圧電特性と密着性を表2に示す。
【0076】
[比較例7、8]
圧着条件を表2に示す通り変更したほかは、比較例5と同様な操作を繰り返した。得られた圧電積層体の圧電特性と密着性を表2に示す。
【0077】
[比較例9]
比較例5において、蒸着を施した後、各層の間に、接着層としてHuntsman Advanced Materials社製エポキシ系接着剤(アラルダイト スタンダード)を塗布し手持ち型スチールローラーを用いて密着させたほかは、比較例
5と同様な操作を繰り返した。なお、接着層の厚みは5μmであった。得られた圧電積層体の圧電特性と密着性を表2に示す。
【0078】
[比較例10]
比較例5において、製膜時の冷却ドラムと接していない側の表面に、カスガ製、高周波電源CG−102型を用いて、電圧10kV、処理時間20秒の条件でコロナ処理を施した。蒸着工程以降、
比較例
5と同様に圧電積層体
を作製した。
【0079】
【表2】