特許第6118528号(P6118528)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6118528
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】カラオケシステム
(51)【国際特許分類】
   G10K 15/04 20060101AFI20170410BHJP
【FI】
   G10K15/04 302D
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-216696(P2012-216696)
(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公開番号】特開2014-71248(P2014-71248A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年6月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】390004710
【氏名又は名称】株式会社第一興商
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】橘 聡
【審査官】 武田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−043769(JP,A)
【文献】 特開2009−175605(JP,A)
【文献】 特開2000−148167(JP,A)
【文献】 特開2004−093683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラオケ楽曲を演奏する演奏手段と、歌唱音声を入力する歌唱入力手段と、入力された歌唱音声を複数の評価項目に分けて評価する採点手段と、を有するカラオケシステムであって、
前記採点手段による前記複数の評価項目毎の評価値を、歌唱者の識別情報及びカラオケ楽曲の識別情報に対応付けして評価履歴データとして蓄積する評価履歴データ蓄積手段と、
前記評価履歴データを参照し、所定の歌唱者の識別情報及び所定のカラオケ楽曲の識別情報における前記評価項目毎の最高評価値を抽出する最高評価値抽出手段と、
前記評価項目毎の最高評価値を、前記歌唱者が直近に歌唱したカラオケ楽曲についての前記評価項目毎の評価値である直近評価値と比較可能に報知する報知手段と、
を有することを特徴とするカラオケシステム。
【請求項2】
前記採点手段は、前記評価項目毎の最高評価値に基づく得点を最大潜在能力得点として算出し、
前記報知手段は、前記最大潜在能力得点を報知することを特徴とする請求項1に記載のカラオケシステム。
【請求項3】
前記採点手段は、前記直近評価値に基づく得点を直近歌唱得点として算出し、かつ、前記最大潜在能力得点に対する前記直近歌唱得点の比率を歌唱能力比として算出し、
前記報知手段は、前記歌唱能力比を報知することを特徴とする請求項2に記載のカラオケシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歌唱の評価を歌唱者に報知するカラオケシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
歌唱者の歌唱の巧拙を採点する採点機能を備えたカラオケシステムが知られている(特許文献1を参照)。採点機能を活用する歌唱者は、歌唱力の向上に大きな関心を持っており、歌唱力判断の指標の1つとして採点結果を用いている。ここで、採点結果は、歌唱の度にばらつきがちである。これは、音程を重視して歌唱した結果、表現力が欠けてしまったなど、全ての評価項目についてベストな状態で歌唱することが難しいためである。
【0003】
熱心な歌唱者であれば、自己のベストで最後まで歌唱できたならば、どのような音声になるのかについて興味を抱いていると考えられる。このような要求に応えるべく、カラオケ楽曲を複数の区間に分けるとともに当該区間毎に採点をし、ある曲を複数回歌唱した場合における、最も採点結果のよい区間を抽出してつなぎ合わせる技術が提案されている(特許文献2,3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4222919号公報
【特許文献2】特開2000−172279号公報
【特許文献3】特開2005−241847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のつなぎ合わせの技術により、歌唱者は、自己のベストで歌唱されたカラオケ楽曲を聴くことができる。しかしながら、この音声を聴いたとしても、自己のベストで歌唱するために何れの評価項目に重きをおくか、客観的な評価を得ることは困難である。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、自己のベストで歌唱するために有用な、新たな評価を歌唱者に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の目的を達成するため、本発明は、カラオケ楽曲を演奏する演奏手段と、歌唱音声を入力する歌唱入力手段と、入力された歌唱音声を複数の評価項目に分けて評価する採点手段と、を有するカラオケシステムであって、前記採点手段による前記複数の評価項目毎の評価値を、歌唱者の識別情報及びカラオケ楽曲の識別情報に対応付けして評価履歴データとして蓄積する評価履歴データ蓄積手段と、前記評価履歴データを参照し、所定の歌唱者の識別情報及び所定のカラオケ楽曲の識別情報における前記評価項目毎の最高評価値を抽出する最高評価値抽出手段と、前記評価項目毎の最高評価値を報知する報知手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、過去に取得した評価履歴データの中から最も高い評価値を、評価項目毎に抽出して報知しているので、歌唱者は、自己が持っている歌唱能力の最大値を客観的な指標として取得できる。
【0009】
前述のカラオケシステムにおいて、前記採点手段は、前記評価項目毎の最高評価値に基づく得点を最大潜在能力得点として算出し、前記報知手段は、前記最大潜在能力得点を報知することが好ましい。この構成では、自己が持っている歌唱能力の最大値に対応する得点を知ることができるので、歌唱者は、あるカラオケ楽曲に対する自己の目標得点を客観的な指標に基づいて知ることができる。
【0010】
前述のカラオケシステムにおいて、前記採点手段は、前記歌唱者が直近に歌唱したカラオケ楽曲についての前記評価項目毎の評価値に基づく得点を直近歌唱得点として算出し、かつ、前記最大潜在能力得点に対する前記直近歌唱得点の比率を歌唱能力比として算出し、前記報知手段は、前記歌唱能力比を報知することが好ましい。この構成では、直近に歌唱したカラオケ楽曲について、自己が持っている歌唱能力の最大値に対応する得点比率を知ることができるので、歌唱者は、直近に歌唱したカラオケ楽曲に対する自己の習熟度合いを、客観的な指標に基づいて知ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、歌唱の評価を報知するカラオケシステムにおいて、自己のベストで歌唱するために有用な、新たな評価を歌唱者に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】カラオケシステムの概略構成を説明する概念図である。
図2】ホスト装置の構成を説明するブロック図である。
図3】履歴データ記憶領域を説明する概念図である。
図4】カラオケ装置の構成を説明するブロック図である。
図5】カラオケ端末の構成を説明するブロック図である。
図6】カラオケシステムの動作を説明するフローチャートである。
図7】評価処理を説明するフローチャートである。
図8】結果報知映像の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。図1に示すように、カラオケシステムは、ホスト装置1とカラオケ装置2とを通信回線3で接続することにより構成されている。ホスト装置1は、顧客情報等の各種情報を蓄積及び管理する装置であり、例えばデータセンタに設置されている。カラオケ装置2はカラオケ演奏や歌唱採点を行う装置であり、例えばカラオケ店KBの各カラオケルームRMに設置されている。そして、ホスト装置1とカラオケ装置2は、通信回線3を通じて必要な情報を送受信することができる。
【0014】
図2に示すように、ホスト装置1は、ホスト側制御部11と、ホスト側RAM12と、ホスト側HDD13と、ホスト側通信IF14とを有している。
【0015】
ホスト側制御部11は、ホスト装置1における制御の中心となる部分であり、CPUや内部メモリを備えている。ホスト側RAM12は、ホスト側制御部11に実行されるプログラムを記憶したり、プログラムの実行時に各種情報を一時的に記憶したりする記憶素子である。ホスト側HDD13は大容量の情報を記憶する記憶装置であり、ハードディスクドライブによって構成されている。ホスト側通信IF14は、ホスト装置1を通信ネットワークに接続するための部分である。
【0016】
ホスト側HDD13が有する記憶領域の一部は、顧客情報記憶領域15として用いられている。この顧客情報記憶領域15には、歌唱者毎の識別情報である利用者IDに対応付けられた状態で、性別、年齢、生年月日、住所等の個人情報や、利用店舗、利用日時、歌唱履歴等の履歴データ15aが記憶されている。従って、このホスト側HDD13は、評価履歴データ蓄積手段に相当する。
【0017】
図3に示すように、履歴データ15aは、楽曲IDと、評価項目の評価値と、得点を含んでいる。楽曲IDは、利用者IDで識別される歌唱者によって歌唱されたカラオケ楽曲の識別情報である。評価項目は、歌唱の採点時に評価対象となる項目であり、音程、安定性、表現力、リズム、及び、ビブラート/ロングトーンから構成されており、評価値は項目毎に算出された評価結果である。得点は、各評価項目に基づいて算出されたものである。なお、図示は省略したが、履歴データ15aには、利用店舗を示す店舗情報や歌唱日時を示す日時情報も含まれる。そして、履歴データ15aは、カラオケ端末21(図4を参照)にて採点が行われると、必要な情報がカラオケ端末21から送信されてくるので、その都度情報が記憶される。
【0018】
ここで、各評価項目について説明する。音程は、音の隔たりや高さのことであり、0〜100%の評価値で評価される。安定性は、音程の安定度合いのことであり、音程と同様に0〜100%の評価値で評価される。表現力は、歌唱上の表現を行う能力であり、抑揚、しゃくり、こぶし、及び、フォールに基づいて評価される。
【0019】
抑揚は、声の大きさに強弱を付けて歌う技術であり、11段階で評価される。しゃくりは、低い音程から滑らかに本来の音程までずり上げる技術であり、回数で評価される。こぶしは、基本となる旋律の中で音を細かく動かす装飾音的な節回しのことであり、回数で評価される。フォールは、本来の音程から低い音程に向かって滑らかにずり下げる技術であり、回数で評価される。
【0020】
リズムは、曲に合わせて一定のテンポを保つことであり、7段階で評価される。ビブラートは、音程を上下に揺らすことであり、合計秒数と上手さ(11段階)とで評価される。ロングトーンは、一回の息で同じ高さの音を長い時間発することであり、上手さが11段階で評価される。
【0021】
次に、カラオケ装置2について説明する。図4に示すように、カラオケ装置2は、カラオケ端末21と、スピーカ22と、モニタ23と、マイク24と、リモコン装置25とを有している。
【0022】
カラオケ端末21は、選択されたカラオケ楽曲の演奏制御、歌詞及び背景映像の表示制御、マイク24を通じて入力されたアナログ信号の処理といった、カラオケに関する各種の制御を行う部分である。このカラオケ端末21については、後で詳しく説明する。スピーカ22はカラオケ端末21に接続されており、カラオケ端末21からのアナログ信号に基づいて放音する。モニタ23もカラオケ端末21に接続されており、カラオケ端末21からの映像信号に基づいて映像を画面に表示する。マイク24もカラオケ端末21に接続されており、歌唱者の音声をアナログ信号に変換してカラオケ端末21に入力させる。リモコン装置25は、カラオケ端末21とやり取りするための双方向通信可能な短距離無線通信を備えており、カラオケ楽曲の予約や歌唱者の利用者IDの取得等は、このリモコン装置25のインターフェイスを介して行う。
【0023】
以下、カラオケ端末21について詳細に説明する。図5に示すように、カラオケ端末21は、端末側制御部31と、端末側RAM32と、端末側HDD33と、音源34と、ミキサ35と、サウンドシステム36と、AD変換器37と、ボーカルアダプタ38と、映像デコーダ39と、合成回路40と、操作部41と、端末側通信IF42とを有している。
【0024】
端末側制御部31は、カラオケ端末21における制御の中心となる部分であり、CPUや内部メモリを備えている。この端末側制御部31は、端末側通信IF42と電気的に接続されており、端末側通信IF42を介してホスト装置1(ホスト側制御部11)と通信を行う。
【0025】
端末側RAM32は、端末側制御部31に実行されるプログラムを記憶したり、プログラムの実行時に各種情報を一時的に記憶したりする記憶素子である。そして、端末側制御部31は、各種プログラムの実行により対応する処理を行う。例えば、操作入力プログラムの実行によって操作部41からの操作を受け付ける操作入力処理を行い、シーケンサプログラムの実行によって、シーケンサとして動作するシーケンサ処理を行う。また、採点プログラムの実行によって、歌唱の採点を行う採点モード処理を行う。そして、端末側RAM32の作業領域には、各種のプログラムや曲データを記憶する記憶領域や、採点モード処理の実行時に評価結果等を記録する採点ログ領域32aなどが設けられている。
【0026】
端末側HDD33は、選択されたカラオケ楽曲を演奏するための曲データ、モニタ23に背景映像を表示するための映像データ、ポイント算出テーブルなどが記憶される記憶装置であり、ハードディスクドライブによって構成されている。
【0027】
なお、曲データには、採点モード処理においてリファレンスとされるガイドメロディ(GM)データが含まれている。ガイドメロディデータには、ノートオンイベントデータやノートオフイベントデータなどが含まれる。ノートオンイベントデータは音高データを含んでおり、このノートオンによって発生するガイドメロディの音高を指定する。このガイドメロディは次のノートオフイベントデータが読み出されるまで継続される。また、ポイント算出テーブルは、抑揚やビブラートなどの歌唱要素に基づいて付加的なポイントを決定するためのテーブルである。
【0028】
音源34は、曲シーケンサとして動作する端末側制御部31からの曲データ(ノートイベントデータ等)に応じて楽音信号を生成する。生成された楽音信号はミキサ35に入力される。ミキサ35は、マイク24及びAD変換器37を通じて入力されたデジタルの歌唱音声信号と、音源34からの楽音信号とに対し、エコーなどの効果を付与するとともに、各信号を適当なバランスでミキシングする。ミキシングされた音声信号はサウンドシステム36に入力される。サウンドシステム36は、DAコンバータやパワーアンプを備えており、入力されたデジタル信号をアナログ信号に変換して増幅し、スピーカ22に出力する。スピーカ22は、増幅されたアナログ信号に基づいて放音する。なお、ミキサ35が歌唱音声信号及び楽音信号に付与する効果の内容やミキシングのバランスについては、端末側制御部31によって制御される。
【0029】
AD変換器37でデジタル変換された歌唱音声信号は、ボーカルアダプタ38にも入力される。ボーカルアダプタ38は、入力された歌唱音声信号から歌唱周波数を求める。また、ボーカルアダプタ38は、端末側制御部31からのガイドメロディの周波数も求める。さらに、GMに含まれるノートオンイベントデータやノートオフイベントデータを、採点モード処理を行っている端末側制御部31へ送信する。本実施形態において、歌唱周波数とGM周波数はC0からのセント値で表現される。これらの周波数信号は同期され、所定周期(例えば30ms)毎に端末側制御部31へ入力される。入力された各周波数信号は、端末側制御部31で実行される採点モード処理で使用される。
【0030】
端末側HDD33に記憶された背景映像データは、所定形式(MPEG2等)にエンコードされており、端末側制御部31で実行される背景映像再生処理で読み出される。読み出された背景映像データは、映像デコーダ39に入力される。映像デコーダ39は、入力された背景映像データをモニタ23用の映像信号にデコードして合成回路40に入力する。合成回路40は、歌詞テロップや採点結果の表示などを、背景映像の映像信号に合成する回路である。合成された映像信号はモニタ23に出力される。モニタ23では、背景映像に歌詞テロップ等が重ねられた映像が表示される。
【0031】
操作部41は、パネルスイッチやリモコン受信回路などからなっており、利用者によるパネルスイッチやリモコン装置25の操作に応じた操作信号を端末側制御部31に対して出力する。端末側制御部31は、操作入力処理を行うことで操作信号を検出し、対応する処理を実行する。なお、パネルスイッチやリモコン装置25は、カラオケ楽曲を選択したり、採点モードなどのモードを選択したりするための種々のキースイッチを備えている。
【0032】
リモコン装置25からの利用者IDと楽曲IDとを含んだ操作信号が操作部41から出力されると、端末側制御部31は、その歌唱者の利用者IDと楽曲IDを内部メモリ(RAM)に格納して演奏処理の待ち行列で管理するとともに、待ち行列から楽曲IDを順次取り出し、楽曲IDに対応する曲データを端末側HDD33から読み出す。これに伴い、端末側制御部31はシーケンサとして機能し、読み出された曲データに基づき、音源34が制御される。また、端末側制御部31は、歌詞シーケンサとしても機能し、曲データ中の歌詞トラックのデータを読み出し、このデータに基づいて歌詞テロップの画像パターンを作成して合成回路40に出力する。さらに、端末側制御部31は、シーケンサの処理に同期させて所定の背景映像データを読み出し、映像デコーダ39に入力する。その結果、カラオケ楽曲、背景映像、及び、歌詞が同期されたカラオケ演奏が行われる。
【0033】
また、リモコン装置25や操作部41で採点モードが選択されると、端末側制御部31は、採点モード処理を行う。採点モード処理では、歌唱に対する採点が行われる。この採点を行うため、端末側制御部31は、ボーカルアダプタ38から周期的(例えば30ms)に送信される歌唱周波数及びGM周波数に対してローパスフィルタ処理(LPF処理)を施す。また、歌唱音声信号から振幅のエンベロープ(歌唱の音量レベル)を検出する処理を行う。
【0034】
これらの処理に対応して、端末側RAM32の採点ログ領域32aには、歌唱周波数及びGM周波数が記憶される領域、LPF周波数が記憶される領域、エンベロープが記憶される領域、曲データのノートオンイベントデータに対応するノートオン情報が記憶される領域、ノートオフイベントデータに対応するノートオフ情報が記憶される領域、及び、曲中の区切りを示すマークデータに対応するマークデータ情報が設けられている。
【0035】
次に、上記構成を有するカラオケシステムの動作について説明する。
【0036】
このカラオケシステムでは、採点モード処理に特徴を有している。特徴について簡単に説明すると、採点モードが選択されると、端末側制御部31(採点手段)は、その歌唱者による歌唱を複数の評価項目に分けて評価する。本実施形態では、図3で説明したように、音程、安定性、表現力、リズム、及び、ビブラート/ロングトーンからなる5つの評価項目で評価される。端末側制御部31は、これらの評価結果(すなわち評価値)と、歌唱者の利用者ID、楽曲IDをホスト装置1に送信する。
【0037】
ホスト側制御部11(最高評価値抽出手段)は、カラオケ端末21から受信した利用者ID、楽曲ID、及び評価結果を評価履歴データとして蓄積するとともに、評価履歴データ15aを参照してその利用者IDと楽曲IDの組み合わせに該当する評価履歴データを特定し、その中から複数の評価項目毎に最も高い評価値(最高評価値)を抽出し、利用者ID、楽曲ID、及び評価結果を送信してきたカラオケ端末21へ送信する。端末側制御部31(採点手段)は、ホスト装置1から受信した最高評価値に基づく得点を、そのカラオケ楽曲についての最大潜在能力得点として算出するとともに、直近の歌唱に対応する評価値から直近歌唱得点を算出する。さらに、最大潜在能力得点に対する直近歌唱得点の比率を、歌唱能力比として算出する。
【0038】
そして、端末側制御部31(報知手段)は、最高評価値、最大潜在能力得点、直近歌唱得点、及び、歌唱能力比などの各情報を合成回路40(報知手段)に出力する。合成回路40は、これらの情報を背景映像の映像信号と合成し、合成後の映像信号をモニタ23(報知手段)に出力する。モニタ23は、採点結果の表示画面において、複数の評価項目毎の最高評価値、最大潜在能力得点、直近歌唱得点、及び、歌唱能力比の映像を表示する。
【0039】
この映像を視認することにより、歌唱者は、自己が持っている歌唱能力の最大値を客観的な指標として取得でき、かつ、直近に歌唱したカラオケ楽曲に対する自己の目標得点を客観的な指標に基づいて知ることができる。さらに、歌唱者は、直近に歌唱したカラオケ楽曲に対する自己の習熟度合いを、客観的な指標に基づいて知ることができる。
【0040】
以下、前述した採点モード処理の動作を、図6のフローチャートに基づいて詳細に説明する。このフローチャートは、採点プログラムの実行に伴ってホスト側制御部11及び端末側制御部31でなされる処理を示している。
【0041】
この採点モード処理では、ステップS1にて、端末側制御部31がサンプルデータの入力が判断される。ここで、サンプルデータとは、所定周期毎に更新される各種データであり、エンベロープ(歌唱の音量レベル)、歌唱周波数及びGM周波数が該当する。そして、エンベロープ、歌唱周波数及びGM周波数が入力されると、ステップS2に移行する。
【0042】
ステップS2では、エンベロープが端末側RAM32の採点ログ領域32aに書き込まれる。そして、ステップS3に移行し、LPF処理(ローパスフィルタ処理)がなされていない生の歌唱周波数及びGM周波数が採点ログ領域32aに書き込まれる。次に、ステップS4にて、端末側制御部31がLPF処理を行う。すなわち、生の歌唱周波数及びGM周波数に対してLPF処理が施される。LPF処理が施された歌唱周波数及びGM周波数については、ステップS5でLPF周波数として採点ログ領域32aに書き込まれる。
【0043】
ステップS6で端末側制御部31がボーカルアダプタ38からのノートオンイベントデータを受信すると、ステップS7に移行する。ステップS7では、ノートオン情報が端末側RAM32に書き込まれる。そして、ノートオン情報が書き込まれたタイミングがガイドメロディにおける発音タイミングとして認識される。また、ステップS8にて、端末側制御部31が、ボーカルアダプタ38からのノートオフイベントデータを受信すると、ステップS9に移行する。ステップS9では、ノートオフ情報が端末側RAM32に書き込まれる。
【0044】
次いで、ステップS10に移行し、採点対象ノートの合格/不合格が判定される。この判定は、LPF処理が施された歌唱周波数及びGM周波数に基づき、端末側制御部31が行う。簡単に説明すると、これらの周波数の差分が判断基準値以内の場合に合格ノートと判定され、判断基準値を超えている場合に不合格ノートと判定される。
【0045】
採点対象ノートの合否が判定されたならば、ステップS11に移行し、ビブラート及びロングトーンが判定される。ビブラートの判定は、端末側制御部31によって行われる。例えば、LPF処理がされていない一群の歌唱周波数に対して周期性を検出し、周期性がある場合にはビブラートありと判定する。また、ロングトーンの判定は、歌唱のピッチの安定性に基づいて行われる。
【0046】
次に、ステップS12に移行し、タイミングが判定される。タイミング判定で端末側制御部31は、歌唱周波数の変化とGM周波数の変化の時間差を検出する。ステップS13では、しゃくり等の有無が判定される。しゃくりは、歌唱周波数が所定の条件を満たす波形で変化したか否かで判定される。こぶしの有無、及び、フォールの有無もまた歌唱周波数に基づいて判定される。
【0047】
しゃくり等の有無が判定されたならば、ステップS14に移行する。このステップS14で端末側制御部31は、前述した判定結果を採点ログ領域32aに書き込む。すなわち、採点対象ノートの合格/不合格の判定結果、ビブラートやロングトーンの判定結果、タイミングポイント、及び、しゃくりやこぶし等の判定結果が書き込まれる。そして、ステップS1に移行し、カラオケ楽曲が終了するまで(S15)、前述の処理が繰り返し行われる。
【0048】
ステップS15で、カラオケ楽曲が終了したと判定された場合には、ステップS16に移行して評価処理が行われる。この評価処理では、前述したステップS1〜S15の処理で得られた判定結果に基づく直近の歌唱評価と、ホスト側制御部11から送信された採点対象の歌唱者における採点対象のカラオケ楽曲に対する過去の最高評価とを用い、評価結果をモニタ23に表示させる。
【0049】
図7は、評価処理を説明するフローチャートである。以下、このフローチャートを参照し、評価処理について具体的に説明する。
【0050】
この評価処理では、まずステップS21にて直近評価値が取得される。ここでは、端末側制御部31が採点ログ領域32aに書き込まれた判定結果を参照し、歌唱直後のカラオケ楽曲に対する評価値を取得する。具体的には、音程、安定性、表現力、リズム、及び、ビブラート/ロングトーンの各評価項目について、評価値を取得する。
【0051】
音程の評価は、合格ノートの数や時間に基づいてなされる。すなわち、合格ノートの数が多いほど、或いは、合格ノートの積算時間が長いほど高い評価値が付与される。安定性の評価は、例えば歌唱周波数のGM周波数に対する偏差に基づいてなされる。そして、偏差が小さいほど高い評価値が与えられる。
【0052】
表現力の評価は、抑揚、しゃくり、こぶし、及び、フォールに基づいてなされる。そして、抑揚の有無は、音量に基づいて判定される。例えば、フレーズの平均音量と各ノートの平均音量との偏差に基づいて判定される。そして、ポイント算出テーブルに基づき、抑揚回数が多いほど高い評価値が与えられる。しゃくり回数、こぶし回数、及び、フォール回数については、ステップS14で書き込まれた判定結果を用いる。そして、ポイント算出テーブルに基づき、回数が多いほど高い評価値が与えられる。
【0053】
リズムの評価は、ステップS12のタイミング判定の結果に基づいてなされる。そして、歌唱周波数に基づく変化タイミングがGM周波数に基づく変化タイミングに近いほど高い評価値が与えられる。ビブラート及びロングトーンについては、ステップS14で書き込まれた判定結果を参照し、ポイント算出テーブルに基づく評価値が与えられる。
【0054】
直近評価値が取得されたならば、ステップS22に移行し、直近歌唱得点の算出が行われる。ここでは、端末側制御部31により、ステップS21で算出された直近評価値に対応する得点、すなわち歌唱直後のカラオケ楽曲に対する得点が算出される。
【0055】
次に、ステップS23に移行し、直近評価値の送受信が行われる。ここでは、端末側制御部31で算出された直近評価値、直近歌唱得点、歌唱者の利用者ID、及び楽曲IDがホスト装置1に送信される。ホスト側制御部11は、カラオケ端末21から受信した直近評価値、直近歌唱得点、利用者ID、及び楽曲IDをホスト側HDD13の履歴情報記憶領域に記憶させ、履歴データ15aを更新する。
【0056】
次に、ステップS24に移行し、最高評価値の抽出が行われる。ここでは、ホスト側制御部11が顧客情報記憶領域15に記憶された履歴データ15aを参照し、カラオケ端末21から受信した利用者IDと楽曲IDの組み合わせに該当する履歴データを特定して、その中から評価項目毎の最高評価値を抽出する。図3の例では、歌唱者の利用者IDがABC0123の歌唱者に関し、楽曲IDX−XXX−XXに対応するカラオケ楽曲の評価結果の履歴が特定され、音程からビブラート/ロングトーンまでの5つの評価項目について、個別に最高評価値X1〜X5が抽出される。
【0057】
最高評価値が抽出されたならば、ステップS25に移行し、最高評価値の送受信が行われる。ここでは、ホスト側制御部11で抽出された最高評価値が、直近歌唱得点、利用者ID、楽曲IDを送信してきたカラオケ端末21に送信される。端末側制御部31は、ホスト装置1から受信した最高評価値を端末側RAM32の採点ログ領域32aに記憶させる。
【0058】
次に、ステップS26に移行し、潜在能力得点の算出が行われる。ここでは、端末側制御部31が、採点ログ領域32aに記憶された各最高評価値を参照し、各最高評価値に対応する得点、すなわち採点対象のカラオケ楽曲についての最大潜在能力得点を算出する。
【0059】
次に、ステップS27に移行し、歌唱能力比の算出が行われる。ここでは、端末側制御部31が、最大潜在能力得点に対する直近歌唱得点の比率(直近歌唱得点/最大潜在能力得点)を歌唱能力比として算出する。
【0060】
歌唱能力比が算出されたならば、ステップS28に移行し、結果の報知が行われる。ここでは、端末側制御部31が、直近評価値、直近歌唱得点、最高評価値、最大潜在能力得点、及び、歌唱能力比といった採点結果の情報を合成回路40に出力する。合成回路40は、各情報を背景映像の映像信号と合成し、合成後の映像信号をモニタ23に出力する。そして、モニタ23は、採点結果の表示画面において所定の映像を表示させる。
【0061】
図8は、モニタ23で表示される結果報知映像の一例である。この図に示すように、モニタ23の直近歌唱得点表示領域23aには直近歌唱得点が表示され、最大潜在能力得点表示領域23bには最大潜在能力得点が表示されている。
【0062】
このように、最大潜在能力得点という新たな指標がモニタ23に表示されているので、採点対象の歌唱者は、最大潜在能力得点に基づいて、採点対象のカラオケ楽曲の客観的な評価を得ることができる。そして、直近歌唱得点と最大潜在能力得点とをモニタ23に表示させているので、歌唱者は、今回の歌唱結果が、歌唱者自身が有している潜在能力のどの程度の力で歌唱できたかを、客観的な指標として認識できる。
【0063】
そして、本実施形態では、直近歌唱得点が分数の分子に、最大潜在能力得点が分母に表示されているので、歌唱者は、今回の歌唱結果を直感的に認識することもできる。加えて、モニタ23の潜在能力比表示領域23cには、潜在能力比が数値で表示されているので、歌唱者は、直近に歌唱したカラオケ楽曲に対する自己の習熟度合いを、客観的な指標に基づいて知ることができる。
【0064】
また、モニタ23の評価値表示領域23dには、直近評価値及び最高評価値が、評価項目毎のレーダーチャートで描かれている。本実施形態では、直近評価値が実線で描かれ、最高評価値が点線で描かれている。このように、直近評価値と最高評価値とが同じチャート上に重ねて描かれているので、歌唱者は、直近歌唱での評価値と最高評価値との比較を容易に行える。
【0065】
以上の実施形態の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれる。例えば、次のように構成してもよい。
【0066】
前述の実施形態では、評価項目として、音程、安定性、表現力、リズム、及び、ビブラート/ロングトーンを例示したが、評価項目はこれらに限られない。例えば、表現力を評価するための各項目(抑揚やしゃくり回数等)を評価項目としてもよい。
【0067】
前述の実施形態では、評価処理(S16)にて最高評価値の情報を端末側制御部31に送信するようにしていたが、この構成に限られない。例えば、最高評価値の情報を直近歌唱の採点前に端末側制御部31へ送信してもよい。この場合、端末側制御部31は、直近歌唱の評価結果を加味して最高評価値を更新し、更新後の最高評価値を用いればよく、この直近歌唱の評価結果に関しては、適宜なタイミングにホスト側制御部11に送信すればよい。
【0068】
前述の実施形態では、評価値表示領域23dにて、直近評価値及び最高評価値をレーダーチャートで表示させるようにした場合を例示したが、表示態様はレーダーチャートに限られない。例えば折れ線グラフの形式で表示してもよいし、棒グラフの形式で表示してもよい。
【0069】
前述の実施形態では、ホスト装置1とカラオケ端末21が別々に構成されていたが、これらを一体に構成したものも本発明のカラオケシステムに含まれる。
【符号の説明】
【0070】
1…ホスト装置,2…カラオケ装置,3…通信回線,11…ホスト側制御部,12…ホスト側RAM,13…ホスト側HDD,14…ホスト側通信IF,15…顧客情報記憶領域,15a…履歴データ,21…カラオケ端末,22…スピーカ,23…モニタ,23a…直近歌唱得点表示領域,23b…最大潜在能力得点表示領域,23c…潜在能力比表示領域,23d…評価値表示領域,24…マイク,25…リモコン装置,31…端末側制御部,32…端末側RAM,32a…採点ログ領域,33…端末側HDD,34…音源,35…ミキサ,36…サウンドシステム,37…AD変換器,38…ボーカルアダプタ,39…映像デコーダ,40…合成回路,41…操作部,42…端末側通信IF,KB…カラオケ店,RM…カラオケルーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8