特許第6118534号(P6118534)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6118534
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】オープンラック式気化装置
(51)【国際特許分類】
   F17C 9/02 20060101AFI20170410BHJP
   F28D 3/02 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   F17C9/02
   F28D3/02
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-239522(P2012-239522)
(22)【出願日】2012年10月30日
(65)【公開番号】特開2014-88918(P2014-88918A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2015年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183369
【氏名又は名称】住友精密工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】外池 嘉朗
(72)【発明者】
【氏名】久田 憲宏
(72)【発明者】
【氏名】岡 勝
【審査官】 吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭60−001356(JP,Y2)
【文献】 実開昭57−056297(JP,U)
【文献】 特開平01−311190(JP,A)
【文献】 特開平06−323783(JP,A)
【文献】 特開平07−332879(JP,A)
【文献】 実開昭48−049251(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0165468(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0030391(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 9/02
F28D 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に配列された複数の伝熱管を含んでパネル状に構成されかつ、当該伝熱管の配列方向に直交する対向方向に所定間隔を空けて向かい合うように配置された、少なくとも一対の熱交換パネルと、
前記熱交換パネルの上端部からその表面に沿って熱媒体を流下させるように、前記各熱交換パネルに前記熱媒体を供給する熱媒体供給手段と、を備え、
前記各伝熱管内に供給した液化ガスを、前記各熱交換パネルの表面に供給した前記熱媒体によって気化させるオープンラック式気化装置であって、
前記熱媒体供給手段は、前記熱交換パネルよりも上方位置で前記配列方向に延びるように配置される分配管と、向かい合う一対の前記熱交換パネルの間の位置で前記配列方向に延びるように配置される振分板と、を有し、
前記分配管は、前記熱媒体を前記配列方向に分配しつつ、前記振分板に向かって前記熱媒体を流下させ、
前記振分板は、前記分配管から流下する前記熱媒体を前記対向方向の両側に振り分けて、前記対向方向に向かい合う前記熱交換パネルそれぞれの上端部表面に前記熱媒体を供給するオープンラック式気化装置。
【請求項2】
請求項1に記載のオープンラック式気化装置において、
前記一対の熱交換パネルの前記対向方向の間隔は、200〜400mmに設定されているオープンラック式気化装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のオープンラック式気化装置において、
前記振分板の横断面形状は、前記対向方向の中央部が、両側縁部よりも上方に位置するように構成されているオープンラック式気化装置。
【請求項4】
請求項3に記載のオープンラック式気化装置において、
前記振分板の横断面形状は、上向きに凸となった湾曲形状に形成されているオープンラック式気化装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のオープンラック式気化装置において、
前記振分板には、前記対向方向の前記中央部に、前記分配管から流下する前記熱媒体を受ける凹溝が、前記配列方向に延びて形成されているオープンラック式気化装置。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか1項に記載のオープンラック式気化装置において、
前記振分板は、前記中央部と前記両側縁部それぞれとの間で、前記対向方向の両側に振り分けた前記熱媒体を前記熱交換パネルに向かって流す流水面を有し、
前記流水面には、前記熱媒体を前記配列方向に分散させる分散加工が施されているオープンラック式気化装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のオープンラック式気化装置において、
前記分配管には、当該分配管から前記振分板に向かって流下させる前記熱媒体を案内するための案内管が接続されており、
前記振分板は、前記対向方向の前記中央部で立設すると共に、その上端部が前記案内管の下端開口から当該案内管に内挿されることで、前記案内管の下端開口から吐出される前記熱媒体を前記対向方向の両側に分流させる分流板を有しているオープンラック式気化装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のオープンラック式気化装置において、
前記振分板には、当該振分板の上面を前記配列方向に複数に区分するように、少なくとも1の区画壁が立設しているオープンラック式気化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、例えば液化ガスの気化に利用されるオープンラック式気化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、熱媒体としての海水を利用して液化天然ガス(以下、LNGともいう)を気化させるオープンラック式気化装置(以下、ORVともいう)が記載されている。このORVは、LNGが通過する複数の伝熱管が所定方向に配列されることでパネル状に構成された、複数の熱交換パネルと、海水が各熱交換パネルの上端部からその表面に沿って流下するように、各熱交換パネルに対し海水を供給する熱媒体供給手段とを備えて構成されている。具体的に、このORVでは、複数の熱交換パネルは、伝熱管の配列方向に直交する対向方向に、所定の間隔を空けて向かい合うように配置されている共に、各々の熱交換パネルの上端部には、上端開口のトラフが配列方向に延びて取り付けられている。そのトラフよりも上方位置に配置した散水管には、配列方向に等間隔を空けて多数の散水口を設けており、各散水口を通じてトラフ内に海水が供給される。トラフ内に供給された海水はトラフの底部に形成した供給孔から流出することで、熱交換パネルの両側表面に沿って流下するようになる。
【0003】
ここで、こうしたORVにおいて熱交換パネルに供給される海水の流量が伝熱管の配列方向に不均等になってしまうと、当該熱交換パネルの気化性能の低下を招くことになる。特許文献1に記載のORVでは、海水の偏流を抑制するために、トラフの容積を比較的大きく設定している。そのため、特許文献1に記載のORVでは、各熱交換パネルに取り付けられた大型のトラフ同士が干渉しないように、対向方向に向かい合う一対の熱交換パネルの間隔が比較的大きくなる。
【0004】
特許文献2に記載されたORVのトラフは、特許文献1に記載されているORVのトラフとは異なり、対向方向に向かい合う一対の熱交換パネルの間に配置され、各々の熱交換パネルに対して海水を供給するように構成されている。具体的にこのトラフは、伝熱管の配列方向に延びると共に、その上面が開放された箱状に構成されており、配列方向の中央部で、その底面に接続された供給管から海水が供給されるように構成されている。そうして、トラフの上端における対向方向の両側縁のそれぞれから溢れ出た海水が、このトラフを挟んだ両側に配置されている熱交換パネルの上端部の表面に供給されるように構成されている。
【0005】
ここで、特許文献2に記載されたORVでは、トラフの内部構造を工夫することによって前述した偏流を抑制しようとするが、その前提として、トラフの容積は、所定以上の大容積に設定される。こうして、特許文献2に記載されているORVにおいても大型化したトラフが熱交換パネル同士の間に配置されるから、対向方向に向かい合う一対の熱交換パネルの間隔は比較的大きくなる(例えば500〜600mm程度)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭48−49251号公報
【特許文献2】特開2010−38363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ORVの設置の省スペース化等の要請から、熱交換器パネルの間隔を狭くしたいという要求がある。特に設置スペースが限られる船上に設置されるORVに対しては、その要求が強い。しかしながら前述の通り、従来のORVでは、熱交換パネルに海水を供給するためのトラフは、偏流を抑制する観点から大量の海水を貯留可能となるように、大容積に構成されており、大型のトラフを設置するスペース上の制約から、熱交換パネルの間隔を狭くすることができないという不都合がある。
【0008】
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、偏流を防止して熱交換パネルの気化性能の低下を回避しつつも、設置の省スペース化が可能なオープンラック式気化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ここに開示する技術は、所定方向に配列された複数の伝熱管を含んでパネル状に構成されかつ、当該伝熱管の配列方向に直交する対向方向に所定間隔を空けて向かい合うように配置された、少なくとも一対の熱交換パネルと、前記熱交換パネルの上端部からその表面に沿って熱媒体を流下させるように、前記各熱交換パネルに前記熱媒体を供給する熱媒体供給手段と、を備え、前記各伝熱管内に供給した液化ガスを、前記各熱交換パネルの表面に供給した前記熱媒体によって気化させるオープランラック式気化装置に係る。
【0010】
そして、前記熱媒体供給手段は、前記熱交換パネルよりも上方位置で前記配列方向に延びるように配置される分配管と、向かい合う一対の前記熱交換パネルの間の位置で前記配列方向に延びるように配置される振分板と、を有し、前記分配管は、前記熱媒体を前記配列方向に分配しつつ、前記振分板に向かって前記熱媒体を流下させ、前記振分板は、前記分配管から流下する前記熱媒体を前記対向方向の両側に振り分けて、前記対向方向に向かい合う前記熱交換パネルそれぞれの上端部表面に前記熱媒体を供給する。
【0011】
ここで、オープンラック式気化装置においては、各伝熱管に液化ガスを分配供給するヘッダタンクは、鉛直方向に延びて配設される各伝熱管の下端に接続される一方、各伝熱管からの気化後のガスを集合排出するヘッダタンクは各伝熱管の上端に接続されることが一般的である。各伝熱管の外表面には、伝熱面積を拡大させるためにフィンが形成されるが、このフィンは、各ヘッダタンクとの接続部分を除く部位に形成されるため、伝熱管においてフィンが形成される部位は、その上端部及び下端部を除いた中間部となる。熱交換パネルは、配列方向に隣り合う伝熱管のフィン同士が互いに接続されることでパネル状に構成されることから、ここでいう「熱交換パネル」は、少なくとも、伝熱管においてフィンが形成されている部位を指す。従って、「熱交換パネルよりも上方位置」に配置される分配管は、伝熱管におけるフィンの形成部位よりも上方位置に配置され、例えば各伝熱管の上端が接続されるヘッダタンクよりも上方に配置される。また、「熱交換パネルの間の位置」に配置される振分板は、少なくとも、伝熱管におけるフィンの形成部位と同じ高さ位置に配置される。
【0012】
前記の構成によると、熱媒体(例えば海水)は、熱交換パネルよりも上方位置に配置されかつ、配列方向に延びる分配管から振分板に向かって流下する。例えば、分配管に多数の流下口を配列方向に並べて形成したり、配列方向に延びるスリット状の流下口を分配管に形成したりすればよい。
【0013】
配列方向に分配されつつ、分配管から流下した熱媒体は、熱交換パネル同士の間に配置された振分板に到達する、振分板は、熱媒体を対向方向の両側に振り分けて、対向方向に向かい合う熱交換パネルそれぞれの上端部表面に熱媒体を供給する。
【0014】
こうして、配列方向に熱媒体を分配する機能を有する分配管と、対向方向の両側に熱媒体を振り分ける機能を有する振分板とを組み合わせることによって、対向方向に向かい合う熱交換パネルそれぞれについて、配列方向の偏流を防止しつつ、熱媒体を供給することが可能になる。
【0015】
この熱媒体供給手段は、大量の熱媒体を貯留するトラフを備えていない。また、一対の熱交換パネルの間に配置される振分板は、大量の熱媒体を貯留する機能を有しないため、従来のトラフに比べて、そのサイズは大幅に小さくなる。従って、熱交換パネルの間隔を狭くすることが可能になる。また、熱交換パネル同士の間隔を狭くした方が、振分板において振り分けた熱媒体を各熱交換パネルに速やかに供給する上では有利になる。尚、前述したように、分配管を、ヘッダタンクよりも上方位置に配置すれば、熱交換パネルの間隔をさらに狭くする上で有利になる。
【0016】
こうして、前記構成のオープンラック式気化装置では、対向方向に向かい合う一対の熱交換パネルの間隔を狭くすることが可能になるから、設置の省スペース化が図られる。
【0017】
前記一対の熱交換パネルの前記対向方向の間隔は、200〜400mmに設定されている、としてよい。
【0018】
つまり、大容積のトラフを備えた従来のオープンラック式気化装置では、熱交換パネルの間隔は500〜600mm程度に設定されるのに対し、前述の通りトラフを省略することによって、熱交換パネル同士の間隔を200〜400mmにまで狭くすることが可能になる。
【0019】
前記振分板の横断面形状は、前記対向方向の中央部が、両側縁部よりも上方に位置するように構成されている、としてもよい。
【0020】
こうすることで、分配管から流下した熱媒体は、振分板において相対的に上方に位置する中央部に先ず当たり、その後、中央部から相対的に下方に位置する両側縁部へ向かうように振り分けられる。このことにより、分配管から流下する熱媒体は、対向方向の両側に、自動的にかつ、ほぼ均等に振り分けられるようになるから、対向方向に向かい合う一対の熱交換パネルのそれぞれに供給する熱媒体の供給量が均等化し、オープンラック式気化装置の性能向上に有利になる。振分板の横断面形状は、例えば山形形状としてもよい。
【0021】
前記振分板の横断面形状は、上向きに凸となった湾曲形状に形成されている、としてもよい。
【0022】
この構成は、振分板による熱媒体の振り分けを、対向方向の両側で均等化する上で有利な構成である。つまり、分配管から鉛直下向きに流下する熱媒体が振分板に当たる位置が、対向方向の中央部から多少ずれたときに、横断面形状が山形の振分板では、熱媒体の当たる位置が、その頂部からずれるため、対向方向の一方側に熱媒体が偏って振り分けられる可能性がある。
【0023】
これに対し、横断面が湾曲形状の振分板には、対向方向の両側の境となる頂部が存在しないため、流下した熱媒体が当たる位置が対向方向の中央部から多少ずれたとしても、対向方向の両側に、熱媒体をほぼ均等に振り分けることが可能になる。
【0024】
前記振分板には、前記対向方向の前記中央部に、前記分配管から流下する前記熱媒体を受ける凹溝が、前記配列方向に延びて形成されている、としてもよい。
【0025】
こうすることで、分配管から振分板に流下した熱媒体は、凹溝に一旦、受けられ、そこから溢れるようにして両側縁部に向かって流れ、各熱交換パネルへと供給される。従って、振分板における熱媒体の流下位置が、中央部に対して対向方向に多少ずれたとしても、凹溝内に熱媒体が流下すれば、熱媒体は対向方向の両側へほぼ均等に振り分けられる。つまり、凹溝は、熱媒体を対向方向に均等に振り分ける上で有利な構成である。
【0026】
前記振分板は、前記中央部と前記両側縁部それぞれとの間で、前記対向方向の両側に振り分けた前記熱媒体を前記熱交換パネルに向かって流す流水面を有し、前記流水面には、前記熱媒体を前記配列方向に分散させる分散加工が施されている、としてもよい。
【0027】
分配管は、配列方向に熱媒体が分配供給するものの、振分板においても配列方向に熱媒体を分散させることによって、熱媒体の偏流がさらに抑制され、熱交換パネルの気化性能の向上に有利になる。この構成は特に、分配管に多数の流下口が配列方向に並んで形成されていて、振分板に対する熱媒体の流下位置が、配列方向に離散的な構成において有効である。つまり、分配管から振分板まで間においては、流下口の形成箇所と流下口の非形成箇所との間で局所的な偏流が生じ得るが、振分板から熱交換パネルまでの間における分散加工によって熱媒体を配列方向に分散させることで、局所的な偏流を解消した上で、熱交換パネルに熱媒体を供給することが可能になる。
【0028】
前記分配管には、当該分配管から前記振分板に向かって流下させる前記熱媒体を案内するための案内管が接続されており、前記振分板は、前記対向方向の前記中央部で立設すると共に、その上端部が前記案内管の下端開口から当該案内管に内挿されることで、前記案内管の下端開口から吐出される前記熱媒体を前記対向方向の両側に分流させる分流板を有している、としてもよい。
【0029】
この構成は、振分板による熱媒体の振り分けを、より確実にする上で有利な構成であり、特にオープンラック式気化装置が船上に設置される場合に有効な構成である。つまり、オープンラック式気化装置が船上に設置される場合、対向方向に船が傾くことによって分配管と振分板とを繋ぐ仮想的な軸が、鉛直方向に対し傾いてしまうことがある。そのときに、分配管から流下する熱媒体は鉛直下向きに流下するため、振分板における熱媒体の流下位置が対向方向の中央部からずれてしまい、対向方向への熱媒体の振り分けが不均等になる可能性がある。
【0030】
これに対し、前記の構成は、分配管と振分板とを案内管によって実質的に接続しているため、分配管と振分板とを繋ぐ仮想的な軸が鉛直方向に対して傾いてしまったとしても、熱媒体が案内管内を流下することで、振分板における中央部に熱媒体が流下するようになる。また、案内管の下端開口に、振分板に立設する分流板を内挿しているため、その下端開口から吐出する熱媒体は、分流板によって、対向方向の一側と他側とに強制的に分流される。その結果、各熱交換パネルに供給される熱媒体の供給量を、確実に均等化することが可能になる。つまり、前記の構成は、オープンラック式気化装置が船上に設置されるような場合において、振分板による熱媒体の振り分けを、より確実にする上で有利になる。
【0031】
前記振分板には、当該振分板の上面を前記配列方向に複数に区分するように、少なくとも1の区画壁が立設している、としてもよい。
【0032】
この構成もまた、オープンラック式気化装置が船上に設置される場合に有効な構成である。つまり、配列方向に船が傾くことによって振分板が配列方向に傾いたときには、分配管から流下した熱媒体が、振分板の上面に当たった後に、配列方向に流れてしまい、熱交換パネルに供給される熱媒体が、配列方向に偏る場合がある。また、対向方向の両側への振り分けも機能し難くなる可能性がある。
【0033】
これに対し、前記の構成では、振分板の上面に区画壁を立設しているため、振分板の上面上を配列方向に流れる熱媒体は、この区画壁に当たるようになり、区画壁に沿って対向方向の両側それぞれに流れるようになる。複数の振分板を、配列方向に分散して配置しておけば、各熱交換パネルに供給される熱媒体の、配列方向の偏流が抑制される。また、区画壁によって、熱媒体の振り分け機能を確実に維持することが可能になる。
【0034】
また、配列方向に延びる凹溝を有する振分板においては、その凹溝内にも区画壁を設けるようにしてもよい。こうすることで、配列方向に船が傾くことによって振分板が配列方向に傾いたときには、凹溝内の熱媒体が、その傾斜に伴って配列方向の一方側に流れてしまうことで、各熱交換パネルに供給される熱媒体について配列方向の偏流が生じてしまう可能性があるところ、凹溝内を区画壁によって複数に区分することによって、振分板が配列方向に傾いたとしても、凹溝内の熱媒体が配列方向の一方側に流れてしまうことが抑制される。その結果、各熱交換パネルに供給される熱媒体について配列方向の偏流が生じることを抑制することが可能になる。
【発明の効果】
【0035】
以上説明したように、前記のオープンラック式気化装置によると、配列方向に熱媒体を分配する機能を有する分配管と、対向方向の両側に熱媒体を振り分ける機能を有する振分板とを組み合わせることによって、対向方向に向かい合う熱交換パネルそれぞれについて、偏流を防止しつつ熱媒体を供給することが可能になると共に、大容積のトラフを省略することで、対向方向に隣り合う熱交換パネル同士の間隔を狭くすることが可能になり、設置の省スペース化が可能なオープンラック式気化装置が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】オープンラック式気化装置における上部構造の一部を示す斜視図である。
図2】オープンラック式気化装置における上部構造の断面図である。
図3】振分板の流水面に施される各種の分散加工を例示する図である。
図4】振分板の各種の横断面形状を例示する図である。
図5】(a)横断面形状が上向きに湾曲した形状の振分板を示す図、(b)当該振分板に対する熱媒体の流下位置が中央部からずれたときの、熱媒体の振り分け状態を例示する図である。
図6】分配管に接続される案内管と、振分板に取り付けられる分流板との組み合わせを示す断面図である。
図7】振分板の上面に区画壁を設けた例を示す斜視図である。
図8】振分板の上面に区画壁を設けた例における、(a)振分板の横断面図、(b)オープンラック式気化装置における上部構造の側面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、オープンラック式気化装置(Open Rack Vaporizer:ORV)1の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の実施形態の説明は例示である。このORV1は、この
例では、液化天然ガス(LNG)を、熱媒体としての海水によって気化して天然ガス(NG)にする装置である。
【0038】
図1,2は、ORV1の上部構造を示す図であり、図1は、ORV1の上部を斜め上から視た斜視図、図2は、ORV1の上部を正面から視た断面図である。尚、図では、後述する構成の熱交換パネル2を2枚のみ図示しているが、ORV1は、多数の熱交換パネル2を並設して構成されており、隣り合う一対の熱交換パネル2、2の間にはそれぞれ、図1、2と同様の構成が設けられている。このORV1は、一例として、船上に設置されるものであり、そのために、設置の省スペース化が図られている。但し、このORV1は、船上の設置に限定されるものではなく、地上に設置してもよい。
【0039】
ORV1は、複数の伝熱管21が、所定ピッチで配列方向(つまり、図1における紙面左手前から右奥の方向)に配列されることによりパネル状に構成された熱交換パネル2を有している。複数の熱交換パネル2は、配列方向に直交する対向方向(つまり、図1における紙面左奥から右手前の方向)に、所定の間隔を空けて向かい合って配置されている。
【0040】
各伝熱管21は、その横断面において径方向の外方に向かって延びる複数のフィン22を有しており、各フィン22は、伝熱管21における上端部付近から、図外の下端部付近にまでの間で延びている。
【0041】
各伝熱管21の上端は、この伝熱管21の上方位置において配列方向に向かって延びる上部ヘッダタンク23に接続されている。また、図示は省略するが、各伝熱管21の下端は、上部ヘッダタンク23と同様に配列方向に向かって延びる下部ヘッダタンクに接続されている。液化天然ガスは、図外の下部ヘッダタンクを通じて各伝熱管21に供給され、この伝熱管21内を下から上に流れる途中で気化し、気化した天然ガスは、上部ヘッダタンク23を通じて送り出される。
【0042】
各熱交換パネル2に対して熱媒体(この例では、海水)を供給する熱媒体供給手段3は、配列方向に延びて配置される分配管4と、図2に端的に示すように、分配管4の真下であって、向かい合う一対の熱交換パネル2、2の間の位置で配列方向に延びて配置される振分板5と、を有して構成されている。
【0043】
分配管4は、その内部に海水が流れる管であって、この例では、図1、2に示すように、上部ヘッダタンク23よりも上方位置に配置されている。尚、分配管4は、上部ヘッダタンク23よりも上方位置に配置することに限定されず、少なくとも振分板5よりも上方位置であればよい。つまり、各伝熱管21に設けられたフィン22よりも上方位置であればよい。但し、分配管4を、上部ヘッダタンク23よりも上方位置に配置した方が、後述の通り、熱交換パネル2の間隔を狭くする上では有利になる。
【0044】
分配管4の下部には、海水を振分板5に向かって流下させるための流下口41が、配列方向に、所定のピッチで多数形成されている。これにより、分配管4は、海水を配列方向に分配しながら振分板5に供給する。流下口41のピッチは、熱交換パネル2における伝熱管21のピッチに対応して設定してもよい。例えば、流下口41のピッチを伝熱管21と等ピッチにしてもよい。また、流下口41のピッチを、伝熱管21と等ピッチでかつ、伝熱管21の配置に対し半ピッチだけずらして配置してもよい。
【0045】
尚、流下口41の配列は一列でなく、複数列にしてもよいし、流下口41を千鳥に配列してもよい。また、図示は省略するが、分配管4に多数の流下口41を、間隔を空けて形成する代わりに、配列方向に延びるスリット状の流下口を、一つ以上、分配管4の下部に形成するようにしてよい。このようなスリット状の流下口を形成することでも、配列方向に分配しながら、振分板5に、海水を供給することが可能になる。
【0046】
振分板5は、配列方向に延びる帯状の板を、所定の横断面形状となるように折り曲げることによって構成されている。図2の例において、振分板は、横断面が概略M字状となるように構成されており、これによって振分板5は、対向方向の中央部において、比較的浅いV字状に凹陥すると共に、配列方向に延びる凹溝51と、凹溝51における対向方向の
両端縁から振分板5の両側縁部に向かって、それぞれ下向きに傾斜する流水面52とを有して構成されている。振分板5の横断面形状は、言い換えると、対向方向の中央部としての凹溝51の端縁が、その両側縁部よりも上方に位置するように構成されている。
【0047】
振分板5の各側縁部は、図2に示すように、熱交換パネル2に設けられたフィン22の上端部近傍において、対向方向に所定の隙間を設けて位置しており、これにより、熱交換パネル2と振分板5との間にゴミや貝殻などの固形物が溜まってしまうことを防止しつつ、後述の通り、流水面52を伝って流れる海水が、熱交換パネル2における上端部に供給される。
【0048】
分配管4及び振分板5は、海水に対する腐食性を考慮して、例えばアルミニウム合金や、FRP(Fiber Reinforced Plastics)によって構成すればよい。
【0049】
このような構成の熱媒体供給手段3では、図2に示すように、分配管4において、配列方向に並んだ各流下口41から下向きに流下する海水が、一対の上部ヘッダタンク23、23の間を通って、分配管4の真下に配設された振分板5に対し、配列方向に分配されながら凹溝51内に入るようになる。凹溝51は、前述の通り、浅いV字状に構成されているため、海水はこの凹溝51内には、ほとんど溜まらずに、凹溝51の各端縁部から溢れ、斜め下向きに傾斜した各流水面52上を流れるようになる。そうして、振分板5の両側縁部から一対の熱交換パネル2それぞれの上端部表面に、海水が供給されるようになる。各熱交換パネル2に供給された海水は、この熱交換パネル2の表面で液膜を形成した状態で下方に流れ、前述の通り、各伝熱管21内を流れるLNGを気化させる。
【0050】
この構成の熱媒体供給手段3は、配列方向に海水を分配する機能を有する分配管4と、対向方向の両側に海水を振り分ける機能を有する振分板5とを組み合わせることによって、対向方向に向かい合う熱交換パネル2それぞれについて、配列方向についての偏流を防止しつつ、熱媒体を供給することが可能になる。こうして、従来のORVにおいて設けられていた大容積のトラフを省略しつつも、熱交換パネル2に供給される海水の偏流を防止している。その結果、熱交換パネル2、2同士の間には、対向方向のサイズが比較的小さい振分板5のみが配設されている。このため、熱交換パネル2、2同士の間隔を、従来よりも狭く設定することが可能になる。また、熱交換パネル2、2同士の間隔を狭くした方が、振分板5で振り分けた海水を速やかに熱交換パネル2に供給することが可能になる。そこで、このORV1では、熱交換パネル2、2同士の間隔を、200mm〜400mmに設定している(尚、従来のトラフを有するORVでは、熱交換パネル同士の間隔は、500〜600mmである)。その結果、ORV1の設置の省スペース化が図られて、特に船上の設置に有利になる。尚、熱交換パネル2、2同士の間隔は、熱交換パネル2のメンテナンスや補修等のために、熱交換パネル2の間に人が入ることがあり得るときには広めに設定し、熱交換パネル2の間に人が入ることがないときには狭めに設定すればよい。また、分配管4を上部ヘッダタンク23よりも下側に配置したときには、分配管4の径の大きさによって、熱交換パネル2同士の間隔が制約を受ける場合があるものの、分配管4の径が比較的小径であれば、熱交換パネル2同士の間隔を狭く設定しつつも、各伝熱管21においてフィン22が形成されていない上端部同士の間に、分配管4を配置することが可能である。
【0051】
また、振分板5の横断面形状を概略M字状にすることで、その中央部が両側縁部よりも上方に位置するようになり、分配管4から流下した海水を、対向方向の両側に自動的にかつ略均等に振り分けることが可能になる。さらに、この振分板5には、凹溝51が設けられているため、分配管4から流下する海水が、振分板5の対向方向の中央部から多少ずれたとしても、凹溝51内に海水が流下すれば、対向方向の両側に略均等に海水を振り分けることが可能になる。このことは、振分板5を挟んだ両側の熱交換パネル2、2に供給する海水を均等化して、ORV1全体の気化性能の向上に寄与する。
【0052】
(配列方向に対する局所的な偏流を抑制する構成例)
前述の通り、分配管4には、多数の流下口41を配列方向に間隔を空けて形成しているため、振分板5を介して熱交換パネル2に海水が供給されたときに、流下口41の形成箇
所と流下口41の非形成箇所との間で局所的な偏流を生じる可能性がある。そこで、こうした局所的な偏流を回避するために、振分板5の流水面52に、配列方向に海水を分散させるための凹及び/又は凸を設ける分散加工を施してもよい。
【0053】
図3(a)〜(d)は、流水面52に施す分散加工の一例を示している。先ず、図3(a)は、流水面52に、配列方向に延びる溝53を、所定間隔を設けて複数形成した加工例である。このような分散加工により、図3の上から下に向かって流れる海水(つまり、振分板5においては、凹溝51の端縁から側縁部に向かって、流水面52に沿って流れる海水)は、その途中の各溝53内で配列方向に広がるように流れる。その結果、局所的な偏流を解消した上で、熱交換パネル2に対して海水を供給することが可能になる。
【0054】
図3(b)は、流水面52に、多数の丸突起54が等間隔で配置された加工例を示している。このような分散加工により、図3の上から下に向かって流れる海水は、突起54に当たる度に配列方向に流れを変更させるから、局所的な偏流が解消されて熱交換パネル2に海水が供給される。尚、突起54の形状は、任意の形状、例えば三角形状等の適宜の形状を採用することが可能である。また、突起54の配置にも特に制限はなく、適宜の配置を採用することができる。
【0055】
図3(c)は、流水面52に、斜め傾いたリブ状の突起55が格子を形成するように所定の配列で多数配置された加工例を示している。このような突起55を形成することによって、前記と同様に、図3の上から下に向かって流れる海水の流れを配列方向に変更させることで、局所的な偏流が解消される。
【0056】
図3(d)は、流水面52に、多数の凹み56が等間隔で配置された加工例を示しており、図3の上から下に向かって流れる海水が、各凹み56に入って流れ方向を変更することにより、局所的な偏流が解消される。こうした凹み56の形状及び配置に関しては、特に制限がなく、適宜の形状及び配置を採用することが可能である。
【0057】
こうした分散加工は、熱媒体の偏流をさらに抑制して、熱交換パネル2の気化性能の向上に有利になる。尚、図3(a)〜(d)に示す形状以外の分散加工を、流水面52に形成することも可能である。
【0058】
(振分板の形状に関する変形例)
振分板5は、図2に示すように、横断面概略M字状に形成する他にも、様々な形状を採用することが可能である。図4は、振分板5の横断面形状の変形例を示している。
【0059】
図4(a)は、凹溝51の形状をV字状にするのではなく、凹溝51の底部に平坦部を設けた例を示している。このような形状の振分板5も、図2に示す振分板5と同様に、対向方向の両側に海水を均等に振り分ける上で有利な構成になる。
【0060】
また、図4(b)に示すように、振分板5の凹溝を省略してもよい。図4(b)は、振分板5を、中央部から両側縁部に向かって斜め下向きに延びる流水面52、52により、その横断面形状が、全体として山形となるように形成している。この形状の振分板5においては、分配管4から流下した海水が、中央部の頂部付近に当たることで、自動的にかつ略均等に、海水が対向方向の両側に振り分けられるようになる。
【0061】
また、図4(c)に示すように、振分板5を、水平方向に拡がる平坦な横板と、この横板の中央部で立設する縦板とによって、横断面形状が逆T字状となるように形成してもよい。このような振分板5もまた、対向方向の中央部(縦板の上端部)が、両側縁部(横板の各端縁部)よりも上方に位置するようになるから、分配管4から振分板5の中央部に流下した海水は、縦板によって対向方向の両側に分けられた後に、横板の上面、つまり流水面52に沿って対向方向の両側に流れて、各熱交換パネル2に供給されるようになる。
【0062】
また、図5(a)に示すように、振分板5の横断面形状を上向きに凸の湾曲した形状にしてもよい。図5(a)の例では、横断面形状を円弧状にしている。この形状の振分板5においては、流水面52は湾曲した形状となる。このような振分板5においても、山形の振分板5と同様に、対向方向の中央部が、両側縁部よりも上方に位置するようになるから、分配管4から流下した海水が中央部付近に当たることで、自動的にかつ略均等に、海水が対向方向の両側に振り分けられるようになる。特に、円弧状の振分板5は、図4(b)の山形の振分板5のように頂部を有しないため、図5(b)に示すように、ORV1の全体が傾く等により、分配管4から流下した海水が、振分板5における対向方向の中央からずれて当たったとしても、対向方向の両側への振り分け量が略均等になり得る。
【0063】
(船上に設置されるORVに特有の構成例)
前述の通りORV1を船上に設置した場合には、船の傾きによってORV1の全体が、対向方向及び/又は配列方向に、傾くようになる。例えば対向方向にORV1が傾いたときには、分配管4と振分板5とを繋ぐ仮想的な軸が鉛直方向に対し傾いてしまう。一方で、分配管4から振分板5に向かって流下する海水は鉛直下向きに流下することから、振分板5における中央部からずれて、流下した海水が当たるようになり、その結果、対向方向の両側への海水の振り分けが、一方側に偏ってしまう可能性がある。図6に示す熱媒体供給手段3の構成例は、対向方向に傾いたときでも、振り分けの偏りを確実に防止する上で有効な構成例である。
【0064】
すなわち、分配管4の各流下口41には、鉛直下向きに延びる案内管42が取り付けられている。この案内管42は、分配管4から流下する海水の流れ方向を案内するための管である。船の傾きによってORV1が傾いたときでも海水は案内管42に沿って流下することになる。
【0065】
一方、横断面が山形に構成された振分板5の中央部には、分流板57が立設しており、この分流板57の上端部は、案内管42の下端開口に内挿されている。これにより分流板57は、案内管42の下端開口を対向方向の一側と他側とに分割している。このような構成により、分配管4の流下口41から流下し、案内管42の下端から吐出する海水は、分流板57によって対向方向の両側に、強制的にかつ均等に分けられるようになる。従って、船が傾き、それに伴いORV1が傾いたときでも、分配管4から振分板5に流下した海水が、分流板57によって対向方向の両側に、強制的にかつ均等に分けられるから、振り分けの偏りが回避される。つまり、船上に設置されるORV1における性能向上に有利になる。
【0066】
尚、振分板5の横断面形状は、図2図4(a)(c)、図5等から適宜の形状を採用することが可能である。
【0067】
また、分配管4にスリット状の流下口が形成されているときには、当該スリット状の流下口に対応する細長形状の流路を有する案内管を分配管4に取り付けるようにしてもよいし、スリット状の流下口を挟んだ対向方向の両側に一対の案内板を分配管4に取り付けるようにしてもよい。
【0068】
一方、配列方向に船が傾いた場合、凹溝51が形成されている振分板5(図2及び図4(a)参照)においては、その振分板5が配列方向に傾くことに伴い、凹溝51内の海水が配列方向の一方に流れてしまい、熱交換パネル2に供給する海水が、その配列方向に偏ってしまうようになる。図7は、そうした配列方向の傾きによって生じる偏流を抑制する上で有効な振分板5の構成例である。つまり、この振分板5の凹溝51内から流水面52上にかけて、凹溝51内を含む振分板5を配列方向に複数に区分するための区画壁58が設けられている。図例では、区画壁58は、配列方向に等間隔を空けて複数、配置されている。区画壁58の数や配置(間隔)は、適宜設定することが可能である。区画壁58は、振分板5が配列方向に傾いたときに、海水が配列方向の一方に流れてしまうことを抑制する。区画壁53の高さは、想定水量によって生じる水膜厚さに、傾斜によって生じる水膜厚さの偏りを考慮して設定すればよい。その結果、熱交換パネル2に供給する海水が、配列方向に偏ってしまうことが抑制される。この構成もまた、船上に設置されるORV1における性能向上に有利になる。尚、凹溝51内にのみ、区画壁を設けることも可能である。
【0069】
また、図8は、凹溝を有しない振分板5の上面に、区画壁58を立設した構成例を示している。この場合の区画壁58は、図8(a)(b)に示すように、配列方向に延びる振分板5の上面に対し、所定ピッチで配置されており、これによって、振分板5の上面を、配列方向に複数に区分している。図例では、区画壁58のピッチを、分配管4の流下口41と同じピッチに設定しており、それと同時に伝熱管21のピッチとも同じにしている。このような構成では、各流下口41から流下した海水は、区画壁58に当たるようになり、区画壁58に沿って対向方向の両側に振り分けられ、熱交換パネル2、より正確には各伝熱管21に供給される。このように振分板5の上面に立設した区画壁58は、対向方向の両側への熱媒体の振り分け促進としても機能し得る。
【0070】
一方、ORV1が配列方向に傾いたときには、各流下口41から流下した海水は、区画壁58とはずれて、振分板5の上面に当たるようになり、その後、配列方向に傾いた振分板5に沿って、配列方向の一方に流れようとする。しかしながら、振分板5の上面を流れる海水は、区画壁58に当たり、その区画壁58に沿うように、対向方向の両側へと流れることになる。こうして区画壁58は、ORV1が配列方向に傾いたときには、熱交換パネル2に供給する海水が、配列方向に偏ってしまうことを抑制する。それと同時に、区画壁58は、海水を、対向方向の両側に確実に振り分ける機能も果たす。尚、振分板5として、図3に示したような分散加工が施されたものを用い、その上面に区画壁58を立設してもよい。
【0071】
尚、区画壁58のピッチは、分配管4の流下口41と同じピッチでかつ、半ピッチだけずらしてもよい。また、区画壁58のピッチは、伝熱管21と同じピッチでかつ、半ピッチだけずらしてもよい。さらに、区画壁58のピッチを、伝熱管21の1/2ピッチや1/4ピッチにすれば、伝熱管21の幅方向に生じる偏流も抑制することができる。流下口41、伝熱管21、及び区画壁58の間の配置関係は、適宜設定することが可能である。
【0072】
尚、図1図8を参照しながら説明した前記の各構成は、適宜の範囲で自由に組み合わせることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上説明したように、ここに開示したオープンラック式気化装置は、熱交換パネルに対する熱媒体の偏流を防止しつつ、設置の省スペース化を図ることができるから、LNGの気化装置を始めとして、液化ガスの気化に利用可能であり、特に設置スペースに制約がある場合、例えば船上に設置される気化装置として有用である。
【符号の説明】
【0074】
1 オープンラック式気化装置(ORV)
2 熱交換パネル
21 伝熱管
3 熱媒体供給手段
4 分配管
42 案内管
5 振分板
51 凹溝
52 流水面
53 溝(分散加工)
54 丸突起(分散加工)
55 突起(分散加工)
56 凹み(分散加工)
57 分流板
58 区画壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8