【課題を解決するための手段】
【0009】
ここに開示する技術は、所定方向に配列された複数の伝熱管を含んでパネル状に構成されかつ、当該伝熱管の配列方向に直交する対向方向に所定間隔を空けて向かい合うように配置された、少なくとも一対の熱交換パネルと、前記熱交換パネルの上端部からその表面に沿って熱媒体を流下させるように、前記各熱交換パネルに前記熱媒体を供給する熱媒体供給手段と、を備え、前記各伝熱管内に供給した液化ガスを、前記各熱交換パネルの表面に供給した前記熱媒体によって気化させるオープランラック式気化装置に係る。
【0010】
そして、前記熱媒体供給手段は、前記熱交換パネルよりも上方位置で前記配列方向に延びるように配置される分配管と、向かい合う一対の前記熱交換パネルの間の位置で前記配列方向に延びるように配置される振分板と、を有し、前記分配管は、前記熱媒体を前記配列方向に分配しつつ、前記振分板に向かって前記熱媒体を流下させ、前記振分板は、前記分配管から流下する前記熱媒体を前記対向方向の両側に振り分けて、前記対向方向に向かい合う前記熱交換パネルそれぞれの上端部表面に前記熱媒体を供給する。
【0011】
ここで、オープンラック式気化装置においては、各伝熱管に液化ガスを分配供給するヘッダタンクは、鉛直方向に延びて配設される各伝熱管の下端に接続される一方、各伝熱管からの気化後のガスを集合排出するヘッダタンクは各伝熱管の上端に接続されることが一般的である。各伝熱管の外表面には、伝熱面積を拡大させるためにフィンが形成されるが、このフィンは、各ヘッダタンクとの接続部分を除く部位に形成されるため、伝熱管においてフィンが形成される部位は、その上端部及び下端部を除いた中間部となる。熱交換パネルは、配列方向に隣り合う伝熱管のフィン同士が互いに接続されることでパネル状に構成されることから、ここでいう「熱交換パネル」は、少なくとも、伝熱管においてフィンが形成されている部位を指す。従って、「熱交換パネルよりも上方位置」に配置される分配管は、伝熱管におけるフィンの形成部位よりも上方位置に配置され、例えば各伝熱管の上端が接続されるヘッダタンクよりも上方に配置される。また、「熱交換パネルの間の位置」に配置される振分板は、少なくとも、伝熱管におけるフィンの形成部位と同じ高さ位置に配置される。
【0012】
前記の構成によると、熱媒体(例えば海水)は、熱交換パネルよりも上方位置に配置されかつ、配列方向に延びる分配管から振分板に向かって流下する。例えば、分配管に多数の流下口を配列方向に並べて形成したり、配列方向に延びるスリット状の流下口を分配管に形成したりすればよい。
【0013】
配列方向に分配されつつ、分配管から流下した熱媒体は、熱交換パネル同士の間に配置された振分板に到達する、振分板は、熱媒体を対向方向の両側に振り分けて、対向方向に向かい合う熱交換パネルそれぞれの上端部表面に熱媒体を供給する。
【0014】
こうして、配列方向に熱媒体を分配する機能を有する分配管と、対向方向の両側に熱媒体を振り分ける機能を有する振分板とを組み合わせることによって、対向方向に向かい合う熱交換パネルそれぞれについて、配列方向の偏流を防止しつつ、熱媒体を供給することが可能になる。
【0015】
この熱媒体供給手段は、大量の熱媒体を貯留するトラフを備えていない。また、一対の熱交換パネルの間に配置される振分板は、大量の熱媒体を貯留する機能を有しないため、従来のトラフに比べて、そのサイズは大幅に小さくなる。従って、熱交換パネルの間隔を狭くすることが可能になる。また、熱交換パネル同士の間隔を狭くした方が、振分板において振り分けた熱媒体を各熱交換パネルに速やかに供給する上では有利になる。尚、前述したように、分配管を、ヘッダタンクよりも上方位置に配置すれば、熱交換パネルの間隔をさらに狭くする上で有利になる。
【0016】
こうして、前記構成のオープンラック式気化装置では、対向方向に向かい合う一対の熱交換パネルの間隔を狭くすることが可能になるから、設置の省スペース化が図られる。
【0017】
前記一対の熱交換パネルの前記対向方向の間隔は、200〜400mmに設定されている、としてよい。
【0018】
つまり、大容積のトラフを備えた従来のオープンラック式気化装置では、熱交換パネルの間隔は500〜600mm程度に設定されるのに対し、前述の通りトラフを省略することによって、熱交換パネル同士の間隔を200〜400mmにまで狭くすることが可能になる。
【0019】
前記振分板の横断面形状は、前記対向方向の中央部が、両側縁部よりも上方に位置するように構成されている、としてもよい。
【0020】
こうすることで、分配管から流下した熱媒体は、振分板において相対的に上方に位置する中央部に先ず当たり、その後、中央部から相対的に下方に位置する両側縁部へ向かうように振り分けられる。このことにより、分配管から流下する熱媒体は、対向方向の両側に、自動的にかつ、ほぼ均等に振り分けられるようになるから、対向方向に向かい合う一対の熱交換パネルのそれぞれに供給する熱媒体の供給量が均等化し、オープンラック式気化装置の性能向上に有利になる。振分板の横断面形状は、例えば山形形状としてもよい。
【0021】
前記振分板の横断面形状は、上向きに凸となった湾曲形状に形成されている、としてもよい。
【0022】
この構成は、振分板による熱媒体の振り分けを、対向方向の両側で均等化する上で有利な構成である。つまり、分配管から鉛直下向きに流下する熱媒体が振分板に当たる位置が、対向方向の中央部から多少ずれたときに、横断面形状が山形の振分板では、熱媒体の当たる位置が、その頂部からずれるため、対向方向の一方側に熱媒体が偏って振り分けられる可能性がある。
【0023】
これに対し、横断面が湾曲形状の振分板には、対向方向の両側の境となる頂部が存在しないため、流下した熱媒体が当たる位置が対向方向の中央部から多少ずれたとしても、対向方向の両側に、熱媒体をほぼ均等に振り分けることが可能になる。
【0024】
前記振分板には、前記対向方向の前記中央部に、前記分配管から流下する前記熱媒体を受ける凹溝が、前記配列方向に延びて形成されている、としてもよい。
【0025】
こうすることで、分配管から振分板に流下した熱媒体は、凹溝に一旦、受けられ、そこから溢れるようにして両側縁部に向かって流れ、各熱交換パネルへと供給される。従って、振分板における熱媒体の流下位置が、中央部に対して対向方向に多少ずれたとしても、凹溝内に熱媒体が流下すれば、熱媒体は対向方向の両側へほぼ均等に振り分けられる。つまり、凹溝は、熱媒体を対向方向に均等に振り分ける上で有利な構成である。
【0026】
前記振分板は、前記中央部と前記両側縁部それぞれとの間で、前記対向方向の両側に振り分けた前記熱媒体を前記熱交換パネルに向かって流す流水面を有し、前記流水面には、前記熱媒体を前記配列方向に分散させる分散加工が施されている、としてもよい。
【0027】
分配管は、配列方向に熱媒体が分配供給するものの、振分板においても配列方向に熱媒体を分散させることによって、熱媒体の偏流がさらに抑制され、熱交換パネルの気化性能の向上に有利になる。この構成は特に、分配管に多数の流下口が配列方向に並んで形成されていて、振分板に対する熱媒体の流下位置が、配列方向に離散的な構成において有効である。つまり、分配管から振分板まで間においては、流下口の形成箇所と流下口の非形成箇所との間で局所的な偏流が生じ得るが、振分板から熱交換パネルまでの間における分散加工によって熱媒体を配列方向に分散させることで、局所的な偏流を解消した上で、熱交換パネルに熱媒体を供給することが可能になる。
【0028】
前記分配管には、当該分配管から前記振分板に向かって流下させる前記熱媒体を案内するための案内管が接続されており、前記振分板は、前記対向方向の前記中央部で立設すると共に、その上端部が前記案内管の下端開口から当該案内管に内挿されることで、前記案内管の下端開口から吐出される前記熱
媒体を前記対向方向の両側に分流させる分流板を有している、としてもよい。
【0029】
この構成は、振分板による熱媒体の振り分けを、より確実にする上で有利な構成であり、特にオープンラック式気化装置が船上に設置される場合に有効な構成である。つまり、オープンラック式気化装置が船上に設置される場合、対向方向に船が傾くことによって分配管と振分板とを繋ぐ仮想的な軸が、鉛直方向に対し傾いてしまうことがある。そのときに、分配管から流下する熱媒体は鉛直下向きに流下するため、振分板における熱媒体の流下位置が対向方向の中央部からずれてしまい、対向方向への熱媒体の振り分けが不均等になる可能性がある。
【0030】
これに対し、前記の構成は、分配管と振分板とを案内管によって実質的に接続しているため、分配管と振分板とを繋ぐ仮想的な軸が鉛直方向に対して傾いてしまったとしても、熱媒体が案内管内を流下することで、振分板における中央部に熱媒体が流下するようになる。また、案内管の下端開口に、振分板に立設する分流板を内挿しているため、その下端開口から吐出する熱媒体は、分流板によって、対向方向の一側と他側とに強制的に分流される。その結果、各熱交換パネルに供給される熱媒体の供給量を、確実に均等化することが可能になる。つまり、前記の構成は、オープンラック式気化装置が船上に設置されるような場合において、振分板による熱媒体の振り分けを、より確実にする上で有利になる。
【0031】
前記振分板には、当該振分板の上面を前記配列方向に複数に区分するように、少なくとも1の区画壁が立設している、としてもよい。
【0032】
この構成もまた、オープンラック式気化装置が船上に設置される場合に有効な構成である。つまり、配列方向に船が傾くことによって振分板が配列方向に傾いたときには、分配管から流下した熱媒体が、振分板の上面に当たった後に、配列方向に流れてしまい、熱交換パネルに供給される熱媒体が、配列方向に偏る場合がある。また、対向方向の両側への振り分けも機能し難くなる可能性がある。
【0033】
これに対し、前記の構成では、振分板の上面に区画壁を立設しているため、振分板の上面上を配列方向に流れる熱媒体は、この区画壁に当たるようになり、区画壁に沿って対向方向の両側それぞれに流れるようになる。複数の振分板を、配列方向に分散して配置しておけば、各熱交換パネルに供給される熱媒体の、配列方向の偏流が抑制される。また、区画壁によって、熱媒体の振り分け機能を確実に維持することが可能になる。
【0034】
また、配列方向に延びる凹溝を有する振分板においては、その凹溝内にも区画壁を設けるようにしてもよい。こうすることで、配列方向に船が傾くことによって振分板が配列方向に傾いたときには、凹溝内の熱媒体が、その傾斜に伴って配列方向の一方側に流れてしまうことで、各熱交換パネルに供給される熱媒体について配列方向の偏流が生じてしまう可能性があるところ、凹溝内を区画壁によって複数に区分することによって、振分板が配列方向に傾いたとしても、凹溝内の熱媒体が配列方向の一方側に流れてしまうことが抑制される。その結果、各熱交換パネルに供給される熱媒体について配列方向の偏流が生じることを抑制することが可能になる。