(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の第1の実施形態に係る測位信号サーチ装置について、図を参照して説明する。なお、本実施形態では、GPS(Global Positioning System)を例に説明するが、他のGNSS(Global Navigation Satellite Systems)の各測位システムにも本願の構成を適用することができる。すなわち、複数の測位衛星が、測位衛星毎に個別に設定された擬似雑音コードで搬送波信号をコード変調して当該コード変調信号を放送するシステムであれば、本願の構成を適用することができる。
【0030】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る測位信号サーチ装置の構成を示すブロック図である。測位信号サーチ装置10は、制御部20、タイミング信号発生部30、信号サーチ部41,42を備える。
【0031】
制御部20は、例えばMPU等によって構成される。制御部20は、タイミング信号発生部30に対して、タイミング信号の生成制御を行う。
【0032】
制御部20は、コールドスタートであるかホットスタートであるかを判断して、各信号サーチ部41,42に、サーチ条件を設定する。
【0033】
コールドスタートは、捕捉追尾の可能性が高い測位衛星(測位信号)が推定できない状態でサーチを開始する場合である。ホットスタートは、予め航法メッセージ等により捕捉追尾の可能性が高い測位衛星(測位信号)が推定できる状態でサーチを開始する場合である。
【0034】
制御部20は、信号サーチ部41,42から入力されるサーチ結果(後述する受信信号とレプリカ信号の相関値)を用いて、航法メッセージの復調を行う。また、制御部20は、必要に応じて、サーチ結果(擬似距離やドップラ周波数)から測位を行い、位置、速度、自装置の時刻を推定算出する。
【0035】
制御部20は、サーチの開始時に航法メッセージを記憶していれば、ホットスタートのサーチ条件を選択する。制御部20は、サーチの開始時に航法メッセージが記憶されていなければ、コールドスタートのサーチ条件を選択する。
【0036】
制御部20は、コールドスタートの状態を検出すれば、コールドスタートのサーチ条件を、信号サーチ部41,42に出力する。制御部20は、ホットスタートの状態を検出すれば、ホットスタートのサーチ条件を、信号サーチ部41,42に出力する。なお、具体的なコールドスタート時とホットスタート時の処理は、後述する。
【0037】
タイミング信号発生部30は、信号サーチ部41,42に対して、共通のタイミング信号を供給する。信号サーチ部41,42は、このタイミング信号に準じて、上述の受信信号とレプリカ信号の相関処理を用いたサーチ処理を実行する。このように、タイミング信号を信号サーチ部41,42で共通化することで、信号サーチ部41,42間での相関処理のタイミングのズレを防止できる。これにより、1つの測位信号に対してサーチ周波数範囲を分割してサーチを行う際の誤判定を防止できる。
【0038】
信号サーチ部41,42は、同一ICからなる同じ構成を有する。信号サーチ部41,42は、アンテナANTに接続されている。
【0039】
信号サーチ部41,42は、アンテナANTで受信した受信信号に対して、中間周波数化処理や増幅処理等のサーチ準備処理を行う。信号サーチ部41,42は、サーチ準備処理後の受信信号に対してコード捕捉およびキャリア捕捉を行い、捕捉できた測位信号に対してコード追尾およびキャリア追尾を行う。
【0040】
ここで、コード捕捉は、サーチ対象の測位信号のレプリカ信号と受信信号のコード位相を概略的に合わせ込む処理である。キャリア捕捉は、サーチ対象の測位信号のレプリカ信号と受信信号のキャリア位相を概略的に合わせ込む処理である。コード追尾とは、レプリカ信号と捕捉した測位信号のコード位相を、より高精度に合わせ込み続ける処理である。キャリア追尾とは、レプリカ信号と捕捉した測位信号のキャリア位相を、より高精度に合わせ込み続ける処理である。これらの処理は、受信信号とレプリカ信号との相関処理によって実現され、相関値が高い位相を検出することで、コード捕捉、キャリア捕捉、コード追尾、キャリア追尾が実現される。
【0041】
そして、この捕捉から追尾に至る一連の処理が測位信号のサーチ処理に該当する。したがって、サーチ処理結果は、受信信号とレプリカ信号の相関値、受信信号とレプリカ信号とのコード位相差、当該コード位相差から得られる擬似距離、受信信号とレプリカ信号とのキャリア位相差、当該キャリア位相差から得られるドップラ周波数、さらには、擬似距離やドップラ周波数から得られる位置、速度、受信機時刻等のいずれかである。
【0042】
このような構成において、信号サーチ部41,42は、制御部20から与えられるコールドスタートのサーチ条件またはホットスタートのサーチ条件に基づいて、測位信号のサーチを行う。
【0043】
次に、本実施形態の測位信号サーチ装置10が実行するサーチ処理の具体的な処理について説明する。この処理は、例えば、制御部20に記憶部を設け、以下に示す具体的な処理を実現するためのプログラムを当該記憶部に記憶しておき、制御部20が当該プログラムを読み出して実行することで、実現が可能となる。
図2は本発明の第1の実施形態に係る測位信号サーチ方法のフローチャートである。
図3は本発明の第1の実施形態に係るコールドスタートのサーチ条件を示す図である。
図4は本発明の第1の実施形態に係るホットスタートのサーチ条件を示す図である。なお、本実施形態では、サーチ対象のGPS測位衛星がSatGPS1−SatGPS32の32機で、準天頂衛星がSatQZS193−SatQZS197の5機で、SBAS衛星がSatSBAS120−SatSBAS138の19機の場合を示す。
【0044】
測位信号のサーチの開始時に、コールドスタートであるか、ホットスタートであるかを判断する。コールドスタートであれば(S101:Yes)、制御部20は、コールドスタートのサーチ条件を設定する(S102,S103)。
【0045】
コールドスタートのサーチ条件では、
図3に示すように、信号サーチ部41,42ともに、同じ周波数範囲(共通サーチ周波数範囲)をサーチ周波数範囲Cov1(f41c),Cov1(f42c)に設定する。共通サーチ周波数範囲の中心周波数foは、搬送波の周波数に設定されている。例えば、L1波の場合には、1.575GHzに設定されている。共通サーチ周波数範囲は、中心周波数foとサーチ幅±ΔFoとによって設定されている。このサーチ幅ΔFoは、例えば、測位衛星の速度と測位信号サーチ装置との相対速度の最大値によって決定するとよい。
【0046】
また、コールドスタートのサーチ条件では、
図3に示すように、信号サーチ部41と信号サーチ部42とで、異なる測位衛星(測位信号)のグループを、サーチ対象に設定する。具体的な例として、
図3に示す例では、信号サーチ部41のサーチ対象の測位衛星は、GPS測位衛星SatGPS1−SatGPS16の16機、準天頂衛星SatQZS193,SatQZS194,SatQZS195の3機、SBAS衛星SatSBAS120−SatSBAS127の8機である(グループGr(sat)1)。信号サーチ部42のサーチ対象の測位衛星は、GPS測位衛星SatGPS17−SatGPS32の16機、準天頂衛星がSatQZS196,SatQZS197の2機、SBAS衛星SatSBAS128−SatSBAS138の11機である(グループGr(sat)2)。
【0047】
信号サーチ部41,42は、複数の相関処理チャンネルを備えており、これら複数の相関処理チャンネルがそれぞれ1つずつの測位信号に対して相関処理を行うことで、各測位信号のサーチを実行する(S104)。
【0048】
このような処理を行うことで、捕捉追尾の可能性が高い測位信号が分からない状態であっても、捕捉追尾可能な測位信号を確実に捕捉追尾することができる。また、複数の信号サーチ部41,42で、測位信号(測位衛星)を分担するため、1つの信号サーチ部でサーチを行うよりも、測位信号のサーチを高速に行うことができる。
【0049】
コールドスタートでなければ(S101:No)、ホットスタートと判断し、制御部20は、記憶されている航法メッセージから観測可能な可能性の高い測位衛星(測位信号)、言い換えれば捕捉追尾が可能な測位衛星(測位信号)を選択する(S111)。例えば、
図4に示すように、捕捉追尾可能な測位衛星が、SatGPSA,SatGPSB,SatGPSC,SatGPSD,SatGPSE,SatGPSF,SatQZS193の場合に、これらの測位衛星を選択する。なお、ここで、A,B,C,D,E,Fは、上述の1〜32のいずれかの数字に相当する。
【0050】
制御部20は、ホットスタートのサーチ条件を設定する(S112,S113,S114)。そして、このホットスタートのサーチ条件において、信号サーチ部41,42は、複数の相関処理チャンネルでそれぞれ1つずつの測位信号に対して相関処理を行うことで、各測位信号のサーチを実行する(S104)。
【0051】
ホットスタートのサーチ条件では、
図4に示すように、信号サーチ部41,42ともに、同じ測位信号をサーチ対象に設定する。すなわち、信号サーチ部41,42ともに、観測可能として選択したSatGPSA,SatGPSB,SatGPSC,SatGPSD,SatGPSE,SatGPSF,SatQZS193を、サーチ対象の測位衛星(測位信号)に設定する(S112)。
【0052】
また、ホットスタートのサーチ条件では、
図4に示すように、測位衛星(測位信号)毎にサーチ周波数範囲の中心周波数fsを設定する。この測位衛星毎の中心周波数fsは、航法メッセージの衛星軌道情報から得られる推定される測位衛星のドップラ周波数に基づいて、上述の中心周波数foから周波数シフトさせることによって設定される。
【0053】
また、ホットスタートのサーチ条件では、
図4に示すように、測位衛星(測位信号)毎の中心周波数fsに対して、それぞれ周波数範囲fs±ΔFsを設定する(S113)。この際、周波数範囲fs±ΔFsを決定するサーチ幅ΔFsは、予め設定した特定値にしてもよく、航法メッセージの衛星軌道情報から得られる推定される測位衛星との相対速度またはドップラ周波数に基づいて決定してもよい。このように設定したホットスタート用のサーチ幅ΔFsは、サーチ対象となる測位衛星が分かっているため、コールドスタートで用いる共通サーチ周波数範囲のサーチ幅ΔFoよりも小さく設定することができる。サーチ幅ΔFsを小さくすることで、サーチに係る時間を短くすることができる。
【0054】
そして、ホットスタートのサーチ条件では、
図4に示すように、それぞれの測位信号に対して、中心周波数fsよりも低周波数側の周波数範囲(周波数(fs−ΔFs)から中心周波数fsまでの周波数範囲)を、信号サーチ部41のサーチ周波数範囲Cov1A(f41h)に設定する。また、それぞれの測位信号に対して、中心周波数fsよりも高周波数側の周波数範囲(中心周波数fsから周波数(fs+ΔFs)までの周波数範囲)を、信号サーチ部42のサーチ周波数範囲Cov1A(f42h)に設定する(S114)。これらのサーチ周波数範囲が、本発明の「個別サーチ周波数範囲」に相当する。
【0055】
具体的な例としては、
図4に示すように、測位衛星SatGPSAに対しては、中心周波数fsAを設定する。中心周波数fsAよりも低周波数側の周波数範囲(周波数(fsA−ΔFsA)から中心周波数fsAまでの周波数範囲)を、信号サーチ部41のサーチ周波数範囲Cov1A(f41h)に設定する。中心周波数fsAよりも高周波数側の周波数範囲(中心周波数fsAから周波数(fsA+ΔFsA)までの周波数範囲)を、信号サーチ部42のサーチ周波数範囲Cov1A(f42h)に設定する。
【0056】
測位衛星SatGPSBに対しては、中心周波数fsBを設定する。中心周波数fsBよりも低周波数側の周波数範囲(周波数(fsB−ΔFsB)から中心周波数fsBまでの周波数範囲)を、信号サーチ部41のサーチ周波数範囲Cov1A(f41h)に設定する。中心周波数fsBよりも高周波数側の周波数範囲(中心周波数fsBから周波数(fsB+ΔFsB)までの周波数範囲)を、信号サーチ部42のサーチ周波数範囲Cov1A(f42h)に設定する。
【0057】
信号サーチ部41,42で、それぞれの測位信号に対してサーチ周波数範囲fs±ΔFsを二分割して設定することで、各信号サーチ部41,42のサーチ周波数範囲を狭くすることができる。これにより、さらに高速に測位信号のサーチを行うことができる。
【0058】
このように、本実施形態の構成および処理を用いることで、測位信号を確実且つ高速にサーチすることができる。
【0059】
なお、上述の説明では、ホットスタート時に、測位信号毎に中心周波数fsを異ならせてサーチ周波数範囲を決定する場合を示したが、
図5に示すように、サーチ周波数範囲を設定してもよい。
図5は、本発明の第1の実施形態に係るホットスタートのサーチ条件の別の態様を示す図である。
【0060】
図5に示す方法では、観測可能と判断された全ての測位信号に対して、同じサーチ周波数範囲を設定する。具体的には、中心周波数を、共通サーチ周波数範囲の中心周波数foと同じに設定する。また、サーチ幅を±ΔFs’とする。サーチ幅±ΔFs’は、サーチ幅±ΔFoよりも小さく設定されている。さらに、サーチ幅±ΔFs’はサーチ幅±ΔFs以上に設定するとよい。
【0061】
そして、
図5に示すように、全ての測位信号に対して、中心周波数foよりも低周波数側の周波数範囲(周波数(fo−ΔFs’)から中心周波数foまでの周波数範囲)を、信号サーチ部41のサーチ周波数範囲Cov1Gr(f41h)に設定する。また、全ての測位信号に対して、中心周波数foよりも高周波数側の周波数範囲(中心周波数foから周波数(fo+ΔFs’)までの周波数範囲)を、信号サーチ部42のサーチ周波数範囲Cov1Gr(f42h)に設定する。
【0062】
このようなサーチ方法を用いても、従来のサーチ方法よりも高速に、測位信号のサーチを行うことができる。
【0063】
なお、制御部20は、信号サーチ部41,42が測位信号を追尾すると、次のような制御を行うようにしてもよい。
図6は、捕捉追尾処理の事後処理を示すフローチャートである。
【0064】
制御部20は、信号サーチ部41,42から出力されるサーチ結果に基づいて、各信号サーチ部41,42が測位信号を追尾できているかどうかを検出する。追尾の検出は、例えば、信号サーチ部41,42からの擬似距離やドップラ速度の出力状況によって判断できる。また、取得した擬似距離やドップラ速度から推定算出した位置、速度、自装置の時刻の誤差分散等によって判断することもできる。なお、このように、位置、速度、自装置の時刻を推定する機能を制御部20に持たせることで、本実施形態の測位信号サーチ装置10は、測位装置としても機能する。
【0065】
制御部20は、信号サーチ部41,42が測位信号を追尾していることを検出し、追尾中の測位衛星(測位信号)の数が所定数以上(例えば、4個以上)であることを検出すると、各信号サーチ部41,42に対して、現在追尾中の測位信号の追尾のみを継続するように制御する(S411)。
【0066】
ここで、信号サーチ部41,42のいずれかにおいて追尾中の測位信号がなければ(S412:Yes)、追尾中の測位信号が無い信号サーチ部を、新たな測位信号サーチに利用するように制御する(S413)。なお、信号サーチ部41,42の両方が測位信号の追尾中であれば(S412:No)、新たな測位信号サーチには利用しない。
【0067】
新たな測位信号サーチでは、制御部20は、追尾中の測位衛星(測位信号)を検出して、追尾中でない測位衛星(測位信号)を抽出する。制御部20は、抽出した測位衛星(測位信号)をサーチするように、追尾中の測位信号が無い信号サーチ部を制御する。この際、制御部20は、サーチ周波数として、共通サーチ周波数範囲fo±ΔFoを設定する。
【0068】
このような処理を行うことで、サーチ処理によって追尾できる測位信号の追尾処理と並行して、新たな測位信号のサーチ処理を実行することができる。
【0069】
次に、第2の実施形態に係る測位信号サーチ装置について、図を参照して説明する。
図7は、本発明の第2の実施形態に係る測位信号サーチ装置の構成を示すブロック図である。
【0070】
本実施形態の測位信号サーチ装置および測位信号サーチ方法は、第1の実施形態に示した信号サーチ部の個数が2個から4個に替わったものであり、これに伴って、コールドスタートのサーチ条件およびホットスタートのサーチ条件が替わったものである。他の構成および処理については、第1の実施形態の測位信号サーチ装置および測位信号サーチ方法と同じである。
【0071】
測位信号サーチ装置10Aは、制御部20A、タイミング信号発生部30、信号サーチ部41,42,43,44を備える。
【0072】
制御部20Aは、上述の実施形態と同様に、コールドスタートとホットスタートとを判別する。制御部20Aは、コールドスタートの場合には、コールドスタートのサーチ条件を、信号サーチ部41,42,43,44に指定する。制御部20Aは、ホットスタートの場合には、ホットスタートのサーチ条件を、信号サーチ部41,42,43,44に指定する。
【0073】
タイミング信号発生部30は、信号サーチ部41,42,43,44に共通のタイミング信号を出力する。
【0074】
信号サーチ部41,42,43,44は、共通のタイミング信号に同期して受信信号とレプリカ信号の相関処理を行うことで、サーチ処理を行う。この際、信号サーチ部41,42,43,44は、制御部20Aから指定されたサーチ条件で、サーチ処理を行う。
【0075】
次に、第2の実施形態に係る測位信号サーチ装置10Aが実行するサーチ処理の具体的な処理について説明する。
図8は、本発明の第2の実施形態に係る測位信号サーチ方法のフローチャートである。
図9は、本発明の第2の実施形態に係るコールドスタートのサーチ条件を示す図である。
図10は、本発明の第2の実施形態に係るホットスタートのサーチ条件を示す図である。なお、本実施形態でも、サーチ対象のGPS測位衛星がSatGPS1−SatGPS32の32機で、準天頂衛星がSatQZS193−SatQZS197の5機で、SBAS衛星がSatSBAS120−SatSBAS138の19機の場合を示す。
【0076】
制御部20Aは、測位信号のサーチの開始時に、コールドスタートであるか、ホットスタートであるかを判断する。コールドスタートであれば(S201:Yes)、制御部20Aは、コールドスタートのサーチ条件を設定する(S202,S203)。
【0077】
コールドスタートのサーチ条件では、
図9に示すように、中心周波数foとサーチ幅±ΔFoとから共通サーチ周波数範囲fo±ΔFoを設定する。中心周波数foとサーチ幅±ΔFoは、第1の実施形態と同様の方法で設定する。そして、中心周波数foよりも低周波数側の周波数範囲、すなわち、周波数fo−ΔFoから中心周波数foまでの周波数範囲を第1部分共通サーチ周波数範囲に設定する。また、中心周波数foよりも高周波数側の周波数範囲、すなわち、中心周波数foから周波数fo+ΔFoまでの周波数範囲を第2部分共通サーチ周波数範囲に設定する。
【0078】
制御部20Aは、第1共通サーチ周波数範囲を、信号サーチ部41,42のサーチ周波数範囲Cov2(f41c),Cov2(f42c)に設定する。制御部20Aは、第2共通サーチ周波数範囲を、信号サーチ部43,44のサーチ周波数範囲Cov2(f43c),Cov2(f44c)に設定する。
【0079】
また、コールドスタートのサーチ条件では、
図9に示すように、信号サーチ部41,43と信号サーチ部42,44とで、異なる測位衛星(測位信号)のグループを、サーチ対象に設定する。具体的な例として、
図9に示す例では、信号サーチ部41,43のサーチ対象の測位衛星は、GPS測位衛星SatGPS1−SatGPS16の16機、準天頂衛星SatQZS193−SatQZS195の3機、SBAS衛星SatSBAS120−SatSBAS127の8機である(グループGr(sat)1)。信号サーチ部42,44のサーチ対象の測位衛星は、GPS測位衛星SatGPS17−SatGPS32の16機、準天頂衛星がSatQZS196,SatQZS197の2機、SBAS衛星SatSBAS128−SatSBAS138の11機である(グループGr(sat)2)。
【0080】
信号サーチ部41,42,43,44は、複数の相関処理チャンネルを備えており、これら複数の相関処理チャンネルがそれぞれ1つずつの測位信号に対して相関処理を行うことで、各測位信号のサーチを実行する(S204)。
【0081】
このような処理を行うことで、捕捉追尾の可能性が高い測位信号が分からない状態であっても、捕捉追尾可能な測位信号を確実に捕捉追尾することができる。また、複数の信号サーチ部41,43の組、信号サーチ部42,44の組で、測位信号(測位衛星)を分担するため、1つの信号サーチ部でサーチを行うよりも、測位信号のサーチを高速に行うことができる。さらに、信号サーチ部41,43で共通サーチ周波数範囲fo±ΔFoが二分割され、信号サーチ部42,44で共通サーチ周波数範囲fo±ΔFoが二分割されることによって、各信号サーチ部41−44のサーチ周波数範囲が狭くなり、より高速にサーチ処理を実行することができる。
【0082】
コールドスタートでなければ(S201:No)、ホットスタートと判断し、制御部20Aは、記憶されている航法メッセージから観測可能な可能性の高い測位衛星(測位信号)、言い換えれば捕捉追尾が可能な測位衛星(測位信号)を選択する(S211)。例えば、
図10に示すように、捕捉追尾可能な測位衛星が、SatGPSA,SatGPSB,SatGPSC,SatGPSD,SatGPSE,SatGPSF,SatQZS193の場合に、これらの測位衛星を選択する。なお、ここで、A,B,C,D,E,Fは、上述の1〜32のいずれかの数字に相当する。
【0083】
制御部20Aは、ホットスタートのサーチ条件を設定する(S212,S213,S214)。そして、このホットスタートのサーチ条件において、信号サーチ部41,42,43,44は、複数の相関処理チャンネルでそれぞれ1つずつの測位信号に対して相関処理を行うことで、各測位信号のサーチを実行する(S204)。
【0084】
ホットスタートのサーチ条件では、
図10に示すように、信号サーチ部41−44で、同じ測位信号をサーチ対象に設定する(S212)。すなわち、信号サーチ部41−44で、観測可能として選択したSatGPSA,SatGPSB,SatGPSC,SatGPSD,SatGPSE,SatGPSF,SatQZS193を、サーチ対象の測位衛星(測位信号)に設定する。
【0085】
また、ホットスタートのサーチ条件では、
図10に示すように、測位衛星(測位信号)毎にサーチ周波数範囲の中心周波数fsとサーチ幅±ΔFsを設定する(S213)。これら、測位信号毎の中心周波数fsおよびサーチ幅±ΔFsの設定は、第1の実施形態と同じである。
【0086】
さらに、ホットスタートのサーチ条件では、それぞれの測位信号のサーチ周波数範囲を、信号サーチ部の個数で分割して設定する(S214)。本実施形態の場合、
図10に示すように、信号サーチ部41,42,43,44の個数は4個であるので、サーチ周波数範囲を四分割する。具体的には、
図10に示すように、それぞれの測位信号に対して、中心周波数fsよりも低周波数側の周波数範囲(周波数(fs−ΔFs)から中心周波数fsまでの周波数範囲)を、信号サーチ部41,42のサーチ周波数範囲Cov2A(f41h),Cov2A(f42h)に分配して設定する。より詳細には、周波数(fs−ΔFs)から周波数(fs−ΔFs/2)までの周波数範囲を、信号サーチ部41のサーチ周波数範囲Cov2A(f41h)に設定する。周波数(fs−ΔFs/2)から中心周波数fsまでの周波数範囲を、信号サーチ部42のサーチ周波数範囲Cov2A(f42h)に設定する。
【0087】
また、それぞれの測位信号に対して、中心周波数fsよりも高周波数側の周波数範囲(中心周波数fsから周波数(fs+ΔFs)までの周波数範囲)を、信号サーチ部43,44のサーチ周波数範囲Cov2A(f43h),Cov2A(f44h)に分配して設定する。より詳細には、中心周波数fsから周波数(fs+ΔFs/2)までの周波数範囲を、信号サーチ部43のサーチ周波数範囲Cov2A(f43h)に設定する。周波数(fs+ΔFs/2)から周波数(fs+ΔFs)までの周波数範囲を、信号サーチ部44のサーチ周波数範囲Cov2A(f44h)に設定する。
【0088】
このように、信号サーチ部41−44で、それぞれの測位信号に対してサーチ周波数範囲fs±ΔFsを四分割して設定することで、各信号サーチ部41−44のサーチ周波数範囲を狭くすることができる。これにより、さらに高速に測位信号のサーチを行うことができる。
【0089】
このように、本実施形態の構成および処理を用いることで、測位信号を確実且つ高速にサーチすることができる。
【0090】
なお、上述のコールドスタートのサーチ条件では、測位衛星(測位信号)を2つのグループに分ける例を示したが、信号サーチ部の個数に応じたグループに分けてもよい。例えば、上述の例では、信号サーチ部は4つなので、測位衛星(測位信号)を4つのグループに分けて、グループ毎に信号サーチ部41−44を割り当ててもよい。
【0091】
また、上述の第1、第2の実施形態では、信号サーチ部が2個、4個の場合を示したが、6個以上の偶数の場合も同様の構成および処理を適用することができ、上述の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0092】
次に、第3の実施形態に係る測位信号サーチ装置について、図を参照して説明する。
図11は、本発明の第3の実施形態に係る測位信号サーチ装置の構成を示すブロック図である。
【0093】
本実施形態の測位信号サーチ装置および測位信号サーチ方法は、第1の実施形態に示した信号サーチ部の個数が2個から3個に替わったものであり、これに伴って、コールドスタートのサーチ条件およびホットスタートのサーチ条件が替わったものである。他の構成および処理については、第1の実施形態の測位信号サーチ装置および測位信号サーチ方法と同じである。
【0094】
測位信号サーチ装置10Bは、制御部20B、タイミング信号発生部30、信号サーチ部41,42,43を備える。
【0095】
制御部20Bは、上述の実施形態と同様に、コールドスタートとホットスタートとを判別する。制御部20Bは、コールドスタートの場合には、コールドスタートのサーチ条件を、信号サーチ部41,42,43に指定する。制御部20Bは、ホットスタートの場合には、ホットスタートのサーチ条件を、信号サーチ部41,42,43に指定する。
【0096】
タイミング信号発生部30は、信号サーチ部41,42,43に共通のタイミング信号を出力する。
【0097】
信号サーチ部41,42,43は、共通のタイミング信号に同期して受信信号とレプリカ信号の相関処理を行うことで、サーチ処理を行う。この際、信号サーチ部41,42,43は、制御部20Bから指定されたサーチ条件で、測位信号のサーチ処理を行う。
【0098】
次に、第3の実施形態に係る測位信号サーチ装置10Bが実行するサーチ処理の具体的な処理について説明する。
図12は、本発明の第3の実施形態に係る測位信号サーチ方法のフローチャートである。
図13は、本発明の第3の実施形態に係るコールドスタートのサーチ条件を示す図である。
図14は、本発明の第3の実施形態に係るホットスタートのサーチ条件を示す図である。なお、本実施形態でも、サーチ対象のGPS測位衛星がSatGPS1−SatGPS32の32機で、準天頂衛星がSatQZS193−SatQZS197の5機で、SBAS衛星がSatSBAS120−SatSBAS138の19機の場合を示す。
【0099】
制御部20Bは、測位信号のサーチの開始時に、コールドスタートであるか、ホットスタートであるかを判断する。コールドスタートであれば(S301:Yes)、制御部20Bは、コールドスタートのサーチ条件を設定する(S302,S303)。
【0100】
コールドスタートのサーチ条件では、
図13に示すように、中心周波数foとサーチ幅±ΔFoとから共通サーチ周波数範囲fo±ΔFoを設定する。中心周波数foとサーチ幅±ΔFoは、第1の実施形態と同様の方法で設定する。
【0101】
制御部20Bは、信号サーチ部41,42,43のサーチ周波数範囲Cov2(f41c),Cov2(f42c),Cov2(f43c)に共通サーチ周波数範囲fo±ΔFoを設定する。すなわち、信号サーチ部41,42,43は、同じ周波数範囲で測位信号のサーチを行う。
【0102】
また、コールドスタートのサーチ条件では、
図13に示すように、信号サーチ部41,42,43で、異なる測位衛星(測位信号)のグループを、サーチ対象に設定する。具体的な例として、
図13に示す例では、信号サーチ部41のサーチ対象の測位衛星は、GPS測位衛星SatGPS1−SatGPS11の11機、準天頂衛星SatQZS193,SatQZS194の2機、SBAS衛星SatSBAS120−SatSBAS126の7機である(グループGr(sat)1’)。信号サーチ部42のサーチ対象の測位衛星は、GPS測位衛星SatGPS12−SatGPS23の11機、準天頂衛星がSatQZS195,SatQZS196の2機、SBAS衛星SatSBAS127−SatSBAS132の7機である(グループGr(sat)2’)。信号サーチ部43のサーチ対象の測位衛星は、GPS測位衛星SatGPS24−SatGPS32の9機、準天頂衛星がSatQZS197の1機、SBAS衛星SatSBAS133−SatSBAS136の4機である(グループGr(sat)3’)。
【0103】
信号サーチ部41,42,43は、複数の相関処理チャンネルを備えており、これら複数の相関処理チャンネルがそれぞれ1つずつの測位信号に対して相関処理を行うことで、各測位信号のサーチを実行する(S304)。
【0104】
このような処理を行うことで、捕捉追尾の可能性が高い測位信号が分からない状態であっても、捕捉追尾可能な測位信号を確実に捕捉追尾することができる。また、複数の信号サーチ部41,42,43で、測位信号(測位衛星)を分担するため、1つの信号サーチ部でサーチを行うよりも、測位信号のサーチを高速に行うことができる。
【0105】
コールドスタートでなければ(S301:No)、ホットスタートと判断し、制御部20Bは、記憶されている航法メッセージから観測可能な可能性の高い測位衛星(測位信号)、言い換えれば捕捉追尾が可能な測位衛星(測位信号)を検出する(S311)。例えば、
図14に示すように、捕捉追尾可能な測位衛星が、SatGPSA,SatGPSB,SatGPSC,SatGPSD,SatGPSE,SatGPSF,SatQZS193の場合に、これらの測位衛星を選択する。なお、ここで、A,B,C,D,E,Fは、上述の1〜32のいずれかの数字に相当する。
【0106】
制御部20Bは、捕捉追尾可能として検出した測位衛星(測位信号)については(S312:Yes)、信号サーチ部41,42で、同じ測位信号をサーチ対象に設定する(S313)。具体的に、
図14の例では、信号サーチ部41,42で、同じ測位信号をサーチ対象に設定する。すなわち、信号サーチ部41,42で、観測可能として選択したSatGPSA,SatGPSB,SatGPSC,SatGPSD,SatGPSE,SatGPSF,SatQZS193を、サーチ対象の測位衛星(測位信号)に設定する。
【0107】
制御部20Bは、測位衛星(測位信号)毎にサーチ周波数範囲の中心周波数fsとサーチ幅±ΔFsを設定する(S314)。これら、測位信号毎の中心周波数fsおよびサーチ幅±ΔFsの設定は、第1,第2の実施形態と同じである。
【0108】
制御部20Bは、それぞれの測位信号のサーチ周波数範囲を、信号サーチ部の個数で分割して設定する(S315)。この分割設定は、第1の実施形態と同じである。具体的には、
図14に示すように、それぞれの測位信号に対して、中心周波数fsよりも低周波数側の周波数範囲(周波数(fs−ΔFs)から中心周波数fsまでの周波数範囲)を、信号サーチ部41のサーチ周波数範囲Cov3A(f41h)に設定する。
【0109】
また、それぞれの測位信号に対して、中心周波数fsよりも高周波数側の周波数範囲(中心周波数fsから周波数(fs+ΔFs)までの周波数範囲)を、信号サーチ部42のサーチ周波数範囲Cov3A(f42h)に設定する。
【0110】
制御部20Bは、捕捉追尾可能として検出しなかった測位衛星(測位信号)については(S312:No)、中心周波数fo、サーチ幅ΔFoとして、すなわち、コールドスタートと同じ周波数条件を設定する(S321)。具体的には、捕捉追尾可能として検出された測位衛星以外の測位衛星を選択し、このグループGr(sat)10HAの測位衛星(測位信号)を信号サーチ部43に対するサーチ対象の測位衛星(測位信号)に設定する。そして、
図14に示すように、上述の共通サーチ周波数範囲fo±ΔFoを、信号サーチ部43のサーチ周波数範囲Cov3GrA(f43)に設定する。
【0111】
そして、このようなサーチ条件において、信号サーチ部41,42,43は、複数の相関処理チャンネルでそれぞれ1つずつの測位信号に対して相関処理を行うことで、各測位信号のサーチを実行する(S304)。
【0112】
このように、捕捉追尾可能と判断された測位信号に対しては、信号サーチ部41,42でサーチ周波数範囲fs±ΔFsを二分割して設定することで、各信号サーチ部41,42のサーチ周波数範囲を狭くすることができる。これにより、さらに高速に測位信号のサーチを行うことができる。
【0113】
さらに、捕捉追尾可能と判断されなかった測位信号に対しては、信号サーチ部43によって共通サーチ周波数範囲fo±ΔFoで測位信号がサーチ処理される。これにより、捕捉追尾可能と判断された測位信号のサーチ処理と、捕捉追尾可能と判断されなかった測位信号のサーチ処理とを並行して行うことができる。
【0114】
また、上述の第3の実施形態では、信号サーチ部が3個の場合を示したが、5個以上の奇数の場合も、第2の実施形態の構成や処理と組み合わせることで、同様の構成および処理を実現することができ、上述の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0115】
なお、上述の各実施形態において、制御部は、複数の信号サーチ部の状態を検出する。信号サーチ部の状態とは、例えば信号サーチ部が正常に動作しているか、故障しているか等である。故障をしている場合にはチェックサムエラーが発生するので、チェックサムを逐次確認することにより、故障検出を行うことができる。
【0116】
この場合、制御部は、故障として検出した信号サーチ部ついてはサーチ処理に使用しないようにする。そして、制御部は、残りの正常動作している信号サーチ部で、上述のサーチ対象の割り当てを行う。これにより、故障した信号サーチ部を用いることなく、確実且つ精度良くサーチ処理を行うことができる。