特許第6118536号(P6118536)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6118536ドレン中和器およびそのドレン中和器を備えた燃焼装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6118536
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】ドレン中和器およびそのドレン中和器を備えた燃焼装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 9/16 20060101AFI20170410BHJP
   F24H 9/00 20060101ALI20170410BHJP
   F23L 17/14 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   F24H9/16 E
   F24H9/00 B
   F23L17/14 R
   F23L17/14 P
   F23L17/14 L
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-242859(P2012-242859)
(22)【出願日】2012年11月2日
(65)【公開番号】特開2014-92315(P2014-92315A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年10月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000129231
【氏名又は名称】株式会社ガスター
(74)【代理人】
【識別番号】100093894
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 清
(72)【発明者】
【氏名】飯泉 和之
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−170011(JP,A)
【文献】 実開昭58−142643(JP,U)
【文献】 特開2006−112688(JP,A)
【文献】 特開2005−155975(JP,A)
【文献】 特開2008−170097(JP,A)
【文献】 特開2009−101309(JP,A)
【文献】 特開2009−599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 9/16
F24H 9/00
F23L 17/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナの排気潜熱を回収する潜熱回収用熱交換器で発生するドレンを導入するドレン導入部と、該ドレン導入部から導入されるドレンが通過するドレン通過室と、該ドレン通過室を通過したドレンを外部に導出するドレン導出部とを有し、前記ドレン通過室は、前記ドレン導入部に連通して設けられて前記潜熱回収用熱交換器側から前記ドレンと共に流れてくる排気をドレンによって水封する排気の水封室と、該水封室に連通して設けられて該水封室から流れてくる前記ドレンを中和するドレン中和室とを有し、該ドレン中和室内には複数の固形の中和剤が互いに隙間を介して充填され、該ドレン中和室の底面側には該底面側から起立した通路壁が設けられて、前記ドレンが前記ドレン中和室の底面側領域を前記通路壁の伸長方向に沿って通過することにより前記ドレン中和室の底面側を蛇行しながら通過するドレン通過通路が形成され、該ドレン通過通路の底面は該ドレン通過通路を通ってドレンが流れる上流側よりも下流側が低位置になるように傾斜が形成されており、前記ドレン通過室に導入されたドレンが前記水封室を通った後に前記ドレン通過通路を通って前記ドレン中和室の底面側を蛇行しながら通過するときに前記中和剤によって中和されて前記ドレン導出部から外部に導出される構成と成し、前記水封室と前記ドレン中和室とが前記ドレン通過室の底面から上方に起立形成された隔壁によって水平方向に隣り合わせに間取り配置されており、前記ドレン通過通路の前記ドレンが流れる方向の通路幅は、前記ドレン通過通路に沿って前記ドレンが流れる上流側よりも下流側の方が連続的または段階的に幅広になるように形成されていることを特徴とするドレン中和器。
【請求項2】
ドレン中和室の底面側の領域には通路壁の長手方向を横切る方向に前記ドレン中和室の底面側から起立させた障害壁が設けられ、該障害壁と前記通路壁の間をドレンが蛇行しながら通過するように形成されていることを特徴とする請求項1記載のドレン中和器。
【請求項3】
浴室壁に形成された壁穴に設置されたケース内に、バーナと、該バーナの排気潜熱を回収する潜熱回収用熱交換器と、請求項1または請求項2記載のドレン中和器とが設けられていることを特徴とする燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潜熱回収用熱交換器で発生するドレンを中和するドレン中和器およびそのドレン中和器を備えた燃焼装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8には、浴室に設置される風呂装置の一従来例が示されている。この従来例の風呂装置は、風呂設置スペース52に浴槽26とバランス風呂釜45を並設し、浴室壁10の壁穴16にバランス風呂釜45の給排気筒50を設置したものである。しかしながら、このように、比較的狭い風呂設置スペース52に、バランス風呂釜45と浴槽26を並設すると、浴槽26は必然的に小型なものにしなければならないので、窮屈な姿勢で浴槽26に入浴しなければならず、ゆったりした気分で入浴を楽しむことができないものであった。
【0003】
そこで、バランス風呂釜45の買い換え時に、利用者は、バランス風呂釜45の代わりに、例えば、燃焼装置として自動湯張り機能を備えた給湯器を購入し、図7に示されるように、その給湯器17を、今まで給排気筒50を設置していた壁穴16内に嵌め込み設置し、バランス風呂釜45のスペース分だけ大きい浴槽26を風呂設置スペース52に設置して、住環境のレベルアップを図ることが行われている。なお、図7中の符号18は、浴槽26のエプロンに取り付けられた混合水栓を示す。
【0004】
このような給湯器の構成としては、様々なものが提案され、実用化も行われており、その一例が、図6に、模式的に示されている。同図において、ケース(器具ケース)40内に設けられた燃焼室20内にはバーナ1が配置され、ケース40内にはバーナ1の燃焼の給排気を行なう燃焼ファン5が設けられている。この給湯器17は、図6の矢印に示されるように、燃焼ファン5の回転によって外部より吸気する空気(燃焼用空気)を送風室25を介してバーナ1に送り、この空気と、ガス管(図示せず)を通ってバーナ1に供給されるガスとによってバーナ1の燃焼を行い、かつ、バーナ1の燃焼により生じた燃焼ガスを、燃焼ファン5の回転によって、燃焼室20から排気口8側に送って排気する。
【0005】
上記バーナ1の上側には、バーナ1の燃焼ガス中の顕熱を回収するメインの熱交換器(一次熱交換器)4と、このメインの熱交換器4よりも前記燃焼ガスの流れの下流側に設けられて、燃焼ガスの顕熱および潜熱を回収する潜熱回収用熱交換器(二次熱交換器)6が互いに間隔を介して横隣に並設配置されている。
【0006】
なお、図の簡略化のために、同図には図示されていないが、潜熱回収用熱交換器6の入口側には、水供給源から潜熱回収用熱交換器6に水を導く給水管が接続されており、潜熱回収用熱交換器6の出口側とメインの熱交換器4の入り口側とは、接続管を介して接続されている。また、メインの熱交換器4の出口側には給湯管が接続されている。通常、給水管には、給水管から供給されて潜熱回収用熱交換器6へ流れ込む水の入水温度を検出する入水サーミスタと、潜熱回収用熱交換器6へ流れ込む水の流量を検出する水量センサとが設けられており、また、前記給湯管には流れ出る湯の温度を検出することができる出湯サーミスタが設けられている。
【0007】
前記給湯管に湯張り用の注湯管を接続して浴槽26に湯張りを行えるようにすると、浴槽26への自動湯張りが可能な給湯器17を形成でき、また、この給湯器17に、浴槽湯水の追い焚き機能を設ければ、浴槽の追い焚きも可能な複合給湯器を形成できる。なお、図6において、符号30は浴室を示しており、前記自動湯張り構成や、浴槽湯水の追い焚き構成として、様々なものが提案されているが、周知であり、ここでは、その詳細説明は省略する。
【0008】
給湯器17において、バーナ1の燃焼制御は、図示されていない燃焼制御手段によって予め定められたシーケンスプログラムにしたがって行われるものであり、バーナ1の燃焼により生じる高温の燃焼ガスは、バーナ1の上側からメインの熱交換器4の配設領域を通り、この例では、潜熱回収用熱交換器6の配置領域側に水平方向側から入り込む。そして、潜熱回収用熱交換器6の配設領域を通った燃焼ガスは、排気口8側から排気される。
【0009】
そして、燃焼ガスがメインの熱交換器4を通過する間に、燃焼ガスとメインの熱交換器4に供給される水との間で熱交換が行われ、燃焼ガスの顕熱が回収される。また、メインの熱交換器4を通過した燃焼ガスが潜熱回収用熱交換器6を通過する間に、燃焼ガスと潜熱回収用熱交換器6に供給される水との間で熱交換することで、燃焼ガスの顕熱および潜熱が回収される。
【0010】
潜熱回収用熱交換器6による燃焼ガスの潜熱回収は、水蒸気を含んだ燃焼ガスを飽和温度以下の低温伝熱面に接触させて燃焼ガス中の水蒸気を凝縮させることにより行われる。すなわち、水蒸気が凝縮する際に発生する凝縮潜熱を回収するものであり、通常は、燃焼ガスとして給湯器等の燃焼系の外に排出されてしまう燃焼ガスの水蒸気の持つエンタルピーを回収するものである。
【0011】
このように、潜熱回収用熱交換器6を備えた給湯器17においては、バーナ1の燃焼による燃焼ガスが潜熱回収用熱交換器6を通るときに、潜熱回収用熱交換器6内の水管を通る水が、燃焼ガス中の水蒸気が保有している潜熱を奪って(潜熱を回収して)温度を高め、さらにメインの熱交換器4を通るときに、バーナ1の燃焼火力でもって加熱されて設定温度の湯が作り出されるので、バーナ1によって効率の良い加熱ができる。つまり、潜熱回収用熱交換器6を設けることにより、例えば給湯器17においては、高位発熱量(総発熱量)ベースで熱効率が例えば95%というように約90%以上に達し、潜熱回収用熱交換器6が設けられていない通常の給湯器に比べ、高い熱効率が達成される。
【0012】
なお、潜熱回収用熱交換器6を備えた給湯器17等の燃焼装置においては、潜熱回収用熱交換器6で発生する酸性のドレン(ドレン凝縮水)を回収して中和し、排出することが必要であり、この例では、潜熱回収用熱交換器6の下側にドレンを回収するドレン回収手段(この図ではドレン受け皿)43を設けてドレンの回収が行えるようにしているが、燃焼装置を浴室壁10の壁穴16に配置するためには、燃焼装置の高さを低くしなければならない。そのため、例えば10年といった燃焼装置の使用期間においてドレンの中和を適切に行えるようなドレン中和器をケース40内に設けることは難しく、ドレン中和器をケース40の外に設けて、接続具を介してケース40に接続し、ドレン回収手段43により回収したドレンをケース40の外側のドレン中和器まで導いて中和する構成が提案されている(例えば、特許文献1、参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008―275296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、ドレンは、燃焼の排気ガスの熱を潜熱回収用熱交換器6で奪った結果、発生するがゆえに、潜熱回収用熱交換器6が設けられている領域(排気口8に近い排気トップ側)で発生する。そのため、ドレンを自然落下によりドレン中和器に最短距離で導入するためには、ドレン中和器を潜熱回収用熱交換器6の下部側(例えば図6のCで示す位置)に配設することが望ましく、この位置は燃焼装置の先端下部である。
【0015】
しかしながら、従来用いられてきたドレン中和器は、その容器とドレンの中和剤を合わせた重さが約2Kgあって重い上に、ドレンを中和剤の充填領域に溜めて中和して導出する構成であり、ドレン中和器内に常に1Kg程度のドレンを溜めておくことになるために、合計3Kgもの重さになっていたため、この重いドレン中和器を燃焼装置の先端下部に設けると、燃焼装置のケース40に、テコの原理に基づく大きな応力(矢印F、参照)がかかる。そのため、ケース40の強度を格段に強くする必要が生じるために、コストアップを招くことになる。
【0016】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、燃焼装置の先端下部に設けても燃焼装置のケースの強度を格段に強くする必要がなく、そのための燃焼装置のコストアップを抑制できるドレン中和器およびその中和器を用いた燃焼装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は上記目的を達成するために、次の構成をもって課題を解決する手段としている。すなわち、第1の発明のドレン中和器は、バーナの排気潜熱を回収する潜熱回収用熱交換器で発生するドレンを導入するドレン導入部と、該ドレン導入部から導入されるドレンが通過するドレン通過室と、該ドレン通過室を通過したドレンを外部に導出するドレン導出部とを有し、前記ドレン通過室は、前記ドレン導入部に連通して設けられて前記潜熱回収用熱交換器側から前記ドレンと共に流れてくる排気をドレンによって水封する排気の水封室と、該水封室に連通して設けられて該水封室から流れてくる前記ドレンを中和するドレン中和室とを有し、該ドレン中和室内には複数の固形の中和剤が互いに隙間を介して充填され、該ドレン中和室の底面側には該底面側から起立した通路壁が設けられて、前記ドレンが前記ドレン中和室の底面側領域を前記通路壁の伸長方向に沿って通過することにより前記ドレン中和室の底面側を蛇行しながら通過するドレン通過通路が形成され、該ドレン通過通路の底面は該ドレン通過通路を通ってドレンが流れる上流側よりも下流側が低位置になるように傾斜が形成されており、前記ドレン通過室に導入されたドレンが前記水封室を通った後に前記ドレン通過通路を通って前記ドレン中和室の底面側を蛇行しながら通過するときに前記中和剤によって中和されて前記ドレン導出部から外部に導出される構成と成し、前記水封室と前記ドレン中和室とが前記ドレン通過室の底面から上方に起立形成された隔壁によって水平方向に隣り合わせに間取り配置されており、前記ドレン通過通路の前記ドレンが流れる方向の通路幅は、前記ドレン通過通路に沿って前記ドレンが流れる上流側よりも下流側の方が連続的または段階的に幅広になるように形成されている構成をもって課題を解決する手段としている。
【0019】
さらに、第の発明のドレン中和器は、第1の発明の構成に加え、前記ドレン中和室の底面側の領域には通路壁の長手方向を横切る方向に前記ドレン中和室の底面側から起立させた障害壁が設けられ、該障害壁と前記通路壁の間をドレンが蛇行しながら通過するように形成されていることを特徴とする。
【0020】
さらに、第の発明の燃焼装置は、浴室壁に形成された壁穴に設置されたケース内に、バーナと、該バーナの排気潜熱を回収する潜熱回収用熱交換器と、第1またはのドレン中和器とが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明のドレン中和器によれば、バーナの排気潜熱を回収する潜熱回収用熱交換器で発生するドレンをドレン導入部からドレン通過室に導入して通過させ、ドレン導出部を介して外部に導出するが、ドレン通過室は、ドレン導入部に連通して設けられて前記潜熱回収用熱交換器側から前記ドレンと共に流れてくる排気をドレンによって水封する排気の水封室を有することから、排気を水封することができ、排気がドレン中和器を介して外部に導出されることを防ぐことができる。
【0022】
また、本発明のドレン中和器において、前記ドレン通過室は前記水封室に連通したドレン中和室を有し、該ドレン中和室内にはドレンを中和する複数の固形の中和剤が互いに隙間を介して充填されているが、ドレン中和室は、従来用いられてきたドレン中和器のようにドレンを溜めて中和する構成ではなく、ドレンがドレン中和室に形成されたドレン通過通路を通り、前記中和剤の隙間を通ってドレン中和室を通過するときに中和される構成としているので、ドレンを溜めて中和する構成と異なり、貯留されるドレンによってドレン中和器の重さが重くなることを防ぐことができる。
【0023】
なお、本発明のドレン中和器においては、ドレン中和室の底面側には該底面側から起立した通路壁が設けられて、前記ドレンが前記ドレン中和室の底面側領域を前記通路壁の伸長方向に沿って通過することにより前記ドレン中和室の底面側を蛇行しながら通過するドレン通過通路が形成され、該ドレン通過通路の底面は該ドレン通過通路を通ってドレンが流れる上流側よりも下流側が低位置になるように傾斜が形成されており、前記ドレン通過室に導入されたドレンが前記水封室を通った後に前記ドレン通過通路を通って前記ドレン中和室の底面側を蛇行しながら通過する。
【0024】
つまり、従来用いられてきたドレン中和器のようにドレンが高さ方向に通過する構成においては、ドレンに重力がかかるためにドレンが速く流れるので、ドレンを中和剤で中和するためには、その分だけ高さが必要となるが、本発明においては、前記のように、ドレンはドレン通過通路を通ってドレン中和室の底面側を蛇行しながら(例えばジグザグに)ゆっくり流れていくため、蛇行するように長く形成されたドレンの通過経路を略水平方向に通ることで、ドレン中和器の高さが低くてもドレンを中和剤によって充分に(適切に)に中和することができる。
【0025】
そのため、たとえ燃焼装置の高さが低くても、ドレン中和器を燃焼装置のケース内に設けることができるし、ドレン中和器の重さも従来用いられてきたドレン中和器よりも軽くできる。また、ドレンを溜めながら、そのドレンにより排気の水封を行う構成とする従来のドレン中和器においては、高さを高くしたドレン中和器の上側から下側まで伸設された仕切りが必要であったが、本発明においては、ドレン中和室内には仕切りが不要であるので、仕切りの配設分の重さも軽くすることができ、さらに、仕切りの配設スペースにも中和剤を充填できるので、ドレン中和器をより一層小型化することが可能となる。
【0026】
そして、このような小型で軽いドレン中和器を燃焼装置のケース内の先端下部側に設けても、燃焼装置のケースにテコの原理に基づく応力が大きくかかることを抑制できるので、燃焼装置のケースの強度を格段に強くする必要はなく、燃焼装置のコストアップを防ぐことができる。
【0027】
なお、例えば屋外に設けられる燃焼装置において、風が強すぎる場合には自動的に燃焼装置内のバーナ燃焼を停止する機能が設けられていることが多く、このような燃焼装置では、風が強すぎる場合にはドレンが発生しないことになる。このような燃焼装置であっても、従来のようにドレンを溜める構成のドレン中和器においては、バーナ燃焼停止前に溜まったドレンがドレン中和器内に溜められた状態であるために重く、燃焼装置にドレン中和器による応力と、強い風による応力とが加えられることになるが、本発明を適用した場合に、風が強すぎる場合にはドレンが発生しないのでドレン中和室内の中和剤は乾いた状態であり、ドレン中和器はバーナ燃焼で発生したドレンがドレン中和室内を通過する時よりもさらに軽い状態にできるため、燃焼装置のケースにかかる応力をより一層小さくできるので、風が強すぎる場合でも支障を生じない。
【0028】
また、液体が流れるときには、その下流側に向かうにつれて、幅方向(流れの方向と交わる方向)の大きさが広くなる傾向にあるために、液体の流れる通路は流れの上流側よりも下流側の通路幅を広くする方がスムーズに流れやすい。そのため、本発明のドレン中和器、ドレン通過通路のドレンが流れる方向の通路幅を、該ドレン通過通路に沿ってドレンが流れる上流側よりも下流側の方が連続的または段階的に幅広になるように形成して、そのドレン中和室のドレン通過通路を通してドレンを中和することより一層効率的にドレンの中和を行うことができる。
【0029】
さらに、ドレン中和器において、ドレン中和室の底面側の領域には通路壁の長手方向を横切る方向に前記ドレン中和室の底面側から起立させた障害壁を設け、該障害壁と前記通路壁の間をドレンが蛇行しながら通過するように形成すると、ドレンが通過する経路をより長くすることができ、ドレンの中和剤による中和をより一層良好に行うことができる。
【0030】
さらに、本発明の燃焼装置を、例えばバランス風呂釜の代わりに浴室壁に形成された壁穴に設置することにより、風呂スペースの有効利用を行えるようにすることができる。また、本発明の燃焼装置は、コストアップが抑制された安価な燃焼装置とすることができる上に、潜熱回収用熱交換器を有することにより高効率での燃焼を行うことができるし、潜熱回収用熱交換器で発生するドレンをドレン中和器により効率的に中和することができ、さらに、ドレンと共に流れてくる排気の水封もでき、安全で快適に利用を行える優れた燃焼装置とすることができる。
【0031】
なお、浴室の壁穴に設けられる燃焼装置は、横方向の長さが高さよりも大きい横置きタイプの燃焼装置であるが、このような燃焼装置において、装置外部から装置内にバーナの燃焼用の空気を導入するための吸気口は、潜熱回収用熱交換器の下部側に設けられることが多く、この吸気口の配設領域には、雨等が燃焼装置内に入ることを防ぐための雨よけの板部が設けられているが、本発明のドレン中和器を潜熱回収用熱交換器の下部側に設けて吸気口付近に配置すれば、ドレン中和器の容器によって吸気口から雨などが装置内に入り込むことを防ぐことができ、雨よけの板部を省略することも可能となり、装置の簡略化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明に係るドレン中和器の一実施例を模式的に示す斜視図(a)と、そのドレン中和器を矢印Aの方向から(斜め上側から)見た図により示す模式的な斜視図(b)である。
図2図1に示した実施例のドレン中和器のドレン通過動作を平面図により示す説明図(a)と、図1(b)のB−B’断面図(b)である。
図3】本発明に係るドレン中和器の他の実施例の構成とドレン通過動作を示す模式的な平面説明図である。
図4】本発明に係るドレン中和器を設けた燃焼装置の一実施例を示す模式的なシステム図である。
図5】本発明に係るドレン中和器を設けた燃焼装置の一実施例を、その側面がわからケース壁を一部透かして見た図である。
図6】従来の潜熱回収用熱交換器を備えた燃焼装置のシステム構成例を説明するための模式的な説明図である。
図7】バランス風呂釜を取り除き、その設置スペースだけ大型の浴槽を風呂設置スペースに設置した浴室構造を示す説明図である。
図8】風呂設置スペースにバランス風呂釜と浴槽とを並設した浴室構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。なお、本実施例の説明において、従来例と同一名称部分には同一符号を付し、その重複説明は省略または簡略化する。
【実施例】
【0034】
図1には、本発明に係るドレン中和器の一実施例が模式的な斜視図によって示されている。ドレン中和器2は例えばポリプロピレン等の樹脂により形成されており、同図に示されるように、燃焼装置の潜熱回収用熱交換器6で発生するドレンを導入するドレン導入部3と、該ドレン導入部3から導入されるドレンが通過するドレン通過室7と、該ドレン通過室7を通過したドレンを外部に導出するドレン導出部9とを有している。ドレン通過室7の上側は開口と成しており、図1(a)のLの長さは18cm、Wの長さは11cm、高さHは11cmに形成されている。なお、ドレン中和器2の大きさはこれらの値に限定されるものでなく、適宜設定されるものである。
【0035】
ドレン通過室7は、排気の水封室11と、該水封室11に連通して設けられたドレン中和室12とを有しており、水封室11とドレン中和室12とは、ドレン通過室7の底面から上方に起立形成された隔壁13によって、水平方向に隣り合わせに間取り配置されている。なお、隔壁13の高さは例えば7cmである。水封室11は前記ドレン導入部3に連通して設けられており、前記潜熱回収用熱交換器6側からドレンと共に流れてくる排気をドレンによって水封する排気の水封室であり、ドレン中和室12は水封室11から流れてくる前記ドレンを中和する中和室である。
【0036】
ドレン中和室12内には、例えば炭酸カルシウムにより形成された複数の固形の中和剤(図1には図示せず)が互いに間隔を介して充填されている。なお、中和剤の種類等は特に限定されるものでなく、適宜設定されるものである。図1(b)に示すスリット32には、図2(b)に示されるように、ドレンは通すが中和剤34は通さないフィルタ部(例えばメッシュ状の板)33が挿入され、ドレン中和室12内を満たす状態でドレン中和室12の高さ(11cm)近くまで充填された中和剤34が、高さ7cm程の隔壁を超えて水封室11内に入ることを防止できるように構成されている。なお、図2(b)は、ドレンが水封室11により水封されている状態を、ドレン回収手段43(図4図6、参照)とドレン中和器2を結ぶドレン通過管路35と共に模式的に示しており、図の斜線部分がドレンで満たされた状態を示す。また、中和剤34はドレン中和室12を満たすように充填されるが、一部のみ示されている。
【0037】
また、図1に示されるように、ドレン中和室12の底面側には、該底面側から起立した高さが例えば5cmの通路壁14が設けられており、ドレンがドレン中和室12の底面側領域を通路壁14の伸長方向に沿って通過することによりドレン中和室12の底面側を蛇行しながら通過するドレン通過通路15(15a,15b,15c)が形成されている。ドレン通過通路15の底面は、該ドレン通過通路15を通ってドレンが流れる上流側よりも下流側が低位置になるように傾斜が形成されている。
【0038】
そして、ドレン通過室7に導入されたドレンが、図2(a)の矢印に示されるように、水封室11を通った後に、ドレン通過通路15を通ってドレン中和室12の底面側を蛇行しながら通過するときに前記中和剤によって中和されて、ドレン導出部9から外部に導出される構成と成している。ドレン通過通路15は、該ドレン通過通路15に沿ってドレンが流れる上流側よりも下流側の方が段階的に幅広になるように、ドレン通過通路15aの幅<ドレン通過通路15bの幅<ドレン通過通路15cの幅、に形成されている。
【0039】
図4には、本実施例のドレン中和器2を設けた燃焼装置(給湯器17)の一実施例が、模式的なシステム構成図により示されており、図5には、この給湯器17の一部断面構造が示されている。この給湯器17は、例えば従来例と同様に、浴室壁10に形成された壁穴16に設置され、ケース40内に、バーナ1と燃焼ファン5、メインの熱交換器4、潜熱回収用熱交換器6を設けて形成されているが、この実施例では、さらに、図1に示したドレン中和器2をケース40内に設けて形成されている。ドレン中和器2は燃焼室20の外部において潜熱回収用熱交換器よりも下部側に設けられ、吸気口19の近傍位置に配置されている。なお、図4において、ドレン中和器2は図2(b)に示した断面図を用いて示されているために、ドレン中和器2のドレン導出部9が示されていないが、実際には例えば図の手前側にドレン導出部9が配置されてドレン中和器2を通ったドレンがケース40の外部に導出される。
【0040】
なお、本発明は、前記実施例に限定されるものでなく、様々な態様を採り得る。例えば、前記実施例では、ドレン中和室12のドレン通過通路15は、該ドレン通過通路15に沿ってドレンが流れる上流側よりも下流側の方が段階的に幅広になるように形成したが、ドレン通過通路15は、ドレンが流れる上流側よりも下流側の方が連続的に幅広になるように形成してもよい。また、参考例として、その幅は全て同じ幅でもよく、さらに、参考例として、その幅は適宜設定されるものである。
【0041】
また、例えば図3に示されるように、ドレン中和室7の底面側の領域に、通路壁14の長手方向を横切る方向に、ドレン中和室7の底面側から起立させた障害壁21を設け、図の矢印に示されるように、障害壁21と通路壁14の間をドレンが蛇行しながら通過するように形成してもよい。
【0042】
さらに、前記実施例では、ドレン通過室7の上側を開口したが、例えばドレン通過室7内に埃等が上側から入ることを防げるように蓋部を設けてもよい。なお、ドレン中和器2の軽量化を図るためには、蓋部はメッシュ状のものやスリットを形成したものを適用したり、フィルム状の蓋部としたり、板状の蓋部の場合にはその厚みを薄く形成したりするとよい。
【0043】
さらに、上記実施例は、燃焼装置として、ガス燃焼式の給湯器17について説明したが、本発明の燃焼装置は給湯器とは限らず、潜熱回収用熱交換器を有していれば、風呂釜等、適宜の燃焼装置を適用することができる。また、その燃焼方式も、石油燃焼式のものとしてもよく、さらに、燃焼装置のシステム構成も特に限定されるものでなく、適宜設定されるものである。
【0044】
さらに、上記実施例では、給湯器17を浴室30の壁穴16に設置する例を述べたが、給湯器17等の燃焼装置の配置位置は適宜設定されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、軽量のドレン中和器を形成でき、ドレン中和器を燃焼装置の先端下部に設けても燃焼装置のケースの強度を格段に強くする必要がなく、燃焼装置の低コスト化を図れるので、例えば家庭用の燃焼装置に適用できる。
【符号の説明】
【0046】
1 バーナ
2 ドレン中和器
3 ドレン導入部
4 メインの熱交換器
5 燃焼ファン
6 潜熱回収用熱交換器
7 ドレン通過室
9 ドレン導出部
10 浴室壁
11 水封室
12 ドレン中和室
13 隔壁
14 通路壁
15 ドレン通過通路
16 壁穴
21 障害壁
26 浴槽
40 ケース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8