【実施例1】
【0023】
以下、実施例1を
図1〜7に基づいて説明する。
図1は、本発明における蓋付き容器1を示している。蓋付き容器1は、断熱二重構造の容器本体2と、容器本体2の上部開口3を覆う下蓋4と、下蓋4上に装着される上蓋5とで構成される。
【0024】
容器本体2は、有底筒状の外筒6と、前記外筒6の内側に収容される内筒7とで構成され、両者の上端が接合されることにより外筒6と内筒7との間に断熱層たる真空層を有した断熱二重容器を形成する。さらに、前記容器本体2は、内筒7の上部内周面に、内側に向かい突出した止水部8を設け、外筒6の上部外周面に、雄螺子9を螺設している。
【0025】
容器本体2の上部開口3を覆う下蓋4は、有底筒状に形成される第一の胴部10と、第一の胴部10の上端が外側に曲折して下方に向かい折り返されることで形成される第一の外周板部11とを備え、第一の胴部10と第一の外周板部11との間隙Aには、前記容器本体2が上部側から遊嵌される。第一の胴部10には、底部12の略中心に空気孔13が穿設され、外周面の下部にゴムやエラストマー等からなる弾性パッキン14を取り付ける取付溝15が周設され、内周面の上部に等間隔をあけて三箇所に配置された突状の係合部たる係合突起16が設けられている。また、第一の外周板部11は、内周面に雌螺子17を螺設しており、これを容器本体2の雄螺子9に螺合して締め付けていくことにより、容器本体2に下蓋4を装着することができる。
【0026】
前記下蓋4上に装着される上蓋5は、下蓋4の上部を全面的に覆う天板部18と、該天板部18に連続して垂下する第二の外周板部19と、天板部18に対して径小であって同心円筒状に形成される第二の胴部20とを備え、天板部18と第二の胴部20との寸法差により形成される第二の胴部20と第二の外周板部19との間隙Bには、下蓋4が上部側から遊嵌される。そして、上部が天板部18の下面に接合される第二の胴部20は、内部に断熱材21を備えており高い保温性能を有するほか、外周面には下蓋4の係合突起16に対応して三箇所に配置される溝部たる係合溝22が設けられ、下部中央である空気孔13と対向する位置には前記空気孔13を閉塞する空気孔閉塞パッキン23を着脱自在に保持するパッキン保持部24が設けられる。
【0027】
係合溝22は、上下方向を短辺、左右方向を長辺とする略横倒L字状に全体を形成し、係合溝22の一端に下方へ向かい開口する挿入部25を設け、該挿入部25に連続する上下方向の垂直案内路26と、垂直案内路26に連続して斜め上方に向かい傾斜する傾斜案内路27と、傾斜案内路27に連続する水平案内路28と、水平案内路28の上部に連続して斜め下方に向かい傾斜する第一の傾斜案内部29とを一体に設けている。そして、第一の傾斜案内部29には係合溝22の他端となる第一の当接部30を有する閉状態収納部31が連続して設けられ、この閉状態収納部31の下部には突起部32が設けられると共に、一端側に斜め下方へ向かい傾斜する第二の傾斜案内部33が連続して設けられている。また、前記水平案内路28及び前記第一の傾斜案内部29の下方位置には、第二の傾斜案内部33と連続する開状態収納部34が設けられ、開状態収納部34には傾斜案内路27との高低差により形成される第二の当接部35が設けられている。
【0028】
また、前記空気孔13を閉塞する空気孔閉塞パッキン23は、ゴムやエラストマー等からなる弾性部材より成り、平面が円環状に形成されており、パッキン保持部24に嵌入して保持される嵌合部36と、断面く字状の弾性離間隙間保持部37と、空気孔13に対向して下方に向かい半球状に突設した弾性閉塞部38とを備え、弾性離間隙間保持部37には、内外を連通する通気孔39が穿設されている。
【0029】
次に上記構成を備える蓋付き容器1の開閉機構について、その作用を説明する。
先ず、蓋付き容器1を組立てる際には、下蓋4の第一の胴部10と第一の外周板部11との間隙Aに容器本体2を上部側から遊嵌し、下蓋4を容器本体2の雄螺子9に螺合して締め付けていくことにより、容器本体2上に下蓋4が装着され、同時に、容器本体2の内筒7に形成される止水部8に、下蓋4の取付溝15に取り付けた弾性パッキン14が当接された状態となる。そして、下蓋4の上部開口3を覆う上蓋5は、等間隔をあけて三箇所に配置された係合突起16の位置に係合溝22が備える挿入部25の位置を合わせて、それぞれの挿入部25から係合突起16を同時に挿入することで、下蓋4の係合突起16を垂直案内路26、傾斜案内路27の順に案内していく。傾斜案内路27に案内された係合突起16は、上蓋5を下方に押圧しながら係合溝22の他端側である閉方向に向かい回動することにより、係合溝22の上部に沿うようにして水平案内路28、第一の傾斜案内部29の順に案内され、最終的に閉状態収納部31内の第一の当接部30に当接すると、上蓋5と下蓋4とが係合されて蓋付き容器1の組立て状態、すなわち容器本体2、外蓋及び下蓋4が一体となった閉栓状態となる。尚、係合突起16が閉状態収納部31の一端側から他端側へ案内される際には、クリック感を得られる突起部32を乗り越えた後、他端にある第一の当接部30に当接して係合される構成であるため、係合突起16が閉状態収納部31内に収まり、閉状態となったことを確認することができる。また、第一の当接部30に係合突起16が当接すると、上蓋5の閉方向への回動は抑止されて、上蓋5と一体となった下蓋4に回動力が伝わるので、下蓋4が容器本体2に装着されていない時には、上蓋5と下蓋4とが一体になった状態で、容器本体2との螺合を行うことができる。さらに、係合突起16と係合溝22とは、それぞれ周方向に複数設けられていることにより、上蓋5と下蓋4とが水平に保持され易くなり、分解または組立て動作を行い易くすることができる。
【0030】
ここで、弾性変形前の空気孔閉塞パッキン23は、弾性離間隙間保持部37により弾性閉塞部38と空気孔13とを一定の間隙Cを有した状態で保持している。また、弾性離間隙間保持部37の高さT1は、挿入部25から傾斜案内路27における内側傾斜案内部40の下部までの高さT2、すなわち垂直案内路26の上部までの高さと、ほぼ等しく設けられており(T1≒T2)、これらの高さは挿入部25から閉状態収納部31までの高さT3よりも低くなっている(T1≒T2<T3)。前記構成により、係合突起16が係合溝22内に挿入状態で、且つ上蓋5の回動前となる垂直案内路26の上部までは、弾性離間隙間保持部37が弾性変形することなく間隙Cを保持した状態であるが、上蓋5の閉方向への回動時には、係合突起16が傾斜案内路27の上部に移動するに従い上蓋5自体が下方に下がっていくので、これに伴い弾性離間隙間保持部37が弾性変形していき、空気孔13を弾性閉塞部38により閉塞した状態となる。また、容器本体2の上部内周面と下蓋4の第一の胴部10との間隙Dは、止水部8と弾性パッキン14とが当接することで止水され、下蓋4の空気孔13は、弾性閉塞部38が当接することで閉塞されるので、容器本体2内の内容物による液汁が外部に液漏れすることなく水密状態を確保することができる。しかも、垂直案内路26の高さ以上となる閉状態収納部31に係合突起16が収納されている間は、空気孔閉塞パッキン23が弾性変形されているので、その復元力により上蓋5が常に上方へ向かい付勢された状態となり、係合突起16は閉状態収納部31の下部に当接して保持される。
【0031】
一方、蓋付き容器1を分解する際には、係合溝22の一端側である開方向に上蓋5を回動する。係合突起16は、上蓋5を開方向に向かい回動すると、空気孔閉塞パッキン23の復元力により上蓋5が常に上方へ向かい付勢された状態であるので、閉状態収納部31から開状態収納部34まで下部に沿って、突起部32、第二の傾斜案内部33、開状態収納部34の順で案内され、開状態収納部34に収まる。この時、開状態収納部34の下部は、挿入部25から傾斜案内路27における内側傾斜案内部40の下部までの高さT2よりも僅かに低い高さT4(T4<T2)となるので、空気孔13を閉塞していた弾性閉塞部38を有する空気孔閉塞パッキン23が弾性復元力により復元して、弾性閉塞部38が空気孔13から離れ、空気孔13閉塞パッキンの内外を連通する通気孔39により通気がなされるため、容器本体2の減圧状態が解除される。したがって、係合突起16が開状態収納部34に収まるたけで空気孔閉塞パッキン23の弾性閉塞部38が空気孔13から離れて、通気される構成であるので、想定外の減圧状態にあっても容易に減圧を解除することができ、取り外しを容易に行うことができる。しかも、係合突起16が開状態収納部34に位置する時には、弾性離間隙間保持部37の高さT1よりも、挿入部25から内側傾斜案内部40の上部までの高さT5のほうが高いため(T1<T5)、開状態収納部34では係合突起16が傾斜案内路27に案内されることなく、復元した弾性離間隙間保持部37により上蓋5と下蓋4の係合状態を安定して保持することができる。尚、係合突起16が閉状態収納部31の他端側から一端側へ案内される際には、クリック感を得られる突起部32を乗り越えた後、開状態収納部34に案内される構成であるため、減圧解除の前後を容易に確認することができる。
【0032】
そして、開状態収納部34に係合突起16が位置する状態から、さらに上蓋5を開方向に回動すると、係合突起16は開状態収納部34の一端側に設けられる第二の当接部35に当接する。上蓋5は、単に開方向へ回動するだけでは、開状態収納部34の下部から内側傾斜部の上部までの高低差により、係合突起16部が傾斜案内路27に案内されることはなく、下蓋4から外れることもない。したがって、係合突起16が第二の当接部35に当接状態のまま開方向へ回動していくと、下蓋4の螺子が緩められていき、上蓋5と下蓋4とが一体の状態で容器本体2から取り外され開栓状態とすることができるので、上蓋5と下蓋4とを別々に外す必要がなく手数を減らすことができ、内容物との接触面に触れることなく取り外しを行うことができる。
【0033】
開状態収納部34から傾斜案内路27へ係合突起16を案内して下蓋4から上蓋5を取り外すには、
図7に示すように、係合突起16が突起部32を乗り越えて閉状態収納部31から開状態収納部34に移動する段階で、下方に向かい上蓋5を押圧しながら開方向に回動する。そうすると、空気孔閉塞パッキン23が弾性変形して上蓋5が下がるので、開状態収納部34内の係合突起16を傾斜案内路27に案内することができる。傾斜案内路27に案内された係合突起16は、上蓋5を開方向に回動していくと傾斜案内路27を下るようにして案内され、この間、空気孔閉塞パッキン23が有する弾性離間隙間保持部37が徐々に弾性復元力により復元していくので、これにより挿入部25までの回動が補助され、下蓋4から上蓋5を容易に取り外すことができる。こうした構成により、下蓋4から上蓋5を取り外すには、左右方向の回動に加えて上下方向の押圧が必要となるので、何らかの原因により上蓋5が開方向に回動されたとしても安易に下蓋4から外れることがなく、液漏れ等を防止することができる。また、下蓋4および上蓋5を分解することで、それぞれ細部まで洗うことができるので衛生的な取り扱いができる。
【0034】
以上のように、本実施例では、開口部を有する容器本体2と、容器本体2と螺合する下蓋4と、下蓋4に嵌合する上蓋5とからなる容器において、下蓋4が、中央部に設けられる内外を連通する空気孔13と、下部に設けられる容器本体2の内面に当接する弾性パッキン14とを備え、上蓋5が、空気孔13に対向する位置に弾性閉塞部38を有する空気孔閉塞パッキン23を備え、下蓋4の内壁または上蓋5の外壁の一方には突状の係合部たる係合突起16が設けられ、他方には係合突起16を収容して上蓋5の開状態を保持する開状態収納部34及び閉状態を保持する閉状態収納部31を有する係合溝22が設けられることで、上蓋5と下蓋4を一体化したまま、開栓することができる。
【0035】
また、係合溝22の開状態収納部34に係合突起16が位置するときは、弾性閉塞部38により空気孔13が閉塞されず、係合溝22の閉状態収納部31に係合突起16が位置するときは、弾性閉塞部38により空気孔13が閉塞されることで、上蓋5と下蓋4を一体化したまま、減圧解除することができる。
【0036】
また、係合溝22が、開状態収納部34と閉状態収納部31に連通する挿入部25を有することで、一体化している上蓋5と下蓋4を分解することができ、各蓋体の細部まで洗うことができる。
【0037】
また、連通する開状態収納部34と閉状態収納部31との間に、突起部32が設けられることで、開状態収納部34と閉状態収納部31間を係合突起16が移動した際にクリック感を得ることができ、係合突起16の位置が明確になるとともに、容器本体2が減圧解除されたか否かを容易に確認することができる。
【0038】
また、上蓋5又は下蓋4が、弾性閉塞部38より高さがある弾性離間隙間保持部37を有することで、係合溝22の開状態収納部34に係合突起16が位置する時に、上蓋5と下蓋4の係合位置が保持され、蓋体を安定させることができる。
【0039】
また、係合溝22と係合突起16を複数設けたことで、上蓋5と下蓋4は水平に保持されやすく、分解や組立てを容易に行うことができる。
【0040】
さらに、容器本体2が断熱容器であり、上蓋5が断熱材21を有することで、高い保温性能を有することができる。
【実施例2】
【0041】
以下に他の実施例について説明する。尚、前記実施例1と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0042】
図8は実施例2を示しており、前記実施例1において、下蓋4には内周面の上部に等間隔をあけて三箇所に配置された係合突起16が設けられていたが、これが本実施例では係合溝22に置き換えられ、上蓋5には第二の胴部20の外周面に下蓋4の係合突起16に対応して三箇所に配置される係合溝22が設けられていたが、これが本実施例では係合突起16に置き換えられている。尚、下蓋4の内周面に形成される係合溝22は、前記実施例1の係合溝22と水平線に対して線対象となるように設けられ、一端に設けられる挿入部25が上方に向かい開口して設けられている。
【0043】
また、上蓋5の天板部18には天面41に取手42を設けており、仮に前記実施例1における第二の外周板部19が上蓋5に設けられていない構成であっても、取手42を設けることで上蓋5の開方向或は閉方向への回動を容易に行うことができる。
【0044】
したがって、本実施例では、下蓋4に複数の係合突起16が設けられ、上蓋5に前記係合突起16に対応した複数の係合溝22が設けられることにより、両者を一体化したまま開栓或は閉栓することや、一体化したまま減圧解除することができる。また、上蓋5の天面41に取手42が設けられていることにより、開閉作業を容易に行うことができる。
【0045】
以上のように、このような実施例においても実施例1と同様な作用効果を奏することができる。
【0046】
尚、本発明は、実施例1及び実施例2に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、上記実施例では、空気孔閉塞パッキンに弾性離間隙間保持部を設けたが、これがなくとも構造は成り立ち、弾性離間隙間保持部を上蓋に設けることや、弾性閉塞部と弾性離間隙間保持部とを一体に設ける必要はない。