(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の口腔用組成物は、リンゴ酸又はその塩(A)を質量モル濃度で25mmol/kg以上1000mmol/kg以下含有し、かつ(B)リン酸一水素アルカリ金属塩を含有しつつ、pHが7.5以上11以下の領域に保たれていることにより、外因性着色や内因性着色によって生じた歯の黄ばみを浮き上がらせて剥がれやすくし、効果的に除去することができる。
【0011】
成分(A)リンゴ酸又はその塩の含有量は、歯の黄ばみの除去効果を充分に発揮させる観点から、本発明の口腔用組成物中に、質量モル濃度で25mmol/kg以上であって、好ましくは28mmol/kg以上であり、より好ましくは30mmol/kg以上であり、さらに好ましくは80mmol/kg以上である。成分(A)の含有量は、リンゴ酸由来の酸味を低減する観点から、本発明の口腔用組成物中に、質量モル濃度で1000mmol/kg以下であって、好ましくは900mmol/kg以下であり、より好ましくは800mmol/kg以下であり、さらに好ましくは350mmol/kg以下である。また、成分(A)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、質量モル濃度で25mmol/kg〜1000mmol/kgであって、好ましくは28mmol/kg〜900mmol/kgであり、より好ましくは30mmol/kg〜800mmol/kgであり、さらに好ましくは80mmol/kg〜350mmol/kgである。
【0012】
本発明の口腔用組成物は、リン酸一水素アルカリ金属塩(B)を含有する。かかる成分(B)を含有することにより、緩衝能を発揮して本発明の口腔用組成物のpHを7.5以上11以下の領域内に良好に保持して成分(A)による歯の黄ばみの除去効果を充分に増強させることができる。また、リン酸由来の異味を低減して組成物の風味が変動するのを抑制することができるとともに、使用時において歯のきしみが抑制され、良好な使用感をもたらすことが可能である。ここで、歯がきしむとは、口角や舌を動かしたときに歯の周囲で摩擦を感じ、これらを滑らかに動かすことができなくなる感触をいう。
【0013】
成分(B)のアルカリ金属としては、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウムが挙げられる。
【0014】
成分(B)は、組成物中において、オルトリン酸又はその塩の少なくともその一部が乖離することで含有され、緩衝能を充分に発揮して組成物のpHを7.5以上11以下の領域内に保持する。オルトリン酸又はその塩の含有量(P)は、本発明の口腔用組成物中に、質量モル濃度で好ましくは1mmol/kg以上であり、より好ましくは5mmol/kg以上であり、さらに好ましくは10mmol/kg以上である。
オルトリン酸又はその塩の含有量(P)は、黄ばみ除去効果の観点、組成物の風味を損なわない観点、及び味の変化を抑制する観点から、本発明の口腔用組成物中に、質量モル濃度で好ましくは800mmol/kg以下であり、より好ましくは700mmol/kg以下であり、さらに好ましくは500mmol/kg以下である。
また、オルトリン酸又はその塩の含有量(P)は、本発明の口腔用組成物中に、質量モル濃度で好ましくは1〜800mmol/kgであり、より好ましくは5〜700mmol/kgであり、さらに好ましくは10〜500mmol/kgである。
なお、成分(B)は、本発明の口腔用組成物中において、オルトリン酸又はその塩の含有量(P)が上記範囲となるような量で含有される。
【0015】
リン酸一水素アルカリ金属塩を含むオルトリン酸又はその塩以外の、リン酸又はその塩の含有量は、組成物の風味の変動や歯に生じるきしみを抑制する観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくはリン酸換算量で0.8質量%以下であり、より好ましくは0.08質量%以下であり、また不可避的に混入する場合を除き、含有しないことが好ましい。かかるオルトリン酸又はその塩以外のリン酸又はその塩としては、例えば、ピロリン酸、ピロリン酸ナトリウムやピロリン酸カリウム等のピロリン酸塩、トリポリリン酸塩、ポリリン酸塩等が挙げられる。
【0016】
成分(A)リンゴ酸又はその塩に対するオルトリン酸又はその塩の含有量の質量モル比(P/A)は、リン酸による緩衝能を充分に発揮させて成分(A)による歯の黄ばみの除去効果を増強させる観点から、好ましくは0.1以上であり、より好ましくは0.13以上であり、さらに好ましくは0.15以上である。
成分(A)のリンゴ酸又はその塩に対するオルトリン酸又はその塩の含有量(P)の質量モル比(P/A)は、良好な風味を保持する観点、及び成分(A)による優れた歯の黄ばみの除去効果を確保する観点から、好ましくは10以下であり、より好ましくは8以下であり、さらに好ましくは6以下である。また、成分(A)のリンゴ又はその塩に対するオルトリン酸又はその塩の含有量(P)の質量比(P/A)は、好ましくは0.1〜10であり、より好ましくは0.13〜8であり、さらに好ましくは0.15〜6である。
【0017】
本発明の口腔用組成物のpHは、7.5以上11以下である。pHをこのような領域内に保持することにより、より高い歯の黄ばみの除去効果を発揮し、成分(A)のリンゴ酸又はその塩の含有量を必要以上に高めることなく白く美しい歯を得ることができる。
【0018】
本発明の口腔用組成物のpHは、成分(A)による歯の黄ばみ除去効果を充分に発揮させる観点から、7.5以上であって、好ましくは7.7以上であり、より好ましくは7.8以上である。本発明の口腔用組成物のpHは、成分(B)がもたらす緩衝能を阻害しない観点から、11以下であって、好ましくは9.5以下であり、より好ましくは8.5以下である。また、本発明の口腔用組成物のpHは、7.5〜11であって、好ましくは7.7〜9.5であり、より好ましくは7.8〜8.5である。
なお、本発明の口腔用組成物のpHとは、20℃においてpH電極を用いて測定した値であり、本発明の口腔用組成物が液体口腔用組成物である場合は組成物を測定した値であり、本発明の口腔用組成物が練り歯磨組成物である場合には、蒸留水を加えて歯磨組成物の濃度を10質量%の溶液となるように調整した後、測定した値を意味する。
【0019】
本発明の口腔用組成物は、さらにアルカリ剤(C)を含有することができる。かかる成分(C)を含有することにより、成分(B)による緩衝能を補強し、組成物のpHを上記範囲内となるよう容易に調製することができる。かかる成分(C)としては、例えば、水酸化物が好ましく、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。
【0020】
本発明の口腔用組成物が成分(C)を含有する場合、成分(C)アルカリ剤の含有量は、成分(B)による緩衝能を補強し、組成物のpHを容易に調製する観点から、本発明の口腔用組成物中に、質量モル濃度で好ましくは1mmol/kg以上であり、より好ましくは10mmol/kg以上であり、さらに好ましくは150mmol/kg以上である。成分(C)アルカリ剤の含有量は、成分(B)による風味や味の変化の抑制効果を充分に発揮させる観点から、本発明の口腔用組成物中に、質量モル濃度で好ましくは1500mmol/kg以下であり、より好ましくは1000mmol/kg以下であり、さらに好ましくは500mmol/kg以下である。また、成分(C)アルカリ剤の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、質量モル濃度で好ましくは1〜1500mmol/kgであり、より好ましくは10〜1000mmol/kgであり、さらに好ましくは150〜500mmol/kgである。
【0021】
本発明の口腔用組成物が成分(C)アルカリ剤を含有する場合、オルトリン酸又はその塩の含有量(P)と成分(C)のアルカリ剤含有量の合計に対するオルトリン酸又はその塩の含有量(P)の質量モル比(P/(P+C))は、リン酸による緩衝能を確保しつつ風味や味の変化の抑制効果を充分に発揮させる観点から、好ましくは0.01以上であり、より好ましくは0.05以上であり、さらに好ましくは0.07以上である。オルトリン酸又はその塩の含有量(P)と成分(C)のアルカリ剤含有量の合計に対するオルトリン酸又はその塩の含有量(P)の質量モル比(P/(P+C))は、組成物のpHの調整を容易にするから、好ましくは1未満であり、より好ましくは0.9以下であり、さらに好ましくは0.8以下である。また、オルトリン酸又はその塩の含有量(P)と成分(C)のアルカリ換算量の合計に対するオルトリン酸又はその塩の含有量(P)の質量モル比(P/(P+C))は、好ましくは0.01以上1未満であり、より好ましくは0.05〜0.9であり、さらに好ましくは0.1〜0.8である。
【0022】
本発明の口腔用組成物が成分(C)アルカリ剤を含有する場合、成分(A)リンゴ酸又はその塩の含有量に対するオルトリン酸又はその塩の含有量(P)と成分(C)のアルカリ剤の含有量の合計の質量モル比((P+C)/A))は、リン酸による緩衝能を成分(C)のアルカリ剤が良好に補強して成分(A)リンゴ酸又はその塩による歯の黄ばみの除去効果を増強させる観点から、好ましくは1.1以上であり、より好ましくは1.8以上である。成分(A)リンゴ酸又はその塩の含有量に対するオルトリン酸又はその塩の含有量(P)と成分(C)のアルカリ剤の含有量の合計の質量モル比((P+C)/A))は、良好な風味を保持する観点、及び成分(A)による優れた歯の黄ばみの除去効果を確保する観点から、好ましくは30未満であり、より好ましくは8以下である。また、成分(A)リンゴ酸又はその塩のリンゴ酸含有量に対するオルトリン酸又はその塩の含有量(P)と成分(C)のアルカリ剤含有量の合計の質量モル比((P+C)/A))は、好ましくは1.1以上30未満であり、より好ましくは1.8〜8である。
【0023】
本発明の口腔用組成物は、水を含有することが好ましい。これにより、成分(B)によりもたらされる緩衝作用を促進しつつ、成分(A)を口腔内の隅々にまで行き渡らせることができる。かかる観点から、本発明の口腔用組成物が液状歯磨剤、洗口剤及び口中清涼剤等の液体口腔用組成物である場合、水の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは65質量%以上であり、より好ましくは75質量%以上であり、好ましくは99.5質量%以下であり、より好ましくは99質量%以下である。そして、本発明の口腔用組成物が液体口腔用組成物である場合、水の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは65〜99.5質量%であり、より好ましくは75〜99質量%である。
【0024】
また、本発明の口腔用組成物が練り歯磨組成物である場合、水の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは8質量%以上であり、より好ましくは15質量%以上であり、さらに好ましくは25質量%以上であり、好ましくは55質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下であり、さらに好ましくは45質量%以下である。そして、本発明の口腔用組成物が練り歯磨組成物である場合、水の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは8〜55質量%であり、より好ましくは15〜50質量%であり、さらに好ましくは25〜45質量%である。
【0025】
本発明の口腔用組成物は、さらに湿潤剤を含有させることができる。かかる湿潤剤としては、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、キシリトール、マルチトール、ラクトール等が挙げられる。なかでも、組成物の風味の観点から、ポリエチレングリコール、ソルビトールが好ましい。湿潤剤の含有量は、本発明の口腔組成物中に、好ましくは1〜70質量%であり、より好ましくは2〜60質量%であり、さらに好ましくは10〜30質量%である。なお、本発明の口腔用組成物が液状歯磨剤、洗口剤及び口中清涼剤等の液体口腔用組成物である場合、湿潤剤の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは1〜30質量%であり、より好ましくは2〜20質量%である。また、本発明の口腔用組成物が練り歯磨組成物である場合、湿潤剤の含有量は、本発明の口腔組成物中に、好ましくは2〜70質量%であり、より好ましくは5〜60質量%であり、さらに好ましくは10〜30質量%である。
【0026】
本発明の口腔用組成物は、さらに粘結剤を含有させることができる。かかる粘結剤としては、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ペクチン、トラガントガム、アラビアガム、グアーガム等が挙げられる。本発明の口腔用組成物が練り歯磨組成物である場合、粘結剤の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.2質量%以上であり、より好ましくは0.4質量(%以上であり、好ましくは8質量%以下であり、より好ましくは4質量%以下である。
【0027】
本発明の口腔用組成物は、上記成分の他、本発明の効果を阻害しない範囲で、研磨性シリカ、炭酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、酢酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、ゼオライト等の研磨剤;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウム等のアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤等の界面活性剤;フッ化スズ、フッ化ナトリウム、フッ化アンモニウム等のフッ素イオン供給化合物、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ化物;サッカリンナトリウム等の甘味剤;メントール等の香料;色素;薬効成分等を適宜含有させることができる。
【0028】
上述した実施態様に関し、本発明はさらに以下の口腔用組成物を開示する。
[1]次の成分(A)及び(B)
(A)リンゴ酸又はその塩の含有量で25.0mmol/kg以上1000.0mmol/kg以下
(B)リン酸一水素アルカリ金属塩
を含有し、かつpHが7.5以上11以下である口腔用組成物。
【0029】
[2]成分(A)リンゴ酸又はその塩の含有量は、質量モル濃度で好ましくは28mmol/kg以上であり、より好ましくは30mmol/kg以上であり、さらに好ましくは80mmol/kg以上であであり、好ましくは900mmol/kg以下であり、より好ましくは800mmol/kg以下であり、さらに好ましくは350mmol/kg以下である上記[1]の口腔用組成物。
[3]オルトリン酸又はその塩の含有量(P)は、質量モル濃度で好ましくは1mmol/kg以上であり、より好ましくは5mmol/kg以上であり、さらに好ましくは10mmol/kg以上であり、好ましくは800mmol/kg以下であり、より好ましくは700mmol/kg以下であり、さらに好ましくは500mmol/kg以下である上記[1]又は[2]の口腔用組成物。
【0030】
[4]成分(A)リンゴ酸又はその塩の含有量に対するオルトリン酸又はその塩の含有量の質量モル比(P/A)は、好ましくは0.1以上であり、より好ましくは0.13以上であり、さらに好ましくは0.15以上であり、好ましくは10以下であり、より好ましくは8以下であり、さらに好ましくは6以下である上記[1]〜[3]の口腔用組成物。
[5]pHは、好ましくは7.7以上であり、より好ましくは7.8以上であり、好ましくは9.5以下であり、より好ましくは8.5以下である上記[1]〜[4]の口腔用組成物。
【0031】
[6]さらに好ましくはアルカリ剤(C)を含有し、アルカリ剤(C)が、好ましくは水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである上記[1]〜[5]の口腔用組成物。
[7]成分(C)アルカリ剤の含有量は、質量モル濃度で好ましくは1mmol/kg以上であり、より好ましくは10mmol/kg以上であり、さらに好ましくは150mmol/kg以上であり、好ましくは1500mmol/kg以下であり、より好ましくは1000mmol/kg以下であり、さらに好ましくは500mmol/kg以下である上記[6]の口腔用組成物。
[8]オルトリン酸又はその塩の含有量(P)と成分(C)アルカリ剤のアルカリの換算量の合計に対するオルトリン酸又はその塩の含有量(P)の質量モル比(P/(P+C))は、好ましくは0.01以上であり、より好ましくは0.05以上であり、さらに好ましくは0.07以上であり、好ましくは1未満であり、より好ましくは0.9以下であり、さらに好ましくは0.8以下である上記[6]又は[7]の口腔用組成物。
[9]成分(A)リンゴ酸又はその塩の含有量に対するオルトリン酸又はその塩の含有量(P)と成分(C)アルカリ剤の含有量の合計の質量モル比((P+C)/A))は、好ましくは1.1以上であり、より好ましくは1.8以上であり、好ましくは30未満であり、より好ましくは8以下である上記[6]〜[8]の口腔用組成物。
【0032】
[10]水の含有量は、本発明の口腔用組成物が液体口腔用組成物である場合、好ましくは65質量%以上であり、より好ましくは75質量%以上であり、好ましくは99.5質量%以下であり、より好ましくは99質量%以下であり、本発明の口腔用組成物が練り歯磨組成物である場合、好ましくは8質量%以上であり、より好ましくは15質量%以上であり、さらに好ましくは25質量%以上であり、好ましくは55質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下であり、さらに好ましくは45質量%以下である上記[1]〜[9]の口腔用組成物。
[11]成分(A)を含むオルトリン酸又はその塩以外の、リン酸又はその塩の含有量は、好ましくは0.8質量%以下であり、より好ましくは0.08質量%以下であり、また好ましくは含有しない上記[1]〜[10]の口腔用組成物。
[12]成分(A)を含むオルトリン酸又はその塩以外の、リン酸又はその塩が、ピロリン酸及びピロリン酸塩、トリポリリン酸塩、ポリリン酸塩等から選ばれる1種又は2種以上である上記[1]〜[11]の口腔用組成物。
【0033】
[13]さらに好ましくは粘結剤を含有する上記[1]〜[12]の口腔用組成物。
[14]本発明の口腔用組成物が練り歯磨組成物である場合、粘結剤の含有量は、好ましくは0.2質量%以上であり、より好ましくは0.4質量%以上であり、好ましくは8質量%以下であり、より好ましくは4質量%以下である上記[13]の口腔用組成物。
【実施例1】
【0034】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、表中に特に示さない限り、各成分の含有量は質量%を示す。
【0035】
[実施例1、比較例1〜3]
表1に示す処方にしたがって、練り歯磨組成物を製造した。得られた練り歯磨組成物について、下記方法にしたがって測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0036】
《練り歯磨組成物のpH測定》
得られた練り歯磨組成物を10g取りだし、精製水を添加して歯磨組成物の濃度を10質量%の溶液となるように調整した後、pH電極を用い、20℃にて測定した。
【0037】
《吐き出し液のpH測定》
得られた練り歯磨組成物を1g取りだし、これを口に含んで2分間ブラッシングした後に吐き出し、この吐き出し液のpHを測定した。
【0038】
《歯のきしみ》
得られた練り歯磨組成物を1g取りだし、専門パネラー3名にて歯ブラシを用いて2分間ブラッシングした後、歯のきしみの有無を以下の基準にしたがって評価した。結果は、専門パネラーらの協議にて決定した。
AA:歯の周囲で摩擦を感じることがなく、口角や舌を非常に滑らかに動かすことができる。
A:歯の周囲で多少の摩擦が感じられたものの、口角や舌を滑らかに動かすことができる。
C:歯の周囲で摩擦を感じ、口角や舌を滑らかに動かすのが難しかった。
【0039】
《風味》
得られた練り歯磨組成物を1g取りだし、専門パネラー3名にて歯ブラシを用いて2分間ブラッシングした後、口腔内で感じられる風味について以下の基準にしたがって評価した。結果は、専門パネラーらの協議にて決定した。
AA:リン酸塩由来の異味もなく、酸味や味の変化を感じることもなかった。
A:リン酸塩由来の異味や、酸味や味の変化を僅かに感じたが気にならない。
B:リン酸塩由来の異味や、酸味や味の変化を感じたが気にならない。
C:リン酸塩由来の異味や、酸味や味の変化が強く感じられ気になった。
【0040】
《黄ばみ除去効果》
黄ばみ除去効果は、紅茶に浸漬して黄ばみを吸着させたハイドロキシアパタイト粉末を用いて測定した。具体的には、紅茶で着色させたハイドロキシアパタイト粉末は、以下の手順で作成した。
1)ハイドロキシアパタイト粉末(太平化学産業株式会社製)5gを1%アルブミン水溶液100mlに添加、30分攪拌し、アルブミン吸着ハイドロキシアパタイト粉末を遠心分離にて取り出した。
2)アルブミン吸着ハイドロキシアパタイト粉末、ティーバッグ4パックを80℃に加温した人口唾液(Katz S, Park KK, Stookey GK, Schemehorn BR.Caries Res 1986;20:424-428.)100mlに添加、1時間攪拌し、粉末を遠心分離にて取り出した。
3)紅茶が精製水に溶け出さなくなるまで精製水で粉末を水洗し、乾燥させ、紅茶で着色させたハイドロキシアパタイト粉末を得た。
【0041】
紅茶で黄ばませたハイドロキシアパタイト粉末0.5gを10mlの試験液中に添加し、30分攪拌後、試験液の吸光度(波長400nm)を測定し、試験液へ抽出された黄ばみの量を評価した。
基準溶液(紅茶で黄ばませたハイドロキシアパタイト粉末を精製水で処理した溶液(pH5.0))の吸光度を100%とし、黄ばみ除去効果を以下の基準で評価した。
AA:黄ばみ抽出した試験液の吸光度が150%以上の吸光度を示した。
A:黄ばみ抽出した試験液の吸光度が110%以上の吸光度を示した。
C:黄ばみ抽出した試験液の吸光度が110%未満の吸光度を示した。
試験液は、剤型が練り歯磨組成物である場合(実施例1、比較例1〜4)、精製水で4倍希釈したものである。剤型が液状歯磨剤、洗口剤及び口中清涼剤等の液体口腔用組成物である場合(実施例2〜7、比較例5〜6)、希釈は行わない。
吸光度は、TECAN社製 波長可変型吸光マイクロプレートリーダー サンライズレインボーサーモで測定した。
【0042】
【表1】
【0043】
表1の結果によれば、優れた黄ばみ除去効果を発揮しつつ、歯のきしみを感じることもなく良好な風味を保持する実施例1に比して、成分(B)のリン酸一水素アルカリ金属の代わりにトリポリリン酸又はピロリン酸を用いた比較例1〜2は、歯にきしみ感をもたらしてしまうことがわかる。さらに、成分(A)のリン酸及び成分(B)のリン酸一水素アルカリ金属を併用しても、pH5である比較例3は、黄ばみ除去効果が実施例1に比して低かった。
【0044】
[実施例5〜8]
表2〜3に示す処方にしたがって、液体組成物の試験溶液を製造した。次いで、得られた試験溶液を用い、下記方法にしたがって測定及び評価を行った。なお、黄ばみ除去効果については、上記と同様の方法にしたがって評価した。実施例2を含め、結果を表2〜3に示す。
【0045】
《組成物のpH測定》
得られた液体口腔用組成物の試験溶液を10ml取りだし、pH電極を用い、20℃にて測定した。
【0046】
《吐き出し液のpH測定》
得られた液体口腔用組成物の試験溶液を10ml取りだし、これを口に含んで30秒間すすいだ後吐き出し、この吐き出し液のpHを測定した。
【0047】
《風味》
得られた液体口腔用組成物を10ml取りだし、専門パネラー3名にてこれを口に含んで30秒間すすいだ後、口腔内で感じられる風味について以下の基準にしたがって評価した。結果は、専門パネラーらの協議にて決定した。
AA:リン酸塩由来の異味もなく、酸味や味の変化を感じることもなかった。
A:リン酸塩由来の異味や、酸味や味の変化を僅かに感じたが気にならない。
B:リン酸塩由来の異味や、酸味や味の変化を感じたが気にならない。
C:リン酸塩由来の異味や、酸味や味の変化が強く感じられ気になった。
【0048】
《酸味》
得られた液体口腔用組成物10ml取りだし、専門パネラー3名にてこれを口に含んで30秒間すすいだ後、口腔内で感じられる酸味について以下の基準にしたがって評価した。結果は、専門パネラーらの協議にて決定した。
AA:酸味を感じることはなかった。
A:酸味を感じたがすすぎ続けられた。
C:すすぎ続けられないほどに酸味が感じられた。
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
表2の結果によれば、製造時から使用時に至るまで組成物のpHを安定に保持し、優れた黄ばみ除去効果と良好な風味とを両立する実施例2〜4に比して、成分(B)のリン酸一水素アルカリ金属を含有しない比較例4は、口腔内のpHを安定に保持することができず、黄ばみ除去効果が低減するとともに風味の低下をも招くことがわかる。
また、表3の結果により、実施例5〜8の組成物についても、優れた黄ばみ除去効果を発揮しつつ良好な風味をもたらすことがわかる。