(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の構成では、互いに位相差を有する第1高周波信号と第2高周波信号とをマイクロストリップライン側から入力して合成し導波管から出力する場合に、次のような問題が生じる。
【0006】
この場合、第1高周波信号をマイクロストリップラインの第1端子から入力し、第2高周波信号をマイクロストリップラインの第2端子から入力する。そして、これら第1高周波信号と第2高周波信号とが導波管に給電される際に、互いに相殺しないように位相調整しなければならない。
【0007】
したがって、従来の構成では、第1高周波信号、第2高周波信号の少なくとも一方の位相調整を行う位相調整回路を、マイクロストリップラインとは別に設けなければならない。これにより、高周波伝送線路が大型化してしまう。
【0008】
本発明の目的は、他の伝送線路と導波管とのモード変換を行いながら、同時に、他の伝送線路から入力される位相の異なる複数の高周波信号を合成して導波管から出力できる高周波伝送線路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の高周波伝送線路は、導波管、第1給電プローブ、第2給電プローブ、および90°ハイブリッド回路を備える。導波管は、高周波伝搬方向の一方端が入出力ポートであり、他方端が短絡終端されている。第1、第2給電プローブは、導波管内に挿入されている。第2給電プローブは、第1給電プローブから前記入出力ポート側に前記高周波信号の管内波長の1/4の奇数倍分離間して配置されている。90°ハイブリッド回路は、第1端子、第2端子、第3端子、第4端子を備える。90°ハイブリッド回路は、第3端子または第4端子から入力された高周波信号が第1端子および第2端子に分配されて90°位相差で出力され、第1端子または第2端子から入力された高周波信号が第3端子および第4端子に分配されて90°位相差で出力される構成からなる。第1端子は第1給電プローブに接続し、第2端子は第2給電プローブに接続している。
【0010】
この構成では、第3端子から入力された第1高周波信号と、第4端子から入力され、第1高周波信号に対して波長の1/4の位相遅延からなる第2高周波信号とが、相殺されることなく合成され、導波管の入出力ポートから出力される。
【0011】
また、この発明の高周波伝送線路では、90°ハイブリッド回路は、第1端子、第2端子、第3端子、第4端子が、それぞれ高周波信号の波長に対して1/4の奇数倍からなる電気長の線路で接続された構造からなる。
【0012】
また、この発明の高周波伝送線路では、90°ハイブリッド回路は、分布定数プレーナ回路によって形成されている。
【0013】
また、この発明の高周波伝送線路では、分布定数プレーナ回路は、マイクロストリップラインによって構成されている。
【0014】
これらの構成では、90°ハイブリッド回路を分布定数回路で実現する具体的な構造例を示している。特に、マイクロストリップラインには、高周波伝送線路を薄型且つ小型に形成できる。
【0015】
また、この発明の高周波伝送線路では、90°ハイブリッド回路は、集中定数素子を用いた回路によって形成されている。
【0016】
この構成では、90°ハイブリッド回路を集中定数回路素子で実現する場合を示している。
【0017】
また、この発明の高周波送受波器は、上述のいずれかに記載の構成からなる高周波伝送線路と、第3端子に第1入出力部が接続するサーキュレータと、を備える。高周波送受波器は、サーキュレータの第2入出力部を第1送信信号入力端子とし、第4端子を第2送信信号入力端子とし、サーキュレータの第3入出力部を受信信号出力端子とする。サーキュレータは、第1送信信号入力端子からの信号を第3端子に出力し、第3端子からの信号を受信信号出力端子に出力する構造からなる。
【0018】
この構成では、第1送信信号入力端子と第2送信信号入力端子から入力された第1高周波信号(第1送信信号)と第2高周波信号(第2送信信号)とが合成されて導波管の入出力ポートから出力される。さらに、導波管の入出力ポートから入力された高周波信号(受信信号)は、第3端子のみから出力されるので、当該高周波信号(受信信号)は、サーキュレータを介して受信信号出力端子のみに出力される。これにより、上述の高周波伝送線路にサーキュレータを組み合わせただけで、送信信号を合成して出力し、受信信号を特定の出力端子へ出力する高周波送受波器を構成することができる。
【0019】
また、この発明の高周波送受波器では、サーキュレータの第3入出力部と受信信号出力端子との間にリミッタ回路を備えている。この構成では、サーキュレータから受信信号出力端子側に大電力の信号が入力されても、リミッタ回路によって制限され、受信信号出力端子から大電力の信号が出力されない。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、他の伝送線路と導波管とのモード変換を行いながら、同時に、他の伝送線路から入力される位相の異なる複数の高周波信号を合成して導波管から出力できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態に係る高周波伝送線路について、図を参照して説明する。
図1は本発明の実施形態に係る高周波伝送線路の回路ブロック図である。
【0023】
高周波伝送線路10は、導波管20、90°ハイブリッド線路30、第1給電プローブ41、第2給電プローブ42を備える。
【0024】
導波管20は矩形導波管であり、高周波信号の伝搬方向の一方端が入出力ポートPort20であり、高周波信号の伝搬方向の他方端が短絡終端されている。導波管20の開口断面の幅および高さは、導波管20を伝搬する高周波信号の周波数(波長λg)に基づいて決定されている。
【0025】
90°ハイブリッド線路30は、第1端子Ph31、第2端子Ph32、第3端子Ph33、第4端子Ph34を備え、これらの端子が方形の角部となる形状で形成されている。第1端子Ph31と第2端子Ph32は、高周波信号の波長λh(形成される線路における波長)の略1/4の電気長で接続されている。第2端子Ph32と第4端子Ph34は、高周波信号の波長λh(形成される線路における波長)の略1/4の電気長で接続されている。第4端子Ph34と第3端子Ph33は、90°ハイブリッド線路30を伝搬する高周波信号の波長λh(形成される線路における波長)の略1/4の電気長で接続されている。第3端子Ph33と第1端子Ph31は、高周波信号の波長λh(形成される線路における波長)の略1/4の電気長で接続されている。なお、ここで言う、波長λhの略1/4の電気長とは、高周波信号の波長λhの1/4の位相と実使用上で同等と見なせる位相になり得る範囲の電気長を意味する。なお、各端子間の電気長は、λh/4の奇数倍であってもよい。
【0026】
第3端子Ph33は入出力ポートPort30に接続し、第4端子Ph34は入出力ポートPort40に接続している。これらの接続距離は同じである。
【0027】
第1給電プローブ41の一方端は、90°ハイブリッド線路30の第1端子Ph31に接続されており、第1給電プローブ41の他方端は、導波管20の管内に挿入されている。
【0028】
第2給電プローブ42の一方端は、90°ハイブリッド線路30の第2端子Ph32に接続されており、第2給電プローブ42の他方端は、導波管20の管内に挿入されている。
【0029】
第1給電プローブ41と第2給電プローブ42は、導波管20内において、導波管20の伸長する方向(導波管20の長さ方向及び幅方向に直交する方向であり高周波信号の伝搬方向)に沿って導波管20を伝搬する高周波信号の波長λgの略1/4の電気長の間隔で配置されている。なお、第1給電プローブ41と第2給電プローブ42との間隔の電気長は、λh/4の奇数倍であってもよい。
【0030】
第1給電プローブ41は、導波管20の短絡終端から所定長Lの位置に配置されている。所定長Lは、高周波伝送線路の仕様に応じて適宜設定すればよい。
【0031】
第2給電プローブ42は、第1給電プローブ41に対して、入出力ポートPort20側、言い換えれば、第1給電プローブ41を基準にして短絡終端と反対側に配置されている。
【0032】
次に、本実施形態に係る高周波伝送線路10の動作原理を説明する。
【0033】
(第1動作態様)
図2は本発明の実施形態に係る高周波伝送線路の第1動作態様を説明するための図である。第1動作態様では、入出力ポートPort30から第1高周波信号RF1が入力され、入出力ポートPort40から第2高周波信号RF2が入力される。第2高周波信号RF2の位相は、第1高周波信号RF1の位相よりも90°遅れている。
【0034】
すなわち、
(θ(RF2)=θ(RF1)−90°) −(式1)
の位相関係が成り立つ。
【0035】
また、第1高周波信号RF1と第2高周波信号RF2は周波数が同じであり、電力レベルも同じである。
【0036】
第1高周波信号RF1は、90°ハイブリッド線路30の第3端子Ph33で、第1端子Ph31方向成分と第4端子Ph34方向成分とに分配される。この際、分配比は同じである。
【0037】
第2高周波信号RF2は、90°ハイブリッド線路30の第4端子Ph34で、第3端子Ph33方向成分と第2端子Ph32方向成分とに分配される。この際、分配比は同じである。
【0038】
第1高周波信号RF1は、第3端子Ph33で分配され、第1端子Ph31と第2端子Ph32に伝搬される。
【0039】
第3端子Ph33と第1端子Ph31との間に配置した伝送線路の電気長はλh/4であるので、第1端子Ph31での第1高周波信号RF1の位相θ
Ph31(RF1)は、第3端子Ph33での第1高周波信号RF1の位相θ
Ph33(RF1)よりも90°進んでいる。
【0040】
すなわち、
θ
Ph31(RF1)=θ
Ph33(RF1)+90° −(式2)
の位相関係が成り立つ。
【0041】
第3端子Ph33と第2端子Ph32との間に配置した伝送線路の電気長は2×λh/4であるので、第2端子Ph32での第1高周波信号RF1の位相θ
Ph32(RF1)は、第3端子Ph33での第1高周波信号RF1の位相θ
Ph33(RF1)よりも180°進んでいる。
【0042】
すなわち、
θ
Ph32(RF1)=θ
Ph33(RF1)+180° −(式3)
の位相関係が成り立つ。
【0043】
第2高周波信号RF2は、第4端子Ph34で分配され、第2端子Ph32と第1端子Ph31に伝搬される。
【0044】
第4端子Ph34と第2端子Ph32との間に配置した伝送線路の電気長はλh/4であるので、第2端子Ph32での第2高周波信号RF2の位相θ
Ph32(RF2)は、第4端子Ph34での第2高周波信号RF2の位相θ
Ph34(RF2)よりも90°進んでいる。
【0045】
すなわち、
θ
Ph32(RF2)=θ
Ph34(RF2)+90° −(式4)
の位相関係が成り立つ。したがって、(式1)から、
θ
Ph32(RF2)=θ
Ph33(RF1) −(式5)
となり、(式3)と(式5)から、
θ
Ph32(RF2)=θ
Ph32(RF1)−180° −(式6)
となる。
【0046】
このように、第2端子Ph32では、第1高周波信号RF1と第2高周波信号RF2とが逆位相になり打ち消し合う。したがって、第2給電プローブ42には、高周波信号は出力されない。
【0047】
第4端子Ph34と第1端子Ph31との間に配置した伝送線路の電気長は2×λh/4であるので、第1端子Ph31での第2高周波信号RF2の位相θ
Ph31(RF2)は、第4端子Ph34での第2高周波信号RF2の位相θ
Ph34(RF2)よりも180°進んでいる。
【0048】
すなわち、
θ
Ph31(RF2)=θ
Ph34(RF2)+180° −(式7)
の位相関係が成り立つ。したがって、(式1)から、
θ
Ph31(RF2)=θ
Ph33(RF1)+90° −(式8)
となり、(式2)と(式8)から、
θ
Ph31(RF2)=θ
Ph31(RF1) −(式9)
となる。
【0049】
このように、第1端子Ph31では、第1高周波信号RF1と第2高周波信号RF2とが同位相になり強め合うように合成される。したがって、合成された高周波信号(合成高周波信号)は、第1給電プローブ41に出力される。
【0050】
第1給電プローブ41に出力された合成高周波信号は、導波管20に給電され、導波管20を伝搬して、入出力ポートPort20から出力される。
【0051】
このように、本実施形態の構成を用いることで、90°ハイブリッド線路30側の入出力ポートPort30,Port40から位相差が90°の第1、第2高周波信号RF1,RF2を入力することで、これらの合成高周波信号を、導波管20の入出力ポートPort20から出力することができる。これにより、第1、第2高周波信号RF1,RF2の合成と、90°ハイブリッド線路30が構成される伝送線路と導波管20との間のモード変換とを、同時に行うことができる。そして、このような合成およびモード変換機能付きの高周波線路を小型に形成することができる。
【0052】
(第2動作態様)
図3は本発明の実施形態に係る高周波伝送線路の第2動作態様を説明するための図である。第2動作態様では、入出力ポートPort20から第3高周波信号RF3が入力される。
【0053】
導波管20を伝搬した高周波信号RF3は、第2給電プローブ42を介して90°ハイブリッド線路30の第2端子Ph32に出力され、第1給電プローブ41を介して90°ハイブリッド線路30の第1端子Ph31に出力される。この際、第1、第2給電プローブ41,42の導波管20に対する結合度を調整することで、第2端子Ph32に入力される高周波信号の電力と、第1端子Ph31に入力される高周波信号の電力とを同じにする。
【0054】
第1給電プローブ41と第2給電プローブ42との間隔が略λg/4であるので、第1端子Ph31に入力される高周波信号の位相は、第2端子Ph32に入力される高周波信号の位相よりも略90°進んでいる。
【0055】
第3端子Ph33では、第1端子Ph31に入力される高周波信号の位相はさらに90°進んでいる。ここで、導波管20のλg/4でシフトする位相量は、90°ハイブリッド線路30のλh/4でシフトする位相量は同じである。したがって、第1端子Ph31に入力される高周波信号の位相は、導波管20内の第2給電プローブ42の位置から90°ハイブリッド線路30の第3端子Ph33までに180°進む。
【0056】
また、第3端子Ph33では、第2端子Ph32からの電気長がλh/2であるので、第2端子Ph32に入力される高周波信号の位相は、180°進む。
【0057】
これにより、90°ハイブリッド線路30の第3端子Ph33では、第1端子Ph31に入力される高周波信号の位相と、第2端子Ph32に入力される高周波信号の位相とが同位相になる。したがって、第1端子Ph31に入力される高周波信号と第2端子Ph32に入力される高周波信号は強め合うように合成される関係になり、合成された高周波信号が第3端子Ph33から、入出力ポートPort30に流れる。
【0058】
一方、第4端子Ph34では、第1端子Ph31に入力される高周波信号の位相はさらに90°進む。したがって、第1端子Ph31に入力される高周波信号の位相は、導波管20内の第2給電プローブ42の位置から90°ハイブリッド線路30の第4端子Ph34までに270°進む。
【0059】
また、第4端子Ph34では、第2端子Ph32からの電気長がλh/4であるので、第2端子Ph32に入力される高周波信号の位相は90°進む。
【0060】
これにより、90°ハイブリッド線路30の第4端子Ph34では、第1端子Ph31に入力される高周波信号の位相と、第2端子Ph32に入力される高周波信号の位相とが逆位相になる。したがって、第1端子Ph31に入力される高周波信号と第2端子Ph32に入力される高周波信号は相殺される関係になり、第4端子Ph34からは出力されない。
【0061】
このように、本実施形態の構成を用いることで、導波管20側の入出力ポートPort20から第3高周波信号RF32を入力すると、90°ハイブリッド線路30の第3端子Ph33のみから出力することができる。
【0062】
したがって、本実施形態の構成を用いることで、導波管20と異なる伝送線路側の入出力ポート群から入力した複数の高周波信号を合成して、導波管20側の入出力ポートから出力し、導波管20側の入出力ポートから入力した高周波信号を、導波管20と異なる伝送線路側の特定の入出力ポートから出力することができる。そして、このような機能を有する高周波伝送線路を小型に形成することができる。
【0063】
このような高周波伝送線路10は、
図4に示すような構造で実現される。
図4は本発明の実施形態に係る高周波伝送線路の外観斜視図である。
【0064】
導波管20は、断面が矩形の管状導体200からなる。管状導体200の一方のH面には、2つの貫通穴(図示せず)が形成されている。2つの貫通穴は、管状導体200の伸長する方向に沿って、波長λgの略1/4の間隔で形成されている。管状導体200の伸長方向の一方端には、導体壁201が形成されている。導体壁201は、開口を全て塞ぐように形成されており、管状導体200に導通している。これにより、この導体壁201の位置が導波管20の短絡終端となる。そして、導体壁201側の貫通穴は、管状導体200の伸長方向に沿って、導体壁201から所定長Lだけ離間した位置に形成されている。この所定長Lは、高周波伝送線路の仕様に応じて適宜設定すればよい。
【0065】
第1給電プローブ41および第2給電プローブ42は、棒状導体であり、それぞれが上述の貫通穴を挿通するように、配置されている。この際、第1給電プローブ41が導体壁201側に配置される。
【0066】
90°ハイブリッド線路30は、マイクロストリップ線路の態様からなり、誘電体基板300を備える。誘電体基板300は、管状導体200の貫通穴が形成される面に配置されている。この際、誘電体基板300は、平板面が管状導体200の外面に当接するように配置される。誘電体基板300の管状導体200に当接する側の面には、グランド導体340が略全面に形成されている。
【0067】
誘電体基板300のグランド導体340と反対側の面には、マイクロストリップライン311,312,313,314が形成されている。マイクロストリップライン311,313は、管状導体200の伸長する方向に長い形状である。マイクロストリップライン312,314は、マイクロストリップライン311,313の伸長する方向に直交する方向に長い形状である。マイクロストリップライン311の長さ方向の一方端は、マイクロストリップライン314の長さ方向の他方端に接続し、マイクロストリップライン311の長さ方向の他方端は、マイクロストリップライン312の長さ方向の一方端に接続する。マイクロストリップライン312の長さ方向の他方端はマイクロストリップライン313の長さ方向の一方端に接続する。マイクロストリップライン313の長さ方向の他方端はマイクロストリップライン314の長さ方向の一方端に接続する。
【0068】
マイクロストリップライン311,312,313,314の幅は、誘電体基板300の誘電率および厚みを加味した上で、伝搬する高周波信号の特性インピーダンスに基づいて決定されている。さらに、マイクロストリップライン311,312,313,314の長さは、誘電体基板300の誘電率および厚みを加味した上で、伝搬する高周波信号の波長λhの略1/4に設定されている。
【0069】
マイクロストリップライン311,314の接続点は、第1端子Ph31に相当し、マイクロストリップライン321を介して第1給電プローブ41に接続されている。マイクロストリップライン311,312の接続点は、第2端子Ph32に相当し、マイクロストリップライン322を介して第2給電プローブ42に接続されている。マイクロストリップライン321,322の長さは同じであることが好ましい。なお、第1、第2給電プローブ41,42の挿入位置を調整することで、マイクロストリップライン321,322の長さは同じでなくてもよい。
【0070】
マイクロストリップライン312,313の接続点は、第4端子Ph34に相当し、マイクロストリップライン332を介して、入出力ポートPort40に接続されている。マイクロストリップライン313,314の接続点は、第3端子Ph33に相当し、マイクロストリップライン331を介して、入出力ポートPort30に接続されている。マイクロストリップライン331,332の長さは、同じであることが好ましい。また、マイクロストリップライン311,312,313,314と比較して極短いとよく、この場合、高周波伝送線路をできる限り小さくすることができる。
【0071】
このような構成とすることで、薄型の90°ハイブリッド線路30を実現することができる。そして、この薄型の90°ハイブリッド線路30を、導波管20に装着することで、高周波伝送線路10を小型に形成することができる。
【0072】
次に、上述構成からなる高周波伝送線路を用いた高周波送受波器について説明する。
図5は本発明の実施形態に係る高周波送受波器の回路ブロック図である。
【0073】
高周波送受波器1は、上述の構成からなる高周波伝送線路10、サーキュレータ11、リミッタ12、および遅延回路13を備える。高周波伝送線路10の入出力ポートPort30には、サーキュレータ11の第1入出力部が接続されている。サーキュレータ11の第2入出力部は、入力ポートPort31に接続されている。サーキュレータ11の第3入出力部は、リミッタ12を介して、出力ポートPort50に接続されている。
【0074】
サーキュレータ11は、第2入出力部から入力された高周波信号を第1入出力部に出力し、第1入出力部に入力された高周波信号を第3入出力部に出力し、第3入出力部に入力された高周波信号を第2入出力部に出力する構造からなる。
【0075】
リミッタ12は、閾値電力以上の大電力の高周波信号が入力されると、当該高周波信号を遮断する。なお、リミッタ12は省略することも可能であるが、当該リミッタ12を備えることにより、出力ポートPort50に大電力の高周波信号が出力されることを防止できる。これにより、出力ポートPort50に接続される後段回路の破壊を防止できる。
【0076】
高周波伝送線路10の入出力ポートPort40には、ディレイ回路13を介して入力ポートPort41が接続されている。ディレイ回路13は、サーキュレータ11の第2入出力部から第1入出力部への伝搬遅延と同じ遅延量を高周波信号に与える回路である。
【0077】
このような構成の高周波送受波器1は、送信時および受信時に次に示すように動作する。
【0078】
(送信時)
送信時には、第1送信信号を入力ポートPort31から入力し、第2送信信号を入力ポートPort41から入力する。第1送信信号と第2送信信号は、周波数および電力が同じである。第2送信信号は、第1送信信号が入力ポートPort31に入力されるタイミングの位相よりも90°遅れた位相で、入力ポートPort41に入力される。
【0079】
第1送信信号は、サーキュレータ11を介して、高周波伝送線路10の入出力ポートPort30に入力される。第2送信信号は、ディレイ回路13を介して、高周波伝送線路10の入出力ポートPort40に入力される。入出力ポートPor40での第2送信信号の位相は、入出力ポートPort30での第1送信信号の位相よりも90°遅れている。
【0080】
高周波伝送線路10が上述の構成であるので、第1送信信号と第2送信信号とは高周波伝送線路10で合成され、合成送信信号は、導波管20の入出力ポートPort20から出力される。また、第2送信信号は、入出力ポートPort30からサーキュレータ11へは出力されない。
【0081】
(受信時)
受信時には、受信信号を入出力ポート20から入力する。高周波伝送線路10が上述の構成であるので、受信信号は、高周波伝送線路10を伝搬して、入出力ポートPort30から出力される。一方、高周波伝送線路10が上述の構成であるので、受信信号は、入出力ポートPort40からは出力されない。
【0082】
入出力ポートPort30から出力された受信信号は、サーキュレータ11およびリミッタ12を介して、出力ポートPort50へ出力される。
【0083】
このように、本実施形態の構成を用いることで、送信信号を合成して導波管から出力し、導波管から入力した受信信号を特定の出力端子へ出力する高周波送受波器を構成することができる。この際、上述の高周波伝送線路10を用いることで、高周波送受波器も小型化することができる。
【0084】
さらに、サーキュレータ11、リミッタ12を面実装部品とし、ディレイ回路13をマイクロストリップラインで形成し、90°ハイブリッド線路30と同様に、導波管20に装着された誘電体基板に設けることで、高周波送受波器を、さらに小型化することができる。
【0085】
また、第1送信信号Tx1および第2送信信号Tx2が並列合成方式の電力増幅器の各出力端子に接続される場合、ディレイ回路13は、並列合成方式の電力増幅器における終段電力分配回路と共用することができる。これにより、更なる小型化が可能になる。
【0086】
なお、上述の高周波送受信器において、第2給電プローブ42を省略して90°ハイブリッド線路30の第2端子Ph32を整合終端する構成を用いることも可能である。この場合、サーキュレータ11は、第1給電プローブ41と90°ハイブリッド線路30の第1端子Ph31との間に接続する。しかしながら、この構成では、第1、第2送信信号Tx1,Tx2が大電力の場合、整合終端器が大型で高価になり、高周波送受信器が大型化しコストアップすることになる。しかしながら、上述の本実施形態の構成を用いることで、整合終端器を省略でき、高周波送受信器の大型化やコストアップを防止できる。
【0087】
なお、上述の実施形態では、マイクロストリップ線路と導波管とのモード変換器を兼用した高周波伝送線路を例に説明したが、マイクロストリップ線路以外で導波管と異なる高周波伝送線路に関しても、上述の構成を適用することができる。
【0088】
また、上述の実施形態では、分布定数線路によって90°ハイブリッド線路を形成する例を示したが、集中定数素子による90°ハイブリッド回路によっても、上述の作用効果を得ることができる。