特許第6118577号(P6118577)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6118577
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20170410BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20170410BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   H01L21/304 648F
   H01L21/304 643A
   H01L21/306 J
   H01L21/30 572B
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-26282(P2013-26282)
(22)【出願日】2013年2月14日
(65)【公開番号】特開2014-154860(P2014-154860A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2015年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】石井 淳一
(72)【発明者】
【氏名】岡本 浩一
【審査官】 ▲高▼須 甲斐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−258367(JP,A)
【文献】 特開2010−117403(JP,A)
【文献】 特開2002−035704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/027
H01L 21/306
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液を吐出して基板を処理する基板処理装置であって、
前記基板に向けて処理液を吐出する吐出部と、
一方端が、パーティクルを除去する第1フィルターを介して、前記処理液を供給する処理液供給部に接続されており、他方端が前記吐出部に接続されている供給配管と、
前記供給配管における、前記第1フィルターと前記吐出部との間の位置に介挿されており、前記第1フィルターを通過することによって前記処理液中に発生した気泡を捕捉する気泡捕捉部と、
を備え、
前記気泡捕捉部による圧力損失が、前記第1フィルターによる圧力損失と略同じか、それよりも小さ
前記気泡捕捉部が、第2フィルターを有しており、
前記第2フィルターのポア径が、前記第1フィルターのポア径の2倍よりも大きい、基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置において、
前記供給配管における、前記気泡捕捉部から前記吐出部までの距離が、前記供給配管における、前記処理液を圧送する圧力源から前記気泡捕捉部までの距離よりも短い、基板処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項に記載の基板処理装置において、
前記第1フィルターのポア径が、10nm〜50nmである、基板処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の基板処理装置において、
前記第1フィルター及び前記気泡補足部各々の圧力損失が20kPa以下である、基板処理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の基板処理装置において、
前記気体捕捉部は、気泡を外部に放出する脱気機構を有する、基板処理装置。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の基板処理装置において、
前記供給配管の流路を開閉することによって、前記処理液供給部から前記吐出部への前記処理液の供給を制御する供給バルブ、
をさらに備え、
前記供給バルブは、前記供給配管における、前記気体捕捉部よりも前記処理液供給部に近い側に設けられている、基板処理装置。
【請求項7】
請求項に記載の基板処理装置において、
前記供給配管における、前記気泡捕捉部から前記吐出部までの間には、前記供給配管の前記流路を開閉するバルブが設けられていない、基板処理装置。
【請求項8】
請求項6または請求項に記載の基板処理装置において、
前記第1フィルターは、前記供給配管における、前記供給バルブと前記気泡捕捉部との間に介挿されている、基板処理装置。
【請求項9】
請求項に記載の基板処理装置において、
前記第2フィルターのポア径が、前記第1フィルターのポア径の5倍以上である、基板処理装置。
【請求項10】
請求項に記載の基板処理装置において、
前記第2フィルターのポア径が、50nm〜200nmである、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板を処理する基板処理装置に関し、特に、基板に付着するパーティクルの量を低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板に付着するパーティクルを軽減するため、処理液のパーティクルを除去することを目的として、捕捉するパーティクルサイズに合わせたポア径を有するフィルターが、配管に介挿される場合がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−66351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、より細かいパーティクルを除去するため、ポア径の小さいフィルターを設けたり、あるいは、複数のフィルターを設けたりすると、配管内における圧力損失が大きくなってしまう。このため、高圧による送液を可能とするため、高性能のポンプを用いることが考えられるが、ポンプの巨大化、ポンプが消費する電力などの駆動エネルギーの増大、および、コストの増大など、各種の問題が生じる。また、圧力損失を小さくするため、フィルターを大きくすることも考えられるが、フィルターの取り付け位置に制約が生じるという問題が発生する。
【0005】
また、圧力損失が大きくなると、フィルターの下流側の配管内圧力が急激に低下することで、処理液中に気泡101が発生しやすくなる(図10参照)。図10に示されるように、発生した気泡101には、その界面に多数のパーティクル103が付着して集合する場合がある。このように、多数のパーティクル103が付着した気泡101が、基板109の表面に接触することで、基板109の表面に付着するパーティクル量が増大する、という問題も生じる。
【0006】
このため、比較的簡単な構成で、基板にパーティクルが付着することを抑制する技術が求められている。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、簡単な構成で、基板に付着するパーティクルの量を低減する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、第1の態様は、処理液を吐出して基板を処理する基板処理装置であって、前記基板に向けて処理液を吐出する吐出部と、一方端が、パーティクルを除去する第1フィルターを介して、前記処理液を供給する処理液供給部に接続されており、他方端が前記吐出部に接続されている供給配管と、前記供給配管における、前記第1フィルターと前記吐出部との間の位置に介挿されており、前記第1フィルターを通過することによって前記処理液中に発生した気泡を捕捉する気泡捕捉部とを備え、前記気泡捕捉部による圧力損失が、前記第1フィルターによる圧力損失と略同じか、それよりも小さ前記気泡捕捉部が、第2フィルターを有しており、前記第2フィルターのポア径が、前記第1フィルターのポア径の2倍よりも大きい
【0011】
また、第の態様は、第1態様に係る基板処理装置において、前記供給配管における、前記気泡捕捉部から前記吐出部までの距離が、前記供給配管における、前記処理液を圧送する圧力源から前記気泡捕捉部までの距離よりも短い。
また、第の態様は、第1または態様に係る基板処理装置において、前記第1フィルターのポア径が、10nm〜50nmである。
また、第の態様は、第1から第までのいずれか1態様に係る基板処理装置において、前記第1フィルター及び前記気泡補足部各々の圧力損失が20kPa以下である。
また、第の態様は、第1から第までのいずれか1態様に係る基板処理装置において、前記気体捕捉部は、気泡を外部に放出する脱気機構を有する。
また、第の態様は、第1から第までのいずれか1態様に係る基板処理装置において、前記供給配管の流路を開閉することによって、前記処理液供給部から前記吐出部への前記処理液の供給を制御する供給バルブ、をさらに備え、前記供給バルブは、前記供給配管における、前記気体捕捉部よりも前記処理液供給部に近い側に設けられている。
また、第の態様は、第6の態様に係る基板処理装置において、前記供給配管における、前記気泡捕捉部から前記吐出部までの間には、前記供給配管の前記流路を開閉するバルブが設けられていない。
また、第の態様は、第または第の態様に係る基板処理装置において、前記第1フィルターは、前記供給配管における、前記供給バルブと前記気泡捕捉部との間に介挿されている。
また、第の態様は、第の態様に係る基板処理装置において、前記第2フィルターのポア径が、前記第1フィルターのポア径の5倍以上である。
また、第10の態様は、第態様の基板処理装置において、前記第2フィルターのポア径が、50nm〜200nmである。
【発明の効果】
【0012】
第1の態様に係る基板処理装置によると、第1フィルターを通過した処理液中に発生した気泡を、気泡捕捉部によって補足することができる。これにより、パーティクルが付着した気泡が、基板に付着することを低減することができる。また、気泡捕捉部の圧力損失を、第1フィルターの圧力損失と略同じか、それよりも小さくすることで、第2フィルターを通過した処理中に気泡が発生することを抑えることができる。これにより、基板に付着するパーティクル量を低減することができる。
【0013】
第2の態様によると、第2フィルターのポア径を、第1フィルターのポア径よりも大きくすることで、第2フィルターの圧力損失を第1フィルターの圧力損失よりも小さくすることができる。
【0014】
第3の態様に係る基板処理装置によると、中空糸膜によって気泡を捕捉することができるとともに、気泡捕捉部による圧力損失を小さくすることができる。このため、気泡捕捉部を通過した処理液中に気泡が発生することを抑えることができる。したがって、基板に付着するパーティクル量を低減できる。
【0015】
第4の態様に係る基板処理装置によると、気泡捕捉部を吐出口に近づけることで、気泡捕捉部から吐出口まで流れる処理液中に、気泡が発生することを抑えることができる。これにより、基板に付着するパーティクル量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係る基板処理装置および処理液供給部の概略を示す全体図である。
図2】第1実施形態に係る気泡捕捉部を示す側面図である。
図3】供給配管の各位置における圧力を示すグラフである。
図4】基板処理装置において処理された基板に付着するパーティクル量を示すグラフである。
図5】第2フィルターの圧力損失と、基板に付着するパーティクル量の相関関係を示すグラフである。
図6】第2フィルターのポア径と、基板に付着するパーティクル量の相関関係を示すグラフである。
図7】第2実施形態に係る基板処理装置および処理液供給部の概略を示す全体図である。
図8】供給配管の各位置における圧力を示すグラフである。
図9】第3実施形態に係る気泡捕捉部F2aを示す概略断面図である。
図10】パーティクルが付着した気泡が基板に付着する様子を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。なお、添付の図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数が誇張または簡略化して図示されている場合がある。
【0018】
<1. 第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る基板処理装置10および処理液供給部20の概略を示す全体図である。基板処理装置10は、処理液供給部20から供給を受けた処理液を、回転ステージ13にて保持した基板9に供給することによって、基板9に処理を施す。回転ステージ13は、不図示のモータを内蔵している。基板処理装置10は、回転ステージ13によって基板9を回転させながら、ノズル11(吐出部)から処理液を基板9の中央付近に供給することで、処理液を基板9の全体に拡げる。これにより、処理液による基板9の処理が施される。基板処理装置10は、例えば、エッチング処理や洗浄処理などを基板9に施す装置として構成される。なお、基板処理装置10において、ノズル11および回転ステージ13は、チャンバー15の内部にて、基板処理を行うように構成されている。
【0019】
具体的に、基板処理装置10において、基板9の表面からパーティクルを除去する処理を行う場合、処理液としてSC1(ammonia-hydrogen peroxide mixture:アンモニア過酸化水素水)などが処理液供給部20から基板処理装置10に供給される。また、基板処理装置10において、基板9の表面から酸化膜などをエッチングする処理を行うときは、フッ酸またはBHF(Bufferd HF)などが供給される。さらに、基板処理装置10において、基板9の表面に形成されたレジスト膜を剥離する処理や、レジスト剥離後の基板9の表面にポリマーとなって残留しているレジスト残渣を除去する処理を行うときは、SPM(sulfuric acid/hydrogen peroxide mixture:硫酸過酸化水素水)またはSC1(ammonia-hydrogen peroxide mixture:アンモニア過酸化水素水)などのレジスト剥離液やポリマー除去液が供給される。そして、金属汚染物を除去する洗浄処理には、フッ酸、SC2(hydrochloric acid/hydrogen peroxide mixture:塩酸過酸化水素水)またはSPMなどが用いられる。また、リンス液として、IPA(イソプロピルアルコール)または脱イオン水(DIW)などが、処理液供給部20から基板処理装置10に供給されてもよい。
【0020】
タンク21とノズル11とは、供給配管30によって連通接続されている。つまり、供給配管30の一方端が、処理液供給部20のタンク21に接続されており、供給配管30の他方端が、ノズル11に接続されている。供給配管30は、例えば、ステンレスまたは樹脂などで形成されている。供給配管30の経路途中には、タンク21に近い側から順に、ポンプ31、第1フィルターF1、流量計33、供給バルブ35および気泡捕捉部F2が介挿されている。なお、供給配管30の経路上における、これらの要素の並びは、任意に変更できる。例えば、第1フィルターF1を流量計33と供給バルブ35との間に設けるなどの変形が可能である。ただし、気泡捕捉部F2は、第1フィルターF1とノズル11の間の位置に設けられる。
【0021】
ポンプ31は、タンク21に貯留されている処理液を、ノズル11に向けて圧送する圧力源を構成する。流量計33は、供給配管30を流れる処理液の流量を計測する。供給バルブ35は、供給配管30の流路を開閉することによって、ノズル11への処理液の供給を制御する。
【0022】
供給配管30は、その経路途中において分岐して、循環配管40に接続されている。循環配管40の基端側は、供給配管30における、流量計33と供給バルブ35との間の位置に接続されており、その先端側は、タンク21に接続されている。循環配管40には、循環バルブ41が介挿されている。
【0023】
循環バルブ41は、循環配管40の流路を開閉する。供給バルブ35が供給配管30を閉じた状態で、循環バルブ41が開放されることにより、供給配管30を流れる処理液が、循環配管40に流れ込み、タンク21へと帰還する。このように、循環配管40により、処理液を循環させることで、常に第1フィルターF1によって清浄度を維持することができる。また、場合によっては加熱や冷却を行う事により、タンク21内の処理液の温度を一定に維持することができる。供給バルブ35および循環バルブ41としては、一般的には、エアバルブを採用することが可能である。また、供給バルブ35および循環バルブ41は、電動のものでもよいし手動のものでもよい。
【0024】
第1フィルターF1は、主として、処理液中に含まれるパーティクルを除去することを目的として設けられている。第1フィルターF1のポア径は、特に限定されるものではないが、例えば10nm〜50nmのものを採用することが考えられる。
【0025】
図2は、第1実施形態に係る気泡捕捉部F2を示す側面図である。図2に示されるように、気泡捕捉部F2は、供給配管30を構成する第1配管部300と第2配管部302との接続部分に形成されている。第2配管部302は、第1配管部300に挿入されることにより連結されている。
【0026】
気泡捕捉部F2は、第2配管部302の基端部に取り付けられた第2フィルター51を備えている。第2フィルター51は、例えばポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))製などの疎水性の膜53を所定の間隔をあけて複数重ねた多層構造を有している。なお、膜53の素材は、処理液などの種類などに応じて適宜選択できるものである。膜53には、ポア径が例えば100nmの孔55が多数設けられている。ただし、第2フィルター51のポア径は、これに限定されるものではなく、より大きなポア径(例えば100μm)とされてもよい。
【0027】
気泡捕捉部F2の第2フィルター51は、そのポア径が、第1フィルターF1のポア径よりも大きくなるように構成されている。このように気泡捕捉部F2を構成する理由は、気泡捕捉部F2において捕捉する対象が、パーティクルではなく、気泡Ba1であるからである。つまり、図2に示されるように、処理液が第1フィルターF1を通過した後、気泡捕捉部F2に到達するまでの間に、様々な大きさの気泡Ba1が発生する。気泡Ba1は、第1フィルターF1による圧力損失(圧力差)や、供給配管30の屈曲などによる圧力損失、または、処理液の温度変化により、処理液中の溶存気体が溶けきれなくなった結果出現する。気泡捕捉部F2は、第2フィルター51によってそれらの気泡Ba1の通過を防止して捕捉するものである(図2に示される拡大図参照)。第2フィルター51を通過できなかった気泡Ba1は、処理液中を上昇して溜まることにより、第1配管部300の上端部において気相を形成する。
【0028】
図2に示されるように、気泡捕捉部F2は、脱気機構60を備えている。脱気機構60は、第1配管部300における第2フィルター51が収容された収容部分の上端部にその基端部が接続されている脱気配管61と、該脱気配管61の途中に介挿されている脱気バルブ63とを備えている。脱気バルブ63が開放されることにより、第1配管部300に形成された気相が、脱気配管61に連通される。これにより、第1配管部300に溜まった気体を、外部に放出することができる。
【0029】
このような脱気機構60は、第1フィルターF1にも備えられていてもよい。第1フィルターF1においても、タンク21、供給配管30(タンク21から第1フィルターF1まで)、循環配管40などで発生した気泡Ba1が捕捉される。このため、これら捕捉された気泡Ba1を排出する脱気機構60が、第1フィルターF1に設けられてもよい。
【0030】
また、気泡捕捉部F2の第2フィルター51による圧力損失を、第1フィルターF1による圧力損失よりも小さくする別の理由は、気泡捕捉部F2における圧力損失をできるだけ小さくするためである。この点について、図3を参照しつつ説明する。
【0031】
図3は、供給配管30の各位置における圧力を示すグラフである。図3において、横軸は、供給配管30における位置を示しており、縦軸は、供給配管30の内部の圧力を示している。また、図3において、供給配管30における、ポンプ31が介挿されている位置を原点(0)とし、第1フィルターF1が設けられている位置をx1とし、気泡捕捉部F2が設けられている位置をx2とし、ノズル11が設けられている位置をx3とする。また、ポンプ31から第1フィルターF1までの区間を区間SAとし、第1フィルターF1から気泡捕捉部F2までの区間を区間SBとし、気泡捕捉部F2からノズル11までの区間を区間SCとする。
【0032】
図3において、実線で示されるグラフ71は、本実施形態に係る供給配管30の内部の圧力変化に対応するものであり、気泡捕捉部F2による圧力損失PL2が第1フィルターF1による圧力損失PL1よりも小さいときの供給配管30内部の圧力変化を示している。これに対して、破線で示されるグラフ73は、第1フィルターF1による圧力損失PL1よりも大きい圧力損失PL2aの気泡捕捉部(図示せず。)を採用したときの供給配管30内部の圧力変化を示している。
【0033】
グラフ71で示されるように、供給配管30内部の圧力は、ポンプ31の位置(原点)において、最も高くなっており、位置x1,x2における圧力損失PL1,PL2および区間SA,SB,SCでの圧力損失を受け、ノズル11の位置x3において、最も低くなっている。なお、理解を容易にするため、区間SA,SB,SCにおいては、その区間の長さに応じて、圧力損失が均一に起こるものとしている。
【0034】
グラフ73に示されるように、第1フィルターF1の圧力損失PL1よりも大きい圧力損失PL2aの気泡捕捉部を用いた場合、供給配管30における総圧力損失が大きくなる。このため、ポンプ31は、ノズル11から処理液を吐出するために、処理液に対してより大きな圧力を付加する必要がある。したがって、ポンプ31の能力を高める必要があり、ポンプ31が巨大化、高コスト化してしまうとともに、ポンプ31を駆動させるための駆動エネルギー(電力など)の消費量も大きくなってしまう。さらに、気泡捕捉部F2による圧力損失PL2aが大きくなると、気泡捕捉部F2からノズル11までの区間SCにおいて、処理液中に気泡Ba1が発生し易くなる。このため、基板9に付着するパーティクル量が増大する、という問題もある。したがって、グラフ71に示されるように、気泡捕捉部F2の圧力損失PL2をできるだけ小さくする方が、基板処理の点で有利となる。
【0035】
また、気泡捕捉部F2は、できるだけノズル11に近い位置に設けられていることが望ましい。このように気泡捕捉部F2を設ける理由は、気泡捕捉部F2からノズル11までの区間SCを短くすることで、この区間SCにおける気泡Ba1の発生量を少なくするためである。このため、区間SCの距離(=気泡捕捉部から吐出部までの距離)は、少なくとも、区間SAおよび区間SBの総距離(=圧力源から気泡捕捉部までの距離)よりも短くなるように設定される。
【0036】
なお、実際には処理液供給部20は基板処理装置10が設置される高さよりも低い位置(例えば別の階)に設置される場合が多い。そのような場合は区間SBにおいてより多くの圧力損失が発生するため、気泡Ba1の発生量も増える。このような場合においても、ノズル11から近い位置に気泡捕捉部F2を備えることにより、配管中で発生した気泡Ba1を効果的に捕捉することが可能となる。
【0037】
図4は、基板処理装置10において処理された基板9に付着するパーティクル量を示すグラフである。図4において、横軸は、基板9に付着したパーティクルのサイズを示しており、縦軸は、基板9に付着したパーティクルの相対的な量を示している。また、図4において、実線で示されるグラフ75は、供給配管30に気泡捕捉部F2を設けたときに基板9に付着するパーティクル量を示しており、二点鎖線で示されるグラフ77は、気泡捕捉部F2を設けなかったときに基板9に付着するパーティクル量を示している。
【0038】
図4に示されるグラフ77から明らかなように、気泡捕捉部F2を省略した場合、基板9には、直径100nm未満のサイズのパーティクルが多く付着している。これに対して、グラフ75から明らかなように、気泡捕捉部F2を設けることによって、直径100nm未満のサイズのパーティクルが、基板9に付着することが抑制されている。これらのことから、直径100nmを超えるパーティクルは、第1フィルターF1(ポア径10nm)によって、ほぼ捕捉することができるものの、捕捉しきれなかった直径100nm未満のパーティクルが、第1フィルターF1を通過した処理液中に発生する気泡Ba1によって、基板9に付着することが判る。
【0039】
従来の基板処理装置においては、処理液供給部から基板処理装置に送られてくる処理液中のパーティクルを、供給配管に介挿された複数のフィルターによって除去することが一般的であった。この場合、供給配管の上流側から下流側にかけて、フィルターのポア径が順に小さくなる(つまり、圧力損失が次第に大きくなる)ように、複数のフィルターが介挿される。しかしながら、複数のフィルターを設けたことによって、供給配管内の圧力損失が大きくなってしまい、処理液中に気泡Ba1が大量に発生し易くなっていた。図4に示されるグラフ77から明らかなように、処理液中の気泡Ba1が存在すると、気泡Ba1にパーティクルが集合し、その気泡Ba1が基板9に接触することで、基板9にパーティクルが付着することとなる。
【0040】
本実施形態では、この気泡Ba1を除去することを目的として、供給配管30における、第1フィルターF1とノズル11との間の位置に気泡捕捉部F2を設け、第1フィルターF1を通過した処理液に発生した気泡Ba1を、気泡捕捉部F2で捕捉する。これにより、グラフ75に示されるように、基板9に付着するパーティクル量を効果的に低減することができる。
【0041】
さらに、気泡捕捉部F2の備える第2フィルター51のポア径を、第1フィルターF1のポア径よりも大きくすることで、気泡捕捉部F2による圧力損失を、第1フィルターF1よりも小さくしている。このため、気泡捕捉部F2を通過した処理液中に、気泡Ba1が発生し難くなっているため、基板9に付着するパーティクル量を低減できる。このように、パーティクルを捕捉する第1フィルターF1の下流側に、第1フィルターF1よりもポア径が大きい(つまり、圧力損失が小さい)気泡捕捉部F2を設けることは、従来の技術思想とは発想の異なる技術思想であるといえる。
【0042】
図5は、第2フィルター51の圧力損失と、基板9に付着するパーティクル量の相関関係を示すグラフ79である。図5において、横軸は、圧力損失を示しており、縦軸は、パーティクルの相対的な量を示している。
【0043】
また、図6は、第2フィルター51のポア径と、基板9に付着するパーティクル量の相関関係を示すグラフ78である。図6において、横軸は、ポア径を示しており、縦軸は、パーティクルの相対的な量を示している。
【0044】
図5および図6に示されるグラフ78,79は、ポア径が互いに異なる4種類の第2フィルター51を用いたときの、パーティクル量の変動を示している。具体的には、ポア径20nm(53kPa)、50nm(20kPa)、100nm(12kPa)および200nm(9kPa)のものを用いている。なお、括弧内の数値は、それぞれの圧力損失を示している。また、図5および図6においては、直径が26nm以上のパーティクルを、測定対象としている。
【0045】
まず、第2フィルター51の圧力損失に着目すると、図5に示されるグラフ78から明らかなように、第2フィルター51の圧力損失が、第1フィルターF1の圧力損失(18kPa)よりも大きい53kPaである場合、パーティクル量は極めて多くなっている。しかしながら、第2フィルター51の圧力損失を、第1フィルターF1の圧力損失(18kPa)と略同じである20kPaか、それよりも小さい12kPaまたは9kPaとすることで、基板9に付着するパーティクル量が減少することが明らかである。
【0046】
なお、本願においては、第1フィルターF1の圧力損失と、気泡捕捉部F2(具体的には、第2フィルター51)の圧力損失の差が、気泡捕捉部F2の圧力損失の1/10以下である場合は、第1フィルターF1と気泡捕捉部F2の圧力損失が略同じであるものとする。
【0047】
第2フィルター51のポア径に着目すると、図6に示されるグラフ79から明らかなように、第1フィルターF1(ポア径10nm)に対して、第2フィルター51のポア径を大きくすることで、パーティクル量が減少することが明らかである。特に好ましいのは、第2フィルター51のポア径が、第1フィルターF1のポア径(10nm)の2倍よりも大きい場合であり、より好ましくは5倍以上の場合である。
【0048】
<2. 第2実施形態>
上記実施形態では、第1フィルターF1が、基板処理装置10の外部に設けられているが、第1フィルターF1を設ける位置は、これに限定されるものではない。
【0049】
図7は、第2実施形態に係る基板処理装置10aおよび処理液供給部20の概略を示す全体図である。図7に示されるように、本実施形態では、タンク21とノズル11とを接続する供給配管30aで接続されている。この供給配管30aは、供給配管30とほぼ同様の構成を備えているが、第1フィルターF1が、基板処理装置10aの内部を通る供給配管30aの部分に介挿されている点で相違する。本実施形態に係る第1フィルターF1は、詳細には、供給バルブ35と気泡捕捉部F2との間の位置に介挿されており、第1実施形態の場合よりも、気泡捕捉部F2に近い位置に設けられている。
【0050】
図8は、供給配管30aの各位置における圧力を示すグラフである。図8において、横軸は、供給配管30aにおける位置を示しており、縦軸は、供給配管30aの内部の圧力を示している。また、図3において、供給配管30aにおける、第1フィルターF1が設けられている位置をx1aとする。また、供給配管30aにおける、ポンプ31から第1フィルターF1までの区間をSAaとし、第1フィルターF1から気泡捕捉部F2までの区間をSAbとする。
【0051】
図8において、実線で示されるグラフ71aは、第2実施形態に係る供給配管30aの内部の圧力変化に対応するものであり、気泡捕捉部F2aによる圧力損失PL2が第1フィルターF1による圧力損失PL1よりも小さい時の供給配管30a内部の圧力変化を示している。これに対して、破線で示されるグラフ73aは、第1フィルターF1による圧力損失PL1よりも大きい圧力損失PL2aの気泡捕捉部(図示せず。)を採用したときの供給配管30a内部の圧力変化を示している。
【0052】
グラフ71aで示されるように、第1フィルターF1を気泡捕捉部F2に近づけて設けたとしても、供給配管30a内部の圧力は、図3に示されるグラフ71と同様に変化する。すなわち、供給配管30a内部の圧力は、圧力源であるポンプ31の位置において、最も圧力が高くなっており、位置x1a,x2における圧力損失PL1,PL2aおよび区間SAa,SBaでの圧力損失を受けて、ノズル11の位置x3において、最も低くなっている。
【0053】
一方、グラフ73aに示されるように、第1フィルターF1の圧力損失PL1よりも大きい圧力損失PL2aの気泡捕捉部を用いた場合、総圧力損失が大きくなるため、ポンプ31は、処理液により大きな圧力を付加する必要がある。したがって、ポンプ31の巨大化、駆動エネルギーの増大、高コスト化などの問題が起こる。しかも、位置x2において急激な圧力損失PL2aが起こることで、気泡捕捉部を通過した処理液に気泡Ba1が発生し、基板9に付着するパーティクル量が増大する虞もある。したがって、第1フィルターF1を気泡捕捉部F2に近い位置に設けた場合であっても、グラフ71aに示されるように、気泡捕捉部F2の圧力損失PL2をできるだけ小さくする方が、基板処理の点で有利となる。
【0054】
<3. 第3実施形態>
上記実施形態では、気泡捕捉部F2は、図2に示されるように、第2フィルター51および脱気機構60とで構成されている。しかしながら、気泡捕捉部F2の構成はこのようなものに限定されない。
【0055】
図9は、第3実施形態に係る気泡捕捉部F2aを示す概略断面図である。気泡捕捉部F2aは、図2に示される気泡捕捉部F2の代わりに設けられる。図9に示されるように、気泡捕捉部F2aは、タンク21とノズル11との間を接続する供給配管30bに介挿されている。気泡捕捉部F2aは、主に不図示のストロー状に形成された中空繊維を束ねた中空糸膜によって構成されており、中空糸膜の外側は、不図示の真空ポンプなどで減圧されている。このため、処理液が気泡捕捉部F2aを通過する際、処理液中の気泡Ba1(または溶存気体)が、中空糸膜を通じて外部に放出される。
【0056】
この気泡捕捉部F2aによっても、気泡捕捉部F2と同様に、処理液中の気泡Ba1を除去できる。また、気泡捕捉部F2aによる圧力損失は、フィルターを用いた気泡捕捉部F2による圧力損失に比べて、小さい。このため、気泡捕捉部F2aを通過した処理液中に気泡が発生することを軽減することができる。なお、気泡Ba1を確実に捕捉するという点では、気泡捕捉部F2aよりも第2フィルター51を備えた気泡捕捉部F2の方が、有効である。
【0057】
<4. 変形例>
以上、実施形態について説明してきたが、本発明は上記のようなものに限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0058】
例えば、上記実施形態では、図1または図7に示されるように、気泡捕捉部F2がチャンバー15の外側に設けられているが、チャンバー15の内部に設けられていてもよい。
【0059】
また、図1または図3に示される例では、パーティクル除去用の第1フィルターF1が1つだけ設けられているが、供給配管30,30aに複数のフィルターが介挿されていてもよい。また、パーティクル除去目的以外のフィルター(例えば、イオン除去フィルターなど)が、供給配管30,30aに介挿されていてもよい。
【0060】
また、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0061】
10,10a 基板処理装置
Ba1,101 気泡
103 パーティクル
9,109 基板
11 ノズル
13 回転ステージ
15 チャンバー
20 処理液供給部
21 タンク
30,30a,30b 供給配管
31 ポンプ
40 循環配管
51 第2フィルター
53 膜
55 孔
60 脱気機構
F1 第1フィルター
F2,F2a 気泡捕捉部
SA,SB,SC 区間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10