(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
軸体の外周面に配置された中央部、及び前記中央部の軸線方向における両端それぞれに半径方向に突出するように形成された環状鍔部を有する非発泡導電性弾性層と、前記非発泡導電性弾性層の外周面であって前記環状鍔部との間で前記中央部を被覆するように形成され、前記環状鍔部よりも大きな外径を有する発泡導電性弾性層とを備えた導電性ローラであって、
前記環状鍔部の外側半径と前記中央部の外側半径との寸法差Aの、発泡導電性弾性層の厚さCに対する割合が25%以上95%以下であり、前記中央部はその厚さBが0.5mm以上である導電性ローラ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明に係る導電性ローラは、画像形成装置に装着される導電性ローラ、例えば帯電ローラ、現像ローラ、現像剤供給ローラ及びクリーニングローラとして採用される導電性ローラであって、軸体の外周面に配置された非発泡導電性弾性層とこの非発泡導電性弾性層の外周面に配置された発泡導電性弾性層とを備えている。そして、非発泡導電性弾性層は軸線方向の両端部それぞれに半径方向に突出する環状鍔部を有しており、発泡導電性弾性層は環状鍔部よりも大きな外側半径を有し、環状鍔部の間に配置されている。この発明に係る導電性ローラは、前記構成を有していればよく、非発泡導電性弾性層及び発泡導電性弾性層に加えて接着剤層、表面層等を備えていてもよい。
【0019】
この発明に係る導電性ローラは、導電性、特に半導電性を有しており、この発明において「半導電性」とは後述する電気抵抗値(100V)が1×10
4〜1×10
9Ωの範囲内にある電気的特性をいう。
【0020】
この発明に係る導電性ローラの一例としての導電性ローラ1は、
図1に示されるように、軸体2と、軸体2の外周面に配置された非発泡導電性弾性層3と、非発泡導電性弾性層3の外周面に配置された発泡導電性弾性層4とを備えている。
【0021】
軸体2は、良好な導電特性を有していればよく、通常、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮等で構成された所謂「芯金」と称される軸体である。また、軸体2は、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等の絶縁性芯体にメッキを施して導電化した軸体であってもよく、さらには、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等に導電性付与剤としてカーボンブラック又は金属粉体等を配合した導電性樹脂で形成された軸体であってもよい。
【0022】
非発泡導電性弾性層3は、軸体2の外周面に形成され、軸線方向の両端部それぞれに半径方向に突出する環状鍔部5を有している。具体的には、非発泡導電性弾性層3は、軸線方向に延在し、一定の外側半径Bを有する円柱状の中央部6と、中央部6の端部それぞれに好ましくは一体的に連設され、中央部6の外周面から半径方向に突出する環状鍔部5とを有する、軸線を含む断面形状が幅広の略H状になっている。このように非発泡導電性弾性層3は両端部に環状鍔部5を有する管体状に形成されている。
【0023】
図2(a)に示されるように、環状鍔部5の中央部6に向かう内端面7と中央部6の外周面8とは、略垂直に接続していてもよい(換言すると、内端面7が中央部6の外周面8から直角に半径方向に立ち上がっていてもよい)が、ローラを対象物に圧接した際にかかる圧力を緩和、かつ均一化する点で、
図2(b)に示されるように、内端面7から外周面8に連続する曲面で環状鍔部5から中央部6へと連続的に形成されているのがよく、又は、図示しないが、内端面7と外周面8とが鋭角に交差する面を介して接続されているのがよい。このような曲面として、例えば非発泡導電性弾性層3の軸線を含む断面におけるR面等が挙げられる。また、鋭角に交差する面として、例えば、非発泡導電性弾性層3の軸線を含む断面において内端面7の外周面8側近傍及び外周面8の内端面7側近傍に配置された傾斜面例えばC面等が挙げられる。ここで、R面の曲率半径は特に限定されず、製造される導電性ローラの外側半径や、発泡導電性弾性層と発泡弾性層トータルの厚さにより任意に変更される。
【0024】
この発明に係る導電性ローラにおける非発泡導電性弾性層は、上記したように、また
図2(a)及び(b)に示されるだけではなく、本発明の課題を達成することができる限り、以下に示すような形態を取り得る。
図2(c)に示されるように、環状鍔部5の中央部6に向かう内端面7が、軸線を通る断面において緩傾斜の直線で示されような、円錐台周面であってもよく、また、
図2(d)に示されるように、環状鍔部5の内端面7と外端面9とに挟まれた外周面10が、内端面7から外端面9へと傾斜する円錐台周面に形成されていても良い。
【0025】
非発泡導電性弾性層3は、その内部及び外表面に開口する中空部を実質的に有していない弾性層、所謂「ソリッド弾性層」である。ここで、「実質的に有していない」とは発泡剤の発泡により形成される中空部及び中空充填剤の存在による中空部を積極的に有していなことであり、不可避的に存在する中空部までをも有していないことではない。
【0026】
非発泡導電性弾性層3は、発泡導電性弾性層4の発泡構造の破壊を大幅又は高度に低減又は防止できる点で、20〜70のJIS A硬度を有しているのが好ましく、30〜60のJIS A硬度を有しているのが特に好ましい。JIS A硬度はJIS K6253に準拠して複数箇所を測定し、測定値を算術平均した値とする。
【0027】
非発泡導電性弾性層3は、電気抵抗値(100V)が1×10
4〜1×10
8Ωであるのが好ましく、1×10
5〜5×10
7Ωであるのが特に好ましい。非発泡導電性弾性層3の電気抵抗値が前記範囲内にあると、導電性ローラ1の電気抵抗値を半導電性の領域に容易に調整できると共に、発泡導電性弾性層の抵抗値を1×10
4〜1×10
8Ωにすると、相乗効果で長時間通電時の発泡弾性層への影響を軽減できるという効果が得られる。非発泡導電性弾性層3の電気抵抗値は、温度20℃、相対湿度50%の環境下で、例えば電気抵抗計(商品名:ULTRA HIGH RESISTANCE METER R8340A、株式会社アドバンテスト製)を用いて測定できる。具体的には、下記にて詳細に説明する方法において、発泡導電性弾性層を被覆する前に、製造した非発泡導電性弾性層のみの状態で、環状鍔部径に研削したローラ全体を載せることのできる長さを有する金メッキ製板を電極とし、500gの荷重を導電性ローラ1における軸体2の両端それぞれに支持させた状態(合計荷重1000g)にして、軸体2と電極との間にDC100Vを印加し、1秒後の電気抵抗計の値を読み取り、この値を電気抵抗値とする方法に準拠して、測定する。非発泡導電性弾性層3の電気抵抗値はカーボンブラックの含有量等によって調整できる。
【0028】
非発泡導電性弾性層3は、用途に応じて任意の長さ及び厚さに調整されるが、以下に記載される寸法乃至形状を有しているのが好ましい。
【0029】
環状顎部5は、発泡導電性弾性層4の端部の変形を高度に防止できる点で、軸線方向の長さが1.0mm以上20mm以下であるのが好ましく、2.0mm以上10mm以下であるのが特に好ましい。また、その形状については、発泡導電弾性層側、およびその外側にかかわらず、垂直にこだわらず、傾斜していても良い。
【0030】
非発泡導電性弾性層3における一対の環状鍔部5の間に形成されている円柱状の中央部6の好ましい最小厚さBは、0.5mmである。中央部6の厚さBが0.5mm以上であると、端部の変形を高度に防止できると言った利点がある。
【0031】
非発泡導電性弾性層3における一対の環状鍔部5の外側半径と前記中央部6の外側半径との寸法差Aの、発泡導電性弾性層4の厚さCに対する割合が25%以上95%以下であるのが好ましい。寸法差Aが前記範囲にあることは、発泡導電性弾性層の外側半径が環状鍔部の外側半径よりも大きいことを示し、端部の変形を高度に防止できるといった利点がある。
【0032】
非発泡導電性弾性層3は、ゴムと導電性付与剤と所望により各種添加剤とを含有している。前記ゴムは、例えば、シリコーン若しくはシリコーン変性ゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム(エチレンプロピレンジエンゴムを含む。)、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等のゴムが挙げられるが、シリコーン若しくはシリコーン変性ゴム又はウレタンゴムであるのが好ましく、シリコーン若しくはシリコーン変性ゴムが、耐熱性及び帯電特性等に優れる点で、特に好ましい。これらのゴムは、液状型であってもミラブル型であってもよい。
【0033】
導電性付与剤は、導電性粉末、イオン導電性物質等が挙げられる。導電性粉末としては、具体的には、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラックの他に、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン類、また酸化チタン、酸化亜鉛、ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属等が挙げられる。イオン導電性物質としては、例えば、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸カルシウム、塩化リチウム等の無機イオン性導電物質等が挙げられる。
【0034】
導電性付与剤は1種単独で又は2種以上を組み合わせて、非発泡導電性弾性層3が前記範囲の電気抵抗値となるように適宜の含有量で添加される。例えば、導電性付与剤の含有量はゴム100質量部に対して2〜80質量部に範囲内に設定される。
【0035】
前記添加剤としてはゴム組成物又は樹脂組成物等に含有される各種の添加剤、例えば、鎖延長剤及び架橋剤等の助剤、触媒、分散剤、発泡剤、老化防止剤、酸化防止剤、充填材、顔料、着色剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、乳化剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、溶剤等が挙げられる。これらの各種添加剤は、通常用いられる添加剤であってもよく、用途に応じて特別に用いられる添加剤であってもよい。
【0036】
非発泡導電性弾性層3を形成するゴム組成物は、ゴムと導電性付与剤と所望により各種添加剤とを含有する組成物であればよく、例えば、発泡導電性弾性層4を形成する発泡ゴム組成物のうち発泡剤を除去したゴム組成物を好適に使用することができる。
【0037】
発泡導電性弾性層4を形成する発泡ゴム組成物のうち発泡剤を除去したゴム組成物として、導電性シリコーンゴム系組成物及び発泡導電性ウレタンゴム系組成物等が好ましい。
【0038】
前記導電性シリコーンゴム系組成物として、例えば付加反応型発泡導電性シリコーンゴム組成物が特に好ましい。
【0039】
付加反応型発泡導電性シリコーンゴム組成物は、ビニル基含有シリコーン生ゴムと、シリカ系充填材と、付加反応架橋剤と、付加反応触媒と、反応制御剤と、導電性付与剤とを含有し、所望により、さらに、有機過酸化物架橋剤と耐熱性向上剤(前記導電性付与剤として機能するものを除く。)と各種添加剤とを含有している。
【0040】
前記ビニル基含有シリコーン生ゴムは、例えば、ミラブル型シリコーンゴム、熱架橋シリコーンゴム(HTV:High Temperature Vulcanizing)等が挙げられる。これらのビニル基含有シリコーン生ゴムは、後工程で発泡剤及び付加反応架橋剤等をロールミル等で容易に混練りすることができるという特性を有し、一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。前記ビニル基含有シリコーン生ゴムとして、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「KE−77VBS」等が挙げられる。
【0041】
シリカ系充填材は、補強性を有する煙霧質シリカ又は沈降性シリカ等が挙げられ、一般式がRSi(OR’)
3で示されるシランカップリング剤で表面処理された、補強効果の高い表面処理シリカ系充填材が好ましい。ここで、前記一般式におけるRは、グリシジル基、ビニル基、アミノプロピル基、メタクリロキシ基、N−フェニルアミノプロピル基又はメルカプト基等であり、前記一般式におけるR’はメチル基又はエチル基である。前記一般式で示されるシランカップリング剤は、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「KBM1003」及び「KBE402」、並びに、東新化成株式会社製の商品名「セライトスーパーフロス」等として、容易に入手することができる。このようなシランカップリング剤で表面処理されたシリカ系充填材は、定法に従って、シリカ系充填材の表面を処理することにより、得られる。シリカ系充填材の配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、40〜100質量部であるのが好ましく、45〜70質量部であるのがより一層好ましく、50〜60質量部であるのが特に好ましい。シリカ系充填材は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0042】
付加反応架橋剤は、例えば、一分子中に二個以上のSiH基(SiH結合)を有する付加反応型の架橋剤として公知のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好適に挙げられる。付加反応架橋剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。付加反応架橋剤の配合量はビニル基含有シリコーン生ゴムとシリカ系充填材との合計100質量部に対して0.01〜20質量部であるのがよい。
【0043】
付加反応触媒は、シリコーン生ゴムの付加反応に通常用いられる触媒であればよく、例えば、周期律表第9属又は第10属の金属単体及びその化合物が挙げられる。付加反応触媒の配合量は、非発泡導電性弾性層の硬度に影響し、前記ビニル基含有シリコーン生ゴムと前記シリカ系充填材との合計100質量部に対して、0.40〜0.7質量部であると非発泡導電性弾性3のアスカーF硬度、その硬度比を前記範囲内に調整できる。付加反応触媒は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0044】
反応制御剤は、公知の反応制御剤を特に制限されることなく用いることができ、例えば、メチルビニルシクロテトラシロキサン、アセチレンアルコール類、シロキサン変性アセチレンアルコール、ハイドロパーオキサイド等が挙げられる。反応制御剤の配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴムと前記シリカ系充填材との合計100質量部に対して0.1〜2質量部であるのがよい。反応制御剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0045】
導電性付与剤は前記した通りであり、一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。導電性付与剤の配合量は前記ビニル基含有シリコーン生ゴムとシリカ系充填材との合計100質量部に対して5〜50質量部であるのがよい。
【0046】
有機過酸化物架橋剤は、単独でビニル基含有シリコーン生ゴムを架橋させることも可能であるが、付加反応架橋剤の補助架橋剤として併用すれば、シリコーンゴムの強度、歪み等の物性がより向上する。有機過酸化物架橋剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ビス−2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等が挙げられる。有機過酸化物架橋剤の配合量は、ビニル基含有シリコーン生ゴムとシリカ系充填材との合計100質量部に対して0.3〜10質量部であるのがよい。有機過酸化物架橋剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0047】
耐熱性向上剤は、前記導電性付与剤以外で発泡弾性層3の耐熱性を向上させる化合物であればよく、例えば、酸化鉄(ベンガラとも称する。)、酸化セリウム及び水酸化セリウム等が挙げられる。これらは一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0048】
前記ビニル基含有シリコーン生ゴム、前記シリカ系充填材及び前記各種添加剤を含有するシリコーンゴム組成物として、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「KEシリーズ」及び「KEGシリーズ」等を容易に入手することができる。
【0049】
ゴム組成物は、二本ロール、三本ロール、ロールミル、バンバリーミキサ、ドウミキサ(ニーダー)等のゴム混練り機等を用いて、均一に混合されるまで、例えば、数分から数時間、好ましくは5分以上1時間以下にわたって常温又は加熱下で混練して、得られる。
【0050】
発泡導電性弾性層4は、中央部6の外周面8上に環状鍔部5で挟まれるように配置されている。発泡導電性弾性層4は、その内部及び/又は外表面に開口する中空部(セルとも称する。
図1において図示しない。)を有している。発泡導電性弾性層4が有するセルは、発泡導電性弾性層4を形成する後述のゴム組成物に含有される発泡剤若しくは気体の発泡又は分解等によって生じる中空領域、及び、発泡ゴム組成物に含有される中空充填材等に由来する中空領域等をいう。このセルは、他のセルに接することのない又は連通することのない独立状態にある独立セルと、近傍に存在する他のセルに接し又は連通している連続セルとを有している。この連続セルは発泡導電性弾性層4内で3次元的な連通路を形成しているのがよい。個々のセルの形状は、特に限定されず、例えば、略球状であってもよく、また楕円体形、不定形であってもよく、また、複数のセルが連通した管状であってもよい。セルの平均セル径は50〜400μmであるのが好ましい。平均セル径は、発泡導電性弾性層4の表面又は任意の面で切断したときの切断面において、約20mm
2の領域を電子顕微鏡等で観察し、観察視野内に存在する各セルにおける開口部の最大長さを測定して、測定された最大長さを算術平均して得られた平均長さとして、求める。
【0051】
発泡導電性弾性層4は、画像形成装置に装着されたときに所定のニップ幅を確保すると共に、用途によってはトナーを搬送したり、除去したりする効果が得られるである点で、アスカーF硬度で40以上かつアスカーC硬度で50以下の硬度を有しているのが好ましい。具体的には、発泡導電性弾性層4は、アスカーF硬度で40以上80以下の範囲又はアスカーC硬度で10以上50以下の範囲に含まれる硬度を有している。発泡導電性弾性層4の硬度は用途により好ましくはアスカーF硬度では45〜70であり、アスカーC硬度では25〜45である。アスカーC硬度(1.0kg荷重)は、JIS K6253に準拠して測定できる。またアスカーF硬度は、例えば高分子計器株式会社製「アスカーゴム硬度計F型」を用いて、導電性ローラ1の湾曲した外表面すなわち発泡導電性弾性層4の外周面に硬度計の押圧子の中心部を押し付け、かつ基準面が導電性ローラ1の外表面に接触した瞬間の目盛りを読み取ることで得られる値である。発泡導電性弾性層4の硬度は複数箇所を測定した測定値を算術平均した値とする。
【0052】
発泡導電性弾性層4は、電気抵抗値(100V)が1×10
5〜1×10
9Ωであるのが好ましく、1×10
6〜1×10
8Ωであるのが特に好ましい。発泡導電性弾性層4の電気抵抗値が前記範囲内にあると、非発泡導電弾性層との相乗効果で長時間通電時の発泡弾性層への影響を軽減できるという効果が得られる。発泡導電性弾性層4の電気抵抗値は、温度20℃、相対湿度50%の環境下で、例えば電気抵抗計(商品名:ULTRA HIGH RESISTANCE METER R8340A、株式会社アドバンテスト製)を用いて測定できる。具体的には、導電性ローラ1を水平に置き、この導電性ローラ1の発泡導電性弾性層4全体を載せることのできる長さを有する金メッキ製板を電極とし、500gの荷重を導電性ローラ1における軸体2の両端それぞれに支持させた状態(合計荷重1000g)にして、軸体2と電極との間にDC100Vを印加し、1秒後の電気抵抗計の値を読み取り、この値を電気抵抗値とする方法に準拠して、測定する。発泡導電性弾性層4の電気抵抗値はカーボンブラックの含有量等によって調整できる。
【0053】
図1に示されるように、発泡導電性弾性層4は、軸線方向に一定の外側半径であって環状鍔部5の外側半径よりも大きな外側半径を有し、環状鍔部5よりも突出している。この発泡導電性弾性層3の外側半径は環状鍔部5の外側半径よりも大きければよく、環状鍔部5よりも0.25mm以上突出する厚さであるのが好ましい。発泡導電性弾性層3の外側半径及び厚さが前記範囲内にあると、発泡導電性弾性層の変形を軽減できるという効果が得られる。
【0054】
発泡導電性弾性層4は、ゴムと導電性付与剤と所望により各種添加剤とを含有している。ゴム、導電性付与剤及び各種添加剤は前記した通りである。
【0055】
発泡導電性弾性層4を形成する発泡ゴム組成物は、ゴムと導電性付与剤と発泡剤と所望により各種添加剤とを含有する組成物であればよく、非発泡導電性弾性層3を形成するための前記ゴム組成物に発泡剤を加えてなる発泡ゴム組成物を好適例として挙げることができる。
【0056】
発泡剤としては、従来、発泡ゴムに用いられる発泡剤であればよく、例えば、前記無機系発泡剤及び前記有機系発泡剤等が挙げられる。この発明においては、発泡弾性層3を容易に形成することができる点で、発泡剤は有機系発泡剤であるのがよく、具体的には、例えば、アゾジカルボン酸アミド、アゾビス−イソブチロニトリル等のアゾ化合物が好適に使用される。特に、ジメチル−1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)が好適に使用できる。発泡剤の配合量は、例えば、前記ビニル基含有シリコーン生ゴムと前記シリカ系充填材との合計100質量部に対して、0.1〜10質量部、特に0.5〜8質量部であるのがよい。発泡剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0057】
この発明に係る導電性ローラの別の一例としての導電性ローラ1は、
図2(e)に示されるように、軸体2と、軸体2の外周面に配置された非発泡導電性弾性層3と、非発泡導電性弾性層3の外周面に配置された発泡導電性弾性層4とを備えている。この導電性ローラ1は発泡導電性弾性層4の形態が異なること以外は
図2(d)に示される導電性ローラ1と基本的に同様である。
【0058】
図2(e)に示される発泡導電性弾性層4は、軸線方向に延在し、一定の外側半径を有する中央部4aと、中央部4aの端部それぞれに好ましくは一体的に連設され、各端縁に向かって外側半径が徐々に小さくなる環状テーパ部4bとを有している。この環状テーパ部4bそれぞれは、中央部4a側から各端縁に向かって外側半径が小さくなるように配置された円錐台状をなしており、その最大外側半径は中央部4aと同じで最少外側半径は環状鍔部5の内端面7の外側半径と同じになっている。このように環状テーパ部4bは発泡導電性弾性層4の中央部4aから非発泡導電性弾性層3の環状鍔部5へと連続している。
【0059】
この発明に係る導電性ローラは、軸体の外周面に非発泡導電性弾性層を形成した後に、非発泡導電性弾性層の外周面に発泡導電性弾性層を形成することで、製造できる。
【0060】
非発泡導電性弾性層は、非発泡ゴム組成物を軸体の外周面に配置した後に加硫して、形成される。例えば、外側半径が一定の非発泡弾性体を形成した後に、その両端部を残して中央部を切削又は研削する方法、両端に半径方向に凹設された環状凹部を備えた管状キャビティを有する成形金型を用いて成形する方法、予め形成した中央部6の両端部に環状端部13を接着する方法等が挙げられる。
【0061】
発泡導電性弾性層は、非発泡導電性弾性層の中央部6及び環状鍔部5で囲繞された凹部に発泡ゴム組成物等を配置した後に加硫して、形成される。所望により、環状テーパ部24は中央部23と共に一体成形してもよく、また外側半径が一定の発泡弾性体の端部を研削加工又は研磨加工等によって形成できる。
【0062】
所望により、このようにして形成された発泡導電性弾性層をセレーション加工することもできる。
【0063】
また、所望により、このようにして形成された発泡導電性弾性層の外周面に表面層等を形成して導電性ローラ1が製造される。
【0064】
この発明に係る画像形成装置の一例を、
図3を参照して、説明する。
【0065】
この発明に係る画像形成装置30は、静電潜像が形成される回転可能な像担持体31例えば感光体と、前記像担持体31の周囲に配置された、帯電手段32例えばこの発明の導電性ローラで形成された帯電ローラ、露光手段33、現像手段40、転写手段34例えばこの発明の導電性ローラで形成された転写ローラ及びクリーニング手段37と、記録体の搬送方向下流側に定着装置35とを備えている。この現像手段40は、従来の現像手段と基本的に同様に形成され、具体的には、
図2に示されるように、現像剤収納部41と、像担持体31に現像剤42を供給する現像剤担持体44と、現像剤担持体44に現像剤42を供給する現像剤供給手段43と、現像剤42を帯電させる現像剤規制部材45とを備えている。
【0066】
前記定着装置は、アスカーC硬度(荷重1.0Kg)は20〜35の範囲にある低硬度の定着ローラ53と、低硬度の加圧ローラ56とを有する加熱定着装置である。すなわち、この定着装置35は、記録体36を通過させる開口52を有する筐体50内に、この発明の導電性ローラで形成された定着ローラ53と、定着ローラ53の近傍に配置された無端ベルト支持ローラ54と、定着ローラ53及び無端ベルト支持ローラ54に巻回された無端ベルト55と、無端ベルト55を介して定着ローラ53に圧接する加圧ローラ56と、無端ベルト55に非接触となるように配置され、無端ベルト55を介して外部から定着ローラ53を加熱する加熱手段57とを備え、無端ベルト55を介して定着ローラ53と加圧ローラ56とが互いに当接又は圧接するように回転自在に支持されて成る圧力熱定着装置である。
【0067】
無端ベルト支持ローラ54は、画像形成装置に通常用いられるローラであればよく、例えば、弾性ローラ等が用いられる。無端ベルト55は、例えば、ポリアミド、ポリアミドイミド等の樹脂により、無端状に形成されたベルトであればよく、その厚さ等も適宜定着装置35に適合するように調整することができる。加圧ローラ56はスプリング等の付勢手段(図示しない。)によって無端ベルト55を介して定着ローラ53に圧接している。この定着装置35においてこの発明に係る加圧ローラが加圧ローラ56として装着されている。前記加熱手段57は、ハロゲンヒーター及び反射板等を用いた輻射加熱方法、加熱器等を直接接触させて加熱する直接接触加熱方法、並びに、誘導加熱方法等が採用される。この加熱手段57は、定着ローラ53における軸線方向の長さとほぼ同じ長さを有する部材であり、定着装置35のいずれに配置されてもよいが、定着ローラ53の表面より一定の間隔を隔てて定着ローラ53に略並行に配置されるのがよい。前記誘導加熱方法には加熱用コイルが用いられ、この加熱用コイルは、通常、フェライト等の強磁性体で、スイッチング電源用として用いられている代表的な形状であるI型、E型及びU型等に形成され、導線が巻かれて成る。無端ベルト55と加圧ローラ56との圧接された間を記録体36が通過することにより、加圧と同時に加熱され、記録体36に転写された現像剤42(静電潜像)を定着させることができる。
【0068】
この発明に係る画像形成装置30は、次のように作用する。まず、画像形成装置30において、帯電手段32により像担持体31が一様に帯電され、露光手段33により像担持体31の表面に静電潜像が形成される。次いで、現像手段40から現像剤42が像担持体31に供給されて静電潜像が現像され、この現像剤像が像担持体31と転写手段34との間に搬送される記録体36上に転写される。この記録体36は定着装置35に搬送され、現像剤像が永久画像として記録体36に定着される。このようにして、記録体36に画像を形成することができる。
【0069】
この発明に係る定着装置35及び画像形成装置30は、加圧ローラ56としてこの発明に係る加圧ローラが採用されているから、現像剤を記録体に定着させる定着性に優れると共に消費電力が小さい。
【0070】
この発明に係る画像形成装置は、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。
【0071】
画像形成装置30は、電子写真方式の画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置は、電子写真方式には限定されず、例えば、静電方式の画像形成装置であってもよい。また、画像形成装置30は、現像手段40に単色の現像剤42のみを収容するモノクロ画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置は、モノクロ画像形成装置に限定されず、カラー画像形成装置であってもよい。カラー画像形成装置としては、例えば、像担持体上に担持された現像剤像を中間転写体に順次一次転写を繰り返す4サイクル型カラー画像形成装置、各色の現像手段を備えた複数の像担持体を中間転写体や転写搬送ベルト上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置等が挙げられる。画像形成装置30は、例えば、複写機、ファクシミリ、プリンター等の画像形成装置とされる。
【0072】
また、定着装置35及び画像形成装置30において、現像剤42は、一成分系の現像剤が有利に用いられるが、トナーと、鉄、ニッケル等のキャリアとを含む二成分系の現像剤も使用することができる。
【0073】
導電性ローラ1は、画像形成装置に装着したときに鍔状端部13の周側面が像担持体に接触してもよく、この場合は導電性ローラ1の両端部からの現像剤漏れ等を防止できる。
【0074】
この発明に係る導電性ローラ、定着装置及び画像形成装置は、前記した例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。
【0075】
導電性ローラ1は、非発泡導電性弾性層3の外周面に直接発泡導電性弾性層4が配置されているが、この発明において、発泡導電性弾性層は接着剤層又はプライマー層を介して非発泡導電性弾性層の外周面に形成されていてもよい。
【実施例】
【0076】
(実施例1)
無電解ニッケルメッキ処理が施された軸体2(直径6mm×長さ250mm、SUM22)をトルエンで洗浄し、プライマー「No.101A/B」(信越化学工業株式会社製:商品名)を塗布した。プライマー処理した軸体2をギアーオーブンを用いて150℃の温度にて30分焼成処理した後、常温にて30分以上冷却し、プライマー層を形成した。
【0077】
次いで、ビニル基含有シリコーン生ゴムとシリカ系充填材との混合物(信越化学工業株式会社製のシリコーンゴム組成物「KE−9410U」)とビニル基含有シリコーン生ゴムとカーボンブラックとの混合物(信越化学工業株式会社製のシリコーンゴム組成物「KE−3502U」)を所定の抵抗値になるように混合させたシリコーンゴム組成物100質量部、付加反応架橋剤「C−153A」(信越化学工業株式会社製:商品名)2.0質量部と、付加反応触媒としての白金触媒適量と、反応制御剤「R−153A」(信越化学工業株式会社製:商品名)0.5質量部とを、二本ロールで十分に混練して、付加反応型非発泡導電性シリコーンゴム組成物を調製した。
【0078】
次いで、プライマー層を形成した軸体2と付加反応型非発泡導電性シリコーンゴム組成物とを押出成形機にて一体分出し、赤外線加熱炉(IR炉)を用いて付加反応型非発泡導電性シリコーンゴム組成物を350℃で5分間加熱して架橋させた。その後、さらに、ギアーオーブンを用いて、200℃で4時間にわたって架橋後の付加反応型非発泡導電性シリコーンゴム組成物を二次加熱し、常温にて1時間以上放置した。その後、まず円筒研削機で外側半径が6.9mmとなるように研削し、次いで、両端部それぞれ5.0mmを残して外側半径が3.75mmとなるように研削した。このようにして外側半径が3.75mmで軸線長さが220mmの中央部6とその両端部に外径が6.9mmで軸線長さが各5mmの環状鍔部5とを有する非発泡導電性弾性層3を一体形成した。なお、中央部の厚さBは0.75mmである。このようにして作製された軸体2と一体に形成された非発泡導電性弾性層11の電気抵抗値及びJIS A硬度を前記方法に従って測定したところ、それぞれ7.41×10
5Ω及び45であった。
【0079】
次いで、付加反応型非発泡導電性シリコーンゴム組成物に有機系発泡剤「アゾビス−イソブチロニトリル」2.0質量部を混合して調製した付加反応型発泡導電性シリコーンゴム組成物を非発泡導電性弾性層3の中央部6の外周面8及び環状鍔部5の内端面7で囲繞される領域に、押出成形機にて一体分出しして、250℃で10分間加熱して架橋させた。その後、さらに、ギアーオーブンを用いて200℃で7時間にわたって架橋後の付加反応型発泡導電性シリコーンゴム組成物を二次加熱し、常温にて1時間以上放置した。その後、円筒研削機で外側半径を9mm(環状鍔部5からの突出量2.1mm)研削して軸線長さ220mmの発泡導電性弾性層4を形成し、導電性ローラ1を製造した。このようにして製造された導電性ローラ1における発泡導電性弾性層21の電気抵抗値及びアスカーC硬度を前記方法に従って測定したところ、それぞれ1.02×10
7Ω及び15であった。
【0080】
また、環状鍔部13の外側半径と前記中央部12の外側半径との寸法差Aは、発泡導電性弾性層の厚さCに対して60%であった。
【0081】
(実施例2〜
7)
寸法差A、中央部の厚さB、発泡導電性弾性層の外側半径と内側半径との差C及び発泡導電性弾性層の外側半径と環状鍔部の外側半径との差Dが表1に示す値となるように、実施例1と同様にして導電性ローラを製造した。製造した各種導電性ローラにおける発泡導電性弾性層のアスカーC硬度、及び非発泡性導電性弾性層のJIS A硬度及び電気抵抗値は表1に示す通りであった。また、実施例2
〜7の導電性ローラにおいて、非発泡導電性弾性層3及び発泡導電性弾性層4の電気抵抗値、及び硬度の測定結果を表1に示す。
【0082】
(
参考例、比較例1〜2)
寸法差A、中央部の厚さB、発泡導電性弾性層の外側半径と内側半径との差C及び発泡導電性弾性層の外側半径と環状鍔部の外側半径との差Dが表
2に示す値となるように、実施例1と同様にして導電性ローラを製造した。なお、比較例1は環状鍔部を形成されていない導電性ローラである。製造した各種導電性ローラにおける発泡導電性弾性層のアスカーC硬度、及び非発泡性導電性弾性層のJIS A硬度及び電気抵抗値は表
2に示す通りであった。また、
参考例及び比較例
1の導電性ローラにおいて、非発泡導電性弾性層11及び発泡導電性弾性層21の電気抵抗値、及び硬度の測定結果を表2に示す。
【0083】
(荷重通電耐久試験方法、および評価基準)
前記作成した導電ローラの両端シャフト露出部分に各2個のベアリングで回転できるように設定する。ついでφ40長さ240mm(両端10mmφ8)のSUS303製シャフトの両端部にベアリング、歯車を装着し、歯車側に駆動ベルトを付け、電動モーターにて50rpm、25時間、1000V印加、総重量2.5kg荷重に調整した試験を実施した。実施例1〜7の試験結果を表1に、また、
参考例及び比較例1の試験結果を表2に示す。
【0084】
なお、荷重通電耐久試験後における発泡導電性弾性層のアスカーC硬度の低下量が3未満かつ抵抗値変化量が3Log以内を「○」、それ以外を「×」とした。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
表1に示されるように実施例の各導電性ローラは電気抵抗値の差が小さく、製造初期の電気抵抗値が耐久性試験後であってもほとんど変動がなく経時的に安定しているうえ、中央部と端部との電気抵抗値の差も小さく均一性の高い電気抵抗値を有していることが分かった。また、実施例の各導電性ローラは端部のセル破壊が実質的に確認できなかった。したがって、実施例の各導電性ローラは画像形成装置に装着されたときに、硬度及び帯電特性並びに現像剤搬送量及び現像剤除去機能が経時的に変化しにくく、またフィルミングの発生を著しく抑制できる。
【0088】
表2に示されるように、比較例の導電性ローラはいずれも耐久性試験後に電気抵抗値が大きく低下して安定せず、かつ中央部と端部との電気抵抗値の差も大きく均一性に劣る電気抵抗値を有していることが分かった。また、比較例の各導電性ローラは端部のセル破壊が確認できた。