(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6118581
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】神経成長因子産生抑制剤およびそれを用いた化粧品、皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
A61K 36/44 20060101AFI20170410BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20170410BHJP
A61K 8/97 20170101ALI20170410BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20170410BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
A61K36/44
A61P43/00 105
A61K8/97
A61Q19/00
A61P17/00
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-29979(P2013-29979)
(22)【出願日】2013年2月19日
(65)【公開番号】特開2014-159383(P2014-159383A)
(43)【公開日】2014年9月4日
【審査請求日】2015年12月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】391045554
【氏名又は名称】株式会社クラブコスメチックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武田 悠
(72)【発明者】
【氏名】石田 喬裕
(72)【発明者】
【氏名】坂口 育代
【審査官】
鈴木 理文
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−151002(JP,A)
【文献】
特開2008−105985(JP,A)
【文献】
特開2003−055241(JP,A)
【文献】
特開2000−139406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/44
A61K 8/97
A61P 17/00
A61P 43/00
A61Q 19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カキの葉から多価アルコールと水との混合物を用いて抽出されたカキ葉抽出物を有効成分として含む、神経成長因子産生抑制剤。
【請求項2】
多価アルコールと水との混合物を用いて抽出されたカキ葉抽出物を0.0001〜0.01%の固形分濃度で含有する、請求項1に記載の神経成長因子産生抑制剤。
【請求項3】
皮膚の表皮角化細胞および線維芽細胞における神経成長因子の産生を抑制する、請求項1または2に記載の神経成長因子産生抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カキ葉抽出物を有効成分として含む神経成長因子産生抑制剤に関する。本発明はまた、本発明の神経成長因子産生抑制剤を含む化粧品、皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の外部刺激の知覚には、中枢神経から伸びる知覚神経線維が関わっている。この知覚神経線維は、通常の状態の皮膚では表皮と真皮の間までに存在し、刺激を知覚している。しかし、外部からの刺激に敏感になっている皮膚では表皮と真皮の間までにしか存在しなかった知覚神経線維が表皮内部まで伸長し、刺激感受の閾値が低下していることが知られている(たとえば、高森建二、「2.難治性痒みの発現メカニズム 乾燥、透析、アトピー性皮膚炎に伴う痒みについて」、日皮会誌:118(10),1931−1939,2008(非特許文献1)を参照)。
【0003】
このような知覚神経線維の表皮への伸長を促進する原因として、皮膚内の神経成長因子(NGF:Nerve Growth Factor)産生量の増加が挙げられる。NGFは知覚神経終末を表皮内部まで伸長させると考えられており、痒みを伴う皮膚疾患(アトピー性皮膚炎、乾癬など)の病変部において、NGFの産生量が増加し、神経終末が表皮内に侵入していることが知られている(たとえば、生駒晃彦、「1.痒みの神経生理学的側面」、日皮会誌:118(10),1925−1930,2008(非特許文献2)を参照)。NGFは、外界の刺激により皮膚内の細胞から分泌され、知覚神経線維に働きかけ、知覚神経線維の表皮内部への伸長を促すと考えられている(高森建二、「かゆみと敏感肌」、日本香粧品学会誌、Vol.29,No.2,pp.130−133(2005)(非特許文献3)を参照)。
【0004】
一方、表皮内のNGF量が敏感肌(スティンギング試験陽性)といわれる人で上昇している(たとえば、横田朋宏、「皮膚生理パラメーター解析による敏感肌タイプ分類」、日本香粧品学会誌、Vol.29,No.1,pp.44−49(2005)(非特許文献4))ことから、NGF量の増加による知覚神経線維の伸長がアトピー性皮膚炎や乾癬などの重篤な皮膚疾患を持つ患者だけでなく、病院にかかるほどではないが皮膚の刺激に対する感度が高い人に対しても起こっているであろうことが推測されている。
【0005】
敏感肌は3つのタイプに分けられ、敏感肌となる原因が異なっている。そのタイプとは、I)バリア機能低下グループ、II)バリア機能が正常であって、炎症性の変化を持ったグループ、III)バリア機能が正常で炎症性変化もない刺激感受性のみが高くなっているグループの3つである(上述した非特許文献4を参照)。これらI、II、III全ての敏感肌のタイプに共通して見られる特徴が表皮内のNGF産生の上昇であり、知覚神経の伸長が外部刺激に対する閾値を下げている原因であると考えられる。このことから、NGF産生抑制により知覚神経の伸長を抑制することが刺激感抑制に効果があると考えられる。
【0006】
このようなNGF産生抑制剤としては、たとえば、フキ、知母、シラカバ、ヨモギから選ばれる抽出物の1種又は2種以上を有効成分として配合することを特徴とするNGF産生抑制剤(たとえば特開2009−84222号公報(特許文献1)を参照)、アセロラ種子抽出物を含有することを特徴とするNGF産生抑制剤(たとえば特開2006−117542号公報(特許文献2)を参照)、エイジツ抽出物、ノバラ抽出物、ローズマリー抽出物、エンメイソウ抽出物、チョウジ抽出物、ジオウ抽出物、シャクヤク抽出物、ゲンチアナ抽出物、オウゴン抽出物、フキタンポポ抽出物、クレマティス抽出物及びドクダミ抽出物から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とするNGF産生抑制剤(たとえば、特開2005−350412号公報(特許文献3)を参照)などが知られている。
【0007】
一方、カキ葉は、一般的に抗菌作用があることから様々な食品に使用されており、また生薬としても使われ止咳、止血薬として利用されている。また、カキ茶は高血圧症、動脈硬化症などの成人病予防にも用いられている。現在まで、カキ葉の抽出物は抗炎症効果を有し、アトピー性皮膚炎の改善に寄与し得ることが知られている(たとえば、M.Matsumoto et al.,「Oral administration of persimmon leaf extract ameliorates skin symptoms and transepidermal water loss in atopic dermatitis model mice,NC/Nga」、British Journal of Dermatology 2002;146:221−227(非特許文献5)を参照。)。また、このような性質を有するカキ葉の抽出物を用いた抗炎症剤、刺激低減剤、痒み防止皮膚外用剤などについての特許出願もなされている(たとえば、特開2005−187548号公報(特許文献4)、特開2003−055241号公報(特許文献5)、特開2004−010531号公報(特許文献6)を参照)。
【0008】
しかし、これまで知られているカキ葉抽出物の皮膚への適用は、カキ葉抽出物が有するバリア機能の改善や抗炎症作用を利用するものであり、知覚神経線維の表皮への侵入により刺激への閾値の低下を抑制するものはなかった。これらの効果は前記の敏感肌タイプにおけるI、IIの人の改善に効果があると考えられる。つまり、バリア機能の改善や、炎症作用の改善にはある程度効果があると考えられるが、刺激感受性の上昇のみが起きている敏感肌タイプIIIのグループの人にとっては効果があるとは考えにくい。
【0009】
バリア機能の改善が刺激緩和に有効である理由としては、表皮内部に刺激を引き起こす物質が入り込まないようにするためであったが、それは直接的に知覚神経の表皮への伸長を抑制するわけではない。また、炎症を防ぐことも刺激を起こさないようにするのに重要であるが、それを防いだからといって知覚神経の伸長が起こらないわけではなく、刺激感受性の上昇を抑える効果はない。そのため、知覚神経が表皮まで伸長した外部刺激が知覚しやすくなった肌を改善するにはバリア機能の改善、抗炎症作用だけでは不十分であり、今回NGF産生抑制作用を示すカキ葉抽出物を敏感肌といわれる人に適用することは非常に有効であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−84222号公報
【特許文献2】特開2006−117542号公報
【特許文献3】特開2005−350412号公報
【特許文献4】特開2005−187548号公報
【特許文献5】特開2003−055241号公報
【特許文献6】特開2004−010531号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】高森建二、「2.難治性痒みの発現メカニズム 乾燥、透析、アトピー性皮膚炎に伴う痒みについて」、日皮会誌:118(10),1931−1939,2008
【非特許文献2】生駒晃彦、「1.痒みの神経生理学的側面」、日皮会誌:118(10),1925−1930,2008
【非特許文献3】高森建二、「かゆみと敏感肌」、日本香粧品学会誌、Vol.29,No.2,pp.130−133(2005)
【非特許文献4】横田朋宏、「皮膚生理パラメーター解析による敏感肌タイプ分類」、日本香粧品学会誌、Vol.29,No.1,pp.44−49(2005)
【非特許文献5】M.Matsumoto et al.,「Oral administration of persimmon leaf extract ameliorates skin symptoms and transepidermal water loss in atopic dermatitis model mice,NC/Nga」、British Journal of Dermatology 2002;146:221−227
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、化粧品、皮膚外用剤などに適用可能な新規な神経成長因子産生抑制剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の神経成長因子(NGF)産生抑制剤は、カキ葉抽出物を有効成分として含むことを特徴とする。
【0014】
本発明のNGF産生抑制剤は、カキ葉抽出物が、カキの葉から水、多価アルコールまたはそれらの混合物を用いて抽出されたものであることが好ましい。
【0015】
本発明のNGF産生抑制剤は、水を用いて抽出されたカキ葉抽出物を0.0001〜0.01%の固形分濃度で含有する、または、多価アルコールと水との混合物を用いて抽出されたカキ葉抽出物を0.0001〜0.01%の固形分濃度で含有することが、好ましい。
【0016】
本発明のNGF産生抑制剤はまた、皮膚の表皮角化細胞および線維芽細胞における神経成長因子の産生を抑制することが好ましい。
【0017】
本発明はまた、上述した本発明のNGF産生抑制剤を含む化粧品についても提供する。
本発明はさらに、上述した本発明のNGF産生抑制剤を含む皮膚外用剤についても提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のNGF産生抑制剤、化粧品、皮膚外用剤によれば、NGF産生に起因する知覚神経線維の伸長の促進を防止でき、これによって知覚神経の表皮への侵入を抑え、皮膚における外界からの刺激を抑制、緩和し、アトピー性皮膚炎による痒みや、乾燥による痒みを防ぐとともに、他の化粧品などへの知覚過敏を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実験例1での各カキ葉抽出物のTLCの結果を示す図である。
【
図2】カキ葉BG抽出物、ラウリル硫酸ナトリウムおよび生理食塩水についてのパッチテストの結果を示すグラフであり、縦軸は評価点の平均である。
【
図3】カキ葉BG抽出物、ラウリル硫酸ナトリウムおよび生理食塩水についてのパッチテストの結果を示すグラフであり、縦軸は紅斑抑制率(%)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の神経成長因子(NGF)産生抑制剤は、カキの葉の抽出物(カキ葉抽出物)を有効成分として含むことを特徴とする。後述する実験例において立証するように、本発明者らは、カキ葉抽出物が、皮膚内のNGFの産生を抑制できることを初めて見出し、これにより、NGF産生に起因する知覚神経線維の伸長の促進を防止することで、皮膚における外界からの刺激の抑制および緩和をもたらすという効果が奏される。本発明におけるカキの品種については特に制限されず、Diospyros Persimmon、カキノキ属(Diospyros Kaki Thunberg)に属する品種であればよい。
【0021】
本発明において、カキ葉抽出物をカキの葉から抽出するために用いる抽出溶媒としてはエタノールなどのアルコール以外であれば特に制限されるものではなく、水、多価アルコールおよびこれらの2種の混合物が挙げられる。中でも、後述する実験例において顕著なNGF産生抑制効果が示されたことから、水、多価アルコールまたはそれらの混合物を抽出溶媒として用いることが好ましく、水または多価アルコールと水との混合物を抽出溶媒として用いることが好ましい。多価アルコールとしては、具体的には、エチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ペンタンジオール、プロパンジオール、オクタンジオール、グリセリン、ポリグリセリンなどが挙げられ、中でも、述する実験例において顕著なNGF産生抑制効果が示されたことから1,3−ブチレングリコールが好適な例として挙げられる。
【0022】
上述した抽出溶媒を用いてカキの葉からカキ葉抽出物を抽出する方法としては、特に制限されるものではなく、従来公知の適宜の手順で行なえばよい。
【0023】
本発明のNGF産生抑制剤は、抽出溶媒として水または水と多価アルコールとの混合物を用いた場合、カキ葉抽出物を0.0001〜0.01%の固形分濃度で含有することが好ましい。
【0024】
本発明のNGF産生抑制剤はまた、皮膚の表皮角化細胞および線維芽細胞における神経成長因子の産生を抑制することが好ましい。後述する実験例2〜4において、本発明におけるカキ葉抽出物が、インビトロで、正常ヒト表皮角化細胞および正常ヒト皮膚線維芽細胞におけるNGFの産生を抑制したことが確認された。これにより、本発明のNGF産生抑制剤をヒトの皮膚に適用した場合に、皮膚の表皮角化細胞および線維芽細胞におけるNGFの産生を抑制し、NGF産生に起因する知覚神経線維の伸長の促進を防止でき、これによって知覚神経の表皮への侵入を抑える。
【0025】
本発明のNGF産生抑制剤は、カキ葉抽出物を有効成分とするのであれば、それ以外の成分については特に制限はなく、本発明の効果を阻害しない範囲で、水、油分、保湿剤、界面活性剤、植物抽出エキス、酸化防止剤、防腐剤、殺菌剤、粉末成分、増粘性高分子、色素、pH調整剤、香料などの公知の添加剤を含有していても勿論よい。
【0026】
本発明は、上述した本発明のNGF産生抑制剤を含む化粧品、皮膚外用剤についても提供する。本発明の化粧品は、従来公知の適宜の形態の化粧品であってよく、特に制限されるものではない。また、本発明の皮膚外用剤としても、たとえば軟膏、クリーム、ローションなど皮膚に適用するための外用剤として従来公知の適宜の形態を採用することができ、特に制限されるものではない。
【0027】
<実験例1>
〔1〕カキ葉水抽出物の調製
奈良県内で6月あるいは7月に採取したカキの葉を乾燥、細断したもの50gを抽出溶媒である水1000gに80℃で5時間浸漬した後、ろ紙を用いてろ過し、ろ液を得た。このろ液を5℃にて7日間静置保存した後、さらにろ紙を用いてろ過して抽出物(カキ葉水抽出物)のろ液を得た。このカキ葉水抽出物中の抽出溶媒(水)を除いた固形分の含有量は0.97質量%であった。
【0028】
〔2〕カキ葉BG抽出物の調製
奈良県内で6月あるいは7月に採取したカキの葉を乾燥、細断したもの50gを抽出溶媒である50質量%の1,3−ブチレングリコール(BG)水溶液1000gに50℃で5時間浸漬した後、ろ紙を用いてろ過し、ろ液を得た。このろ液を5℃にて7日間静置保存した後、さらにろ紙を用いてろ過して抽出物(カキ葉BG抽出物)のろ液を得た。このカキ葉BG抽出物中の抽出溶媒(BG水溶液)を除いた固形分の含有量は1.15質量%であった。
【0029】
〔3〕カキ葉エタノール抽出物の調製
奈良県内で6月あるいは7月に採取したカキの葉を乾燥、細断したもの50gを抽出溶媒であるエタノール1000gに50℃で5時間浸漬した後、ろ紙を用いてろ過し、ろ液を得た。このろ液を5℃にて7日間静置保存した後、さらにろ紙を用いてろ過して抽出物(カキ葉エタノール抽出物)のろ液を得た。このカキ葉エタノール抽出物中の抽出溶媒(エタノール)を除いた固形分の含有量は0.5質量%であった。
【0030】
〔4〕カキ葉抽出物の抽出溶媒による成分の違い
カキ葉BG抽出物、カキ葉水抽出物、カキ葉エタノール抽出物をHPTLC シリカゲル60(MERCK)にスポットし、展開溶媒(クロロホルム:メタノール:水=40:10:1)で展開し、その後Pauly試薬で発色させた。
図1は、各カキ葉抽出物のTLCの結果であり、左から順に、カキ葉BG抽出物、カキ葉水抽出物、カキ葉エタノール抽出物についての結果を示している。カキ葉BG抽出物にはカキ葉水抽出物、カキ葉エタノール抽出物の両方の成分が含まれていた。
【0031】
<実験例2>
10% FBSを含むイーグル最小必須培地(E−MEM)培地(日水製薬株式会社製)で37℃、5% CO
2下で、正常ヒト皮膚線維芽細胞(ヒューマンサイエンス研究資源バンクより入手)を培養した。正常ヒト皮膚線維芽細胞を培養プレートに播種し、サブコンフルエントになるまで培養した後、各カキ葉抽出物(カキ葉BG抽出物(固形分濃度:0.00115%または0.00575%)、カキ葉水抽出物(固形分濃度:0.001%、0.002%または0.003%)、カキ葉エタノール抽出物(固形分濃度:0.001%、0.002%または0.003%))および刺激剤としてTNF−α(和光純薬工業株式会社製)を添加し、更に、24時間培養した後、培養上清を回収し、ELISA法によりNGF含有量を測定した。刺激剤のみを添加した際のNGF含有量を1.00とした場合の各カキ葉抽出物の結果を表1に示す。なお、コントロールとしては、カキ葉抽出物を含まない培地を用いた。
【0033】
結果、カキ葉BG抽出物、カキ葉水抽出物はNGF産生を抑制したが、カキ葉エタノール抽出物はNGF産生抑制作用を示さなかった。
【0034】
<実験例3>
刺激剤としてIL−1β(和光純薬工業株式会社製)を用いたこと以外は実験例2と同様にして、カキ葉BG抽出物(固形分濃度:0.00115%または0.00575%)、カキ葉水抽出物(固形分濃度:0.001%または0.003%)、カキ葉エタノール抽出物(固形分濃度:0.001%または0.003%)それぞれの場合についてNGF含有量を測定した。結果を表2に示す。
【0036】
この場合も、カキ葉BG抽出物、カキ葉水抽出物はNGF産生を抑制したが、カキ葉エタノール抽出物はNGF産生抑制作用を示さなかった。
【0037】
<実験例4>
HuMedia−KG2(倉敷紡績株式会社製)で、37℃、5% CO
2下で正常ヒト表皮角化細胞(倉敷紡績株式会社より入手)を培養した。正常ヒト表皮角化細胞を培養プレートに播種し、サブコンフルエントになるまで培養した後、カキ葉抽出物(カキ葉BG抽出物(固形分濃度:0.00115%または0.00575%)、カキ葉水抽出物(固形分濃度:0.001%または0.003%))および刺激剤としてカプリル酸グリセリルを添加し、更に1時間培養した後、培養上清を回収し、NGF含有量をELISA法により測定した。刺激剤のみを添加した際のNGF含有量を1.0とした場合の各カキ葉抽出物の結果を表3に示す。
【0039】
結果、カキ葉BG抽出物、カキ葉水抽出物のいずれも、NGF産生抑制作用を示した。
<実験例5>
ヒトにおける皮膚刺激緩和試験として、パッチテストを行なった。まず、生理食塩水、1.0% ラウリル硫酸ナトリウム水溶液もしくはカキ葉BG抽出物(固形分濃度:0.023%または0.0575%)を添加した1.0% ラウリル硫酸ナトリウム水溶液を試料とし、上腕外側部に3時間閉塞パッチテストを行い、パッチ絆除去1.5時間後に、表4の基準により目視判定により評価を行ない、被験者5名の評価点の平均を求めた。
【0041】
図2は、カキ葉BG抽出物、ラウリル硫酸ナトリウムおよび生理食塩水についてのパッチテストの結果を示すグラフであり、縦軸は評価点の平均である。
図2から、目視評価において、カキ葉BG抽出物を添加したラウリル硫酸ナトリウム水溶液はラウリル硫酸ナトリウムによる刺激を緩和していることが分かる。
【0042】
また、この時点での紅斑の指標として色彩色差計によりa
*値(赤からの緑方向の色度)を測定した。紅斑抑制率は次式より求め評価した。
【0043】
紅斑抑制率(%)=[1−(S−S0)/(S1−S0)]×100
ただし、S0は生理食塩水のa
*値、S1はラウリル硫酸ナトリウム水溶液のa
*値、Sはカキ葉抽出物を添加したラウリル硫酸ナトリウム水溶液のa
*値である。
【0044】
図3は、カキ葉BG抽出物、ラウリル硫酸ナトリウムおよび生理食塩水についてのパッチテストの結果を示すグラフであり、縦軸は紅斑抑制率(%)である。
図3から、カキ葉BG抽出物により、紅斑抑制率は増加しており、カキ葉BG抽出物はラウリル硫酸ナトリウムによる刺激を抑制していることが分かる。
【0045】
<実験例6>
以下の手順でスティンギング試験を行なった。
【0046】
まず、敏感肌の専用パネラー5名に対して、頬部にカキ葉BG抽出物を塗布した。10分後、2.5%の乳酸溶液を塗布し、塗布直後、2.5分後、5分後に表5に示す評価基準に従って評点を求め、その3回の平均評点で評価を行った。
【0050】
表6に示したように、カキ葉抽出物により乳酸溶液のスティンギングスコアの低下がみられた。
【0051】
今回開示された実施形態および実験例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。