(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ピットマンアームは、全体が板状に形成されており、かつ、下側から見た形状が、鋭角な角度で展開された扇に対し、当該扇の両翼を中途部分で外側に屈折させた形状となっており、さらに、前記出力軸用孔が当該扇の要の位置に配置されており、前記2つのタイロッド用孔が当該扇の自由端付近の任意の位置に配置されており、
前記ピットマンアームの前記2つの突当面は、それぞれ、当該ピットマンアーム本体の側面部分に設けられている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のアームストッパ機構。
前記ストッパは、前記電動パワーステアリング装置のハウジングの下面側から下方向に突出するように設けられており、かつ、下側から見た形状が略台形状の台形部と略長方形状の長方形部とを接合させた形状となっており、
前記台形部及び前記長方形部は、当該台形部の下底の中央点と当該長方形部の長辺の中央点とが前記出力軸の中心点と一致するように配置されており、
前記長方形部は、短辺が、前記ピットマンアームの前記出力軸用孔の中心点上を通る前記突当面に平行な平行面と当該突当面との離間距離と同じ値の幅に構成されており、かつ、前記台形部と接合されていない側の長辺が前記当接面として機能する
ことを特徴とする請求項4に記載のアームストッパ機構。
前記ピットマンアームは、全体が板状に形成されており、かつ、下側から見た形状が鋭角な角度で展開された扇の形状となっており、さらに、前記出力軸用孔が当該扇の要の位置に配置されており、前記2つのタイロッド用孔が当該扇の自由端付近の両翼の近傍に配置されており、
前記ピットマンアームの前記2つの突当面は、それぞれ、当該ピットマンアーム本体の上面の中央付近で上方に突出する突出部の側面部分に設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のアームストッパ機構。
前記ストッパは、前記電動パワーステアリング装置のハウジングの下面側から下方向に突出するように設けられており、かつ、下側から見た形状が前記出力軸の中心点とする円弧状に切り欠けられた略円形状に形成されたおり、切り欠けられた端面が前記当接面として機能する
ことを特徴とする請求項6に記載のアームストッパ機構。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)につき詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0040】
ここでは、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、及び、「右」の方向は、車両の向きを基準にしているものとする。なお、図面の中には、車両の下側方向から見た構成の図面がある。それらの図面では、「左」及び「右」の方向があたかも逆になっているかのように見える。しかしながら、「左」及び「右」の方向は、車両の下側方向から見た構成における方向であるため、図面に示す通りである。
【0041】
≪第1実施形態≫
以下、本第1実施形態に係るアームストッパ機構160の構成について説明する。
ここでは、本第1実施形態に係るアームストッパ機構160の特徴を分かり易く説明するために、まず、
図10A及び
図10B、並びに、
図11〜
図12を参照して、比較例に係るアームストッパ機構60の構成を説明し、次に、
図13を参照して、比較例に係るアームストッパ機構60の主要部にかかる荷重ベクトルについて説明する。
その後に、
図13及び
図14を参照して、入力荷重ベクトル及び突当荷重ベクトルと曲げ荷重ベクトルとの関係について説明する。
さらに、その後に、
図1A及び
図1B、並びに、
図2〜
図4を参照して、本第1実施形態に係るアームストッパ機構160の構成について説明し、次に、
図5を参照して、本第1実施形態に係るアームストッパ機構160の主要部にかかる荷重ベクトルについて説明する。
【0042】
<比較例に係るアームストッパ機構の構成>
以下、
図10A及び
図10B、並びに、
図11〜
図12を参照して、比較例に係るアームストッパ機構60の構成を説明する。
図10Aは、側面方向から見た、電動パワーステアリング装置1に設けられた比較例に係るアームストッパ機構60の概略構成図である。
図10Bは、下面方向から見たアームストッパ機構60の概略構成図である。
図11は、下面方向から見たアームストッパ機構60のピットマンアーム61の概略構成図である。
図12は、下面方向から見たアームストッパ機構60のストッパ62の概略構成図である。
【0043】
図10Aに示すように、ATV(All Terrain Vehicle;全地形対応車)等の鞍乗型車両は、電動パワーステアリング装置1がハンドル側の操舵軸4と車輪(前輪)9側の操舵部材であるピットマンアーム61との間に介装されている。
【0044】
電動パワーステアリング装置1は、入力軸21や図示せぬトーションバー、出力軸22等の部材を内蔵している。入力軸21は、ハンドル側の操舵軸4に連結されている。図示せぬトーションバーは、入力軸21と出力軸22とを連結している。その出力軸22には、ピットマンアーム61が取り付けられている。
【0045】
ピットマンアーム61は、車輪(前輪)9側の操舵部材である。ピットマンアーム61には、車輪9が連結されるタイロッド8が取り付けられている。タイロッド8は、車両の幅方向に延在して配置されており、その一端が車両の幅方向の中央付近でピットマンアーム61に連結され、他端が車輪(前輪)9に連結されている。ピットマンアーム61は、出力軸22にスプライン嵌合されており、出力軸22を中心にして回動する構成になっている。
【0046】
電動パワーステアリング装置1は、運転者がハンドルを右周り方向又は左周り方向の最大転舵角度以上に回動させようとした場合に、車両が横転しないように、ハンドルの回動を規制する必要がある。電動パワーステアリング装置1は、そのための機構として、ストッパ62でピットマンアーム61の回動角度を規制するアームストッパ機構60が設けられている。
【0047】
ストッパ62は、電動パワーステアリング装置1のハウジング13の下面側から下方向に突出するように設けられている。アームストッパ機構60は、運転者がハンドルを右周り方向又は左周り方向の最大転舵角度以上に回動させようとする場合に、ピットマンアーム61に設けられた突当面76a,76b(
図11参照)がストッパ62に突き当たる。これにより、アームストッパ機構60は、ストッパ62でピットマンアーム61の回動角度を規制し、これに伴って、ハンドルの回動を規制する。
【0048】
図10Bは、下面方向から見た、アームストッパ機構60の構成を示している。
図10Bに示すように、アームストッパ機構60は、出力軸22を中心にして回動するピットマンアーム61を備えている。
【0049】
図10Bに示す例では、アームストッパ機構60は、ピットマンアーム61に設けられた突当面76a,76b(
図11参照)同士のなす角度θarが、180°に設定されている。また、ストッパ62に設けられた当接面86a,86b(
図12参照)同士のなす角度θstが、90°に設定されている。また、ピットマンアーム61の回動可能な最大転舵角度θdrが、90°(すなわち、右周り方向の最大転舵角度が45°で、かつ、左周り方向の最大転舵角度が45°)に設定されている。
【0050】
図11は、ピットマンアーム61の具体的な構成を示している。
図11(a)は、ピットマンアーム61の各部位の構成を示しており、
図11(b)は、ピットマンアーム61の各部位の配置位置を示している。
【0051】
ピットマンアーム61は、
図10Aに示すように、全体が板状に形成されている。
そして、
図11に示すように、ピットマンアーム61は、1つの出力軸用孔71と2つのタイロッド用孔72a,72bとが設けられている。出力軸用孔71は、出力軸22が嵌め込まれる円形孔である。タイロッド用孔72a,72bは、タイロッド8が取り付けられる円形孔である。以下、タイロッド用孔72a,72bを総称する場合に「タイロッド用孔72」と称する。
【0052】
出力軸用孔71は、その内部に出力軸22が嵌め込まれることによって、その中心点が出力軸22の中心点O22と一致した状態になる。以下、出力軸用孔71の中心点を「中心点O22」と称する場合がある。
【0053】
タイロッド用孔72a,72bは、ピットマンアーム61の中心線L61の左右の均等な位置に配置されている。
図11に示す例では、タイロッド用孔72a,72bは、それぞれの中心点O72が、出力軸用孔71の中心点O22から前方側に距離T72の位置で、かつ、ピットマンアーム61の中心線L61から左右に距離H72の位置に配置されている。
【0054】
なお、ここでは、「ピットマンアーム61の中心線L61」が出力軸用孔71の中心点O22の上を通って前後方向に延伸する仮想上の直線であるものとして説明する。「ピットマンアーム61の中心線L61」は、ハンドルの転舵角度が0°になっている場合に、後記する「ストッパ62の中心線L62(
図12参照)」と一致した状態になる。その「ストッパ62の中心線L62」は、車両の幅方向の中心点を通って車両の前後方向に延伸する仮想上の直線(以下、「車両全体の中心線」と称する)でもある。
【0055】
ピットマンアーム61は、ストッパ62に突き当たる部位(以下、「突当部」と称する)74a,74bを備えている。突当部74a,74bは、板状に形成されたピットマンアーム61本体の、出力軸用孔71の両横付近に設けられている。突当部74a,74bは、その端面がストッパ62に突き当てられる平坦面(以下、「突当面」と称する)76a,76bとして形成されている。以下、突当部74a,74bを総称する場合に「突当部74」と称する。また、突当面76a,76bを総称する場合に「突当面76」と称する。
【0056】
突当面76a,76bは、それぞれ、ピットマンアーム61の中心線L61に対する配置角度θ76が90°に設定されている。したがって、突当面76a及び突当面76bは、互いのなす角度θarが180°に設定されている。ここでは、「突当面の配置角度」とは、中心線と突当面とのなす角度を意味している。
【0057】
なお、
図11中、線L76aは、突当面76aに沿って仮想的に配置した直線を示している。また、線L76bは、突当面76bに沿って仮想的に配置した直線を示している。線L76a及び線L76bは、出力軸用孔71の中心点O22で交差する。また、長さH76は、ピットマンアーム61の出力軸用孔71の中心点O22からの突当面76の端部の距離を示している。
【0058】
ピットマンアーム61は、出力軸用孔71を円弧状に囲む円弧部78を備えている。円弧部78は、突当部74a,74bに連続するように形成されている。なお、
図11中、長さH78は、ピットマンアーム61の出力軸用孔71の中心点O22からの円弧部78の端部の距離を示している。
【0059】
図12は、ストッパ62の具体的な構成を示している。
図12(a)は、ストッパ62の各部位の構成を示しており、
図12(b)は、ストッパ62の各部位の配置位置を示している。
【0060】
ストッパ62は、
図10Aに示すように、電動パワーステアリング装置1のハウジング13の下面側から下方向に突出するように設けられている。そのストッパ62は、
図12に示すように、下側から見た形状が、ストッパ62の中心線L62の左右で均等になるように、出力軸22の中心点O22を頂点とし、底辺の幅をH62とし、斜辺の幅を(H81+H86)とする二等辺三角形に対し、半径H81の扇状の切欠部81(
図12(a)参照)がその二等辺三角形の頂点部分に形成された形状になっている。
【0061】
なお、ここでは、「ストッパ62の中心線L62」が出力軸22の中心点O22の上を通って前後方向に延伸する仮想上の直線であるものとして説明する。「ストッパ62の中心線L62」は、車両全体の中心線でもある。
【0062】
ストッパ62は、二等辺三角形の斜辺部分に位置する2つの平坦面86a,86bを備えており、その平坦面86a,86bがピットマンアーム61の突当面76a,76bと当接する当接面として機能する。以下、平坦面86aを「当接面86a」と称し、平坦面86bを「当接面86b」と称する。また、当接面86a,86bを総称する場合に「当接面86」と称する。
【0063】
当接面86a,86bは、それぞれ、ストッパ62の中心線L62に対する配置角度θ86が45°に設定されている。したがって、当接面86a及び当接面86bは、互いのなす角度θstが90°に設定されている。ここでは、「当接面の配置角度」とは、中心線と当接面とのなす角度を意味している。
【0064】
なお、
図12中、線L86aは、当接面86aに沿って仮想的に配置した直線を示している。また、線L86bは、当接面86bに沿って仮想的に配置した直線を示している。線L86a及び線L86bは、出力軸22の中心点O22で交差する。
【0065】
<比較例に係るアームストッパ機構の主要部にかかる荷重ベクトル>
以下、
図13を参照して、アームストッパ機構60の主要部にかかる荷重ベクトルについて説明する。
図13は、アームストッパ機構60の主要部にかかる荷重ベクトルの説明図である。
【0066】
ここでは、タイロッド用孔72からピットマンアーム61に入力される車輪9(
図10A参照)側からの荷重ベクトルを「入力荷重ベクトルWh」とし、ストッパ62の当接面86からピットマンアーム61の突当面76にかかる荷重ベクトルを「突当荷重ベクトルWb」とし、出力軸用孔71(
図11(a)参照)に嵌め込まれた出力軸22にかかる荷重ベクトルを「曲げ荷重ベクトルWt」として説明する。
【0067】
また、ここでは、ピットマンアーム61の突当面76とストッパ62の当接面86とが当接する部位の中心位置を「突当中心位置O76」とし、突当荷重ベクトルWbがその突当中心位置O76にかかるものとして説明する。なお、
図13に示す例では、突当中心位置O76は、出力軸22の中心点O22から距離Rの位置に設定されている。
【0068】
また、ここでは、
図13に示すように、ピットマンアーム61の左側の突当面76がストッパ62の左側の当接面86に突き当たっている場合を想定して説明する。この場合に、
図13に示すように、アームストッパ機構60は、入力荷重ベクトルWhがタイロッド用孔72の周囲にかかり、突当荷重ベクトルWbが突当中心位置O76にかかり、さらに、曲げ荷重ベクトルWtが出力軸22にかかる。
【0069】
曲げ荷重ベクトルWtの値は、入力荷重ベクトルWhと突当荷重ベクトルWbとを合成した合成ベクトルの値となる。なお、入力荷重ベクトルWhの方向は、タイロッド用孔72に取り付けられたタイロッド8(
図10A参照)の取付方向によって定まる。また、突当荷重ベクトルWbの方向は、ピットマンアーム61の突当面76に対して垂直な方向となる。
【0070】
<入力荷重ベクトル及び突当荷重ベクトルと曲げ荷重ベクトルとの関係>
以下、
図13及び
図14を参照して、入力荷重ベクトルWh及び突当荷重ベクトルWbと曲げ荷重ベクトルWtとの関係について説明する。
図14は、入力荷重ベクトルWh及び突当荷重ベクトルWbと曲げ荷重ベクトルWtとの関係を示す模式図である。ここでは、
図13に示すように、ピットマンアーム61の左側の突当面76がストッパ62の左側の当接面86に突き当たっている場合を想定して説明する。
【0071】
図14は、
図13に示すように、ピットマンアーム61の左側の突当面76がストッパ62の左側の当接面86に突き当たっている場合で、かつ、仮に、ピットマンアーム61の突当面76及びストッパ62の当接面86の配置方向を変更したときに、曲げ荷重ベクトルWtの値がどのように変化するのかを示している。なお、
図14(a)〜
図14(c)は、タイロッド用孔72の中心点O72、突当中心位置O76、及び、出力軸22の中心点O22は、それぞれ
図13に示す位置関係になっている。
【0072】
図14(a)は、ピットマンアーム61の突当面76及びストッパ62の当接面86の配置方向を変更していないときの状態を示している。すなわち、
図14(a)は、ピットマンアーム61の中心線L61とピットマンアーム61の突当面76とのなす角度θ76が90°に設定されている場合の例を示している。換言すれば、
図14(a)は、ストッパ62の中心線L62とストッパ62の当接面86とのなす角度θ86が45°に設定されている場合の例を示している。
【0073】
また、
図14(b)は、入力荷重ベクトルWhの方向と突当荷重ベクトルWbの方向とが直交するように、
図14(a)に示す状態からピットマンアーム61の突当面76の配置方向を角度θb1だけ中心線L61側に傾けたときの状態を示している。すなわち、
図14(b)は、ピットマンアーム61の中心線L61とピットマンアーム61の突当面76とのなす角度θ76が90°よりも小さな(90−θb1)°に設定されている場合の例を示している。換言すれば、
図14(b)は、ストッパ62の中心線L62とストッパ62の当接面86とのなす角度θ86が45°よりも大きな(45+θb1)°に設定されている場合の例を示している。
【0074】
また、
図14(c)は、
図14(a)に示す状態からピットマンアーム61の突当面76の配置方向を角度θb2(ただし、角度θb2>角度θb1)だけ中心線L61側に傾けたときの状態を示している。すなわち、
図14(c)は、ピットマンアーム61の中心線L61とピットマンアーム61の突当面76とのなす角度θ76が
図14(b)に示す状態の角度(90−θb1)°よりもさらに小さな(90−θb2)°に設定されている場合の例を示している。換言すれば、
図14(c)は、ストッパ62の中心線L62とストッパ62の当接面86とのなす角度θ86が(45+θb1)°よりもさらに大きな(45+θb2)°に設定されている場合の例を示している。
【0075】
前記した通り、曲げ荷重ベクトルWtの値は、入力荷重ベクトルWhと突当荷重ベクトルWbとを合成した合成ベクトルの値となる。そのため、曲げ荷重ベクトルWtは、入力荷重ベクトルWhの方向と突当荷重ベクトルWbの方向とのなす角度θhbが小さくなる程に、値が増大し、逆に、入力荷重ベクトルWhの方向と突当荷重ベクトルWbの方向とのなす角度θhbが大きくなる程に、値が低下する傾向にある。
【0076】
図14(a)に示す例では、入力荷重ベクトルWhの方向と突当荷重ベクトルWbの方向とのなす角度θhbが、鋭角(0〜90°未満)になっている。
図14(b)に示す例では、入力荷重ベクトルWhの方向と突当荷重ベクトルWbの方向とのなす角度θhbが直角(90°)になっている。
図14(c)に示す例では、入力荷重ベクトルWhの方向と突当荷重ベクトルWbの方向とのなす角度θhbが鈍角(90〜180°)になっている。
【0077】
そのため、
図14(a)に示す例では、曲げ荷重ベクトルWtが、入力荷重ベクトルWhと突当荷重ベクトルWbとを直交させたときの合成ベクトルの値(
図14(b)に示す状態の曲げ荷重ベクトルWtの値)よりも大きな値になっている。一方、
図14(c)に示す例では、曲げ荷重ベクトルWtが、入力荷重ベクトルWhと突当荷重ベクトルWbとを直交させたときの合成ベクトルの値(
図14(b)に示す状態の曲げ荷重ベクトルWtの値)よりも小さな値になっている。
【0078】
したがって、アームストッパ機構60は、
図14(c)に示すように、入力荷重ベクトルWhの方向と突当荷重ベクトルWbの方向とのなす角度θhbを大きくして、入力荷重ベクトルWhの方向と突当荷重ベクトルWbとが互いを打ち消し合うように作用させることによって、出力軸22にかかる曲げ荷重ベクトルWtの値を抑制することができる。
【0079】
ここで、前記した通り、
図14(a)は、ピットマンアーム61の中心線L61とピットマンアーム61の突当面76とのなす角度θ76が90°に設定されている場合の例、すなわち、ストッパ62の中心線L62とストッパ62の当接面86とのなす角度θ86が45°に設定されている場合の例を示している。
【0080】
また、
図14(b)は、ピットマンアーム61の中心線L61とピットマンアーム61の突当面76とのなす角度θ76が90°よりも小さな(90−θb1)°に設定されている場合の例、すなわち、ストッパ62の中心線L62とストッパ62の当接面86とのなす角度θ86が45°よりも大きな(45+θb1)°に設定されている場合の例を示している。
【0081】
また、
図14(c)は、ピットマンアーム61の中心線L61とピットマンアーム61の突当面76とのなす角度θ76が(90−θb1)°よりもさらに小さな(90−θb2)°に設定されている場合の例、すなわち、中心線L61とストッパ62の当接面86とのなす角度θ86が(45+θb1)°よりもさらに大きな(45+θb2)°に設定されている場合の例を示している。
【0082】
したがって、
図14(a)〜
図14(c)に示す関係からは、中心線L61と突当面76とのなす角度θ76が小さくなるに従って、また、これに相対して、中心線L61とストッパ62の当接面86とのなす角度θ86が大きくなるに従って、入力荷重ベクトルWhの方向と突当荷重ベクトルWbの方向とのなす角度θhbが大きくなることが分かる。
【0083】
そのため、アームストッパ機構60は、ピットマンアーム61の中心線L61と突当面76とのなす角度θ76を小さくすることによって(すなわち、中心線L61とストッパ62の当接面86とのなす角度θ86を大きくすることによって)、入力荷重ベクトルWhの方向と突当荷重ベクトルWbの方向とのなす角度θhbを大きくすることができる。これにより、アームストッパ機構60は、入力荷重ベクトルWhの方向と突当荷重ベクトルWbとが互いを打ち消し合うように作用させることができ、その結果、出力軸22にかかる曲げ荷重ベクトルWtの値を抑制することができる。
【0084】
<第1実施形態に係るアームストッパ機構の構成>
本第1実施形態に係るアームストッパ機構160(
図1A及び
図1B参照)は、このような観点から、出力軸22にかかる曲げ荷重ベクトルWtの値を抑制するために、入力荷重ベクトルWhの方向と突当荷重ベクトルWbの方向とのなす角度θhb(
図5参照)が、比較例に係るアームストッパ機構60の角度θhb(
図14(a)参照)よりも大きくなるように構成したものである。
【0085】
すなわち、本第1実施形態に係るアームストッパ機構160は、
図2に示すように、ピットマンアーム161の中心線L161と突当面176とのなす角度θ176が、比較例に係るアームストッパ機構60の角度θ76(
図14(a)参照)よりも小さくなるように、また、これに相対して、ストッパ162の中心線L162と当接面186とのなす角度θ186が、比較例に係るアームストッパ機構60の角度θ86(
図14(a)参照)よりも大きくなるように、構成されたものである。
【0086】
以下、
図1A及び
図1B、並びに、
図2〜
図4を参照して、本第1実施形態に係るアームストッパ機構160の構成について説明する。
図1Aは、側面方向から見た、電動パワーステアリング装置101に設けられた本第1実施形態に係るアームストッパ機構160の概略構成図である。
図1Bは、下面方向から見たアームストッパ機構160の概略構成図である。
図2は、下面方向から見たアームストッパ機構160のピットマンアーム161の概略構成図である。
図2(a)は、ピットマンアーム161の各部位の構成を示しており、
図2(b)は、ピットマンアーム161の各部位の配置位置を示している。
図3は、下面方向から見たアームストッパ機構160のストッパ162の概略構成図である。
図3(a)は、ストッパ162の各部位の構成を示しており、
図3(b)は、ストッパ162の各部位の配置位置を示している。
図4は、アームストッパ機構160の各部材の理想的な配置関係を示す模式図である。
【0087】
図1Aに示す電動パワーステアリング装置101は、比較例に係る電動パワーステアリング装置1と同様の装置であり、比較例に係るアームストッパ60の代わりに、本第1実施形態に係るアームストッパ機構160がハウジング113の下面側に設けられている。
【0088】
アームストッパ機構160は、
図1Bに示すように、比較例に係るアームストッパ60と比較すると、ピットマンアーム161及びストッパ162の形状が異なる点で相違している。
【0089】
図1Bは、下面方向から見た、アームストッパ機構160の構成を示している。
図1Bに示すように、アームストッパ機構160は、出力軸22を中心にして回動するピットマンアーム161を備えている。
【0090】
そのピットマンアーム161は、
図1Aに示すように、全体が板状に形成されている。そして、ピットマンアーム161は、
図1B及び
図2に示すように、下側から見た形状が、鋭角な角度で展開された扇に対し、扇の両翼を中途部分で外側に屈折させた形状となっている。さらに、ピットマンアーム161は、
図2に示すように、出力軸用孔171が扇の要の位置に配置されており、2つのタイロッド用孔172a,172bが扇の自由端付近の任意の位置に配置された形状になっている。以下、タイロッド用孔172a,172bを総称する場合に「タイロッド用孔172」と称する。
【0091】
出力軸用孔171は、その内部に出力軸22が嵌め込まれることによって、その中心点が出力軸22の中心点O22と一致した状態になる。以下、出力軸用孔171の中心点を「中心点O22」と称する。
【0092】
タイロッド用孔172a,172bは、ピットマンアーム161の中心線L161の左右の均等な位置に配置されている。
図2に示す例では、タイロッド用孔172a,172bは、それぞれの中心点O172が、出力軸用孔171の中心点O22から前方側に距離T172の位置で、かつ、ピットマンアーム161の中心線L161から左右に距離H172の位置に配置されている。
【0093】
なお、ここでは、「ピットマンアーム161の中心線L161」が出力軸用孔171の中心点O22の上を通って前後方向に延伸する仮想上の直線であるものとして説明する。「ピットマンアーム161の中心線L161」は、ハンドルの転舵角度が0°になっている場合に、後記する「ストッパ162の中心線L162(
図3参照)」と一致した状態になる。その「ストッパ162の中心線L162」は、車両全体の中心線(車両の幅方向の中心点を通って車両の前後方向に延伸する仮想上の直線)でもある。
【0094】
ピットマンアーム161は、出力軸用孔171を円弧状に囲む、半径H178の円弧部178を備えている。また、ピットマンアーム161は、扇の両翼の中途部分から外側に屈折している部位(外側に張り出している部位)174a,174bを備えており、その部位174a,174bがストッパ162に突き当たる突当部として機能する。以下、部位174aを「突当部174a」と称し、部位174bを「突当部174b」と称する。また、突当部174a,174bを総称する場合に「突当部174」と称する。
【0095】
突当部174a,174bは、板状に形成されたピットマンアーム161本体の側面部分が平坦面176a,176bとして形成されており、その平坦面176a,176bがストッパ162に突き当てられる突当面として機能する。以下、平坦面176aを「突当面176a」と称し、平坦面176bを「突当面176b」と称する。また、突当面176a,176bを総称する場合に「突当面176」と称する。
【0096】
なお、
図2中、線L176aは、突当面176aに沿って仮想的に配置した直線を示している。また、線L176bは、突当面176bに沿って仮想的に配置した直線を示している。また、長さH176は、ピットマンアーム161の線L176aと線L176bとが交差する点O162からの突当面176の端部の距離を示している。
【0097】
一方、ストッパ162は、
図1Aに示すように、電動パワーステアリング装置101のハウジング113の下面側から下方向に突出するように設けられている。ストッパ162は、
図3に示すように、下側から見た形状が略台形状の台形部162aと略長方形状の長方形部162bとを接合させた形状となっている。
【0098】
台形部162a及び長方形部162bは、ストッパ162の中心線L162と垂直に交差するように配置されている。なお、ここでは、「ストッパ162の中心線L162」が出力軸22の中心点O22の上を通って前後方向に延伸する仮想上の直線であるものとして説明する。「ストッパ162の中心線L162」は、車両全体の中心線でもある。
【0099】
台形部162a及び長方形部162bは、台形部162aの下底の中央点と長方形部162bの長辺の中央点とが出力軸22の中心点O22と一致するように配置されている。そして、ストッパ162は、切欠部181が、出力軸22の中心点O22を中心にして、出力軸22を囲むように形成されている。
【0100】
また、ストッパ162は、ハウジング113の下面側からの突出量が台形部162aの後端側から長方形部162bの前端側に向かうにつれて大きくなるように、構成されている。そして、ストッパ162は、長方形部162bの前端側に設けられた後記する当接面186のみがピットマンアーム161と当接するように構成されている。
【0101】
図3に示す例では、台形部162aは、上底の幅をH162aとし、下底の幅をH162bとし、高さをT162aとする形状に形成されている。また、長方形部162bは、長辺の幅をH162bとし、短辺の幅をT162bとする形状に形成されている。
【0102】
長方形部162bの短辺は、ピットマンアーム161に設定された離間距離T176(
図2(b)参照)と同じ値の幅T162bに構成されている。離間距離T176は、ピットマンアーム161の出力軸用孔171の中心点O22上を通る突当面176に平行な平行面と突当面176との間の距離である。長方形部162bは、台形部162aと接合されていない側の長辺に位置する平坦面186a,186bがピットマンアーム161の突当面176(
図2(a)参照)と当接する当接面として機能する。以下、平坦面186aを「当接面186a」と称し、平坦面186bを「当接面186b」と称する。また、当接面186a,186bを総称する場合に「当接面186」と称する。
【0103】
当接面186a,186bは、それぞれ、ストッパ162の中心線L162に対する配置角度θ186が90°に設定されている。したがって、当接面186a及び当接面186bは、互いのなす角度θst1が180°に設定されている。
【0104】
なお、
図3中、線L186aは、当接面186aに沿って仮想的に配置した直線を示している。また、線L186bは、当接面186bに沿って仮想的に配置した直線を示している。また、点O186は、ストッパ162の線L186aと線L186bとが交差する点を示している。
図3に示す例では、線L186a及び線L186bは、角度θst1が180°に設定されているため、重なった状態になっている。
【0105】
このようなアームストッパ機構160は、ピットマンアーム161の各部位が
図4に示す構成になっているとよい。
図4は、アームストッパ機構160の各部材の理想的な構成を示す模式図である。
図4(a)は、ピットマンアーム161の各部位の配置位置を示しており、
図4(b)は、ピットマンアーム161の突当面176a,176bの配置方向の角度を示している。
【0106】
ここでは、ピットマンアーム161の突当面176(
図2(a)参照)の配置位置を重点的に説明する。そのピットマンアーム161の突当面176が突き当てられるストッパ162(
図1A及び
図1B参照)は、各部位がピットマンアーム161に対応した構成になっている。
【0107】
図4中、線L161は、ピットマンアーム161の中心線を示している。また、点O22は、ピットマンアーム161の出力軸用孔171(
図2(a)参照)の中心点及び出力軸22の中心点を示している。また、点O172は、ピットマンアーム161のタイロッド用孔172(
図2(a)参照)の中心点を示している。また、点O176は、ピットマンアーム161の突当中心位置(すなわち、本第1実施形態に係るピットマンアーム161の突当面176とストッパ162の当接面186(
図3(a)参照)とが当接する部位の中心位置)を示している。また、長さH172は、ピットマンアーム161の中心線L161からのタイロッド用孔172の中心点O172の距離を示している。また、角度θ176は、ピットマンアーム161の中心線L161と突当面176とのなす角度を示している。
【0108】
アームストッパ機構160は、
図14(a)〜
図14(c)に示す比較例に係るアームストッパ機構60の特性から分かるように、ピットマンアーム161の中心線L161と突当面176とのなす角度θ176を小さくすることによって、また、これに相対して、ストッパ162の中心線L162と当接面186とのなす角度θ186を大きくすることによって、入力荷重ベクトルWhの方向と突当荷重ベクトルWbの方向とのなす角度θhbを大きくすることができる。これにより、アームストッパ機構160は、入力荷重ベクトルWhの方向と突当荷重ベクトルWbとが互いを打ち消し合うように作用させることができ、その結果、出力軸22にかかる曲げ荷重ベクトルWtの値を抑制することができる。
【0109】
そこで、アームストッパ機構160のピットマンアーム161は、ピットマンアーム161の中心線L161と突当面176とのなす角度θ176が、比較例に係るアームストッパ機構60のピットマンアーム61の角度θ76(
図14(a)参照)よりも小さくなるように設定される。つまり、アームストッパ機構160のストッパ162は、ストッパ162の中心線L162と当接面186とのなす角度θ186が、比較例に係るアームストッパ機構60のストッパ62の角度θ86(
図14(a)参照)よりも小さくなるように設定される。
【0110】
ただし、アームストッパ機構160は、車両が横転しないように、ハンドルを最大転舵角度以上に回動させないように必要がある。そのため、アームストッパ機構160のピットマンアーム161は、ハンドルの最大転舵角度を規定するために、例えば、角度θ176の理想的な最適配置角度を45°とし、角度θ176に対して、設計上許容される角度(以下、「許容傾き角度」と称する)としてθα(例えば、10°)の角度が設定される。
【0111】
アームストッパ機構160は、これらの条件を満たすように、ピットマンアーム161の突当面176a,176bが、ピットマンアーム161の中心線L161上の任意の点O162を中心にして、中心線L161に対して互いに逆向きに(45±θα)°の角度で傾いて配置された構成になっている。つまり、ピットマンアーム161の突当面176a,176bは、互いのなす角度θar1が(90±2×θα)°の角度に設定されている。
【0112】
例えば、
図1Bは、許容傾き角度θαを0°とした場合のアームストッパ機構160の構成を示している。
図1Bに示す例では、ピットマンアーム161に設けられた突当面176a,176b(
図2参照)同士のなす角度θar1が、90°に設定されている。また、ストッパ162に設けられた当接面186a,186b(
図3参照)同士のなす角度θst1が、180°に設定されている。また、ピットマンアーム161の回動可能な最大転舵角度θdr1が、90°(すなわち、右周り方向の最大転舵角度が45°で、かつ、左周り方向の最大転舵角度が45°)に設定されている。
【0113】
<第1実施形態に係るアームストッパ機構の主要部にかかる荷重ベクトル>
以下、
図5を参照して、アームストッパ機構160の主要部にかかる荷重ベクトルについて説明する。
図5は、アームストッパ機構160の主要部にかかる荷重ベクトルの説明図である。
【0114】
ここでは、タイロッド用孔172からピットマンアーム161に入力される車輪9(
図1A参照)側からの荷重ベクトルを「入力荷重ベクトルWh」とし、ストッパ162の当接面186からピットマンアーム161の突当面176にかかる荷重ベクトルを「突当荷重ベクトルWb」とし、出力軸用孔171(
図2(a)参照)に嵌め込まれた出力軸22にかかる荷重ベクトルを「曲げ荷重ベクトルWt」として説明する。
【0115】
また、ここでは、ピットマンアーム161の突当面176とストッパ162の当接面186とが当接する部位の中心位置を「突当中心位置O176」とし、突当荷重ベクトルWbがその突当中心位置O176にかかるものとして説明する。なお、
図5に示す例では、突当中心位置O176は、出力軸22の中心点O22から、右方向に距離R1で、かつ、前方向に距離T162b(すなわち、距離T176(
図2(b)参照))の位置に設定されている。
【0116】
また、ここでは、
図5に示すように、ピットマンアーム161の左側の突当面176がストッパ162の左側の当接面186に突き当たっている場合を想定して説明する。この場合に、
図5に示すように、アームストッパ機構160は、入力荷重ベクトルWhがタイロッド用孔172の周囲にかかり、突当荷重ベクトルWbが突当中心位置O176にかかり、さらに、曲げ荷重ベクトルWtが出力軸22にかかる。
【0117】
曲げ荷重ベクトルWtの値は、入力荷重ベクトルWhと突当荷重ベクトルWbとを合成した合成ベクトルの値となる。なお、入力荷重ベクトルWhの方向は、タイロッド用孔172に取り付けられたタイロッド8(
図1A参照)の取付方向によって定まる。また、突当荷重ベクトルWbの方向は、ピットマンアーム161の突当面176に対して垂直な方向となる。
【0118】
アームストッパ機構160は、ピットマンアーム161及びストッパ162が上記した構成になっているため、入力荷重ベクトルWhと突当荷重ベクトルWbとが互いを打ち消し合うように作用する。そのため、アームストッパ機構160は、比較例に係るアームストッパ機構60よりも、出力軸22にかかる曲げ荷重ベクトルWtの値を低下させることができる。そのため、アームストッパ機構160は、出力軸22にかかる曲げ荷重を抑制することができる。
【0119】
特に、アームストッパ機構160は、出力軸22にかかる曲げ荷重ベクトルWtの値が、入力荷重ベクトルWhと突当荷重ベクトルWbとを仮に直交させたときの合成ベクトルの値以下になるように構成するとよい。これにより、アームストッパ機構160は、出力軸22にかかる曲げ荷重ベクトルWtの値を大幅に低下させることができ、その結果、効率よく、出力軸22にかかる曲げ荷重を抑制することができる。
【0120】
このようなアームストッパ機構160は、ストッパ162の2つの当接面186同士のなす角度θst1が、ピットマンアーム161の2つの突当面176同士のなす角度θar1よりも大きく、かつ、90°以上に設定されることにより、入力荷重ベクトルWhの方向と突当荷重ベクトルWbとが互いを打ち消し合うように作用させることができる。その結果、アームストッパ機構160は、出力軸22にかかる曲げ荷重ベクトルWtの値を抑制することができる。そのため、アームストッパ機構160は、出力軸22にかかる曲げ荷重を抑制することができる。しかも、アームストッパ機構160は、ストッパ162の2つの当接面186同士のなす角度θst1が、ピットマンアームの2つの突当面176同士のなす角度θar1よりも大きく、かつ、90°以上に設定されることにより、これに相対して、ピットマンアーム161の角度θar1を小さくすることができるため、ピットマンアーム161を小型に構成することができる。
【0121】
特に、アームストッパ機構160は、ストッパ162の2つの当接面186同士のなす角度θstが180°以上に設定されていると、突当荷重ベクトルWbがかかる突当中心位置O176を入力荷重ベクトルWhがかかるタイロッド用孔72の周囲に近づけることができる。そのため、この場合に、アームストッパ機構160は、効率よく、振動を抑制することができる。
【0122】
また、アームストッパ機構160は、右周り方向及び左周り方向の合計の最大転舵角度として90°以上の角度を確保することが好ましい。そのため、アームストッパ機構160は、ストッパ162の2つの当接面186同士のなす角度θst1とピットマンアーム161の2つの突当面176同士のなす角度θar1との合計値が270°以下であることが好ましい。アームストッパ機構160は、この条件を満たす場合に、右周り方向及び左周り方向の合計の最大転舵角度として90°以上の角度を確保することができる。
【0123】
以上の通り、第1実施形態に係るアームストッパ機構160によれば、出力軸22にかかる曲げ荷重ベクトルWtの値を抑制することができる。
また、電動パワーステアリング装置101は、アームストッパ機構160がハウジング113の下面側に設けられることによって、振動がハンドルに発生するのを抑制することができるため、操縦性を向上させることができる。
【0124】
≪第2実施形態≫
第1実施形態に係るアームストッパ機構160は、突当面176がピットマンアーム161本体の側面部分に設けられた構成になっている。そのピットマンアーム161は、ハンドルの最大転舵角度を規定するために、突当面176が形成されている突当部174を外側(回動方向)に張り出させた構成になっている。
【0125】
これに対し、第2実施形態では、突当部を外側に張り出させないように構成されたアームストッパ機構260を提供する。
【0126】
<第2実施形態に係るアームストッパ機構の構成>
以下、
図6〜
図8を参照して、本第2実施形態に係るアームストッパ機構260の構成について説明する。
図6は、下面方向から見たアームストッパ機構260の概略構成図である。
図7は、下面方向から見たアームストッパ機構260のピットマンアーム261の概略構成図である。
図7(a)は、ピットマンアーム261の各部位の構成を示しており、
図7(b)は、側面方向から見たピットマンアーム261の構成を示しており、
図7(c)は、ピットマンアーム261の各部位の配置位置を示している。
図8は、下面方向から見たアームストッパ機構260のストッパ262の概略構成図である。
図8は、ストッパ262の各部位の構成を示している。
【0127】
図6は、下面方向から見た、アームストッパ機構260の構成を示している。
図6に示すように、アームストッパ機構260は、出力軸22を中心にして回動するピットマンアーム261を備えている。
【0128】
そのピットマンアーム261は、
図7(b)に示すように、全体が板状に形成されている。そして、ピットマンアーム261は、
図6及び
図7(a)に示すように、下側から見た形状が鋭角な角度で展開された扇の形状となっている。さらに、ピットマンアーム261は、
図7に示すように、出力軸用孔271が扇の要の位置に配置されており、2つのタイロッド用孔272a,272bが扇の自由端付近の両翼の近傍に配置された形状になっている。以下、タイロッド用孔272a,272bを総称する場合に「タイロッド用孔272」と称する。
【0129】
出力軸用孔271は、その内部に出力軸22が嵌め込まれることによって、その中心点が出力軸22の中心点O22と一致した状態になる。以下、出力軸用孔271の中心点を「中心点O22」と称する。
【0130】
タイロッド用孔272a,272bは、ピットマンアーム261の中心線L261の左右の均等な位置に配置されている。
図7(c)に示す例では、タイロッド用孔272a,272bは、それぞれの中心点O272が、出力軸用孔271の中心点O22よりも前方で、かつ、ピットマンアーム261の中心線L261から左右に距離H272の位置に配置されている。
【0131】
なお、ここでは、「ピットマンアーム261の中心線L261」が出力軸用孔271の中心点O22の上を通って前後方向に延伸する仮想上の直線であるものとして説明する。「ピットマンアーム261の中心線L261」は、ハンドルの転舵角度が0°になっている場合に、後記する「ストッパ262の中心線L262(
図8参照)」と一致した状態になる。その「ストッパ262の中心線L262」は、車両全体の中心線(車両の幅方向の中心点を通って車両の前後方向に延伸する仮想上の直線)でもある。
【0132】
ピットマンアーム261は、出力軸用孔271を円弧状に囲む、円弧部278を備えている。また、ピットマンアーム261は、ピットマンアーム261本体の上面の中央付近で上方に突出する突出部274を備えており、その突出部274がストッパ262に突き当たる突当部として機能する。以下、突出部274を「突当部274」と称する。
【0133】
突当部274は、その側面部分が平坦面276a,276bとして形成されており、その平坦面276a,276bがストッパ262に突き当てられる突当面として機能する。以下、平坦面276aを「突当面276a」と称し、平坦面276bを「突当面276b」と称する。また、突当面276a,276bを総称する場合に「突当面276」と称する。
【0134】
なお、
図7(c)中、線L276aは、突当面276aに沿って仮想的に配置した直線を示している。また、線L276bは、突当面276bに沿って仮想的に配置した直線を示している。
【0135】
一方、ストッパ262は、電動パワーステアリング装置201のハウジング213の下面側から下方向に突出するように設けられている。ストッパ262は、
図8に示すように、下側から見た形状が、出力軸22の中心点O22とする円弧状の切欠部281で切り欠けられた略円形状の形状となっている。ストッパ262は、切欠部281で切り欠けられた端面286a,286bが当接面として機能する。以下、端面286aを「当接面286a」と称し、端面286bを「当接面286b」と称する。また、当接面286a,286bを総称する場合に「当接面286」と称する。
【0136】
なお、ここでは、「ストッパ262の中心線L262」が出力軸22の中心点O22の上を通って前後方向に延伸する仮想上の直線であるものとして説明する。「ストッパ262の中心線L262」は、車両全体の中心線でもある。
【0137】
アームストッパ機構260は、
図14(a)〜
図14(c)に示す比較例に係るアームストッパ機構60の特性から分かるように、ピットマンアーム261の中心線L261と突当面276とのなす角度θ276を小さくすることによって、また、これに相対して、ストッパ262の中心線L262と当接面286とのなす角度θ286を大きくすることによって、入力荷重ベクトルWhの方向と突当荷重ベクトルWbの方向とのなす角度θhbを大きくすることができる。これにより、アームストッパ機構260は、入力荷重ベクトルWhの方向と突当荷重ベクトルWbとが互いを打ち消し合うように作用させることができ、その結果、出力軸22にかかる曲げ荷重ベクトルWtの値を抑制することができる。
【0138】
そこで、アームストッパ機構260のピットマンアーム261は、ピットマンアーム261の中心線L261と突当面276とのなす角度θ276が、比較例に係るアームストッパ機構60のピットマンアーム61の角度θ76よりも小さくなるように設定される。つまり、アームストッパ機構260のストッパ262は、ストッパ262の中心線L262と当接面286とのなす角度θ286が、比較例に係るアームストッパ機構60のストッパ62の角度θ86(
図14(a)参照)よりも小さくなるように設定される。
【0139】
ただし、アームストッパ機構260は、車両が横転しないように、ハンドルを最大転舵角度以上に回動させないように必要がある。そのため、アームストッパ機構260のピットマンアーム261は、ハンドルの最大転舵角度を規定するために、例えば、中心線L261に対する突当面276の最適配置角度を、中心線L261に対するタイロッド用孔272の中心点O272と出力軸用孔271の中心点O22とを結ぶ仮想上の直線L276a,L276bの傾き角度θ276とし、角度θ276に対して、設計上許容される許容傾き角度としてθβ(例えば、5°)の角度が設定される。
【0140】
アームストッパ機構260は、これらの条件を満たすように、ピットマンアーム261の突当面276a,276bが、出力軸用孔271の中心点O22を中心にして、中心線L261に対して互いに逆向きに(θ276±θβ)°の角度で傾いて配置された構成になっている。つまり、ピットマンアーム261の突当面276a,276bは、互いのなす角度θar2が(2×(θ276±θβ))°の角度に設定されている。
【0141】
例えば、
図6は、直線L276a,L276bの傾き角度θ276を15°(すなわち、ピットマンアーム261に設けられた突当面276a,276b(
図7参照)同士のなす角度θar2を30°)とし、許容傾き角度θβを0°とした場合のアームストッパ機構260の構成を示している。
図6に示す例では、アームストッパ機構260は、ピットマンアーム261に設けられた突当面276a,276b(
図7参照)同士のなす角度θar2が、30°に設定されている。また、ストッパ262に設けられた当接面286a,286b(
図8参照)同士のなす角度θst2が、230°に設定されている。また、ピットマンアーム261の回動可能な最大転舵角度θdr2が、100°に設定されている。
【0142】
<第2実施形態に係るアームストッパ機構の主要部にかかる荷重ベクトル>
以下、
図9を参照して、アームストッパ機構260の主要部にかかる荷重ベクトルについて説明する。
図9は、アームストッパ機構260の主要部にかかる荷重ベクトルの説明図である。
【0143】
ここでは、タイロッド用孔272からピットマンアーム261に入力される車輪9(
図1A参照)側からの荷重ベクトルを「入力荷重ベクトルWh」とし、ストッパ262の当接面286からピットマンアーム261の突当面276にかかる荷重ベクトルを「突当荷重ベクトルWb」とし、出力軸用孔271(
図7(a)参照)に嵌め込まれた出力軸22にかかる荷重ベクトルを「曲げ荷重ベクトルWt」として説明する。
【0144】
また、ここでは、ピットマンアーム261の突当面276とストッパ262の当接面286とが当接する部位の中心位置を「突当中心位置O276」とし、突当荷重ベクトルWbがその突当中心位置O276にかかるものとして説明する。なお、
図9に示す例では、突当中心位置O276は、出力軸22の中心点O22とタイロッド用孔272の中心点O272との間の、出力軸22の中心点O22から距離R2の位置に設定されている。
【0145】
また、ここでは、
図9に示すように、ピットマンアーム261の左側の突当面276がストッパ262の左側の当接面286に突き当たっている場合を想定して説明する。この場合に、
図9に示すように、アームストッパ機構260は、入力荷重ベクトルWhがタイロッド用孔272の周囲にかかり、突当荷重ベクトルWbが突当中心位置O276にかかり、さらに、曲げ荷重ベクトルWtが出力軸22にかかる。
【0146】
曲げ荷重ベクトルWtの値は、入力荷重ベクトルWhと突当荷重ベクトルWbとを合成した合成ベクトルの値となる。なお、入力荷重ベクトルWhの方向は、タイロッド用孔272に取り付けられたタイロッド8(
図1A参照)の取付方向によって定まる。また、突当荷重ベクトルWbの方向は、ピットマンアーム261の突当面276に対して垂直な方向となる。
【0147】
アームストッパ機構260は、ピットマンアーム261及びストッパ262が上記した構成になっているため、入力荷重ベクトルWhと突当荷重ベクトルWbとが互いを打ち消し合うように作用する。そのため、アームストッパ機構260は、比較例に係るアームストッパ機構60よりも、出力軸22にかかる曲げ荷重ベクトルWtの値を低下させることができる。そのため、アームストッパ機構260は、出力軸22にかかる曲げ荷重を抑制することができる。
【0148】
このようなアームストッパ機構260は、特に、出力軸22にかかる曲げ荷重ベクトルWtの値が、入力荷重ベクトルWhと突当荷重ベクトルWbとを仮に直交させたときの合成ベクトルの値以下になるように構成するとよい。これにより、アームストッパ機構260は、出力軸22にかかる曲げ荷重ベクトルWtの値を大幅に低下させることができ、その結果、効率よく、出力軸22にかかる曲げ荷重を抑制することができる。
【0149】
以上の通り、第2実施形態に係るアームストッパ機構260によれば、第1実施形態に係るアームストッパ機構160と同様に、出力軸22にかかる曲げ荷重ベクトルWtの値を抑制することができる。
しかも、アームストッパ機構260によれば、ピットマンアーム261突当部274が外側(回動方向)に張り出さない構成になっているため、第1実施形態に係るアームストッパ機構160よりも小型に構成することができる。
また、電動パワーステアリング装置201は、アームストッパ機構260がハウジング213の下面側に設けられることによって、振動がハンドルに発生するのを抑制することができるため、操縦性を向上させることができる。
【0150】
本発明は、前記した実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更や変形を行うことができる。
【0151】
≪付記≫
本発明に係るアームストッパ機構は、好ましくは、電動パワーステアリング装置のハウジングの下面側で出力軸を中心にして回動し、かつ、車輪にそれぞれ連結された2つのタイロッドが取り付けられるピットマンアームと、前記電動パワーステアリング装置のハウジングの下面側の前記出力軸の周囲に設けられ、前記ピットマンアームの回動角度を規制するストッパとを有し、前記ピットマンアームは、前記出力軸が嵌め込まれる出力軸用孔と、前記タイロッドがそれぞれ取り付けられる2つのタイロッド用孔と、前記ストッパに突き当てられる2つの突当面とを備え、前記ストッパは、前記ピットマンアームの前記2つの突当面にそれぞれ当接する2つの当接面を備え、前記ピットマンアームの前記2つの突当面は、それぞれ、いずれか一方の前記突当面が前記ストッパの前記当接面に突き当たる場合に、遠い側の前記タイロッド用孔から入力される入力荷重ベクトルと当該突当面にかかる突当荷重ベクトルとが互いを打ち消し合うように作用することによって、前記出力軸用孔に嵌め込まれた前記出力軸にかかる曲げ荷重ベクトルが、前記入力荷重ベクトルと前記突当荷重ベクトルとを直交させたときの、前記入力荷重ベクトルと前記突当荷重ベクトルとの合成ベクトルの値以下になるように、配置されている構成にするとよい。なお、入力荷重ベクトルの方向は、タイロッド用孔に取り付けられたタイロッドの取付方向によって定まる。また、突当荷重ベクトルの方向は、ピットマンアームの突当面に対して垂直な方向となる。