特許第6118613号(P6118613)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6118613充放電検査システムならびに充放電検査装置の校正装置およびその校正方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6118613
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】充放電検査システムならびに充放電検査装置の校正装置およびその校正方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/36 20060101AFI20170410BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20170410BHJP
   G01R 19/00 20060101ALI20170410BHJP
   G01R 35/00 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   G01R31/36 A
   H01M10/48 P
   G01R19/00 N
   G01R35/00 E
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-72124(P2013-72124)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-196931(P2014-196931A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2015年11月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】小島 宏志
【審査官】 續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/093652(WO,A1)
【文献】 特開2012−047598(JP,A)
【文献】 特開2002−148323(JP,A)
【文献】 特開2004−150902(JP,A)
【文献】 特開平04−054458(JP,A)
【文献】 特開平05−187980(JP,A)
【文献】 特開2012−083263(JP,A)
【文献】 特開2010−060533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36
G01R 19/00
G01R 35/00
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数N個(Nは2以上の整数)の2次電池を充放電する多チャンネルの充放電検査装置と、前記充放電検査装置を校正する校正装置と、を有する充放電検査システムであって、
前記充放電検査装置は、
チャンネルごとに設けられ、それぞれが、対応する2次電池の電極と電気的に接続可能なN個のプローブ対と、
チャンネルごとに設けられ、それぞれが、対応する前記プローブ対を介して対応する前記2次電池に電力を供給するN個の電源と、
チャンネルごとに設けられ、それぞれが、対応する前記電源からソースまたはシンクされる電流の経路上に設けられ、当該経路に流れる電流量を示す電流検出値を生成するN個の電流センサと、
を備え、
前記校正装置は、
標準抵抗器と、
チャンネルごとに設けられ、それぞれが、対応する前記プローブ対と電気的に接続可能なN個の端子対と、
前記標準抵抗器を、前記N個の端子対のうち、任意のひとつに接続可能に構成されたセレクタと、
を備え、
前記充放電検査システムは、電流校正プロセスにおいて複数のチャンネルを順に校正対象とし、校正対象のチャンネルにおいて、
(i)そのチャンネルの電源から、対応する電流センサにプレヒート用の電流を流すプレヒート工程と、
(ii)プレヒート工程の完了後に、そのチャンネルの電源から供給される校正電流を、電流センサにより測定するステップと、
を実行するものであり、
あるチャンネルを校正中に、それ以外の未校正のチャンネルの少なくともひとつにおいて、プレヒート工程を並行して行うことを特徴とする充放電検査システム。
【請求項2】
あるチャンネルを校正中に、少なくとも、次に校正対象となるチャンネルにおいてプレヒート工程を行うことを特徴とする請求項1に記載の充放電検査システム。
【請求項3】
前記校正装置は、チャンネルごとに設けられ、それぞれが、対応する前記プローブ対の間を短絡可能に構成された複数のシャントスイッチをさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の充放電検査システム。
【請求項4】
校正対象以外のチャンネルにおいて、前記プレヒート工程の間、前記シャントスイッチがオンすることを特徴とする請求項3に記載の充放電検査システム。
【請求項5】
前記充放電検査システムは、前記電流校正プロセスに先だって電圧校正プロセスを実行し、前記電流校正プロセスの先頭のチャンネルのプレヒート工程を、その他のチャンネルの電圧校正プロセスの間に実行することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の充電検査システム。
【請求項6】
複数N個(Nは2以上の整数)の2次電池を充放電する多チャンネルの充放電検査装置の校正方法であって、
前記充放電検査装置は、
チャンネルごとに設けられ、それぞれが、対応する2次電池の電極と電気的に接続可能なN個のプローブ対と、
チャンネルごとに設けられ、それぞれが、対応する前記プローブ対を介して対応する前記2次電池に電力を供給するN個の電源と、
チャンネルごとに設けられ、それぞれが、対応する前記電源からソースまたはシンクされる電流の経路上に設けられ、当該経路に流れる電流量を示す電流検出値を生成するN個の電流センサと、
を備え、
前記校正方法は、
複数のチャンネルを順に校正対象とするステップと、
校正対象のチャンネルにおいて、(i)そのチャンネルの電源から、対応する電流センサにプレヒート用の電流を流すプレヒート工程と、(ii)プレヒート工程の完了後に、そのチャンネルの前記プローブ対の間に、標準抵抗器を接続し、そのチャンネルの電源から供給される校正電流を、電流センサにより測定するステップと、
あるチャンネルを校正中に、それ以外の未校正のチャンネルの少なくともひとつにおいて、プレヒート工程を並行して行うステップと、
を備えることを特徴とする校正方法。
【請求項7】
複数の2次電池を充放電する多チャンネルの充放電検査装置を校正する校正装置であって、
前記充放電検査装置は、
チャンネルごとに設けられ、それぞれが、対応する2次電池の電極と電気的に接続可能なN個のプローブ対と、
チャンネルごとに設けられ、それぞれが、対応する前記プローブ対を介して対応する前記2次電池に電力を供給するN個の電源と、
チャンネルごとに設けられ、それぞれが、対応する前記電源からソースまたはシンクされる電流の経路上に設けられ、当該経路に流れる電流量を示す電流検出値を生成するN個の電流センサと、
を備えるものであり、
前記校正装置は、
標準抵抗器と、
チャンネルごとに設けられ、それぞれが、対応する前記プローブ対と電気的に接続可能なN個の端子対と、
前記標準抵抗器を、前記N個の端子対のうち、任意のひとつに接続可能に構成されたセレクタと、
チャンネルごとに設けられ、それぞれが、対応する前記プローブ対の間を短絡可能に構成された複数のシャントスイッチと、
を備え、
電流校正プロセスにおいて複数のチャンネルが順に校正対象とされ、校正対象のチャンネルにおいて、
(i)そのチャンネルの電源から、対応する電流センサにプレヒート用の電流を流すプレヒート工程と、
(ii)プレヒート工程の完了後に、そのチャンネルの電源から供給される校正電流を、電流センサにより測定するステップと、
が実行され、
あるチャンネルを校正中に、それ以外の未校正のチャンネルの少なくともひとつにおいて、前記シャントスイッチをオンすることによりプレヒート工程を並行して行うことを特徴とする校正装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次電池を検査する充放電検査装置に関し、特にその校正技術に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池、ニッケル水素電池をはじめとする繰り返し充電可能な2次電池が広く利用されている。2次電池はその出荷前に、充放電検査装置を用いて正常に機能するかが検査される(特許文献1)。2次電池の良否を正確に検査するためには、充電検査装置そのものを定期的に校正(キャリブレーション)する必要がある。
【0003】
図1(a)、(b)は、本発明者が検討した充放電検査システムを示すブロック図である。なお、この充放電検査システムを公知技術と認識してはならない。図1(a)は、検査プロセスにおける構成を、図1(b)は、電流校正プロセスにおける構成を示す。図1(a)を参照し、検査プロセスについて説明する。多数の2次電池1を同時に検査するために、充放電検査装置4rは多チャンネルで構成され、複数N個のチャンネルCH1〜CHNそれぞれの2次電池1_1〜1_Nを充電し、あるいは放電することにより、各2次電池1の電気的特性が仕様を満たしているかを検査する。N個の2次電池1は、トレー8に搭載されて搬送される。
【0004】
充放電検査装置4rは、チャンネルCHごとに、プローブ対10P/N、電源12、電流センサ14を備える。各チャンネルは同様に構成される。
【0005】
各チャンネルにおいて、プローブ対10P/Nは、2次電池1の電極と接離可能となっている。電源12は、プローブ対10P/Nに装着される2次電池1に電力を供給し、2次電池1を充放電する。電流センサ14は、電源12からソースされ、またはシンクされる電流を検出する。
【0006】
各チャンネルの電源12は、検査プロセスにおいて、電流センサ14により検出された電流量が所定の目標値に近づくように、2次電池1に供給する充放電電流をフィードバック制御する。
【0007】
図1(b)を参照し、電流校正プロセスについて説明する。電流校正プロセスでは、複数の2次電池1に代えて、校正装置6rが充放電検査装置4rに装着される。校正装置6rは、標準抵抗器30と、計測器32と、セレクタ34を備える。
【0008】
セレクタ34は、標準抵抗器30を、校正対象のチャンネルのプローブ対10P/Nと接続する。図1(b)には、1番目のチャンネルが校正対象の状態を示す。この状態では、第1チャンネルの電源12_1が生成する校正電流が、標準抵抗器30および電流センサ14_1に流れる。計測器32は、標準抵抗器30の両端間の電圧を測定し、電源12_1が生成する校正電流の真の値を測定する。真の電流値と、電流センサ14_1が測定した電流量にもとづいて、充放電検査装置4rの第2チャンネルが校正される(電流校正)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−219565号公報
【特許文献2】特開2012−083263号公報
【特許文献3】特開2001−333543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者は、図1(b)の充放電検査装置2rの電流校正プロセスについて検討した結果、以下の課題を認識するに至った。
電流センサ14の精度は、動作開始からの経過時間、温度、供給される電源電圧などに依存する。そこで、本発明者は、校正電流を測定する前に、電流センサ14の安定化を目的として、電流センサ14にある時間、電流を供給し(本明細書においてプレヒートと称する)、電流センサ14の温度などを安定化させた後に、校正電流を測定することを想到するに至った。
【0011】
図2は、プレヒートを行う場合の電流校正プロセスのタイムチャートである。図2の電流校正プロセスでは、プレヒートの時間をT1、校正時間をT2とするとき、トータルの校正時間Tcは、
Tc=N×(T1+T2)
となる。つまり、精度を高めるためにプレヒートを導入すると、N×T1だけ、トータルの校正時間が長くなってしまう。生産性の向上の観点からは、年に1回程度の校正といえども、校正に要する時間は極力短いことが望ましい。
【0012】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、精度を高めつつ、短時間で校正可能な充放電検査システムの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のある態様は、充放電検査システムに関する。充放電検査システムは、複数N個(Nは2以上の整数)の2次電池を充放電する多チャンネルの充放電検査装置と、充放電検査装置を校正する校正装置と、を有する。充放電検査装置は、チャンネルごとに設けられ、それぞれが、対応する2次電池の電極に対して接離可能なN個のプローブ対と、チャンネルごとに設けられ、それぞれが、対応するプローブ対を介して対応する2次電池に電力を供給するN個の電源と、チャンネルごとに設けられ、それぞれが、対応する電源からソースまたはシンクされる電流の経路上に設けられ、当該経路に流れる電流量を示す電流検出値を生成するN個の電流センサと、を備える。校正装置は、標準抵抗器と、チャンネルごとに設けられ、それぞれが、対応するプローブ対に対して接離可能なN個の端子対と、標準抵抗器を、N個の端子対のうち、任意のひとつに接続可能に構成されたセレクタと、を備える。充放電検査システムは、電流校正プロセスにおいて複数のチャンネルを順に校正対象とし、校正対象のチャンネルにおいて、(i)そのチャンネルの電源から、対応する電流センサにプレヒート用の電流を流すプレヒート工程と、(ii)プレヒート工程の完了後に、そのチャンネルの電源から供給される校正電流を、電流センサにより測定するステップと、を実行するものであり、あるチャンネルを校正中に、それ以外の未校正のチャンネルの少なくともひとつにおいて、プレヒート工程を並行して行う。
【0014】
この態様によると、あるチャンネルを校正中に、他のチャンネルのプレヒートを同時に行うことにより、チャンネルごとに、プレヒート、校正を順に行う場合に比べて、トータルの校正時間を大幅に短縮できる。またプレヒートを行うことにより校正精度を高めることができる。
【0015】
校正装置は、チャンネルごとに設けられ、それぞれが、対応するプローブ対の間を短絡可能に構成された複数のシャントスイッチをさらに備えてもよい。
【0016】
校正対象以外のチャンネルにおいて、プレヒート工程の間、シャントスイッチがオンしてもよい。
これにより、校正対象のチャンネルの校正処理に影響を与えることなく、その他のチャンネルをプレヒートすることができる。
【0017】
充放電検査システムは、電流校正プロセスに先だって電圧校正プロセスを実行してもよい。充放電検査システムは、電流校正プロセスの先頭のチャンネルのプレヒート工程を、その他のチャンネルの電圧校正プロセスの間に実行してもよい。
これにより、実効的なトータルの校正時間をさらに短縮することができる。
【0018】
本発明のさらに別の態様は、複数の2次電池を充放電する多チャンネルの充放電検査装置を校正する校正装置に関する。充放電検査装置は、チャンネルごとに設けられ、それぞれが、対応する2次電池の電極に対して接離可能なN個のプローブ対と、チャンネルごとに設けられ、それぞれが、対応するプローブ対を介して対応する2次電池に電力を供給するN個の電源と、チャンネルごとに設けられ、それぞれが、対応する電源からソースまたはシンクされる電流の経路上に設けられ、当該経路に流れる電流量を示す電流検出値を生成するN個の電流センサと、を備える。校正装置は、標準抵抗器と、チャンネルごとに設けられ、それぞれが、対応するプローブ対に対して接離可能なN個の端子対と、標準抵抗器を、N個の端子対のうち、任意のひとつに接続可能に構成されたセレクタと、チャンネルごとに設けられ、それぞれが、対応するプローブ対の間を短絡可能に構成された複数のシャントスイッチと、を備える。
【0019】
この態様によると、校正対象のチャンネルの校正処理に影響を及ぼすことなく、その他のチャンネルをプレヒートすることができる。
【0020】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0021】
本発明のある態様の充放電検査システムによれば、校正精度を高めつつ、校正時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1(a)、(b)は、本発明者が検討した充放電検査システムを示すブロック図である。
図2】プレヒートを行う場合の電流校正プロセスのタイムチャートである。
図3】実施の形態に係る充放電検査システムの構成を示すブロック図である。
図4図3の充放電検査システムにおける電流校正プロセスのタイムチャートである。
図5図5(a)、(b)は、変形例1、2に係る電流校正プロセスのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0024】
図3は、実施の形態に係る充放電検査システム2の構成を示すブロック図である。
【0025】
はじめに検査プロセスについて説明する。検査プロセスでは図1(a)と同様に、校正装置6に代えて、トレー8に搭載された複数N個の2次電池1_1〜1_Nが、充放電検査装置4に接続される。多数の2次電池1を同時に検査するために、充放電検査装置4は多チャンネルで構成され、複数N個のチャンネルCH1〜CHNそれぞれの2次電池1_1〜1_Nを充電し、あるいは放電することにより、各2次電池1の電気的特性が仕様を満たしているかを検査する。2次電池1は、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池などが例示されるが、特に限定されない。
【0026】
充放電検査装置4は、チャンネルCH1〜CHNごとに設けられた、プローブ対10P/N、電源12_1〜12_N、電流センサ14_1〜14_Nを備える。各チャンネルは同様に構成される。
【0027】
各チャンネルCHi(1≦i≦N)のプローブ対10P/Nは、検査プロセスにおいて2次電池1_iの電極に対して、接離可能となっている。
【0028】
各チャンネルCHiの電源12_iは、プローブ対10P/Nに装着される対応する2次電池1_iに電力を供給し、対応する2次電池1_iを充放電する。各チャンネルCHiの電流センサ14_iは、対応する電源12_iからソースされ、またはシンクされる電流の経路上に設けられ、当該経路に流れる電流量を検出する。各チャンネルCHiの電源12_iは、検査プロセスにおいて、電流センサ14_iにより検出された電流量が所定の目標値に近づくように、2次電池1_iに供給する充放電電流をフィードバック制御する。
【0029】
N個のチャンネルCH1〜CHNのプローブ対10P/Nおよび電流センサ14_1〜14_Nは、N個の電源12_1〜12_Nとは独立したプローブユニット16上に実装されてもよい。
【0030】
プローブユニット16は、チャンネルごとに設けられ、それぞれが、対応する電源12_1〜12_Nの出力端子対(+端子、−端子)に対して、配線を介して接離可能なN個のコネクタ対18P/Nを備える。プローブユニット16の内部において、チャンネルごとに、コネクタ18とプローブ10が結線され、コネクタ18とプローブ10が電流センサ14を経由して結線される。電流センサ14は、P極側の配線上に設けられてもよい。
【0031】
以上が充放電検査装置4の構成である。続いて校正装置6の構成を説明する。校正装置6は、標準抵抗器30、計測器32、セレクタ34、N個の端子対36P/N、N個のシャントスイッチSW3_1〜SW3_N、電圧校正部38、を備える。端子対36P/Nは、チャンネルごとに設けられる。各チャンネルの端子対36P/Nは、対応するチャンネルのプローブ対10P/Nに対して接離可能となっている。セレクタ34は、標準抵抗器30を、N個の端子対36P/Nのうち、任意のひとつに接続可能に構成される。計測器32は、たとえばデジタルマルチメータであり、標準抵抗器30の電圧降下を測定することにより、標準抵抗器30に流れる校正電流の量を検出する。
【0032】
シャントスイッチSW3_1〜SW3_Nは、チャンネルごとに設けられ、それぞれが独立に制御可能であり、対応するプローブ対10P/Nの間を短絡可能に構成される。
【0033】
電圧校正部38は、充放電検査装置4の電圧センサ(不図示)を校正(電圧校正という)するために設けられる。
【0034】
以上が校正装置6の構成である。続いて、充放電検査システム2の電流校正プロセスの動作について説明する。
【0035】
図4は、図3の充放電検査システム2における電流校正プロセスのタイムチャートである。時刻t0に校正がスタートする。充放電検査システム2は、電流校正プロセスにおいて複数のチャンネルCH1〜CHNを順に校正対象とする。そして、校正対象のチャンネルCHiにおいて、(i)そのチャンネルCHiの電源12_iから、対応する電流センサ14_iにプレヒート用の電流を流すプレヒート工程を実行する。そして、(ii)プレヒート工程の完了後に、そのチャンネルCHiの電源12_iから供給される校正電流を、電流センサ14_iにより測定する。
【0036】
充放電検査システム2は、あるチャンネルCHiを校正中に、それ以外の未校正のチャンネルCHi+1〜CHNの少なくともひとつにおいて、プレヒート工程を並行して行う。本実施の形態では、あるチャンネルCHiを校正中に、未校正のチャンネルCHi+1〜CHNをすべてプレヒートするものとし、全チャンネルのプレヒートは、校正開始時刻t0から同時に開始される。あるチャンネルCHjにおいてプレヒートを行う間、そのチャンネルCHjのシャントスイッチSW3_jはオンする。これにより、電源12_jからの電流が、シャントスイッチSW3_j、電流センサ14_jを経由して流れ、電流センサ14_jおよびその周辺の温度が安定化され、電流センサ14_jの精度が高まる。校正が完了したチャンネルについては、プレヒートは不要であるから、シャントスイッチSW3をオフし、以降はプレヒートは行わない。
【0037】
以上が充放電検査システム2の動作である。
【0038】
充放電検査システム2によれば、各チャンネルの電流校正に先立ち、プレヒートを行うことにより校正精度を高めることができる。
そしてあるチャンネルCHiを校正中に、他のチャンネルCHi+1〜CHNのプレヒートを同時に行うことにより、チャンネルごとに、プレヒート、校正を順に行う場合(図2に示すように)に比べて、トータルの校正時間を大幅に短縮できる。具体的には、図4の電流校正プロセスでは、プレヒートの時間をT1、校正時間をT2とするとき、トータルの校正時間Tcは、
Tc=T1+N×T2
となる。つまり、図2の電流校正プロセスに比べて、トータルの校正時間Tcを(N−1)×T1短縮することができる。
【0039】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0040】
(変形例1)
実施の形態では、時刻t0に全チャンネルのプレヒート工程を一斉に開始する場合を説明したが本発明はそれには限定されない。
一般的に、電流センサ14_1の精度は、プレヒートの時間が長くなるにしたがい高くなるが、プレヒート時間がある長さとなると、その精度はあるレベルで頭打ちとなる。そこで変形例1では、各チャンネルにおいて、電流校正の開始時刻から所定のプレヒート期間T1前の時刻から、プレヒート工程を開始する。図5(a)は、変形例1に係る電流校正プロセスのタイムチャートである。
【0041】
図3の方式では、後ろのチャンネルほど、プレヒート工程の時間が長くなるのに対して、図5(a)の方式では、各チャンネルのプレヒート工程の時間を揃えることができる。この変形例1によれば、プレヒート工程の長さが無駄に長くなるのを防止でき、校正に要する消費電力を低減できる。
【0042】
(変形例2)
実施の形態では、充放電検査装置4が電流校正のみを単独で実施する場合を説明した。変形例2では、電流校正と電圧校正を実施する場合について説明する。図5(b)は、変形例2に係る校正プロセスのタイムチャートである。この変形例2では、電流校正と電圧校正を実施する場合に、電圧校正を先に実施する。電圧校正は、電流校正と同様に複数のチャンネルを順に校正対象とし、校正対象のチャンネルにおいて、充放電検査装置4の電圧センサ(不図示)を校正する。最終チャンネルにおいて電圧校正が終了すると、先頭のチャンネルから順に電流校正が行われる。各チャンネルCH1〜CH6のプレヒートは、その他のチャンネルにおいて電圧校正を行う間に実施される。たとえば各チャンネルのプレヒートは、同チャンネルにおいて電圧校正が完了した直後から開始してもよい。
【0043】
この変形例2では、各チャンネルにおいて電流校正に先立ってプレヒートを行いつつも、そのプレヒートの時間T1は、その他のチャンネルにおいて電圧校正を行う時間T3と重なっているため、プレヒートの時間T1はオーバーヘッドとはならない。このときのトータルの校正時間Tcは、以下の式で与えられ、プレヒート工程の時間T1は含まれないことに留意すべきである。
Tc=T3×N+T2×N
したがってこの変形例においても、プレヒートによる校正時間の延長を抑制できる。
【0044】
(変形例3)
実施の形態では、N個のチャンネルの充放電検査装置4に対して、全チャンネルを校正する場合を説明したが、本発明はそれには限定されない。たとえばN個のチャンネルを2つに分割し、はじめに半分のM(=N/2)チャンネルを同時に校正し、続いて残りのチャンネルを同時に校正してもよい。つまりMは任意である。
【0045】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0046】
1…2次電池、2…充放電検査システム、4…充放電検査装置、6…校正装置、8…トレー、10…プローブ対、12…電源、14…電流センサ、16…プローブユニット、30…標準抵抗器、32…計測器、34…セレクタ、36…端子対、38…電圧校正部、SW3…シャントスイッチ。
図1
図2
図3
図4
図5