(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記報告書作成部は、前記農作業データで得られた農業機械での実績を加えることで前記作業報告書を作成することを特徴とする請求項1又は2に記載の農業管理支援システム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態による農業管理支援システムを説明する。時刻とは、「時」、「分」、「秒」の少なくとも1つを用いて時の一点を指すものであるが、「年」、「月」、「日」を用いて時を指し示すものであってもよい。
[第1実施形態]
本発明の農業管理支援システムは、圃場において行った農作業を管理することができる
ものである。具体的には、農業管理支援システム1は、トラクタ、コンバイン、田植機などの農業機械が農作業を行ったときの農作業データを収集し、収集した農作業データを携帯端末等に送信することにより、農作業データを携帯端末等に記憶することができる。
【0014】
図1に示すように、農業管理支援システム1は、農業機械2に搭載されたデータ収集装置(データ収集部)3と、作業者が農作業のときに所持する携帯端末4とを備えている。
データ収集装置3は、農業機械2が稼働したときの農作業データを収集するもので、例えば、農業機械の負荷情報(速度、エンジン回転数)、施肥量、収穫量などの農作業に関するデータを、農作業データとして収集する。なお、農作業データとして収集する内容(項目)は、予めデータ収集装置3等に設定されている。
【0015】
データ収集装置3は、無線通信を行う通信装置(通信部)31を備えている。この通信装置31は、例えば、通信規格であるIEEE802.11シリーズのWi-Fi(登録商標)などの無線通信を行うことができる。そのため、このデータ収集装置3では、農作業時に農業機械2から出力された農作業データを取得して、Wi-Fiによる無線通信によって収集した農作業データを携帯端末4に送信することができる。
【0016】
通信装置31は、農業機械2を特定(識別)するための作業機特定情報を送信することが望ましい。作業機特定情報は、農業機械などの作業を行う作業機を特定するものであればどのようなものであってもよく、例えば、製造番号、機種、型式番号等である。このように作業機特定情報を農作業データと共に送信するようにすれば、どの農業機械2の農作業データであるかを識別することができる。
【0017】
携帯端末4は、例えば、比較的演算能力の高いスマートフォン(多機能携帯電話)やタブレットPC等の携帯型コンピュータなどである。この携帯端末4は、農作業時に作業者が所持することにより、農作業における様々な補助(サポート)を行うものある。
具体的には、携帯端末4は、農作業の作業計画を立案したり、農作業データを提供することができるもので、農業管理支援装置としての機能を有している。
【0018】
この携帯端末(農業管理支援装置)4は、位置検出部40、記憶部43と、計時部44と、作業確認部45、表示部46と、計画入力部48とを備えている。
位置検出部(位置検出装置)40は、衛星測位システム(Global Positioning System,Galileo、GLONASSなど)によって自己の位置(自己位置)を検出する。この位置検出装置40は、測位衛星(例えば、GPS衛星)6から送信された信号(GPS衛星の位置、送信時刻、補正情報等)を受信し、受信した信号に基づいて自己位置(例えば、緯度、経度)を検出する。また、位置検出装置40は、GPS衛星6から送信された送信時刻等に基づいて自己位置を検出した時の検出時刻も求める。これにより、農作業時に作業者が携帯端末4を所持することにより、位置検出装置(位置検出部)40が検出した自己位置を農作業時の位置(作業位置)として検出することができる。
【0019】
計画入力部48は、農作業の作業計画を立てるものであって、農業支援ソフトウェア等を動作させるプログラム等から構成されている。計画入力部48は、農業支援ソフトウェアを起動させると、液晶やタッチパネル等から構成された表示部46に、作業計画画面Nを表示する。
図2は、表示部46に表示された作業計画画面Nの一例を示している。
【0020】
図2に示すように、作業計画画面Nは、例えば、農作業を行う日付を入力する日付入力部N1、農作業を行う圃場(圃場名)を入力する圃場入力部N2、農作業を行う農業機械の有無を入力する機械入力部N3、例えば、代掻き、田植え、耕耘などの作業項目を入力する作業項目入力部N4を備えている。
作業計画画面Nにおいて、日付、圃場、農作業を行う農業機械の有無、作業項目の入力は、タッチパネル、キーボード、マウス等の入力インターフェースを用いて行うことができる。また、作業計画の入力項目(日付、圃場、農業機械の有無、作業項目)に入力する内容は、直接、入力インターフェースを用いて入力してもよいし、予め各入力項目から選択できる内容を携帯端末4に登録しておき、プルアップやプルダウンメニュー等によって選択してもよい。
【0021】
日付入力部N1、圃場入力部N2、機械入力部N3、作業項目入力部N4のそれぞれに
、日付、圃場、農業機械の有無、作業項目が入力された後、作業計画画面Nに表示された登録ボタンが選択されると、計画入力部48は、日付、圃場、農業機械の有無、作業項目の作業計画を、作業計画のデータとして記憶する。
このように、携帯端末4の計画入力部48によれば、例えば、農作業を行う圃場の近くで作業計画を立てることができる。即ち、農作業を行う圃場(現場)を見た上で、当該圃場で行う作業計画をたてることができる。
【0022】
作業確認部45は、作業計画通りに農作業が行われたか否かの確認の有無を確認するもので、有無の確認は、
図3に示すように、表示部46の作業確認画面Sに表示された開始ボタン47aや終了ボタン47bによって行う。例えば、作業計画のデータが記憶部43に入力された状況下において、作業計画で指定された日付又は作業時間内に開始ボタン47aが押されると、作業確認部45は、作業計画通りに農作業が開始したとする。また、作業計画のデータが記憶部43に入力された状況下において、作業計画で指定された日付又は作業時間内に終了ボタン47bが押されると、作業確認部45は、作業計画通りに農作業が終了したとする。即ち、作業計画が立てられた状況下で、開始ボタン47a及び終了ボタン47bを入力することにより、作業確認部45は、予め立てられた作業計画が予定通り遂行されたか否かの確認を行う。
【0023】
また、作業確認部45は、開始ボタン47aの選択時に時計部44が指し示した時刻を、作業開始時刻とする。また、作業確認部45は、終了ボタン47bの選択時に時計部44が算出していた時刻を、作業終了時刻とする。
即ち、作業確認部45によって、作業計画通りに農作業を行ったか否かの確認をすることができると共に、作業開始時刻や作業終了時刻も得ることができる。
【0024】
携帯端末4の記憶部43は、計画入力部48によって立てられた作業計画(作業計画のデータ)を記憶する。また、記憶部43は、作業計画が計画通りに行われたか否かの有無(作業確認部45によって確認した作業の有無)、作業開始時刻、作業終了時刻も記憶する。さらに、記憶部43は、データ収集装置3から送信された農作業データ等の作業機側情報、位置検出装置40で検出した作業位置も記憶する。なお、記憶部43は、携帯端末4、即ち、携帯端末4を所持する作業者を特定するための作業者特定情報(例えば、電話番号、固有ID番号など)するのが望ましい。
【0025】
即ち、記憶部(情報取得部)43によって、作業計画、作業計画が計画通りに行われたか否かの有無、作業開始時刻、作業終了時刻、農作業データを取得することができる。
さて、携帯端末4は、無線通信を行う通信装置(通信部)41を備えている。この通信装置41は、例えば、通信規格であるIEEE802.11シリーズのWi-Fi(登録商標)などの無線通信を行ったり、移動体通信網(例えば、携帯電話通信網)による無線通信を行う。なお、携帯端末4とデータ収集装置3(通信部31)との無線通信の通信距離は近距離であって、例えば、0〜20mの範囲に設定されている(通信距離の最大値が20m)。
【0026】
以上のことにより、農業管理支援システム1においては、データ収集装置3によって農作業データを収集することができる。また、データ収集装置3の通信装置(通信部)31によって、農作業データ等を携帯端末4に送信することができる。一方、携帯端末4側では、通信装置(通信部)41によって、データ収集装置3から送信された農作業データ等を受信することができる。携帯端末4の計画入力部48によって作業計画を入力することができる。また、作業確認部45によって、作業計画が計画通りに行われた否かを確認することができると共に、作業開始時刻や作業終了時刻を得ることができる。
【0027】
以下、農業管理支援システム1について、農業機械2としてトラクタを例にあげ、さらに、詳しく説明する。
図11に示すように、トラクタ2は、前後に車輪が取り付けられた走行車両(走行車体)10に、エンジン11、変速装置12等を搭載して構成されている。エンジン11の後方には、独立搭載型のキャビン13が設けられており、キャビン13内には運転席14が設けられている。また、走行車両10の後部には、3点リンク機構15が昇降可能に設けられると共に、エンジン11からの動力を伝達するPTO軸が設けられている。3点リン
ク機構15には、肥料散布装置、耕耘装置、農薬散布装置、播種散布装置、収穫装置などの作業装置16が着脱自在となっている。なお、
図11は、肥料散布装置を3点リンク機構15に取り付けた例を示している。
【0028】
図1に示すように、トラクタ2には、データ収集装置3の他に、制御装置8が搭載されている。この制御装置8は、トラクタ2の走行系制御や作業系制御等を行うものであって、走行系制御として、エンジンの動作を制御したり、作業系制御として、運転席の周囲に設けられた操作レバーや操作スイッチなどの操作具からの入力を受けると、入力値に従って3点リンク機構15の昇降、PTO軸の出力(回転数)などの動作を制御する。トラクタ2の走行系制御や作業系制御を行うときの制御信号や制御を行うための各種検出信号(例えば、センサが検出した信号)は、車両用通信ネットワークに出力されて、トラクタ2の各部に伝達される。なお、制御装置8による走行系制御や作業系制御は、上述したものに限定されない。
【0029】
データ収集装置3は、トラクタ2が動作しているときの農作業に関する様々なデータを各種センサや制御装置8等が接続された車両用ネットワーク等を介して自動的に収集する。例えば、トラクタ2の後部に作業装置16として耕耘装置が連結されてトラクタ2が動作したときは、ロータリーの回転数、ロータリーの負荷、エンジン回転数、車速、耕深などのデータが車両用通信ネットワークに出力される。データ収集装置3は、ロータリーの回転数、ロータリーの負荷、エンジン回転数、車速、耕深などを農作業データとして取得する。
【0030】
また、作業装置16が肥料散布装置、農薬散布装置、播種散布装置である場合は、車速、エンジン回転数、散布量(肥料散布量、農薬散布量、播種散布量)などのデータが車両通信ネットワーク上に出力され、データ収集装置3は、車速、エンジン回転数、肥料散布量(施肥量)、農薬散布量、播種散布量を農作業データとして取得する。或いは、作業装置16が収穫装置である場合は、車速、エンジン回転数、収穫量などのデータが車両通信ネットワーク上に出力され、データ収集装置3は、車速、エンジン回転数、収穫量を農作業データとして取得する。なお、この他に、農作業データは、コンバインであるときは、例えば、刈り取りクラッチのON又はOFF、田植機であるときは、植え付けクラッチのON又はOFF、トラクタであるときは、PTO軸の出力(回転数)、3点リンク機構15の昇降の高さなどである。また、農作業データは、農業機械2が稼働しているかしていないかを示す稼働フラグであってもよい。
【0031】
また、データ収集装置3は、様々な情報を一時的に記憶する記憶部(バッファ)33を備えている。この記憶部33には、農作業データ、作業機特定情報が記憶される。農作業データは、トラクタ2が移動する毎、又は、トラクタ2が動作する毎に、逐次、記憶部33に記憶される。また、データ収集装置3は、時間を計時する計時部34が設けられている。農作業データの検出時に計時部34が計時した時間を、データ検出時間として記憶部33に記憶する。なお、計時部34で計時する時間は、トラクタ2が稼働した稼働時間を累積した稼働累積時間(アワメータ)であってもよいし、時刻(暦、月、日、時、分、秒)であってもよいし、経過時間をカウントアップしたカウンタの数値であってもよい。
【0032】
まとめると、記憶部33には、作業機側情報(農作業データ、作業機特定情報及びデータ検出時間)が記憶される。
データ収集装置3の通信装置31は、携帯端末4(通信装置41)に対して認証情報(例えば、SSIDなどのネットワーク名)を含むビーコンを出力する。また、通信装置31は、ビーコンを受信した携帯端末4からプローブリクエスト(プローブ要求)があり、プローブリクエスト時に携帯端末4から送信されたSSIDが自己のものであるとき、認証処理に移行する。データ収集装置3の通信装置31は、携帯端末4から送信されたネットワークキーなどの認証情報が正しいものであれば、認証成立とし、認証が成立する(接続が確立する)と、作業機側情報を携帯端末4に送信する。
【0033】
次に、作業者が農作業を開始してから終了するまでの携帯端末4及びデータ収集装置3の動作について説明する。
図5は、携帯端末4及びデータ収集装置3の動作をまとめたものである。
作業者は、例えば、携帯端末4に格納した農業支援ソフトを起動して、当該携帯端末4の表示部46に作業計画画面Nする(S1)。そして、作業計画画面Nにおいて、日付入力部N1、圃場入力部N2、機械入力部N3、作業項目入力部N4のそれぞれに、日付、圃場、農作業を行う農業機械の有無、作業項目が入力され、表示部46に表示された登録ボタンを選択が選択されると、計画入力部48は、入力された作業計画のデータとして記憶する(S2)。このようにすれば、例えば、作業者が農作業を行う当日、農作業を行う圃場に到着したときなどにその場で、作業計画を作成することができる。
【0034】
次に、表示部46の作業確認画面Sに表示した開始ボタン47aが押されると、作業確認部45は、時計部44の時刻を作業開始時刻とし、作業開始時刻を記憶部43に記憶する(S3)。作業確認部45は、開始ボタン47aが押された時点で作業計画の遂行が開始されたとし、例えば、作業計画の遂行の開始を示す開始フラグを作業計画のデータと対応付けて記憶部43に記憶する(S4)。
【0035】
そして、作業者が農作業が終了し、表示部46の作業確認画面Sに表示した終了ボタン47bが押されると、作業確認部45は、時計部44の時刻を作業終了時刻とし、作業終了時刻を記憶部43に記憶する(S5)。また、携帯端末4は、終了ボタン47bが押された時点で作業計画の遂行が終了したとし、例えば、作業計画の遂行の終了を示す終了フラグを作業計画のデータと対応付けて記憶部43に記憶する(S6)。
【0036】
一方、携帯端末4は、通信装置31の認証情報(例えば、SSID)を受信すると(S7)、記憶部43に記憶されているネットワークキーの送信を行う(S8)。ネットワークキーによって認証が成立する(S9)と、データ収集装置3(通信装置31)は、記憶部33に記憶されている農作業データ等の作業機側情報を携帯端末4に送信する(S10)。携帯端末4は、データ収集装置3(通信装置31)から作業機側情報を受信すると、受信した作業機側情報を記憶する(S11)。携帯端末4は、上述したように、作業終了時刻の入力があるか否かを判定する(S12)。作業終了時刻の入力の指定があると、携帯端末4は、データ収集装置3(通信装置31)との接続を終了する(S13)。なお、作業終了時刻の入力の指定が行われない場合にも、通信エリアから外れれば、データ収集装置3と携帯端末4との接続は終了する。
【0037】
以上、農業支援システムによれば、作業計画のデータ、作業機側情報(農作業データ、作業機特定情報及びデータ検出時間)、農作業の開始及び終了を、携帯端末4に記憶することができる。
図1に示すように、携帯端末4は、作業報告書を作成する報告書作成部49を備えている。報告書作成部49は、農業支援ソフトウェアを構成するプログラム等から構成されている。報告書作成部49は、作業確認部45によって農作業が計画通りに行われたことが確認された場合に、予め計画入力部48によって作成された作業計画(作業計画のデータ)に基づいて作業報告書を作成する。即ち、上述したように作業計画に対応して開始フラグ及び終了フラグが記憶部43に記憶されている場合、報告書作成部49は、農作業が計画通りに行われたと判断する。
【0038】
図6(a)は、携帯端末4で作成した作業計画を示し、
図6(b)は、報告書作成部49によって作成した作業記録、即ち、作業報告書(例えば、作業日報)を示している。
農業支援ソフトウェアを起動すると、携帯端末4の報告書作成部49は、
図6(b)に示すように作業報告書を作成するための作成画面Zを表示部46に表示する。そして、報告書作成部49は、作業計画のデータを読み出す。次に、報告書作成部49は、作業報告書作成画面Zにおいて、日付部N11に作業計画の日付を入力し、圃場部N12に作業計画の圃場を入力し、機械部N13に作業計画の機械の有無を入力し、作業項目部N4に作業計画の作業項目を入力する。即ち、報告書作成部49は、作業計画の各項目の内容を作業報告書の各項目の内容に置き換える(転用する)ことによって、作業報告書を作成する。
【0039】
また、
図6(b)に示すように、報告書作成部49は、作業確認部45によって得られた作業開始時刻及び作業終了時刻を、作業報告書の作業時間部N15に入力する。例えば、作業開始時刻が9時00分である場合、報告書作成部49は、作業時間部N15におい
て作業開始時刻を入力する部分に「9時00分」を入力する。また、作業終了時刻が12時00分である場合、作業時間部N15において作業終了時刻を入力する部分に「12時00分」を入力する。
【0040】
また、報告書作成部49は、農業機械2の実績、即ち、農作業データ(例えば、収量)から得られる農業機械2での実績値を、作業報告書における作業実績N16に入力する。例えば、作業計画において作業項目が「収穫」である場合、報告書作成部49は、作業開始時刻から作業終了時刻までに得られた収穫量を集計し、集計した収穫量を作業実績N16に入力する。
【0041】
即ち、報告書作成部49は、まず、作業開始時刻から作業終了時刻までに得られた農作業データを抽出する。そして、報告書作成部49は、抽出した複数の農作業データ(例えば、収量、エンジン回転数等)の中から、さらに、作業計画の作業項目に対応する農作業データ(例えば、収量)を抽出する。そして、報告書作成部49は、抽出した農作業データ(例えば、収量)を集計することにより、作業項目に対応する実績値を求め、求めた実績値を作業報告書における作業実績N16に入力する。
【0042】
つまり、報告書作成部49は、作業計画に農作業データで得られた農業機械での実績(実績値)を加え、加えた作業計画を作業報告書に置き換えることにより、作業報告書を作成する。
以上によれば、作業者は、携帯端末4を用いて農作業を行うその場で作業計画を立てることができると共に、この作業計画を用いて作業報告書を作成することができる。上述したように、作業計画書を作成している場合において、農作業が作業計画通りに行っていることを作業者に確認することができれば、確実に、作業報告書を作成することができるが、作業者が作業計画通りに農作業を行っていたとしても、その確認を忘れてしまうことがある。本発明では、作業者が万が一、農作業が計画通りに行っていることの確認を忘れてしまった場合でも、後から作業報告書が作成できるようにしている。
【0043】
携帯端末4は、農作業データ提供部25を備えている。農作業データ提供部25は、農業支援ソフトウェアを構成するプログラム等から構成されている。
この農作業データ提供部25は、農業が計画通りに行われたことを作業確認部45によって確認できなかった場合に、農作業データを提供することができるものである。即ち、農作業データ提供部25は、例えば、作業計画を立案してから時間が経過した場合でも、後から作業報告書の作成に必要な農作業データ等を提供することができる。
【0044】
農業支援ソフトウェアを起動することにより農作業データ提供部25を作動させると、農作業データ提供部25は、携帯端末4の表示部54に振り返り画面Sを表示する。
以下、農作業データ等を提供する振り返り画面Sについて詳しく説明する。
図7に示すように、表示部54(振り返り画面S)は、作業場表示部56と、時間経過表示部60と、作業者表示部61と、機械表示部80とを備えている。
【0045】
作業場表示部56は、矩形状の表示フレームから構成されている。作業場表示部56は、後述するように、圃場を示す圃場マップや作業位置等を表示する。時間経過表示部60は、表示部54(振り返り画面S)に表示する時間の流れ(時間経過)を認識し易くするためのものであって、作業場表示部(表示フレーム)56の周囲に表示されている。
詳しくは、作業場表示部56の下側に時間経過表示部60が設けられている。この時間経過表示部60は、表示フレーム56の下端に沿って左右方向に所定の間隔で配置された目盛線60aと、目盛線60a上に数字等によって時刻を示した時刻表示体60bとで構成されている。また、時間経過表示部60は、時間の流れを示す直線上の時間軸60cが目盛線60aの下側であって当該目盛線60aに沿って設けられている。
【0046】
最小値を示す目盛線60a(時刻表示体60b)の近傍や最大値を示す目盛線60a(時刻表示体60b)の近傍には、時刻表示体60bに示される数値(時刻)を変更する変更部62が示されている。変更部62を入力インタフェースを用いて選択すると、時刻表示体60bの時刻を増減させることができる。
作業者表示部61は、作業者に関する情報を表示するものである。作業者表示部61は、作業者を識別(特定)するための作業者名を表示するための作業者名表示部65と、作
業者の作業開始時刻から作業終了時刻を時間経過と共に表示する作業者時間表示部66とを備えている。
【0047】
作業者名表示部65は、例えば、振り返り画面Sに表示する作業者名が予め携帯端末4に登録されている場合は、携帯端末4に登録された作業者名を表示する。或いは、作業者特定情報と作業者名とが予め関連付けられて携帯端末4の記憶部52に記憶されている場合は、作業者名表示部65は、作業者特定情報に対応する作業者名を表示する。なお、作業者名表示部65が作業者名を表示する方法は上述したものに限定されない。
【0048】
作業者名表示部65に表示した作業者名は、入力インターフェースによって選択を行うことができる。また、作業者名を表示している近傍には、スクロールバー90が表示され、スクロールバー90によって、作業者名表示部65は、表示する作業者名を変更することができる。
作業者時間表示部66は、作業者名表示部65に表示された作業者(作業者名)の作業開始時刻及び作業終了時刻を表示バー69によって表示する。
図7では、表示バー69の先端が作業開始時刻、表示バー69の後端が作業終了時刻を示している。
【0049】
機械表示部80は、作業機に関する情報を表示するものである。機械表示部80は、作業機名を表示するための作業機名表示部81と、農業機械の農作業データを時間経過と共に表示する稼働表示部82とを備えている。
作業機名表示部81は、振り返り画面Sに表示する作業機名を予め携帯端末4等に登録しておいた場合、登録済の作業機名を携帯端末4から読み込んで表示するものである。携帯端末4に複数の作業機名が登録されている場合には、各作業機名を上から順番に表示する。或いは、作業機特定情報と作業機名とが予め関連付けられて携帯端末4の記憶部52に記憶されている場合は、作業機名表示部81は、作業機特定情報に対応する作業機名を表示する。なお、作業機名表示部81が作業機名を表示する方法は上述したものに限定されない。
【0050】
稼働表示部82は、作業機名表示部81に表示された作業機(作業機名)の農作業データ(例えば、エンジンを稼動した時刻)を表示するものである。なお、エンジンを稼動した時刻は、エンジン回転数とエンジン回転数を検出したデータ検出時間により求めることができる。
例えば、エンジン回転数を検出したデータ検出時間が、「8時00分」から「12時00分」までに亘っていた場合、稼動表示部82は、稼動開始となる「5時00分」に表示バー83の先端を表示し、稼動終了となる「12時00分」に表示バー83の後端を表示する。
【0051】
さて、表示部54(振り返り画面S)には、指定時刻を指定するための指定表示具63が表示されている。指定表示具63は、時間経過表示部60(時間軸60c)に沿って直線的に左右方向に移動するものである。指定表示具63は、マウス、キーボード、或いは、タッチパネル等の入力インターフェースの操作(指示)によって移動させることができる。
【0052】
指定表示具63には指定する時間をピンポイントで指し示す指定部64が示されており、指定表示具63(指定部64)の停止位置に対応する時間経過表示部60(時間軸60c)上の時刻が、指定表示具63(指定部64)によって指し示された時刻(指定時刻)となる。
この実施形態では、「年、月、日、時、分」で表すことができる時刻のうち、指定表示具63は、「時、分」を指定する。「年、月、日」は、振り返り画面Sに表示されたカレンダー78の中から、年、月、日を選択することにより設定することができる。なお、指定表示具63を移動させることによって、「年、月、日、時、分」を指定することができるようにしてもよい。
【0053】
ここで、振り返り画面Sには、2つの指定表示具63が表示されている。振り返り画面Sの左側(時間軸60cの時間経過から見て過去)に配置された指定表示具63a(第1指定具という)は、第1の指定時刻(第1指定時刻という)を指定する。また、振り返り画面Sの右側(時間軸60cの時間経過から見て未来)に配置された指定表示具63b(
第2指定具という)は、第1指定時刻とは異なる第2指定時刻(第2指定時刻という)を指定する。このように、第1指定表示具63a及び第2指定表示具63bによって、2つの指定時刻、即ち、第1指定時刻及び第2指定時刻を指定することができる。
【0054】
作業場表示部56は、圃場マップを表示すると共に、作業者の作業位置を表示する。作業場表示部56における圃場マップ及び作業位置の表示について詳しく説明する。
圃場マップを作業場表示部56に表示するにあたって、まず、演算処理部53は、記憶部52に記憶されている圃場マップを読み込む。作業場表示部56は、演算処理部53が読み込んだ圃場マップを表示する。また、作業場表示部56は、圃場マップ上に、第1指定具63aで指定された第1指定時刻に対応する作業位置を表示したり、第2指定具63bで指定された第2指定時刻に対応する作業位置を表示する。
【0055】
例えば、作業者名表示部65に表示した作業者Aが選択された状況下で、第1指定具63aによって8時00分が第1指定時刻として指定され、且つ、第2指定具63bによって12時00分が第2指定時刻として指定された場合、演算処理部53は、8時00分〜12時00分までの作業者Aの作業位置を記憶部52から検索する。作業位置が存在する場合は、作業場表示部56は、8時00分〜12時00分までの作業者Aの作業位置を作業場マップM上に表示する。即ち、作業場表示部56は、第1指定時刻から第2指定時刻までの時間帯(指定時間帯)における作業位置を表示する。なお、作業位置の表示は、各作業位置をプロット点として示してもよいし、各作業位置を連続的に繋げた軌跡(作業者軌跡)として表示してもよい。
【0056】
これによれば、作業場の作業場マップ上に作業位置を重ねて表示したうえで、さらに、作業指定時刻を振り返り画面Sに表示しているため、どの圃場でどの時刻に農作業を行ったかを確認することができる。即ち、携帯端末4によれば、作業位置、作業場マップ及び作業開始時刻、作業終了時刻、作業者に提供することができるため、例えば、一日の農作業における作業者の動きと、農作業の開始及び終了の時刻との対応関係を作業者が把握し易くなり、農作業の作業報告書の作成を簡単に行うことができる。
【0057】
また、携帯端末4では、第1指定時刻や第2指定時刻を変化させたときの作業位置を確認することができるため、作業者は、所定時刻における農作業時の動きを簡単に振り返ることができる。
なお、作業位置を作業場表示部56に表示するに際し、表示バー69で表示されている全時間帯の作業位置と、指定時間帯の作業位置との両方を表示してもよい。例えば、
図8に示すように、作業者Aでは、表示バー69で表示されている全時間帯(8時00分〜12時30分)の作業位置Qを表示する。
図8では、Y1〜Y2までを結ぶ線が全時間帯の作業位置Qを示している。この状態で、指定時間帯(8時00分〜12時00分)が指定されると、全時間帯の作業位置Qのうち、その指定時間帯の作業位置を実線で、残りの作業位置を点線で示す。また、全時間帯の作業者位置と、指定時間帯の作業者位置との区別は、作業者位置を示す線等の色を変えることにより行ってもよい。
[第2実施形態]
第2実施形態では、農業管理支援装置を設置型コンピュータで構成したものである。第1実施形態と異なる点について説明する。
【0058】
図10に示すように、農業管理支援システム1は、データ収集装置3と、携帯端末4と、設置型コンピュータ7とを備えている。
携帯端末4は、位置検出部40、通信部41、記憶部43と、計時部44と、作業確認部45、表示部46とを備えている。記憶部43、計時部44、作業確認部45及び表示部46は、第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0059】
通信装置(通信部)41は、例えば、通信規格であるIEEE802.11シリーズのWi-Fi(登録商標)などの無線通信を行ったり、移動体通信網(例えば、携帯電話通信網)による無線通信を行うことができる。そのため、データ収集装置3(通信装置31)から送信された作業機側情報(農作業データ、作業機特定情報及びデータ検出時間など)を通信装置41によって受信することができる。また、通信装置41は、作業機側情報、作業計画通りに農作業が行われたか否かの情報、作業開始時刻、作業終了時刻を、設置
型コンピュータ7に送信することができる。
【0060】
設置型コンピュータ7は、農作業データ提供部25と、計画入力部48と、報告書作成部49と、記憶部53と、表示部56とを備えている。農作業データ提供部25、計画入力部48、報告書作成部49は、第1実施形態の携帯端末4と同様の動作をするため説明を省略する。即ち、農作業データ提供部25、計画入力部48、報告書作成部49は、第1実施形態における説明において携帯端末4を設置型コンピュータ7に読み替えればよい。また、表示部56は、様々な情報を表示するものであって、農作業データ提供部25によって農作業データ等の表示が指示されると、農作業データを表示する。
【0061】
次に、作業者が農作業を開始してから終了するまでの設置型コンピュータ7、携帯端末4、データ収集装置3の動作について、
図9を用いて説明する。
作業者は、農作業を行う事前準備として、設置型コンピュータ7に格納した農業支援ソフトを起動する。そうすると、設置型コンピュータ7の表示部56に、作業計画画面Nが表示される(S30)。そして、作業計画画面Nにおいて、日付入力部N1、圃場入力部N2、機械入力部N3、作業項目入力部N4のそれぞれに、日付、圃場、農作業を行う農業機械の有無、作業項目が入力され、表示部46に表示された登録ボタンを選択が選択されると、計画入力部48は、入力された作業計画を保持する(S31)。保持された作業計画は、作業計画のデータとして記憶部53に記憶される(S32)。このように、農作業を行う事前準備として、設置側コンピュータ7を用いて作業計画をたてることができる。
【0062】
次に、設置型コンピュータ7の作業計画のデータを携帯端末4に転送する(S33)。作業計画のデータは、携帯端末4の記憶部43に記憶される(S34)。なお、設置型コンピュータ7から携帯端末4への作業計画のデータの転送は、有線であっても無線であってもよい。
作業者は、例えば、作業計画のデータを格納した携帯端末4を所持して、農作業を行う圃場に向かう。そして、携帯端末4の表示部46に、作業計画を表示して当該作業計画の内容を確認する。ここで、表示部46の作業確認画面Sに表示した開始ボタン47aが押された場合、作業確認部45は、時計部44の時刻を作業開始時刻とし、作業開始時刻を記憶部43に記憶する(S35)。作業確認部45は、開始ボタン47aが押された時点で作業計画の遂行が開始されたとし、例えば、作業計画の遂行の開始を示すフラグを作業計画のデータと対応付けて記憶部43に記憶する(S36)。
【0063】
そして、作業者が農作業が終了し、表示部46の作業確認画面Sに表示した終了ボタン47bが押された場合、作業確認部45は、時計部44の時刻を作業終了時刻とし、作業終了時刻を記憶部43に記憶する(S37)。また、携帯端末4は、終了ボタン47bが押された時点で作業計画の遂行が終了したとし、例えば、作業計画の遂行の終了を示すフラグを作業計画のデータと対応付けて記憶部43に記憶する(S38)。
【0064】
一方、携帯端末4は、通信装置31の認証情報(例えば、SSID)を受信すると(S39)、記憶部43に記憶されているネットワークキーの送信を行う(S40)。ネットワークキーによって認証が成立する(S41)と、データ収集装置3(通信装置31)は、記憶部33に記憶されている農作業データ等の作業機側情報を携帯端末4に送信する(S42)。携帯端末4は、データ収集装置3(通信装置31)から作業機側情報を受信すると、受信した作業機側情報を記憶する(S43)。携帯端末4は、上述したように、農作業の終了の指定(作業終了時刻の入力)があるか否かを判定し(S44)する。農作業の終了の指定があると、携帯端末4は、データ収集装置3(通信装置31)との接続を終了する(S45)。
【0065】
設置型コンピュータ7の報告書作成部49は、第1実施形態で説明した携帯端末4と同様に、作業計画通りに農作業が行われた場合は、作業計画書に基づいて作業報告書を作成する。一方、設置型コンピュータ7の農作業データ提供部25は、農業が計画通りに行われたことを確認できなかった場合は表示部56に農作業データを表示することにより、当該農作業データを提供する。
【0066】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと
考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。上述した実施形態では、農業機械の一例としてトラクタを例にあげ説明したが、コンバインであってもよい。コンバインには、収穫した穀物のタンパク質を検出するセンサや収穫量を検出する計量器等が設けられており、コンバインに適用した場合には、収穫量、タンパク質などを農作業データとして取得することができ、圃場毎の収穫量やタンパク質などを整理することが可能となる。或いは、トラクタやコンバインだけでなく、農業機械は、田植機であってもよい。また、作業機として、農業機械だけでなく、バックホーの建設機械に適用してもよい。