(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記遅延変動量算出部は、第1の希望波の第1遅延変動量と、第2の希望波の第2遅延変動量を測定し、前記第1遅延変動量と前記第2遅延変動量の差が所定値よりも小さい場合に、前記第1遅延変動量と前記第2遅延変動量の平均値に基づいて前記クロック周波数誤差を算出することを特徴とする請求項1に記載の受信機。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。実施形態を通して、特定のキャリア番号の伝搬路特性を時間方向(OFDMシンボル方向)に抽出し、抽出した信号にフーリエ変換処理を施して取得される電力スペクトラムを、キャリア周波数の補正に用いる。
【0017】
この電力スペクトラムはいわゆるドップラースペクトラムに近い波形であり、送受信間のキャリア周波数がずれている場合、電力スペクトラムの中心が左右にシフトする。実施形態では、電力スペクトラムの中心が適切な位置に来るようにキャリア周波数の補正処理を行う。
【0018】
また、フーリエ変換処理により得られる電力スペクトラムは、各希望波の位相偏差(キャリア周波数)を合成したスペクトラム波形を形成するため、各希望波の位相偏差の中央値に合わせてキャリア周波数を補正することができる。
【0019】
第2実施形態ではさらに、クロック周波数の補正精度を向上させるために、逆フーリエ変換を受ける周波数方向の伝搬路特性推定値として、キャリア間隔を異ならせた2種類以上の遅延プロファイルを使用し、各遅延プロファイルを合成することで、希望波の遅延変動量の分解能を向上させる。
【0020】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の受信機100の構成図である。受信機100は、受信アンテナでOFDM方式の信号を受信する。RF帯処理部101は、受信したOFDM信号を無線(RF)周波数帯域で増幅し、各種フィルタリング処理を行ない、高周波信号を中間周波数(IF)の信号にダウンコンバートする。アナログ/デジタル変換(ADC)部102は、アナログ信号からデジタル信号に変換する。キャリア補正部103は、デジタル化された受信信号を、送信側のキャリア周波数に同期させるキャリア補正処理を行なう。クロック補正部104は、デジタル化された受信信号を送信側のクロック周波数に同期させるクロック補正処理を行う。
【0021】
キャリア補正部103は、受信信号の周波数帯域をキャリア周波数同期ずれの分だけ補正するため、キャリア周波数の同期ズレに相当する正弦波exp(jθ)を受信信号に乗算する。キャリア補正処理は、ADC1012の出力時のIF周波数帯(中心周波数)からベースバンド帯への変換を行う直交変調処理と同時に行われることが多い。
【0022】
他方、クロック補正部104は、送信機と受信機の間のクロック周波数誤差を補正するため、受信信号にクロック周波数誤差相当の位相補正処理および補間処理を行う。
【0023】
図1の構成では、ADC102出力であるデジタル信号に対してキャリア補正およびクロック補正を行うが、キャリア補正とクロック補正は、ADC前のアナログ信号に対して行ってもよい。その場合は、キャリア補正部103とクロック補正部104は、ADC102の前段に配置される。
【0024】
FFT(高速フーリ変換)部105は、キャリア補正とクロック補正が施された受信信号に高速フーリエ変換を施す。これにより、ディジタルサンプリングされた時間領域信号が、周波数領域信号へ変換される。OFDM信号は周波数方向に複数のサブキャリア(副搬送波)を多重化させた信号であり、周波数領域信号のサブキャリアごとに独立した送信データが格納される。
【0025】
図2は、OFDMのサブキャリア配置の例として、地上デジタル放送ISDB-T(Integrated Services Digital Broadcasting- Terrestrial)のOFDMフレームを示す。白丸Daはデータキャリアであり、送信側が受信側に送信したいデータが格納される。黒丸Dsはパイロットキャリアであり、規格により決められた既知信号(パイロット信号)が格納される。
【0026】
図1に戻って、パイロット抽出部106は、FFTで得られた周波数領域信号のうち、既知のパイロットキャリアに格納されているパイロット信号を抽出する。伝搬路特性推定部107は、パイロット信号の位相および振幅の変動量から、パイロットキャリア位置の伝搬路特性値を推定する。また、複数のパイロットキャリア位置の伝搬路特性値を内挿補間することにより、データキャリア位置の伝搬路推定値を推定する。求められた伝搬路推定値は、時間方向抽出部108と周波数領域抽出部111にそれぞれ入力される。また、図示はしないが、伝搬路特性推定部107の出力は、復調処理部へも入力される。
【0027】
図3に示すように、時間方向抽出部108は、特定のキャリア番号の伝搬路推定値を時間方向に抽出する。特定キャリア番号の伝搬路推定値を「時間方向に抽出」するとは、
図3の破線で囲んだ領域Sに示すように、あるキャリアにおける伝搬路推定値を、OFDMシンボルS方向に取り出すことをいう。FFT部109は、時間方向(OFDMシンボル方向)に抽出された伝搬路推定値に対して高速フーリエ変換を行い、電力スペクトラム波形11を取得する。この電力スペクトラム波形11は、各パスの位相変動情報が合成された波形であり、ドップラースペクトラム波形のようなものである。
【0028】
スペクトラム中心位相算出部110は、取得された電力スペクト波形11の中心位相(周波数)fcを算出し、中心位相と目標値との誤差(補正値)をキャリア補正部103にフィードバックする。キャリア補正部103は、補正値に基づき、電力スペクトラム11の中心周波数fcを目標位置にシフトさせて、キャリア周波数を補正する。
【0029】
図4は、スペクトラム中心位相算出部110とキャリア補正部103で行なわれるキャリア周波数の補正を示す。キャリア周波数の同期ズレが発生している場合、
図4(A)のように、電力スペクトラム11の中心周波数fcがシフトする。スペクトラム中心位相算出部110は、FFT109から出力される電力スペクトラム11の左端周波数(低周波端)flと右端周波数(高周波端)frを測定し、電力スペクトラム11の中心周波数fcを算出する(fc=(fr-fl)/2)。
【0030】
中心周波数fcと目標値(
図4(A)では、便宜上周波数軸上の原点「0」)との誤差を算出し、算出した誤差をキャリア補正部103にフィードバックする。
【0031】
キャリア補正部103は、
図4(B)のように、電力スペクトラム11をシフトさせて中心周波数fcを目標値に一致させる。
【0032】
図3に戻って、周波数方向抽出部111は、特定のOFDMシンボルの伝搬路推定値を周波数方向あるいはキャリアC方向に抽出する。IFFT(逆フーリエ変換)部112は抽出された信号を逆フーリエ変換(IFFT)することにより、遅延量に対する遅延プロファイル12を取得する。このとき、周波数方向抽出部111は、周波数方向Cに沿ってキャリアを複数間隔で抽出する。
図3の例では、3キャリアに1つの伝搬路特性推定値が抽出されている。
【0033】
送信機と受信機のクロック周波数に誤差がある場合、受信機側の希望波遅延量が変動する。遅延変動量算出部114は、遅延プロファイル12中の希望波信号のピーク遅延量を観測し、前回のピーク遅延量との差を取ることでピーク変動量を求める。そして、そのピーク変動量に相当するクロック誤差を求め、求めた誤差をクロック補正部104にフィードバックする。
【0034】
遅延プロファイル12中にピーク電力が同程度の希望波が複数存在する場合、時間経過にしたがってピーク電力が変動し、最大ピーク電力の希望波も変化する。最大ピーク電力を有する希望波が変わったことによる遅延量の変化を、誤ってクロック補正値として設定する場合がある。
【0035】
これを防止するため、
図5に示すように、2パス(2-path)モデルを提案する。遅延変動量算出部114は、パス#1とパス#2の2つのパスの希望波を観測し、時間tにおけるそれぞれのパスの遅延量D1(t)、D2(t)を算出する。D1(t)、D2(t)とΔt経過後のパスの遅延量D1(t+Δt)、D2(t+Δt)との差分を取ることで、各パスの遅延変動量ΔD1、ΔD2を取得する。
【0036】
ΔD1=D1(t+Δt)−D1(t)
ΔD2=D2(t+Δt)−D2(t) (1)
パス#2がNULLでなく、各パスの遅延変動量ΔD1、ΔD2が互いに近接する(差が所定値より小さい)場合、2つのパスの遅延変動量の平均値を全体の遅延変動量ΔDとする。
【0037】
パス#2がNULLであり、D1の遅延量が所定値より小さい場合、ΔD1を全体の遅延変動量ΔDとする。
【0038】
それ以外の場合は、測定不可という意味で、遅延量ΔDにNULLを代入する。
【0040】
遅延変動量ΔDがNULLでない場合は、遅延変動量ΔD相当のクロック周波数補正値デルタCLKを、クロック周波数補正部104にフィードバックする。遅延変動量ΔDがNULLの場合は、何もしない。
【0041】
図6は、遅延変動量算出部114が行う処理を示すフローチャートである。まず、処理開始の初期値として、D1(t)=NULL、D2(t)=NULLに設定する(S101)。
【0042】
IFFT部112から遅延プロファイル12を取得し、遅延プロファイル12中、最も電力が大きいパス#1を選択し、そのパスの遅延量D1(t)と電力値P1(t)を取得する(S102)。
【0043】
遅延プロファイル12から、パス#2を選択する(S103)。たとえば、遅延プロファイル12のうち、2番目に大きいパスの電力P2(t)が式(3)を満たす場合、そのパスをパス#2として選択し、遅延量D2(t)を取得する(S103)。
【0044】
P2(t)>P1(t)−X (3)
ここで、Xは任意の値である。
【0045】
2番目に大きいパスの電力P2(t)が式(3)を満たさない場合は、D2(t)=NULLとする(S103)。
【0046】
パス#1とパス#2について、D1(t)、D2(t)を前回の(Δt前の)遅延量との差分を取得し、式(1)により各パスの遅延変動量ΔD1、ΔD2を算出する(S104)。ただし、Dx(t)=NULLまたはDx(t−Δt)=NULLの場合は、ΔDx=NULLとする。
【0047】
その後、IFFT部112から次の時刻t+Δtの遅延プロファイル情報が通知されるまで待機する(S106)。次の時刻の遅延プロファイル情報の入力を受けて、S102〜S104を繰り返す。
【0048】
時間ステップΔtごとに、S104算出した遅延変動量ΔD1、ΔD2に基づいて、式(2)から全体の遅延変動量を算出する(S105)。
【0049】
全体のパス変動量ΔDがNULLでない場合、パス変動量ΔDに相当するクロック補正値ΔCLKをクロック補正部104にフィードバックする(S107)。
【0050】
このように、時間方向(シンボル方向)の伝搬路特性推定値にFFTを適用して電力スペクトラムを取得してキャリア補正に用い、伝搬路特性推定値にIFFTを適用して遅延プロファイルを取得し、
図6のフローに従ってクロック補正に用いることで、キャリア周波数の同期ずれと、クロック周波数の同期ずれの双方を適切に補正することができる。
【0051】
<第2実施形態>
図7は、第2実施形態の受信機200の構成図である。第2実施形態では、クロック周波数誤差の精度を向上させるため、伝搬路特性推定値から、周波数(キャリア)方向に抽出間隔を異ならせた2種類以上の抽出を実施し、各々の周波数方向抽出信号に対して逆フーリエ変換(IFFT)を行って、2種類以上の遅延プロファイルを取得する。取得した2種類以上の遅延プロファイルを合成することで、希望波のパス遅延量(D1、D2)を推定し、その結果を元に遅延変動量(ΔD1、ΔD2)の算出およびクロック補正値ΔCLKの算出を行う。
【0052】
受信機200において、アンテナ215、RF帯処理部201、ADC202、キャリア補正部203、クロック補正部204、FFT205、パイロット抽出部206、伝搬路特性推定部207、時間方向抽出部208、FFT209、スペクトラム中心位相算出部210の動作と構成は、第1実施形態のアンテナ115、RF帯処理部101、ADC102、キャリア補正部103、クロック補正部104、FFT105、パイロット抽出部106、伝搬路特性推定部107、時間方向抽出部108、FFT109、スペクトラム中心位相算出部110の動作および構成と同様であり、重複する説明を省略する。
【0053】
第1の周波数方向抽出部211−1は、伝搬路特性推定値を周波数方向に、たとえば12キャリアに1つの推定値を抽出する。第2の周波数方向抽出部211−2は、伝搬路特性推定値を周波数方向に、たとえば3キャリアに1つの推定値を抽出する。
【0054】
第1の周波数方向抽出部211−1の出力はIFFT212−1で逆フーリエ変換を受け、得られた遅延プロファイルが希望波遅延量推定部213に供給される。第2の周波数方向抽出部211−2の出力はIFFT212−2で逆フーリエ変換を受け、得られた遅延プロファイルが希望波遅延量推定部213に供給される。
【0055】
希望波遅延量推定部213は、2つの遅延プロファイルを合成して、合成後の希望波の遅延量を求める。遅延変動量算出部214は、合成プロファイルの遅延量に基づいて、時間Δtにおける変動量を求め、変動量の相当するクロック補正値を算出する。算出結果はクロック補正部204にフィードバックされる。
【0056】
図8は、周波数方向に異なる間隔で伝搬路特性推定値を抽出する例を示す。第1の周波数方向抽出部211−1によって12キャリア間隔で抽出された伝搬路特性推定値を逆フーリエ変換することにより、遅延プロファイル#1が得られる。第2の周波数方向抽出部211−2によって3キャリア間隔で抽出された伝搬路特性推定値を逆フーリエ変換することにより、遅延プロファイル#2が得られる。遅延プロファイル#1と遅延プロファイル#2を合成することで、合成遅延プロファイルPが得られる。
【0057】
逆フーリエ変換への入力キャリア間隔Bを変えると、遅延プロファイルで測定可能な最大遅延量と1ポイントあたりの分解能が変化する。OFDMのシンボル長をTs, 逆フーリエ変換のポイント数をNとした場合、B=12とB=3の遅延プロファイルの最大遅延量及び分解能は以下のようになる。
【0058】
入力キャリア間隔B=12の場合、最大遅延量=Ts/12、分解能=Ts/(12*N)
入力キャリア間隔B=3の場合、最大遅延量=Ts/3、分解能=Ts/(3*N)
このように、逆フーリエ変換への入力間隔と最大遅延量および分解能は反比例の関係にある。入力間隔Bが広い程、最大遅延量が小さくなり、1ポイントあたりの分解能が細かくなる。
【0059】
B=12の遅延プロファイル#1と、B=3の遅延プロファイル#2を比較した場合、B=12のときはB=3のときの4倍精密に(細かく)測定することができ、希望波遅延量Dの測定精度を向上させることができる。ところが、B=12で測定できる最大遅延量はTs/12であり、希望波遅延量DがTs/12を超えた場合、折り返しが発生し、式(4)で定義される遅延量D'(0<D'<Ts/12)の位置に折り返し虚像が発生する。
【0060】
D'=D−(Ts/12)*k (0<D'<Ts/12,kは整数値) (4)
一方、B=3で測定できる最大遅延量はTs/3であり、B=12の遅延プロファイルでは観測することができない遅延量DがTs/12を超える希望波を測定することができる。
【0061】
このように、1ポイントあたりの分解能はB=12の遅延プロファイルが有利だが、測定可能な最大遅延量はB=3の遅延プロファイルが有利である。両者の有利性を得るために、遅延プロファイル#1、#2の各々から得られる希望波遅延量の合成処理を行う。
【0062】
図9は、希望波遅延量の合成処理の例を示す。まず、
図9(A)のB=12の遅延プロファイル#1から希望波遅延量(d1_1,d1_2)を取得し、その希望波遅延量から折り返しを考慮した遅延量Dj_k(k=0〜3)を求める。折り返しを考慮した遅延量Dj_kは、B=12の遅延プロファイル#1の希望波遅延量をd1_jとすると、式(5)で求まる。
【0063】
Dj_k = d1_j+(Ts/12)*k (kは整数値) (5)
式(5)は式(4)から求まるものであり、遅延量Dj_kの中に本来の希望波遅延量Djが存在する。
【0064】
ところで、本来の希望遅延量Djが0<Dj<Ts/3の範囲内に存在する場合、B=3の遅延プロファイル#2により測定される希望波遅延量(d2_1,d2_2)は本来の希望波遅延量Djに準ずる値を取る。ただし、遅延プロファイル#2の分解能はB=12で求まる遅延量(d1_1,d1_2)より粗い。
【0065】
そこで、式(5)から求まるB=12のときの遅延量Dj_kと、B=3の希望波遅延量(d2_1,d2_2)との比較(AND処理)を行い、分解能精度の高い希望波遅延量Djを遅延プロファイル中に取り込む。
【0066】
たとえば、
図9(B)の遅延プロファイル#2のパス#1は、
図9(A)の遅延プロファイル#1のパス#1とほぼ同じ時間位置に出現し、d2_1≒d1_1の関係にある。このとき式(5)から、d1_1=D1_0である(k=0)。
【0067】
図8(9)の遅延プロファイル#2のパス#2は、
図9(A)の虚像V2とほぼ同じ時間位置に出現し、d2_2≒d1_2+(Ts/12)*2が成り立つ。このとき式(5)から、d1_2+(Ts/12)*2=D2_2である(k=2)。
【0068】
以上から、希望波遅延量D1,D2を下記のように定義する。
【0069】
D1=d1_1
D2=d1_2+(Ts/12)*2
この処理により、
図9(C)の合成遅延プロファイルでは、測定可能な最大遅延量はB=3に相当し、B=12に相当する分解能で希望波遅延量Dを求めることができる。
【0070】
<第3実施形態>
図10は、第3実施形態の受信機300の構成図である。第1実施形態および第2実施形態では、パイロットキャリアにより推定した伝搬路推定値を用いてキャリア補正およびクロック補正を行っているが、パイロットキャリア以外のキャリア信号で求めた伝搬路推定値を用いてもよい。
【0071】
たとえば、地上デジタル放送ISDB−Tでは、伝送制御信号としてTMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)やAC(Auxiliary Channel)を特定のキャリアに乗せている。これらの伝送制御信号は、差動バイナリ位相変調(DBPSK)で伝送されており、データキャリアの信号よりも容易に復調することができる。そこで、FFT305の出力の一部をTMCC/ACC抽出部309に入力する。
【0072】
TMCC/ACC抽出部399は、アンテナ315で受信され、RF帯処理部301、ADC302、キャリア補正部303、クロック補正部304、FTT部305で各処理を受けた信号から、伝送制御信号(TMCCあるいはACC)を抽出する。伝搬路特性推定部310は、抽出した伝送路制御信号から伝搬路特性を推定する。時間方向抽出部311は、伝搬路特性推定値から時間方向の推定値を抽出する。FFT312は、時間領域信号に高速フーリエ変換を施して電力スペクトラム(
図3参照)を取得する。スペクトラム中心位相算出部313は、
図4に示すように中心位相(周波数)fcの目標値(たとえば原点)からのズレを算出し、算出結果をキャリア補正部303にフィードバックする。
【0073】
なお、図示はしないが第1実施形態や第2実施形態と同様に、伝送制御信号に基づいて推定された伝搬路特性推定値を周波数方向に抽出し、逆フーリエ変換および
図6のフローにより遅延変動量を算出して、クロック補正を行なってもよい。第1実施形態〜第3実施形態の任意の特徴部分を組み合わせてもよい。TMCCあるいはACCに替えて、符号化率が低く、かつ復調しやすい変調方式で変調された制御信号の復調結果に基づいて伝搬路の推定を行なってもよい。
【0074】
これにより、マルチパスや伝搬路の変動により補正処理に誤差が生じ得る状況下でも、精度良くキャリア周波数ズレやクロックずれを補正しサブキャリア間の直交性を維持することができる。
【0075】
以上の説明に対し、以下の付記を提示する。
(付記1)
受信信号を時間領域の信号から周波数領域の信号に変換する変換部と、
前記周波数領域の信号から既知信号を抽出する抽出部と、
前記抽出された既知信号に基づいて伝搬路特性を推定する伝搬路特性推定部と、
前記推定された伝搬路特性のうち、特定のキャリアの伝搬路特性を時間方向に抽出する時間方向抽出部と、
前記時間方向に抽出された伝搬路特性から電力スペクトラムを取得する電力スペクトラム取得部と、
前記電力スペクトラムからキャリア周波数誤差を求める誤差算出部と、
前記キャリア周波数誤差に基づいて前記受信信号のキャリア周波数の補正を行うキャリア補正部と、
を有することを特徴とする受信機。
(付記2)
伝搬路特性推定部により推定された伝搬路特性のうち、特定のシンボルの伝搬路特性を周波数方向に抽出する周波数方向抽出と、
前記周波数方向に抽出された伝搬路特性から遅延プロファイルを取得する遅延プロファイル取得部と、
前記遅延プロファイル中の希望波の遅延変動量を算出し、前記遅延変動量からクロック周波数誤差を求める遅延変動量算出部と、
前記クロック周波数誤差に基づいて前記受信信号のクロック補正を行うクロック補正部と、
をさらに有することを特徴とする付記1に記載の受信機。
(付記3)
前記遅延変動量算出部は、第1の希望波の第1遅延変動量と、第2の希望波の第2遅延変動量を測定し、前記第1遅延変動量と前記第2遅延変動量の差が所定値よりも小さい場合に、前記第1遅延変動量と前記第2遅延変動量の平均値に基づいて前記クロック周波数誤差を算出することを特徴とする付記2に記載の受信機。
(付記4)
前記遅延変動量算出部は、前記第1遅延変動量と前記第2遅延変動量の差が前記所定値以上の場合は、前記クロック周波数誤差をNULLに設定することを特徴とすることを特徴とする付記3に記載の受信機。
(付記5)
前記遅延変動量算出部は、前記第2の希望波の遅延量を求めることができず、かつ前記第1の希望波の遅延量が閾値未満の場合に、前記第1の希望波の前記第1遅延変動量に基づいて前記クロック周波数誤差を算出することを特徴とする付記3または4に記載の受信機。
(付記6)
受信信号を時間領域の信号から周波数領域の信号に変換する変換部と、
前記周波数領域の信号から既知信号を抽出する抽出部と、
前記抽出された既知信号に基づいて伝搬路特性を推定する伝搬路特性推定部と、
前記伝搬路特性のうち、特定のシンボルの伝搬路特性を第1の間隔で周波数方向に抽出する第1の周波数方向抽出部と、
前記伝搬路特性のうち、前記特定のシンボルの伝搬路特性を前記第1の間隔よりも小さい第2の間隔で前記周波数方向に抽出する第2の周波数方向抽出部と、
前記第1の周波数方向抽出部により抽出された伝搬路特性から第1遅延プロファイルを取得する第1遅延プロファイル取得部と、
前記第2の周波数方向抽出部により抽出された伝搬路特性から第2遅延プロファイルを生成する第2遅延プロファイル取得部と、
前記第1遅延プロファイルと前記第2遅延プロファイルを合成して希望波の遅延量を取得する希望波遅延量推定部と、
前記希望波の遅延量から前記希望波の遅延変動量を算出し、前記遅延変動量に基づいてクロック周波数誤差を求める遅延変動量算出部と、
前記クロック周波数誤差に基づいて前記受信信号のクロック補正を行うクロック補正部と、
を有することを特徴とする受信機。
(付記7)
前記合成部は、前記第1プロファイルで測定可能な最大遅延量に基づいて、前記第1遅延プロファイル中の折り返し虚像位置を求め、前記折り返し虚像位置を含む前記第1遅延プロファイルと、前記第2プロファイルとを合成して前記希望波の遅延量を求めることを特徴とする付記6に記載の受信機。
(付記8)
前記既知信号はデータ信号に分散配置されたパイロット信号であることを特徴とする付記1〜7のいずれかに記載の受信機。
(付記9)
前記既知信号は、地上デジタル放送の伝送制御信号であることを特徴とする付記1〜7のいずれかに記載の受信機。
(付記10)
受信信号を時間領域の信号から周波数領域の信号に変換し、
前記周波数領域の信号から既知信号を抽出し、
前記抽出された既知信号に基づいて伝搬路特性を推定し、
前記推定された伝搬路特性のうち、特定のキャリアの伝搬路特性を時間方向に抽出し、
前記時間方向に抽出された伝搬路特性から電力スペクトラムを取得し、
前記電力スペクトラムからキャリア周波数誤差を求め、
前記キャリア周波数誤差に基づいて前記受信信号のキャリア周波数の補正を行う、
ことを特徴とする同期補正方法。
(付記11)
前記推定された伝搬路特性のうち特定のシンボルの伝搬路特性を周波数方向に抽出し、
前記周波数方向に抽出された伝搬路特性から遅延プロファイルを取得し、
前記遅延プロファイル中の希望波の遅延変動量を算出して前記遅延変動量からクロック周波数誤差を求め、
前記クロック周波数誤差に基づいて前記受信信号のクロック補正を行う、
工程をさらに有することを特徴とする付記10に記載の同期補正方法。
(付記12)
前記クロック周波数誤差の算出は、
前記遅延プロファイル中の第1の希望波の第1遅延変動量と、第2の希望波の第2遅延変動量を測定し、前記第1遅延変動量と前記第2遅延変動量の差が所定値よりも小さい場合に、前記第1遅延変動量と前記第2遅延変動量の平均値に基づいて前記クロック周波数誤差を算出することを特徴とする付記11に記載の同期補正方法。
(付記13)
前記遅延変動量算出部は、前記第1遅延変動量と前記第2遅延変動量の差が前記所定値以上の場合は、前記クロック周波数誤差をNULLに設定することを特徴とすることを特徴とする付記12に記載の同期補正方法。
(付記14)
前記遅延変動量算出部は、前記第2の希望波の遅延量を求めることができず、かつ前記第1の希望波の遅延量が閾値未満の場合に、前記第1の希望波の前記第1遅延変動量に基づいて前記クロック周波数誤差を算出することを特徴とする付記12または13に記載の同期補正方法。
(付記15)
受信信号を時間領域の信号から周波数領域の信号に変換し、
前記周波数領域の信号から既知信号を抽出し、
前記抽出された既知信号に基づいて伝搬路特性を推定し、
前記伝搬路特性のうち、特定のシンボルの伝搬路特性を第1の間隔で周波数方向に抽出し、
前記伝搬路特性のうち、前記特定のシンボルの伝搬路特性を、前記第1の間隔よりも小さい第2の間隔で前記周波数方向に抽出し、
前記第1の周波数方向抽出部により抽出された伝搬路特性から第1遅延プロファイルを取得し、
前記第2の周波数方向抽出部により抽出された伝搬路特性から第2遅延プロファイルを取得し、
前記第1遅延プロファイルと前記第2遅延プロファイルを合成して希望波の遅延量を取得し、
前記希望波の遅延量から前記希望波の遅延変動量を算出して、前記遅延変動量に基づいてクロック周波数誤差を求め、
前記クロック周波数誤差に基づいて前記受信信号のクロック補正を行う、
ことを特徴とする同期補正方法。
(付記16)
前記合成は、前記第1プロファイルで測定可能な最大遅延量に基づいて、前記第1遅延プロファイル中の折り返し虚像位置を求め、前記折り返し虚像位置を含む前記第1遅延プロファイルと、前記第2プロファイルとを合成して前記希望波の遅延量を求めることを特徴とする付記15に記載の同期補正方法。
(付記17)
前記既知信号はデータ信号に分散配置されたパイロット信号であることを特徴とする付記10〜16のいずれかに記載の同期補正方法。
(付記18)
前記既知信号は、地上デジタル放送の伝送制御信号であることを特徴とする付記10〜16のいずれかに記載の同期補正方法。