(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の拭き取り用の液体洗浄剤は、界面活性剤(A)(以下、「(A)成分」ということもある。)と、銅、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄及び亜鉛から選択される少なくとも1種(B)(以下、「(B)成分」ということもある。)と、キレート剤(C)(以下、「(C)成分」ということもある。)と、ビグアニド系ポリマー(D)(以下、「(D)成分」ということもある。)とを含有するものである。
以下、各成分について説明する。
【0014】
<(A)成分>
(A)成分は、界面活性剤である。拭き取り用の液体洗浄剤が(A)成分を含有することで、拭き取り洗浄前の洗浄対象物(被洗物)に付着した汚れや臭気成分を良好に除去できると共に、消臭・防臭効果の向上が図れる。これは、拭き取り用の液体洗浄剤中で、(A)成分が(D)成分と会合体を形成し、さらにこの会合体が(B)成分と(C)成分とで形成された錯体を取り込むことで、拭き取り洗浄後の被洗物に対する拭き取り用の液体洗浄剤の吸着力が向上し、抗菌効果および防臭効果を発揮するためと考えられる。
【0015】
(A)成分は少なくともアニオン界面活性剤(A1)(以下、「(A1)成分」ということもある。)を含む。
(A1)成分としては、従来公知のアニオン界面活性剤が使用でき、例えばアルキルサルフェート、アルコールエトキシサルフェート、アルキルベンゼンスルホン酸、α−スルホ脂肪酸、α−オレフィンスルホン酸、アルキルスルホネート、アルキルタウレート、石鹸、アルキルエトキシカルボキシレート、アシルアラニネート、アルキルリン酸エステル、ジアルキルスルホコハク酸、アルカンスルホン酸、アルキルイミノジ酢酸等や、これらの塩などが挙げられる。塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、アミン塩、アンモニウム塩などが挙げられる。これらの中でも、汚れや臭気成分の除去に優れ、高い消臭・防臭効果が得られる観点から、アルカンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩が好ましい。また、拭き跡が残りにくい観点から、アルコールエトキシサルフェートが好ましい。
これらの(A1)成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】
アルカンスルホン酸塩としては、二級アルカンスルホン酸塩(以下、「SAS」ということもある。)が好ましい。
SASは、「パラフィンスルホン酸塩」とも呼ばれる界面活性剤であって、通常、1分子当たり炭素数10〜21の二級アルキルスルホン酸塩の混合物の形態で提供される。本発明においては、この混合物中に1分子当たり炭素数13〜18の二級アルキルスルホン酸塩を80質量%以上含有するものが好ましく、90質量%以上含有するものがより好ましい。なお、この混合物には、少量の一級アルキルスルホン酸塩、ジスルホン酸塩、ポリスルホン酸塩が含まれていてもよい。
SASとしては、下記一般式(a1)で表される化合物が好ましい。
【0018】
式(a1)中、p+q=10〜14であり、M
+は対イオンである。
すなわち、前記式(a1)で表される化合物は、炭素数13〜17(ただし、式(a1)におけるM中の炭素数は含まない。)の二級アルキルスルホン酸塩である。
p+qが10以上であると、洗浄力、特に油汚れに対する洗浄力がより向上する。一方、p+qが14以下であると、式(a1)で表される化合物自体の溶解性が良好となるため、保存時における析出などが抑制される。
【0019】
対イオンとなるMとしては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アルカノールアミンなどが挙げられる。アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウムなどが挙げられる。アルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが挙げられる。これらの中でもアルカリ金属が好ましく、ナトリウムが特に好ましい。
【0020】
SASとしては市販品を用いることができ、例えばクラリアントジャパン株式会社製の「HOSTAPUR SAS30A」、「HOSTAPUR SAS60」(いずれも、炭素数13〜17の二級アルキルスルホン酸ナトリウムの含有量が90質量%以上);Bayer社製の「MERSOL80」(平均炭素数15、炭素数13〜17の二級アルキルスルホン酸ナトリウムの含有量が80質量%以上);SASOL社製の「MARLON PS65」、「MARLON PS60」、「MARLON PS60W」(いずれも、炭素数13〜17の二級アルキルスルホン酸ナトリウムの含有量が90質量%以上)などが挙げられる。
【0021】
ジアルキルスルホコハク酸塩としては、ジアルキル(炭素数6〜18)スルホコハク酸エステル塩(例えばジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム等)、(ポリ)オキシエチレン(平均繰り返し数=1〜50)ジアルキル(炭素数8〜24)スルホコハク酸エステル塩(例えばジ−ポリオキシエチレン(平均繰り返し数=2〜20)ラウリルスルホコハク酸ナトリウム等)などが挙げられる。
【0022】
アルコールエトキシサルフェートとしては、例えば炭素数2〜4のアルキレンオキサイドのいずれか、又はエチレンオキサイドとプロピレンオキサイド(モル比EO/PO=0.1/9.9〜9.9/0.1)を、平均0.5〜10モル付加した炭素数10〜20の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル(又はアルケニル)基を有するアルキル(又はアルケニル)エーテル硫酸塩(AES)などが挙げられる。
【0023】
(A)成分は、(A1)成分以外にも、両性界面活性剤(A2)(以下、「(A2)成分」ということもある。)、非イオン界面活性剤(A3)(以下、「(A3)成分」ということもある。)、半極性界面活性剤(A4)(以下、「(A4)成分」ということもある。)を含んでいてもよい。さらに、(A)成分は、(A1)〜(A4)成分以外にも、通常の洗浄剤に使用される界面活性剤を含むことができる。
【0024】
拭き取り用の液体洗浄剤が(A2)成分を含有することで、特に乾燥尿に対する洗浄力が向上する。加えて、拭き取り洗浄後の被洗物がべたついたり、ぬるついたりしにくく、拭き跡も残りにくくなる。
(A2)成分としては、従来公知の両性界面活性剤が使用できるが、下記一般式(a2−1)で表される化合物及び下記一般式(a2−2)で表される化合物から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0026】
式(a2−1)中、R
31は炭素数8〜20のアルキル基又はアルケニル基を表し、R
32は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R
33及びR
34は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、R
35は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0027】
式(a2−1)中、R
31のアルキル基及びアルケニル基は直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。R
31は炭素数10〜16の直鎖もしくは分岐アルキル基又はアルケニル基が好ましく、直鎖アルキル基がより好ましい。
R
32のアルキレン基は直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。R
32は炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐アルキレン基が好ましく、直鎖アルキレン基がより好ましい。また、R
32のアルキレン基は無置換でもよいし、水素原子の一部が置換基で置換されていてもよいが、無置換であるものが好ましい。置換基としては、メチル基、エチル基等のアルキル基やヒドロキシ基が挙げられる。
R
33及びR
34のアルキル基は直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。R
33及びR
34はそれぞれ独立に、炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐アルキル基が好ましい。R
33及びR
34は同じであってもよく、異なっていてもよい。特に、R
33及びR
34が共に炭素数1〜3の直鎖アルキル基であることが好ましい。
R
35のアルキレン基は直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。R
35は炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐アルキレン基が好ましく、直鎖アルキレン基がより好ましい。R
35のアルキレン基は無置換でもよいし、水素原子の一部が上述した置換基で置換されていてもよいが、無置換であるものが好ましい。
【0028】
式(a2−1)で表される化合物の具体例としては、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、オクチルアミドプロピル−N,N−ジメチル酢酸ベタイン、ラウリルアミドプロピル−N,N−ジメチル酢酸ベタイン、ステアリル−N,N−ジメチル酢酸ベタイン、ステアリル−N,N−ジメチル−2−ヒドロキシプロピルベタインなどが挙げられる。これらの中でも、ラウリン酸アミドプロピルベタインが特に好ましい。
式(a2−1)で表される化合物としては市販品を用いることができ、例えばラウリン酸アミドプロピルベタインとして、ライオン株式会社製の「エナジコールL−30B」;ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインとして、一方社油脂工業株式会社製の「CAB−30」;ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインとして、デグサ社製の「TEGO BETAIN CK−OK」;パーム核油脂肪酸アミドプロピルベタインとして、ミヨシ油脂株式会社製の「アンホレックスPB−1」などが挙げられる。
【0030】
式(a2−2)中、R
41は、炭素数8〜18のアルキル基又はアルケニル基を表し、R
42及びR
43は、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基又はアルケニル基を表し、R
44は炭素数1〜6のアルキレン基又はヒドロキシアルキレン基を表す。
【0031】
式(a2−2)中、R
41のアルキル基及びアルケニル基は直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。R
41は炭素数10〜16の直鎖もしくは分岐アルキル基又はアルケニル基が好ましく、直鎖アルキル基がより好ましい。
R
42及びR
43のアルキル基及びアルケニル基は直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。R
42及びR
43はそれぞれ独立に、炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐アルキル基又はアルケニル基が好ましく、直鎖アルキル基がより好ましい。R
42及びR
43は同じであってもよく、異なっていてもよい。特に、R
42及びR
43が共に炭素数1〜3の直鎖アルキル基であることが好ましい。
R
44のアルキレン基及びヒドロキシアルキレンは直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。R
44は炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐アルキレン基又はヒドロキシアルキレン基好ましく、直鎖アルキレン基がより好ましい。
【0032】
式(a2−2)で表される化合物の具体例としては、ヤシ油アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、パルミチルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどが挙げられる。これらの中でも、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインが特に好ましい。
式(a2−2)で表される化合物としては市販品を用いることができ、例えばラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインとして、三洋化成工業株式会社製の「レボンLD−36」、東邦化学工業株式会社製の「オバゾリンLB−SF」;ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタインとして、花王株式会社製の「アンヒトール86B」などが挙げられる。
【0033】
(A2)成分としては、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインが特に好ましい。
【0034】
(A3)成分としては、従来公知の非イオン界面活性剤が使用でき、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルポリグルコシド、脂肪酸ポリグリセリンエステル、脂肪酸ショ糖エステル、脂肪酸アルカノールアミドなどが挙げられる。これらの中でも、アルキルポリグルコシドが好ましい。
【0035】
(A4)成分としては、従来公知の半極性界面活性剤が使用できる。
ここで、「半極性界面活性剤」とは、半極性結合(無極性結合及び極性結合の中間の性質を有する結合)を有する界面活性剤のことであり、半極性界面活性剤が溶解する溶液または分散する分散系のpHにより、カチオン性、アニオン性、または両極性となる。
(A4)成分としては、ドデシルジメチルアミンオキサイド、ミリスチルジメチルアミンオキサイド、ヤシアルキルジメチルアミンオキサイド等のアルキルアミンオキサイド;ヤシ油脂肪酸アミドプロピルアミンオキサイド、ラウリン酸アミドプロピルアミンオキサイド等のアミドアミンオキサイドなどが挙げられる。
【0036】
拭き取り用の液体洗浄剤100質量%中の(A)成分の含有量は、0.1〜5質量%であり、0.3〜3質量%が好ましく、0.7〜2.2質量%がより好ましい。(A)成分の含有量が上記下限値未満であると、十分な洗浄力が得られない。一方、(A)成分の含有量が上記上限値超であると、拭き取り洗浄時のべたつきやぬるつきを抑制しにくくなると共に、拭き跡が残りやすくなる。
【0037】
また、(A)成分100質量%中の(A1)成分の含有量は、10質量%以上が好ましく、20〜80質量%がより好ましく、40〜60質量%がさらに好ましい。(A1)成分の含有量が上記下限値未満であると、洗浄力が不十分になるおそれがある。一方、(A1)成分の含有量が上記上限値超であると、拭き跡が残りやすくなるおそれがある。また、抗菌力が不十分になるおそれがある。
【0038】
<(B)成分>
(B)成分は、銅、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄及び亜鉛から選択される少なくとも1種である。拭き取り用の液体洗浄剤が(B)成分を含有することで、優れた消臭・防臭効果を発揮する。これは、拭き取り用の液体洗浄剤中で(B)成分が(C)成分と錯体を形成し、この錯体が微生物の増殖を抑制したり、臭気を吸着したりするためと考えられる。
【0039】
(B)成分としては、マンガン、銅又は亜鉛が好ましく、銅又は亜鉛がより好ましく、亜鉛がさらに好ましい。これらの(B)成分を用いることで、消臭・防臭効果をさらに高められる。
【0040】
(B)成分は、各種金属化合物として配合されてもよいし、後述する(C)成分との錯体として配合されてもよい。ただし、拭き取り用の液体洗浄剤の美観、生産効率等の観点から、(B)成分を金属化合物として配合することが好ましい。
【0041】
金属化合物は、水に溶解するものであればよく、金属化合物を形成する塩としては、硝酸塩、硫酸塩、塩化物、過塩素酸過物、塩化アンモニウム塩、シアン化物等の無機塩、酢酸塩、グルコン酸塩、酒石酸塩、グリシン塩等の有機塩等が挙げられる。
【0042】
マンガン化合物としては、水中でマンガンイオンを放出するものであれば特に限定されず、例えば、硝酸マンガン、硫酸マンガン、塩化マンガン、酢酸マンガン、過塩素酸マンガン、マンガンアセチルアセトナート等が挙げられる。これらの中でも、取り扱い性、コスト、原料供給性等の点で硫酸マンガン、塩化マンガンが好ましい。
銅化合物としては、水中で銅イオンを放出するものであれば特に限定されず、例えば、硝酸銅、硫化銅、硫酸銅、塩化銅、酢酸銅、シアン化銅、塩化アンモニウム銅、グルコン酸銅、酒石酸銅、過塩素酸銅等が挙げられる。これらの中でも、取り扱い性、コスト、原料供給性等の点で硫酸銅、塩化銅、グルコン酸銅が好ましく、硫酸銅がより好ましい。
亜鉛化合物としては、水中で亜鉛イオンを放出するものであれば特に限定されず、例えば、硝酸亜鉛、硫化亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、シアン化亜鉛、塩化アンモニウム亜鉛、グルコン酸亜鉛、酒石酸亜鉛、過塩素酸亜鉛等が挙げられる。これらの中でも、取り扱い性、コスト、原料供給性等の点で硫酸亜鉛、塩化亜鉛、グルコン酸塩が好ましく、硫酸亜鉛がより好ましい。
【0043】
拭き取り用の液体洗浄剤100質量%中の(B)成分の含有量は、(B)成分の種類を勘案して決定でき、例えば、0.1〜5質量%が好ましい。(B)成分の含有量が上記下限値未満であると、消臭・防臭効果が不十分になるおそれがある。一方、(B)成分の含有量が上記上限値超であると、拭き跡が残りやすくなるおそれがある。
【0044】
例えば、(B)成分としてマンガンを用いる場合、拭き取り用の液体洗浄剤100質量%中のマンガンの含有量は、0.001〜0.5質量%が好ましく、0.01〜0.3質量%がより好ましく、0.02〜0.15質量%がさらに好ましい。マンガンの含有量が上記下限値未満であると、消臭効果が不十分になるおそれがあり、上記上限値超としても、消臭効果のさらなる向上が図れないおそれがあるためである。
あるいは、(B)成分として銅を用いる場合、拭き取り用の液体洗浄剤100質量%中の銅の含有量は、0.001〜0.5質量%が好ましく、0.01〜0.3質量%がより好ましく、0.02〜0.15質量%がさらに好ましい。銅の含有量が上記下限値未満であると、消臭効果が不十分になるおそれがあり、上記上限値超としても、消臭効果のさらなる向上が図れないおそれがあるためである。
また、例えば、(B)成分として亜鉛を用いる場合、拭き取り用の液体洗浄剤100質量%中の亜鉛の含有量は、0.002〜2質量%が好ましく、0.02〜1質量%がより好ましく、0.05〜0.5質量%がさらに好ましい。亜鉛の含有量が上記下限値未満であると、消臭効果が不十分になるおそれがあり、上記上限値超としても、消臭効果のさらなる向上が図れないおそれがあるためである。
【0045】
(B)成分を(C)成分との錯体として配合する場合、錯体は、例えば、国際公開第09/078459号に記載の錯体の製造方法により製造できる。
【0046】
<(C)成分>
(C)成分は、下記一般式(c1)で表される化合物及び下記一般式(c2)で表される化合物から選択される少なくとも1種のキレート剤である。これらキレート剤は、(B)成分と錯体を形成するアミノカルボン酸型金属イオン封鎖剤である。拭き取り用の液体洗浄剤が(C)成分を含有することで、優れた消臭・防臭効果を発揮する。
【0048】
式(c1)中、X
11〜X
14は、それぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はカチオン性アンモニウムを表し、R
11は水素原子又はヒドロキシ基を表し、n1は0又は1の整数を表す。
【0049】
式(c1)中、X
11〜X
14におけるアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウムなどが挙げられる。アルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。なお、X
11〜X
14のうち少なくとも1つがアルカリ土類金属である場合には1/2原子分に相当する。例えば、X
11がカルシウムの場合、−COOX
11は、「−COO
−1/2(Ca)」となる。
カチオン性アンモニウムとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミンが挙げられ、例えば、アンモニウムの水素原子の1〜3個がアルカノール基で置換されたものが挙げられる。アルカノール基の炭素数は1〜3が好ましい。
中でも、X
11〜X
14は、アルカリ金属が好ましい。
式(c1)中のX
11〜X
14は、それぞれ、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0050】
式(c1)中のR
11は、水素原子、ヒドロキシ基のいずれであってもよい。
式(c1)中のn1は、1が好ましい。
【0051】
式(c1)で表される化合物としては、例えばイミノジコハク酸、3−ヒドロキシ−2,2’−イミノジコハク酸又はそれらの塩等が挙げられる。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩などが挙げられる。これらの中でも、ナトリウム塩又はカリウム塩がより好ましい。
【0053】
式(c2)中、Aはアルキル基、カルボキシ基、スルホ基、アミノ基、ヒドロキシ基又は水素原子を表し、X
21〜X
23は、それぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はカチオン性アンモニウムを表し、n2は0〜5の整数を表す。
【0054】
式(c2)中、X
21〜X
23におけるアルカリ金属、アルカリ土類金属、カチオン性アンモニウムとしては、それぞれ、前記X
11〜X
14におけるアルカリ金属、アルカリ土類金属、カチオン性アンモニウムと同様のものが挙げられる。X
21〜X
23は、アルカリ金属が好ましい。
式(c2)中のX
21〜X
23は、それぞれ、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0055】
式(c2)のAにおけるアルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。アルキル基の炭素数は1〜30が好ましく、1〜18がより好ましい。該アルキル基は、その水素原子の一部が置換基にて置換されていてもよい。置換基としては、スルホ基(−SO
3H)、アミノ基(−NH
2)、ヒドロキシ基、ニトロ基(−NO
2)等が挙げられる。
Aは、アルキル基、カルボキシ基、スルホ基、アミノ基、ヒドロキシ基、水素原子のいずれであってもよく、水素原子が好ましい。
式(c2)中のn2は、0〜2の整数が好ましく、1がより好ましい。
【0056】
式(c2)で表される化合物としては、例えばニトリロトリ酢酸、メチルグリシンジ酢酸、ジカルボキシメチルグルタミン酸、L−アスパラギン酸−N,N−二酢酸、セリン二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸又はそれらの塩等が挙げられる。これらの中でも、ニトリロトリ酢酸、メチルグリシンジ酢酸、ジカルボキシメチルグルタミン酸、L−アスパラギン酸−N,N−二酢酸又はそれらの塩が好ましく、メチルグリシンジ酢酸又はその塩がより好ましい。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩や、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩などが挙げられる。これらの中でも、ナトリウム塩又はカリウム塩が好ましい。
【0057】
これらの(C)成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
拭き取り用の液体洗浄剤100質量%中の(C)成分の含有量は、特に限定されないが、0.1〜5質量%が好ましく、0.2〜2質量%がより好ましく、0.2〜0.5質量%がさらに好ましい。(C)成分の含有量が上記範囲内であれば、消臭・防臭効果をより高められる。
【0058】
また、(B)成分中の金属イオンと(C)成分のモル比(以下、「(B)/(C)モル比」ということもある。)は、0.3〜5が好ましく、0.4〜3がより好ましく、0.5〜2がさらに好ましく、1が特に好ましい。(B)/(C)モル比が上記範囲内であれば、消臭・防臭効果、および抗菌力をより高められる。
【0059】
<(D)成分>
(D)成分は、ビグアニド系ポリマーである。
(D)成分と(A)成分とを併用することで、抗菌力および消臭・防臭効果が高まる。(A)成分と(D)成分とを併用することにより、優れた抗菌力と、優れた消臭・防臭効果とを発揮する理由は定かではないが、以下のように推測される。
拭き取り用の液体洗浄剤中で(A)成分と(D)成分とは、会合体(以下、「A−D会合体」ということもある。)を形成する。このA−D会合体は、(D)成分単独に比べて被洗物に吸着しやすい。このため、A−D会合体として被洗物に付着した(D)成分により抗菌作用が発揮される。
加えて、菌が生育しやすい高湿度条件においては、微生物が洗浄で取り除けなかった汚れを代謝して、悪臭成分を産生する。被洗物に付着した(D)成分は、その菌増殖抑制効果により増菌を抑制して、消臭効果にも寄与すると考えられる。
さらに、A−D会合体が(B)成分と(C)成分とで形成される錯体を取り込み、この錯体との相乗効果により、優れた消臭・防臭効果が発揮される。
【0060】
(D)成分としては、例えば、下記一般式(d1)で表されるポリアルキレンビグアニド化合物等のビグアニド化合物が好ましい。
【0062】
式(d1)中、n5は、[(CH
2)
3−NH−C(NH)−NH−C(NH)−NH−(CH
2)
3]で表される単位の平均繰り返し数を表す1〜40の数であり、好ましくは2〜14であり、より好ましくは11〜13であり、さらに好ましくは12である。n5が上記下限値以上であれば、(D)成分は、(B)成分と(C)成分とで形成される錯体を取り込んだ(A)成分との会合体を形成し、被洗浄物に吸着されやすくなる。このため、菌増殖抑制効果に加え消臭・防臭効果をより高められる。
n5の平均が上記上限値以下であれば、(D)成分の水への溶解性が良好となり、拭き取り用の液体洗浄剤の経時における液安定性を高められる。
【0063】
式(d1)中、HYは、有機酸又は無機酸を示し、塩酸、グルコン酸、酢酸が好ましく、塩酸がより好ましい。
【0064】
式(d1)中、m5は、n5と同じであってもよいし、異なっていてもよい。HYは、ビグアニド基の窒素原子と部分的に結合して塩を形成するため、n5とm5とは異なっていてもよい。
【0065】
(D)成分としては、市販のものを用いることができ、式(d1)のn5が12、HYがHClであり、純分20質量%の水分散液(pH4.5)であるポリヘキサメチレンビグアニド塩酸塩(アーチ・ケミカルズ・ジャパン株式会社製、「Proxel IB(登録商標)」)などが挙げられる。
これらの(D)成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0066】
拭き取り用の液体洗浄剤100質量%中の(D)成分の含有量は、0.002〜1質量%が好ましく、0.005〜0.1質量%がより好ましく、0.008〜0.02質量%がさらに好ましい。(D)成分の含有量が上記下限値未満であると、抗菌力が不十分になるおそれがある。一方、(D)成分の含有量が上記上限値超であると、洗浄力が不十分になると共に、拭き跡が残るおそれがある。
【0067】
また、(A1)成分/(D)成分で表される質量比(以下、「(A1)/(D)質量比」ということもある。)は、1〜500が好ましく、10〜200がより好ましく、50〜125がさらに好ましい。(A1)/(D)質量比が上記範囲内であれば、(B)成分と(C)成分との錯体が、A−D会合体を介して被洗物に良好に吸着し残留することで、消臭・防臭効果をより高められる。また、洗浄力と抗菌力のバランスも良好となる。
【0068】
<任意成分>
拭き取り用の液体洗浄剤は、(A)〜(D)成分に加え、溶媒を含有する。また、拭き掃除用の洗浄剤に用いられる通常の添加剤を含有してもよい。
溶媒としては、水、水溶性溶媒などが挙げられる。
水溶性溶媒としては、任意の比率で水と混ぜて透明に混ざるものであれば特に制限されないが、例えばエタノール、イソプロパノールなどの炭素数2〜3の1級アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの炭素数2〜6のグリコール類;グリセリン、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどの炭素数3〜8の多価アルコール類などが挙げられる。これらの中でも、拭き取り用の液体洗浄剤の香気に及ぼす影響、トイレットペーパーの破れにくさ、価格の点からエタノールが好ましい。
これらの溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0069】
水溶性溶媒としてエタノールを用いる場合、拭き取り用の液体洗浄剤100質量%中のエタノールの含有量は、15質量%以上が好ましく、15〜25質量%がより好ましく、18〜22質量%がさらに好ましい。エタノールの含有量が上記下限値未満であると、トイレットペーパーのような破れやすい拭き具を用いて拭き取り掃除を行った場合、拭き具が破れるおそれがあり、上記上限値超としても、破れ抑制効果のさらなる向上が図れないおそれがあるためである。
【0070】
添加剤としては、例えば香料、色素、粘度調整剤、pH調整剤、増粘剤、表面改質剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可溶化剤、キレート剤(ただし、(C)成分を除く。)、高分子化合物、防腐剤、抗菌剤、天然物等のエキス、分散剤などが挙げられる。
【0071】
<製造方法>
拭き取り用の液体洗浄剤の製造方法としては特に制限されず、例えば(A)〜(D)成分と、溶媒と、必要に応じて添加剤とを混合することにより製造される。このとき、拭き取り用の液体洗浄剤の25℃におけるpHがpH3〜11となるように、pH調整剤等で拭き取り用の液体洗浄剤のpHを調整することが好ましい。
pHを下げるために用いる酸としては、例えば塩酸、硫酸等の無機酸;酢酸、クエン酸等のカルボン酸などが挙げられる。一方、pHを上げるために用いるアルカリとしては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属塩;トリエタノールアミン等のアルカノールアミンなどが挙げられる。これらの中でも、拭き跡が残りにくい点で、酸としてはクエン酸が好ましく、アルカリとしては水酸化カリウムが好ましい。
【0072】
<洗浄方法>
本発明の拭き取り用の液体洗浄剤を用いた被洗物の洗浄方法としては、例えば拭き取り用の液体洗浄剤をトリガー式スプレーヤーに収容し、当該トリガー式スプレーヤーから泡状に吐出して被洗物に塗布し、その後すぐに又は適宜放置した後、該塗布した部位を拭き具で拭き取ることにより被洗物を洗浄する方法が挙げられる。また、拭き具に拭き取り用の液体洗浄剤を塗布して、被洗物に付着した汚れ等を拭き取ってもよい。
なお、本発明の拭き取り用の液体洗浄剤は、衣料などの繊維製品用の洗濯用洗浄剤とは異なるものである。
【0073】
被洗物としては、拭き取り用の液体洗浄剤をトリガー式スプレーヤーから吐出して塗布することが可能であれば特に制限されず、たとえば、衣料、バスタオル、ハンカチ、テーブルクロス、ランチョンマット、カーテン、ソファー、カーペット等の繊維製品;台所用品、浴室、トイレ、リビングの床、壁、家具等の硬表面などが挙げられる。なかでも、本発明の拭き取り用の液体洗浄剤は、水で洗い流すことが困難な場所や物の洗浄において特に好適である。
拭き具としては、布製品;トイレットペーパー、ティッシュペーパー、キッチンペーパー等の紙製品などが挙げられる。特に拭き取り用の液体洗浄剤がエタノールを含有していれば、拭き取り時にトイレットペーパー等の紙製品が破れにくい。
【0074】
トリガー式スプレーヤーとしては特に制限されるものではなく、一般に、洗浄剤製品(トリガー式スプレーヤーに洗浄剤組成物が収容されたもの)に用いられているものが挙げられる。
具体的には、拭き取り用の液体洗浄剤を霧状に吐出できるものであればよい。また、泡形成機能を備え、霧状にも泡状にも吐出できる、これらの切り替えが可能なものでもよい。また、拭き取り用の液体洗浄剤を広範囲に吐出するワイドパターンと、狭範囲に吐出するナローパターンとの切り替えが可能なものでもよい。
【0075】
<作用効果>
以上説明した本発明の拭き取り用の液体洗浄剤によれば、(A)〜(D)成分の相互作用により、洗浄力に優れ、菌の増殖やニオイの発生を抑制できる。
本発明の拭き取り用の液体洗浄剤が抗菌力及び消臭・防臭効果に優れる理由は定かではないが、以下のように推測される。
拭き取り用の液体洗浄剤中では、(B)成分と(C)成分とが錯体(以下、「金属錯体」ということもある。)を形成する。この金属錯体は、(B)成分単体及び(C)成分単体に比べて水溶性が低いため、A−D会合体中に容易に取り込まれる。このA−D会合体中に取り込まれた金属錯体は、金属錯体単独に比べて容易かつ強固に被洗物に吸着し、残留する。
被洗物に吸着された金属錯体の(B)成分周辺では、配位子となる(C)成分や、(B)成分に配位している水が、他の物質と置換されやすい状態になっていると考えられる。このため、被洗物に吸着した金属錯体においてはプラスに荷電しやすい臭気が、(B)成分と置換して金属錯体中の(C)成分と結合し、マイナスに荷電しやすい臭気が、水又は(C)成分と置換して金属錯体中の(B)成分と結合すると考えられる。このように、金属錯体は、臭気成分を良好に捕捉すると推測される。
そして、脂肪酸系、アミン系、チオール系等の様々な臭気を消臭できるものと考えられる。
さらに、臭気成分が金属錯体によって捕捉される効果は、継続して発揮される。よって、菌の増殖やニオイの発生を長時間にわたって抑制できる。
【0076】
また、本発明の拭き取り用の液体洗浄剤は、(A)成分の含有量が5質量%以下であるため、拭き取り洗浄後のべたつきやぬるつきがなく、かつ拭き跡が残りにくい。
特に、拭き取り用の液体洗浄剤が(A2)成分を含有すれば、べたつきやぬるつきの抑制効果が高まると共に、拭き跡もより残りにくくなる。
【実施例】
【0077】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。なお、各例で用いた成分の配合量は、特に断りのない限り純分換算値である。
【0078】
「使用原料」
(A)成分として、以下に示す化合物を用いた。
・(A1−1):二級アルカンスルホン酸ナトリウム(SAS)(クラリアントジャパン株式会社製、「HOSTAPUR SAS60」、平均分子量328)
・(A1−2):ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム(AES)(ライオン株式会社製、「サンノールTD−3130」)
・(A2−1):ラウリン酸アミドプロピルベタイン(LPB)(ライオン株式会社製、「エナジコールL−30B」)
・(A2−2):ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン(LDB)(三洋化成工業株式会社製、「レボンLD−36」)
・(A3−1):炭素数12−16のアルキルポリグルコシド(APG)(Cognis社製、「PLANTACARE 1200up」)
・(A3−2):炭素数8−10のアルキルポリグルコシド(APG)(BASFジャパン株式会社製、「GLUCOPON 215up」)
・(A4−1):ドデシルジメチルアミンオキシド(AX)(ライオン・アクゾ株式会社製、「アロモックスDM12D−W(C)」)
【0079】
(B)成分として、以下に示す化合物を用いた。
・(B−1):硫酸亜鉛・7水和物(関東化学株式会社製)
【0080】
(C)成分および(C)成分の代替品((C')成分)として、以下に示す化合物を用いた。
・(C−1):メチルグリシンジ酢酸3ナトリウム(MGDA)(BASF社製)
・(C'−1):エチレンジアミン4酢酸(EDTA)(関東化学株式会社製)
【0081】
(D)成分および(D)成分の代替品((D')成分)として、以下に示す化合物を用いた。
・(D−1):ポリヘキサメチレンビグアニド塩酸塩(アーチ・ケミカルズ・ジャパン株式会社製、「Proxel IB」)
・(D'−1):ジデシルジメチルアンモニウム塩(ライオン・アクゾ株式会社製、「アーカード210−50」)
【0082】
「実施例1」
<拭き取り用の液体洗浄剤の調製>
表1に示す配合で各成分を混合して、混合物のpHが7になるようにpH調整剤(水酸化カリウム、クエン酸)を用いて調整し、拭き取り用の液体洗浄剤を得た。
得られた拭き取り用の液体洗浄剤について、以下に示す評価を行った。結果を表1に示す。
なお、表1中の配合量の単位は質量%であり、純分換算量を示す。また、バランス量の水とは、最終生成物である拭き取り用の液体洗浄剤の総量(全体量)が100質量%になるように配合量を調整した水のことである。
【0083】
<抗菌力の評価>
JIS Z 2801に準拠し、以下のようにして抗菌試験を行った。
まず、5cm×5cmのポリプロピレン板(PP板)上に、拭き取り用の液体洗浄剤100μLを塗布した。23cm×18cmのティッシュペーパーを8等分に切り、その1つを4つ折りにした拭き具で、PP板上の拭き取り用の液体洗浄剤を拭き取った。拭き取り後のPP板をテストピースとした。
JIS L 1902に基づいて培養を行った大腸菌および黄色ブドウ球菌を1/500NBの液体培地によって懸濁して、菌数が2.5〜10×10
5個/mLとなるように濃度調製し、これを菌液とした。
滅菌シャーレに入れたテストピース上に菌液0.4mLを塗布し、その上に4cm×4cmの強化ポリエチレンフィルム(オルガノ株式会社製、「ストマッカーフィルム400型」)を密着させ、温度35±1℃、湿度90%以上の条件で24時間培養した。培養後のコロニー数をカウントして生菌数を求めた。
拭き取り用の液体洗浄剤による拭き取りを行わなかったPP板(未処理のPP板)についてもテストピースと同様の操作を行って生菌数を測定し、これらの測定値より抗菌活性値を下記式(i)より算出し、以下の評価基準にて抗菌力を評価した。
抗菌活性値=log(未処理のPP板の生菌数)−log(テストピースの生菌数) ・・・(i)
【0084】
(評価基準)
◎◎◎:抗菌活性値が4以上。
◎◎:抗菌活性値が3以上4未満。
◎:抗菌活性値が2以上3未満。
○:抗菌活性値が1以上2未満。
×:抗菌活性値が1未満。
【0085】
<洗浄力の評価>
<<尿汚れに対する洗浄力>>
成人男性3人より採取した尿100mLずつを混合し、これを混合尿とした。
スライドガラス上に混合尿50μLを滴下し、室温で乾燥するまで放置した。乾燥後の混合尿の上に拭き取り用の液体洗浄剤100μLを塗布した後、トイレットペーパー(日本製紙クレシア株式会社製、「クリネックス(シングル)」11.5cm×30cm)を8つ折りにした拭き具で拭き取った。拭き取り後の尿汚れの残り具合を目視で確認し、ざらつきの残り具合を触感で確認し、以下の評価基準にて尿汚れに対する洗浄力を評価した。
(評価基準)
◎◎:ひと拭きで尿汚れが全て落ちた。
◎:1往復の拭き取りで尿汚れが全て落ちた。
○:1.5往復の拭き取りで尿汚れが全て落ちた。
×:全ての尿汚れを落とすのに2往復以上かかった。
【0086】
<<油汚れに対する洗浄力>>
25℃、65%RH(相対湿度)の環境において、赤色に着色したトリオレイン30mgを一様に塗布した10cm四方の木製テーブル面上に対し、拭き取り用の液体洗浄剤0.3mLを塗布した後、4つ折りにした1gのティッシュペーパーで拭き取った。拭き取り後の油汚れ(トリオレイン)の残り具合を目視で確認し、ざらつきの残り具合を触感で確認し、以下の評価基準にて油汚れに対する洗浄力を評価した。
(評価基準)
◎◎:ひと拭きで油汚れが全て落ちた。
◎:1往復の拭き取りで油汚れが全て落ちた。
○:1.5往復の拭き取りで油汚れが全て落ちた。
×:全ての油汚れを落とすのに2往復以上かかった。
【0087】
<防臭力の評価>
<<尿臭に対する防臭力>>
成人男性3人より採取した尿100mLずつを混合し、これを混合尿とした。
まず、5cm×5cmのポリプロピレン板(PP板)上に、拭き取り用の液体洗浄剤100μLを塗布した。23cm×18cmのティッシュペーパーを8等分に切り、その1つを4つ折りにした拭き具で、PP板上の拭き取り用の液体洗浄剤を拭き取った。
拭き取り後のPP板上に混合尿50μLを滴下し、室温で乾燥するまで放置した後、450mLのガラス瓶内に入れて蓋をした。この状態で40℃に加温しながら1時間放置した後、室温に戻し、ガラス瓶内の臭気を専門パネラー10名により、下記6段階臭気強度表示法に基づいて官能評価した。
(6段階臭気強度表示法)
5点:耐えられない程度の強い臭気。
4点:強い臭気。
3点:明らかに感じる臭気。
2点:何のニオイかわかる程度の臭気。
1点:やっと感知できる程度の臭気。
0点:無臭。
【0088】
専門パネラー10名による官能評価の平均点を求め、以下の評価基準にて尿臭の抑制効果を評価した。
(評価基準)
◎◎◎:平均点が1点未満。
◎◎:平均点が1点以上1.5点未満。
◎:平均点が1.5点以上2点未満。
○:平均点が2点以上3点未満。
×:平均点が3点以上。
【0089】
<<食材の腐敗臭に対する防臭力>>
キャベツを千切りにしたもの50gと、イワシをすりつぶしたもの50gとを混合し、これを混合食材とした。
まず、5cm×5cmのポリプロピレン板(PP板)上に、拭き取り用の液体洗浄剤100μLを塗布した。23cm×18cmのティッシュペーパーを8等分に切り、その1つを4つ折りにした拭き具で、PP板上の拭き取り用の液体洗浄剤を拭き取った。
拭き取り後のPP板上に混合食材3mgをのせ、室温で乾燥するまで放置した後、450mLのガラス瓶内に入れて蓋をした。この状態で40℃に加温しながら1時間放置した後、室温に戻し、ガラス瓶内の臭気を専門パネラー10名により、下記6段階臭気強度表示法に基づいて官能評価した。
(6段階臭気強度表示法)
5点:耐えられない程度の強い臭気。
4点:強い臭気。
3点:明らかに感じる臭気。
2点:何のニオイかわかる程度の臭気。
1点:やっと感知できる程度の臭気。
0点:無臭。
【0090】
専門パネラー10名による官能評価の平均点を求め、以下の評価基準にて食材の腐敗臭の抑制効果を評価した。
(評価基準)
◎◎◎:平均点が1点未満。
◎◎:平均点が1点以上1.5点未満。
◎:平均点が1.5点以上2点未満。
○:平均点が2点以上3点未満。
×:平均点が3点以上。
【0091】
<<脂肪酸由来の悪臭に対する防臭力>>
まず、5cm×5cmのポリプロピレン板(PP板)上に、拭き取り用の液体洗浄剤100μLを塗布した。23cm×18cmのティッシュペーパーを8等分に切り、その1つを4つ折りにした拭き具で、PP板上の拭き取り用の液体洗浄剤を拭き取った。
拭き取り後のPP板上にトリオレイン3mgをのせ、室温で乾燥するまで放置した後、450mLのガラス瓶内に入れて蓋をした。この状態で40℃に加温しながら1時間放置した後、室温に戻し、ガラス瓶内の臭気を専門パネラー10名により、下記6段階臭気強度表示法に基づいて官能評価した。
(6段階臭気強度表示法)
5点:耐えられない程度の強い臭気。
4点:強い臭気。
3点:明らかに感じる臭気。
2点:何のニオイかわかる程度の臭気。
1点:やっと感知できる程度の臭気。
0点:無臭。
【0092】
専門パネラー10名による官能評価の平均点を求め、以下の評価基準にて脂肪酸由来の悪臭の抑制効果を評価した。
(評価基準)
◎◎◎:平均点が1点未満。
◎◎:平均点が1点以上2点未満。
◎:平均点が2点以上3点未満。
○:平均点が3点以上4点未満。
×:平均点が4点以上。
【0093】
<拭き跡残りの評価>
水平面に置かれた20cm×20cmの鏡の面における、四辺のうちの対向する一組の辺のそれぞれ中点付近同士を結ぶ線(中心線)上であって、かつ、その一組の辺のうちの一方の辺から2cm離れた位置に、拭き取り用の液体洗浄剤0.1mLを滴下した。
次いで、23cm×18cmのティッシュペーパーを8等分に切り、その1つを4つ折りにした拭き具を用い、鏡上の拭き取り用の液体洗浄剤を、前記一組の辺のうちの一方の辺から2cm離れた位置と、前記一組の辺のうちの他方の辺から2cm離れた位置との間の中心線上を一往復させて鏡の面を拭いた。
その後、5分間静置して乾燥し、鏡の面における拭き跡残りの状態を目視判定した。同様の操作を合計で5回行い、以下の評価基準にて拭き跡残りを評価した。
◎◎:5回とも拭き跡が全く残っていなかった。
◎:5回中4回は拭き跡が全く残っていなかった。1回はよく見ると、拭き跡がわずかに残っている状態であった。
○:5回中3回は拭き跡が全く残っていなかった。2回はよく見ると、拭き跡がわずかに残っている状態であった。
△:5回中1〜2回は拭き跡が全く残っていなかった。3〜4回はよく見ると、拭き跡がわずかに残っている状態であった。
×:5回全て拭き跡が残っているのが分かる状態であった。
【0094】
<べたつき・ぬるつきの評価>
5cm×5cmのポリプロピレン板(PP板)上に拭き取り用の液体洗浄剤100μLを塗布した。23cm×18cmのティッシュペーパーを8等分に切り、その1つを4つ折りにした拭き具で、PP板上の拭き取り用の液体洗浄剤を一往復させて拭き取った。拭き取り直後のPP板を手で触り、以下の評価基準にてべたつき・ぬるつきを評価した。
(評価基準)
◎◎:べたつき・ぬるつきが全くない。
◎:べたつき・ぬるつきがほとんどない。
○:べたつき・ぬるつきがややある。
×:べたつき・ぬるつきがある。
【0095】
「実施例2〜32、比較例1〜8」
各成分の配合量を表1〜4に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして各例の拭き取り用の液体洗浄剤を調製し、各種評価を行った。結果を表1〜4に示す。
なお、実施例32では、任意成分としてエタノール(純正化学株式会社製、試薬1級、純分95質量%)を用いた。
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】
【0098】
【表3】
【0099】
【表4】
【0100】
表1〜3から明らかなように、各実施例で得られた拭き取り用の液体洗浄剤は、抗菌力に優れ、菌の増殖を抑制できた。また、尿汚れや油汚れに対する洗浄力にも優れていた。また、尿臭、食材の腐敗臭、脂肪酸由来の悪臭に対する防臭力にも優れていた。さらに、拭き取り後のべたつきやぬるつきがなく、かつ拭き跡が残りにくかった。
【0101】
一方、(A)成分の含有量が0.03質量%である比較例1の拭き取り用の液体洗浄剤は、洗浄力に劣っていた。
(A)成分の含有量が6質量%である比較例2の拭き取り用の液体洗浄剤は、べたつきやぬるつき、拭き跡が残りやすかった。
(A1)成分を含有しない比較例3の拭き取り用の液体洗浄剤は、防臭力に劣っていた。
(B)成分、または(C)成分を含有しない比較例4、5の拭き取り用の液体洗浄剤は、防臭力に劣っていた。
(C)成分の代わりにEDTAを用いた比較例6の拭き取り用の液体洗浄剤は、防臭力に劣っていた。
(D)成分を含有しない比較例7の拭き取り用の液体洗浄剤は、抗菌力に劣っていた。
(D)成分の代わりにジデシルジメチルアンモニウム塩を用いた比較例8の拭き取り用の液体洗浄剤は、洗浄力に劣っていた。