特許第6118701号(P6118701)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6118701
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】圧力緩衝装置および減衰力発生機構
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/46 20060101AFI20170410BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20170410BHJP
   F16F 9/34 20060101ALI20170410BHJP
   B60G 13/08 20060101ALI20170410BHJP
   B60G 17/08 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   F16F9/46
   F16F9/32 L
   F16F9/34
   B60G13/08
   B60G17/08
【請求項の数】6
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2013-205327(P2013-205327)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-68472(P2015-68472A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000146010
【氏名又は名称】株式会社ショーワ
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118201
【弁理士】
【氏名又は名称】千田 武
(72)【発明者】
【氏名】塚原 貴
【審査官】 村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第19808698(DE,A1)
【文献】 特開2009−180233(JP,A)
【文献】 特開平05−296282(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0181126(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00−9/58
B60G 13/08
B60G 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容するシリンダと、
前記シリンダ内において軸方向に移動可能に設けられ、前記シリンダ内の空間の液体を収容する第1液室と第2液室とに区画する区画部材と、
前記区画部材内に形成され、前記区画部材の軸方向における一方向の移動に伴って前記第1液室から前記第2液室へと向かう液体を特定方向に流す第1流路と、
前記区画部材内に形成され、前記区画部材の軸方向における他方向の移動に伴って前記第2液室から前記第1液室へと向かう液体を前記特定方向に沿って流す第2流路と、
前記第1流路および前記第2流路を開閉して、前記第1流路および前記第2流路における液体の流れを制御する制御手段と、
前記制御手段が前記第1流路および前記第2流路を閉じる方向に前記制御手段に荷重を付与するとともに前記制御手段の荷重を変更可能に構成される荷重付与手段と、
を備え
前記荷重付与手段は、前記制御手段に対して一方向にのみ荷重を付与する圧力緩衝装置。
【請求項2】
前記荷重付与手段は、弾性部材を介して前記制御手段に荷重を付与する請求項1に記載の圧力緩衝装置。
【請求項3】
液体を収容するシリンダと、
前記シリンダ内において軸方向に移動可能に設けられ、前記シリンダ内の空間の液体を収容する第1液室と第2液室とに区画する区画部材と、
前記区画部材内に形成され、前記区画部材の軸方向における一方向の移動に伴って前記第1液室から前記第2液室へと向かう液体を特定方向に流す第1流路と、
前記区画部材内に形成され、前記区画部材の軸方向における他方向の移動に伴って前記第2液室から前記第1液室へと向かう液体を前記特定方向に沿って流す第2流路と、
前記第1流路および前記第2流路を開閉して、前記第1流路および前記第2流路における液体の流れを制御する制御手段と、
前記制御手段が前記第1流路および前記第2流路を閉じる方向に前記制御手段に荷重を付与するとともに前記制御手段の荷重を変更可能に構成される荷重付与手段と、
を備え
前記第1流路は、前記区画部材の一方側から前記区画部材内に導入した液体を前記区画部材の他方側に向けて流し、
前記第2流路は、前記区画部材の前記他方側から前記区画部材内に導入した液体を前記他方側に向けて反転させて流す圧力緩衝装置。
【請求項4】
液体を収容するシリンダと、
前記シリンダ内において軸方向に移動可能に設けられ、前記シリンダ内の空間の液体を収容する第1液室と第2液室とに区画する区画部材と、
前記区画部材内に形成され、前記区画部材の軸方向における一方向の移動に伴って前記第1液室から前記第2液室へと向かう液体を特定方向に流す第1流路と、
前記区画部材内に形成され、前記区画部材の軸方向における他方向の移動に伴って前記第2液室から前記第1液室へと向かう液体を前記特定方向に沿って流す第2流路と、
前記第1流路および前記第2流路を開閉して、前記第1流路および前記第2流路における液体の流れを制御する制御手段と、
前記制御手段が前記第1流路および前記第2流路を閉じる方向に前記制御手段に荷重を付与するとともに前記制御手段の荷重を変更可能に構成される荷重付与手段と、
を備え
前記制御手段は、一の側から前記第1流路および前記第2流路を開閉する単一の制御部材を備えている圧力緩衝装置。
【請求項5】
液体を収容するシリンダと、
前記シリンダ内において軸方向に移動可能に設けられ、前記シリンダ内の空間の液体を収容する第1液室と第2液室とに区画する区画部材と、
前記区画部材内に形成され、前記区画部材の軸方向における一方向の移動に伴って前記第1液室から前記第2液室へと向かう液体を特定方向に流す第1流路と、
前記区画部材内に形成され、前記区画部材の軸方向における他方向の移動に伴って前記第2液室から前記第1液室へと向かう液体を前記特定方向に沿って流す第2流路と、
前記第1流路および前記第2流路を開閉して、前記第1流路および前記第2流路における液体の流れを制御する制御手段と、
前記制御手段が前記第1流路および前記第2流路を閉じる方向に前記制御手段に荷重を付与するとともに前記制御手段の荷重を変更可能に構成される荷重付与手段と、
を備え
前記第1流路の他方側の流路口と前記第2流路の前記他方側の流路口とは前記区画部材に並べて配置され、
前記制御手段は、前記区画部材の前記他方側に配置され、
前記荷重付与手段は、前記制御手段の前記他方側にて前記制御手段に接触する接触部材と、前記他方側から一方側に向けて前記接触部材を移動させる移動手段とを有する圧力緩衝装置。
【請求項6】
前記第1流路の前記他方側の流路口と前記第2流路の前記他方側の流路口とは前記区画部材の半径方向に並べて配置され、
前記制御手段は、円環状に形成されて、前記第1流路および前記第2流路を開閉可能に設けられる請求項に記載の圧力緩衝装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力緩衝装置および減衰力発生機構に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の懸架装置は、走行中に路面から車体へ伝達される振動を適切に緩和して、乗心地や操縦安定性を向上させるために減衰力発生機構を用いた圧力緩衝装置を備えている。そして、圧力緩衝装置には、例えばシリンダ内に移動可能に設けられてシリンダ内を区画する区画部材と、区画部材に接続するロッド部材と、シリンダ内に設けられて区画部材の移動に伴う液体の流れに抵抗を与えて減衰力を発生させる減衰力発生部材とが設けられる。また、圧力緩衝装置では、ロッド部材の一方向および他方向の移動に伴い区画部材においてそれぞれ減衰力を発生させている。
【0003】
公報記載の従来技術として、図14に示すように、緩衝器は、シリンダ91の端部に設けられるピストン93により下部室94Aとリザーバ室94Bとに区画される。ピストン93は、ピストン93のベース932に形成されて、下部室94Aとリザーバ室94Bとを連通する連通孔931と、連通孔931を開閉可能に設けられて減衰力を与えるバルブ95とが設けられている。そして、バルブ95と対向して設けた押付部材96が移動し、バルブ95をベース932に押圧することによりバルブ95のセット荷重を変化させて減衰器における減衰力を変化させる技術が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−091476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば特許文献1に記載される従来の技術では、ピストンの軸方向における片方側に設けられるバルブに対してのみ押付部材を押圧させて減衰力を変化させている。しかしながら、従来の技術では、押付部材が設けられていない側に配置されるバルブにおいては減衰力を調整することができない。すなわち、区画部材の一方向に向かう動作に伴って生じる流体の流れの減衰力の調整は可能であっても、他方向に向かう動作に伴って生じる流体の流れの減衰力の調整ができないものであった。
そして、従来の技術において、区画部材の一方向および他方向の両方向の移動に伴って生じさせる減衰力の調整を行おうとすると、装置構成が複雑にならざるを得なかった。
【0006】
本発明は、一方向および他方向の両方向の移動に伴って生じる区画部材における減衰力の調整を簡易な構成で実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的のもと、本発明は、液体を収容するシリンダと、シリンダ内において軸方向に移動可能に設けられ、シリンダ内の空間の液体を収容する第1液室と第2液室とに区画する区画部材と、区画部材内に形成され、区画部材の軸方向における一方向の移動に伴って第1液室から第2液室へと向かう液体を特定方向に流す第1流路と、区画部材内に形成され、区画部材の軸方向における他方向の移動に伴って第2液室から第1液室へと向かう液体を特定方向に沿って流す第2流路と、第1流路および第2流路を開閉して、第1流路および第2流路における液体の流れを制御する制御手段と、制御手段が第1流路および第2流路を閉じる方向に制御手段に荷重を付与するとともに制御手段の荷重を変更可能に構成される荷重付与手段と、を備え、荷重付与手段は、制御手段に対して一方向にのみ荷重を付与する圧力緩衝装置である
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、一方向および他方向の両方向の移動に伴って生じる区画部材における減衰力の調整を簡易な構成で実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の懸架装置の概略構成を示す図である。
図2】本実施形態の油圧緩衝装置の全体構成図である。
図3】(a)および(b)は実施形態1のピストン部の分解斜視図である。
図4図2の矢印IVが示すピストン部周辺の拡大図である。
図5】実施形態1の減衰ユニットの分解斜視図である。
図6図2の矢印VIが示すボトムバルブ部周辺の拡大図である。
図7】(a)および(b)は油圧緩衝装置の動作を説明するための図である。
図8】実施形態2のピストン部を説明するための図である。
図9】実施形態2の減衰ユニットの分解斜視図である。
図10】実施形態2の油圧緩衝装置の動作を説明するための図である。
図11】実施形態3のピストン部を説明するための図である。
図12】実施形態3の油圧緩衝装置の動作を説明するための図である。
図13】実施形態4のピストン部を説明するための図である。
図14】従来の減衰力の可変構造を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本実施形態の懸架装置100の概略構成を示す図である。
〔懸架装置100の構成・機能〕
懸架装置100は、図1に示すように、油圧緩衝装置1と、油圧緩衝装置1の外側に配置されたコイルスプリング2とを備えている。そして、懸架装置100は、コイルスプリング2は、両端に設けられるスプリングシート3およびスプリングシート4に保持される。懸架装置100は、車体等に取り付けるためのボルト5と、油圧緩衝装置1の下部に設けられた車輪側取付部6とを備えている。
なお、以下の説明においては、図1に示す懸架装置100の軸方向における図中下側を「一方側」と称し、図中上側を「他方側」と称する。
【0011】
また、懸架装置100は、油圧緩衝装置1の他方側から飛び出す後述のロッド部20の外周に圧入されたバンプラバー7を備えている。そして、懸架装置100は、油圧緩衝装置1の一部の端部および油圧緩衝装置1から突出するロッド部20の外周を覆う蛇腹状のダストカバー8を備えている。さらに、懸架装置100は、ロッド部20の上端部側において上下方向に配置され、振動を吸収する複数(本実施形態においては2個)のマウントラバー9を備えている。
【0012】
図2は、本実施形態の油圧緩衝装置1の全体構成図である。
〔油圧緩衝装置1の構成・機能〕
油圧緩衝装置1は、図2に示すように、シリンダ部10と、他方側がシリンダ部10の外部に突出して設けられるとともに一方側がシリンダ部10の内部に摺動可能に挿入されるロッド部20と、ロッド部20の一方側の端部に設けられるピストン部30と、シリンダ部10の一方側の端部に配置されるボトムバルブ部50とを備えている。
【0013】
(シリンダ部10の構成・機能)
シリンダ部10は、シリンダ11と、シリンダ11の外側に設けられる外筒体12と、外筒体12のさらに外側に設けられるダンパケース13とを備えている。これら、シリンダ11、外筒体12およびダンパケース13は同心(同軸)に配置される。
【0014】
また、シリンダ部10は、ダンパケース13の軸方向の一方側の端部を塞ぐ底部14と、ロッド部20をガイドするロッドガイド15と、シリンダ部10内のオイルの漏れやシリンダ部10内への異物の混入を防ぐオイルシール16と、ダンパケース13の他方側の端部に装着されたバンプストッパキャップ17とを備えている。
【0015】
シリンダ11(シリンダ)は、一方側および他方側が開口した薄肉円筒状に形成される。シリンダ11は、一方側の端部がボトムバルブ部50によって閉じられ、他方側の端部がロッドガイド15によって閉じられる。そして、シリンダ11は、内部に液体の一例としてのオイルを収容する。
また、シリンダ11には、ピストン部30(減衰力発生機構)が内周面に対して軸方向に摺動可能に設けられる。そして、ピストン部30は、シリンダ11内の空間のオイルを収容する第1油室Y1と第2油室Y2とに区画する。本実施形態では、ピストン部30の一方側に第1油室Y1が形成され、ピストン部30の他方側に第2油室Y2が形成される。
さらに、シリンダ11は、他方側であってロッドガイド15よりも一方側に、半径方向に開口するシリンダ開口11Hを有している。シリンダ開口11Hは、シリンダ11の第2油室Y2と後述する連絡路Lとを連絡する。そして、シリンダ開口11Hは、第2油室Y2と連絡路Lとの間のオイルの流れを可能にする。
【0016】
外筒体12は、一方側および他方側が開口した薄肉円筒状に形成される。そして、外筒体12は、シリンダ11の外側であって、ダンパケース13の内側に設けられる。また、外筒体12は、シリンダ11の外周に対して内周が所定の間隔を有して配置される。そして、外筒体12は、シリンダ11との間にオイルが流れることが可能な連絡路Lを形成する。連絡路Lは、第1油室Y1、第2油室Y2および後述のリザーバ室R間のオイルの経路となる。
【0017】
ダンパケース13は、シリンダ11および外筒体12の長さよりも長く形成される。そして、軸方向および半径方向において内側にシリンダ11および外筒体12を収容する。また、ダンパケース13は、外筒体12の外周に対して内周が所定の間隔を有して配置される。そして、ダンパケース13は、外筒体12との間にリザーバ室R(液溜室)を形成する。リザーバ室Rは、シリンダ11内のオイルを吸収したりシリンダ11内へとオイルを供給したりして、ロッド部20の進退移動分の体積のオイルを補償する。
【0018】
底部14は、ダンパケース13の一方側の端部に設けられて、ダンパケース13の一方側の端部を塞ぐ。また、底部14は、ボトムバルブ部50を支持する。さらに、底部14は、ボトムバルブ部50を介して、シリンダ11および外筒体12をダンパケース13の軸方向の一方側の端部にて支持する。
【0019】
ロッドガイド15は、中央に開口部15Hを有する肉厚円筒状の部材である。ロッドガイド15は、シリンダ11および外筒体12の他方側の端部に取り付けられる。そして、ロッドガイド15は、開口部15Hに設けられるブッシュ15Bを介してロッド部20を軸方向に移動可能に支持する。
【0020】
オイルシール16は、金属等のリングの内外周にゴム等の樹脂を一体化させた部材であって、ダンパケース13の他方側の端部に固定される。
バンプストッパキャップ17は、ダンパケース13の他方側の端部にてダンパケース13の外側を覆うように設けられる。そして、バンプストッパキャップ17は、懸架装置100の圧縮行程時において、バンプラバー7(図1参照)の衝突を受ける際に油圧緩衝装置1の他方側の端部を保護する。
【0021】
そして、本実施形態の油圧緩衝装置1は、図2に示すように、液体を収容するシリンダ(シリンダ11)内に設けられ減衰力を発生させる減衰力発生機構(ピストン部30)を備えている。そして、減衰力発生機構は、シリンダ内において軸方向に移動可能に設けられ、シリンダ内の空間の液体を収容する第1液室(第1油室Y1)と第2液室(第2油室Y2)とに区画する区画部材(ピストンハウジング31)と、区画部材内に形成され、区画部材の軸方向における一方向の移動に伴って第1液室から第2液室へと向かう液体を特定方向に流す第1流路(第2油路412)と、区画部材内に形成され、区画部材の軸方向における他方向の移動に伴って第2液室から第1液室へと向かう液体を特定方向に沿って流す第2流路(第1油路411,反転流路41R)と、第1流路および第2流路を開閉して、第1流路および第2流路における液体の流れを制御する制御手段(減衰バルブ42)とを備えている。さらに、本実施形態の油圧緩衝装置1は、制御手段が第1流路および第2流路を閉じる方向に制御手段に荷重を付与するとともに制御手段の荷重を変更可能に構成される荷重付与手段(移動手段23,伝達部材22,プリセットバルブユニット32および押付部材43)を備えている。以下、これらの構成について詳細に説明する。
【0022】
(ロッド部20の構成・機能)
ロッド部20は、中空の棒状の部材であるロッド部材21と、ロッド部材21の内部に設けられる伝達部材22と、ロッド部材21の他方側に設けられる移動手段23とを有する。
【0023】
ロッド部材21は、内部に軸方向に貫通する貫通孔21Hを有する。また、ロッド部材21は、一方側の端部に設けられる一方側取付部21aと、他方側の端部に設けられる他方側取付部21bとを有する。
一方側取付部21aは、ロッド部材21の外周に形成される螺旋状の溝によって構成されボルトとして機能する。そして、一方側取付部21aには、ピストン部30が取り付けられる。他方側取付部21bは、ロッド部材21の外周に形成される螺旋状の溝によって構成されボルトとして機能する。そして、他方側取付部21bには、懸架装置100を自動車などの車体などへ取り付けるための所定の部材が取り付けられる。
【0024】
伝達部材22は、中実の棒状の部材である。伝達部材22は、軸方向に直交する方向に切った断面の外径は、ロッド部材21の貫通孔21Hの内径と比較して小さく形成される。そして、伝達部材22は、ロッド部材21の内側において軸方向に移動可能に設けられる。また、伝達部材22は、一方側の端部がピストン部30の後述するスプール321に接触可能に設けられる。
【0025】
移動手段23は、伝達部材22を移動させ、伝達部材22を介して後述するプリセットバルブユニット32に荷重を付与する。そして、後述するようにプリセットバルブユニット32を介して減衰バルブ42に荷重を付与する。このとき、後述する減衰バルブ42がプリセットバルブユニット32から荷重を受ける方向が単一方向に設定される。そこで、本実施形態では、荷重を付与する移動手段23についても、後述の減衰バルブ42に単一方向にのみに荷重を付与するものを用いている。なお、伝達部材22を移動させる移動手段23の機構は特に限定されるものではないが、本実施形態では、例えばモータの回転運動をねじ等の機構を用いて直進運動に変換する直動アクチュエータを用いている。
【0026】
(ピストン部30の構成・機能)
図3(a)および図3(b)は、実施形態1のピストン部30の分解斜視図である。なお、図3(a)はピストン部30を一方側から見たものであり、図3(b)はピストン部30を他方側から見たものである。
図4は、図2の矢印VIが示すピストン部30周辺の拡大図である。
図5は、実施形態1の減衰ユニット40の分解斜視図である。
ピストン部30は、図3に示すように、ピストン部30を構成する各部材およびオイルを内側に収容するピストンハウジング31と、ピストンハウジング31内の他方側において軸方向に延びるプリセットバルブユニット32と、プリセットバルブユニット32が軸方向に通されるチェックバルブユニット33と、プリセットバルブユニット32の一方側に設けられる減衰ユニット40と、減衰ユニット40の一方側に設けられるロックピース34とを有している。
【0027】
また、図4に示すように、本実施形態のピストン部30では、ピストンハウジング31内において、プリセットバルブユニット32およびチェックバルブユニット33によって区画された他方側油室P1と、プリセットバルブユニット32、チェックバルブユニット33および減衰ユニット40によって区画された中間油室P2と、減衰ユニット40およびロックピース34によって区画された一方側油室P3とが形成される。
【0028】
ピストンハウジング31は、一方側が開口し、他方側が閉じられた中空の部材である。そして、ピストンハウジング31は、他方側の端部であって半径方向の中央部に設けられる接続部311と、接続部311よりも半径方向の外側に配置されるハウジング油路312を有している。また、ピストンハウジング31は、図3(a)および(b)に示すように、他方側における外周にピストンリング313を備えている。
【0029】
接続部311は、図4に示すように、軸方向に貫通された貫通孔である。そして、接続部311には、ロッド部20の一方側の端部およびプリセットバルブユニット32の他方側の端部が挿入される。接続部311は、ロッド部材21の一方側取付部21a(図2参照)とねじ固定される。また、接続部311の内径は、伝達部材22およびプリセットバルブユニット32の後述するスプール321の受部321Rの外径よりも大きい。従って、接続部311において、伝達部材22およびスプール321は軸方向に移動可能に設けられる。
ハウジング油路312は、図3(a)および(b)に示すように、周方向において複数(本実施形態では例えば6つ)形成される。そして、図4に示すように、ハウジング油路312は、第2油室Y2と他方側油室P1とを連絡する。
【0030】
ピストンリング313は、ピストンハウジング31の外周に形成される溝部に装着される。ピストンリング313は、シリンダ11の内周面にスライド可能に接触して設けられる。そして、ピストンリング313は、シリンダ11とピストンハウジング31との間の摩擦抵抗を低減する。
【0031】
プリセットバルブユニット32は、軸方向に延びるスプール321と、スプール321の他方側にてスプール321の外側に取り付けられるカラー322と、カラー322の一方側にてスプール321の外側に取り付けられる第2カラー323と、スプール321に取り付けられるプリセットバルブ324(弾性部材)と、プリセットバルブ324の一方側に設けられるバルブストッパ325、バルブストッパ325の一方側に取り付けられるリング326と備える。
【0032】
スプール321は、他方側に設けられ伝達部材22を受ける受部321Rと、受部321Rよりも一方側に形成される中空部321Lと、中空部321Lの他方側の端部にて半径方向に開口するスプール開口部321Hを有している。
受部321Rは、ピストンハウジング31の接続部311に挿入される。そして、受部321Rは、伝達部材22の一方側の端部が接触する。後述するように伝達部材22が荷重を受けた際に、受部321Rにて伝達部材22から荷重を受けてスプール321全体が移動する。中空部321Lは、他方側がスプール開口部321Hに接続し、一方側が開口するとともに減衰ユニット40の後述のボルト開口部442に連絡する。そして、中空部321Lは、他方側油室P1からボルト開口部442との間のオイルの流れを可能にする。スプール開口部321Hは、中空部321Lと後述するカラー開口部322Hとを連絡する。
【0033】
カラー322は、略円筒状に形成される部材である。カラー322は、スプール321にねじ固定される。また、カラー322は、半径方向に開口するカラー開口部322Hと、一方側の端部に設けられる接触部322Jとを有する。
カラー開口部322Hは、スプール開口部321Hに対向して設けられ、他方側油室P1とスプール開口部321Hとを連絡する。接触部322Jは、カラー322の他の箇所と比較して外径が大きく形成された部分である。そして、接触部322Jは、第2カラー323の他方側の端部に接触する。
【0034】
第2カラー323は、一方側に第2カラー323の他の箇所と比較して外径が大きく形成されたバルブ接触部323Vを有する。そして、第2カラー323は、他方側にてカラー322の接触部322Jに接触し、他方側のバルブ接触部323Vにてプリセットバルブ324に接触する。
【0035】
プリセットバルブ324は、スプール321を通す開口部324Bが形成された複数の円盤状の金属板材が重ね合わされて構成される。プリセットバルブ324は、第2カラー323とバルブストッパ325との間に挟み込まれて、スプール321に固定される。
【0036】
バルブストッパ325は、プリセットバルブ324を一方側から第2カラー323のバルブ接触部323Vに向けて押し付ける。
リング326は、スプール321の外周に形成される溝に装着される。そして、リング326は、バルブストッパ325を軸方向に固定する。なお、リング326がスプール321の一方側にて固定され、上述のカラー322はスプール321の他方側にて固定される。これによって、スプール321とリング326との間に挟み込まれる第2カラー323、プリセットバルブ324およびバルブストッパ325がスプール321に固定される。従って、スプール321、カラー322、第2カラー323、プリセットバルブ324、バルブストッパ325およびリング326は、後述するように伝達部材22から荷重を受けた際に一体となって軸方向に移動する。
【0037】
チェックバルブユニット33は、チェックバルブシート331と、チェックバルブシート331の他方側に設けられるチェックバルブ332と、これらの部材を保持する保持ボルト333およびナット334と、チェックバルブシート331の一方側に設けられるロックナット335とを有する。
【0038】
チェックバルブシート331は、略円盤状に形成された部材である。そして、チェックバルブシート331は、ピストンハウジング31の内周に形成された段差部31Cに他方側の端部が掛かるように取り付けられる。
また、チェックバルブシート331は、中央部に形成された開口331Hと、軸方向に形成された複数の油路331Rとを有する。開口331Hには、スプール321および第2カラー323が挿入される。また、油路331Rは、他方側油室P1と中間油室P2との間におけるオイルの流路を形成する。
【0039】
チェックバルブ332は、中央部にスプール321および第2カラー323を通すボルト孔332Bを有する円盤状の金属板材である。チェックバルブ332は、保持ボルト333によってチェックバルブシート331の他方側の端部に押し付けられる。また、チェックバルブ332は、チェックバルブシート331の油路331Rの他方側の端部を覆うことが可能な内径および外径を有している。
【0040】
保持ボルト333およびナット334は、チェックバルブシート331およびチェックバルブ332を挟み込んで保持する。
ロックナット335は、外周にピストンハウジング31の内周に形成されるねじ溝に嵌るねじ部を有している。ロックナット335は、チェックバルブシート331を一方側から他方側の段差部31Cに向けて押し付ける。そして、ロックナット335は、チェックバルブシート331を軸方向に固定することで、チェックバルブユニット33全体を固定する。
【0041】
減衰ユニット40は、複数の油路を有するバルブシート41と、バルブシート41の他方側に設けられる減衰バルブ42(制御手段,制御部材)と、減衰バルブ42の他方側に設けられる押付部材43(接触部材)と、これらの部材を保持する保持ボルト44およびナット45とを有する。
【0042】
バルブシート41は、内側に一方側に向けて開口する開口部41Hを有す有底円筒状に形成された部材である。また、バルブシート41は、外周に段差部41Cを有している。さらに、バルブシート41は、保持ボルト44を通すために軸方向に形成されたボルト孔413と、ボルト孔413よりも半径方向の外側にて軸方向に形成された第1油路411と、第1油路411よりも半径方向のさらに外側にて軸方向に形成された第2油路412とを有する。
【0043】
開口部41Hは、ロックピース34の凹部343とによって区画された空間である反転油路41Rを形成する。反転油路41Rは、保持ボルト44の後述するボルト開口部442と第1油路411とを連絡する。そして、反転油路41Rは、例えば他方側から流れ込んできたオイルの流れの向きを反転させて、他方側へと流す機能を有している。
段差部41Cは、図5に示すように、バルブシート41の他方側よりも一方側の外径を大きくすることで形成された部分である。そして、段差部41Cは、図4に示すように、ピストンハウジング31の内周に形成された溝に装着されるストッパリング414に一方側から掛けられる。
【0044】
第1油路411および第2油路412は、図5に示すように、それぞれ円周方向に等間隔に複数形成されている。そして、第1油路411および第2油路412の他方側の端部は、それぞれバルブシート41の他方側において半径方向に並べて配置される。
【0045】
第1油路411は、第2油路412よりも断面が小さく、第2油路412よりも数(本実施形態では例えば12個)が多く設けられる。また、第1油路411は、図4に示すように、一方側が反転油路41Rに連絡し、他方側が中間油室P2と連絡可能になっている。そして、第1油路411は、減衰バルブ42の開閉状態に応じて流れる反転油路41Rと中間油室P2との間のオイルの流路を形成する。
第2油路412は、図5に示すように、第1油路411よりも断面が大きく、第1油路411よりも数(本実施形態では例えば6個)が少なく設けられる。また、第2油路412は、図4に示すように、一方側が一方側油室P3に連絡し、他方側が中間油室P2と連絡可能になっている。そして、第2油路412は、減衰バルブ42の開閉状態に応じて流れる一方側油室P3と中間油室P2との間のオイルの流路を形成する。
【0046】
減衰バルブ42は、図5に示すように、中央部に保持ボルト44を通すボルト孔42Bを有する円環状に形成された金属板材である。減衰バルブ42は、図4に示すように、保持ボルト44によってバルブシート41の他方側の端部に押し付けられる。また、減衰バルブ42は、バルブシート41の第1油路411および第2油路412の他方側の端部を覆うことが可能な内径および外径を有している。そして、減衰バルブ42は、オイルの流れに応じて第1油路411および第2油路412を開閉する。
【0047】
押付部材43は、図5に示すように、略円筒状に形成される部材である。押付部材43は、図4に示すように、保持ボルト44の後述する案内部441により軸方向にスライド可能に支持される。また、押付部材43は、一方側において断面が2又に分かれた第1押付部431および第2押付部432と、他方側に形成される被接触部433とを有している。
第1押付部431および第2押付部432は、減衰バルブ42の他方側に押し付けられる部分である。そして、第1押付部431は、減衰バルブ42における第1油路411と対向する位置に設けられる。また、第2押付部432は、減衰バルブ42における第2油路412と対向する位置に設けられる。被接触部433は、プリセットバルブ324の外径と略等しい外径を有し、プリセットバルブユニット32の接触を受ける部分を形成する。
【0048】
本実施形態では、プリセットバルブユニット32は、プリセットバルブ324を介して押付部材43が減衰バルブ42に荷重を付与するように構成している。従って、押付部材43がプリセットバルブユニット32から付与される荷重によって減衰バルブ42に一定の荷重を付与するように構成している。特に、本実施形態では、減衰バルブ42は、押付部材43を介してプリセットバルブ324の弾性力によって常に押圧されるように構成される。
また、プリセットバルブユニット32が押付部材43を介して減衰バルブ42に付与する荷重を変えることで、減衰バルブ42により発生させる減衰力を変更可能にしている。なお、この減衰バルブ42の減衰力の可変については後に詳しく説明する。
【0049】
なお、押付部材43には、図5に示すように、半径方向に開口する開孔434が複数設けられている。これら開孔434は、押付部材43と他の部材とによって形成される空間に対して押付部材43の外側とのオイルの流路を形成する。そして、後述するように押付部材43を移動させて減衰力の調整を行う際に、押付部材43内外のオイルの圧力差によって押付部材43の移動が影響を受けないようにしたり、押付部材43が接触する部材との間にオイルを供給して摩擦を低減したりするように構成している。
【0050】
保持ボルト44およびナット45は、図4に示すように、バルブシート41および減衰バルブ42を挟み込んで保持する。また、保持ボルト44は、案内部441とボルト開口部442とを有する。案内部441は、押付部材43の被接触部433の内径と略等しい外径を有する。そして、案内部441は、押付部材43を軸方向に移動可能に案内する。ボルト開口部442は、保持ボルト44の軸方向に形成された貫通孔である。ボルト開口部442の他方側にはスプール321の一方側の端部が挿入される。また、ボルト開口部442は、一方側にて反転油路41Rと連絡する。
【0051】
なお、実施形態1では、バルブシート41の第2油路412が「第1流路」として機能し、バルブシート41の第1油路411および反転油路41Rが「第2流路」として機能する。
【0052】
ロックピース34は、図3(a)および図3(b)に示すように、他方側に突出部341を有し、一方側に突出部341よりも外径が大きい径大部342を有する。
突出部341は、一方側に向けて軸方向に突出する部分である。そして、突出部341は、バルブシート41の開口部41Hの内側に挿入される。また、突出部341は、上述した反転油路41Rを形成する軸方向に窪む凹部343が形成される。凹部343は、本実施形態では他方側を向く面を有し、この他方側を向く面によって他方側から一方側へと流れてきたオイルの流れを他方側へと反転させる。
径大部342は、図3(a)および図3(b)に示すように、周方向に複数の油路344が形成される。油路344は、第1油室Y1と一方側油室P3との間のオイルの流路を形成する。また、径大部342には、ピストンハウジング31に形成されるねじ溝に嵌るねじ部が形成される。
そして、ロックピース34は、図4に示すように、バルブシート41を一方側から他方側のストッパリング414に向けて押し付ける。ロックピース34は、バルブシート41を固定することで、減衰ユニット40全体を軸方向において固定する。
【0053】
(ボトムバルブ部50の構成・機能)
図6は、図2の矢印VIが示すボトムバルブ部50周辺の拡大図である。
図6に示すように、ボトムバルブ部50は、複数の油路を有する第1バルブボディ51と、第1バルブボディ51の一方側に設けられる圧側バルブ521と、第1バルブボディ51の他方側に設けられる伸側バルブ522と、伸側バルブ522の他方側に位置して伸側バルブ522を押さえるバルブストッパ53と、これらの部材を保持するボルト56とナット57とを有する。また、ボトムバルブ部50は、複数の油路を有して第1バルブボディ51の一方側に配置される第2バルブボディ54と、第2バルブボディ54の一方側に設けられるチェックバルブ55とを有する。さらに、ボトムバルブ部50は、チェックバルブ55の一方側に配置されるベース部材58を有する。
そして、ボトムバルブ部50は、油圧緩衝装置1の一方側の端部に設けられて、リザーバ室Rと第1油室Y1とを区分する。
【0054】
第1バルブボディ51は、略円盤状の円盤状部51aと、円盤状部51aの外周縁から一方側に向けて軸方向に延びて形成されるとともに円盤状部51aよりも外径が大きい略円筒状の円筒状部51bとを有する。そして、第1バルブボディ51は、シリンダ11および外筒体12の一方側の端部に取り付けられる。
【0055】
円盤状部51aには、ボルト56を通すために軸方向に形成されたボルト孔511Bと、ボルト孔511Bよりも半径方向の外側に軸方向に形成された第1油路511と、第1油路511よりも半径方向の外側に軸方向に形成された第2油路512とを有する。第1油路511および第2油路512は、円周方向に等間隔に複数形成されており、第1油室Y1と後述の空間511Sとを連絡する。
【0056】
円筒状部51bは、円筒の内側に空間511Sを形成する。空間511Sには、第2バルブボディ54が設けられる。さらに、円筒状部51bの一方側の端部には、半径方向に開口する開口部511Hを有している。開口部511Hは、外筒体12に対向して設けられる。そして、空間511Sの内側から溝511Tを通って連絡路Lに向けて流れるオイルの流路を形成する。
また、第1バルブボディ51は、円盤状部51aおよび円筒状部51bの外周において軸方向に形成された溝511Tを有する。溝511Tは、シリンダ11と外筒体12との間に形成される連絡路Lに対向配置される。そして、溝511Tは、連絡路Lの一方側の端部にて第1バルブボディ51を挟んだオイルの流れを可能にする。
【0057】
圧側バルブ521は、ボルト56を通すボルト孔521Bが形成された複数の円盤状の金属板材が重ね合わされて構成される。また、圧側バルブ521は、第1油路511を塞ぐことができ、第2油路512は塞がない外径を有している。そして、圧側バルブ521は、第1バルブボディ51に形成された第1油路511の一方側を開閉可能にするとともに、第2油路512の一方側を常に開放する。
伸側バルブ522は、ボルト56を通すボルト孔522Bが形成された円盤状の金属板材である。また、伸側バルブ522は、第1油路511に対応する位置に油孔522Hが形成されている。そして、伸側バルブ522は、第1バルブボディ51に形成された第1油路511の他方側を常に開放するとともに、第2油路512の他方側を開閉可能にする。
【0058】
第2バルブボディ54は、一方側に形成される突出部54aと、他方側に形成される凹部54bとを有している。そして、第2バルブボディ54は、第1バルブボディ51の空間511S内に凹部54bが挿入して取り付けられる。
また、第2バルブボディ54は、突出部54aにおいて軸方向に貫通する貫通孔54Hと、貫通孔54Hの半径方向外側に配置されるとともに軸方向に貫通する油路541とを有している。
【0059】
チェックバルブ55は、第2バルブボディ54の突出部54aを通す開口部55Bが形成された円盤状の金属板材である。そして、チェックバルブ55は、第2バルブボディ54の油路541の一方側を開閉可能にする。
【0060】
ベース部材58は、他方側に位置して開口する第1開口58H1と、一方側に位置して開口する第2開口58H2と、一方側にて半径方向に開口する第3開口58H3とを備える。
第1開口58H1は、第2バルブボディ54の突出部54aの外径と略等しい内径を有し、突出部54aが挿入される。第2開口58H2は、第1開口58H1よりも大きい内径を有し、ダンパケース13の底部14との間にオイルが流れる空間58Sを形成する。また、第2開口58H2には、第2バルブボディ54の貫通孔54Hが連絡する。第3開口58H3は、第2開口58H2とリザーバ室Rとを連絡する。
【0061】
〔油圧緩衝装置1の動作〕
図7(a)および図7(b)は、油圧緩衝装置1の動作を説明するための図である。なお、図7(a)は圧縮行程時のオイルの流れを示す図であり、図7(b)は伸張行程時のオイルの流れを示す図である。
まず、油圧緩衝装置1の圧縮行程時のオイルの流れを説明する。
図7(a)に示すように、ピストン部30が、白抜き矢印のようにシリンダ部10に対して軸方向の一方側へ移動すると、ピストン部30の移動により第1油室Y1内のオイルが押され、第1油室Y1内の圧力が上昇する。
【0062】
そして、ピストン部30の軸方向の一方側への移動によって高まった第1油室Y1のオイルの圧力によって、ロックピース34の油路344から一方側油室P3へとオイルが流れる。さらに、一方側油室P3から減衰ユニット40の第2油路412にオイルが流れる。このように第2油路412にて軸方向の一方側から他方側への特定方向に流れてきたオイルにより高められた圧力によって、減衰バルブ42が押付部材43から受ける押圧力に抗して撓む。そして、第2油路412内のオイルが減衰バルブ42を押し開きながら中間油室P2に流れる。この第2油路412および減衰バルブ42をオイルが流れる際に生じる抵抗によって減衰力が生じる。
【0063】
さらに、中間油室P2に流れたオイルは、チェックバルブユニット33の油路331Rに流れる。油路331Rにおいて高まるオイルの圧力によって、チェックバルブ332が撓む。そして、油路331R内のオイルがチェックバルブ332を押し開きながら他方側油室P1にオイルが流れる。さらに、他方側油室P1に流れたオイルは、ピストンハウジング31のハウジング油路312を通って第2油室Y2へと流れる。
以上のようにして、ピストン部30の一方向の移動に伴って、第1油室Y1から第2油室Y2へのオイルの流れが生じ、そのオイルの流れに第2油路412および減衰バルブ42によって抵抗を与えて制御することで減衰力が発生する。
【0064】
また、ボトムバルブ部50においては、ピストン部30の軸方向の一方側への移動によって高まった第1油室Y1のオイルの圧力によって、伸側バルブ522の油孔522Hを通って第1バルブボディ51の第1油路511にオイルが流れる。そして、第1油路511にて高まったオイルの圧力によって、圧側バルブ521が撓み、圧側バルブ521を押し開きながら第1油路511から空間511Sにオイルが流れる。さらに、空間511Sに流れたオイルは、第2バルブボディ54の油路541に流れる。油路541にて高まったオイルの圧力によって、チェックバルブ55が撓む。そして、チェックバルブ55を押し開きながら油路541から開口部511Hおよび溝511Tを通って連絡路Lにオイルが流れる。連絡路Lに流れたオイルは、シリンダ11の他方側に形成されるシリンダ開口11H(図2参照)から第2油室Y2に流れ込む。
【0065】
さらに、ボトムバルブ部50において、空間511Sに流れたオイルは、第2バルブボディ54の貫通孔54Hに流れる。貫通孔54Hに流れたオイルは、空間58Sに流れる。さらに、空間58Sから第3開口58H3を通って、リザーバ室Rにオイルが流れる。
【0066】
次に、油圧緩衝装置1の伸張行程時のオイルの流れを説明する。
図7(b)に示すように、ピストン部30が、白抜き矢印のようにシリンダ部10に対して軸方向の他方側へ移動すると、ピストン部30の移動により第2油室Y2内のオイルが押され、第2油室Y2内の圧力が上昇する。
なお、シリンダ開口11H(図2参照)から連絡路Lを通じてオイルが流れようとしても、オイルの流れがチェックバルブ55を閉じる方向であるため、チェックバルブ55が油路541を開かない。従って、連絡路Lを通じた第2油室Y2から第1油室Y1へのオイルの流れは生じない。
【0067】
そして、ピストン部30の軸方向の他方側への移動によって高まった第2油室Y2のオイルの圧力によって、ピストンハウジング31のハウジング油路312から他方側油室P1にオイルが流れる。さらに、他方側油室P1からカラー開口部322Hおよびスプール開口部321Hを通って中空部321Lにオイルが流れる。
なお、他方側油室P1に流れたオイルによって、チェックバルブユニット33のチェックバルブ332の他方側の圧力が油路331Rの位置する一方側に対して相対的に高くなる。従って、チェックバルブ332は油路331Rを開かず、チェックバルブユニット33を介したオイルの流れは生じない。
【0068】
そして、中空部321Lに流れたオイルは、ボルト開口部442を通って、反転油路41Rに流れる。このように軸方向の他方側から一方側への方向に流れてきたオイルは、反転油路41Rにて反転して軸方向の一方側から他方側への方向に流れる。そして、上述した圧縮行程時の第2油路412における特定方向の流れに沿って、反転油路41Rからバルブシート41の第1油路411に流れる。
そして、第1油路411において高まったオイルの圧力によって、減衰バルブ42が押付部材43から受ける押圧力に抗して撓む。そして、第1油路411内のオイルが減衰バルブ42を押し開きながら中間油室P2に流れる。この第1油路411および減衰バルブ42をオイルが流れる際に生じる抵抗によって減衰力が生じる。
【0069】
なお、ピストン部30が他方向に移動することによって、第1油室Y1において負圧が発生している。また、上述のとおり、第1油路411によって減衰バルブ42が半径方向の内側から開くように撓ませられることで減衰バルブ42の外側も開き、第2油路412の他方側も開かれた状態になっている。そのため、中間油室P2に流れ出たオイルは、隣接する第2油路412に流れる。そして、第2油路412から一方側油室P3へとオイルが流れる。さらに、一方側油室P3に流れたオイルは、油路344を通って第1油室Y1に流れる。
以上のようにして、ピストン部30の他方向の移動に伴って、第2油室Y2から第1油室Y1へのオイルの流れが生じ、そのオイルの流れに第1油路411および減衰バルブ42によって抵抗を与えて制御することで減衰力が発生する。
【0070】
〔減衰力の可変について〕
引き続いて、油圧緩衝装置1における減衰力の変更について説明する。
例えば、図2に示すように移動手段23によって伝達部材22を一方側に一定量押し込む。そして、図4に示すように、伝達部材22の一方側への移動によってスプール321が一方側に移動する。これに伴って、スプール321に固定されるプリセットバルブ324が一方側へと押し込まれる。そして、プリセットバルブ324が弾性変形しつつ押付部材43を一方側へと移動させることによって、押付部材43が他方側から一方側に減衰バルブ42に荷重を付与する。本実施形態では、減衰バルブ42は、他方側に向けて撓むことで第1油路411または第2油路412を開く。そのため、押付部材43が減衰バルブ42を他方側から一方側に付与する荷重が大きくなることで、減衰バルブ42が開きにくくなる。
【0071】
一方で、移動手段23によって伝達部材22を他方側に一定量引き出す。そうすると、伝達部材22の他方側への移動によってスプール321が他方側に移動する。これに伴って、スプール321に固定されるプリセットバルブ324が押付部材43に付与する荷重が低下する。その結果、押付部材43が減衰バルブ42に付与する荷重が小さくなることで、減衰バルブ42が開きやすくなる。
【0072】
以上のようにして、本実施形態では、伝達部材22を移動させることによって、押付部材43が減衰バルブ42に付与する荷重を変更し、減衰バルブ42の変形しやすさを調整することによって、油圧緩衝装置1における減衰力を変更することができる。
【0073】
本実施形態では、単一の減衰バルブ42によって伸張行程および圧縮行程におけるオイルの流れに減衰力を発生させる。また、その単一の減衰バルブ42に対して一方向にのみ伝達部材22等を移動させるだけで、伸張行程および圧縮行程の両方向の流れにおける減衰力の調整を一括して行うことができる。そのため、減衰力の調整のための装置構成が簡易化される。このように、本実施形態の油圧緩衝装置1では、ピストン部30の一方向および他方向の両方向の移動に伴って生じるピストン部30における減衰力の調整を簡易な構成で実現することができる。
【0074】
また、本実施形態の油圧緩衝装置1は、図3(a)および図3(b)に示すように、ピストンハウジング31の一方側から、上述したプリセットバルブユニット32、チェックバルブユニット33、減衰ユニット40を順に挿入し、ロックピース34によって固定するだけで容易に組み立てることができるため組立性に関しても優れている。
【0075】
さらに、本実施形態では、伝達部材22の移動量を段階的ではなく連続的に変化させることが可能なため、減衰力の強さを連続的に変更することができる。また、本実施形態では、例えば液体等の圧力の伝達ではなく、伝達部材22、プリセットバルブユニット32、押付部材43および減衰バルブ42の実部材間の力の伝達によって、減衰バルブ42の開弁荷重を制御するため、減衰力を制御する際の応答速度を高めることができる。
【0076】
また、実施形態1では、略円環状に形成される減衰バルブ42を用いることによって、伸張行程および圧縮行程の両行程において、減衰バルブ42におけるオイルの圧力を受ける受圧面積をそれぞれ同等にすることができる。従って、伸張行程および圧縮行程の両行程において、減衰力の設定を容易に行うことが可能になる。
換言すれば、実施形態1に係る減衰バルブ42は、伸張行程および圧縮行程の両行程の減衰力操作を行うことができるため、後述する実施形態2の油圧緩衝装置1に設けられるチェックバルブ76を排除することができる。
【0077】
(実施形態2)
次に、実施形態2の油圧緩衝装置1について説明する。なお、実施形態2の油圧緩衝装置1は、実施形態1のピストン部30と構成が異なるものである。以下では、実施形態1と同様な部材については同一の符号を付すことでその詳細な説明を省略する。
図8は、実施形態2のピストン部60を説明するための図である。
図9は、実施形態2の減衰ユニット70の分解斜視図である。
【0078】
ピストン部60は、図8に示すように、ピストンハウジング31と、プリセットバルブユニット32と、チェックバルブユニット33と、プリセットバルブユニット32の一方側に設けられる減衰ユニット70と、ロックピース34とを有している。
減衰ユニット70は、複数の油路を有するバルブシート71と、バルブシート71の他方側に設けられる減衰バルブ72(制御手段,制御部材)と、減衰バルブ72の他方側に設けられる押付部材73と、これらの部材を保持する保持ボルト74およびナット75と、バルブシート71の一方側に設けられるチェックバルブ76とを有する。
【0079】
バルブシート71は、内側に一方側に向けて開口する開口部71Hを有する有底円筒状に形成された部材である。また、バルブシート71は、外周に段差部71Cを有している。なお、開口部71Hおよび段差部71Cは、実施形態1の開口部41Hおよび段差部41Cと同様の機能を有する。また、開口部71Hは、後述のロックピース34の凹部343とによって区画された空間である反転油路71Rを形成する。
【0080】
さらに、バルブシート71は、保持ボルト74を通すために軸方向に形成されたボルト孔713と、ボルト孔713よりも半径方向の外側にて軸方向に形成された内側油路710と、内側油路710よりも半径方向のさらに外側にて軸方向に形成された第1油路711および第2油路712とを有する。また、第1油路711および第2油路712は、半径方向においては中心から略等しい距離に配置されている。
【0081】
内側油路710は、図9に示すように、円周方向に等間隔に複数形成されている。第1油路711および第2油路712も円周方向に等間隔に複数形成されている。また、第1油路711と第2油路712とは、周方向において交互に配置される。
【0082】
内側油路710は、第1油路711および第2油路712よりも断面が小さく、第1油路711または第2油路712よりも数(本実施形態では例えば12個)が多く設けられる。そして、内側油路710は、図8に示すように、一方側が反転油路71Rに連絡し、他方側が中間油室P2と連絡可能になっている。そして、内側油路710は、減衰バルブ72の開閉状態に応じて流れる反転油路71Rと中間油室P2との間のオイルの流路を形成する。
【0083】
第1油路711および第2油路712は、内側油路710よりも断面が大きく、内側油路710よりも数(本実施形態では例えばそれぞれ6個)が少なく設けられる。
第1油路711は、図9に示すように、一方側が第2油路712の一方側の端部よりも軸方向に窪んでおり、他方側が第2油路712の他方側の端部よりも軸方向に突出している。また、第1油路711は、図8に示すように、一方側が一方側油室P3に連絡可能であって、他方側が中間油室P2と連絡する。そして、第1油路711は、減衰バルブ72の開閉状態に応じて流れる一方側油室P3と中間油室P2との間のオイルの流路を形成する。
【0084】
第2油路712は、図9に示すように、一方側が第1油路711の一方側の端部よりも軸方向に突出し、他方側が第1油路711の他方側の端部よりも軸方向に窪んでいる。また、第2油路712は、図8に示すように、一方側が一方側油室P3に連絡し、他方側が中間油室P2と連絡可能である。そして、第2油路712は、減衰バルブ72の開閉状態に応じて流れる一方側油室P3と中間油室P2との間のオイルの流路を形成する。
【0085】
なお、実施形態2では、バルブシート71の第1油路711が「第1流路」として機能し、バルブシート71の内側油路710および反転油路71Rが「第2流路」として機能する。
【0086】
減衰バルブ72は、図9に示すように、中央部に保持ボルト74を通すボルト孔72Bを有する円盤状の金属板材である。また、減衰バルブ72は、外周部に形成される凹部721および凸部722と、凹部721および凸部722の半径方向の内側に環状部723を有している。
減衰バルブ72は、図9に示すように、凹部721が第2油路712に対向するように形成され、凸部722が第1油路711の他方側の端部を覆うことが可能な外径を有している。また、環状部723は、内側油路710の他方側の端部を覆うことが可能に半径方向の幅が設定されている。
そして、減衰バルブ72は、保持ボルト74によってバルブシート71の他方側の端部に押し付けられる。減衰バルブ72は、第2油路712の他方側の端部を常に開き、オイルの流れに応じて内側油路710および第1油路711の他方側の端部を開閉する。
【0087】
チェックバルブ76は、図9に示すように、中央部にロックピース34の突出部341を通すボルト孔76Bを有する円盤状の金属板材である。また、チェックバルブ76は、バルブシート41の第2油路712の一方側の端部を覆うことが可能な外径を有している。チェックバルブ76は、ロックピース34によってバルブシート71の一方側の端部に押し付けられる。そして、チェックバルブ76は、オイルの流れに応じて第2油路712の一方側の端部を開閉する。また、チェックバルブ76は、バルブシート71の一方側において軸方向に窪む第1油路711の一方側の端部を常に開放する。
【0088】
押付部材73は、略円筒状に形成される部材である。押付部材73は、保持ボルト74の後述する案内部741により軸方向にスライド可能に支持される。また、押付部材73は、図9に示すように、一方側にて断面が2又に分かれた第1押付部731および第2押付部732と、他方側に設けられる被接触部733と、半径方向に開口する複数の開孔734とを有している。
第1押付部731および第2押付部732は、減衰バルブ72の他方側に押し付けられる部分である。そして、第1押付部731は、減衰バルブ72における内側油路710と対向する位置に設けられる。また、第2押付部732は、減衰バルブ72における第1油路711および第2油路712と対向する位置に設けられる。被接触部733は、プリセットバルブ324の外径と略等しい外径を有し、プリセットバルブユニット32の接触を受ける部分を構成する。
【0089】
保持ボルト74およびナット75は、バルブシート71および減衰バルブ72を挟み込んで保持する。また、保持ボルト74は、案内部741とボルト開口部742とを有する。案内部741は、押付部材73の被接触部733の内径と略等しい外径を有する。そして、案内部741は、押付部材73の内側にて押付部材73を軸方向に移動可能に案内する。ボルト開口部742は、保持ボルト74の軸方向に形成された貫通孔である。ボルト開口部742の他方側にはスプール321の一方側の端部が挿入される。また、ボルト開口部742の一方側は、反転油路71Rと連絡する。
【0090】
〔実施形態2の油圧緩衝装置1の動作〕
図10は、実施形態2の油圧緩衝装置1の動作を説明するための図である。
なお、以下の説明では、実施形態1と構成が異なるピストン部60におけるオイルの流れを主に説明する。また、図10では、圧縮行程時のオイルの流れを実線の矢印で示し、伸張行程時のオイルの流れを破線の矢印で示す。
まず、油圧緩衝装置1の圧縮行程時のオイルの流れを説明する。
ピストン部60の軸方向の一方側への移動によって高まった第1油室Y1のオイルの圧力によって、ロックピース34の油路344から一方側油室P3へとオイルが流れる。さらに、一方側油室P3から減衰ユニット70の第1油路711にオイルが流れる。このように第1油路711にて軸方向の一方側から他方側への特定方向に流れてきたオイルにより高められた圧力によって、減衰バルブ72の凸部722(図9参照)が押付部材43から受ける押圧力に抗して撓む。そして、第1油路711内のオイルが減衰バルブ72を押し開きながら中間油室P2に流れる。この第1油路711および減衰バルブ72をオイルが流れる際に生じる抵抗によって減衰力が生じる。
なお、一方側油室P3に流れたオイルのうち第2油路712に流れたオイルは、チェックバルブ76を閉じる方向に流れる。従って、チェックバルブ76は第2油路712を閉じたままであり、第2油路712を通るオイルの流れは生じない。
【0091】
その後のオイルの流れは、実施形態1と同様である。そして、以上のようにして、ピストン部30の一方向の移動に伴って、第1油室Y1から第2油室Y2へのオイルの流れが生じ、そのオイルの流れに第1油路711および減衰バルブ72によって抵抗を与えて制御することで減衰力が発生する。
【0092】
次に、油圧緩衝装置1の伸張行程時のオイルの流れを説明する。
ピストン部60の軸方向の他方側への移動によって高まった第2油室Y2のオイルの圧力によって、ピストンハウジング31のハウジング油路312から他方側油室P1にオイルが流れる。さらに、他方側油室P1からカラー開口部322Hおよびスプール開口部321Hを通って中空部321Lにオイルが流れる。
【0093】
さらに、中空部321Lに流れたオイルは、ボルト開口部742を通って、反転油路71Rに流れる。このように軸方向の他方側から一方側への方向に流れてきたオイルは、反転油路71Rにて反転して軸方向の一方側から他方側への方向に流れる。そして、上述した圧縮行程時の第1油路711における特定方向の流れに沿って、反転油路71Rからバルブシート71の内側油路710に流れる。
そして、内側油路710において高まったオイルの圧力を減衰バルブ72の環状部723(図9参照)にて受けて、減衰バルブ72が押付部材73から受ける押圧力に抗して撓む。そして、内側油路710内のオイルが減衰バルブ72を押し開きながら中間油室P2に流れる。この内側油路710および減衰バルブ72をオイルが流れる際に生じる抵抗によって減衰力が生じる。
【0094】
ここで、ピストン部60が他方向に移動することによって、第1油室Y1において負圧が発生する。一方で、他方側油室P1内のオイルの圧力が高まっているため、チェックバルブ332は開かない。さらに、第2油路712の他方側の端部には減衰バルブ72の凹部721(図9参照)が対向し第2油路712の他方側は塞がれていない。従って、中間油室P2内のオイルの圧力が高まることで、中間油室P2に流れたオイルは、隣接する第2油路712に流れる。そして、第2油路712から一方側油室P3へとオイルが流れる。さらに、一方側油室P3に流れたオイルは、油路344を通って第1油室Y1に流れる。
以上のようにして、ピストン部60の他方向の移動に伴って、第2油室Y2から第1油室Y1へのオイルの流れが生じ、そのオイルの流れに内側油路710および減衰バルブ72によって抵抗を与えて制御することで減衰力が発生する。
【0095】
なお、実施形態2が適用される油圧緩衝装置1においても、伝達部材22を一方側に移動させることによってプリセットバルブ324および押付部材73による減衰バルブ72に付与する荷重を変更できる。そして、伸張行程および圧縮行程の両方向の流れにおける減衰力の変更を一括して行うことができる。
【0096】
(実施形態3)
次に、実施形態3の油圧緩衝装置1について説明する。なお、実施形態3の油圧緩衝装置1は、実施形態1のピストン部30と構成が異なるものである。以下では、実施形態1と同様な部材については同一の符号を付すことでその詳細な説明を省略する。
図11は、実施形態3のピストン部80を説明するための図である。
【0097】
ピストン部80は、図11に示すように、ピストンハウジング31と、プリセットバルブユニット82と、プリセットバルブユニット82の一方側に設けられる第1減衰ユニット83と、プリセットバルブユニット82の他方側に設けられる第2減衰ユニット84と、ロックピース85とを有している。
また、実施形態3のピストン部80では、ピストンハウジング31内において、プリセットバルブユニット82および第1減衰ユニット83によって区画された他方側油室P4と、プリセットバルブユニット82、第1減衰ユニット83および第2減衰ユニット84によって区画された中間油室P5とが形成される。
【0098】
プリセットバルブユニット82は、基本構成は、実施形態1のプリセットバルブユニット32と同様である。実施形態3のプリセットバルブユニット82は、スプール321、カラー322、第2カラー323、プリセットバルブ324、バルブストッパ325、リング326、およびスプール321とカラー322との間に第2プリセットバルブ827(弾性部材)を備えている。
第2プリセットバルブ827は、スプール321を通す開口部827Bが形成された複数の円盤状の金属板材が重ね合わされて構成される。そして、第2プリセットバルブ827は、カラー322の接触部322Jと、第2カラー323の他方側の端部との間に挟み込まれてスプール321に固定される。
【0099】
第1減衰ユニット83は、複数の油路を有するバルブシート831と、バルブシート831の他方側に設けられる圧側減衰バルブ832(制御手段)と、圧側減衰バルブ832の他方側に設けられる押付部材833(接触部材)と、これらの部材を保持する保持ボルト834およびナット835とを有する。
バルブシート831は、内側に一方側に向けて開口する開口部831Hを有す有底円筒状に形成された部材である。また、バルブシート831は、外周に角部831Cを有している。さらに、バルブシート831は、保持ボルト834を通すために軸方向に形成されたボルト孔831Bと、ボルト孔831Bよりも半径方向の外側にて軸方向に形成された油路831Yとを有する。
開口部831Hは、中間油室P5を形成する。角部831Cは、バルブシート831をピストンハウジング31において軸方向に固定するための部分である。
油路831Yは、円周方向に等間隔に複数形成されている。油路831Yは、他方側油室P4と中間油室P5の間のオイルの流れを可能にする。
【0100】
圧側減衰バルブ832は、中央部に保持ボルト834を通すボルト孔832Bを有する円盤状の金属板材である。圧側減衰バルブ832は、保持ボルト834によってバルブシート831の他方側の端部に押し付けられる。また、図11に示すように、圧側減衰バルブ832は、バルブシート831の油路831Yの他方側の端部を覆うことが可能な外径を有している。そして、圧側減衰バルブ832は、オイルの流れに応じて油路831Yの他方側を開閉する。
【0101】
押付部材833は、略円筒状に形成される部材である。押付部材833は、保持ボルト834の後述する案内部834Gにより軸方向にスライド可能に支持される。押付部材833は、一方側にて圧側減衰バルブ832に接触し、他方側にて第2プリセットバルブ827に押し付けられる。
【0102】
保持ボルト834およびナット835は、バルブシート831および圧側減衰バルブ832を挟み込んで保持する。また、保持ボルト834は、案内部834Gとボルト開口部834Hとを有する。案内部834Gは、押付部材833の内径と略等しい外径を有する。そして、案内部834Gは、押付部材833を軸方向に移動可能に案内する。ボルト開口部834Hは、保持ボルト834の軸方向に形成された貫通孔である。ボルト開口部834Hの他方側にはスプール321の一方側の端部が挿入される。
【0103】
第2減衰ユニット84は、複数の油路を有するバルブシート841と、バルブシート841の他方側に設けられる伸側減衰バルブ842(制御手段)と、伸側減衰バルブ842の他方側に設けられる押付部材843(接触部材)と、これらの部材を保持する保持ボルト844およびナット845とを有する。
バルブシート841は、内側に一方側に向けて開口する開口部841Hを有す有底円筒状に形成された部材である。さらに、バルブシート841は、保持ボルト844を通すために軸方向に形成されたボルト孔841Bと、ボルト孔841Bよりも半径方向の外側にて軸方向に形成された油路841Yと、油路841Yよりも半径方向のさらに外側にて軸方向に形成された外側油路841Lとを有している。
開口部841Hは、ロックピース85の凹部853とによって区画された空間である反転油路841Rを形成する。反転油路841Rは、保持ボルト844の後述するボルト開口部844Hと油路841Yとを連絡する。
油路841Yは、円周方向に等間隔に複数形成されている。油路841Yは、中間油室P5と反転油路841Rとの間のオイルの流れを可能にする。
【0104】
なお、実施形態3では、第1減衰ユニット83の油路831Yが「第1流路」として機能し、第2減衰ユニット84の油路841Y及び反転油路841Rが「第2流路」として機能する。
【0105】
伸側減衰バルブ842は、中央部に保持ボルト844を通すボルト孔842Bを有する円盤状の金属板材である。伸側減衰バルブ842は、保持ボルト844によってバルブシート841の他方側の端部に押し付けられる。また、図11に示すように、伸側減衰バルブ842は、バルブシート841の油路841Yの他方側の端部を覆うとともに、外側油路841Lは覆わない外径を有している。そして、伸側減衰バルブ842は、オイルの流れに応じて油路841Yの他方側を開閉する。
【0106】
押付部材843は、略円筒状に形成される部材である。押付部材843は、保持ボルト844の後述する案内部844Gにより軸方向にスライド可能に支持される。押付部材843は、一方側にて伸側減衰バルブ842に接触し、他方側にてプリセットバルブ324に押し付けられる。
【0107】
保持ボルト844およびナット845は、バルブシート841および伸側減衰バルブ842を挟み込んで保持する。また、保持ボルト844は、案内部844Gとボルト開口部844Hとを有する。案内部844Gは、押付部材843の内径と略等しい外径を有する。そして、案内部844Gは、押付部材843を軸方向に移動可能に案内する。ボルト開口部844Hは、保持ボルト844の軸方向に形成された貫通孔である。ボルト開口部844Hの他方側にはスプール321の一方側の端部が挿入される。
【0108】
ロックピース85は、他方側に突出部851を有し、一方側に突出部851よりも外径が大きい径大部852を有する。
突出部851は、一方側に向けて軸方向に突出する部分である。そして、突出部851は、バルブシート841の開口部841Hの内側に挿入される。また、突出部851は、上述した反転油路841Rを形成する軸方向に窪む凹部853が形成される。
径大部852は、図11に示すように、複数の油路854が形成される。複数の油路854は、周方向において略等間隔に配置される。そして、油路854は、第1油室Y1と第2減衰ユニット84の油路841Yとの間のオイルの流路を形成する。また、径大部852には、ピストンハウジング31に形成されるねじ溝に嵌るねじ部が形成される。
そして、ロックピース85は、バルブシート841を一方側から他方側の第1減衰ユニット83のバルブシート831に向けて押し付ける。ロックピース85は、バルブシート841を固定することで、第2減衰ユニット84全体を軸方向において固定する。
【0109】
〔実施形態3の油圧緩衝装置1の動作〕
図12は、実施形態3の油圧緩衝装置1の動作を説明するための図である。
なお、以下の説明では、実施形態1と構成が異なるピストン部80におけるオイルの流れを主に説明する。また、図12では、圧縮行程時のオイルの流れを実線の矢印で示し、伸張行程時のオイルの流れを破線の矢印で示す。
まず、油圧緩衝装置1の圧縮行程時のオイルの流れを説明する。
ピストン部80の軸方向の一方側への移動によって高まった第1油室Y1のオイルの圧力によって、ロックピース85の油路854から外側油路841Lにオイルが流れる。そして、外側油路841Lから中間油室P5にオイルが流れる。さらに、中間油室P5から第1減衰ユニット83の油路831Yにオイルが流れる。
【0110】
このように油路831Yにて軸方向の一方側から他方側への特定方向に流れてきたオイルにより高められた圧力によって、圧側減衰バルブ832が押付部材833から受ける押圧力に抗して撓む。そして、油路831Y内のオイルが圧側減衰バルブ832を押し開きながら他方側油室P4に流れる。この油路831Yおよび圧側減衰バルブ832をオイルが流れる際に生じる抵抗によって減衰力が生じる。
なお、中間油室P5にて高められるオイルの圧力は、第2減衰ユニット84の伸側減衰バルブ842を閉じる方向に作用する。従って、伸側減衰バルブ842は、油路841Yを閉じたままであり、油路841Yを通るオイルの流れは生じない。
【0111】
そして、他方側油室P4に流れたオイルは、ピストンハウジング31のハウジング油路312を通って第2油室Y2に流れる。
以上のようにして、ピストン部80の一方向の移動に伴って、第1油室Y1から第2油室Y2へのオイルの流れが生じ、そのオイルの流れに油路831Yおよび圧側減衰バルブ832によって抵抗を与えて制御することで減衰力が発生する。
【0112】
次に、油圧緩衝装置1の伸張行程時のオイルの流れを説明する。
ピストン部80の軸方向の他方側への移動によって高まった第2油室Y2のオイルの圧力によって、ピストンハウジング31のハウジング油路312から他方側油室P4にオイルが流れる。さらに、他方側油室P4からカラー開口部322Hおよびスプール開口部321Hを通って中空部321Lにオイルが流れる。
【0113】
中空部321Lに流れたオイルは、ボルト開口部844Hを通って、反転油路841Rに流れる。このように軸方向の他方側から一方側への方向に流れてきたオイルは、反転油路841Rにて反転し軸方向の一方側から他方側への方向に流れる。そして、上述した圧縮行程時の外側油路841Lにおける特定方向の流れに沿って、反転油路841Rから第2減衰ユニット84の油路841Yにオイルが流れる。
そして、油路841Yにおいて高まったオイルの圧力によって伸側減衰バルブ842が押付部材843から受ける押圧力に抗して撓む。そして、油路841Y内のオイルが伸側減衰バルブ842を押し開きながら中間油室P5に流れる。この油路841Yおよび伸側減衰バルブ842をオイルが流れる際に生じる抵抗によって減衰力が生じる。
【0114】
ここで、ピストン部80が他方向に移動することによって他方側油室P4内のオイルの圧力が高まっており、第1減衰ユニット83の圧側減衰バルブ832は開かない。従って、中間油室P5に流れたオイルは、外側油路841Lに流れる。そして、外側油路841Lから油路854にオイルが流れる。さらに、油路854から第1油室Y1にオイルが流れる。
以上のようにして、ピストン部80の他方向の移動に伴って、第2油室Y2から第1油室Y1へのオイルの流れが生じ、そのオイルの流れに油路841Yおよび伸側減衰バルブ842によって抵抗を与えて制御することで減衰力が発生する。
【0115】
なお、実施形態3が適用される油圧緩衝装置1においても、伝達部材22によりプリセットバルブユニット82を一方向に移動させることによって、プリセットバルブ324を介して押付部材833が圧側減衰バルブ832に付与する荷重を変更し、第2プリセットバルブ827を介して押付部材843が伸側減衰バルブ842に付与する荷重を変更できる。このように、プリセットバルブユニット82を単一方向に移動させるだけで、伸張行程および圧縮行程の両方向の流れにおける減衰力の調整を一括して行うことができる。
【0116】
なお、例えば実施形態1において、プリセットバルブ324などの弾性部材を介して、スプール321から押付部材43に荷重を付与するようにしているが、プリセットバルブ324などの弾性部材を介して押付部材43に荷重を付与することを限定するものではない。
ただし、実施形態1の油圧緩衝装置1では、例えばプリセットバルブ324を設けることによって、例えば移動手段23により伝達部材22に荷重を付与しない状態であっても、プリセットバルブ324自体の弾性力によって一定の荷重を押付部材43に付与する。そして、押付部材43が減衰バルブ42に付与する荷重が、移動手段23などの外部の条件に関わらず常に一定以上の力となるようにして減衰バルブ42の減衰力を安定させている。
【0117】
さらに、例えばピストン部30を構成する各部材の寸法公差により、部材間に隙間が生じたり、逆に部材同士間で押し込みすぎたりして、予め定めた荷重による押し込みを制御できない可能性がある。これに対して、本実施形態では、プリセットバルブ324を介在させることによって寸法公差を吸収することができ、油圧緩衝装置1における減衰力発生の信頼性を高めることができる。
【0118】
なお、例えば実施形態3のように、圧縮行程時に減衰を生じさせる圧側減衰バルブ832と、伸張行程時に減衰を生じさせる伸側減衰バルブ842とを別々の部材にて構成し、これらを軸方向において異なる位置に配置しているが、バルブを別体に構成した場合にそれらのバルブを軸方向において異なる位置に配置することに限定するものではない。
例えば、圧縮行程時に減衰を生じさせるバルブと、伸張行程時に減衰を生じさせるバルブとを、軸と交差する方向である半径方向において異なる位置に配置してもよい。具体的には、内側が開口した円環状の一のバルブと、一のバルブの内側に一のバルブよりも外径が小さい円環状の他のバルブを配置する。そして、一のバルブと他のバルブとに対して、ピストン部の一方向および他方向の移動に伴って生じるピストン部内のオイルの流れを制御するように構成して、減衰力を発生させる。この場合、例えば実施形態3と比較して、ピストン部の軸方向における長さを短くすることができる。
【0119】
(実施形態4)
図13は、実施形態4のピストン部130を説明するための図である。
なお、図13(a)は実施形態4のピストン部130の全体図であり、図13(b)は実施形態1のピストン部30の全体図を示す。
上述した実施形態1〜実施形態3において、図13(b)に示す例えば実施形態1のピストン部30では、プリセットバルブユニット32を移動手段23(図1参照)によって、軸方向における「他方側」(図13中上側)から「一方側」(図13中下側)にかけて押付部材43および減衰バルブ42を押す方向に移動させる構成を例に用いているが、これに限定するものではない。例えば、実施形態4のピストン部130のように、プリセットバルブユニット132の移動方向を実施形態1のプリセットバルブユニット32と逆にして、プリセットバルブユニット132を、「一方側」(例えば図13中下側)から「他方側」(例えば図13中上側)に向けて引く方向に移動させるようにしてもよい。
【0120】
実施形態4のピストン部130では、図13(a)に示すように、ピストン部130の他方側から『一方側』への移動に伴ってピストン部130において生じる一方側から他方側への方向のオイルの流れを反転させて他方側から一方側(特定方向)に流す流路(第2流路)をピストン部130に形成する。そして、その流路の一方側にて、一方側から他方側に向けて流路を塞ぐように配置され、流路の一方側を開閉するバルブを設ける。さらに、ピストン部の一方側から『他方側』への移動に伴ってピストン部130において生じる他方側から一方側(特定方向)に流れるオイルの流路(第1流路)に対しても、その流路の一方側にて、一方側から他方側に向けて流路を塞ぐように配置され、流路の一方側を開閉するバルブを設ける。
【0121】
具体的には、実施形態4では、シリンダ11内において軸方向に移動可能に設けられ、シリンダ11内の空間のオイルを収容する第3油室Y3(第1液室)と第4油室Y4(第2液室)とに区画するピストンハウジング131(区画部材)と、ピストンハウジング131内に形成され、ピストンハウジング131の軸方向における他方側へと向かう一方向の移動に伴って第3油室Y3から第4油室Y4へと向かうオイルを他方側から一方側への方向(特定方向)に流す油路1412(第1流路)と、ピストンハウジング131内に形成され、ピストンハウジング131の軸方向における一方側へと向かう他方向の移動に伴って第4油室Y4から第3油室Y3へと向かうオイルを他方側から一方側への方向(特定方向)に沿って流す反転油路141Rおよび油路1411(第2流路)と、油路1411および油路1412を開閉して、油路1411および油路1412におけるオイルの流れを制御する減衰バルブ142と、減衰バルブ142が油路1411および油路1412を閉じる方向に減衰バルブ142に荷重を付与するとともに減衰バルブ142の荷重を変更可能に構成されるプリセットバルブユニット132およびプリセットバルブユニット132を移動させる移動手段(荷重付与手段)とを有している。
【0122】
そして、プリセットバルブユニット132は、減衰バルブ142に対して他方側へと向かう一方向にのみ荷重を付与する。実施形態4においては、プリセットバルブユニット132によって減衰バルブ142の一方側に配置される押付部材143を他方側に向けて移動させることで、押付部材143が減衰バルブ142に一方側から他方側に向けた荷重を付与し、減衰バルブ142が油路1411および油路1412を閉じる。
さらに、プリセットバルブユニット132は、弾性部材であるプリセットバルブ1324を有し、このプリセットバルブ1324を介して減衰バルブ142に荷重を付与する。
【0123】
また、油路1412は、ピストンハウジング131の他方側からピストンハウジング131内に導入したオイルをピストンハウジング131の一方側に向けて流し、油路1411および反転油路141Rは、ピストンハウジング131の一方側からピストンハウジング131内に導入したオイルを一方側に向けて反転させて流す。そして、減衰バルブ142は、単一の部材によって構成され、一方側から油路1411および油路1412を開閉する。
【0124】
このように、実施形態4が適用される油圧緩衝装置1では、図13(b)に示す実施形態1のピストン部130と比較して、減衰力を発生させる油路(1411,1412)に対する減衰バルブ142、減衰バルブ142に荷重を付与する押付部材143や押付部材143の荷重を伝達するプリセットバルブ1324等の位置、プリセットバルブユニット132等の移動方向が、上下方向において逆になっている。要するに、荷重付与手段によってプリセットバルブユニット132を一方側から他方側に向けて『引く方向』に移動させる場合、圧縮行程時のオイルを流す流路と、伸張行程時のオイルを流す流路の関係は、実施形態1のプリセットバルブユニット32を一方側から他方側に向けて『押す方向』に移動させる場合と比較して逆転する。
【0125】
なお、上記の実施形態4として説明した構成は、第1実施形態に係る油圧緩衝装置1を基本構成として、伝達部材22の荷重付与方向を『押す方向』から『引く方向』への変更、及び、圧縮行程時と伸張行程時のオイルを流す流路を逆転させる例を説明しているが、これに限らず、実施形態2や実施形態3に係る油圧緩衝装置1を基本構成として、伝達部材22の荷重付与方向を『押す方向』から『引く方向』への変更、及び、圧縮行程時と伸張行程時のオイルを流す流路を逆転させてもよい。そして、上述のとおり、一方側から他方側に向けて『引く方向』に移動させることで、一方側から他方側に向けて上記のバルブを押付けて、バルブの変形しやすさを調整し、油圧緩衝装置1における減衰力を変更してもよい。
【0126】
また、上記いずれの実施形態においても、油圧緩衝装置1(圧力緩衝装置)は、いわゆる三重管構造であるが、これに限らず、いわゆる二重管構造でもよい。さらに、ボトムバルブ部50についても、上記の実施形態で示した構造に限らず、減衰機構としての機能を満たすのであれば、他の形状・構成でもよい。
【符号の説明】
【0127】
1…油圧緩衝装置、10…シリンダ部、11…シリンダ、20…ロッド部、30…ピストン部、31…ピストンハウジング、32…プリセットバルブユニット、33…チェックバルブユニット、34…ロックピース、40…減衰ユニット、41…バルブシート、41R…反転油路、42…減衰バルブ、43…押付部材、411…第1油路、412…第2油路
図1
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