【文献】
Cancer Biotherapy & Radiopharmaceuticals,2000年,Vol.15,No.5,p495−505
【文献】
Cancer Immunology, Immunotherapy,2006年,Vol.55,No.9,p1033−1042
【文献】
Clinical & Experimental Metastasis,2005年,Vol.22,No.7,p565−573
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
あるタイプの癌を有する個体を治療するための組成物であって、(i)該タイプの癌と質的もしくは量的に関連がある精製された表面タンパク質もしくは分泌タンパク質;(ii)少なくとも一つのインターロイキン(IL);および(iii)少なくとも一つのコロニー刺激因子(CSF)を含み、該タンパク質が、該組成物を投与された個体において免疫応答を誘発するのに十分な量で提供され、該タイプの癌が前立腺癌であり、該表面タンパク質もしくは該分泌タンパク質が前立腺特異抗原(PSA)約50μg、CEA約2μgおよびCA 125約1000IUを含み、該ILが約20,000単位のIL−2であり、該CSFが約16.7μgのGM−CSFであり、各々の量は該組成物の1用量当たりのものである、組成物。
薬学的に許容可能な担体が、減菌水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、またはハンクの緩衝電解液(Hank’s buffered salt solution)(HBSS)を含む、請求項3に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本発明の詳細な説明)
本開示は、癌の治療のために有用な方法および組成物を提供する。それによって、本開示に従うと、あるタイプの癌に悩まされる患者は、その癌のタイプと質的もしくは量的に関連がある精製表面タンパク質もしくは精製分泌タンパク質を含む組成物を、治療有効量で、インターロイキン(IL)およびコロニー刺激因子(CSF)を含むアジュバントと組み合わせて投与される。
【0013】
本開示は、さらに、インターロイキンおよびコロニー刺激因子を含む生物学的アジュバントと組み合わされる、特定のタイプの癌と質的もしくは量的に関連がある精製表面タンパク質もしくは精製分泌タンパク質を含む癌ワクチン組成物に関する。
【0014】
作用の任意の一つのメカニズムにより限定されることなく、腫瘍細胞の死を引き起こすこと、腫瘍の成長もしくは再発を抑制すること、腫瘍の退縮および/もしくは転移の抑制を促進すること、無再発生存率および/もしくは全生存率の増加につながること;またはそれらの任意の組み合わせにより、この組成物は作用すると思われる。
【0015】
特定の実施形態において、このインターロイキンは、インターロイキン2(IL−2)であり、コロニー刺激因子は、顆粒球マクロファージCSF(GM−CSF)である。
【0016】
ワクチンを与えられる患者の免疫応答は、第一のワクチン接種の前に測定可能であり、次いで、第一のワクチン接種の後に、および所望される場合は任意の後続のワクチン接種の後に、免疫応答の程度を決定するために再び測定可能である。免疫応答のレベルは、リンパ球幼若化分析(Lymphocyte Blastogenesis Assay)(LBA)により定量化され得る(本明細書において参考として援用される;Elliott,R.ら、Breast Cancer Research and Treatment 30:299−304(1994)を参照のこと)。この分析においては、単核細胞が、組織培養法において7日間増殖させられる。この単核細胞は、様々な濃度において腫瘍抗原と同時培養される(co−cultured)。
3H−チミジンが、終了の少し前に培養物へ加えられる。次いで、増殖指数(proliferation index)が、培養における腫瘍の抗原刺激性の単核細胞(tumor antigen−stimulated mononuclear cell)の中へ取り込まれた
3H−チミジン吸収量を、(腫瘍抗原とは同時培養されなかった)対照の単核細胞の中へ取り込まれた
3H−チミジン吸収量で割ることにより計算される。
【0017】
本明細書において使用される場合、「治療有効量(therapeutically effective amount)」という熟語は、組織、システム、動物、個体もしくはヒトにおいて、研究者、獣医、医師もしくは他の臨床家により探求されている生物学的もしくは医学的反応を誘発する参照化合物もしくは組成物の量をいい、その生物学的もしくは医学的反応は、以下のもののうちの一つ以上を含む:
(1)疾患の予防;例えば、疾患、状態(condition)もしくは障害(disorder)に対する素因を与えられ得るが、まだその疾患の病理もしくは症状を経験もしくは呈示していない個人において、疾患、状態もしくは障害を予防すること;
(2)疾患の抑制;例えば、疾患、状態もしくは障害の病理もしくは症状を経験もしくは呈示している個人において、疾患、状態もしくは障害を抑制すること;および
(3)疾患の寛解;例えば、疾患、状態もしくは障害の病理もしくは症状を経験もしくは呈示している個人において、疾患、状態もしくは障害を寛解すること(すなわち、病理および/もしくは症状を後退させること)、例えば、疾患の重症度を減少させること。
【0018】
例えば、化合物もしくは組成物の治療有効量は、腫瘍抗原に対する免疫応答を少なくとも50%増大させる;または循環している腫瘍マーカータンパク質を安定もしくは減少させ、結果として癌の進行を抑制する量として、測定され得る。
【0019】
本明細書において使用される場合、「治療(treatment)」もしくは「治療すること(treating)」という用語は、(i)上で説明されたように、参照される疾患の状態を寛解、抑制、もしくは予防すること;または(ii)参照される生物学的効果を誘導すること(例えば、免疫療法的反応の結果、対象の患者が悩まされている疾患を緩和または停止させること)を意味する。より具体的には、治療することは、腫瘍の成長もしくは再発を抑制すること、腫瘍を退縮させること、および/または転移の形成を抑制することを含み得る。
【0020】
本明細書において使用される場合、「ある(a)」もしくは「ある(an)」もしくは「その(the)」タンパク質もしくは抗原もしくはアジュバントに対する言及は、一つ以上のタンパク質もしくは抗原もしくはアジュバントをいい得る。
【0021】
本明細書において使用される場合、癌タイプと「質的もしくは量的に関連がある」表面タンパク質もしくは分泌タンパク質は、典型的に、一以上の特定のタイプの癌の表面上のみに見出されるか、もしくはそれらのみにより分泌されるか、または正常細胞もしくは非癌細胞よりも豊富に、癌細胞の表面上で見出されるか、もしくはそれらにより分泌されるかのいずれかであるタンパク質を意味する。このようなタンパク質はまた、腫瘍マーカータンパク質または腫瘍関連抗原としても公知であり、そしてこれらの用語は、本出願内で相互交換可能に使用される。これらのタンパク質は、腫瘍細胞調製物から精製され得るか、当業者にとって公知の方法により合成され得る。さらに、これらのタンパク質は、他の非腫瘍関連タンパク質との混合物として調製され得るか、またはそれらが唯一のタンパク質成分である調製物として調製され得る。
【0022】
このようなタンパク質または抗原、およびそれらと関連がある癌の例は、以下の表1において列挙されるものが含まれる。
【0024】
【表1B】
この組成物は、単離および精製がされた自己由来、同系異種または組換型の表面腫瘍マーカータンパク質もしくは分泌腫瘍マーカータンパク質、またはそれらの組み合わせから作られ得る。これらの組成物は、低用量のインターロイキンおよびCSFと組み合わされて投与された場合、癌ワクチンとして有用であることが見出されている。
【0025】
一つの実施形態において、この組成物は、IL−2およびGM−CSFを含む。
【0026】
治療されるべき特定のタイプの癌に対する単離および精製がされた抗原の使用は、いっそうの特異性を提供し、先行技術のワクチン組成物において存在した変動性を除去する。その上さらに、本ワクチンの調製は、患者由来の組織を必要とせず、それゆえ診察時または手術後のあらゆる患者が、治療ワクチンの候補者になる。しかしながら、所望される場合、患者由来の組織は、本ワクチンを作るために使用され得る。単離および精製がされた抗原の使用はまた、ワクチン組成物が大量生産されることを可能にする。
【0027】
本明細書において使用される場合、「精製がされた」という用語は、参照される存在物が総重量の約50%よりも高い純度を有することを意味する。すなわち、特定の実施形態において、本明細書において使用される単離および精製がされた抗原の各々は、独立に、総重量で約50%よりも高い;または約60重量%よりも高い;または約70重量%よりも高い;または約80重量%よりも高い;または約85重量%よりも高い;または約90重量%よりも高い;または約95重量%よりも高い;または約98重量%よりも高い;または約99重量%よりも高い純度を有する。
【0028】
本明細書において使用される場合の「約」という用語は、参照される値の+/−10%を意味する。
【0029】
この組成物は、固形腫瘍、悪性腹水もしくは造血性癌に悩まされる患者に対し投与され得、腫瘍の成長もしくは再発を抑制し得るか、または転移の形成を抑制し得る。この組成物はまた、白血病もしくはリンパ腫に悩まされる患者に対しても投与され得る。
【0030】
ワクチン組成物は、腫瘍マーカータンパク質を使用して作られる。所望の単離および精製がされた腫瘍マーカータンパク質は、市販されている。上で列挙された抗原のうちの多くの供給元としては、Fitzgerald Industries International,Concord,MA、およびSigma−Aldrich Co,Dallas,TXが挙げられる。他の商業的供給元は、当業者にとって公知および利用可能である。特定の抗原が市販されていない場合、その抗原は、当業者により公知の方法に従ってcGMP設備(cGMP facility)において合成され得る。
【0031】
腫瘍マーカータンパク質(単数もしくは複数)の各々は、独立に、典型的にワクチン組成物100μL当たり約1μgから約1000μg、もしくは組成物100μL当たり約1μgから約250μg、もしくは組成物100μL当たり約25μgから約100μg、もしくは組成物100μL当たり約50μg、もしくは100μL当たり約1μgから約10μgの範囲の量で存在する。特定の抗原が容易に利用可能でないか、もしくは妥当なコストでは容易に利用可能でない場合、100μL当たり1μgから約10μgの範囲内のような、先述の範囲内のより小さな量が、使用され得て良好な効果を持つ。
【0032】
いくつかの腫瘍マーカータンパク質は、μgではなく、国際単位(IU)を基準にして販売される。このような例において、抗原は、典型的に、ワクチン組成物100μL当たり約1IUから約10,000IU;もしくは組成物100μL当たり約20IUから約5,000IU;もしくは組成物100μL当たり約500IUから約1,500IU;もしくは組成物100μL当たり約1000IUの範囲内の量で提供される。
【0033】
例えば、対象の癌のタイプが前立腺癌であり、そしてPSAがワクチン組成物の中に含まれる場合、PSAは、組成物100μL当たり約1μgから約250μg、もしくは組成物100μL当たり約25μgから約100μg、もしくは組成物100μL当たり約50μgの濃度で供給され得る。PSAは、前立腺癌ワクチンにおける唯一のマーカーであり得、またはワクチンは、上で説明されたような1以上の付加的もしくは代替的な抗原を含み得る。
【0034】
例えば、このワクチンはまた、CEAを含み得る;この抗原は、典型的に、組成物100μL当たり約1μgから約250μgの濃度で提供される。CA125タンパク質が、このワクチンの中に含まれ得る;CA125タンパク質は、典型的に、IUの形で販売され、組成物100μL当たり約20IUから約5000IU、もしくは組成物100μL当たり約100IUから約2500IU、もしくは組成物100μL当たり約1000IUの濃度で提供され得る。
【0035】
CA15−3および/もしくはCA27.29が、各々、組成物100μL当たり約1μgから約250μgの濃度で含まれ得る。
【0036】
一般的に、このワクチンにおいて使用される特定の抗原の量は、抗原がワクチンにおいて提供される唯一の抗原であるか、もしくはワクチン組成物において提供される多数の抗原のうちの一つであるかに関わらず、おおよそ同じままである。それゆえ、前の段落において提供された前立腺癌ワクチンの例において、組成物が、示された抗原のうちの一つを含むか、または2、3、4もしくは5つの抗原の組み合わせを含むかに関わらず、各抗原は、上で述べられたガイドライン内の量にて提供される。付加的な抗原の存在は、患者における有効な免疫応答の可能性を増大させ得る。
【0037】
別の実施形態において、この精製された抗原(単数もしくは複数)は、少量のインターロイキンおよびCSFの組み合わせと物理的に組み合わされる。別の実施形態において、この抗原溶液とアジュバント(例えば、インターロイキンおよびCSF)とが別個に投与されるが、抗原およびアジュバントは、可能な限り時間を近づけて2時間以上間隔をあけずに、同じところへ投与されるべきである。典型的に、このワクチンの各成分は、生理学的に許容可能な溶液の形で提供され、次いで、各溶液の所望の量が、最終のワクチン組成物を作るために組み合わされる。
【0038】
適切なインターロイキンとしては、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−9、IL−12、IL−13、IL−14、およびIL−15が挙げられる。特定の実施形態において、このインターロイキンは、IL−1である。特定の他の実施形態において、このインターロイキンは、IL−2である。特定の他の実施形態において、このインターロイキンは、IL−3である。特定の他の実施形態において、このインターロイキンは、IL−4である。特定の他の実施形態において、このインターロイキンは、IL−5である。特定の他の実施形態において、このインターロイキンは、IL−6である。特定の他の実施形態において、このインターロイキンは、IL−7である。特定の他の実施形態において、このインターロイキンは、IL−9である。特定の他の実施形態において、このインターロイキンは、IL−12である。特定の他の実施形態において、このインターロイキンは、IL−13である。特定の他の実施形態において、このインターロイキンは、IL−14である。特定の他の実施形態において、このインターロイキンは、IL−15である。
【0039】
適切なコロニー刺激因子としては、顆粒球マクロファージCSF(GM−CSF)、顆粒球CSF(G−CSF)およびマクロファージCSF(M−CSF)が挙げられる。特定の実施形態において、このコロニー刺激因子は、GM−CSFである。特定の実施形態において、このコロニー刺激因子は、G−CSFである。特定の実施形態において、このコロニー刺激因子は、M−CSFである。
【0040】
単一のインターロイキンおよび単一のコロニー刺激因子が、本明細書における組成物において使用され得、または2以上のインターロイキンおよび/もしくはコロニー刺激因子の組み合わせが、使用され得る。サイトカインの各タイプの有効性は、単独で投与された場合、非常に限定されるが、腫瘍マーカー抗原と組み合わせたインターロイキンおよびCSFの両方の投与は相乗効果を有することが、見出されている。
【0041】
一つの実施形態において、サイトカインの組み合わせは、GM−CSFおよびIL−2である。IL−2は、細胞障害性T細胞免疫を促進する;GM−CSFは、樹状細胞プロセッシングを促進する。
【0042】
典型的に、この組成物は、組成物100μL当たりインターロイキン約5,000Uから約50,000単位(U)(約0.3μgから約3μg);もしくは組成物100μL当たりインターロイキン約10,000Uから約30,000U(約0.6μgから約1.8μg);もしくは組成物100μL当たりインターロイキン約20,000U(約1.2μg)、および組成物100μL当たりCSF約10μgから約100μg;もしくは組成物100μL当たりCSF約15μgから約20μg;もしくは組成物100μL当たりCSF約16.5μgから約16.9μg;もしくは組成物100μL当たりCSF約16.7μgを含む。
【0043】
典型的に、各サイトカインは、凍結乾燥粉末として供給され、生理学的に許容可能な液体担体と組み合わされ、順次に希釈されて、必要な場合、100μL中の最終所望濃度に至る。例えば、IL−2は、22×10
6IU(1.3mg)/バイアルの凍結乾燥粉末として、Chiron Corporation,Emeryville,CAからProleukin(登録商標)の名称で得られ得る。例えば、IL−2が減菌水1.1mLと組み合わされ、次いで1:10、1:10で順次に希釈(最終的に1:100)された場合、その最終濃度は、100μL中で20,000IU(1.18μg)になる。同様に、GM−CSFは、250μg/バイアルの凍結乾燥粉末として、Berlex Laboratories,Montville,N.J.からLeukine(登録商標)の名称で得られ得る。例えば、GM−CSFが減菌水1.5mLと組み合わされた場合、100μL当たり16.7μgの最終濃度が得られる。
【0044】
本明細書における組成物に関し適切な薬学的に許容可能な担体は、有意な副作用なしに受容者の中へ注射され得る流体の賦形剤に関連する。当該分野において公知の適切な薬学的に許容可能な担体としては、減菌水、生理食塩水、グルコース、および(生理食塩水もしくはリン酸緩衝生理食塩水を含む)生理学的に許容可能な水性緩衝剤または溶液が挙げられるが、それらに限定されない。担体は補助剤を含み得、その補助剤としては、希釈剤、安定剤(すなわち、糖およびアミノ酸)、保存剤、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝剤、粘度増強剤、着色剤などが挙げられるが、それらに限定されない。例えば、腫瘍マーカータンパク質およびアジュバントに関し適切な担体としては、生理学的に許容可能な水性緩衝剤または溶液が挙げられ、その水性緩衝剤または溶液としては、減菌水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、もしくはハンクの緩衝電解液(Hank’s buffered salt solution)(HBSS)が挙げられる。
【0045】
適切な量の抗原もしくはアジュバントが、選択された担体と混合される。このワクチンの成分の全ては、一つの担体において一緒に提供され得るが、所望される場合、一つ以上の成分が、別個の担体において提供され得、他の成分と組み合わされて投与され得る。
【0046】
別の局面において、本開示は癌を治療するための方法を提供し、その方法は、インターロイキン(IL)およびコロニー刺激因子(CSF)を含有する生物学的アジュバントと組み合わせて、癌のタイプと質的もしくは量的に関連がある精製された表面タンパク質もしくは分泌タンパク質を含有する組成物を治療有効量で投与する工程を含む。
【0047】
このワクチンは、注射により投与され得る。別の実施形態において、このワクチンは、表皮下に投与されるが、ワクチンはまた、筋肉内、皮下、もしくは腹膜内に投与され得る。このワクチンは、典型的に、用量当たり約0.3mLから約1mL、もしくは約0.5mLから約0.7mL、もしくは約0.5mLの用量で投与される。このワクチンは一用量のみでも有用であり得るが、多くの場合、ワクチン約3用量から約12用量、もしくは約6用量から約12用量投与されることが、所望される。1用量よりも多くが投与される場合、この1用量は、典型的に、少なくとも7日の間隔をあける。例えば、この1用量は、典型的に、約7日から約90日の間隔をあけて投与され得る。例えば、一つの有用な投薬療法は、このワクチンを1週間の間隔で3用量投与して、次いでその後、4週間の間隔でさらに3用量投与することである(すなわち、このワクチンは、第0週、第1週、第2週、第6週、第10週および第14週に投与される)。所望される場合、ブースター注射が、最初の免疫処置療法に続く約1年までの間、毎月もしくは隔月で投与され得る。このブースター注射は、(例えばIL−2があるがそれに限定されない)インターロイキンのブースター注射と交互に投与され得て、患者のナチュラルキラー細胞をブーストし得る。
【0048】
本開示に従いワクチンを与えられた患者のT細胞免疫およびB細胞免疫が、ワクチン投与開始の前、ならびに、次いで、ワクチン投薬療法の間およびその後で、リンパ球幼若化分析を使用してモニターされ得る(本明細書において参考として援用される;Elliott,R.ら、Breast Cancer Research and Treatment 30:299−304(1994)を参照のこと)。増殖指数の増加が、ワクチン接種処置による細胞性抗原およびタンパク質抗原に対する免疫応答の増大を実証する。本開示に従いワクチンを与えられた患者はまた、循環する腫瘍マーカータンパク質を測定する分析でモニターされ得る。循環する腫瘍マーカータンパク質の減少は、免疫応答の増大に関する代理マーカーである。
【0049】
本明細書におけるワクチンは、前立腺、乳房、肺、結腸、直腸、(子宮頚部および子宮内膜を含む)子宮、卵巣、口腔、膀胱、膵臓、胃、肝臓、腎臓、皮膚、睾丸ならびにリンパ組織の癌を含む任意の固形癌の治療に対し有用である。これらのワクチンはまた、悪性腹水症、ならびに白血病およびリンパ腫を含む造血性腫瘍を治療するために使用され得る。適切な腫瘍マーカータンパク質が選択され、そしてこのワクチンは、上で述べられたようなワクチンの成分の一般的な量を使用して、調製される。
【0050】
一つの実施形態において、前立腺癌ワクチンとして有用な組成物が提供され、その組成物は、前立腺癌と質的もしくは量的に関連がある少なくとも一つの精製された表面タンパク質もしくは分泌タンパク質を、生物学的アジュバントの組み合わせと組み合わせて含み、このアジュバントは、インターロイキンおよびコロニー刺激因子から本質的に成る。一つの実施形態において、少なくとも一つの精製された表面タンパク質もしくは分泌タンパク質は、精製されたPSAを、前立腺癌と関連がある1以上の他の精製されたタンパク質と必要に応じて組み合わせて含む。関連した実施形態において、前立腺癌を持つ人を治療するための方法が提供され、その方法は、前立腺癌に関連がある一つ以上の他の精製されたタンパク質、ならびにインターロイキンおよびコロニー刺激因子を含む生物学的アジュバントを必要に応じて組み合わせて、精製されたPSAを含む組成物でその人に免疫を付与する工程を含む。さらなる関連した実施形態において、前立腺癌に関連がある他の精製されたタンパク質、ならびに生物学的アジュバント(このアジュバントは、インターロイキンおよびコロニー刺激因子から本質的に成る)を必要に応じて組み合わせて、精製されたPSAを含む組成物で前立腺癌を持つヒトに免疫を付与することにより、前立腺癌を持つヒトにおいて免疫療法応答を誘発するための方法が提供され、この免疫療法応答の結果、循環するPSAが減少し、腫瘍細胞に死がもたらされる。この免疫付与は、1回実施され得るか、もしくは繰り返され得る。この免疫付与は、腫瘍抗原/タンパク質に対する免疫療法応答を、ベースラインの免疫を最低限約50%超えるまで増大させ、循環するPSAを減少させて、その結果、腫瘍細胞の死ならびに無進行生存および全生存の増加をもたらすように設計される。
【0051】
別の実施形態は、乳癌ワクチンとして有用な組成物を含み、その組成物は、乳房の癌と質的もしくは量的に関連がある精製された表面タンパク質もしくは分泌タンパク質を治療有効量含む。このような組成物は、CA 15−3、CA 125もしくはCEA、またはそれらの組み合わせを、生物学的アジュバントの上述の組み合わせと一緒に含み得る。関連した実施形態において、乳癌を持つ人を治療するための方法が提供され、その方法は、乳癌に関連がある一つ以上の他の精製されたタンパク質、ならびにインターロイキンおよびコロニー刺激因子を含む生物学的アジュバントを必要に応じて組み合わせて、精製されたCA 15−3、CA 125およびCEAを含む組成物でその人に免疫を付与する工程を含む。この免疫付与は、1回実施され得るか、もしくは繰り返され得る。この免疫付与は、腫瘍抗原/タンパク質に対する免疫療法応答を、ベースラインの免疫を最低限約50%超えるまで増大させ、循環する腫瘍抗原を減少させて、その結果、腫瘍細胞の死ならびに無進行生存および全生存の増加をもたらすように設計される。
【0052】
他の実施形態は、胃腸系、肺、肝臓、膵臓、甲状腺、卵巣、睾丸、結腸直腸系、子宮内膜、膀胱もしくは神経系の癌、または黒色腫、白血病もしくはリンパ腫と質的もしくは量的に関連がある精製されたタンパク質を治療有効量含む組成物、およびこのような癌に悩まされるヒトに対しこれらの組成物を投与して癌に対する免疫応答を誘発することを含む。
【0053】
本開示は、以下の実施例によりさらに例証されるが、その実施例は、限定することを意図されない。
【実施例】
【0054】
参考例1
レトロスペクティブな研究を、免疫応答と全生存との関係を決定するために行った。上で考察したように、免疫応答をLBAで測定した。
【0055】
本研究は、アジュバント設定において乳癌ワクチンを受けた低下免疫を持つ早期乳癌の患者を対象にして行った。この患者に対し、自己由来細胞、同種異系細胞およびタンパク質抗原への免疫応答に関する試験をした。LBAにおいて(今回の修正LBA分析のデータセットの切点分析(cut point analysis)(Headら、Ann.NY Acad.Sci、1993;690:340−342)により決定された)比率が1.5未満であった、低下免疫を持つ患者に、自己由来乳癌細胞、同種異系乳癌細胞(MCF−7細胞)、CA 15−3抗原、CA 125抗原、CEA抗原ならびに生物学的アジュバント(IL−2およびGM−CSF)を含む最低限6つのワクチンでワクチン接種をした。第二のLBAを、6回目のワクチン投与の2〜4週間後に行った。追跡調査を10年までの期間行った。
図1は、他の原因ののために死亡した患者に対してのKaplan−Meier全生存曲線である。患者に対する計算されたKaplan Meier全生存(すなわち、連続的期間にわたる生存百分率)は、10年で、低下免疫であり標準的な治療を施された患者においては59%であり、診察時のLBAにおいて自分自身の腫瘍関連抗原に対する免疫を持っていた標準的な治療を施された患者に関しては95%生存である(研究のための病歴対照)。診察時に自分自身の腫瘍抗原に対する免疫を欠いていた低下免疫の患者に、上で述べたようにワクチンを接種し、そしてこのことが、10年間での全生存を59%から79%へと増加させることへ繋がった。これらの群を、年齢、閉経期の状態、腫瘍サイズ、結節の状態、疾患の進行段階、エストロゲン受容体の状態、プロゲステロン受容体の状態、および抗ホルモン療法に関してよく一致させた。
【0056】
本研究により、正常な免疫を持つ患者と比較した場合、低下免疫を持つ患者がより低い全生存および芳しくない長期間予後を有すること、そしてさらに、ワクチン接種により免疫応答によって全生存を改善することを、示した。
【0057】
さらに、免疫応答の増大が全生存の増加と相関を持つことが、当該分野において一般的に公知である。例えば、本明細書において参考として援用されるHsuehら(J.Clin.Oncol.、Dec.1、2002;20(23):4549−54)は、「ワクチン免疫療法後の生存は、ワクチンに対するDTH免疫応答とは有意な相関があったが、対照抗原に対してはなく...」(p.4553、考察部の第一段落)と述べている。加えて、本明細書において参考として援用されるGalonら(Science、Sep.29、2006;313:1960−64)は、「...再発までの期間および全生存期間は、局所的な適応免疫応答の状態により大部分左右される」(p.1963、最終段落)ことを報告した。
【0058】
それゆえに、改善された免疫応答が癌患者における全生存と相関を持つことが、当該分野において公知であり、かつ、
図1におけるデータにより実証される。
【0059】
実施例1 PSA組成物の調製
本開示に従う組成物を、以下の手順に従い作製した。
【0060】
1.PSA(Fitzgerald Industries International、Concord、MA、CAT♯ 30−AP15E)1mgを、USP減菌水2.0mL中で希釈した。この溶液を、0.22ミクロンフィルターでフィルター減菌した。減菌アリコート100μLを、−80℃で必要になるまで凍らせた。
【0061】
2.CEA(Fitzgerald Industries International、Concord、MA、CAT♯ 30−AC30)500μgを、USP減菌水25mL中で希釈し、そして結果として生じた溶液を、0.22ミクロンフィルターでフィルター減菌した。減菌アリコート100μLを、−80℃で必要になるまで凍らせた。
【0062】
3.CA 125(Fitzgerald Industries International、Concord、MA、CAT♯ 30−AC11)20,000単位を、USP減菌水2.0mL中で希釈し、そして結果として生じた溶液を、0.22ミクロンフィルターでフィルター減菌した。減菌アリコート100μLを、−80℃で必要になるまで凍らせた。
【0063】
4.IL−2(Proleukin;Chiron Corporation、Emeryville、CA)2,200万単位を、USP減菌水1.1mL中で再構成し、次いで、USP減菌水にて1:10で希釈した。結果として生じた溶液を、再び1:10で希釈して、100μL当たり20,000単位の最終濃度を提供した。減菌アリコート100μLを、−80℃で必要になるまで凍らせた。
【0064】
5.GM−CSF(Berlex Laboratories、Montville、NJ)250μgのバイアルを、USP減菌水1.5mLで再構成して、100μL中に16.7μgの最終濃度を提供した。この溶液を、4℃で冷蔵した。
【0065】
6.このワクチン1用量を調製するために、以下の物の凍結したアリコートを、室温に移した:三つの抗原(PSA、CEAおよびCA 125)の各々100μL、ならびに二つのアジュバント(IL−2およびGM−CSF)の各々100μL。次いで、各成分100μLを、1インチの26ゲージ針で1mLシリンジの中へ抜き取った。最終の総体積は0.5mLであった。
【0066】
ワクチンの各1用量は、PSAを50μg;CEAを2μg;CA 125を1000IU;IL−2を20,000単位;およびGM−CSFを16.7μg含有していた。
【0067】
実施例2
13名の生検確認された前立腺癌患者へ、第0週、第1週、第2週、第6週、第10週および第14週に、最初のコースのワクチン6回を表皮下に投与した。各用量は、実施例1において調整されたPSA、CEA、CA 125、IL−2およびGM−CSFを含んでいた。各患者の血清PSAレベルを、第一のワクチン接種が開始される前に決定した。このワクチン接種期間中、患者は、他の同時療法(すなわち、外科手術、ホルモン、放射線、放射性シードもしくは化学療法)を受けなかった。
【0068】
治療プロトコルを、Gehan(本明細書において参考として援用される;Gehan,E.、J.Chron.Dis.13(4)、346−353(1961)を参照のこと)により教示されたスキームに従って、単一群第I/II相臨床試験における腫瘍学薬剤(oncology drug)に関する最小奏効率を決定するように設計した。手短に言うと、Gehanの方法により、いかなる奏功もない場合、事前に設定した最小奏効率(典型的に15〜20%)に到達しないために本研究を終了するのに必要となる最小サンプルサイズを計算した。信頼水準を95%に設定し、それゆえ奏効率が目標の奏効率である15〜20%よりも低いことが95%の信頼度で生じた場合、本研究を早期に終了する。それゆえに、患者14名に対し奏効率20%、もしくは患者19名に対し奏効率15%が、いかなる奏功もなしとして扱われる場合には、この薬剤は不活性である。一名の患者に奏功が現れた場合には、正確な奏効率を決定するために、より多くの患者が治療される必要がある。
【0069】
この前立腺癌ワクチンの投与の結果を、以下の表2において提供する:
【0070】
【表2A】
【0071】
【表2B】
患者♯8のPSAレベルが、4回目のワクチン接種の後、7.6から13.7へ上昇したので、彼は、他の療法を探し求めるために本研究を辞退した。残っている12名の前立腺癌患者の各々の血清PSAレベルを、6回目のワクチン接種の3〜4週間後に決定した。表2において示すように、6回目のワクチン接種後、12名中8名の患者において、血清PSAレベルの低下が存在した。
【0072】
1名の患者(患者♯3)は、そのPSAが6.8から6.4へと下がり、そして以前に放射線療法を受けていた(以前に治療を受けていた唯一の患者)が、この最初のワクチン接種期間の最後に、本研究からの辞退を選択し、根治的前立腺摘出術を受けた。6回のワクチン後にPSAの上昇があった2名の患者は、付加的な標準的療法を受けることを選択した(1名の患者はシードインプラントを受け、そして別の1名はLupronを受けた)。当初の13名の患者のうちの9名に、最初のワクチン接種に続く6月間、患者のナチュラルキラー細胞をブーストするためのIL−2の用量(1100万単位)と交互に、ワクチンをさらに3用量与えた。PSAが上昇した患者のうちの1名は、Zoladexおよびシードインプラントを受けることを選択した。8名の患者を18〜92か月の間追跡調査した(追跡調査における差異は、各患者の最初のワクチン接種の日付(患者は異なった時にこの試験へ参加した)と、追跡調査で見失った患者に起因する)。これら8名の患者に関する平均PSA値は、最初5.9であった;それは、最初の6回のワクチン後に4.1へ減少し、12回のワクチン後にさらに3.7へ減少し、平均追跡調査期間49月(中央値45.5月)の後で4.7であった。
【0073】
1名の患者は、そのPSAがワクチン接種の後で4.1ng/mlから正常の2.4ng/mlへと減少し、18月後および30月後の再生検では癌が見出されず、10年以上の間再発せずに安定なままである。2名の他の患者もまた、ワクチン接種プロセスの後で再生検を行っている:1名は、第24月での生検サンプルにおいて疾患を有さず、そして別の1名は、第16月で癌細胞を含む生検サンプルの百分率が非常に有意に(55%から1%へ)減少した。
【0074】
ワクチン6回後に患者12名中8名(67%)において、そしてワクチン12回後に患者9名中6名(67%)において血清PSAが減少したことにより実証されるように、上で説明された前立腺癌ワクチンは、免疫学的応答を有した。この試験に登録した当初の13名の被験者のうち7名(54%)の被験者は、中央値45.5月(18月から80月の範囲)の追跡調査の後、診察時よりも低いPSAレベルを有し、このことは、患者の疾患の生物化学的進行がないこと(血清PSAの量の非増加)の指標であった。生物学的腫瘍マーカーであるPSA血清濃度の減少により測定されるこれらの奏効率は、50%以上と見積もられ、それゆえに、Gehanプロトコルに従うと、非常に有意な奏効率を表している。時が経つにつれて前立腺癌患者の多くはPSAにある程度の増加が現れ、そしてこのことは、最初のワクチン12回の後にブースターワクチンが必要であることを示唆している。
【0075】
実施例3
本明細書において提供されたワクチンをまた、他の形態の癌を持つ患者を処置するために使用する。ワクチン組成物を、表3において示されるように、実施例1における一般的手順に従い以下の成分を使用して作製する。
【0076】
【表3】