(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、従来技術では自動測定することが困難であったハグミ段差の位置および寸法を容易に且つ正確に自動測定することができる容器計測装置及び計測方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の容器測定装置は、直立した状態で容器が載置されるターンテーブル
(40)と、
前記ターンテーブル
(40)に載置されて回転する容器
(5)のパーティングライン
(PL)近傍の複数の円周方向位置における容器外周面の半径方向位置を測定する外周面位置測定装置
(64)と、制御装置
(50)とを備え、前記制御装置
(50)は、
前記容器(5)の外周に前記外周面位置測定装置(64)の触針を接触させながら、前記ターンテーブル(40)により容器(5)を回転してパーティングライン(PL)の近傍の領域において前記ターンテーブル(40)の所定の回転角度毎に前記外周面位置測定装置(64)の変位を記録する機能を有し、そして、前記制御装置(50)は、複数の円周方向位置の各々における外周面位置測定装置
(64)の測定結果の変化量から
ハグミ段差
(5d)が存在するか否かを決定すると共に、パーティングライン
(PL)の
ハグミ段差
(5d)の円周方向位置を決定する機能と、決定された
ハグミ段差
(5d)の円周方向位置における容器外周面の半径方向位置から当該
ハグミ段差
(5d)の段差寸法(δ)を決定する機能
とを有し、前記ハグミ段差
(5d)の円周方向位置を決定するに際しては、ターンテーブル(40)の所定の回転角度毎に測定された容器外周面のパーティングライン(PL)近傍の位置座標である外周面位置測定装置(64)の表示値と、直前に測定された位置座標との差を演算し、当該差の直前の数値との差異を演算する機能と、前記差異の絶対値としきい値を比較して、前記差異がしきい値以上となった領域を前記ハグミ段差(5d)の円周方向位置として決定する機能と、段差寸法(δ)を決定する際に、前記差異がしきい値以上となった領域における前記位置座標の最大値と最小値を選択する機能と、当該最大値と最小値の差を段差寸法として決定する機能とを有していることを特徴としている。
【0008】
ここで、前記ターンテーブル(40)の所定の回転角度(角度ピッチ)は、測定対象の容器の大きさに応じて最適な値を適宜設定すればよく、その値は、ハグミ段差の測定値のばらつきをより小さくするという点から、0.5°〜3°、特に0.5°が好ましく、前記しきい値(閾値)は、測定対象の容器の大きさに応じて最適な値を適宜設定すればよく、その値は、例えば、0.003mm以上、0.004mm以下を挙げることができる。
【0009】
そして本発明の容器測定方法は、ターンテーブル
(40)に直立した状態で載置されて回転する容器
(5)のパーティングライン
(PL)近傍の複数の円周方向位置における容器外周面の半径方向位置を、外周面位置測定装置
(64)により測定する測定工程と、前記測定工程で測定されたターンテーブル
(40)上に載置された容器
(5)のパーティングライン
(PL)近傍の複数の円周方向位置における容器外周面の半径方向位置の変化量から
ハグミ段差
(5d)が存在するか否かを決定する段差判断工程と、
前記段差判断工程で段差が存在すると判断された場合に当該
ハグミ段差
(5d)の円周方向位置を決定する段差位置決定工程と、
前記段差位置決定工程で決定された
ハグミ段差
(5d)の円周方向位置における容器外周面の半径方向位置から当該
ハグミ段差の段差寸法を決定する段差寸法決定工程を備え、
前記段差位置決定工程は、前記容器外周面のパーティングライン(PL)近傍の位置座標である外周面位置測定装置(64)の表示値をターンテーブル(40)の所定の回転角度毎に測定し、測定された容器外周面のパーティングライン(PL)近傍の位置座標と直前に測定された位置座標との差を演算ブロック(52S)において演算して、当該差の直前の数値との差異を演算し、比較ブロック(53S)において前記差異の絶対値としきい値とを比較し、ハグミ段差の領域決定ブロック(54S)において、前記差異がしきい値以上となった領域を前記ハグミ段差(5d)の円周方向位置として決定し、前記差異がしきい値以上となった領域における前記位置座標の最大値と最小値を最大値/最小値決定ブロック(55S)において選択し、前記最大値と最小値との差を段差寸法として決定することを特徴としている。
【0010】
この場合においても、前記ターンテーブルの所定の回転角度(角度ピッチ)は、測定対象の容器の大きさに応じて最適な値を適宜設定すればよく、その値は特に限定されないが、ハグミ段差の測定値のばらつきをより小さくするという点から、0.5°〜3°、特に0.5°が好ましく、前記しきい値(閾値)は、測定対象の容器の大きさに応じて最適な値を適宜設定すればよく、その値は特に限定されず、例えば、0.003mm以上、0.004mm以下を挙げることができる。
【0011】
本発明の容器測定装置の実施に際して、直立した状態で容器(5)が載置されるターンテーブル(第1のターンテーブル20)と、
ターンテーブル(20)に載置されて回転する容器(5)の、複数の高さ方向位置における基準点からの距離を、例えば帯状のレーザー光線(Lb)を用いて測定する径寸法測定装置30(レーザー測定器)と、
制御装置(コントロールユニット50)を備え、
前記制御装置(50)は、
ターンテーブル(20)上に載置された容器(5)の複数の高さ方向位置の各々における基準点からの距離に基づいて、各々の高さ方向位置(高さ方向位置における水平断面)における重心の位置を決定する機能と、
各々の高さ方向位置における重心の位置から当該容器(5)の芯ズレ量(δ)を決定する機能を備えていることが好ましい。
なお、「芯ズレ量」とは、ある高さ方向位置の重心(例えば、容器口部の重心)と、別の高さ方向位置の重心(例えば、容器底部の重心)とを、同一座標系にプロットしたときの重心同士の距離、及び/又は、ずれている方向を意味する用語である。
【0012】
その場合、前記制御装置(50)は、
容器(5)の各々の高さ方向位置(高さ方向位置における水平断面)の外周面における複数の測定点(a1〜a12)と、ターンテーブル(第1のターンテーブル20)の回転中心との距離(測定結果=R−L
2)から、前記複数の測定点(a1〜a12)が存在する水平面における隣接する2つの測定点とターンテーブル(第1のターンテーブル20)の回転中心を頂点とする複数の三角形(△0−a1−a2〜△0−a12−a1)の各々における面積と重心を演算する機能と、
複数の三角形(△0−a1−a2〜△0−a12−a1)の各々における面積と重心から前記複数の測定点(a1〜a12)が存在する水平面における容器断面の重心を演算する機能と、
複数の高さ方向位置における容器断面の重心から芯ズレ量を決定する機能を有しているのが好ましい。
【0013】
また本発明の容器測定方法の実施に際して、ターンテーブル(第1のターンテーブル20)に直立した状態で載置されて回転する容器(5)の、複数の高さ方向位置における基準点からの距離を、例えば径寸法測定装置30(レーザー測定器)から照射される帯状のレーザー光線を用いて測定する測定工程と、
前記測定工程で測定されたターンテーブル(20)上に載置された容器(5)の複数の高さ方向位置の各々における基準点からの距離から、容器(5)の各々の高さ方向位置における重心の位置を決定する重心位置決定工程と、
重心位置決定工程で決定された容器(5)の各々の高さ方向位置における重心の位置から、当該容器の芯ズレ量を決定する芯ズレ量決定工程を備えていることが好ましい。
【0014】
その場合、前記重心位置決定工程は、
容器(5)の各々の高さ方向位置(高さ方向位置における水平断面)の外周面における複数の測定点(a1〜a12)と、ターンテーブル(第1のターンテーブル20)の回転中心との距離(測定結果=R−L
2)から、前記複数の測定点(a1〜a12)が存在する水平面における隣接する2つの測定点とターンテーブル(第1のターンテーブル20)の回転中心を頂点とする複数の三角形(△0−a1−a2〜△0−a12−a1)の各々における面積と重心を演算する工程と、
複数の三角形(△0−a1−a2〜△0−a12−a1)の各々における面積と重心から前記複数の測定点(a1〜a12)が存在する水平面における容器断面の重心を演算する工程を有し、
前記芯ズレ量決定工程は、複数の高さ方向位置における容器断面の重心から芯ズレ量を決定する工程を有しているのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
上述した構成を具備する本発明によれば、複数の円周方向位置の各々における外周面位置測定装置(64)の測定結果の変化量から段差(5d)が存在するか否かを決定すると共に、段差(パーティングラインPLの段差:ハグミ段差5d)の円周方向位置を決定し、決定された段差(5d)の円周方向位置における容器外周面の半径方向位置から当該段差(5d)の段差寸法(δ)を決定するように構成されているので、ハグミ段差(5d)を正確に自動計測することができる。
そして、容器(5)のハグミ段差(5d)を正確に検出して、ハグミ段差(5d)が大きい場合に生じる各種不都合、例えば容器(5)に直接印刷する場合に印刷部分に「印刷とび」が生じてしまうという不都合や、容器(5)が割れ易くなるという不都合を防止することができる。
また、ハグミ段差(5d)を正確に測定することができるので、本発明によれば金型の摩耗の程度を判断することが可能である。
【0016】
ここで、自動測定の対象となる容器としては、例えば、複数種類の金型(例えば、容器口部の金型、容器底部の金型、容器胴部の半割りの金型2種類、合計4種類の金型)を結合したものを使用して製造されるタイプのものが挙げられる。容器の大きさ及び形状は特に限定されず、例えば、胴径が30〜55mm、口径が20〜55mm、高さが70〜150mmであり、
図2又は
図24に示される形状の容器を挙げることができる。なお、胴部の最も膨らんでいる部分の直径を胴径としている。
そのようなタイプの容器の製造に際して、金型が摩耗すると、当該摩耗した金型で製造された部分の中心軸(芯)が偏奇してしまう(ずれてしまう)。そして容器を構成する部分の中心が偏奇してしまった状態(中心軸がずれてしまった状態)が、いわゆる「芯ズレ」である。
そのようなタイプの容器は、一般的に以下の工程により製造される。まずペレット状の樹脂を溶融し、棒状にしたもの(パリソン又はプリフォーム)を金型で挟みこみ、棒状の樹脂に空気を吹き込むことにより、樹脂が膨張し、金型壁面に接触して、成形品(容器)が製造される。
この方法においては、容器の内面は吹き込まれた空気に接しており、金型は容器外周面の形状を決定しているため、金型のずれは容器の外周面の形状に反映される。したがって、芯ズレ量の測定は、容器の外周面の形状から測定することが必要である。「芯ズレ」が生じ、その量が大きくなると、容器の一部の肉厚が薄くなってしまい、その結果、容器に穴あきが発生し易くなる、という不都合が生じる。また、飲料等を充填した容器を密封(シール)する際に、容器には上下方向から荷重が付加されるが、芯ズレが存在する状態で容器に対して上下方向から荷重を付加すると、口部に荷重が均等にかからないため容器が撓んでしまう。そして容器が撓むと、良好なシールが困難となり、シールの不調の要因となってしまう。
そのような不都合を回避するために、芯ズレの量(芯ズレ量)を測定する必要があり、容器の各種寸法の自動測定において芯ズレ量を測定したいという要請が存在する。しかし、従来技術では、容器の「芯ズレ量」を自動測定する有効な技術は提案されていない。
【0017】
本発明において、ターンテーブル(20)上に載置された容器(5)の複数の高さ方向位置の各々における基準点からの距離に基づいて、各々の高さ方向位置(高さ方向位置における水平断面)における重心の位置を決定し、各々の高さ方向位置における重心の位置から当該容器(5)の芯ズレ量を決定するように構成すれば、容器(5)の芯ズレ量を正確に自動計測することができる。その結果、容器(5)の一部の肉厚が薄くなり、穴あきが発生し易くなる、という不都合を未然に防止することができる。
また、容器(5)の一部の肉厚が薄くなることが未然に防止されることから、シールの際に上下方向から荷重が付加しても、当該荷重は均等にかかるため容器(5)が撓んでしまうことがなく、シールの不調を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1において、本発明の容器測定装置は全体を符号100で示されている。
容器測定装置100は、容器移動ロボット10と、第1のターンテーブル20と、径寸法測定装置30(レーザー測定器)と、第2のターンテーブル40と、容器パレット5Pと、容器回収ボックス5Bと、制御手段であるメインコントロールユニット50と、測定装置に関わる機器を搭載するフレーム90を備えている。
【0020】
容器移動ロボット10は全体が直交する複数のレールを組み合わせた形態をしており、X軸方向レール11とY軸方向レール12とキャリア13を有している。キャリア13は、Y軸方向レール12上を
図1の上下方向(矢印Fv)に移動する。そしてY軸方向レール12は、X軸方向レール11上を、
図1の左右方向(矢印Fh)に移動する。
明確には図示していないが、キャリア13はアタッチメントを備えており、当該アタッチメントは吸引口を有しており、当該吸引口は垂直方向(
図1の紙面に垂直な方向)下方(
図1の紙面に垂直な方向で、看者から離隔する方向)に開口している。そして図示しない前記アタッチメントは、容器パレット5P上に整列した容器群からひとつの容器5を選び、当該アタッチメントを該当容器5内部に挿入して、図示しない真空発生装置(エジェクタ)で吸引することにより、容器5をアタッチメントの先端に吸い付けた状態で、容器5を所定位置(例えば、第1のテーブル20上の位置、第2のテーブル40上の位置)へ搬送するように構成されている。
【0021】
図1において、第1のターンテーブル20はフレーム90の概略中央に位置しており、レーザー光線投光部(以下、「投光部」と言う)31とレーザー光線受光部(以下、「受光部」と言う)32に挟まれる位置に設けられている。ここで、投光部31と受光部32はレーザー測定器30を構成している。
レーザー測定器30において、投光部31と受光部32の概略中間の位置には、固定ピン33が設けられている。
【0022】
第1のターンテーブル20は、テーブル中心の下面側に回転軸20s(
図19参照)を有し、当該回転軸20sは図示しないターンテーブル回転軸昇降装置により昇降、あるいは、回転する。
図示しないターンテーブル回転軸昇降装置は、例えば、ボールネジと回転機構により構成される。なお、図示しないターンテーブル回転軸昇降装置は、ターンテーブルの昇降と、ターンテーブルの回転を同時には行わないように構成することができる。
【0023】
図1において、第1のターンテーブル20とレーザー測定器30は、第1の測定部(符号を省略)を構成している。
容器パレット5Pは、投光部31と受光部32よりも高い位置にあり、パレット5Pの長手方向(
図1では上下方向)の直線を垂直方向下向きに移動した直線(軌跡)が投光部31と受光部32を結ぶ直線と直交するように配置されており、容器パレット5P上には、作業員により並べられた複数の容器5が整列している。
第1の測定部では、容器5の各部の径寸法、高さ、芯ズレ量を測定する。
一方、第2の測定部(第2のターンテーブル40近傍)では、容器5における指定部分の「肉厚」寸法、「パーティングラインにおける段差(いわゆるハグミ段差)」量を測定する。
「容器5における指定部分」については、胴部、口部、底部等を例示することができる。
【0024】
容器回収ボックス(測定済みの容器を集める回収ボックス)5Bは、フレーム90における
図1の左下隅に設けられている。
制御手段であるメインコントロールユニット50は、容器回収ボックス5Bの下方の位置に設けられており、図示しない床板上に配置されている。
図1では、メインコントロールユニット50を容器測定装置100のフレーム90に搭載しているが、容器測定装置100と別体とすることも可能である。
【0025】
図示の実施形態では、例えば
図2又は
図24で示すような形状の容器における容器各部の径寸法、高さ、芯ズレ量、肉厚、ハグミ段差を測定している。
ただし、
図2又は
図24で示す容器とは異なる形状の容器においても、径寸法、高さ、芯ズレ量、肉厚、ハグミ段差を自動的に測定することが可能である。
【0026】
次に、図示の実施形態において、容器5の肉厚と、ハグミ段差(パーティングラインにおける段差)を測定する態様について説明する。
図1に関して説明したように、容器5における肉厚の測定とハグミ段差の測定は、第2の測定部(第2のターンテーブル40近傍)で行われる。
【0027】
第2のターンテーブル40について、主として
図3に基づいて、
図1をも参照して説明する。
第2のターンテーブル40は、
図1において、レーザー測定器30の受光部32の左隣(
図1の符号Dで示す領域)に配置されている。
図3は
図1の符号Dで示す領域を詳細に表示しており、
図3において、矢印Aが第2のターンテーブル40の中心を示している。
矢印Aで示す位置(A点)は、容器移動ロボット10のキャリア13が、第1のターンテーブル20から(あるいは容器パレット5Pから)容器5を持ち上げて、第2のターンテーブル40の領域へ最初に載置する箇所である。
【0028】
第2のターンテーブル40において、容器5は、A点→B点(矢印Bで示す位置)→C点(矢印Cで示す位置)の順に移動する。
図3において、B点は、容器底部の肉厚を測定する位置である。
図3において、C点は、容器胴下部、容器胴上部の肉厚と、ハグミ段差を測定する箇所である。
容器5が、A点→B点と移動し、B点→C点と移動するのは、第2のターンテーブル40が移動することにより行われる。
【0029】
図3において、第2のターンテーブル40の回転軸、第2のターンテーブル40を回転駆動する回転駆動機構は図示されていない。
第2のターンテーブル40、
図3では図示しない回転軸及び回転駆動機構は、X軸方向(
図3の左右方向)については、X軸方向のシリンダ41およびX軸方向に敷設されたレール(図示せず)によって移動する。
一方、第2のターンテーブル40、
図3では図示しない回転軸及び回転駆動機構のY軸方向(
図3の上下方向)の移動は、Y軸方向のシリンダ42およびY軸方向に敷設されたレール(図示せず)によって行われる。
【0030】
第2のターンテーブル40における容器5の肉厚の測定について説明する。
図示の実施形態では、
図2で示す形状の容器5について、
図4で示す3種類の位置の肉厚Ta(容器胴下部の肉厚)、Tb(容器胴上部の肉厚)、Te(容器底部の肉厚)を測定している。
【0031】
容器5の胴下部の肉厚Taと容器胴上部の肉厚Tbの測定については、
図5で示すように、リニアゲージ62Aとブロック62Bが接触して、ブロック62Bによりリニアゲージ62Aが押し込まれた変位量から肉厚Ta、Tbを測定している。
図5において、リニアゲージ62Aは、ゲージ本体621aと、ゲージ本体621aの中央から垂直下方に伸びるロッド622aと、ロッド622aの先端から水平方向(
図10では右側)に延在する触針623aを有している。
ブロック62Bは、ブロック本体621bと、ブロック本体621bの中央から垂直下方に伸びるロッド622bと、ロッド622bの先端から水平方向(
図10では左側)に延在する触針623bを有している。
肉厚Ta、Tbの測定に際して、リニアゲージ62Aを校正する。容器5が存在しない状態で触針623aと触針623bを接触させ、リニアゲージ62Aがブロック62Bで押し込まれた変位量を「0mm」と記憶し、基準値とする。そして測定の際に、当該基準値と、容器5が存在する状態においてリニアゲージ62Aがブロック62Bで押し込まれた変位量との差異から、肉厚Ta、Tbを算出する。
【0032】
測定の際には、リニアゲージ62Aのロッド622aおよび触針623aは容器5の内部に挿入され、触針623aの先端(
図5では右端)が容器5の内壁に接触する。一方、ブロック62Bの触針623bの先端(
図5では左端)は、容器5の外壁で且つ触針622aと対向する位置に接触する。
そして、触針623bが容器5の外壁に接触する位置は、触針623aの先端が容器5の内壁に接触する位置に対向する位置となるように、リニアゲージ62A、ブロック62Bは構成されている。
ゲージ本体621a、ブロック本体621bの位置は固定されており、ロッド622a、622bの長さ、触針623a、623bの長さは一定である。
【0033】
容器5の底部の肉厚Teの測定については、
図6を参照して説明する。
図6で示すように、肉厚Teは、ブロック63Aの触針636aと、リニアゲージ63Bの触針633bの間の距離として測定される。
図6において、ブロック63Aは、ブロック本体631aと、ブロック本体631aの上端から垂直上方に伸びる第1のロッド632aと、第1のロッド632aの上端から容器5側(
図6では左側)に向かって水平方向に延在する第2のロッド633aと、第2のロッド633aの先端から垂直下方(容器5の内部に向かう方向)に延在する第3のロッド634aと、第3のロッド634aの下端から容器5の底部と平行にブロック本体631aの方向(
図6では右側)へ延在する第4のロッド635aと、第4のロッド635aの先端から垂直下方に容器底部5eに向って延在する触針636aを有している。
リニアゲージ63Bは、ゲージ本体631bと、ゲージ本体631bの中央から水平方向に(
図6では左側に)延在するロッド632bと、ロッド632bの先端から垂直上方に延在する触針633bを有している。
【0034】
ブロック63Aにおけるブロック本体631aの中心からブロック63Aにおける触針636aの中心までの距離Laと、リニアゲージ63Bにおけるゲージ本体631bの中心からリニアゲージ63Bにおける触針633bの中心までの距離Lbとは等しく構成されている。
従って、容器5底部の肉厚Teの測定の際に、リニアゲージ63Bにおける触針633bが容器5の底部5eの下面に接触する位置は、ブロック63Aにおける触針636aが容器5の底部5eの上面に接触する位置に対向する位置となるように、ブロック63A、リニアゲージ63Bは構成されている。
ブロック本体631a、ゲージ本体631bの位置は固定されており、ロッド632a、633a、634a、635aの位置および長さ、ロッド632bの長さ、触針636a、633bの長さも一定である。
容器5の底部5eの肉厚Teは、ブロック63Aとリニアゲージ63Bが接触して、ブロック63Aによりリニアゲージ63Bが押し込まれた変位量から測定される。
肉厚Teの測定に際しても、リニアゲージ63Bを校正する。校正に際しては、容器5が存在しない状態で触針636aと触針636bを接触させることで、リニアゲージ63Bがブロック63Aで押し込まれた変位量を「0mm」と記憶せしめ、基準値とする。測定の際には、当該基準値と、容器5が存在する状態においてリニアゲージ63Bがブロック63Aで押し込まれた変位量との差異から、肉厚Teを算出する。
【0035】
リニアゲージ63Aのプローブ(ロッド634a、ロッド635a、触針636aの包括名称)が真直ではなく、
図6で示すように、概略L字の先端(ロッド635aの先端)がさらに直角に曲がった形状になっている理由は、次の通りである。
容器5における寸法測定の場合には、底部5eの肉厚Teは、底部5eの外周縁部近傍の領域(半径方向外方端部の領域)で測定されるように決定されている。
リニアゲージ63Aのプローブ(ロッド634a、ロッド635a、触針636aの包括名称)が真直であると、プローブ先端(触針636a)は、容器底部5eの半径方向中央の領域に接触することはできても、容器底部5eの外周縁部近傍の「肉厚を測定するべき場所」に当接することができない。すなわち、真直なプローブでは、その先端(触針636a)は半径方向内方の領域にしか当接しない。
それに対して、
図6で示すようにプローブ全体の形状を、L字の先端がさらに直角に曲がった形状にすれば、プローブ先端(触針636a)が、容器底部5eの外周縁部近傍の「肉厚を測定するべき場所」に当接することができる。そのため、リニアゲージ63Aのプローブは、
図6で示すように構成されている。
【0036】
図5で示す容器胴下部の肉厚Ta、容器胴上部の肉厚Tbの測定と、
図6で示す容器底部の肉厚Teの測定の際に、容器5は第2のターンテーブル40に保持されている。
第2のターンテーブル40には吸引機構が設けられており、係る吸引機構によって容器5を容器5の底側から吸引して、保持している。ここで、吸引機構については、公知、既存のものを適用することができる。
図7において、第2のターンテーブル40の半径方向中央の領域には、容器吸引エリア40aが設けられている。また、第2のターンテーブル40には、等間隔(
図7では、中心角15°毎)複数(
図7では24箇所)の長孔40bが形成されている。
【0037】
第2のターンテーブル40に複数の長孔(貫通孔)40bを形成した理由は、次の通りである。
上述したように、容器5の底部肉厚Teは、容器底部の外周縁部近傍の領域E(半径方向外方端部の領域:
図6参照)で測定される。
図6で示すような態様で容器5の底部肉厚Teを測定する場合には、容器5が第2のターンテーブル40に載置されていると、リニアゲージ63Bの触針633bが第2のターンテーブル40と干渉してしまうので(第2のターンテーブル40が邪魔になるので)、肉厚Teを測定することができない。そのため、
図7で示すように、第2のターンテーブルに長孔形状の切込み(貫通孔)40bを複数形成して、当該長孔40bから下側の触針633bを挿入可能として触針633bが容器5の底部5eに当接可能となるようにせしめ、以って、
図6で示すような態様で容器5の底部5bの肉厚Teを測定することを可能にしているのである。
ここで、貫通孔40bの形状が長孔形状であれば、半径方向寸法(長径寸法)が長いので、半径方向内方の領域においても、半径方向外方の領域においても、リニアゲージ63Bの触針633bを長孔40b内に挿入することができる。すなわち、貫通孔40bの形状が長孔形状であれば、底部の厚さTeを測定するべき容器の(底部の)径が大きい場合も、小さい場合も、
図6で示す態様にて、底部の肉厚Teを測定することができる。
【0038】
次に、図示の実施形態におけるパーティングラインの段差(いわゆるハグミ段差)の計測について説明する。
図8で示すように、容器5の胴部の半割りの金型を接合する際に、偏奇して接合してしまうと(接合がずれてしまうと)、その金型によって製造された容器には段差5dが生じてしまう。
図8における段差5dが、パーティングラインにおける段差、いわゆる「ハグミ段差」である。
【0039】
図示の実施形態におけるハグミ段差5dの測定においては、容器5を横方向に寝かすことなく、
図5、
図6で示す状態(いわゆる「立った」状態)を維持した状態で、測定することができる。
図示の実施形態でハグミ段差5dを測定するに際しては、
図9で示すように、容器5を第2のターンテーブル40に載置した状態を維持して、第2のターンテーブル40を回転し、以って容器5を回転する。容器5に近接して(
図9では容器5の右側に)リニアゲージ64が配置されており、リニアゲージ64の触針が容器5の外周面に接触している。容器5を回転した際に、容器5の外周面の半径方向位置(
図9では左右方向位置)は、リニアゲージ64で測定される。
容器5を回転する範囲は、1箇所のハグミ段差5dを中心として、その前後の範囲で、容器5の中心角(或いは第2のターンテーブル40の回転角度)がハグミ段差5dの前後10°の範囲(合計で容器5の中心角が20°の範囲)である。図示の実施形態では、容器5の中心角(或いは第2のターンテーブル40の回転角度)が0.5°ずつ、合計41点を測定する。
【0040】
パーティングラインPLの位置は、容器胴部の半割りの金型同士の接合箇所として把握することができ、樹脂製容器の場合、前記接合箇所は、容器表面の線状の痕跡として把握できる。
パーティングラインPLの位置は、前記接合箇所として把握することができるので、
図1において、容器5が作業者の手作業により、容器5における前記接合箇所が一定方向を向くように、容器パレット5P上に配置される。
作業者の手作業により、容器5における前記接合箇所が一定方向を向くように、容器5が容器パレット5P上に配置されるので、ハグミ段差5dを測定するに際して、容器5のハグミ段差5dが一定方向を向いた状態で、第2のターンテーブル40上に載置される。
ここで、容器5を容器パレット5P上に配置する作業は、作業者による手作業であるため、容器パレット5P上に配置された容器5のパーティングラインPLの位置、すなわち、第2のターンテーブル40上に載置された容器5のパーティングラインPLの位置は、容器5毎に多少変動する恐れがある。そのようなパーティングラインPLの位置の変動に対処するため、「中心角20°(±10°)」の配置で、0.5°ずつ、合計41点(41箇所)において、容器5の外周面の半径方向位置(
図9では左右方向位置)をリニアゲージ64で測定している。
【0041】
図9〜
図11を参照して、パーティングラインの段差(いわゆるハグミ段差)5dの測定について説明する。
図9において、ハグミ段差5dの位置は、例えば、第2のターンテーブル40の中心角が0°近傍の領域と、180°近傍の領域である。
【0042】
図9、
図10で示すように、容器5の外周にリニアゲージ64を接触させながら、第2のターンテーブル40により容器5を回転して、パーティングラインPL近傍の領域において、第2のターンテーブル40の回転角度0.5°ずつ(リニアゲージ64により測定される角度ピッチが0.5°)41箇所におけるリニアゲージ64の変位(表示値)を記録する。
リニアゲージ64の変位(表示値)は、容器5の外周面の半径方向位置(
図9、
図10における左右方向位置)を示しており、第2のターンテーブル40が20°回転することにより、41箇所における容器5の外周面の半径方向位置が測定される。
この41箇所における容器5の外周面の半径方向位置から、ハグミ段差5dの位置(円周方向位置)と、ハグミ段差5dの寸法δを演算する。
【0043】
パーティングラインPL近傍(ハグミ段差5d近傍)の領域において、第2のターンテーブル40が20°回転する間に、第2のターンテーブルの回転角度を0.5°ずつ変化した41箇所における(測定角度毎の)リニアゲージの変位(表示値:容器の外周面の半径方向位置)が、
図11で例示されている。
図11及び
図12に記載の測定結果は、
図24に記載の形状の容器の胴上部のハグミ段差を計測した結果であり、測定対象の容器は、胴径が49.1mm、口径が43mm、高さが90mmである。
【0044】
次に、
図12をも参照して、図示の実施形態において、符号δの領域(ハグミ段差)とそれ以外の領域とを識別する態様について説明する。
図12は、
図11で例示するリニアゲージの変位(表示値:容器の外周面の半径方向位置)を「表」の形態で表示している。換言すれば、
図11と
図12は同一の実験例を表示している。
図12において、最左欄は測定角度(第2のターンテーブル40の回転角度、容器の中心角)、左から2番目の欄はリニアゲージ表示値(容器の外周面の半径方向位置)を示している。
図12の左から3番目の欄(右から2番目の欄)は、左から2番目の欄で示す上下隣り合うセル(表におけるマス目)のリニアゲージ表示値の「差」を示し、最右欄は、左から3番目の欄(右から2番目の欄)における上下隣り合うセルの「差」(以下、「差の差」と表示する場合がある)を示している。
【0045】
図11と
図12から明らかなように、ハグミ段差5d以外の領域における「差の差」(
図12の最右欄)の絶対値は、ハグミ段差5dの領域(
図12において、リニアゲージ表示値の列において、アンダーラインを付けた数字が表示されたセル)における「差の差」の絶対値よりも小さい。
したがって、「差の差」の絶対値がしきい値以上であれば、「ハグミ段差」と判断することができる。
一方、上下隣合うセルのリニアゲージ表示値の「差」の絶対値が、しきい値以上である領域をハグミ段差と判断した場合、ハグミ段差を正確に認識できない場合がある。その一例を
図22を用いて示す。
図22は回転角度を1°ずつ変化させ、しきい値を0.003mmとし、リニアゲージ表示値の上下隣り合うセルの「差」の絶対値がしきい値以上となった領域をハグミ段差と判断した例である。この場合、ハグミ段差は測定角度が-7.5°〜3.5°の領域に渡っており、リニアゲージ表示値が急激に変化しておらず、ハグミ段差ではない領域までも、ハグミ段差と判断され、ハグミ段差を正確に測定していない。
また、しきい値を0.005mmとした場合でも、「差」の絶対値がしきい値以上となるのは、測定角度が-1.5°〜-0.5°の領域と、0.5°〜3.5°の領域になり、ハグミ段差ではない領域までも、ハグミ段差と判断され、ハグミ段差を正確に測定していない。
図23は、
図22と同様の測定結果を示すものであり、さらに「差の差」を示している。「差の差」のしきい値を0.003mmとすると、ハグミ段差は、測定角度が1.5°〜3.5°の領域であり、ハグミ段差を正確に測定している。
ハグミ段差が生じている容器は、ハグミ段差の部分で、ずれているため水平面における断面は真円ではない。このように真円ではない容器を回転させることにより、ハグミ段差以外の部分でもリニアゲージ表示値が変化し、「差」がしきい値を越える場合がある。このように「差」を指標とした場合、ハグミ段差ではない部分をハグミ段差と判断する場合がある。
一方、「差の差」を指標とした場合、「差の差」は容器が真円でないことに起因するリニアゲージ表示値の変化にほとんど影響を受けないため、ハグミ段差の領域を正確に判断することができる。
【0046】
図示の実施形態(
図11、
図12で示す例)では、「差の差」(の絶対値)がしきい値以上(0.003mm以上)である領域をハグミ段差5dの領域と判断している。
図11において、ハグミ段差は、符号δで示す領域である。
そして、ハグミ段差5dの寸法δは、「差の差」(の絶対値)がしきい値以上(0.003mm以上)である領域(ハグミ段差5dの領域)において、リニアゲージ表示値(
図12の左から2番目の欄)における「最大値」から「最小値」を減算した数値(δ=「最大値」−「最小値」)となる。
図12の例では、ハグミ段差5dの寸法δは、
δ=0.067−0.003=0.064mm
である。
【0047】
図8〜
図12を参照して上述したハグミ段差5dの位置及び寸法δを決定する態様は、
図1で示すメインコントロールユニット50に内蔵されたサブコントロールユニット50S(
図13参照:
図1では、サブコントロールユニット50Sの図示を省略)において実行される。
図8〜
図12を参照しつつ、
図13に基づいて、サブコントロールユニット50Sの構成について説明する。
図13において、サブコントロールユニット50Sは、演算ブロック52Sと、比較ブロック53Sと、ハグミ段差の領域決定ブロック54Sと、最大値/最小値決定ブロック55Sと、ハグミ段差演算ブロック56Sと、記憶装置(メインコントロールユニットと共用)57を有している。
【0048】
演算ブロック52Sは、ラインL12S、インターフェース51を経由してリニアゲージ64に接続され、ラインL23Sを経由して比較ブロック53Sに接続され、ラインL27Sを経由して記憶装置57と接続されている。そして演算ブロック52Sは、
図12最右欄に表示されている「差の差」を演算する機能を有している。すなわち、ターンテーブル40の所定の回転角度毎に測定された容器外周面のパーティングライン近傍の位置座標と、直前に測定された位置座標との差を演算し、当該差の直前の数値との差異(差の差)を演算する機能を有している。
比較ブロック53Sは、ハグミ段差の領域決定ブロック54SとラインL34Sを介して接続しており、記憶装置57とは双方向ラインL37Sを介して接続している。そして比較ブロック53Sは、演算ブロック52Sで演算された「差の差」(
図12最右欄)をしきい値と比較して判断する機能を有している。
ハグミ段差の領域決定ブロック54Sは、最大値/最小値決定ブロック55SとラインL45Sを介して接続しており、記憶装置57とはラインL47Sを介して接続している。そしてハグミ段差の領域決定ブロック54Sは、比較ブロック53Sの比較結果からハグミ段差5dの領域を決定する機能を有している。
【0049】
最大値/最小値決定ブロック55Sは、ハグミ段差演算ブロック56SとラインL56Sを介して接続しており、記憶装置57とはラインL57Sを介して接続している。そして最大値/最小値決定ブロック55Sは、ハグミ段差の領域決定ブロック54Sが「ハグミ段差」と決定した領域におけるリニアゲージ64の表示値(容器5の外周面の半径方向位置)から最大値と最小値を決定する機能を有している。
ハグミ段差演算ブロック56Sは、記憶装置57とラインL67Sを介して接続しており、表示装置50Mとはインターフェース58およびラインL68Sを経由して接続されている。そしてハグミ段差演算ブロック56Sは、最大値/最小値決定ブロック55Sで決定された最大値と最小値から、ハグミ段差5dの寸法δを演算する機能を有している。
【0050】
次に、
図14に基づき、
図3、
図10、
図13をも参照して、ハグミ段差5dの位置(円周方向位置)及び寸法δを決定する手順について説明する。
図14において、ステップS11では、第2のテーブル40に載置した容器5における外周面の半径方向位置を、パーティングラインPL近傍の領域において、測定角度毎に測定し、リニアゲージ64の表示値として、サブコントロールユニット50Sにおける演算ブロック52Sに入力する。
そしてステップS12に進み、演算ブロック52Sにより、「差の差」(
図12最右欄)を演算する。次のステップS13では、比較ブロック53Sにより、「差の差」(の絶対値)がしきい値を超えたか否かを判断し、「差の差」(の絶対値)がしきい値を超えたデータ(容器5の外周面の半径方向位置の測定データ:リニアゲージ64の表示値のデータ)を抽出し、当該データを記憶装置57に送って記憶させる。そしてステップS14に進む。
【0051】
ステップS14では、ハグミ段差の領域決定ブロック54Sにより、ステップS13で記憶されたデータの範囲を「ハグミ段差の領域」として決定する。
次のステップS15では、最大値/最小値決定ブロック55SがS13で記憶されたデータ(ハグミ段差の領域のデータ)におけるリニアゲージ64の表示値(容器5における外周面の半径方向位置)の最大値と最小値を選択し、ステップS16に進む。
ステップS16では、ハグミ段差演算ブロック56Sが、S15における最大値と最小値の差をハグミ段差5dの寸法δ(ハグミ段差量)として決定する(最大値−最小値=ハグミ段差量)。
【0052】
上述した手順において、「差の差」(絶対値)がしきい値を超えた領域のデータを全て記憶するのは、ハグミ段差5dの領域における極めて狭い部分だけが半径方向に突出しているケースや、ハグミ段差5dの領域において、「差」が一定となる部分が存在するケース(すなわち、差の差がゼロになるケース)において、ハグミ段差5dの領域を誤認するのを防止するためである。
すなわち、ハグミ段差5dの領域における極めて狭い部分だけが半径方向に突出しているケースでは、「差の差」がしきい値を超えた領域のデータを全て記憶せず、一部のみ記憶した場合、当該突出している部分のみをハグミ段差5dと認識してしまう恐れがある。また、ハグミ段差5dの領域において、「差」が一定となる部分が存在するケースでは、「差の差」がしきい値を超えた領域のデータを全て記憶せず、一部のみ記憶した場合は、「差」が一定となる部分はハグミ段差5dではない、と認識される可能性があり、例えば、ハグミ段差5dの領域の中央付近で「差」が一定となる部分が存在するとき、本来のハグミ段差5dの一部のみをハグミ段差5dとして誤認する恐れがある。その様な誤認する可能性を排除するために、図示の実施形態では、「差の差」(絶対値)がしきい値を超えた領域のデータを全て記憶しているのである。
【0053】
図11、
図12で例示されたケースでは、ハグミ段差測定の際の測定角度(リニアゲージ64により測定される角度ピッチ)は、「0.5°」であり、「差の差」の絶対値におけるしきい値は「0.003mm」であるが、この角度ピッチ及びしきい値は、測定対象の容器の大きさに応じて最適な値を適宜設定すればよく、特に限定されない。前記の数値は発明者が別途行った実験により設定された。
発明者は、角度ピッチとしきい値を変化させて上述した手法でハグミ段差測定を行い、その結果を解析した。測定対象の容器は、胴径が49.1mm、口径が43mm、高さが90mmであり、
図24の形状の容器である。測定は、1条件につき10回行った。その結果を
図20、
図21に示す。測定値の単位はmmである。
【0054】
発明者の実験によれば、角度ピッチが0.5°で行われた場合、ハグミ段差の測定値のばらつき(標準偏差)が最も小さかった。
角度ピッチは、3.0°までは、ハグミ段差を正確に認識することができた。しかし、角度ピッチがさらに大きい場合(例えば5.0°とした場合)には、ハグミ段差の位置が正確に把握できない場合があり、ハグミ段差の測定値のばらつき(標準偏差)が大きくなった。
一方、角度ピッチが小さい場合(例えば0.1°とした場合)には、ハグミ段差以外の領域をハグミ段差の領域と誤認する結果が生じ、ハグミ段差の測定値のばらつき(標準偏差)が大きくなった。
【0055】
発明者の実験結果から、角度ピッチが0.5°〜3.0°ならば、ハグミ段差を正確に判断できることが判明した。
なお、発明者の実験では、角度ピッチが0.5°〜3.0°ならば、「差の差」の絶対値におけるしきい値が0.003mmでも0.004mmでも、良好なハグミ段差測定を実行することができた。
【0056】
次に
図15〜
図19を参照して、容器5の各部の径寸法、芯ズレ量、高さ寸法の測定について説明する。
最初に、
図15を参照して、径寸法(
図15における符号Iで示す寸法)の計測について説明する。
図15において、投光部31は帯状レーザー光線を受光部32に向かって投光(照射)する機能を有している。
図15において、帯状レーザー光線は投光部31から矢印Lb方向に延在する2本の線分として表現されている。ここで、本明細書では、帯状レーザー光線を符号Lbで表現する場合がある。
【0057】
容器5の径寸法I(容器の所定の高さ方向位置における径寸法)の測定は、測定対象である容器5において、径寸法Iを測定するべき高さ方向位置に、前記帯状レーザー光線Lbを照射して行う。容器5に照射された帯状レーザー光線Lbは、容器5及び固定ピン33により遮られない領域のみが、受光部32に受光され、容器5により遮光された領域として径寸法Iを測定する。
【0058】
次に、主として
図16を参照して、芯ズレ量の測定について説明する。
図2で示す容器5は、4つの金型(口部の金型、底部の金型、胴部の半割りの金型×2)で製造される。
容器製造に際して、何れかの金型が摩耗していると、口部の重心(芯)、底部の重心(芯)、胴部の重心(芯)の何れかが本来あるべき位置より偏奇して(ずれて)、「芯ズレ」が生じる。ここで、
図2で示す容器5においては、芯ズレとしては、口部と胴部の芯ズレ、胴部と底部の芯ズレ、口部と底部の芯ズレの3種類がある。
【0059】
容器5の径寸法Iの測定について前述したように、
図15の距離「L
2」は、固定ピン33(の外周)と容器5(の外周)との距離(間隔)である。
ここで
図15で示す固定ピン33は装置に固定されているため、第1のターンテーブル20の中心(回転中心)O
20から固定ピン33までの距離Rは定数となっている。
【0060】
図16は、容器5の所定の高さ方向位置における水平面(水平断面)について示している。
図16で示すように、容器5の同一の高さ方向位置(水平面)において、距離L
2を、容器5の円周方向に30°ずつ、12点測定する(
図16の0°における測定点a1〜330°の測定点a12における測定)。
そして、12の測定点(a1〜a12)の各々において、第1のターンテーブル20の中心O
20から容器5の円周までの距離(測定結果:R−L
2)を求める。
【0061】
次に、
図16で示すように、0°の測定点a1がy軸のマイナス側(
図16では下側)に位置するようにプロットする。そして、測定点a1〜a12をプロットして、測定点a1〜a12の各々について、
図16におけるx軸座標とy軸座標を求める。
図16におけるxy座標系の原点0は、第1のターンテーブル20の中心O
20とする。
計測点における中心角(測定点a1なら0°、測定点a12なら330°)をθとすれば、
x軸座標=(R−L
2)cos(θ−90°)
y軸座標=(R−L
2)sin(θ−90°)
となる。
なお、(R−L
2)は、12の測定点(a1〜a12)の各々における測定結果である。
【0062】
12の測定点a1〜a12におけるx軸座標とy軸座標を求めたら、隣り合う2測定点と
図16における原点0を頂点とする12個の三角形の面積と重心を演算する。隣り合う2測定点として、例えば測定点a1(x1、y1)、a2(x2、y2)を選択した場合には、△0−a1−a2の面積と重心(
図16において、符号Gc12で示す位置)を演算する。係る演算は、従来公知の手法の何れかを用いて行われる。
その演算手法は例えば以下の通りである。
面積: S1=(x1×y2−x2×y1)÷2
重心: xg1=(x1+x2)÷3 , yg1=(y1+y2)÷3
12個の三角形(隣り合う2測定点と
図16における原点0を頂点とする三角形)の面積と重心を求めたならば、a1〜a12を頂点とする12角形の面積と、当該12角形の重心の座標(xg、yg)のx軸座標とy軸座標を、12個の三角形の各々の面積と重心を用いて演算する。
その演算手法は例えば以下の通りである。
全体の面積 S=S1+S2+・・・・・+S12
12角形の重心 xg=(xg1×S1+xg2×S2+・・・+xg12×S12)÷S
yg=(yg1×S1+yg2×S2+・・・+yg12×S12)÷S
【0063】
ここで、上述した手法により、容器5の重心として、容器口部の重心、容器底部の重心、容器胴部の重心の3種類の重心を求める。
すなわち、容器5の口部の高さ方向位置(水平面)における12の測定点(a1〜a12)の隣り合う2測定点と原点0を頂点とする12個の三角形の各々の面積と重心を上述の手法で求める。次いで、前記12個の三角形の面積と重心を用いてa1〜a12を頂点とする12角形の重心を、上述の手法で求め、前記12角形の重心を容器口部の重心とする。
容器底部の重心は、容器5の底部の高さ方向位置(水平面)における12の測定点の隣り合う2測定点と原点0を頂点とする12個の三角形の各々の面積と重心を上述の方法で求め、以下、容器口部の重心と同様に、12角形の重心を求め、前記12角形の重心を容器底部の重心とする。
容器胴部の重心は、容器5の胴部の高さ方向位置(水平面)における12の測定点の隣り合う2測定点と原点0を頂点とする12個の三角形の各々の面積と重心を上述の方法で求め、以下、容器口部の重心と同様に、12角形の重心を求め、前記12角形の重心を容器胴部の重心とする。
そして、容器口部の重心、容器底部の重心、容器胴部の重心の3つの重心を同一座標系にプロットし、一つの重心を原点に設定し、当該座標系(水平面)上における残りの2つの重心の位置を求める。当該残りの2つの重心(原点に設定されていない重心)の位置(当該座標系あるいは水平面上の位置)から、芯ズレ量とその方向を求めることができる。
【0064】
図1で示すメインコントロールユニット50において、上述した手法により容器の芯ズレを決定する構造の機能ブロック図が、
図17として示されている。
図17において、メインコントロールユニット50は、測定結果演算ブロック52と、座標演算ブロック53と、三角形の面積及び重心演算ブロック54と、容器の所定高さ位置断面の面積及び重心演算ブロック55と、芯ズレ決定ブロック56と、記憶装置57を有している。
【0065】
測定結果演算ブロック52は、ラインL12、インターフェース51経由でレーザー測定器30に接続され、ラインL23経由で座標演算ブロック53に接続し、ラインL27経由で記憶装置57に接続している。そして測定結果演算ブロック52は、前記「R−L
2」を演算する機能を有している。
座標演算ブロック53は、三角形の面積及び重心演算ブロック54とラインL34で接続し、記憶装置57とはラインL37で接続している。そして座標演算ブロック53は、12の測定点(a1〜a12)の各々のx軸座標とy軸座標を演算する機能を有している。
【0066】
三角形の面積及び重心演算ブロック54は、容器の所定高さ位置断面の面積及び重心演算ブロック55とラインL45で接続し、記憶装置57とはラインL47で接続している。そして三角形の面積及び重心演算ブロック54は、12の測定点a1〜a12の隣り合う2測定点と
図16における原点0を頂点とする12個の三角形の面積と重心を演算する機能を有している。
容器の所定高さ位置断面の面積及び重心演算ブロック55は、芯ズレ決定ブロック56とラインL56で接続し、記憶装置57とはラインL57で接続している。そして容器の所定高さ位置断面の面積及び重心演算ブロック55は、前記三角形の面積及び重心演算ブロック54で求めた12個の三角形の面積と重心を用いて、a1〜a12を頂点とする12角形の面積と、当該12角形の重心の座標を演算する機能を有している。
芯ズレ決定ブロック56は、記憶装置57とは双方向ラインL67で接続し、表示装置50Mとはインターフェース58を経由してラインL68で接続している。そして芯ズレ決定ブロック56は、容器口部の重心、容器底部の重心、容器胴部の重心(容器の所定高さ位置断面の面積及び重心演算ブロック55で演算した、容器の所定高さ位置断面の12角形の重心)の3つの重心から、芯ズレ量を求める機能を有している。
【0067】
図16を参照して説明した容器5の芯ズレ測定の手順について、主として
図18に基づき、
図1〜
図17を参照しつつ説明する。
図18において、ステップS1ではレーザー測定器30で容器5の外周と固定ピン33(
図15)の外周までの隙間L
2(
図15)を計測する。
次のステップS2では、メインコントロールユニット50における測定結果演算ブロック52により、第1のターンテーブル20の中心O
20から容器5の円周までの距離(測定結果:R−L
2)を演算する。そしてステップS3に進み、座標演算ブロック53により、
図16における12箇所の測定点a1〜a12の各々について、X座標、Y座標を演算する。
【0068】
次のステップS4では、三角形の面積及び重心演算ブロック54により、隣接する2つの測定点と第1のターンテーブルの中心O
20(
図16におけるxy座標系の原点0)からなる12個の三角形の面積と重心を演算して、ステップS5に進む。
ステップS5では、容器の所定高さ位置断面の面積及び重心演算ブロック55により、前記ステップS4で求めた12個の三角形の面積と重心を用いて、測定点a1〜a12を頂点とする12角形(容器5の所定の高さ方向位置における水平面の断面12角形の図形)における面積と重心を演算して、ステップS6に進む。
ステップS6では、芯ズレ決定ブロック56において、容器5の口部の重心、容器5の底部の重心、容器5の胴部の重心の3つの重心の何れか1つをxy座標系の原点0に設定し、当該座標系(水平面)における残りの2つの重心の位置から、芯ズレ量を決定する。
そして制御を終了する。
【0069】
次に、
図19を参照して、容器5の高さ方向寸法の測定について説明する。
図19において、容器5の高さ方向寸法の測定には、第1のターンテーブル20と、その上方に配置された第1のリニアゲージ61が使用される。第1のリニアゲージ61は、ゲージ本体61aとゲージ本体の軸心の延長上に伸びるロッド61bと、ロッド61bの先端でロッド61bに直交する方向に取り付けた丸棒61cを有している。
第1のターンテーブル20が上昇すると、容器5の口部の上端(容器5の上端部)が丸棒61cと当接し、ロッド61bを、ゲージ本体61aに対して上方に押圧する。第1のリニアゲージ61は、丸棒61cおよびロッド61bが(ゲージ本体61aに対して)上方に押圧された寸法を計測する機能を有している。
【0070】
そして、第1のターンテーブル20の上昇前の位置と丸棒61cの最下端の距離は一定であるので、第1のターンテーブル20の上昇量と、容器5の上端部が丸棒61cを押圧した量(第1のリニアゲージ61の計測結果:リニアゲージ61の変位量)に基づいて、容器5の高さ方向寸法が求まる。
第1のターンテーブル20は容器5の種類毎に予め決められた距離だけ上昇する。その後、リニアゲージ61が水平移動し、容器5の上部の位置まで到達したら垂直方向へ移動(下降)する。リニアゲージ61のストローク量(下降量)は所定の数値であるが、丸棒61cは容器5に当接すると下降が止まる。その結果、リニアゲージ61の下降量と丸棒61cの下降量に差異が生じ、係る差異が基準値よりどの程度異なっているのかを計算した結果から、容器5の高さ方向寸法が算出される。ここで、前記基準値は、測定開始前に寸法が既知のマスターゲージを測定することにより、リニアゲージ61及びその制御システムに記憶させる(校正作業)。
【0071】
容器5の高さ方向寸法の測定に際して、第1のターンテーブル20において、測定時に容器5の安定を保つ目的で、容器5の底部を下方から吸引するように構成することができる。
しかし、図示の実施形態では、第1のターンテーブル20は容器5の底部を吸引しない。容器5の底部を吸引すると、当該底部の吸引されている部分が変形し、その近傍箇所(例えば、容器底部の周縁部)が容器上方に向って上昇してしまう。その結果、当該上昇した分だけ、容器5の高さ方向寸法が大きく測定されてしまう。
そのため、図示の実施形態では、第1のターンテーブル20は容器5の底部を下方から吸引しておらず、前記「上昇した分」が生じないようにしている。
なお、第1のターンテーブル20において容器5の高さ方向寸法の測定が完了したならば、容器移動ロボット10により、容器5を持ち上げて第2のターンテーブル40へ移動する。
【0072】
図示の実施形態によれば、ハグミ段差5dを正確に自動計測することができるので、容器5に直接印刷する場合に印刷部分に「印刷とび」が生じてしまうという不都合や、容器5が割れ易くなるという不都合を、未然に防止することができる。
また、ハグミ段差5dを正確に測定することにより、金型の摩耗の程度を判断することが可能である。
【0073】
また図示の実施形態によれば、容器5の芯ズレ量を正確に自動計測することができる。
そのため、容器5に芯ズレが生じ、容器5の一部の肉厚が薄くなり、当該薄い部分に貫通孔が生成されてしまう、という不都合を未然に防止することができる。
また、容器5の一部の肉厚が薄くなることが未然に防止されることから、容器5をシールする際に上下方向から荷重が付加しても、肉厚が薄い側に容器が撓んでしまうことがなく、シールの不調を防止することができる。
【0074】
図示の実施形態によれば、全ての測定に関して、容器5が「立った」状態(口部が上方で底部が第1のターンテーブル20あるいは第2のターンテーブル40に載置されている状態)で行われ、ハグミ段差5dも容器5が「立った」状態で行われる。
そのため、容器5を第2のターンテーブル40に載置して、第2のターンテーブル40を回転することにより、第2のターンテーブル40の中心角度の一定角度毎にデータを採取することができて、図示の実施形態で説明したような態様で、芯ズレ量、ハグミ段差5dを決定することが可能になる。
【0075】
容器5を「寝かせた」状態(容器5の胴部がターンテーブルに接触した状態)で測定するためには、容器5を「寝かせた」状態にするための装置と、「寝かせた」状態で一定角度毎に容器5を回転させるための装置が必要になる。全ての測定に関して、容器5が「立った」状態で行われる図示の実施形態では、そのような装置を必要としない。
また、図示の実施形態では、容器5の回転機構が第1のターンテーブル20あるいは第2のターンテーブル40により兼用されているため、その分だけ装置の構成をシンプルにすることができる。その結果、測定装置の全体の寸法を小さくすることができる。
【0076】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
例えば、本発明は、
図2又は
図24で示すような容器5の測定にのみ適用されるものではなく、
図2又は
図24で示す以外の形状の容器についても適用可能である。
また、図示の実施形態では、容器5の径寸法の測定は帯状のレーザー光線Lbを照射して行っているが、例えば容器5の画像を撮影し、その画像から容器5の径寸法を計測することも可能である。
さらに、図示の実施形態では、芯ズレ量の測定の際に12の測定点を使用しているが、測定点の数は任意に設定可能である。