(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6118802
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】位相器または2重位相器用のオイル流路構造
(51)【国際特許分類】
F01L 1/356 20060101AFI20170410BHJP
【FI】
F01L1/356 E
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-528463(P2014-528463)
(86)(22)【出願日】2012年8月23日
(65)【公表番号】特表2014-525545(P2014-525545A)
(43)【公表日】2014年9月29日
(86)【国際出願番号】US2012052018
(87)【国際公開番号】WO2013032842
(87)【国際公開日】20130307
【審査請求日】2015年3月13日
(31)【優先権主張番号】61/528,920
(32)【優先日】2011年8月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/547,390
(32)【優先日】2011年10月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/667,127
(32)【優先日】2012年7月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500124378
【氏名又は名称】ボーグワーナー インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100093861
【弁理士】
【氏名又は名称】大賀 眞司
(74)【代理人】
【識別番号】100129218
【弁理士】
【氏名又は名称】百本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】マーク・ウィグスタン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ダブリュ・マーシュ
【審査官】
山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2009/0183702(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0093453(US,A1)
【文献】
特開2007−154839(JP,A)
【文献】
特表2014−502702(JP,A)
【文献】
特開平06−194007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/356
F16K 11/00−11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのカムシャフト(12)を有する内燃機関の可変カムタイミング位相器(10)用の加圧流体配達システムであって、
回転軸を有するステータ(14)と、
前記ステータ(14)から独立して、前記ステータ(14)の前記回転軸に対して回転可能な少なくとも1つのロータ(20、30)と、
第1の可変容積型作動チャンバ(20b、30b)および第2の可変容積型作動チャンバ(20c、30c)を画定する、ベーン(22、32)と前記少なくとも1つのロータ(20、30)に関連する空洞(20a、30a)との組み合わせを含む少なくとも1つのベーン式油圧連結器(40、50)であって、前記第1の可変容積型作動チャンバ(20b、30b)および前記第2の可変容積型作動チャンバ(20c、30c)は、加圧流体源と選択的に連通した場合に、前記ステータ(14)に対する前記少なくとも1つのロータ(20、30)の独立した角度位相合わせを容易にする、少なくとも1つのベーン式油圧連結器(40、50)と、
流体移送アセンブリと、
を含み、
前記流体移送アセンブリは、
前記少なくとも1つのカムシャフト(12)に回転可能に連結され、複数の第1流体路(74a、74b、74c、74d)を有する流体移送スリーブ(72)と、
複数の第2流体路(62a、62b、62c、62d)を有する流体移送プレート(60)と、
の少なくとも1つを含み、
前記各第1流体路(74a、74b、74c、74d)は、回転中の前記流体移送スリーブの角度方向に応じて、前記第1の可変容積型作動チャンバ(20b、30b)および前記第2の可変容積型作動チャンバ(20c、30c)の一方と選択的に流体連通するために、対応する流体ポート(76a、76b、76c、76d)から軸方向に延び、前記流体ポート(76a、76b、76c、76d)は、前記第1流体路(74a、74b、74c、74d)の円周方向に離間した対応する環状溝セグメント部分(74f、74g、74h、74i)と流体連通し、
前記各第2流体路(62a、62b、62c、62d)は、流路部分(66a、66b、66c、66d)を介して、前記流体移送プレート(60)の中央に配置された対応するポート(64a、64b、64c、64d)から周方向に延び、前記流路部分(66a、66b、66c、66d)は、前記流体移送プレート(60)の半径方向に延び且つ前記ポート(64a、64b、64c、64d)と流体連通し、前記流路部分(66a、66b、66c、66d)は、弓形に延びる流路部分(68a、68b、68c、68d)と流体連通し、
少なくとも1つの第2流体路(62a、62b、62c、62d)は、前記第1の可変容積型作動チャンバ(20b、30b)および前記第2の可変容積型作動チャンバ(20c、30c)の対応する一方と連通するために、前記流体移送プレート(60)の各側(60a、60b)に配置される、
加圧流体配達システム。
【請求項2】
前記流体移送スリーブ(72)の前記複数の第1流体路(74a、74b、74c、74d)と前記第1の可変容積型作動チャンバ(20b、30b)および前記第2の可変容積型作動チャンバ(20c、30c)との間の流体連通を可能にする、貫通して形成された流体路(52a、52b、52c、52d)を有するスプロケットリング(52)をさらに含む、請求項1に記載の加圧流体配達システム。
【請求項3】
前記流体移送スリーブ(72)の外周面(72e)に形成された前記複数の第1流体路(74a、74b、74c、74d)の少なくとも一部分を封止する、前記流体移送スリーブ(72)に組み込まれた流体路シリンダ(84)をさらに含む、請求項1に記載の加圧流体配達システム。
【請求項4】
前記流体移送スリーブ(72)と係合可能であり、互いから長手方向に離間した複数の環状流体路(82a、82b、82c、82d)を有するカムベアリング(80)であって、各環状流体路(82a、82b、82c、82d)は、前記流体移送スリーブ(72)の少なくとも1つの対応する第1流体路(74a、74b、74c、74d)と流体連通する、カムベアリング(80)をさらに含む、請求項1に記載の加圧流体配達システム。
【請求項5】
前記流体移送プレート(60)と前記第1の可変容積型作動チャンバ(20b、30b)および前記第2の可変容積型作動チャンバ(20c、30c)との間に挟まれたスプロケットリング(52)であって、前記流体移送プレート(60)の前記複数の第2流体路(62a、62b、62c、62d)と前記第1の可変容積型作動チャンバ(20b、30b)および前記第2の可変容積型作動チャンバ(20c、30c)との間の流体連通を可能にする、貫通して形成された流体路(52a、52b、52c、52d)を有するスプロケットリング(52)をさらに含む、請求項1に記載の加圧流体配達システム。
【請求項6】
前記流体移送プレート(60)に組み込まれて、前記流体移送プレート(60)の片側(60aまたは60b)で前記第2流体路(62a、62b、62c、62d)の少なくとも一部を封止する端部プレート(70)をさらに含む、請求項1に記載の加圧流体配達システム。
【請求項7】
少なくとも1つのカムシャフト(12)を有する内燃機関の可変カムタイミング位相器(10)用の加圧流体配達システムを組み立てる方法であって、
回転軸を有するステータ(14)を用意することと、
前記ステータ(14)から独立して、前記ステータ(14)の前記回転軸に対して回転可能なように、かつ第1の可変容積型作動チャンバ(20b、30b)および第2の可変容積型作動チャンバ(20c、30c)を画定する、ベーン(22、32)と少なくとも1つのロータ(20、30)に関連する空洞(20a、30a)との組み合わせを含む少なくとも1つのベーン式油圧連結器(40、50)を画定するように、前記少なくとも1つのロータ(20、30)を前記ステータ(14)内に組み込み、前記第1の可変容積型作動チャンバ(20b、30b)および前記第2の可変容積型作動チャンバ(20c、30c)は、加圧流体源と選択的に連通した場合に、前記ステータ(14)に対する前記少なくとも1つのロータ(20、30)の独立した角度位相合わせを容易にすることと、
前記カムシャフト(12)との関係において前記カムシャフトと共に回転し、前記第1の可変容積型作動チャンバ(20b、30b)および前記第2の可変容積型作動チャンバ(20c、30c)に対して流体連通するための複数の第1流体路(74a、74b、74c、74d)を有する流体移送スリーブ(72)と、複数の第2流体路(62a、62b、62c、62d)を有する流体移送プレート(60)と、の少なくとも1つを含む流体移送アセンブリを組み立てることと、
を含み、
前記各第1流体路(74a、74b、74c、74d)は、回転中の前記流体移送スリーブ(72)の角度方向に応じて、前記第1の可変容積型作動チャンバ(20b、30b)および前記第2の可変容積型作動チャンバ(20c、30c)の一方と選択的に流体連通するために、前記第1流体路(74a、74b、74c、74d)の円周方向に離間した対応する環状溝セグメント部分(74f、74g、74h、74i)と流体連通して軸方向に延び、
前記各第2流体路(62a、62b、62c、62d)は、流路部分(66a、66b、66c、66d)を介して、前記流体移送プレート(60)の中央に配置された対応するポート(64a、64b、64c、64d)から周方向に延び、前記流路部分(66a、66b、66c、66d)は、前記流体移送プレート(60)の半径方向に延び且つ前記ポート(64a、64b、64c、64d)と流体連通し、前記流路部分(66a、66b、66c、66d)は、弓形に延びる流路部分(68a、68b、68c、68d)と流体連通し、
少なくとも1つの第2流体路(62a、62b、62c、62d)は、前記第1の可変容積型作動チャンバ(20b、30b)および前記第2の可変容積型作動チャンバ(20c、30c)の対応する一方と連通するために、前記流体移送プレート(60)の各側(60a、60b)に配置される、
方法。
【請求項8】
前記流体移送スリーブ(72)の前記複数の第1流体路(74a、74b、74c、74d)と前記第1の可変容積型作動チャンバ(20b、30b)および前記第2の可変容積型作動チャンバ(20c、30c)との間の流体連通を可能にする、貫通して形成された流体路(52a、52b、52c、52d)を有するスプロケットリング(52)を前記ステータ(14)に組み込むことをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
流体路シリンダ(84)を前記流体移送スリーブ(72)に組み込んで、前記流体移送スリーブ(72)の前記第1流体路(74a、74b、74c、74d)の円周方向に離間した環状溝セグメント部分(74f、74g、74h、74i)の少なくとも一部分を封止することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記流体移送スリーブ(72)と係合可能であり、互いから長手方向に離間した複数の環状流体路(82a、82b、82c、82d)を有するカムベアリング(80)を組み込み、各環状流体路(82a、82b、82c、82d)は、前記流体移送スリーブ(72)の少なくとも1つの対応する第1流体路(74a、74b、74c、74d)と流体連通することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの流体移送プレート(60)と前記第1の可変容積型作動チャンバ(20b、30b)および前記第2の可変容積型作動チャンバ(20c、30c)との間に挟まれるようにスプロケットリング(52)を前記ステータ(14)に組み込み、前記スプロケットリング(52)は、前記少なくとも1つの流体移送プレート(60)の前記複数の第2流体路(62a、62b、62c、62d)と前記第1の可変容積型作動チャンバ(20b、30b)および前記第2の可変容積型作動チャンバ(20c、30c)との間の流体連通を可能にする、貫通して形成された流体路(52a、52b、52c、52d)を有することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
端部プレート(70)を前記少なくとも1つの流体移送プレート(60)に組み込んで、前記少なくとも1つの流体移送プレート(60)の片側(60aまたは60b)に前記第2流体路(62a、62b、62c、62d)の少なくとも一部を封止することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
エンジンクランクシャフトから伝達され、対応するカムセットを操作するための内側カムシャフト(12a)および外側カムシャフト(12b)を有する同心カムシャフト(12)に送られた動力によって駆動される可変カムタイミング位相器(10)であって、前記エンジンクランクシャフトと回転可能に連結できる駆動ステータ(14)と、前記駆動ステータ(14)と連動し、前記対応するカムセットを支持する内側カムシャフト(12a)および外側カムシャフト(12b)の対応する一方とそれぞれが回転可能に連結することができる第1の被動ロータ(20)および第2の被動ロータ(30)であって、前記駆動ステータ(14)と共に共通軸のまわりに回転可能に取り付けられた第1の被動ロータ(20)および第2の被動ロータ(30)と、前記対応する第1の被動ロータ(20)および第2の被動ロータ(30)を前記駆動ステータ(14)と回転可能に連結し、前記駆動ステータ(14)に対する、および互いに対する第1の被動ロータ(20)および第2の被動ロータ(30)の独立した位相制御を可能にする第1のベーン式油圧連結器(40)および第2のベーン式油圧連結器(50)とを含む位相器において、
前記カムシャフト(12)に回転可能に取り付けられ、複数の第1流体路(74a、74b、74c、74d)を有する流体移送スリーブ(72)と、
複数の第2流体路(62a、62b、62c、62d)を有する流体移送プレート(60)と、
の少なくとも1つを含み、
前記各第1流体路(74a、74b、74c、74d)は、回転中の前記流体移送スリーブ(72)の角度方向に応じて、前記第1のベーン式油圧連結器(40)および前記第2のベーン式油圧連結器(50)と選択的に連通するために、前記第1流体路(74a、74b、74c、74d)の円周方向に離間した対応する環状溝部分(74f、74g、74h、74i)と流体連通して軸方向に延び、
前記各第2流体路(62a、62b、62c、62d)は、流路部分(66a、66b、66c、66d)を介して、前記流体移送プレート(60)の中央に配置された対応するポート(64a、64b、64c、64d)から周方向に延び、前記流路部分(66a、66b、66c、66d)は、前記流体移送プレート(60)の半径方向に延び且つ前記ポート(64a、64b、64c、64d)と流体連通し、前記流路部分(66a、66b、66c、66d)は、弓形に延びる流路部分(68a、68b、68c、68d)と流体連通し、
少なくとも1つの第2流体路(62a、62b、62c、62d)は、第1の可変容積型作動チャンバ(20b、30b)および第2の可変容積型作動チャンバ(20c、30c)の対応する一方と連通するために、少なくとも1つの前記流体移送プレート(60)の各側(60a、60b)に配置される、
位相器。
【請求項14】
前記複数の第1流体路(74a、74b、74c、74d)の円周方向に離間した環状溝セグメント部分(74f、74g、74h、74i)の第1のセットが、前記流体移送スリーブ(72)の第1の共通回転平面内に配置される、請求項13に記載の位相器。
【請求項15】
前記複数の第1流体路(74a、74b、74c、74d)の円周方向に離間した環状溝セグメント部分(74f、74g、74h、74i)の第2のセットが、前記第1の共通回転平面から長手方向に離間した、前記流体移送スリーブ(72)の第2の共通回転平面内に配置される、請求項14に記載の位相器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全体を本明細書に援用される、2011年8月30日に出願の米国特許出願第61/528,920号明細書(代理人整理番号DKT11086)の一部継続出願であり、米国特許法119条(e)に基づきその利益を主張し、参照によりその全体を本明細書に援用される、2011年10月14日に出願の米国仮特許出願第61/547,390号明細書(代理人整理番号DKT11138)の一部継続出願であり、米国特許法119条(e)に基づきその利益を主張し、2012年7月2日に出願の米国特許出願第61/667,127号明細書(代理人整理番号DKT11196)の一部継続出願であり、米国特許法119条(e)に基づきその利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、クランクシャフトと、内燃機関のポペット式吸気または排気弁との中間にある、少なくとも1つのそのような弁を作動させる機構に関し、その機構は、エンジンの動作サイクルに関する時間をずらし、より詳細には、その機構は、1つのカムシャフトおよび対応するカムの、他方のカムシャフトおよび対応するカムに対する角度位置を変えるように、同心カムシャフトと動作可能に係合する。
【背景技術】
【0003】
内燃機関の性能は、一方がエンジンの様々なシリンダの吸気弁を動作させ、他方が排気弁を動作させる2重カムシャフトの使用によって改善することができる。通常、そのようなカムシャフトの一方は、チェーン付きスプロケット駆動体またはベルト駆動体を介して、エンジンのクランクシャフトによって駆動され、そのようなカムシャフトの他方は、第2のチェーン付きスプロケット駆動体、または第2のベルト駆動体を介して、前記第1のクランクシャフトによって駆動される。あるいは、両方のカムシャフトは、単一のクランクシャフト駆動式チェーン駆動体またはベルト駆動体によって駆動することができる。クランクシャフトは、ピストンから動力を取り込んで、少なくとも1つのトランスミッションおよび少なくとも1つのカムシャフトを駆動することができる。2重カムシャフトを備えたエンジンのエンジン性能は、一方のカムシャフト、通常は、エンジンの吸気弁を作動させるカムシャフトの、他方のカムシャフトおよびクランクシャフトに対する位置関係を変え、それにより、排気弁に対する吸気弁の動作に関して、またはクランクシャフトの位置に対する吸気弁の動作に関してエンジンのタイミングを変えることで、アイドリング品質、燃料経済性、排気ガスの削減、トルクの増大といった点でさらに改善することができる。
【0004】
当技術分野において一般的であるように、エンジン当たり1つまたは複数のカムシャフトが存在し得る。カムシャフトは、ベルト、またはチェーン、または1つもしくは複数のギヤ、または他のカムシャフトによって駆動することができる。1つまたは複数の弁を押すために、1つまたは複数のローブがカムシャフト上に存在し得る。多重カムシャフトエンジンは通常、排気弁用に1つのカムシャフト、吸気弁用に1つのカムシャフトを有する。「V字」型エンジンは通常、2つのカムシャフト(各バンクに1つ)または4つのカムシャフト(各バンクに対して吸気用および排気用)を有する。
【0005】
可変カムタイミング(VCT)装置は、米国特許第7,841,311号明細書、同7,789,054号、同7,270,096号、同6,725,817号、同6,244,230号、米国特許出願公開第2010/0050967号明細書など、当技術分野において公知である。公知の特許文献および非特許文献は、駆動部材が単一の被動部材を同心で囲んだ間に環状空間を形成した単一位相器アセンブリ用の油圧連結器を開示している。環状空間は、駆動部材の内側面から半径方向内側に延びる1つまたは複数のベーンと、単一の被動部材の外側面から半径方向外側に延びる1つまたは複数のベーンとによって、円弧形または弓形の可変容積型作動チャンバに分割される。油圧流体が様々なチャンバに出入りするときに、ベーンは互いに対して回転し、それにより、駆動部材と単一の被動部材との相対角度位置を変える。接線方向に作用する力を加えるために、半径方向のベーンを使用する油圧連結器は、本明細書においてベーン式油圧連結器と呼ばれる。これらの従来から公知の各特許文献および非特許文献は、その意図された目的に適していると思える。しかし、互いに対して軸方向に離間して配置された可変容積型作動チャンバを備える2重可変カムタイミング(VCT)装置は、2重VCTアセンブリ用のさらなる軸方向空間を必要とし、一方、互いに対して円周方向に離間して配置された可変容積型作動チャンバを備える2重VCT装置は、潜在的に、関連するロータおよびベーンの角度動作距離が小さいという欠点があり、さらに、ベーンの数量が限定され、ベーン表面積が限定され、駆動流体チャンバの大きさが限定されるために、潜在的に駆動力が小さいという欠点もあり得る。したがって、必要とする2重VCTアセンブリ用の軸方向空間がより小さい構成を提供することが望ましい。2重VCTアセンブリ用の角度駆動距離を大きくすることも望ましい。さらに、2重VCTアセンブリの駆動力性能を高めることが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
2重可変カムタイミング位相器は、2つのカムセットを操作するために、エンジンクランクシャフトから伝達され、半径方向内側シャフトおよび半径方向外側シャフトを有する同心カムシャフトに送られた動力によって駆動することができる。位相器は、エンジンクランクシャフトと回転可能に連結できる駆動ステータと、2つの同心被動ロータとを含むことができ、各ロータは、対応する2つのカムセットを支持する同心カムシャフトのそれぞれ1つのシャフトと回転可能に連結することができる。駆動ステータおよび被動ロータはすべて、共通軸のまわりに回転可能に取り付けられる。被動ロータは、(軸方向または円周方向に積み重ねられるのではなく)半径方向に積み重ねられた複数のベーン式油圧連結器によって駆動ステータと回転可能に連結されて、被動ロータの位相が駆動ステータに対して互いに独立して調整されるのを可能にする。この構成では、必要とする2重VCTアセンブリ用の軸方向空間より小さいことが分かる。さらに、この構成は、2重VCTアセンブリ用の角度動作距離を大きくすることができる。この構成は、2重VCTアセンブリの駆動力性能を高めることもできる。
【0007】
半径方向内側シャフトおよび半径方向外側シャフトを備えた同心カムシャフトを有する内燃機関用の2重可変カムタイミング位相器は、回転軸を有するステータを含むことができる。外側ロータは、ステータから独立して、ステータの回転軸に対して回転可能である。半径方向外側に配置されたベーン式油圧連結器は、第1および第2の可変容積型外側作動チャンバを画定する、外側ベーンと外側ロータに関連する空洞との組み合わせを含むことができる。内側ロータは、ステータおよび外側ロータの両方から独立して、ステータの回転軸に対して回転可能である。内側ロータは、外側ロータの最内縁内で半径方向内側に配置することができる。半径方向内側に配置されたベーン式油圧連結器は、第1および第2の可変容積型内側作動チャンバを画定する、内側ベーンと内側ロータに関連する空洞との組み合わせを含むことができる。複数の流体路は、外側ロータおよび内側ロータの互いに対して独立した、かつステータに対して独立した角度位相合わせを容易にするために、第1および第2の外側および内側作動チャンバを加圧流体源に対して接続することができる。
【0008】
本発明を実施するために企図された最良の態様の以下の説明を添付の図面と関連させて読んだ場合に、本発明の他の応用例が当業者に明らかになる。
【0009】
本明細書では、添付の図面を参照して説明がなされ、複数の図全体を通して、同じ参照数字は同じ部品を指す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明による、同心カムシャフトを有する内燃機関用の2重可変カムタイミング位相器の回転軸に対して垂直に切り取った断面図である。
【
図2】
図1の2重可変カムタイミング位相器の回転軸に沿って切り取った断面図である。
【
図3】
図1〜2の2重可変カムタイミング位相器の端面斜視図である。
【
図4】本発明の別の構成による、同心カムシャフトを有する内燃機関用の2重可変カムタイミング位相器の回転軸に対して垂直に切り取った断面図である。
【
図5】
図4の2重可変カムタイミング位相器の回転軸に沿って切り取った断面図である。
【
図6】
図4〜5の2重可変カムタイミング位相器の端面斜視図である。
【
図7】可変容積型作動チャンバと連通させるための、カム位相器を通るオイル路を示す、カム位相器の回転軸に沿って切り取った断面図である。
【
図8】可変容積型作動チャンバと連通させるための、カムシャフトのオイル移送スリーブを通るオイル路を示す斜視図である。
【
図9A-B】可変容積型作動チャンバと連通させるためのオイル路を示す、オイル移送プレートの両側の斜視図である。
【
図10】可変容積型作動チャンバと連通させるための、カムシャフトのオイル移送スリーブを通るオイル路を示す、カム位相器の回転軸に沿って切り取った段面図である。
【
図11】流体源から位相器または2重位相器まで加圧流体を連通させるための、周面に沿って外側に、またはスリーブを通って内側に、または両方に延びる複数の流体路を有する流体移送スリーブの斜視図である。
【
図12】流体移送スリーブ内に形成された複数の流体路と流体連通するように貫通した複数の流体路ポートを有する流体路シリンダまたはカムベアリングと動作可能に係合した
図11の流体移送スリーブの斜視図である。
【
図13】中立スプール位置で示す制御弁を用いて、ステータに対してロータを進角または遅角移動させるために、可変容積型作動チャンバと流体連通した溝セグメントを示す、単純化した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1〜3を参照して、2重可変カムタイミング位相器10は、2つのカムセット(図示せず)を操作するために、エンジンクランクシャフト(図示せず)から伝達され、同心カムシャフト12に送られた動力によって駆動することができる。可変カムタイミング(VCT)位相器アセンブリ10の一部分が、内側シャフト12aおよび外側シャフト12bを有する同心カムシャフト12を含んで示されている。主回転動作は、駆動ステータ14に動作可能に連結された環状フランジ16のスプロケットリング52を介して同心カムシャフト12に伝達することができる。内側カムシャフト12aと外側カムシャフト12bとの間の二次回転動作、または位相をシフトする相対回転動作は、2重可変カムタイミング位相器10によってもたらすことができる。位相器10は、エンドレスループの可撓性動力伝達部材によってエンジンクランクシャフトと回転可能に連結された駆動ステータ14を含むことができる。2つの同心被動ロータ20、30は、ステータ14と連動することができる。各ロータ20、30は、対応する2つのカムセットを支持する同心カムシャフト12のそれぞれ1つのシャフト12a、12bと回転可能に連結することができる。駆動ステータ14および被動ロータ20、30はすべて、共通軸のまわりに回転可能に取り付けられている。被動ロータ20、30を駆動ステータ14と回転可能に連結する、半径方向に積み重ねられた複数のベーン式油圧連結器40、50は、被動ロータ20、30の位相が駆動ステータ14に対して互いに独立して調整されるのを可能にする。
【0012】
半径方向に積み重ねられた複数のベーン式油圧連結器は、半径方向外側に配置されたベーン式油圧連結器40と、半径方向内側に配置されたベーン式油圧連結器50とを含むことができる。半径方向外側配置のベーン式油圧連結器40は、少なくとも1つの半径方向外側配置のベーン22と、少なくとも1つの半径方向外側配置のベーン22によって、第1の可変容積型外側作動チャンバ20bと第2の可変容積型外側作動チャンバ20cとに分割された、半径方向外側配置のロータ20に関連する、少なくとも1つの対応する半径方向外側配置の空洞20aとを含むことができる。半径方向内側配置のベーン式油圧連結器50は、少なくとも1つの半径方向内側配置のベーン32と、少なくとも1つの半径方向内側配置のベーン32によって、第1の可変容積型内側作動チャンバ30bと第2の可変容積型内側作動チャンバ30cとに分割された、半径方向内側配置のロータ30に隣接する、少なくとも1つの対応する半径方向内側配置の空洞30aとを含むことができる。
【0013】
半径方向外側配置のベーン式油圧連結器40は、第1の可変容積型外側作動チャンバ20bおよび第2の可変容積型外側作動チャンバ20cを画定する、外側ベーン22と外側ロータ20に関連する空洞20aとの組み合わせを含むことができる。外側ベーン22および空洞20aの組み合わせは、外側ベーン22を画定する半径方向外側面14bを備える壁部分14aを有するステータ14と、外側空洞20aを画定するように、ステータ14の半径方向外側面14bを囲む外側ロータ20とによって画定することができる。半径方向内側配置のベーン式油圧連結器50は、第1の可変容量型内側作動チャンバ30bおよび第2の可変容積型内側作動チャンバ30cを画定する、内側ベーン32と内側ロータ30に関連する空洞30aとの組み合わせを含むことができる。内側ベーン32および空洞30aの組み合わせは、内側空洞30aを画定する半径方向内側面14cを備える壁14aを有するステータ14と、内側ベーン32を画定する外側面30dを有する内側ロータ30とによって画定することができる。
【0014】
図1および
図2に最もよく示すように、駆動ステータ14は、留め具24によって、環状フランジ16および付随するスプロケットリング52に連結されている。外側ロータ20は、端部プレート34、外側留め具36、および中央留め具38によって内側同心カムシャフト12aに連結されている。内側ロータ30は、外側同心カムシャフト12bの外側面42に直接連結されている。
【0015】
動作時、2重可変カムタイミング位相器10は、駆動ステータ14と、同心に配置された被動外側ロータ20および被動内側ロータ30とに関連する、半径方向外側の環状空間または空洞20aと半径方向内側の環状空間または空洞30aとを形成する。環状空間または空洞20a、30aは、外側ロータ20および内側ロータ30の表面から半径方向に延びる外側ベーン22および内側ベーン32と、駆動ステータ14の表面から半径方向に延びる1つまたは複数のベーンまたは壁18とによって円弧形状または弓形の可変容積型作動チャンバ20b、20c、30b、30cに分割される。油圧流体が様々なチャンバ20b、20c、30b、30cに出入りするときに、ベーン22、32は互いに対して回転し、それにより、被動外側ロータ20および被動内側ロータ30の、互いに対する、およびステータ14に対する相対角度位置を変える。
【0016】
図4〜6を参照して、および
図1〜3に関連して前述したように、2重可変カムタイミング位相器10は、2つのカムセット(図示せず)を操作するために、エンジンクランクシャフト(図示せず)から伝達され、同心カムシャフト12に送られた動力によって駆動することができる。可変カムタイミング(VCT)位相器アセンブリ10の一部が、内側カムシャフト12aおよび外側カムシャフト12bを有する同心カムシャフト12を含んで示されている。主回転動作は、駆動ステータ14に動作可能に連結された、スプロケットリング52から環状フランジ16までのアセンブリを通じて同心カムシャフト12に伝達することができる。内側カムシャフト12aと外側カムシャフト12bとの間の二次回転動作、または位相をシフトした相対回転動作は、2重可変カムタイミング位相器10によってもたらすことができる。位相器10は、エンジンクランクシャフトと回転可能に連結された駆動ステータ14を含むことができる。2つの同心被動ロータ20、30は、ステータ14と連動することができる。各ロータ20、30は、対応する2つのカムセットを支持する同心カムシャフト12のそれぞれの1つと回転可能に連結することができる。駆動ステータ14および被動ロータ20、30はすべて、共通軸のまわりに回転可能に取り付けられている。被動ロータ20、30を駆動ステータ14と回転可能に連結する、半径方向に積み重ねられた複数のベーン式油圧連結器40、50は、被動ロータ20、30の位相が駆動ステータ14に対して互いに独立して調整されるのを可能にする。この構成では、ステータ14は、半径方向外側の壁部分14dと半径方向内側の壁部分14fとを含む。
【0017】
半径方向に積み重ねられた複数のベーン式油圧連結器は、半径方向外側に配置されたベーン式油圧連結器40と、半径方向内側に配置されたベーン式油圧連結器50とを含むことができる。半径方向外側配置のベーン式油圧連結器40は、少なくとも1つの半径方向外側配置のベーン22と、少なくとも1つの半径方向外側配置のベーン22によって、第1の可変容積型外側作動チャンバ20bと第2の可変容積型外側作動チャンバ20cとに分割された、半径方向外側配置のロータ20に関連する、少なくとも1つの対応する半径方向外側配置の空洞20aとを含むことができる。半径方向内側配置のベーン式油圧連結器50は、少なくとも1つの半径方向内側配置のベーン32と、少なくとも1つの半径方向内側配置のベーン32によって、第1の可変容積型内側作動チャンバ30bと第2の可変容積型内側作動チャンバ30cとに分割された、半径方向内側配置のロータ30に隣接する、少なくとも1つの対応する半径方向内側配置の空洞30aとを含むことができる。
【0018】
半径方向外側配置のベーン式油圧連結器40は、第1の可変容積型外側作動チャンバ20bおよび第2の可変容積型外側作動チャンバ20cを画定する、外側ベーン22と外側ロータ20に関連する空洞20aとの組み合わせを含むことができる。外側ベーン22および空洞20aの組み合わせは、外側空洞20aを画定する内側面14eを備える半径方向外側の壁部分14dを有するステータ14と、外側ベーン22を画定する外側面20dを有する外側ロータ20とによって画定することができる。半径方向内側配置のベーン式油圧連結器50は、第1の可変容量型内側作動チャンバ30bおよび第2の可変容積型内側作動チャンバ30cを画定する、内側ベーン32と内側ロータ30に関連する空洞30aとの組み合わせを含むことができる。内側ベーン32および空洞30aの組み合わせは、外側ロータ20と内側ロータ30との間で半径方向に挟まれた、半径方向内側の壁部分14fを有するステータ14によって画定することができる。内側壁部分14fは、内側空洞30aを画定する半径方向内側面14gを有することができ、内側ロータ30は、内側ベーン32を画定する外側面30dを有することができる。
【0019】
図4〜5に最もよく示すように、駆動ステータ14の外側壁部分14dは、留め具24によって、フランジ16および付随するスプロケットリング52に連結されている。外側ロータ20は、端部プレート34、外側留め具36、および中心留め具38によって内側同心カムシャフト12aに連結されている。駆動ステータ14の外側壁部分14fは、留め具26によって、フランジ16および付随するスプロケットリング52に連結されている。内側ロータ30は、外側同心カムシャフト12bの外側面42に直接連結されている。
【0020】
動作時、2重可変カムタイミング位相器アセンブリは、駆動ステータ14と、同心に配置された被動外側ロータ20および被動内側ロータ30とに関連する半径方向外側の環状空間または空洞20aと半径方向内側の環状空間または空洞30aとを形成する。環状空間または空洞20a、30aは、外側ロータ20および内側ロータ30の表面から半径方向に延びる外側ベーン22および内側ベーン32と、駆動ステータ14の表面から半径方向に延びる1つまたは複数のベーンまたは壁18とによって円弧形状または弓形の可変容積型作動チャンバ20b、20c、30b、30cに分割される。油圧流体が様々なチャンバ20b、20c、30b、30cに出入りするときに、ベーン22、32は互いに対して回転し、それにより、被動外側ロータ20および被動内側ロータ30の、互いに対する、およびステータ14に対する相対角度位置を変える。
【0021】
ここで
図1および
図7〜10を参照して、少なくとも1つのカムシャフト12を有する内燃機関の可変カムタイミング位相器10用の加圧流体配達システムは、回転軸を有するステータ14と、ステータ14から独立して、ステータ14の回転軸に対して回転可能な少なくとも1つのロータ20、30とを含むことができる。少なくとも1つのベーン式油圧連結器40、50は、第1の可変容積型作動チャンバ20b、30b、および第2の可変容積型作動チャンバ20c、30cを画定する、ベーン22、32と少なくとも1つのロータ20、30に関連する空洞20a、30aとの組み合わせを含むことができる。第1の可変容積型作動チャンバ20b、30b、および第2の可変容積型作動チャンバ20c、30cは、加圧流体源と選択的に連通した場合に、ステータ14に対する少なくとも1つのロータ20、30の独立した角度位相合わせを容易にすることができる。少なくとも1つの流体移送プレート60は、複数の加圧流体路62a、62b、62c、62dを含むことができる。各流体路62a、62b、62c、62dは、弓形に延びる流路部分68a、68b、68c、68dと流体連通する、半径方向に延びる流路部分66a、66b、66c、66dと流体連通する、中心に配置された対応するポート64a、64b、64c、64dから延びることができる。少なくとも1つの加圧流体路62a、62b、62c、62dは、第1の可変容積型作動チャンバ20b、30b、および第2の可変容積型作動チャンバ20c、30cの対応する1つと連通するように、少なくとも1つの流体移送プレート60の各側60a、60bに配置することができる。
図7に最もよく示すように、弓形流体路部分68a、68b、68c、68dは、スプロケットリング52を貫通する、長手方向に延びる対応する流体路52a、52c(それらの2つだけを示している)と流体連通している。長手方向に延びる流体路52b、52dの一部は、スプロケットリング52を貫通し(
図7には示していない)、さらに、
図9Aに最もよく示すように、少なくとも1つの流体路プレート60を貫通している。長手方向に延びる流体路52a、52b、52c、52cは、対応する第1の可変容積型作動チャンバ20b、30b、および第2の可変容積型作動チャンバ20c、30cと、流体路62a、62b、62c、62dとの間を流体連通する。
【0022】
図7および
図8に最もよく示すように、スプロケットリング52は、少なくとも1つの流体移送プレート60と第1の可変容積型作動チャンバ20b、30b、および第2の可変容積型作動チャンバ20c、30cとの間に挟むことができる。スプロケットリング52は、少なくとも1つの流体移送プレート60の複数の流体路62a、62b、62c、62dと第1の可変容積型作動チャンバ20b、30b、および第2の可変容積型作動チャンバ20c、30cとの間の流体連通を可能にする、貫通して形成された流体路52a、52b、52c、52dを含むことができる。端部プレート70は、少なくとも1つの流体移送プレート60に組み込まれて、少なくとも1つの流体移送プレート60の片側60a、60bの加圧流体路62a、62b、62c、62dの少なくとも一部を封止することができる。
【0023】
図7、
図8、および
図10に最もよく示すように、流体移送スリーブ72は、長手方向に離間し、円周方向に離間した流体ポート76a、76b、76c、76dと一方の端部で流体連通し、対応する流体ポート78a、78b、78c、78dと反対側の端部で流体連通した、長手方向に延び円周方向に離間した複数の流体路74a、74b、74c、74dを含むことができる。分離および独立した対応する流体路74a、74b、74c、74dを画定する各流体ポート76a、76b、76c、76dは、流体移送スリーブ72の他の流体ポート76a、76b、76c、76dから分離している。各流体ポート78a、78b、78c、78dは、流体移送スリーブ72の他の流体ポート78a、78b、78c、78dから分離および独立した流体路74a、74b、74c、74dを画定する。各流体ポート78a、78b、78c、78dは、少なくとも1つの流体移送プレート60の対応する加圧流体路62a、62b、62c、62dと流体連通することができる。分離した流体路74a、74b、74c、74dにより、流体で接続された対応する可変容積型作動チャンバ20b、20c、30b、30cの独立した制御が可能になる。
【0024】
図7および
図10に最もよく示すように、カムベアリング80は、流体移送スリーブ72と係合可能である。カムベアリング80は、互いから長手方向に離間した複数の環状流体路82a、82b、82c、82dを有することができる。各環状流体路82a、82b、82c、82dは、流体移送スリーブ72の1つの対応する流体路74a、74b、74c、74dと流体連通することができる。
【0025】
ここで
図11を参照すると、流体移送スリーブ72の構築物は、流体ポート76a、76b、76c、76dおよび流体ポート78a、78b、78c、78dと流体連通した、対応する流体路74a、74b、74c、74dの円周方向に離間した複数の環状溝セグメント部分74f、74g、74h、74iを含むことができる。各流体路74a、74b、74c、74dは、流体移送プレート72の他の流体路74a、74b、74c、74dから分離および独立することができる。各流体ポート78a、78b、78c、78dは、必要に応じて、少なくとも1つの流体移送プレート60の対応する加圧流体路62a、62b、62c、62dと流体連通することができる。分離した環状溝セグメント部分74f、74g、74h、74iにより、流体で接続された対応する可変容積型作動チャンバ20b、20c、30b、30cの独立した制御が可能になる。
図12に最もよく示すように、流体路シリンダ84は、流体移送スリーブ72に組み込まれて、流体移送スリーブ72の外周面72eに形成された、複数の加圧流体路74a、74b、74c、74dの円周方向に離間した環状溝流体路部分74f、74g、74h、74iの少なくとも一部分を封止することができる。流体路シリンダ84は、流体ポート84a、84b、84c、84dを画定するスロットを含むことができる。
【0026】
ここで
図13の単純化した概略図を参照して、可変カムタイミング位相器10は、流体移送スリーブ72と、対応する第1の流体路166aおよび第2の流体路166bを介して、可変容積型作動チャンバ20b、20c、30b、30cを備えた第1のベーン式油圧連結器40および第2のベーン式油圧連結器50の一方、ならびに制御弁160用の入り口または出口であるさらなるポートと流体連通する第1の共有流体路116aおよび第2の共有流体路116bとを含むことができる。非限定的な例として、
図13は、可変カムタイミング位相器10の動作を説明するために、さらなる出口ポート164aを示している。ただし、入り口ポート162および出口ポート164、164aは、下記に説明するものとは反対に作用するように逆にすることができると理解されたい。非限定的な例として、
図13に示すように、制御弁160が1つの方向にシフトされると、入り口ポート162から第1の共有流体路116a、環状溝セグメント74f、および第1の流体流路166aを経由して、可変容積型作動チャンバ20b、30bの一方までの流体連通が可能になり、同時に、出口ポート164から第2の共有流体路116b、環状溝セグメント74g、および第2の流体流路166bを経由して、可変容積型作動チャンバ20c、30cの他方までの流体連通が可能になる。制御弁は、別の位置にシフトされて、出口ポート164aから第1の共有流体路116aへの流体連通を可能にし、同時に、入り口ポート162から第2の共有流体路116bへの流体連通を可能にする。カムシャフト12に固定連結された流体移送スリーブ72は、シャフト12の回転の角度割り当て時に、カムシャフト12と共に時計方向に回転して、外径山部112a、112bで、第1のベーン式油圧連結器40および第2のベーン式油圧連結器50を第1の共有流体路116aおよび第2の共有流体路116bから切り離す。溝セグメント74f、74gの角度範囲および外径山部112a、112bの角度範囲は、重なることのない任意で所望の角度範囲とすることができると理解されたい。非限定的な例として、カムシャフト12に固定連結された流体移送プレート72は、時計方向にさらに回転できるので、出口ポート164aは、第1の共有流体路116a、環状溝セグメント74g、および第2の流体路部分166bを経由して他方の可変容積型作動チャンバ20c、30cと流体連通し、同時に、入り口ポート162は、第2の共有流体路116b、環状溝セグメント74f、および第1の流体路部分166aを経由して一方の可変容積型作動チャンバ20b、30bと流体連通する。制御弁160は、シフトされた長手方向端部位置または(示すような)中立位置のいずれかをとることができ、一方、流体移送スリーブおよび同心カムシャフト12は、対応する第1のベーン式油圧連結器40および第2のベーン式油圧連結器50と連通する、対応する溝セグメント74f、74gを介した、第1の共有流体流路116aおよび第2の共有流体流路116bと、第1の流体路部分166aおよび第2の流体路部分166bとの間の流体連通を可能にする適切な角度方向によって回転することができると理解されたい。
【0027】
環状溝セグメント74f、74gは、揺動トルクから恩恵を受けるように角度的に配置することができる。位相器制御は、環状溝セグメント74f、74gが、第1の共有流体路116および/または第2の共有流体路116bと整列している間に、制御弁160を中央中立位置から離れる方向に、シフトされた長手方向端部位置の一方まで移動させることで達成することができ、所望通りに再度整列するまで流れを止めるために中央中立位置に戻ることができる。制御弁160は、所望通りに再度整列したときに、位相器動作を続けるために、中央中立位置から離れて戻ることができる。あるいは、制御弁160は、同心カムシャフト12の1回転中に、中央中立位置から両方向に揺動することができる。共有オイル供給位相器の代替の制御方策には、制御弁160がカムシャフトの回転周波数またはカムシャフトの回転周波数の小数倍で中立位置を中心として揺動するものがあり得る。エンジン制御ユニットは、環状溝セグメント74f、74gにより、流体流れが、接続されたベーン式油圧連結器40、50に出入りするのが可能になるカム回転部分とさらに多く、またはさらに少なく重なるように、制御弁160の動作のタイミングを進めるか、または遅らせることができる。言い換えると、制御弁160は、中立位置に保持されず、その代わりに、入り口ポート162および/または出口ポート164、164aに対する制御弁160の開口の重なりを変え、環状溝セグメント74f、74gの開口が、共有流体路116a、116bと流体連通することで、制御弁から位相器への流れが通れるようになるか、または止められる。
【0028】
環状溝セグメント74f、74gおよび外径山部112a、112bは、示される通り、角度的に等間隔に離間することができるし、または所望する任意の重ならない角度範囲および方向に配置することもできると理解されたい。環状溝セグメント74f、74gおよび山部112a、112bが角度的に等間隔に離間している場合、第1の可変容積型作動チャンバ20b、30bおよび第2の可変容積型作動チャンバ20c、30cは、流体移送スリーブ72と付随するカムベアリング80との角度位置に応じて、同時に流体連通するか、または同時に切り離される。セグメント74f、74gおよび山部112a、112bが、角度的に等間隔に離間していない場合、第1の可変容積型作動チャンバ20b、30bおよび第2の可変容積型作動チャンバ20c、30cの流体連通および切り離しは、流体移送スリーブ72と付随するカムベアリング80との角度位置に応じて、互いに対して時間的にずれる。
【0029】
流体移送スリーブ72の動作の図解および説明を簡単にするために、2つだけの環状溝セグメント74f、74gが
図13に概略的に示されているが、寸法を制限することを条件として、任意の個数の環状溝セグメント74f、74g、74h、74iを共通回転平面内に配置することができ、さらなる環状溝セグメントを平行で長手方向に離間した回転平面に置いて、制御弁160によって制御可能な共有流体路116a、116bの全体個数を増やすことができると理解されたい。平行で長手方向に離間した回転平面間の環状溝セグメント74f、74gの角度方向および/または重なりは、所望の動作特性を得るために所望通りに調整することができる。制御弁160は、さらなる流体入り口および排出ポートを含むことができ、かつ/または複数の制御弁160を設けることができる。非限定的な例として、共有流体路116a、116bと流体連通する環状溝セグメントを包含する、各平行で長手方向に離間した回転平面ごとに1つの制御弁を設けることができ、かつ/または制御弁160は、制御するために、必要に応じて、環状溝セグメント112a、112bを包含する、平行で長手方向に離間した複数の回転平面に接続することができる。
【0030】
少なくとも1つのカムシャフト12を有する内燃機関の可変カムタイミング位相器10用の加圧流体配達システムを組み立てる方法が開示される。この方法は、回転軸を有するステータ14を提供し、少なくとも1つのロータ20、30をステータ14内に、ステータ14から独立してステータ14の回転軸に対して回転可能なように組み込むことを含むことができる。ステータ14および少なくとも1つのロータ20、30は、第1の可変容積型作動チャンバ20b、30b、および第2の可変容積型作動チャンバ20c、30cを画定する、ベーン22、32と少なくとも1つのロータ20、30に関連する空洞20a、30aとの組み合わせを含む少なくとも1つのベーン式油圧連結器40、50を画定する。第1の可変容積型作動チャンバ20b、30b、および第2の可変容積型作動チャンバ20c、30cは、加圧流体源と選択的に連通した場合に、ステータ14に対する少なくとも1つのロータ20、30の独立した角度位相合わせを容易にすることができる。方法は、第1の可変容積型作動チャンバ20b、30b、および第2の可変容積型作動チャンバ20c、30cに関連する複数の加圧流体路62a、62b、62c、62dを有する少なくとも1つの流体移送プレート60を組み込むことをさらに含むことができる。各流路62a、62b、62c、62dは、弓形に延びる流路部分68a、68b、68c、68dと流体連通する、半径方向に延びる流路部分66a、66b、66c、66dと流体連通する、中心に配置された対応するポート64a、64b、64c、64c、64dから延びることができる。少なくとも1つの加圧流体路62a、62b、62c、62dは、第1の可変容積型作動チャンバ20b、30b、および第2の可変容積型作動チャンバ20c、30cの対応する1つと連通するように、少なくとも1つの流体移送プレート60の各側60a、60bに形成することができる。
【0031】
スプロケットリング52は、少なくとも1つの流体路プレート60と第1の可変容積型作動チャンバ20b、30b、および第2の可変容積型作動チャンバ20c、30cとの間に挟んでステータ14に組み込むことができる。スプロケットリング52は、少なくとも1つの流体移送プレート60の複数の流体路62a、62b、62c、62dと第1の可変容積型作動チャンバ20b、30b、および第2の可変容積型作動チャンバ20c、30cとの間の流体連通を可能にする、貫通して形成された流体路52a、52b、52c、52dを含むことができる。端部プレート70は、少なくとも1つの流体路プレート60に組み込まれて、少なくとも1つの流体移送プレート60の片側60a、60bの加圧流体路62a、62b、62c、62dの少なくとも一部を封止することができる。
【0032】
流体移送スリーブ72は、少なくとも1つのカムシャフト12を覆って組み込むことができる。流体移送スリーブ72は、長手方向に離間し、円周方向に離間した流体ポート76a、76b、76c、76dおよびポート78a、78b、78c、78dと流体連通した、長手方向に延び円周方向に離間した複数の流体路74a、74b、74c、74dを形成することができる。各流体路74a、74b、74c、74dは、流体移送スリーブ72の他の流体路74a、74b、74c、74dから分離および独立することができる。各流体出口ポート78a、78b、78c、78dは、流体移送スリーブ72の他の流体出口ポート78a、78b、78c、78dから分離および独立した流体路を画定することができ、組み立てた場合に、第1のベーン式油圧連結器40および第2のベーン式油圧連結器50の可変容積型作動チャンバ20b、20c、30b、30cとの流体連通を可能にする、対応する加圧流体路62a、62b、62c、62dと流体連通するようになる。
【0033】
カムベアリング80は、流体移送スリーブ72と係合するように組み込むことができる。カムベアリング80は、互いから長手方向に離間した複数の環状流体路82a、82b、82c、82dを有して形成することができる。各環状流体路82a、82b、82c、82dは、流体移送スリーブ72の1つの対応する流体路74a、74b、74c、74dと流体連通するように組み込むことができる。
【0034】
可変カムタイミング位相器10は、少なくとも1つのカムセットを操作するために、エンジンクランクシャフトから伝達され、少なくとも1つのカムシャフト12に送られた動力によって駆動することができる。位相器10は、エンジンクランクシャフトと回転可能に連結できる駆動ステータ14を含むことができる。少なくとも1つの被動ロータ20、30は、ステータ14と連動することができる。各ロータ20、30は、少なくとも1つのカムセットを支持する少なくとも1つのカムシャフト12の対応する1つと回転可能に連結することができる。駆動ステータ14および被動ロータ20、30は、共通軸のまわりに回転可能に取り付けることができる。複数のベーン式油圧連結器40、50は、少なくとも1つの被動ロータ20、30を駆動ステータ14と回転可能に連結するように、駆動ステータ14と被動ロータ20、30との間で画定されて、少なくとも1つの被動ロータ20、30の位相が、駆動ステータ14に対して調整されるのを可能にする。流体移送プレート60は、必要に応じて、複数の加圧流体路62a、62b、62c、62dを有して設けることができる。各流路62a、62b、62c、62dは、弓形に延びる流路部分68a、68b、68c、68dと流体連通する、半径方向に延びる流路部分66a、66b、66c、66dと流体連通する、中心に配置された対応するポート64a、64b、64c、64dから延びることができる。少なくとも1つの加圧流体路62a、62b、62c、62dは、複数のベーン式油圧連結器40、50と連通するように、少なくとも1つの流体移送プレート60の各側60a、60bに形成することができる。
【0035】
本発明が、現在のところ最も実用的でかつ好ましい実施形態と考えられるものに関連して説明されたが、本発明は、開示した実施形態に限定されるのではなくて、逆に添付の請求項の趣旨および範囲内に包含される様々な修正形態および均等物の取り合わせを含むことを意図されているのは当然のことであり、請求項の範囲は、法の下で許される限り、そのような修正形態および均等物の構造をすべて包含するように、最も広範な解釈を与えられる。