(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
製紙業及び板紙産業においては、多くの異なるグレードの製品が存在する。高品質の紙及び板紙、例えば、雑誌若しくは情報リーフレットに用いられるものは、一般に、コーティングされた紙又は板紙であり、本願では、これらをまとめて用語「コート紙」と称する。コート紙は、その表面が1つ又は複数の「層」で被覆された紙であり、この層は、一般に、結合剤及び各種追加物質と混合した顔料を基材とする。
【0003】
これらの層は、「コーティングカラー」として知られる水性組成物を用いて実施されるコーティング方法によって塗布される。この処理の目標は、処理なしではきめが粗く、マクロ多孔性の紙の表面を平面かつ微細孔性にすることにより、印刷物のより良好な複写を可能にすることである。
【0004】
さらに、この処理により、印刷紙の白色度、光沢又は手触りを改善することができる。コート紙はまた、優れたウェットピック耐性を呈しなければならず、これは、IGT(Institut voor Graphisce Technieck)装置によって決定することができる。この特性は、特に、オフセット印刷の場合に、優れた印刷品質の取得を可能にするため、コート紙の分野では非常に重要である。これは、印刷工程中に、紙への様々な色の油性インクの連続的塗布が行われるためである。明瞭な印刷物を得るために、型として作用するインクローラは、油性インクの領域と、湿潤水(水性組成物である)の領域で覆われており、これらの湿潤水領域は、油性インクが、印刷してはならない領域で紙に印刷するのを防止する。ローラ上に水が存在することにより、印刷すべき領域の範囲を定めることが可能になる。従って、この水は、印刷工程中に紙を湿らせることになる。続いて、インクが、やや湿った紙に塗布されるため、高品質印刷のためには、層がこの水分に対して耐性である必要がある。
【0005】
コート紙を生産するためには、コーティング組成物から成る1つ又は複数の薄い層を紙の上に塗布し、乾燥させる。この組成物は、紙上への連続コーティング、一般に、フィルムプレス又はブレードコーティング技術によって塗布される。
【0006】
層の厚さは、圧力及び紙の前進速度を調節することにより調節することができる。その後に、このコート紙又は板紙を、例えば、オフセット、グラビア、輪転グラビア、リトグラビア、インクジェット若しくはフレキソ式の印刷方法に用いることができる。
【0007】
コーティングカラーでは、結合剤は、得られた層において、顔料を互いに粘着させ、層を紙に付着させる役割を有する。この層は、紙をコーティングする工程中に、前記のカラーを乾燥させた後、得られる。
【0008】
カラー中の顔料の量は、一般に非常に高い(一般に、カラーの50%超の固形分)。さらに、このカラーは、一般に、比較的限定された量、一般に、コーティングカラーの総重量の60%未満、あるいは50%未満の水を含む。これは、コーティング工程中に塗布されたカラーを乾燥させることによって層が得られることから、水の蒸発によるコート紙の迅速な取得、並びにこの水を除去するのにわずかなエネルギーの使用を可能にするために、カラー中の水の量を少なくすることが有利だからである。
【0009】
同時に、カラー中の少ない水分にもかかわらず、コーティングカラーの粘度も高くなりすぎないようにする必要がある。これによって、カラーを容易に塗布することが可能になる:カラーが十分に流動性でなければ、所望の厚さを有する層を得るために、コーティング工程を減速させる必要がある。
【0010】
一般に、カラーに用いられる結合剤は、例えば、スチレン−ブタジエン又はスチレンアクリレートタイプのスチレンポリマーであり、これらは、水中の分散液の形態で用いられ、「ラテックス」としても知られる。これらのラテックスは、流動性であり、これによって、紙のコーティング工程に特に好適な流動学的挙動を有するカラーの製造が可能になる。
【0011】
さらに、得られる紙の特性は優れており、このことは、充填材同士の優れた付着、並びに紙への層の極めて良好な結合によって明らかである。
【0012】
その上、得られるコート紙の印刷性及び強度も優れている。
【0013】
しかし、これらの分散液は、貯蔵条件によって比較的不安定となりうる。この貯蔵は、乾燥状態で実施することはできず、水が存在するために、追加の運送費用がかかる。さらに、これらは再生不可能な石油資源から製造されている。従って、これらの分散液は比較的高価となりうる。最後に、結合剤として従来のスチレン分散液のみを含むコーティングカラーは、保水性が乏しい。すなわち、このカラーがその初期粘度を保持し、しかもコーティング工程中にカラーの機械加工性を維持するためには、その工程中に、水をカラーに連続的に添加しなければならない。
【0014】
従って、こうした分散液を全部又は一部に代えて、再生可能な供給源由来の物質を用いることがここ何年か提案されてきた。これらの物質は、加工デンプンであってもよいが、これらは、結合剤の役割を果たせるようにするために、カラーに少なくとも一部溶解させなければならない。
【0015】
加工デンプンは、様々なタイプの変換、例えば、化学的又は酵素的変換により調製することができる。
【0016】
概略的には、デンプンの溶解度を高めるために、その分子量を低下させる必要があると一般に考えられている。
【0017】
従って、これらの加工デンプンが、高い分子量を呈する場合、これは、低い水溶性を伴う。例として、出願人企業により販売されているデキストリンである、加工デンプンStabilys(登録商標)A023が挙げられるが、これは、約300,000Daの重量平均分子量及び約5%の水溶性を呈する。対照的に、これらの加工デンプンが、低い分子量を呈する、高度に可溶性の誘導体である場合もある。これは、やはり出願人企業により販売されているデキストリンStabilys(登録商標)A046の場合に相当し、これは、約25,000Daの重量平均分子量及び約90%の水溶性を呈する。
【0018】
加工デンプンを含むコーティングカラーの例として、出願人が所有する国際公開第2005/003456A1号パンフレットの文献を挙げることができ、これは、コーティングカラーに用いることができる特定の天然マメ加工デンプンの中間組成物を記載している。
【0019】
しかし、これらの中間組成物は、デンプンの量に応じて著しく増加する粘度を有するという欠点を示す。これらを使用することはできるが、そうすると、最終的に得られるカラーの粘度が比較的高いという問題が生じる。その結果、紙のコーティングを実施できるようにするために、スチレンポリマー分散液を用いる方法と比較して、工程を大幅に減速しなければならない。
【0020】
国際公開第2008/074957号パンフレットは、コーティングカラーの製造における、高い分子量及び特定のゾル/ゲル転移温度を呈する加工デンプンの使用を記載している。これらの加工デンプンは、室温で若干可溶性である。これらは、コーティングカラーの製造に用いる前に、水溶液中で、Jet−Cookerを用いた煮沸ステップに付す。その結果、比較的高い固形分を有する水性化合物が得られ、これは、コーティング組成物を製造するのに用いられ、この組成物は、通常の加工デンプンから調製されたものより流動性である。得られるコート紙の特性は、かなり満足できるものである。
【0021】
しかし、コーティング組成物の高い粘度及び乾燥重量の問題が部分的に解決されても、まだこれらを改善する必要がある。
【0022】
欧州特許出願公開第1,964,969A1号明細書は、その一部に、顆粒構造を呈する厳密な分子量及び厳密な溶解度のデンプンを含むコーティングカラーを記載している。このデンプンは、他の冷水可溶性デンプン含有の組成物と比較して、コーティング組成物のコストを下げることを可能にすると共に、コーティング組成物の乾燥重量を増加することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
従って、本発明において有用な加工デンプンは、分子量及び水溶性の特殊な特徴を呈する。
【0029】
加工デンプンの分子量(W)に関して、これは、Daで表され、HPSEC−MALLS(多角度光散乱検出器とオンラインで接続した高性能サイズ排除クロマトグラフィー)タイプのサイズ排除クロマトグラフィーを用いて、当業者が決定することができる。
【0030】
この重量は、以下のプロトコルに従って、サイズ排除クロマトグラフィーによって測定することができる:
・DMSO/NaNO
3混合物(DMSO中の0.1M NaNO
3)から構成される希釈物中で、100℃にて30分加熱することによって、加工デンプンを溶解させることによるサンプルの調製、ここで、前記サンプルは、希釈溶媒1ml当たり2〜10mgのデンプン濃度を呈し得る:
・溶出溶媒を0.3ml/分で循環させるアイソクラティック様式作動ポンプ、屈折計、35℃に加熱された18角度を有するレーザ多角度光散乱検出器(例えば、Wyatt製のDAWN DSP検出器)、並びに35℃に加熱されたカラムの自動調温制御のためのオーブンを備えた高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)装置の使用、この装置は、例えば、Supremaタイプのポリヒドロキシメタクリレートカラムを備え、その溶出溶媒は、例えば、0.02重量%のアジ化ナトリウムを含む0.1M硝酸ナトリウム水溶液である;
・装置への約100μlのサンプルの注入。
【0031】
重量平均及び数平均分子量は、例えば、Astraバージョン4の解析ソフトを用いて、1次指数としてスペクトルを再処理することにより、得られるスペクトルから決定することができる。
【0032】
溶解度に関しては、試験Aに従って測定するが、これは、以下の方法から成る:
・約5.0gの加工デンプンから所定重量の試験サンプル(w試験サンプル)(この重量は乾燥重量として表される)を抜き取るステップ;
・三角フラスコ中の22℃の200mlの水に分散させた後、フラスコを磁気撹拌の下で4時間22℃の水浴中に配置し、30分毎に5分撹拌するステップ;
・8μmの空隙率を有するフィルター(例えば、Whattamn 2V型)を通してフラスコの内容物を濾過するステップ;
・50mlの濾液をピペットで取り出し、この量を、乾燥し、かつ風袋を計量した結晶化皿に導入するステップ;
・60℃で45分、次に、130℃で90分加熱することにより、結晶化皿から水を蒸発させるステップ;
・乾燥器内で冷却し、乾燥後に得られたデンプンの重量(w固体抽出物)を計測するステップ。
【0033】
溶解度は、次のようにして計算する:
溶解度=[w固体抽出物×200×100]/[50×w試験サンプル]
試験サンプルの乾燥重量は、ISO規格1666:1996に従い算出する。
【0034】
本発明において有用な加工デンプンは、有利には、5を上回る、好ましくは10を上回る、さらに好ましくは15を上回る多分散指数を示す。
【0035】
本発明の加工デンプンは、20,000Daより大きい、好ましくは25,000Daより大きい、さらに好ましくは30,000Daより大きい数平均分子量を呈し得る。
【0036】
好ましくは、加工デンプンの溶解度は、55〜65%である。
【0037】
好ましくは、加工デンプンは、380,000Da〜1,400,000Daの重量平均分子量を呈する。
【0038】
本発明において有用な加工デンプンは、分子量が、1,000,000Daより大きいデンプン分子の5%超の質量分率、好ましくは、5〜25%の分率を呈することができる。
【0039】
好ましくは、加工デンプンは、加工デンプンの総重量に対して、以下を含む:
・分子量が、1,000,000Daより大きいデンプン分子の5〜25%の質量分率、
・分子量が、100,000Daより大きく、かつ1,000,000Da以下のデンプン分子の25〜50%の質量分率、
・分子量が、10,000Daより大きく、かつ100,000Da以下のデンプン分子の30〜50%の質量分率、
・分子量が、10,000Da以下のデンプン分子の20%未満の質量分率。
【0040】
本発明において有用な加工デンプンは、デキストリンであり得る。すなわち、これは、デキストリン化ステップによって取得することができる。
【0041】
デンプンを加工する多数の方法、特に、デキストリン化方法が開発されており、これらの方法は、乾燥若しくは非乾燥媒質において、化学物質の存在又は非存在下で、熱の作用を用いる。これらの方法の大部分は、回分式又は連続式にかかわらず、100℃を超える転換温度、並びに任意選択で、酸、アルカリ化剤、及び/又は酸化剤の存在を必要とする。
【0042】
デキストリンは、概して、以下の3つのカテゴリーに分類される:
・白色デキストリン、比較的高い量の化学物質、特に、酸の存在下、一般に120〜170℃の温度での、デンプンの転換により得られる、
・黄色デキストリン、化学物質、特に、酸の存在下、より高い温度、一般に170〜230℃での、デンプンの転換により得られる、
・「ブリティッシュガム(British Gum)」として知られるデキストリン、高温、一般に230℃超の温度での熱単独の作用によって得られる。
【0043】
デキストリン化過程では、様々な反応が起こる。それら各々の重要性は、主要パラメータ、例えば、化学物質の性質及び量、反応中の水分、温度プロフィール、さらには、より低い程度で、反応時間に応じて変動する。
【0044】
当業者は、一般に、様々な作用機構が、デンプンのデキストリン化のための反応中に起こりうることを考慮する。
【0045】
加水分解反応は、転換の開始時に重要であり、これは、50℃からの場合に相当する。酸及び依然として十分な量の水の存在に関連して、加水分解反応は、分子量を低下させる。
【0046】
凝縮又は逆転反応によって、一本鎖の第一級アルコールと、別の鎖の還元末端からα(1,6)結合が形成される。これは、150℃未満又は150℃近くの温度によって促進される。
【0047】
水を放出することなく、α(1,4)結合を切断しながら、α(1,6)結合を形成する「グルコシド交換」反応は、150℃より高い温度で優勢である。これは、より分枝した分子を得ることを可能にするため、デキストリン、特に黄色デキストリンの特性の発現に不可欠である。
【0048】
さらに、他の反応、例えば、炭素1及び6同士の内部「脱水」、又は還元末端と、C
2、C
3若しくはC
4ヒドロキシル基との反応によって起こる再結合反応なども起こる。
【0049】
これらの現象の相対的重要性により、デキストリンに特定の特性が付与される。
【0050】
白色デキストリンの転換において、優勢な機構は加水分解である。その結果、白色デキストリンは、高い分子量と低い水溶性、またはその逆の特性を呈する。黄色デキストリンの場合には、加水分解は重要で、前述したすべての機構が同等の重要性を有するが、これにより、分子量が低く、概して再分枝した生成物が得られ、これは、高い水溶性を呈する。
【0051】
従って、デキストリンの特性は、前述した各種の複雑な反応機構の競合により生じるものである。出願人は、特定の操作条件を用いた方法により、デンプンから、先験的に矛盾する特性、すなわち水溶性が高く、しかも高い分子量を呈する加工デンプンを製造することに成功した。特定の理論に傾倒するわけではないが、出願人は、この加工デンプンが、分子量を減少させる切断反応(加水分解反応)を制限しながら、分子量を増加する再分枝又は再結合反応を、通常より好ましく促進することを可能にする条件の選択によって得られると解釈する。極めて特殊な条件下で起こるこれらの反応及び機構の相対的割合によって、水溶性が高く、高重量の高分子構造が得られる。
【0052】
出願人は、特定の条件を用いて、顆粒状のデンプンに対し反応を実施することにより、この加工デンプンの取得に成功した。
【0053】
本発明の場合、本発明で有用な加工デンプン(デキストリン)を得るために、出願人は、デンプンを加工する方法を開発したが、これは、以下:
・少なくとも1種の粒状デンプンを反応器に導入するステップ;
・前記反応器に、強酸の中から選択される少なくとも1種の酸剤を導入するステップ;
・前記反応器中でデンプンを加工するステップ;
・先行ステップで加工したデンプンを回収するステップ
を含み、ここで、加工ステップの少なくとも一部を、以下:
・1〜3%のデンプンの水分;
・乾燥デンプン1kg当たり0.003〜0.020モル、好ましくは0.006〜0.015モル、さらに好ましくは0.008〜0.012モルで導入される酸の量;
・並びに、160〜215℃、好ましくは170〜210℃の反応器の温度
と共に実施する。
【0054】
上記方法の終了時に、加工デンプンを回収するが、これは、上に定義した分子量及び溶解度を呈する。得られた加工デンプンの構造は、概ね顆粒状である。
【0055】
加工ステップ(以後、「接触時間」と呼ぶ)の実施時間は、1〜10分、好ましくは3〜7分であるのが有利である。
【0056】
1〜3%の水分で加工を実施する時間は、少なくとも10秒、好ましくは少なくとも30秒、さらにまた好ましくは少なくとも1分である。
【0057】
デンプンの加工ステップ全体を通して、デンプンの含有率が1%を決して下回らないことが好ましい。
【0058】
高温条件下、かつ酸の存在下の乾燥状態で実施されるデンプンの様々な加工方法については、従来技術にすでに記載されている。
【0059】
例えば、欧州特許出願公開第710,670A1号明細書によれば、トウモロコシデンプンを、デンプンの重量に対し0.63重量%、すなわちデンプン1kg当たり約0.14モルのモル量の塩酸と一緒に導入する。工程中の温度は最大120℃であり、工程の終了時の水分は約11%である。重量平均分子量が低い、250,000Daをはるかに下回るデンプンが得られる。
【0060】
また、米国特許第6,191,116B1号明細書を挙げることもでき、これは加工により製造される完全に可用性のデキストリンを説明しており、温度170〜210℃で、デンプンの重量に対し0.25重量%、すなわちデンプンkg当たり約0.07モルのモル量の酸、好ましくは塩酸を用いて、無水デンプンを加工する。
【0061】
従来技術のこれらの方法では、本発明の加工デンプンを取得することはできない。
【0062】
本発明の工程中に導入されるデンプンは、顆粒状である。
【0063】
本発明の意味で、「粒状デンプン」とは、天然のデンプン又は、高等植物の貯蔵器官及び組織、特に、穀物種子、マメ科種子、ジャガイモ若しくはカッサバ塊茎、根、鱗茎、茎及び果実に天然に存在するデンプン粒に認められるものと類似した半結晶性構造を保持している加工デンプンを意味する。
【0064】
この半結晶状態は、主として、デンプンの2つの主要成分の1つであるアミノペクチン巨大分子によるものである。天然の状態では、デンプン粒は、15〜45%の間で変動する結晶度を呈するが、これは、主に、デンプンの植物起源、及びそれが受けた可能性のある処理に応じて変わる。粒状デンプンは、偏光の下に置くと、顕微鏡検査で、特徴的な黒い十字を示すが、これは、「マルターゼクロス(Maltese cross)」と呼ばれ、結晶性顆粒状態に典型的なものである。粒状デンプンのさらに詳細な説明については、特に、文献「Initiation a la chimie et a la physico−chimie macromoleculaires」[高分子化学及び物理化学入門]、第1版、2000年、13巻、41〜86頁、Groupe Francais d’Etudes et d’Applications des Polymeresにおける、S.Perezによる「Structure et morphologie du grain d’amidon」[デンプン粒の構造及び形態学]というタイトルの第II章を参照することができる。
【0065】
デンプン粒は、アミロース、アミロペクチン及び水を含む。粒状デンプンの水分は、標準的条件下で、デンプンの植物的性質に応じて変動する。これは、粒状デンプンが、固有の水分量を含むためであり、このデンプン中の水分は、一般に10〜20%である。例として、トウモロコシデンプンは、標準条件下で約13%の水分を呈し、ジャガイモ粉は、約18%の水分を呈する。従って、1%の水をトウモロコシデンプンに添加する場合、約14%の水分を呈するデンプンが得られる。
【0066】
本発明で有用なデンプンを加工する方法によれば、デンプンを加工するステップの少なくとも一部を、デンプン中の低水分、例えば、1〜3%の水分で実施する。デンプンの水分は、水/乾燥デンプンの重量比から成り、これはISO規格1666:1996に従って測定することができることを明記する。
【0067】
加工ステップは、強酸から選択される酸剤を用いて実施する。加工ステップにおいて、使用する酸剤を導入するステップは、酸性水溶液を用いて行うことができる。このようにして導入する酸性溶液の量は、少なく、有利には0〜10重量%、好ましくは0.5〜4重量%である。
【0068】
当業者であれば、強酸とは、pKa<−1.7を示す酸であると理解されよう。この酸剤は、特に、メタンスルホン酸、硫酸、塩酸若しくは硝酸、又はこれらの混合物の1つから選択することができる。有利には、酸剤は、メタンスルホン酸、硫酸、塩酸、又はこれらの混合物の少なくとも2つであり、硫酸が好ましい。本発明の方法では、酸剤の量は、乾燥デンプン1kgにつき0.003〜0.020モルであり、これは、塩酸の場合、酸の重量により、デンプンに対して、約0.01〜0.08%(乾量/乾量)の範囲内の量、また、硫酸又はメタンスルホン酸の場合には、酸の重量により、デンプンに対して、約0.03〜0.2%(乾量/乾量)の範囲内の量に相当する。
【0069】
酸剤を反応器に導入するステップは、デンプンを導入するステップと同時に実施することができ、例えば、デンプンと酸剤の混合物を導入することによって行ってよい。前記混合物は、それらを反応器に導入する前に、単純な機械的混合により調製することができる。このために用いることができるミキサーの例として、Loedige(登録商標)により販売されているCB20がある。一般に、酸は、酸性水溶液の形態で反応器に導入する。
【0070】
デンプンの水の総量は、デンプンに固有に存在する水の量と、反応器中へのデンプンに任意選択で添加される水の量から構成される。加工中の水分は、水の総量と無水デンプンの和に対する水の総量の重量比である。反応の開始時のデンプンの水分は、35%以下であるのが有利であり、好ましくは25%未満、より好ましくはさらには18%未満、さらには16%未満である。
【0071】
本発明で有用なデンプンを加工する方法は、あらゆるタイプの反応器、例えば、 回分反応器又は連続管形反応器において実施することができる。
【0072】
好ましくは、加工ステップは、当業者には公知の前述した筒状リニアターボリアクターにおいて実施する。このようなタイプの反応器は、例えば、Vomm(登録商標)により販売されており、欧州特許出願公開第710,670A1号明細書に詳しく記載されている。
【0073】
ターボリアクターは、ブレードを備える回転シャフトを含むが、その機能は、デンプンを連続的に運搬することである。デンプンは、ターボリアクターのヘッドから導入し、次に、ブレードを用い、反応器を通して運搬する。
【0074】
シャフトの回転時間を変更することにより、接触時間を選択することができる。また、デンプンをターボリアクターに少なくとも2回通過させることによって、これらの時間を延長することも可能である。
【0075】
前述したように、標準的条件下では、粒状デンプンの水分は10〜20%であるため、加工ステップを実施するために、デンプンから水の一部を除去する必要がある。従って、加工ステップ自体を実施する前に、デンプンの予備乾燥ステップを実施することができる。
【0076】
この乾燥ステップを実施するために、当業者には公知のあらゆる乾燥器、例えば、オーブン、流動層又は「ターボドライヤー」タイプの乾燥装置を用いてよい。ターボドライヤーは、前記ターボリアクター中に気流の循環をもたらすことによって前記ターボリアクター内に生み出されるが、本明細書では以後、この気流を「乾燥気流」と呼ぶ。ターボドライヤーは、上述の欧州特許出願公開第710,670A1号明細書にも詳細に記載されている。
【0077】
乾燥気流の空気は、好ましくは50〜250℃、好ましくは150〜220℃の温度を有する。気流の空気流量も変更することができる。乾燥気流は、デンプンの運搬方向、又はその逆方向に循環するように選択することができる。好ましくは、気流は、運搬方向に移動する。乾燥気流は、10〜1000Sm
3/時、例えば、30〜500Sm
3/時の流量を有しうる。しかし、上に記載した乾燥気流の条件は、加工ステップの少なくとも一部の間に、デンプン中の水分が1〜3%となるように選択される。
【0078】
有利には、反応器はターボリアクターであり、デンプンの乾燥及び加工は、乾燥気流を用いて同時に実施する。
【0079】
ターボリアクター中に酸剤を導入するステップは、デンプンを導入するステップと同時に実施することができ、例えば、デンプンと酸の混合物を導入することによって行う。前記混合は、ターボリアクターへのその導入前に、単純な機械的混合により実施することができる。このために用いることができる機械ミキサーの例として、Loedige(登録商標)により販売されているCB20がある。
【0080】
従って、特に、デンプンを加工する方法は、以下:
・少なくとも1種の粒状デンプンと、強酸から選択した酸剤を含む水溶液とを混合する
ステップ;
・先行ステップで形成された混合物を乾燥気流の存在下でターボリアクターに導入するステップ;
・前記ターボリアクター中でデンプンを加工するステップ;
・先行ステップで得られた加工デンプンを回収するステップ
を含み、ここで、加工ステップの少なくとも一部を、以下:
・1〜3%のデンプンの水分;
・乾燥デンプン1kg当たり0.003〜0.020モル、好ましくは0.006〜0.015モル、さらに好ましくは0.008〜0.012モルで導入される酸の量;
・並びに、160〜215℃、好ましくは170〜210℃の反応器の温度
と共に実施し、
加工ステップの持続時間は、有利には1〜10分、好ましくは3〜7分であり、加工ステップ中のデンプンの水分は、1%超である。
【0081】
加工工程の終了時に、塩基、例えば、水酸化ナトリウム又は炭酸ナトリウムを用いて、加工デンプンを中和することができる。
【0082】
本発明に有用な加工デンプンを得るための様々な方法を実施例に記載する。
【0083】
本発明に有用な加工デンプンは、水中、特に室温の水、多数の支持体に接着結合することができる溶液(以後、水性結合剤と呼ぶ)中での単純な混合によって、容易に形成することができるという利点を呈する。
【0084】
本発明の加工デンプンから得られる水性結合剤は、結合剤中のデンプンの量が高くても、比較的低い粘度を有するという利点がある。
【0085】
いずれかの特定の理論に傾倒するわけではないが、出願人は、これらの特性を本発明の加工デンプンの特定の溶解度及び分子量によって説明する。
【0086】
水性結合剤は、本発明の加工デンプンを0.01〜90重量%、例えば、1〜25重量%含む水性組成物であり得る。
【0087】
出願人企業は、これらの特に有利な特性が、加工デンプンを用いて、優れた特性を呈するコーティングカラーの製造を可能にすることをみいだした。
【0088】
加工デンプンに加えて、コーティングカラーは、水及び1種又は複数種の顔料も含む。
【0089】
本発明のコーティングカラーは、水に加えて、任意選択で、少量の少なくとも1種の別の溶媒、例えば、アルコールを含んでもよいが、カラーの溶媒は水から構成されるのが好ましい。
【0090】
コーティングカラーは、40〜85%、好ましくは50〜75%、より好ましくは55〜73%の固形分を呈するのが有利である。
【0091】
適切な顔料の例としては、粘土、例えば、カオリン、さらにまた焼成粘土、水和ケイ酸アルミニウム、ベントナイト、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム又は石膏、シリカ、特に沈降シリカ、二酸化チタン、アルミナ、アルミニウム三水和物、プラスチック顔料、例えば、ポリスチレンから成るもの、サチン白、タルク、硫酸バリウム、酸化亜鉛、並びにこれらの2つ以上の混合物が挙げられる。
【0092】
適切な1つ又は複数の顔料は、取得しようとするコーティングカラーの種類に応じて、当業者が容易に選択することができる。本発明に従いコーティングカラーを調製するために、顔料は、顔料の水中分散体の形態で添加することができる。
【0093】
本発明のコーティングカラーはまた、本発明の加工デンプン以外に、結合剤の役割を有する1種又は複数種の追加ポリマーを含んでもよい。この追加ポリマーは、スチレンポリマー、例えば、スチレン/ブタジエン、スチレン/アクリレート又はスチレン/ブタジエン/アクリレートコポリマー、(メト)アクリルタイプ若しくは(メト)アクリレートタイプのポリマー、鹸化若しくは非鹸化ポリ酢酸ビニル、本発明の加工デンプン以外のデンプン、並びにカゼイン、ゼラチン若しくはダイズタンパク質などのタンパク質結合剤から選択されるポリマーであってよい。追加ポリマーとして好ましいのは、スチレンポリマーから選択されるポリマーである。
【0094】
これらの追加ポリマーは、有利には、水中分散液を介して、組成物中に導入することができる。
【0095】
本発明のコーティングカラーは、顔料100部につき、1〜100部の加工デンプン及び0〜20部の追加ポリマーを含んでもよく、加工デンプンと追加ポリマーの部の和は3〜100部である。
【0096】
有利には、本コーティングカラーは、顔料100部当たり、1〜25部の加工デンプン及び0〜10部の追加ポリマーを含み、加工デンプンと追加ポリマーの部の和は4〜30部である。好ましくは、コーティングカラーは、顔料100部当たり、2〜15部の加工デンプン及び2〜7部の追加ポリマーを含み、加工デンプン及び追加ポリマーの部の和は6〜25部である。
【0097】
コーティングカラーは、一般に、pH調節剤、例えば、水酸化ナトリウムなどの塩基、又は塩酸などの酸を含む。
【0098】
カラーのpHは、一般に8〜10.5、好ましくは8.5〜10の範囲であるが、これは、pH調節剤の選択量を添加することにより調節する。
【0099】
コーティングカラーはまた、コーティングカラーに通常用いられている添加剤を含んでもよい。
【0100】
添加剤として、増粘剤を挙げることができる。適切な増粘剤の例としては、以下のような合成増粘剤又は天然由来の増粘剤が挙げられる:セルロースエーテル、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、若しくはメチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなどのアルギン酸塩、キサンタンゴム、カラゲナン及びグアーガムなどのガラクトマンナンス。
【0101】
用いることができる他の添加剤は、界面活性剤、例えば、カチオン性界面活性剤、アニオン、ノニオン若しくは両イオン性界面活性剤、並びにフッ素化界面活性剤である。
【0102】
硬化剤も用いることができ、例えば、活性ハロゲン化合物、ビニルスルホン化合物又はエポキシ化合物などがある。
【0103】
ポリリン酸塩又はポリカルボン酸塩などの分散剤も用いることができる。
【0104】
さらに本発明のコーティングカラーに含有させることができる添加剤の例として、流動性を改善する薬剤、潤滑剤、消泡剤、蛍光増白剤、例えば、ベンズイソチアゾロン及びイソチアゾロン化合物などの防腐剤、又は例えば、メタホウ酸ナトリウム、チオシアネート及びベンゾエートなどの殺生剤が挙げられる。
【0105】
挙げることができる他の添加剤としては、スルホン酸ナトリウム誘導体などの黄ばみ防止剤、紫外線吸収剤又は抗酸化剤がある。
【0106】
また、ケトン樹脂、アニオン性ラテックス若しくはグリオキサールから選択される耐水剤、及び/又はグリオキサールベースの樹脂、ポリエチレンオキシドなどの湿潤若しくは乾燥紙力増強剤、又はメラミン若しくは尿素−ホルムアルデヒド樹脂も用いることができる。
【0107】
また、架橋剤、インクの光沢を保持するための添加剤、又は耐油脂性のための添加剤も本発明のコーティングカラーに含有させることができる。
【0108】
当業者は、所望の特性を有するコーティングカラー及び紙を取得するために、添加剤を選択することができる。コーティングカラーは、顔料100部当たり、0〜5部の添加剤を含み得る。
【0109】
コーティングカラーは、組成物の様々な成分の単純な混合により調製することができる:従って、本発明は、顔料、加工デンプン、水及び任意選択の追加ポリマーを混合するステップ含むコーティングカラーを製造する方法に関し、ここで、加工デンプンは、予備煮沸ステップに付されることなく、カラーに導入される。
【0110】
本発明はまた、カラーを調製する方法であって、以下:
・水、顔料、本発明の加工デンプン及び追加ポリマー、さらには任意選択の添加剤を混合するステップと;
・コーティングカラーを回収するステップと
を含み、5〜50℃、好ましくは15〜40℃の範囲の温度で実施される、方法にも関する。
【0111】
好ましくは、顔料及び任意選択の追加ポリマーは、水中の分散液の形態で導入されるが、これによって、カラーの調製を容易にすることができる。特に、コーティングカラーは、以下のようにして製造することができる:顔料の分散液、水、任意選択で、追加ポリマー及び/又は添加剤の分散液を5〜50℃、好ましくは15〜40℃の温度、好ましくは室温で混合した後、本発明の加工デンプンを添加する。混合後、コーティング工程に用いることができるコーティングカラーが得られる。
【0112】
当業者は、コーティング工程中に組成物を満足できる様式で紙に塗布することを可能にする粘度を有するように、成分の各々の量を選択することができる。例えば、本発明のコーティングカラーは、500〜2000mPa.s、好ましくは600〜1200mPa.s、好ましくは600〜900mPa.sのブルックフィールド粘度、及び/又は40〜80mPa.sのハーキュレス粘度を呈する。ブルックフィールド粘度は、Brookfield商標を有する粘度計を用いて測定することができ、そのスピンドルの回転速度は、100回転/分である。ハーキュレス粘度は、「FF」ボブ(bob)を備えたHercules商標を有する粘度計を用いて測定することができ、その回転速度は、6000回転/分である。カラーの粘度は、主に、固形分、顔料の量並びにデンプン、追加ポリマー及び増粘剤の量と共に上昇する。本発明のコーティングカラーは、従来技術の特定のデンプンベースコーティングカラーより低い粘度を呈することができるという利点を呈し、これによって、同等の粘度のカラー中に、より多量の加工デンプンを使用することが可能になる。
【0113】
本発明の別の主題は、紙をコーティングする方法であり、これは、本発明のコーティングカラーで紙をコーティングする少なくとも1つのステップ、好ましくは1〜5つのステップ、並びにより好ましくは2〜3つのコーティングステップを含む。
【0114】
本発明のコーティング方法は、従来技術の特定のデンプンベースコーティングカラーより高いコーティング速度を用いることができるという利点を呈し、これにより、紙コーティング工程の生産高を増加することが可能になる。
【0115】
本発明によれば、紙という用語は、コーティング処理に付すことができるあらゆる種類の紙又は板紙を包含する。
【0116】
紙のコーティングは、製紙機械においてライン方式で、又は個別のコーティング機械上で実施することができる。
【0117】
所望の紙又は板紙の品質、並びにその最終用途に応じて、その片面のみ又は両面にコーティングすることができる。層の少なくとも1つが、本発明のコーティングカラーから形成されていれば、紙の各面を1回のみ、又は数回、片面若しくは両面にコーティングすることができる。例として、高品質のコート紙は、一般に、各面に3層を含む。1層を形成するために、まず初めに、被覆ステップを実施した後、乾燥ステップを実施する。
【0118】
本発明に従う紙被覆ステップは、当業者には公知のいずれかの被覆方法で実施することができる。これは、例えば、エアナイフコーティング、ペンシルコーティング、スムースロッドコーティング、ねじ切りロッドコーティング、スプレーコーティング、ナイフコーティング、カーテンコーティング、サイズプレスコーティング、薄膜コーティング、刷毛塗り、キャストコーティング、グラビアコーティング、ジェットアプリケータコーティング、ショートドュエルコーティング、スライドホッパーコーティング、フレキソグラフティーコーティング及びリバースロールコーティングによって実施することができる。
【0119】
被覆ステップの後、乾燥ステップによって層が得られる。この乾燥ステップは、空気乾燥、対流、接触又は照射、例えば、赤外線照射により実施することができる。
【0120】
任意選択で、コーティング方法は、カレンダリングステップを含んでもよく、これによってコート紙の光沢及び平滑度を高めることが可能になる。
【0121】
カレンダリングステップは、一般に、被覆又は乾燥した紙を、カレンダーを通して、又はローラ(一般に、エラストマーで被覆されている)間に通過させることによって実施する。よりよい結果を得るために、カレンダリングは、加熱ローラを用いて実施することができる。
【0122】
本発明のもう一つの主題は、本発明のコーティング方法から得られるコート紙である。
【0123】
本発明の紙は、優れた特性、特に、従来技術のデンプンベースのコーティングカラーから得られるコート紙のそれより優れた湿潤強さを呈する。
【0124】
本発明の方法によって得られる各層は、1〜30g/m
2、例えば、4〜25g/m
2、好ましくは6〜20g/m
2の量の材料を含むことができる。
【0125】
コート紙は、1〜5コーティング層、好ましくは2〜3コーティング層を含むことができ、そのうち少なくとも1層は、本発明のコーティングカラーから得られたものである。
【0126】
本発明の紙は、デンプンを基材とする層を有する従来技術のコート紙のそれと比較して、改善されたウェットピック耐性を呈し、この耐性は、実施例に記載する方法によれば、60m/秒超、有利には75m/秒超、好ましくは85m/秒超となりうる。
【0127】
その優れた特性により、本発明のコート紙は、例えば、オフセット、ヘリオグラビア、輪転グラビア、リトグラビア、インクジェット又はフレキソグラフィータイプ、好ましくはオフセットタイプの印刷などの印刷方法に有利に用いることができる。
【0128】
本発明を、実施例によって以下に詳しく説明するが、これらの実施例は、特許請求される本発明を何ら限定するものではない。
【実施例】
【0129】
デンプン製造の実施例
本発明に有用な加工デンプンの調製における出発材料として、天然トウモロコシデンプン、酸及び水を用いる。塩酸(HCl)、硫酸(H
2SO
4)又はメタンスルホン酸(CH
4O
3S)を用いて、デンプンを加工した。
【0130】
この加工デンプンは、以下のプロトコルに従うデキストリン化反応によって得られる。
【0131】
これら3つの出発材料のプレミックスの調製は、Loedige CB20タイプのミキサーで、トウモロコシデンプン(その相対水分は約13%)、前述した酸の1つ及び水を導入することによって実施する。このようにして形成したプレミックスの水分及び天然デンプン1キログラム当たりの酸のモル数を表1及び2に示し、これらの表に、実施した様々な試験についてまとめて示す。上記の値は、「%水」及び「n」という名称の列にそれぞれ記載する。
【0132】
続いて、プレミックスを重量基準の流量50kg/時で連続的に導入し、製造者Vomm製の筒状ライナーターボドライヤー(1000回転/分の速度で回転するブレード付き回転シャフトを有する)により、対流で循環させる。反応器の温度は、各試験について表1及び2に示す。反応器と同じ温度を有する気流をターボリアクターに導入し、反応器を通して、50Sm
3/時の流量でデンプンの運搬方向に移動させるが、これによって、反応中のデンプンを乾燥させることができる。また、反応の終了時に、ISO規格1666:1996に従い、デンプンの水分(Mc)も分析する。
【0133】
温度Tに調節したターボドライヤーの1回通過を実施することによって、試験1〜14を実施して、前記通過後に加工デンプンを回収する。デンプンを加工するステップの持続時間は、約4分である。試験1〜14について、表1にまとめて記載する。
【0134】
試験15〜22は、温度T1のターボドライヤーを通したデンプンの1回通過後、温度T2で2回目の通過を行うことにより実施する。デンプンを加工するステップの持続時間は、約8分である。試験15〜22について、表2にまとめて記載する。
【0135】
各試験について、加工デンプンの溶解度及びその重量平均分子量、その数平均分子量及び多分散指数(M
w/M
n)を表1及び2に記載する。
【0136】
読みやすくするために、本発明に有用な加工デンプンの場合、表の試験タイプ列に文字「I」を記載し、別の加工デンプンが関連する場合には、同じ列に「CP」を表示する。
【0137】
また、これらデンプンのいくつかについて、加工デンプンを構成するデンプン分子の質量分率も測定する。
【0138】
これらの質量分率は、実施例2、14、15、16、21及び22で得られた加工デンプン、さらにまた、Cargillによって販売される製品C
*ICOAT07520(重量平均分子230,000Da及び溶解度67%を呈する)について分析した。
【0139】
様々な試験から、加工ステップの際に特殊な条件を用いる本発明の方法は、これまで両立不可能であった特性:高い溶解度と、非常に高い重量平均分子量を兼ね備える加工デンプンの取得を可能にすることが明らかである。
【0140】
【表1】
【0141】
【表2】
【0142】
【表3】
【0143】
適用例
ここで、本発明を説明するために、以下の実施例において、加工デンプンをコーティングカラーの製造に用いる。
【0144】
使用する物質
コーティングカラーを製造するのに、以下の物質を用いた:
スチレン−ブタジエンラテックス
顔料1:炭酸カルシウム分散液
顔料2:カオリン分散液
合成増粘剤
蛍光増白剤
水
濃度10モルl
−1の水酸化ナトリウム水溶液
【0145】
コーティングカラーに用いた加工デンプンは、次の通りである:
本発明の加工デンプン:実施例2、7、14、15及び22のデンプン。
比較デンプン:C
*ICOAT07520、実施例16及び21。
【0146】
カラーの調製
加工デンプンを含まない基準カラー(対照)は、10部のラテックスを含む。このカラーを調製するために、Raineri電動デフロキュレータを用いて、顔料分散液をステンレス容器中で撹拌する。10分撹拌した後、ラテックスを容器中に導入する。30分後、その他の成分、すなわち、増粘剤、蛍光増白剤、水及び水酸化ナトリウム水溶液も順次容器に導入するが、これら成分の各々は、前のものに5分の間隔おいて添加する。水酸化ナトリウムの量は、カラーのpH9を得るように調節する。
【0147】
次に、得られたカラーのブルックフィールド及びハーキュレス粘度を、前述した方法に従って測定する。
【0148】
本発明のカラー(I)及び比較カラー(CP)は、4部のラテックスが、7部の加工デンプンで置換されている点で、基準カラーと異なる。
【0149】
これらのカラーは、ラテックスの導入から10分後に加工デンプンを導入し、加工デンプンの導入から20分後に他の成分を導入する以外は、基準カラーと同じ方法で調製する。
【0150】
カラーの組成を以下の表4に示す。
【0151】
紙の調製
Dixonにより製造されたHelicoaterパイロットプラントを使用して、グラメジ80g/m
2の原紙に、7〜8g/m
2のカラー層でコーティングを施したが、機械の速度は、カラーのレオロジーに合わせて調節した。各々2000Wの14個のランプを用いて赤外線乾燥を実施し、乾燥時間は30秒である。
【0152】
製造者ABK製のシート−シートカレンダーを用い、60〜65℃、圧力150daN/cmで2回の通過により、紙をカレンダリングした。
【0153】
得られた紙の特徴
カレンダリング後に得られた紙の光沢をTAPPI規格T480に従い測定した。
【0154】
サイズ340×55mmの紙試験サンプルに対して、IGT3803インクを用いて、ブランケットで被覆した50mmロールを備えるIGT AIC2−5装置を用いて、ドライピック測定を決定した。
【0155】
紙の上に移動する前に、インクをロール上に付着させる。ロールに625Nの圧力を加えることによって移動を実施し、その際、サンプルホルダーの速度を一定に加速させ、サンプルの末端で最終速度4m/秒に達するようにする。
【0156】
サンプルホルダーの速度が0.2m/秒で一定であり、水の移動がインクの移動の前に実施される以外は、同じプロトコルに従い、ウェットピックを測定する。この移動は、最初の38mmスクリーンロールを用い、また、このロールに400Nの圧力を加えることによって実施する。
【0157】
製造したコーティングカラー及びこれらのカラーから得られる紙の特徴を以下の表に詳しく記載する。
【0158】
【表4】
【0159】
試験から、本発明の加工デンプン2、7、14、15及び22により、デンプンを含まない基準コーティングカラーに近い速度で塗布することができるコーティングカラーが得られることがわかった。これらのカラーには、この基準カラーと同じ速度で塗布することができるものもある。また、これは、本発明のコーティングカラーのブルックフィールド粘度によっても証明され、この粘土は、基準カラーの粘度ほど低くないが、比較カラーの粘度と比較すると低い。
【0160】
また、本発明のコート紙の光沢は、比較コート紙のそれより高い。
【0161】
どの紙も、ドライピック耐性は同様である。しかし、ウェットピック耐性は、基準コート紙に近いか、実際に同じレベルに達していることから、大幅に改善している。これは、本発明の組成物から得られる紙を、欧州特許出願公開第1,964,969A1号明細書の教示による組成物16及び21から得られるものと比較した場合、特に言えることである。