(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
プロピレンホモポリマー50重量%〜85重量%、プロピレンブロックコポリマー15重量%〜50重量%、およびβ核形成剤50〜10000ppmを含有することを特徴とする、請求項1に記載のフィルム。
ポリ二塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエチレンイミン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、シリケートバインダー、ハロゲン化ポリマー群からのポリマー、およびそれらのブレンドをベースとするバインダーによって形成される群から選択される最終固結バインダーの施与量が、0.5g/m2〜20g/m2であることを特徴とする、請求項4または請求項5に記載のフィルム。
【背景技術】
【0002】
現代のデバイスは、場所に関係なく使用することができるバッテリーまたは充電式バッテリーなどのエネルギー源を必要とする。バッテリーは、処分しなければならないという欠点を抱えている。その結果、主電源(mains electrical supply)に接続された充電ユニットを用いて、繰り返し充電され得る充電式バッテリー(二次電池)がますます使用されるようになっている。例として、正しく使用した場合、従来のニッケル−カドミウム充電式バッテリー(NiCd充電式バッテリー)は、充電サイクル約1000回に及ぶ耐用寿命を有し得る。
【0003】
高エネルギーおよび高性能システムによって今では、リチウム、リチウムイオン、リチウム−ポリマー、およびアルカリ土類金属バッテリーを充電式バッテリーとして使用することが増えている。
【0004】
バッテリーおよび充電式バッテリーは常に、電解質溶液に浸漬している2つの電極、およびアノードとカソードとを分離するセパレータからなる。様々な充電式バッテリーの種類は、使用される電極材料、使用される電解質、およびセパレータにおいて異なる。バッテリーセパレータのタスクは、バッテリー内でカソードをアノードから物理的に分離しておくか、または充電式バッテリー内でカソードをアノードから物理的に分離しておくことである。セパレータは、内部短絡を防止するために、2つの電極を互いに電気的に絶縁する隔膜でなければならない。しかしながら同時に、セパレータは、電気化学反応が電池内で起こり得るように、イオンに対しては透過性でなければならない。
【0005】
内部抵抗が可能な限り低く、高いパッキング密度を得ることができるように、バッテリーセパレータは薄くなければならない。これは、良好な動作特性および高いキャパシタンスを保証するための唯一の方法である。加えて、セパレータは、電解質を吸収する必要があり、電池が満たされた場合には、ガス交換を保証する必要がある。織物などが以前は使用されたが、この機能は今では主に、不織布および膜などの微細有孔材料によって果たされている。
【0006】
リチウムバッテリーでは、短絡の発生が問題である。短絡または不完全な冷却システムの結果生ずる熱負荷下では、リチウムイオンバッテリー内のバッテリーセパレータが溶融してしまい、壊滅的な結果を伴う短絡をもたらす恐れがある。リチウムバッテリーが機械的な損傷を受けたり、または充電ユニット内の不良エレクトロニクスによって過充電された場合には、類似のリスクがある。
【0007】
リチウムイオンバッテリーの安全性を向上させるために過去には、シャットダウンセパレータ(シャットダウン膜)が開発された。そのような特殊なセパレータは、リチウムの融点または着火点よりもかなり低い所与の温度で、その細孔を非常に迅速に閉鎖する。この手法では、リチウムバッテリー内における短絡の破局的結果は大部分回避される。
【0008】
しかしながら同時に、セパレータは、高い融点を有する材料によって提供される高い機械的強度を有することも必要である。したがって、例えば、ポリプロピレン膜が、その良好な貫入抵抗によって有利であるが、ポリプロピレンの融点は、リチウムの引火点(170℃)に非常に近い約164℃である。
【0009】
リチウム技術に基づく高エネルギーバッテリーは、可能な限り大きな電気エネルギーを最小可能体積で利用することができる必要のある用途で展開されている。これは例えば、電気自動車、他にも、最大エネルギー密度が低重量で必要な他の移動用途、例えば、航空旅行および宇宙旅行において使用するためのトラクションバッテリーでの場合である。現在、350〜400Wh/Lまたは150〜200Wh/kgのエネルギー密度が、高エネルギーバッテリーでは標的化されている。特殊な電極材料(例えば、Li−CoO
2)を使用し、ハウジング材料を経済的に使用することによって、これらの高エネルギー密度は得られる。したがって、パウチセル型(pouch cell type)のLiバッテリーでは、個々のバッテリーユニットは現在、フィルムのみによって互いに分離されている。
【0010】
この理由から、内部短絡および過熱の場合には、爆発様燃焼反応が、隣接する電池にまで広がるので、そのような電池内のセパレータに対する要求はさらに大きくなっている。
【0011】
そのような用途のためのセパレータ材料は、以下の特性を有さなければならない:小さい比体積を保証するために、かつ内部抵抗を低くしておくために、可能な限り薄くなければならない。そのような低い内部抵抗を保証するために、セパレータが高い多孔率を有することも重要である。さらに、低い比重量を有するように、軽くなければならず、かつ完全に安全でなければならない。これは、過熱または機械的損傷の場合には、バッテリーの燃焼または爆発をもたらすさらなる化学的反応が回避されるように、アノードおよびカソードが常時、分離したままであることを意味する。
【0012】
従来技術では、ポリプロピレン膜と、より低い融点を有する材料、例えば、ポリエチレンから構成される追加の層との組合せが既知である。短絡または他の外部影響によって過熱された場合には、ポリエチレン層は溶融して、多孔性ポリプロピレン層の細孔を閉鎖し(シャットダウン機能)、その結果、バッテリー内でのイオンの流れ、したがって電流の流れが遮断される。さらに、温度がさらに上昇すると(160℃超)、ポリプロピレン層も溶融して、アノードおよびカソードの接触による内部短絡、ならびにその結果として起こる問題、例えば、自己発火および爆発はもはや防止することができない。さらに、ポリエチレン層とポリプロピレンとの接着に問題があるので、これらの層は、積層によってしか組み合わせることができないか、またはこれら2種の群のうちの特定のポリマーしか、同時押出することができない。高エネルギー用途におけるそのようなセパレータは、安全性に関して不十分である。シャットダウン機能を持つこの種のフィルムは、WO2010048395号(特許文献1)に記載されている。
【0013】
米国特許出願公開第2011171523号(特許文献2)には、溶剤法によって得られる耐熱性セパレータが記載されている。その方法では、第1のステップで、無機粒子(チョーク、シリケート、または酸化アルミニウム)を原料(UHMW−PE)に、オイルと一緒に配合する。次いで、このブレンドを金型を通して押し出して、プレフィルム(pre−film)を形成し、細孔を作成するために、溶剤を使用して、オイルをプレフィルムから除去することができ、次いでこのフィルムを延伸して、セパレータを形成することができる。したがって、セパレータ中の無機粒子によって、バッテリー内のアノードおよびカソードを激しい過熱下でも分離しておくことが保証される。
【0014】
しかしながら、その方法は、粒子がセパレータの機械的特性を弱化させ、加えて、粒子の凝集によって、傷および不規則な細孔構造が生じ得るという欠点を抱えている。
【0015】
米国特許出願公開第2007020525号(特許文献3)には、ポリマーをベースとするバインダーと共に無機粒子を加工することによって得られるセラミックセパレータが記載されている。このセパレータによっても、激しく過熱されても、バッテリー内のアノードおよびカソードを分離したままにすることが保証される。しかしながら、製造プロセスに費用がかかり、セパレータの機械的特性は不十分である。
【0016】
独国特許第19838800号(特許文献4)は、積層構造を有する電気的セパレータを提案しており、この電気的セパレータは、多数の開口部を備え、その上にコーティングを有する平坦で柔軟な基材を含む。基材の材料は、金属、合金、プラスチック、ガラス、および炭素繊維、またはそのような材料の組合せから選択され、コーティングは、導電性ではない平坦で連続する多孔性セラミックコーティングである。セラミックコーティングを使用することで、耐熱性および耐化学薬品性は約束される。しかしながら、支持材料によって、その種のセパレータは非常に厚く、製造に問題があることが判明している。それというのも、傷のない広範囲のコーティングは、相当な技術的経費を用いて初めて生成することができるためである。
【0017】
独国特許第10208277号(特許文献5)では、セパレータの重量および厚さを、不織ポリマーを使用することによって低減しているが、この場合も、その明細書に記載されているセパレータの実施形態は、殊にその用途では、可能な限り大きな細孔をセパレータ内で得ることが特に強調されているので、リチウム高エネルギーバッテリーについてセパレータに課されている要件のすべては満たしていない。しかしながら、5μmまでのその明細書において記載されている粒子を用いると、この場合、数個の粒子しか上下に位置しないので、10〜40μm厚のセパレータを製造することはできない。したがって、セパレータは必然的に、高い傷および欠陥密度(flaw and defect density)(例えば、穴、クラックなど)を有する。
【0018】
WO2005038946号(特許文献6)には、織物または不織ポリマー繊維から形成された支持材を、この支持材の上および間にあり、接着剤を使用して支持材と結合されている多孔性無機セラミック層と共に含む耐熱性セパレータが記載されている。この場合も、コーティングが傷を有さないことを保証することと、その結果生じる厚さおよび重量が問題となる。
【0019】
コーティング層の接着が極めて不十分であり、したがって、下塗剤を使用する必要があることが既知であるので、延伸ポリプロピレンフィルムを無機材料でコーティングすることは、現在まで、多くは実施されていない。この問題は、例えば、米国特許第4794136号(特許文献7)に記載されている。この場合、メラミン/アクリレート下塗剤を、ポリオレフィンフィルムとPVDCコーティングとの間の下塗剤として使用することが記載されている。しかしながら、下塗剤は、細孔を閉鎖する傾向を有するので、抵抗が不必要に増大する。バッテリーを調製する間のコーティングの剥離によって、追加の安全性リスクが生じる。さらに、とりわけ電解質の導電性にマイナスの作用を有さないように、下塗剤は、Liバッテリー内で使用される有機電解質に不溶性でなければならない。
【0020】
意外にも、特殊な表面構造を有するポリプロピレンセパレータは、下塗剤を使用しなくても、さらに加工するために十分な接着を水性無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングに対して示すことが発見された。下塗剤を使用せずに、複数のコーティングに対する接着も保証される。
【0021】
ポリオレフィンセパレータは現在、様々な方法、すなわち、充填剤法;冷延伸、抽出法、およびβ微結晶法を使用して製造することができる。これらの方法における基本的な相違は、細孔を生じさせる多様な機構にある。
【0022】
例として、非常に大量の充填剤を加えることによって、多孔性フィルムを製造することができる。充填剤とポリマーマトリックスとの不適合性によって、延伸の間に細孔を作成する。しかしながら、高い多孔率を得るために必要な40重量%までの大量の充填剤は、高い延伸比にもかかわらず、機械的強度に有害な作用を有するので、そのような製品は、高エネルギー電池においてセパレータとして使用することはできない。
【0023】
いわゆる「抽出法」では、原理的には、適切な溶剤を使用して、ポリマーマトリックスから成分を放出することによって、細孔を作成する。添加剤および適切な溶剤の性質において異なる数多くの変形形態が開発されている。有機添加剤および無機添加剤の両方が抽出され得る。この種の抽出は、フィルムを製造する際の最後のプロセスステップとして実施され得るか、または後続の延伸ステップと組み合わされ得る。この場合の欠点は、生態的および経済的に危険な抽出ステップである。
【0024】
さらに以前のものだが、成功している方法は、非常に低温でポリマーマトリックスを延伸することに基づく(冷延伸)。この目的のために、フィルムを初めに押し出し、次いで、数時間にわたって焼戻して、その結晶質成分を増大させる。次のプロセスステップで、多数の傷を非常に小さなマイクロクラックの形態で作成するために、フィルムを縦方向に非常に低温で延伸する。次いで、傷を有するこの事前延伸フィルムを同じ方向に、より高温で、かつより高い係数で再び延伸するが;このことによって欠陥が拡大して、ネットワーク様構造を形成する細孔になる。これらのフィルムは、高い多孔率と、良好な機械的強度とを、それらが延伸される方向、一般的には縦方向では兼ね備えている。しかしながら、横方向でのその機械的強度はまだ不十分であるので、その貫入抵抗は不十分であり、かつそれらは、縦方向に極めて分裂しやすくなっている。全体として、この方法はコスト集約的である。
【0025】
多孔性フィルムを製造するための他の既知の方法は、β核形成剤をポリプロピレンと混合することに基づく。β核形成剤によって、溶融物が冷却するにつれて、ポリプロピレンは高濃度の「β微結晶」を形成する。後続の縦延伸の間に、β相はポリプロピレンのα変態へと変換される。これらの異なる結晶形は異なる密度を有するので、多数の顕微鏡的傷も、このステップで先ず作成され、それらが、後続の延伸によって裂けて細孔になる。この方法によって製造されたフィルムは高い多孔率および良好な機械的強度を縦方向および横方向に有し、それらは非常に対費用効果が高い。これらのフィルムは、本明細書において下記では、多孔性βフィルムと称される。多孔率を向上させるために、横延伸の前に、縦方向でのより高度な配向を導入することができる。WO2010145770号(特許文献8)は、シャットダウン機能を備えた二軸配向された単層もしくは多層微多孔性フィルムを記載しており、それの微多孔性は、延伸の時のβ−微結晶の変換によって生成され、そしてポリプロピレンホモポリマーおよびポリエチレンから形成された少なくとも一つのシャットダウン層を含み、およびほんのT>135℃での過熱の時にその多孔性を失う、すなわちアノードからカソードへのイオンの流れが中断される。
【発明を実施するための形態】
【0029】
したがって、本発明は、
(I) 少なくとも1つの多孔性層を含み、この層が少なくとも1種のプロピレンポリマーおよびポリエチレンを含有する、二軸配向された単層または多層多孔性フィルムであって
(II) 多孔性フィルムの多孔率が30%〜80%であり;および
(III)多孔性フィルムの透過度が1000秒未満(ガーレー数)であり;
(IV)多孔性フィルムが、無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングを含み;および
(V)コーティングされた多孔性フィルムが1500秒未満のガーレー数を有し、および
(VI)コーティングされた多孔性フィルムが、それを140℃を超える温度に5分間加熱した時に、6000秒超のガーレー数を有する、
フィルムに関する。
【0030】
セパレータフィルム
本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムをベースとする無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングされたセパレータフィルムは、ポリプロピレンおよびポリエチレンから形成され(BOPP)、非常に高い多孔率および1000秒未満の高い透過度(ガーレー数)を有する多孔性の二軸配向されたフィルムを含む。そのようなBOPPフィルムをセパレータフィルムとして使用することは既に知られており、好ましくは、β核形成剤を含有する。好ましくは、フィルムを延伸する際のβ結晶質ポリプロピレンの変換によって、本発明のフィルムの多孔性がもたらされ、少なくとも1種のβ核形成剤がフィルム中に存在する。
【0031】
この種のBOPPフィルムはまた、二重層コンデンサ(DLC)においてセパレータとして使用するために特に適している。
【0032】
縦延伸の後に、コーティングのために本発明によって使用されるフィルムは、縦方向に中程度の配向を有し、その後に、横方向に配向されるので、BOPPフィルムとして、それらは高い多孔率および非常に高い透過度を有することとなり、かつ、縦方向への分裂傾向は緩和される。この場合、横延伸を非常に遅い延伸速度で、好ましくは、40%/秒未満の速度で実施することが有利である。
【0033】
コーティングとして本発明によって使用されるフィルムは、単層フィルムとしてまたは多層フィルムとして構成され得る。ポリプロピレンポリマーおよびβ核形成剤を押出機内で溶融させ、スロットダイを通して引取ロール上に押し出すそのような単層または多層多孔性ポリプロピレンフィルムの製造は既に、独国特許第102010018374号(特許文献9)に詳述されている。溶融フィルムは、β微結晶を形成しながら引取ロール上で冷却して、固化する。次に、このフィルムを縦方向に延伸し、その直後に、横方向に延伸する。
【0034】
すぐに横延伸する代わりに、コーティングのために本発明によって使用されるフィルムを、縦方向に延伸した後に巻き取ることもでき、後で、第2の横延伸手順で巻き出し、横延伸温度まで加熱し、横方向に延伸することもでき、その際、縦延伸手順のための延伸速度は、横延伸手順の延伸速度よりも速いか、または遅い。
【0035】
本発明によるコーティングのために使用される多孔性BOPPフィルムは、プロピレンポリマー、ポリエチレンポリマーおよび/またはプロピレンブロックコポリマーから構成され、β核形成剤を含有する少なくとも1つの多孔性層を含む。必要な場合には、多孔性および他の必要な特性を損なわない限り、他のポリオレフィンが、そこに少量含有されてよい。さらに、必要な場合には、微孔性層はまた、それぞれ有効量の通常の添加剤、例えば、安定剤および/または中和剤を含有してよい。
【0036】
発明の目的のためには、シャットダウン層中の好ましいポリエチレンはHDPEまたはMDPEである。HDPEおよびMDPEなどのこれらのポリエチレンは一般的にポリプロピレンと相容性ではなく、そしてポリプロピレンとブレンドした時には、これらは別個の相を形成する。別個の相の存在は、DSC測定において、例えば一般的に115〜140℃の範囲内のポリエチレンの溶融温度の領域での別個の溶融ピークの存在によって、明らかになる。HDPEは、一般的に、DIN53728に従い測定して0.1g/10分超から50g/10分、好ましくは0.6〜20g/10分のMFI(50N/190℃)、およびDIN53728のパート4またはISO1191に従い測定して、100〜450cm
3/g、好ましくは120〜280cm
3/gの粘度数を有する。結晶化度は一般的に35%〜80%、好ましくは50%〜80%である。DIN53479のメゾッドAまたはISO1183に従い23℃で測定した密度は、好ましくは、>0.94〜0.97g/cm
3の範囲である。DSCによって測定した融点(融解曲線の最大値、加熱速度20℃/分)は、120℃と145℃との間、好ましくは125℃と140℃との間である。一般的に好適なMDPEは、DIN53735に従い測定して、0.1g/10分超から50g/10分、好ましくは0.6〜20g/10分のMFI(50N/190℃)を有する。DIN53479のメゾッドAまたはISO1183に従い23℃で測定した密度は、>0.925〜0.94g/cm
3の範囲である。DSCによって測定した融点(融解曲線の最大値、加熱速度20℃/分)は、115℃と130℃との間、好ましくは120〜125℃の間である。
【0037】
ポリエチレンが狭い融解範囲を有することも本発明にとって有利である。これは、ポリエチレンのDSCにおいて、融解範囲の始点及び融解範囲の終点が、最大でも10K、好ましくは3〜8K離れていることを意味する。これに関連して、補外始点が融解範囲の始点として取られ、そして相応して融解範囲の終点は、融解曲線の補外終点であると取られる(加熱速度10K/分)。
【0038】
シャットダウン機能を形成するポリエチレンは、好ましくは、本発明に従い使用されるコーティングのための多孔性BOPPフィルム中に、存在するプロピレンポリマーおよび/または存在するプロピレンブロックコポリマーに対して少なくとも5重量%、特に好ましくは少なくとも10重量%の量で存在する。
【0039】
適切なプロピレンホモポリマーはプロピレン単位98重量%〜100重量%、好ましくは99重量%〜100重量%を含有し、150℃以上、好ましくは155℃〜170℃の融点(DSC)および一般的に、230℃および2.16kgの力で0.5〜10g/10分、好ましくは2〜8g/10分のメルトフローインデックス(DIN 53735)を有する。層に好ましいプロピレンホモポリマーは、15重量%未満、好ましくは1重量%〜10重量%のn−ヘプタン可溶性画分を有するアイソタクチックプロピレンホモポリマーである。少なくとも96%、好ましくは97〜99%の高い鎖アイソタクチシティを有するアイソタクチックプロピレンホモポリマー(
13C−NMR;トリアッド(triad)法)も有利に使用することができる。これらの原料は、当技術分野ではHIPP(高アイソタクチックポリプロピレン)またはHCPP(高結晶質ポリプロピレン)ポリマーとして知られており、それらのポリマー鎖の高度な立体規則性、比較的高い結晶化度、および比較的高い融点(90%〜96%未満の
13C−NMRアイソタクチシティを有し、使用することもできるプロピレンポリマーと比較した場合に)によって識別される。
【0040】
“融点”および“融解範囲”のパラメータはDSC測定によって決定され、そして測定方法についてのセクションに記載されている通りDSC曲線から読み取られる。
【0041】
適切な場合には、多孔性層は、特性、殊に多孔率および機械的強度を損なわない限り、他のポリオレフィンを追加的に含有することができる。他のポリオレフィンの例は、20重量%以下のエチレン含有率を有するエチレンおよびプロピレンのランダムコポリマー、20重量%以下のオレフィン含有率を有するプロピレンとC
4〜C
8オレフィンとのランダムコポリマー、ならびに10重量%以下のエチレン含有率を有し、かつ15重量%以下のブチレン含有率を有するプロピレン、エチレン、およびブチレンのターポリマーである。
【0042】
好ましい実施形態の一つでは、多孔性層は、ポリエチレンポリマー、プロピレンホモポリマーおよび/またはプロピレンブロックコポリマーならびにβ核形成剤、さらには適切な場合には、安定剤および中和剤からのみ構成されている。この場合もまた、少なくとも5重量%、特に好ましくは少なくとも10重量%のポリエチレンが存在する。
【0043】
プロピレンブロックコポリマーは、140℃超から170℃、好ましくは145℃〜165℃、特に150℃〜160℃の融点、および120℃超で始まる融点範囲、好ましくは125〜140℃の範囲の融点範囲を有する。コモノマー含有率、好ましくはエチレン含有率は、1重量%〜20重量%の範囲、例えば好ましくは1重量%〜10重量%の範囲である。プロピレンブロックコポリマーのメルトフローインデックスは、一般的に1〜20g/10分の範囲、好ましくは1〜10g/10分の範囲である。
【0044】
好ましい実施形態の一つでは、本発明によって使用されるコーティングのための多孔性BOPPフィルムは、いわゆるメタロセン触媒を用いて製造されるポリオレフィンを全く含有しない。
【0045】
基本的に、多孔性層のためのβ核形成剤は、ポリプロピレン溶融物を冷却する際にポリプロピレンのβ結晶の形成を促進する任意の既知の添加剤であってよい。この種のβ核形成剤およびポリプロピレンマトリックス中におけるそれらの作用機序は、当技術分野でそれ自体知られており、以下で詳述することとする。
【0046】
ポリプロピレンは、様々な結晶相を有することが既知である。溶融物を冷却する際に、通常は、α結晶質PP形態が主に形成され;これは、155〜170℃、好ましくは158〜162℃の範囲の融点を有する。特異的な温度プロファイルを使用することによって、溶融物を冷却する際に、少量のβ結晶相を生成することができ、これは、単斜晶系α変態とは対照的に、145〜152℃、好ましくは148〜150℃のかなり低下した融点を有する。ポリプロピレンを冷却する際に増大した画分のβ変態を生成する添加剤、例えば、γ−キナクリドン、ジヒドロキナクリジン、またはフタル酸のカルシウム塩が当技術分野で既知である。
【0047】
本発明の目的のために、好ましくは、プロピレンホモポリマー溶融物を冷却する際に、40〜95%、好ましくは50〜85%(DSC)のβ画分を生成する高度に活性なβ核形成剤を使用する。β画分は、冷却したプロピレンホモポリマー溶融物のDSCから決定する。好ましくは例えば、本明細書で参照される独国特許第3610644号(特許文献10)に記載されているとおりの炭酸カルシウムおよび有機二炭酸から形成される二成分β核形成系を使用する。これも本明細書で参照される独国特許第4420989号(特許文献11)に記載されているとおりのピメリン酸カルシウムまたはスベリン酸カルシウムなどの二炭酸のカルシウム塩が特に好ましい。加えて、欧州特許第0557721号(特許文献12)に記載されているジカルボキサミド、殊にN,N−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミドが、適切なβ核形成剤である。
【0048】
β核形成剤に加えて、高い画分のβ結晶質ポリプロピレンを得るために、未延伸溶融フィルムが冷却している間、一定の温度範囲およびそれらの温度での滞留時間を維持することも重要である。溶融フィルムを好ましくは、60℃〜140℃、殊に80℃〜130℃、例えば85℃〜128℃の温度で冷却する。β微結晶の成長は、遅い冷却によっても促進されるので、選択された温度での必要な滞留時間が十分に長くなるように、引取速度、すなわち、溶融フィルムが第1の冷却ロール上を通過する速度を遅くすべきである。引取速度は好ましくは、25m/分未満、特に1〜20m/分である。滞留時間は一般的に、20〜300秒、好ましくは30〜200秒である。
【0049】
シャットダウン相I及び多孔性相IIは、それぞれ、更なる成分として追加的なプロピレンブロックコポリマーを含むこともできる。このタイプのプロピレンブロックコポリマーは、140℃超から170℃、好ましくは150℃〜165℃、特に150℃〜160℃の融点、および120℃超で始まる融解範囲、好ましくは125〜140℃の範囲の融解範囲を有する。コモノマー、好ましくはエチレンの量は、例えば1重量%〜20重量%の範囲、好ましくは1重量%〜10重量%の範囲である。このプロピレンブロックコポリマーのメルトフローインデックスは一般的には1〜20g/10分、好ましくは1〜10g/分の範囲である。
【0050】
必要に応じて、シャットダウン相Iおよび多孔性相IIの両方が、プロピレンホモポリマーおよびプロピレンブロックコポリマーの他に、他のポリオレフィンを含むことができる。但し、これは、この他のポリオレフィンが、シャットダウン機能の多孔率および機械的強度にマイナスの影響を及ぼさない限りである。他のポリオレフィンの例は、エチレン含有率が20重量%以下のエチレンとプロピレンとのランダムコポリマー、オレフィン含有率が20重量%以下のプロピレンとC
4〜C
8オレフィンとのランダムコポリマー、エチレン含有率が10重量%以下でブチレン含有率が15重量%以下のプロピレン、エチレンおよびブチレンのターポリマー、またはLDPE、VLDPEもしくはLLDPEなどの他のポリエチレンである。
【0051】
本発明のフィルムの特に好ましい実施形態の一つは、ピメリン酸カルシウムまたはスベリン酸カルシウム50〜10000ppm、好ましくは50〜5000ppm、殊に50〜2000ppmを多孔性層におけるβ核形成剤として含有する。
【0052】
多孔性フィルムは、単層または多層であってよい。フィルムの厚さは一般的に、10〜100μm、好ましくは15〜60μm、例えば15〜40μmの範囲である。多孔性フィルムの表面に、電解質の充填を改善するために、コロナ処理、火炎処理、またはプラズマ処理を施すことができる。
【0053】
多層実施形態の一つでは、フィルムは、上記のとおりに構成されているさらなる多孔性層を含み、その場合、様々な多孔性層の組成は、必ずしも同じである必要はない。多層実施形態では、個々の層の厚さは一般的に、2〜50μmである。
【0054】
コーティングされる多孔性フィルムの密度は一般的に、0.1〜0.6g/cm
3、好ましくは0.2〜0.5g/cm
3の範囲である。
【0055】
コーティングされるフィルムの泡立ち点は、350nm超であるべきではなく、好ましくは20〜350nm、殊に40〜300nm、特に好ましくは50〜300nmの範囲であるべきであり、平均細孔直径は、50〜100nmの範囲、好ましくは60〜80nmの範囲であるべきである。
【0056】
コーティングされる多孔性フィルムの多孔率は一般的に、30%〜80%、好ましくは50%〜70%の範囲である。
【0057】
コーティングされる多孔性フィルム、殊に多孔性BOPPフィルムは、好ましくは0.3μm〜6μm、特に好ましくは0.5〜5μm、殊に0.5〜3.5μmである規定の粗さRz(ISO4287、粗さ測定、1ライン、振幅パラメーター粗さプロファイル、Leica DCM3D装置、ガウスフィルター、0.25mm)を有する。
【0058】
セラミックコーティング
本発明の二軸配向された単層または多層多孔性フィルムは、セラミックコーティングを表面の少なくとも一方の面に含む。
【0060】
本発明の無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングは、無機粒子も意味すると理解すべきセラミック粒子を含む。D50値として表される粒径は、0.05〜15μmの範囲、好ましくは0.1〜10μmの範囲である。正確な粒径の選択は、無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングの厚さに依存している。この場合、D50値は、無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングの厚さの50%以下、好ましくは無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングの厚さの33%以下、殊に無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングの厚さの25%以下であるべきであることが示されている。本発明の特に好ましい実施形態の一つでは、D90値は、無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングの厚さの50%以下、好ましくは無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングの厚さの33%以下、殊に無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングの厚さの25%以下である。
【0061】
用語「無機粒子、好ましくはセラミック粒子」は、本発明の内容において使用する場合、上記の粒径を有する限り、すべての天然または合成無機質を意味すると理解すべきである。無機粒子、好ましくはセラミック粒子は、任意の寸法を有してよいが、球形粒子が好ましい。さらに、無機粒子、好ましくはセラミック粒子は、結晶質、部分結晶質(最小30%の結晶化度)、または非結晶質であってよい。
【0062】
用語「セラミック粒子」は、本発明の内容で使用する場合、シリケート原料、酸化物原料、殊に金属酸化物、ならびに/または非酸化物および非金属原料をベースとする材料を意味すると理解すべきである。
【0063】
適切なシリケート原料には、SiO
4四面体、例えば、シート状またはフレームワーク状シリケートを有する材料が包含される。
【0064】
適切な酸化物原料、殊に金属酸化物の例は、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、ジルコン酸チタン酸鉛、亜鉄酸塩、および酸化亜鉛である。
【0065】
適切な非酸化物および非金属原料の例は、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ホウ化チタン、およびケイ化モリブデンである。
【0066】
本発明によって使用される粒子は、電気絶縁性材料、好ましくは、金属Al、Zr、Si、Sn、Ti、および/またはYの非導電性酸化物からなる。そのような粒子の製造は例えば、独国特許第10208277号(特許文献5)に詳述されている。
【0067】
無機粒子、好ましくはセラミック粒子のうちには、殊に、分子式SiO
2を有するケイ素の酸化物、ならびに分子式AlNaSiO
2を有する混合酸化物、および分子式TiO
2を有するチタンの酸化物をベースとする粒子があり;これらは、結晶質形態、非晶質形態、または混合形態で存在してよい。好ましくは、無機粒子、好ましくはセラミック粒子は、殊に30%超の結晶化度を有する多結晶質材料である。
【0068】
本発明の無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングの厚さは好ましくは、0.5μm〜80μm、殊に1μm〜40μmである。
【0069】
施与する無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングの量は好ましくは、乾燥後のバインダーおよび粒子に対して、0.5g/m
2〜80g/m
2、殊に1g/m
2〜40g/m
2である。
【0070】
施与する無機粒子、好ましくはセラミック粒子の量は好ましくは、乾燥後の粒子に対して、0.4g/m
2〜60g/m
2、殊に0.9g/m
2〜35g/m
2である。
【0071】
本発明の無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングは、1.5〜5g/cm
3、好ましくは2〜4.5g/cm
3の範囲の密度を好ましくは有する無機粒子、好ましくはセラミック粒子を含む。
【0072】
本発明の無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングは、モース硬度(Moh scale)で2の最小硬度を好ましくは有する無機粒子、好ましくはセラミック粒子を含む。
【0073】
本発明の無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングは、少なくとも160℃、殊に少なくとも180℃、特に好ましくは少なくとも200℃の融点を好ましくは有する無機粒子、好ましくはセラミック粒子を含む。さらに、前述の粒子はまた、前述の温度で分解しない。既知の方法、例えばDSC(示差走査熱分析)またはTG(熱重量分析)を使用して、上記のデータを決定することができる。
【0074】
本発明の無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングは、100kPa、特に好ましくは最小限150kPa、殊に最小限250kPaの最小圧縮強度を好ましくは有する無機粒子、好ましくはセラミック粒子を含む。用語「圧縮強度」は、存在する粒子のうちの最低90%が、施与された圧力によって破壊されないことを意味する。
【0075】
好ましいコーティングは、0.5μm〜80μmの厚さおよび0.05〜15μm(D50値)の範囲、好ましくは0.1〜10μm(D50値)の範囲の無機粒子、好ましくはセラミック粒子を有する。
【0076】
特に好ましいコーティングは、(i)0.5μm〜80μmの厚さ、(ii)0.05〜15μm(D50値)の範囲、好ましくは0.1〜10μm(D50値)の範囲で、100kPa、特に好ましくは最小限150kPa、殊に最小限250kPaの最小圧縮強度の無機粒子、好ましくはセラミック粒子を有する。
【0077】
特に好ましいコーティングは、(i)0.5μm〜80μmの厚さ、(ii)0.05〜15μm(D50値)の範囲、好ましくは0.1〜10μm(D50値)の範囲で、100kPa、特に好ましくは最小限150kPa、殊に最小限250kPaの最小圧縮強度の無機粒子、好ましくはセラミック粒子を有し、D50値は、無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングの厚さの50%以下、好ましくは無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングの厚さの33%以下、殊に無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングの厚さの25%以下である。
【0078】
列挙した無機粒子、好ましくはセラミック粒子に加えて、本発明の無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングは、ポリ二塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエチレンイミン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、シリケートバインダー、グラフトポリオレフィン、ハロゲン化ポリマー群からのポリマー、例えばPTFE、およびそれらのブレンドをベースとするバインダーによって形成される群から選択される少なくとも1種の最終固結バインダー(final consolidating binder)を含む。
【0079】
本発明によって使用されるバインダーは、電気絶縁性であるべきであり、すなわち、いかなる導電性も示すべきではない。「電気絶縁性」または「非導電性」は、これらの特性が僅かな程度までは存在してよいが、コーティングされていないフィルムでの値を増大させないことを意味する。
【0080】
ポリ二塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエチレンイミン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、シリケートバインダー、グラフトポリオレフィン、ハロゲン化ポリマー群からのポリマー、例えばPTFE、およびそれらのブレンドをベースとするバインダーによって形成される群から選択される最終固結バインダーの量は、好ましくは0.05g/m
2〜20g/m
2、殊に0.1g/m
2〜10g/m
2[バインダーのみ、乾燥時]である。ポリ二塩化ビニリデン(PVDC)をベースとするバインダーでの好ましい範囲は、0.05g/m
2〜20g/m
2、好ましくは0.1g/m
2〜10g/m
2[バインダーのみ、乾燥時]である。
【0081】
本発明の無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングは、乾燥状態のバインダーおよび無機粒子、好ましくはセラミック粒子に対して、無機粒子、好ましくはセラミック粒子98重量%〜50重量%と、ポリ二塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエチレンイミン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、シリケートバインダー、グラフトポリオレフィン、ハロゲン化ポリマー群からのポリマー、例えばPTFE、およびそれらのブレンドをベースとするバインダーによって形成される群から選択されるバインダー2重量%〜50重量%とを含み、ここで、バインダーのうち、ポリ二塩化ビニリデン(PVDC)をベースとする最終固結バインダーが好ましい。さらに、本発明の無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングは、分散液の調節に必要なだけの少量の添加剤を含有することもできる。
【0082】
既知の技術を使用して、殊にアプリケーターブレードを用いるか、または多孔性BOPPフィルム上に噴霧することによって、本発明の無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングを施与する。
【0083】
好ましくは、無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングを、分散液として施与する。これらの分散液は好ましく水性分散液であり、本発明の無機粒子、好ましくはセラミック粒子に加えて、列挙したバインダーのうちの少なくとも1種、好ましくはポリ二塩化ビニリデン(PVDC)をベースとするバインダー、水、および必要な場合には、分散液の安定性または多孔性BOPPフィルムに対するぬれ性を向上させる有機物質を含む。有機物質は、モノアルコールまたはポリアルコール、殊に、140℃を超えない沸点を有するものなどの揮発性有機物質である。イソプロパノール、プロパノール、およびエタノールが、その利用可能性によって特に好ましい。
【0084】
無機粒子、好ましくはセラミック粒子の施与は、例えば、独国特許第10208277号(特許文献5)に詳述されている。
【0085】
好ましい分散液は:
(i)無機粒子、好ましくはセラミック粒子20重量%〜90重量%、特に好ましくは30重量%〜80重量%;
(ii)ポリ二塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエチレンイミン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、シリケートバインダー、グラフトポリオレフィン、ハロゲン化ポリマー群からのポリマー、例えばPTFE、およびそれらのブレンドをベースとするバインダーによって形成される群から選択されるバインダー1重量%〜30重量%、特に好ましくは1.5重量%〜20重量%(ここで、バインダーのうち、ポリ二塩化ビニリデン(PVDC)をベースとする最終固結バインダーが好ましい);
(iii)適切な場合には、分散液の安定性または多孔性BOPPフィルムに対するぬれ性を向上させる有機物質、殊にモノアルコールまたはポリアルコール1重量%〜30重量%、特に好ましくは0.01重量%〜0.5重量%;
(iv)適切な場合には、分散安定剤および/または消泡剤などのさらなる添加剤0.00001重量%〜10重量%、特に好ましくは0.001重量%〜5重量%;
(v)成分全部の合計が100重量%となるような水
を含む。
【0086】
本発明はさらに、本発明による無機、好ましくはセラミックコーティングされた多孔性BOPPフィルムの製造方法に関する。この方法では、自体既知のフラットフィルム押出または同時押出法を使用して、多孔性フィルムを製造する。プロピレンホモポリマーおよび/またはプロピレンブロックコポリマー、ポリエチレンならびにβ核形成剤および適切な場合には、個々の層の他のポリマーのブレンドを一緒に混合し、押出機内で溶融させ、かつ必要な場合には、同時に、かつ一緒にスロットダイを通して、引取ロール上に押し出すか、または同時押し出しし、その引取ロール上で単層または多層溶融フィルムを固化させ、β微結晶を形成させながら冷却するような手法で、この方法を実施する。プレフィルム中で形成するβ結晶質ポリプロピレンの画分が可能な限り高いように、冷却温度および冷却時間を選択する。一般に、1つの引取ロールまたは複数の引取ロールのこの温度は、60℃〜140℃、好ましくは80℃〜130℃である。この温度での滞留時間は変動させることができ、少なくとも20〜300秒、好ましくは30〜100秒であるべきである。こうして得られるプレフィルムは一般的に、β微結晶40〜95%、好ましくは50〜85重量%を含有する。
【0087】
次いで、延伸によって、β微結晶がα−結晶質ポリプロピレンに変換し、マトリックス様多孔性構造が形成するような手法で、高いβ結晶質ポリプロピレン画分を有するこのプレフィルムを二軸延伸する。二軸延伸(配向)を一般的に、順々に実施し、その際に好ましくは、初めに縦延伸(流れ方向)を実施し、続いて横延伸(流れ方向に対して垂直)を実施する。
【0088】
縦方向への延伸に関して、初めに、冷却したプレフィルムを先ず1つまたは複数の加熱ロール上にガイドし、その加熱ロールで、フィルムを適切な温度まで加熱する。一般に、この温度は140℃未満、好ましくは70℃〜120℃である。次いで、縦延伸を一般的に、標的延伸比に適した異なる速度で作動する2つのロールを用いて実施する。この場合の縦延伸比は、2:1〜6:1、好ましくは3:1〜5:1の範囲である。縦方向での配向が高くなりすぎることを防止するために、例えば、比較的狭い延伸ギャップを設置することによって、縦延伸の際の幅収縮を小さくしておく。延伸ギャップの長さは一般的に、3〜100mm、好ましくは5〜50mmである。適切な場合には、エキスパンダーなどの固定エレメントが、小さな幅収縮に寄与し得る。収縮は、10%未満、好ましくは0.5〜8%、殊に1〜5%であるべきである。
【0089】
この縦延伸の後に、フィルムを先ず、適切な焼戻しロール上で、もう一度冷却する。次に、いわゆる加熱帯域において、一般的に120〜145℃の温度である横延伸温度までフィルムを再加熱する。次に、適切な幅出し機を使用して、横延伸を実施し、その際、横延伸比は、2:1〜9:1、好ましくは3:1〜8:1の範囲である。本発明の高い多孔率を得るために、0%超〜40%/秒、好ましくは0.5%〜30%/秒、殊に1%〜15%/秒の範囲の中程度から遅い横延伸速度で、横延伸を実施する。
【0090】
必要な場合には、最終延伸、一般的には横延伸の後に、電解質の充填を促進するように、フィルムの表面をコロナ処理、プラズマ処理、または火炎処理する。好ましくは、後でコーティングされないフィルム表面を、この手法で処理する。
【0091】
最後に、必要な場合には、フィルムを110℃〜150℃、好ましくは125℃〜145℃の温度で約5〜500秒、好ましくは10〜300秒にわたって、例えばロールまたは温風キャビネット上に保持する熱硬化(thermofixing)(加熱処理)を実施する。適切な場合には、熱硬化の直前か、またはその間に、フィルムを収束するようにガイドし、その際、収束率は好ましくは5〜25%、殊に8%〜20%である。用語「収束」は、横延伸プロセスの終了時での最大フレーム幅が、熱硬化の終了時の幅よりも大きくなるように、横延伸フレームの軽微な合流を意味すると理解すべきである。明らかに、同じことが、フィルムウェブの幅にも当てはまる。横延伸フレームの収束程度は、横延伸フレームの最大幅B
maxおよび最終フィルム幅B
フィルムから、以下の式を使用して算出される収束率として示される:
収束率[%]=100×(B
max−B
フィルム)/B
max
最後に、通常の手法で、引取装置を使用して、フィルムを巻き取る。
【0092】
縦延伸および横延伸を1つのプロセスで順番に実施する既知の連続法では、プロセス速度に依存しているのは、横延伸速度だけではない。引取速度および冷却速度も、プロセス速度の関数として変動する。したがってこれらのパラメーターは、互いに独立に選択することはできない。このことから、その他については同一の条件下で、比較的遅いプロセス速度では、横延伸速度が低下するだけでなく、プレフィルムの冷却速度または引取速度も低下するということになる。このことは、必ずではないが、追加の問題の原因となり得る。
【0093】
したがって、本発明の方法のさらなる実施形態の一つでは、連続して延伸されるフィルムを製造するための方法を、2つの別々のプロセスに、すなわち、縦延伸後の最終冷却までで、それを包含するプロセスのステップすべてを含む第1のプロセスと(本明細書において下記では、縦延伸プロセスと称する)、縦延伸プロセス後のプロセスのステップすべてを含む第2のプロセス(本明細書において下記では、横延伸プロセスと称される)とに分割することが有利である。2ステッププロセスとしての本発明の方法のこの実施形態は、第1のプロセスのプロセス速度を、したがって、個々の条件、殊に、冷却速度および引取速度、さらには縦延伸条件を横延伸速度とは独立に選択することが可能であることを意味する。同様に、第2の横延伸プロセスでは、任意の手法で、例えば、プロセス速度を低下させることによってか、または延伸フレームを延長することによって、β微結晶の形成または縦延伸条件にマイナスの影響をもたらすことなく、横延伸速度を低下させることができる。上記のとおりに縦延伸プロセスを実施し、次いで、この縦に延伸させたフィルムを冷却した後に、フィルムを巻き取ることによって、プロセスのこの変形形態を実行する。次いで、この縦に延伸させたフィルムを第2の横延伸プロセスで使用する。すなわち、この第2のプロセスでは、上記のとおりに縦に延伸させたフィルムを冷却した後のプロセスのステップすべてを実施する。こうして、最適な横延伸速度を独立に選択することができる。
【0094】
縦延伸プロセスまたは横延伸プロセスまたは連続プロセスに関して上記で挙げた用語「プロセス速度」はそれぞれの場合に、個々の最終巻取のためにフィルムが走行する、例えばm/分での速度を意味すると理解すべきである。状況に応じて、横延伸プロセスは有利には、縦延伸プロセスよりも速いか、または遅いプロセス速度を有してよい。
【0095】
多孔性フィルムを製造するための本発明の方法におけるプロセス条件は、二軸配向フィルムを製造するために通常適用されるプロセス条件とは異なる。高い多孔率および透過度を得るために、プレフィルムを形成するための固化のための冷却条件および他にも温度と、延伸係数との両方が重要である。初めに、高いβ微結晶画分をプレフィルムにおいて得るために、適切に遅く、かつ中程度の冷却を、すなわち、比較的高温を使用する必要がある。後続の縦延伸で、β結晶をα変態に変換すると、傷がマイクロクラックの形態で生成する。これらの傷が十分な数および正確な形態で得られるように、縦延伸は比較的低温で実施する必要がある。横延伸で、これらの傷を破壊して細孔にすることで、これらの多孔性フィルムの特徴的なネットワーク構造を形成する。
【0096】
通常のBOPPプロセスと比較すると、これらの低温、殊に縦延伸の間のこれらの低温は、一方では、ポリマーマトリックスに高い配向を導入し、他方では、引裂の危険を増大する高い延伸力を必要とする。所望の多孔率が高いほど、延伸の際の温度は低くなければならず、それに応じて、延伸係数を増大させる必要がある。したがって、フィルムの多孔率および透過度を増大させるにつれて、プロセスは基本的により臨界的になる。したがって、無制限に、より高い延伸係数またはより低い延伸温度を使用して、多孔率を増大させることはできない。殊に、低い縦延伸温度は、フィルムの操作信頼性のかなりの減損および分裂傾向の望ましくない増大をもたらす。したがって、例えば、70℃未満のより低い縦延伸温度によって、多孔率を向上させることはもはやできない。
【0097】
さらに、フィルムの多孔率および透過度に、横延伸の際の延伸速度によって、追加的な影響を及ぼすことが可能である。遅い横延伸速度によって、製造プロセスの間に引裂または他の傷がさらに増えることなく、多孔率および透過度が増大する。フィルムは、高い多孔率および透過度、機械的強度、製造プロセスの間の良好な操作信頼性、ならびに縦方向への低い分裂傾向の特殊な組合せを示す。
【0098】
続いて、既知の技術、例えばアプリケーターブレードまたはスプレーまたは印刷を使用して、多孔性BOPPフィルム上に分散液、好ましくは水性分散液の形態で、本発明の無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングを、先に調製した多孔性BOPPフィルムに施与する。
【0099】
この目的のために、無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングを、先に調製した多孔性BOPPフィルムに直接施与するので、下塗剤でフィルムの事前処理を実施するか、またはコーティングのために使用されるセラミックコーティング剤中で下塗剤を使用する必要はない。さらに、殊に多孔性BOPPフィルムを用いる場合、フィルムの表面、殊に、次いでコーティングされる予定のフィルム面の後処理を、既知のコロナ処理、プラズマ処理、または火炎処理方法を使用して実施する必要はなく、無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングを、多孔性BOPPフィルムに直接施与することができることが示されている。
【0100】
好ましくは、施与する分散液の量は、1g/m
2〜80g/m
2である。次に、通常の工業用乾燥機を使用して、新たにコーティングした多孔性BOPPフィルムを乾燥させ、その後、存在するバインダーを硬化させる。乾燥を通常、50℃〜140℃の範囲の温度で実施する。この場合の乾燥期間は、30秒〜60分である。
【0101】
本発明によって、その高い透過度のために高エネルギーバッテリーでの使用に適していて、同時に、機械的強度、殊に低い分裂傾向に関する要件を満たし、この適用に必要な熱安定性も有するフィルムを利用することができるようになる。
【0102】
さらに、非常に高い透過度が必要とされるか、または有利であろう他の用途で、フィルムを有利に利用することができる。例は、高い所要出力のバッテリー、殊にリチウムバッテリーにおける高多孔性セパレータとしてのものである。
【0103】
本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムをベースとする無機、好ましくはセラミックコーティングされたセパレータフィルムは、30%〜80%の多孔率および1000秒未満の透過度(ガーレー数)を有するポリプロピレンから形成される多孔性二軸配向フィルムを含み、本発明のセラミックコーティングを有するセパレータフィルムの透過度は、1500秒未満(ガーレー数)である。
【0104】
本発明のセパレータフィルム上の無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングは、下塗剤の介在なしに得られる良好な接着を有する。接着は以下のとおりに決定する:
コーティングの接着が不十分な場合には、コーティングはエッジから剥げ落ち、指でこすり落とすことができる。
【0105】
接着が良好な場合には、クラックが折り曲げエッジ部分でせいぜい見られる程度で、フィルムに対する接着は無傷なままである。
【0106】
以下の測定方法を使用して、原料およびフィルムを特性決定した:
粒径の定義および決定:
ISO13320−1に従ってレーザ散乱法によって、平均粒子直径または平均粒径(=D50またはD90)を決定した。粒径分析の適切な装置の例は、Microtrac S 3500である。
【0107】
メルトフローインデックス:
DIN 53 735に従って、2.16kgの負荷下および230℃で、プロピレンポリマーのメルトフローインデックスを測定した。
【0108】
融点:
本発明の内容における融点は、DSC曲線の最大値である。融点を決定するために、20℃〜200℃の範囲で10K/1分の加熱および冷却速度で、DSC曲線を使用した。融点を決定するために、通常どおり、200℃から20℃まで10K/1分で冷却した後に、10K/1分での第2の加熱曲線を記録した。
【0109】
プレフィルムのβ含有率:
以下の手法でプレフィルムで実施されるDSC測定を使用して、プレフィルムのβ含有率も決定した:プレフィルムを10K/分の加熱速度でDSC内で、初めに220℃に加熱して溶融させ、次いで再び冷却した。この第1の加熱曲線から、β結晶相の融解エンタルピー(H
β)の、β結晶相およびα結晶相の融解エンタルピーの合計(H
β+H
α)に対する比として、結晶化度K
β,DSCを決定した。
【0110】
K
β,DSC[%]=100×H
β/(H
β+H
α)
【0111】
密度:
DIN53 479のメゾッドAに従って、密度を決定した。
【0112】
泡立ち点:
ASTM F316に従って、泡立ち点を決定した。
【0113】
多孔率:
以下のとおり、純粋なポリプロピレンの密度ρ
ppに対するフィルムの密度の低下(ρ
フィルム−ρ
pp)として、多孔率を算出した:
多孔率[%]=100×(ρ
pp−ρ
フィルム)/ρ
pp
【0114】
透過度(ガーレー数)
ASTM D726−58に従って、ガーレー試験器を使用して、フィルムの透過度を測定した。この場合、空気100cm
3が試験片1平方インチ(6.452cm
2)を透過するために必要な時間(秒)を決定した。フィルムを挟んでの差圧は、12.4cm高さの水柱の圧力に対応する。必要な時間が、ガーレー数に対応する。
【0115】
シャットダウン機能:
シャットダウン機能は、135℃の温度での熱処理の前及び後に取ったガーレー測定結果に基づいて決定した。フィルムのガーレー数を上述の通り測定した。次に、フィルムを、加熱炉内で5分間、135℃の温度に曝した。次いで、ガーレー数を再び上述のように決定した。フィルムが少なくとも5000秒のガーレー数を有しそして熱処理の後に少なくとも1000秒上昇した場合に、シャットダウン機能が有効である。
【0116】
収縮:
収縮によって、縦延伸の間にフィルムの幅が変化する。この場合、B
0は、縦延伸の前のフィルムの幅を定義しており、B
1は、縦延伸の後のフィルムの幅を定義している。縦方向は流れ方向であり;横方向は、流れ方向を横断する方向である。したがって、%としての収縮は、元の幅B
0と、決定された幅との差に100を掛けたものである:
収縮B[%]=[(B
0−B
1)/B
0]×100[%]
【0117】
接着:
テンプレートを使用して、フィルムの6×6cm切片を切り取った。この切片を、3cm重ねて0.5mmのエッジ半径および8×8×8cmの寸法を有するステンレス鋼製立方体に施与した。次いで、突出部3cmを、立方体のエッジの上で直角に曲げた。
【0118】
コーティングの接着が不十分だった場合には、コーティングはエッジから剥げ落ち、指でこすり落とすことができた。
【0119】
接着が良好な場合には、クラックが折り曲げエッジ部分でせいぜい見られた程度で、フィルムの接着は残った。
【実施例】
【0120】
次いで、本発明を以下の例を参照しつつ説明する。
例:
3種の無機コーティング剤を無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングのために作った。この目的のために、市販のPVDCコーティング剤(DIOFAN(登録商標)A 297)をバインダーとして、無機粒子と共に使用し;コーティング剤の粘度を調節して、ワイヤアプリケーターブレードを使用してDIOFAN(登録商標)A 297をポリプロピレンフィルム上に均一に分散させることができるように、水およびイソプロパノールを加えた。加えて、一方では、溶剤成分を乾燥除去した後に、耐摩耗性コーティングが形成し、他方では、開いた透気性多孔性構造を形成するために、未だ十分に開いた(コーティングのない)帯域がセラミック粒子の間に存在するように、PVDCの画分を選択した。コーティング剤の組成を表1に詳細に示す。有機粒子は球形のシリケート粒子(Zeeospheres(商標)、3M)およびTiO
2粒子であった。
例において言及されるフィルムの製造:
【0121】
【表1】
【0122】
フィルム例1
押出プロセスにおいて、単層プリフィルムを、240〜250℃の押出温度でスロットダイから押し出した。このプリフィルムを、先ず、冷却ローラ上に引き取って冷却した。次いで、このプリフィルムを縦方向および横方向に配向し、そして最後に固定した。このフィルムは次の組成を有していた:
13C−NMRアイソタクティシティが97%、n−ヘプタン可溶性画分が2.5重量%(100%PPに対し)および融点が165℃; かつ230℃および2.16kg負荷でのメルトフローインデックス(DIN53735)が2.5g/10分の高アイソタクチックなプロピレンホモポリマー(PP) 約60重量%; および
密度(ISO1183)が0.954、190℃および2.16kg負荷でのMFI(ISO1133/D)が0.4g/10分または190℃および21.6kg負荷でのMFI(ISO1333/G)が27g/10分、および融点が130℃(DSC:10℃/分加熱速度でのピーク); かつ融解範囲が125℃で始まるHDPE(高密度ポリエチレン) 約20重量%;
エチレン含有率が、ブロックコポリマーに対し5重量%、およびMFI(230℃、2.16kg)が6g/10分、および融点(DSC)が165℃のプロピレン−エチレンブロックコポリマー 約20重量%; および
β−核形成剤としてのピメリン酸Ca 0.04重量%。
【0123】
このフィルムは、追加的に、通常の少量の安定剤および中和剤を含有していた。
【0124】
押出後、この溶融ポリマーブレンドを、第1の引取ロールおよびさらなる三本ロール(roller trio)を介して引き取りおよび固化し、次いで、縦延伸し、横延伸し、固定した。条件の詳細は以下のとおりである:
押出: 押出温度235℃、
引取ロール: 温度125℃、
引取速度: 4m/分、
縦延伸: 延伸ロールT=90℃、
縦延伸: 3.0倍、
横延伸: 加熱帯域T=125℃、
延伸帯域: T=125℃、
横延伸: 5.0倍、
固定: T=125℃。
【0125】
このように製造された多孔性フィルムは厚さ約20μmであり、0.38g/cm
3の密度を有し、一様な白色不透明の外観を有した。
【0126】
フィルム例2
押出プロセスにおいて、単層プリフィルムを、240〜250℃の押出温度でスロットダイから押し出した。押出処理量は、フィルム例1と比べて30%高めた。先ずこのプリフィルムを冷却ローラ上に引き取って冷却した。次いでこのプリフィルムを縦方向および横方向に配向し、そして最後に固定した。このフィルムは次の組成を有していた。
13C−NMRアイソタクティシティが97%、n−ヘプタン可溶性画分が2.5重量%(100%PPに対して)および融点が165℃; かつ230℃および2.16kg負荷でのメルトフローインデックス(DIN53735)が2.5g/10分の高アイソタクチックなプロピレンホモポリマー(PP) 約80重量%; および
密度(ISO1183)が0.954、190℃および2.16kg負荷でのMFI(ISO1133/D)が0.4g/10分、190℃および21.6kg負荷でのMFI(ISO1333/G)が27g/10分、および融点が130℃(DSC:10分/分加熱速度でのピーク); かつ融解範囲が125℃で始まるHDPE(高密度ポリエチレン) 約20重量%。
【0127】
更に、このフィルムは、β−核形成剤としてピメリン酸Caを0.04重量%含んでいた。
【0128】
このフィルムは、追加的に、通常の少量の安定剤及び中和剤を含んでいた。
【0129】
押出後、この溶融ポリマーブレンドを、第1の引取ロールおよびさらなる三本ロールを介して引き取りおよび固化し、次いで、縦方向延伸し、横方向延伸し、固定した。条件の詳細は次の通りである。
押出: 押出温度235℃、
引取ロール: 温度125℃、
引取ロール上での滞留時間:60秒、
縦延伸: 延伸ロールT=90℃、
縦延伸: 3.0倍、
横延伸: 加熱帯域T=125℃、
延伸帯域: T=125℃、
横延伸: 5.0倍、
固定: T=125℃。
【0130】
このように製造された多孔性フィルムは厚さ約30μmであり、0.38g/cm
3の密度を有し、そして一様な白色不透明な外観を有していた。ガーレー数は380秒であった。135℃で5分間の炉中での加熱処理の後、ガーレー数は>9000秒/100cm
3であった。
【0131】
例1
ワイヤアプリケーターブレード(ワイヤ直径:0.4mm)を使用して、シャットダウン機能を備えた微孔性BOPPフィルム(フィルム例1)に、コーティング1の組成(表1)を有するシリケートコーティングを手動で施与した。セラミック懸濁液でのフィルムのぬれは均一であった。次いで、コーティングしたフィルムを乾燥キャビネット内、90℃で1時間乾燥させた。乾燥の後に、コーティングは、フィルムに対して良好な接着を示した。次に、コーティング重量、コーティング層の厚さ、およびガーレー数を使用して空気の透過度を決定した。360秒から380秒への、ガーレー数のほんの僅かな増大が観察された。
【0132】
例2
ワイヤアプリケーターブレード(ワイヤ直径:0.4mm)を使用して、シャットダウン機能を備えた微孔性BOPPフィルム(フィルム例1)に、コーティング2の組成(表1)を有するシリケートコーティングを手動で施与した。コーティングの後に、セラミック懸濁液でのフィルムのぬれは均一であった。乾燥の後に、コーティングは、例2の場合と同様に、例5においてよりも良好な接着を示した。ガーレー数もかなりより高かった。ガーレー数が360秒から570秒に増大したことが観察された。
【0133】
例3
ワイヤアプリケーターブレード(ワイヤ直径:0.4mm)を使用して、シャットダウン機能を備えた微孔性BOPPフィルム(フィルム例1)に、コーティング3の組成(表1)を有する酸化チタンコーティングを手動で施与した。コーティングの後に、セラミック懸濁液でのフィルムのぬれは均一であった。乾燥の後に、コーティングは、フィルムに対して良好な接着を示した。360秒から460秒へのガーレー数の増大が観察された。
【0134】
例4
ワイヤアプリケーターブレード(ワイヤ直径:0.7mm)を使用して、シャットダウン機能を備えた微孔性BOPPフィルム(フィルム例2)に、コーティング1の組成(表1)を有するシリケートコーティングを手動で施与した。コーティングの後、セラミック懸濁液でのフィルムのぬれは均一であった。乾燥後、コーティングの接着は良好であった。ガーレー数は、380秒から420秒へと増大した。
【0135】
例5:
ワイヤアプリケーターブレード(ワイヤ直径:0.7mm)を使用して、シャットダウン機能を備えた微孔性BOPPフィルム(フィルム例1)に、コーティング3の組成(表1)を有する酸化チタンコーティングを手動で施与した。コーティング後、セラミック懸濁液でのフィルムのぬれは均一であった。乾燥後、コーティングは、フィルムに対し良好な接着を示した。380秒から510秒へのガーレー数の増大が観察された。
【0136】
例6(比較例)
例1に記載したとおり、ワイヤアプリケーターブレード(ワイヤ直径:0.4mm)を使用して、Celgard製の市販の微孔性セパレータ(C200)に、コーティング1の組成(表1)を有するシリケートコーティングを手動で施与することを試みた。コーティング液によるぬれは観察されず、乾燥の後に、再び剥がれ落ちた。
【0137】
例7(比較例)
例2に記載したとおり、ワイヤアプリケーターブレード(ワイヤ直径:0.4mm)を使用して、Celgard製のセパレータ(C200)に、コーティング2の組成(表1)を有するシリケートコーティングを手動で施与することを試みた。この場合も、PVDC含有率を高めても、コーティング液によるぬれは観察されず、乾燥の後に、再び剥がれ落ちた。
【0138】
例8(比較例)
例1に記載したとおり、ワイヤアプリケーターブレード(ワイヤ直径:0.4mm)を使用して、UBE製の別の市販のポリオレフィンセパレータに、コーティング1の組成(表1)を有するシリケートコーティングを手動で施与することを試みた。コーティング液はぬれを示さず、乾燥の後に、再び剥がれ落ちた。
【0139】
例9(比較例)
例2に記載したとおり、ワイヤアプリケーターブレード(ワイヤ直径:0.4mm)を使用して、UBE製のポリオレフィンセパレータに、コーティング2の組成(表1)を有するシリケートコーティングを手動で施与することを試みた。この場合も、高いPVDC含有率を有するコーティングはぬれを示さず、乾燥の後に、再び剥がれ落ちた。
【0140】
例10(比較例)
例1の手法で、ワイヤアプリケーターブレード(ワイヤ直径:0.4mm)を使用して、塗装性を目的として、未処理のPPフィルムと比較して表面張力を増大させるためにコロナ処理によって処理しておいた市販の二軸延伸ポリプロピレン包装用フィルム(Treofan製のGND 30)に、コーティング1の組成(表1)を有するシリケートコーティングを手動で施与することを試みた。この場合も、高いPVDC含有率を有するコーティングはぬれを示さず、乾燥の後に、再び剥がれ落ちた。
【0141】
例11(比較例)
高いPVDC含有率を有するコーティング2も、Treofan製の二軸延伸ポリプロピレン包装用フィルムGND 30に対してぬれおよび接着を示さなかった。
【0142】
【表2】
本願は特許請求の範囲に記載の発明に係るものであるが、本願の開示は以下も包含する。
1.
(I)多孔性フィルムの多孔率が30%〜80%であり; および
(II)多孔性フィルムの透過度が1000秒未満(ガーレー数)である、
少なくとも1つの多孔性層を含み、かつこの層が少なくとも1種のプロピレンポリマーおよびポリエチレンを含有する、二軸配向された単層または多層多孔性フィルムであって;(III)多孔性フィルムが無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングを含み;
(IV)コーティングされた多孔性フィルムが1500秒未満のガーレー数を有し、および
(V)コーティングされた多孔性フィルムが、これを140℃を超えて5分間加熱した時に6000秒超のガーレー数を有する、
ことを特徴とするフィルム。
2.
フィルムを延伸する際のβ結晶質ポリプロピレンの変換によって、多孔性がもたらされ、少なくとも1種のβ核形成剤がフィルム中に存在することを特徴とする、上記1に記載のフィルム。
3.
プロピレンポリマーがプロピレンホモポリマーおよび/またはプロピレンブロックコポリマーであることを特徴とする、上記1または上記2に記載のフィルム。
4.
β核形成剤が、ピメリン酸および/もしくはスベリン酸のカルシウム塩、ならびに/またはナノスケールの酸化鉄であることを特徴とする、上記2または上記3に記載のフィルム。
5.
プロピレンホモポリマーおよびプロピレンブロックコポリマーを含有することを特徴とする、上記1〜4のいずれか一つに記載のフィルム。
6.
プロピレンホモポリマー50重量%〜85重量%、プロピレンブロックコポリマー15重量%〜50重量%、およびβ核形成剤50〜10000ppmを含有することを特徴とする、上記2〜5のいずれか一つに記載のフィルム。
7.
密度が0.1〜0.5g/cm3の範囲であることを特徴とする、上記1〜6のいずれか一つに記載のフィルム。
8.
厚さが10〜100μmであることを特徴とする、上記1〜7のいずれか一つに記載フィルム。
9.
プロピレンポリマーが、メタロセン触媒を使用して製造されたものでないことを特徴とする、上記1〜8のいずれか一つに記載のフィルム。
10.
ポリエチレンが、存在するプロピレンポリマーおよび/またはプロピレンブロックコポリマーに対し少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%の量で存在することを特徴とする、上記1〜9のいずれか一つに記載のフィルム。
11.
ポリエチレンが、115℃〜140℃の範囲に融解ピークを有するHDPEまたはMDPEであることを特徴とする、上記1〜10のいずれか一つに記載のフィルム。
12.
HDPEが、DIN53735を用いて測定して0.1g/10分超から50g/10分、好ましくは0.6〜20g/10分のMFI(50N/190℃)、およびDIN53728のパート4またはISO1191を用いて測定して、100〜450cm3/g、好ましくは120〜280cm3/gの範囲の粘度数、DIN53479のメゾッドAまたはISO1183に従い23℃で測定して>0.94〜0.97g/cm3の密度、およびDSCを用いて測定して(融解曲線の最大値、加熱速度20℃/分)120℃と145℃の間の融点を有することを特徴とする、上記11に記載のフィルム。
13.
MDPEが、DIN53735を用いて測定して0.1g/10分超から50g/10分、好ましくは0.6〜20g/10分のMFI(50N/190℃)、DIN53479のメゾッドAまたはISO1183に従い23℃で測定して>0.925〜0.94g/cm3の密度、およびDSCを用いて測定して(融解曲線の最大値、加熱速度20℃/分)115℃と130℃の間の融点を有することを特徴とする、上記11に記載のフィルム。
14.
無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングが、D50値として表して、0.05〜15μmの範囲、好ましくは0.1〜10μmの範囲の粒径を有する無機粒子、好ましくはセラミック粒子を含むことを特徴とする、上記1〜13のいずれか一つに記載のフィルム。
15.
無機粒子、好ましくはセラミック粒子が、金属Al、Zr、Si、Sn、Ti、および/またはYの非電導性酸化物を含むことを特徴とする、上記14に記載のフィルム。
16.
無機粒子、好ましくはセラミック粒子が、分子式SiO2を有するケイ素の酸化物、ならびに分子式AlNaSiO2を有する混合酸化物、および分子式TiO2を有するチタンの酸化物をベースとする粒子を含み、結晶質形態、非晶質形態、または混合形態で存在し得ることを特徴とする、上記14または15に記載のフィルム。
17.
無機粒子、好ましくはセラミック粒子が、少なくとも160℃、好ましくは少なくとも180℃、殊に少なくとも200℃の融点を有することを特徴とする、上記1〜16のいずれか一つに記載のフィルム。
18.
無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングの厚さが、0.5μm〜80μm、好ましくは1μm〜40μmであることを特徴とする、上記1〜17のいずれか一つに記載のフィルム。
19.
施与されている無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングの量が0.5g/m2〜80g/m2、好ましくは1g/m2〜40g/m2であることを特徴とする、上記1〜18のいずれか一つに記載のフィルム。
20.
施与されている無機粒子、好ましくはセラミック粒子の量が0.4g/m2〜60g/m2、好ましくは0.9g/m2〜35g/m2であることを特徴とする、上記1〜19のいずれか一つに記載のフィルム。
21.
無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングが、ポリ二塩化ビニリデン(PVDC)をベースとする最終固結バインダー(final consolidating binder)をさらに含むことを特徴とする、上記1〜20のいずれか一つに記載のフィルム。
22.
無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングが、100kPaの最小圧縮強度、好ましくは最小限150kPa、殊に最小限250kPaの最小圧縮強度を有する無機粒子、好ましくはセラミック粒子を含むことを特徴とする、上記1〜21のいずれか一つに記載のフィルム。
23.
ポリ二塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエチレンイミン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、シリケートバインダー、グラフトポリオレフィン、ハロゲン化ポリマー群からのポリマー、例えば、PTFE、およびそれらのブレンドをベースとするバインダーによって形成される群から選択される最終固結バインダーの施与量が、0.5g/m2〜20g/m2、好ましくは0.1g/m2〜10g/m2であり、ポリ二塩化ビニリデン(PVDC)をベースとするバインダーが好ましいことを特徴とする、上記21または上記22に記載のフィルム。
24.
無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングが、無機粒子、好ましくはセラミック粒子98重量%〜50重量%と、ポリ二塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエチレンイミン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、シリケートバインダー、グラフトポリオレフィン、ハロゲン化ポリマー群からのポリマー、例えば、PTFE、およびそれらのブレンドをベースとするバインダーによって形成される群から選択される少なくとも1種の最終固結バインダー(terminally consolidating binder)、好ましくはポリ二塩化ビニリデン(PVDC)をベースとするバインダー2重量%〜50重量%とを含むことを特徴とする、上記1〜23のいずれか一つに記載のフィルム。
25.
無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングが、多孔性フィルムに直接施与されていることを特徴とする、上記1〜24のいずれか一つに記載のフィルム。
26.
上記2〜25のいずれか一つに記載のコーティングされたフィルムを製造する方法であって、
(i)単層または多層多孔性ポリプロピレンフィルムを押し出すステップであって、プロピレンポリマーおよびβ核形成剤をポリエチレンの存在下に押出機内で溶融させ、スロットダイを通して引取ロール上に押し出すステップと;
(ii)次いで、β微結晶を形成させながら、押し出された溶融フィルムを冷却および固化するステップと;
(iii)次いで、このフィルムを縦方向に延伸し、その後、横方向に延伸するステップであって、横延伸を40%/秒未満の遅い延伸速度で実施し、フィルムが、製造後に1000秒未満のガーレー数を有するステップと;
(iv)以下(a)から(e):
(a)無機粒子、好ましくはセラミック粒子20重量%〜90重量%、特に好ましくは30重量%〜80重量%;
(b)ポリ二塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエチレンイミン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、シリケートバインダー、グラフトポリオレフィン、ハロゲン化ポリマー群からのポリマー、例えば、PTFE、およびそれらのブレンドをベースとするバインダーによって形成される群から選択されるバインダー1重量%〜30重量%、特に好ましくは1.5重量%〜20重量%、ここで、これらのバインダーの中でも、ポリ二塩化ビニリデン(PVDC)をベースとするバインダーが好ましく;
(c)適切な場合には、分散液の安定性または多孔性BOPPフィルム上へのぬれ性を向上させる有機物質、殊にモノアルコールまたはポリアルコール1重量%〜30重量%、特に好ましくは0.01重量%〜0.5重量%;
(d)適切な場合には、分散液安定剤および/または消泡剤などのさらなる添加剤0.00001重量%〜10重量%、特に好ましくは0.001重量%〜5重量%;
(e)分散液の成分全部の合計が100重量%となるような水
を含む分散液を施与するステップと、
(v)分散液でコーティングした多孔性フィルムを乾燥させるステップと
を含む方法。
27.
(iii)による延伸を、2つの別々のプロセスステップで実施することを特徴とする、上記26に記載の方法。
28.
多孔性BOPPフィルムに、既知のコロナ処理、プラズマ処理、または火炎処理方法のいずれかでのフィルムの表面、殊に、後でコーティングする予定のフィルム面の後処理を施さないことを特徴とする、上記26または上記27に記載の方法。
29.
ステップ(iii)の後であってステップ(iv)においてコーティングを施与する前に、多孔性BOPPフィルムに、さらなる後処理を施さず、直接コーティングすることを特徴とする、上記26、27または28に記載の方法。
30.
ステップ(iii)の後であってステップ(iv)においてコーティングを施与する前に、多孔性BOPPフィルムが0.3μm〜6μm、好ましくは0.5〜5μm、殊に0.5〜3.5μmの粗さRzを有することを特徴とする、上記26〜29のいずれか一つに記載の方法。
31.
上記1〜24のいずれか一つに記載のコーティングされたフィルムを製造するための、以下の(a)から(e):
(a)無機粒子、好ましくはセラミック粒子20重量%〜90重量%、特に好ましくは30重量%〜80重量%;
(b)ポリ二塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエチレンイミン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、シリケートバインダー、グラフトポリオレフィン、ハロゲン化ポリマー群からのポリマー、例えば、PTFE、およびそれらのブレンドをベースとするバインダーによって形成される群から選択されるバインダー1重量%〜30重量%、特に好ましくは1.5重量%〜20重量%、ここで、これらのバインダーの中で、ポリ二塩化ビニリデン(PVDC)をベースとするバインダーが好ましく;
(c)適切な場合には、分散液の安定性または多孔性BOPPフィルム上へのぬれ性を向上させる有機物質、殊にモノアルコールまたはポリアルコール1重量%〜30重量%、特に好ましくは0.01重量%〜0.5重量%;
(d)適切な場合には、分散液安定剤および/または消泡剤などのさらなる添加剤0.00001重量%〜10重量%、特に好ましくは0.001重量%〜5重量%;
(e)成分全部の合計が100重量%となるような水
を含む分散液の使用。
32.
高エネルギーまたは高性能システムにおける、殊にリチウム、リチウムイオン、リチウム−ポリマー、およびアルカリ土類金属バッテリーにおけるセパレータとしての、上記1〜25のいずれか一つに記載のフィルムの使用。
33.
上記1〜25のいずれか一つに記載のフィルムを含有する高エネルギーまたは高性能システム、殊にリチウム、リチウムイオン、リチウム−ポリマー、およびアルカリ土類金属バッテリー。