【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1に記載の特徴を有するステータディスクにより、そして特に、ステータディスクが、一つの安全装置を有し、この安全装置によって、ステータディスクが少なくとも、隣接して配置されたスペーサリングに対する平面内での半径方向のスライドに対して固定可能であることにより解決される。
【0008】
安全装置によって、ステータディスクは、ターボ分子ポンプの組立の際に既に、平面内の如何なる半径方向動作に対しても固定されるので、ローターディスク、ステータディスク、およびスペーサリングから成るパッケージから、これが滑り出すことがなく、そしてターボ分子ポンプのハウジング内への挿入の際にこれと食い込む恐れが無い。これによって、ディスクパッケージをターボ分子ポンプのハウジング内に運び込むこと、およびこれに伴い最終的には、ターボ分子ポンプ組立が全体として著しく簡易化される。
【0009】
ターボ分子ポンプのハウジング内へのディスクパッケージを運び込む前に、例えば、ローターディスク、ステータディスクおよびスペーサリングは、ローターディスクとステータディスクが、その間に位置するスペーサリングと共に互いに交互となるよう軸方向で互いに重ね合わせられる。ステータディスクとスペーサリングが、互いに当接するとき、ステータディスクはスペーサリングにおける安全装置によって平面内での半径方向のスライドに対して固定される。軸方向の移動と、ステータディスクの軸方向を中心とした回転は、反対になお可能なままであることが可能である。
【0010】
本発明の有利な実施形は、下位の請求項、明細書および図面からも見て取れる。
【0011】
好ましい実施形に従い、安全装置は、少なくとも二つの、特に三つの、平面から突き出した突出部を有する。突出部は、例えば突き出したノーズ部またはヒダとして形成されていることが可能である。これらは特に直角に、つまり軸方向にステータディスクから突き出ている。突出部が、隣接するスペーサリングの相補的なくぼみ内に介入するとき、ステータディスクは、効果的に平面内の回転およびスライドに対して固定される。
【0012】
同様に、一または複数の突出部が、一つのストッパー面として形成されていることが可能である。これは、隣接するスペーサリングのステップ部(独語:Absatz)に位置する。特に、ストッパー面は周囲方向に推移しており、そしてそれによって、ステータディスクがステータディスク、ローターディスクおよびスペーサディスクの積層物から滑り出すのを防止する。その際、ストッパー面が、ステップ部に当接することにより、ステータディスクの半径方向の中心決めが達成されることが可能であることは追加的に有利である。
【0013】
代替として、突出部が、隣接するスペーサリングの溝として形成されたくぼみ内に介入することも可能である。これにより基本的に突出部の溝に沿ってのスライドが可能である。ステータディスクを、ここでも平面内でのスライドに対して固定するために、突出部は少なくとも二つの溝内に介入し得る。これら溝の延在方向は互いに一つの角度を有している。つまり、互いに平行に推移していない。
【0014】
好ましくは、少なくとも三つの突出部が設けられている。これらのうち二つは、平行に推移する溝内に介入し、そして第三の突出部は、他の溝と一つの角度を形成する溝内へと介入することが可能である。二以上の突出部の使用によって、より高い力が受容され、そしてステータディスクはより良好に、平面内での半径方向のスライドに対して固定される。
【0015】
別の有利な実施形に従い、少なくとも二つの突出部が、ステータディスクの曲率中心点と、180度でない一つの角度を形成する。特に、周囲方向に延在する溝内における、突出部のそのような配置は、ステータディスクの半径方向のスライドを防止する。半径方向のスライドに対する固定は、その際、二つの突出部と中心点によって形成される角度が90度に近づくほど、より確実に行われることとなる。
【0016】
好ましくは、該角度は、75度から105度の値、そして好ましくは90度の値を取る。半円形状のステータディスクにおいて、例えば二つの突出部が、ステータディスクの端部の領域に設けられ、そして少なくとも一つの別の突出部が、周囲方向でみて、ステータディスクの端部の間の中央に設けられることが可能である。これは、別の突出部が、曲率中心点及び端部に設けられた突出部と其々約90度の角度を形成することを意味する。追加的に、一または複数の別の突出部が設けられることも可能である。
【0017】
特に、ステータディスクの端部の突出部は、互いに接し合って隣接する半円形状の二つのステータディスクの重なり合いを防止するのにも使用される。
【0018】
複数のノーズ部またはヒダの替わりに、突出部が、突き出す単独のノーズ部またはヒダにより、およびステータディスクの羽根により形成されていることが可能である。これら羽根は、ステータディスクによって定義される平面に対して傾斜して位置しており、これによって平面から突き出している。ノーズ部またはヒダは、その際、隣接するスペーサリングの溝内に介入することができ、そしてステータディスクは、そのようにして、ターボ分子ポンプの軸に向かうノーズ部またはヒダからの方向の半径方向の移動に対して、ステータディスクを固定することができる。同時に、羽根は溝の外壁に当接し、ステータディスクをターボ分子ポンプの軸から離れる如何なる半径方向の移動に対しても固定的とする。
【0019】
別の有利な実施形に従い、ステータディスクは一部品式に形成されている。ステータディスクは、例えば打ち抜き曲げ部材として薄板から形成されていることが可能である。代替として、ステータディスクは、固形物から、例えばフライス加工によってつくりだされることが可能である。
【0020】
特に好ましくは、安全装置はステータディスクの曲げられた材料により形成される。この目的の為、打ち抜き曲げプロセスにおいて、例えばステータディスクの縁部部分が、安全装置を形成するために折り曲げられる。このようにして、安全装置の為に追加的材料がステータディスクにもたらされる必要が無い。
【0021】
別の有利な実施形に従い、曲げられた材料によって、平面内に位置する空所部(ステータディスクの空所部)が形成される。ステータディスクにおいて、羽根は通常少なくとも領域的に空所部によって境界づけられている。いずれにせよ空所部の為に打ち抜かれるべき材料が、その代わりに折り曲げられ、そして安全装置として使用されると、安全装置の為の追加的な空所部の形成または追加的な材料の使用が省略されることが可能である。安全装置は、ステータディスクの羽根と同様、打ち抜き曲げ過程のこのプロセスステップ中に形成されることができる。
【0022】
別の有利な実施形に従い、少なくとも一つの突出部の一部が、少なくとも領域的に平面に対して平行に間隔をあけて延在する。突出部は、これにより例えばL字形状またはS字形状を有することが可能である。これにより突出部は、より拡大された当接面をスペーサリングの溝内で有する。その結果、ステータディスクは平面内での半径方向のスライドに対してより良好に固定される。
【0023】
好ましくは、安全装置はバヨネット形式に形成される。これは、例えばL字形状の突出部またはS字形状の突出部が、スペーサリングのアンダーカット(独語:Hinterschneidung)内に入り込むことが可能であることを意味する。ローターパッケージおよびステータパッケージの組立の際、ステータディスクは、軸方向においてもスペーサリングに固定されることが可能である。
【0024】
代替として、安全装置が、周囲方向に推移する一つの上昇部を有することが可能である。複数の、個々に平面から突き刺す突出部の替わりに、安全装置は周囲方向に連続して形成されることが可能である。これは例えば、周回するカラー部により形成される。
【0025】
代替として、または追加的に、安全装置は、少なくとも二つの空所部をステータディスク内に有する。この空所部内に、例えば突出部またはスペーサリングが介入することができ、そしてそのようにして、スペーサリングに対するステータディスクの半径方向のスライドが防止されることができる。例えば、スペーサリングの突出部はいずれにせよ存在する、羽根を画定する空所部内に介入することができる。
【0026】
有利な実施形に従い、安全装置はステータディスクの外側の縁部の領域内に設けられる。このようにして、ローターパッケージおよびステータパッケージが重ね合わせられるとき、安全装置が、ステータディスクの外側の縁部の領域に存在するスペーサリング内に介入することが可能であるということを保証する。
【0027】
安全装置は、可塑的に変形可能に形成されることが可能である。そして、曲げによって所定の位置にもたらされることができる。このようにして安全装置の曲げによって、製造プロセスにおいては発生する公差、例えばスペーサリングの公差が補償されることが可能である。
【0028】
別の有利な実施形に従い、安全装置はローレット及び/又は歯構造を、ステータディスクの外側の縁部の領域に有する。例えば、ステータディスクの歯構造は、スペーサディスクのローレット内に介入することが可能である。周囲方向でみて、二以上の領域が、歯構造を設けられていることが可能である。これらは、特に90度の角度を互いに形成している。このようにして、平面内におけるステータディスクの半径方向のスライドも、回転も防止される。代替として、ステータディスクは、一つのローレットを有することが可能である。このローレット内にスペーサリングの歯構造が介入する。
【0029】
本発明は、更に、ターボ分子ポンプの為に設けられるステータディスクを製造するための方法を含む。これらステータディスクは、平面内に部分リング形状に延在しており、一つの内半径および一つの外半径を有し、そして一つの安全装置を有している。この安全装置でもってステータディスクは、少なくとも、隣接して配置されたスペーサリングに対する平面内での半径方向のスライドに対して固定可能である。本発明に係る方法は、安全装置およびステータディスクの少なくとも一つの羽根が、打ち抜きまたはレーザーカットおよびこれに引き続く曲げによって形成される点に特徴を有する。これによって、安全装置および羽根は、一つの同一のプロセス中で形成されることができ、これによって極めて経済的に形成されることが可能である。
【0030】
その上、本発明は、ターボ分子ポンプにも関する。このターボ分子ポンプは、上述した形式の少なくとも一つのステータディスクと、スペーサリングを有し、その際、安全装置は、ステータディスクを平面内での移動に対して固定するために、スペーサリングと相互作用する。ステータディスクの上述した長所および発展形は、本発明に係るターボ分子ポンプに対しても相応して有効である。
【0031】
ターボ分子ポンプの有利な実施形に従い、ステータディスクは一つの安全装置を有する。この安全装置は、スペーサリングの少なくとも一つの空所部と相互作用する。例えば、少なくとも一つの空所部は、スペーサリングの周囲方向に推移する一つの溝により形成されることが可能であり、またはスペーサリングの少なくとも一つのくぼみにより形成されることが可能である。
【0032】
以下に本発明を、可能な実施形に基づき、添付の図面を参照しつつ説明する。図は、以下を示す。