【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、本発明によれば、医療流体を処理するための請求項1に記載の器具によって解決される。器具は、結合面を有する処理装置と、硬質部品からなり、前記処理装置の結合面に結合可能な可撓性フィルムによって覆われた流体案内通路を有するカセットとを備えている。本発明では、これに関連して、空気透過性の多孔質材料の層が前記カセットを結合させた状態において前記可撓性フィルムと前記結合面との間の少なくとも一部の領域に配置されており、前記カセットの結合プロセスにおいておよび/または前記カセットを結合させた状態において、前記多孔質材料の層を通って空気を面積的に(areally)吸い出すことができる。本発明によれば、もはや従来技術のように空気が可撓性マットのスロットを通じたいくつかの地点において選択的にのみ吸い出される(その結果、空気のアイランドが残りかねない)のではなく、むしろ空気透過性の多孔質材料の層を通って面積的に吸い出される。これにより、可撓性フィルムと結合面との間の領域から空気の全面積にわたる吸い出しが可能になり、局所的な吸い出しのみでは決して排除できない空気の噛み込みを、確実に防止することができる。さらに、マット通路を有する可撓性マットのように清掃性に乏しい設計を避けることが可能であり、実質的に開口のない可撓性マットを使用することができ、あるいはマットをまったく使用しなくてもよい。
【0011】
これに関連して、本発明によれば、きわめて好都合なことに、結合プロセスの間(特には、結合プロセスの終わりの直前)に空気を吸い出すことができる。接触圧力は、カセットの結合時に最大値まで高められる。ここで、カセットが最大の押し付け力で押し付けられるよりも前に、カセットが結合面に触れるや否や吸引は開始される。この短い段階の間に吸引されて真空となる。具体的に、多孔質材料または構造は、この段階においてはそれほど強くは圧縮されてため、空気をより良好に導く。しかしながら、空気の吸引は、カセットが完全に結合した状態でも行うことができる。
【0012】
空気透過性の多孔質材料の層の平面に沿ってかつ当該層を通じて好都合に空気を吸い出すことができる。これにより、結合の平面に沿った空気の除去が可能にされる一方で、同時に、アクチュエータおよびセンサは、結合の平面に垂直な方向に機能を発揮することができる。これに関して、1つ以上の吸引地点においてフィルムと結合面との間の空間に対して流体を接触させるとともに、この空間を吸引器具へと接続すれば充分であり、空気がそこから結合の平面に沿って面積的に吸い出される。マットが設けられる場合、穿孔を基本的には有していない可撓性マットが、1つまたは少数の地点に、空気透過性の多孔質層の流体の接触のための開口を有することができる。
【0013】
空気透過性の材料(具体的には、多孔質材料)で製作された層に起因して、吸引のための真空は、空気透過性の多孔質材料からなる層の全領域で作用することになり、このことが、全面積の確実な吸引を可能にする。この層の材料は、この層の主平面に沿う方向およびこの層の主平面を横切る方向の両方に空気透過性であることが好ましい。これにより、空気は、この材料層において当該材料層の主平面に沿って輸送されるため、可撓性フィルムの表面と結合面との間の空気は、確実に吸い出される。
【0014】
空気透過性の多孔質材料の層は、前記カセットを結合させた状態において、前記可撓性フィルム上に直接的に配置されていることが好ましい。これにより、可撓性フィルムの表面から空気が直接的に吸引されるため、結果として確実な結合が可能になる。
【0015】
空気透過性の多孔質材料からなる層は、不織布を含んでいることがさらに好ましい。そのような不織布は、上述のような空気の輸送を許容するとともに、結合面とフィルムとの間、したがってセンサおよびアクチュエータとフィルムとの間に、一様な接触をもたらすが、同時に、可撓性フィルムと結合面または可撓性マットとの間の平面に面積的な吸引(areal suction)を保証する。
【0016】
空気透過性材料の層は、前記可撓性フィルムの全領域にわたって配置されることがさらに好ましい。このように、空気透過性材料からなる層の全表面にわたって空気の吸引を可能にするために、費用効率の向上及び簡潔化の可能性がもたらされる。しかしながら、特定の用途においては、そのような空気透過性材料の層を一部の領域のみに設けることも可能である。
【0017】
カセットは、前記カセットの結合プロセスにおいておよび/または前記カセットを結合させた状態において、空気透過性の材料からなる層の平面に直角な方向に当該層を超えて伝達される圧力によって、結合状態において前記結合面に押し付けられているとともに、前記可撓性フィルムは、流体を漏らさない状態で前記カセットの硬質部品の前記流体案内通路に押し付けられているが、空気透過性の材料で作られた層は、その平面に沿って空気透過性を保持していることが好ましい。前記空気透過性の多孔質材料からなる層は、硬質部品のウェブとウェブに押し付けられるフィルムとの間の相互作用により流体案内通路をシールするのに必要な圧力を伝達することができる。しかしながら、同時に、空気透過性の多孔質材料からなる層は、その平面に沿った気体の透過性を保持することができるため、フィルムと結合面との間の空気の面積的な吸引を提供できる。
【0018】
処理装置は、前記結合面に配置された可撓性マット(具体的には、シリコーンマット)を有しており、前記カセットは、前記可撓性マットを介して処理装置の結合面に結合可能であることがさらに好ましい。
【0019】
好都合な実施の形態においては、処理装置は、前記結合面上に配置された可撓性マットを有しており、前記カセットが前記可撓性マットを介して前記処理装置の結合面に結合可能とされ、空気透過性の材料の層は、前記カセットを結合させた状態において、前記可撓性フィルムと前記可撓性マットとの間に配置されている。これにより、可撓性マットが流体を漏らさない状態で結合面に対してシールされるため、きわめて清掃が簡単であって衛生的である構成を提供することができる。一方、可撓性マットと可撓性フィルムとの間に配置された空気透過性の層を介して吸引が行われる。これに関連して、シリコーンまたは他の適切なエラストマーを可撓性マットのための材料として使用することができる。これに関連して、不織布などの多孔質材料の層が、空気透過性の層として提供される。
【0020】
しかしながら、本発明においては、結合面に沿った空気の面積的な吸引に起因して、カセットの可撓性フィルムと処理装置の結合面との間の可撓性マットを省略し、不織布などの空気透過性の多孔質材料の層だけを設けることも可能である。その結果、医療用カセットの可撓性フィルムが、マットを間に介在させずに、空気透過性材料からなる層を介して処理装置の結合面上に直接に位置し、結合面と可撓性フィルムとの間の空気の吸い出しが直接的に行われる。
【0021】
さらに本発明は、医療流体を処理するための器具であって、結合面と前記結合面上に配置された可撓性マットとを有する処理装置と、前記可撓性マットを介して前記処理装置の結合面へと結合可能な可撓性フィルムで覆われた流体案内通路を有する硬質部品からなるカセットとを備え、前記可撓性マットが、空気透過性の材料を含み、前記カセットの結合プロセスにおいておよび/または前記カセットを結合させた状態において、前記可撓性マットの平面に沿って、且つ/または前記可撓性マットを通って、開口を有しない前記可撓性マットの一領域において空気が吸い出されるように構成されている器具を提供する。空気透過性のマット材料を使用することにより、可撓性マットそのものを介して面積的な吸引が行われるため、空気透過性材料からなる追加の層を省略することが可能になる。このとき、真空の供給は、処理装置の結合面の該当する通路を介して行うことができる。薄いシリコーン層は、空気に関して特定の透過性を有するため、相応に高い真空を加えることによりマットを通って直接的に空気を吸い出すことができるように、可撓性マットをシリコーンで形成でき、空気を吸い出すべき領域をきわめて薄くすることができる。したがって、清掃をより困難にするマットを貫くスロットを省略することができる。さらに、結合面が、流体を漏らさない状態でさらにシールされる。
【0022】
しかしながら、空気透過性の多孔質材料からなる上述の層または空気透過性材料からなる可撓性マットに代えて、あるいはこれらに加えて、フィルムの表面または可撓性マットのフィルムに面する表面が、空気の吸い出しを可能にする構造を有してもよい。
【0023】
したがって、さらに本発明は、結合面を有する処理装置と、可撓性フィルムで覆われた流体案内通路を有する硬質部品からなり、前記処理装置の結合面に結合可能なカセットとを備える医療流体を処理するための器具である。これに関して、本発明では、前記可撓性フィルムの表面が前記カセットの結合プロセスにおいておよび/または前記カセットを結合させた状態において前記フィルムの構造に沿って空気を吸い出すことが可能な構造を有する。このように、フィルム表面の構造により形成される通路を通って空気が吸い出されることによって、フィルムと結合面またはマットとの間の領域からの空気の確実な吸い出しが結合の平面に沿って可能となる。したがって、この構造により空気の面積的な吸い出しが許容され、空気のアイランドの形成が妨げられ、この構成は、少なくとも空気なしの結合が要求される領域に形成される。これに関連して、フィルムの表面の構造は、可撓性フィルムと硬質部品のウェブとの間の押し付け力に変動が生じず、あるいは最小限の変動しか生じないように、充分に小さいことが好ましい。しかし、前記構造によって形成される通路が結合面またはマットとフィルムとの間の圧力によって完全に閉じられてしまうことがなく、空気の透過性を保持するように、前記構造は充分に大きいことが好ましい。
【0024】
これに関して、前記構造をフィルム表面の型押しによって形成することができる。あるいは、前記構造をフィルムの押し出しにおいて直接導入することも可能である。
【0025】
さらには、可撓材料のフィルムに面する側に構造を適用することが可能である。したがって、本発明は、結合面と前記結合面上に配置された可撓性マット(具体的には、シリコーンマット)とを有する処理装置と、可撓性フィルムで覆われた流体案内通路を有する硬質部品からなり、前記可撓性マットを介して前記処理装置の結合面に結合可能なカセットとを備えた医療流体を処理するための器具をさらに包含する。本発明によれば、前記可撓性フィルムに面する前記可撓性マットの表面が構造を有しており、前記カセットの結合プロセスにおいておよび/または前記カセットを結合させた状態において、前記可撓性マットの構造に沿って空気を吸い出すことができる。可撓性マットの表面の構造を通した吸引は、上述したような可撓性フィルムの構造を通した吸引と同様の方法で行われる。
【0026】
しかしながら、フィルムに構造を設ける場合、フィルムに面するマットの表面に構造を設ける場合に比べて、フィルムに面するマットの表面を滑らかにでき、したがって清掃を容易にできるという明白な利点を有している。これに対し、カセットはいずれにせよ使い捨てであり、したがって使用後に捨てればよく、清掃の必要がない。
【0027】
可撓性フィルムの構造およびマット表面の構造の両者のために使用することができる構造の好ましい実施の形態が、以下で説明される。
【0028】
前記構造は、網状構造および/または曲がりくねった構造および/または直線状の構造を有することが好ましい。網状構造(特に好ましくは、ハニカム構造)を通って簡単かつ確実に面積的に空気を吸い出すことができる。これに対し、曲がりくねった構造によって、特定の領域における直接的な吸引を達成することができる。
【0029】
前記構造は、異方性および/または不均一にされることがさらに好ましい。具体的に、例えば、上方から下方へ向かう方向に比べて左方から右方へ向かう方向について通路を大きくするなど、適切な構造を選択することによって、異方性の吸引が実現可能である。表面上の構造を、不均一にすることも可能である。これにより、たとえフィルムとマットとの間の空間が1つの地点においてのみ吸引器具に流通している場合でも、表面の空気の一様な吸引を実現することが可能である。
【0030】
設けられたチャネルのアスペクト比(aspect ratio)は、そのような構造によって実現される吸引力について重要である。これに関連して、通路の幅は、深さよりも小さいことが好ましい。そのような狭くて深い通路によれば、フィルムおよびマットの押し付け時に通路が閉じられることがなく、吸引可能な状態が保持される。通路が浅くなるほど、マットに対するフィルムの部分的接触による封止の恐れが大きくなると考えられる。通路が広すぎると、硬質部品のウェブのフィルムの平滑な後面に対する押し付けが不均一になり、この面において流体案内通路の間の漏れが生じる危険がさらに増加する。
【0031】
さらなる実施の形態において、フィルム表面またはマット表面の構造は、流体案内通路に沿って延びることができる。これにより、より小さな容積を排気すれば足りることになり、吸引または初期の漏れなしの確認試験に要する時間が短縮される。加えて、フィルムと可撓性マットとの間で空気なしの接続が実際に必要となる場所においてのみ空気が吸い出される。これに対し、そのような空気を含まない接続は、流体案内通路の存在しない領域においては不要である。したがって、前記構造は、流体案内通路に沿って曲がりくねった形態および/または直線状の形態で延びることが好ましい。
【0032】
しかしながら、これに関連して、前記構造は、吸引地点を形成している前記流体案内通路の外部の1つ以上の領域に収束することが好ましい。これにより、これらの流体案内通路の外部の領域において、例えば吸引装置を単純に接続することができる一方で、吸引地点から流体案内通路の領域へと延びる構造により、これらの領域からの空気の確実な吸い出しが提供される。
【0033】
前記構造は、前記流体案内通路を有している領域から流体案内通路の外部の領域への移行部分において、前記流体案内通路のウェブ縁に対して略垂直に延びることが好ましい。これにより、押し付けに起因して構造の空気案内機能を失うことなく、通路のウェブ縁によるフィルムの一様な押し付けを保証することができる。
【0034】
前記構造は、前記流体案内通路のウェブ縁を横切っていない領域において、前記流体案内通路のウェブ縁から所定の間隔をあけて設けられていることが好ましい。これにより、構造が、技術的プロセスの側面から必要とされるとともに流体で濡れるフィルム領域においてのみドレインを行うことができる。これに対し、残りの領域においては、フィルムと硬質部品との間の接触圧力が大きいため、空気の吸引が不要である。
【0035】
前記構造は、前記可撓性フィルムにおいて異なる流体案内通路を有する領域の間の直接的な接続が存在しないように形成されることが好ましい。これは、フィルムが破れたときに、流体が構造に沿ってカセット全体に広がることができないという利点を有する。したがって、流体案内通路を有さない領域における破れも、重要性を有さないことに変わりはない。たとえ流体案内通路の領域においてフィルムが破れても、流体は、前記構造に沿って吸引地点へと吸い出されるだけであり、通路のウェブ縁を越えた流体案内通路の間の漏れは防止される。
【0036】
しかしながら、流体案内通路に沿って延びるわけではなく、その構造が通路のウェブ縁に常に垂直というわけではないハニカム構造を使用しても、良好かつ確実な押し付けおよび空気の吸引を達成することができる。簡単かつ費用効率に優れた製造が、そのような設計の利点である。
【0037】
本発明に係る方法におけるカセットは、結合状態において前記結合面に押し付けられ、前記可撓性フィルムは、流体を漏らさない状態で前記カセットの硬質部品の前記流体案内通路に押し付けられているが、前記構造は、その平面に沿った空気の移動を許容することが好ましい。
【0038】
さらに、本発明は、結合面と前記結合面に配置された可撓性マット(具体的には、シリコーンマット)とを有する処理装置と、可撓性で覆われた流体案内通路を有する硬質部品からなり、前記可撓性マットを介して前記処理装置の結合面に結合可能なカセットとを備えた医療流体を処理するための器具を包含する。本発明では、前記カセットの結合プロセスにおいておよび/または前記カセットを結合させた状態において、前記可撓性フィルムと前記可撓性フィルムに面する前記可撓性マットの表面との間の平面に沿って、空気を吸い出すことができる。これにより、複雑かつ/または高価であって清掃も困難であるマット通路またはスロットを可撓性マットに備えることを、避けることが可能である。むしろ、マット表面と可撓性フィルムとの間から確実かつ簡単に空気を吸い出すことができる。吸引は、少なくとも一部の領域に配置された空気透過性材料の層を介して、または可撓性フィルムもしくはマット表面の構造を介して行われる。これにより、すでに上述した利点がもたらされる。
【0039】
したがって、本発明によれば、従来技術のように可撓材料のスロットを通して選択的にのみ空気を吸い出すのではなく、むしろフィルムとマットとの間の平面に沿って面積的に吸い出す。これにより、フィルムと結合面との間の空間に対して1つ以上の地点において流体を接触させるとともに、この空間を吸引器具に接続すれば充分であり、フィルムとマットとの間の結合の平面に沿って空気が面積的に吸い出される。したがって、マット通路を有する可撓性マットのコスト効率の高い設計を避けることが可能である。さらに、マットにスロットを持たせることなく、確実に空気を含まない接続がフィルムとマットとの間に保証され、その結果として、流体を漏らさず、したがって理想的かつ衛生的に清掃できる装置表面を提供することが可能になる。
【0040】
空気の吸引は、可撓性フィルムと可撓性マットとの間の領域に配置された構造を介して行われることが好ましい。これにより、結合面に沿った空気の案内が可能にされる一方で、同時に、アクチュエータおよびセンサは、結合面に垂直な方向に機能を発揮することができる。このような効果を奏するのは、上述した空気透過性材料からなる層や、フィルムまたはマットの表面の構造など、面積的な構造の場合である。これにより、この領域からの空気の全面積にわたる吸い出しが可能になり、局所的な吸い出しのみでは決して排除できない空気の噛み込みを容易に防止することができる。
【0041】
本発明に係る器具は、少なくとも1つの吸引装置を有することが好ましい。この吸引装置によって真空が利用可能になり、この真空が可撓性フィルムと可撓性マットまたは結合面との間の領域に接続されることにより、吸引が可能になる。これに関連して、吸引装置の試験の能力を改善するために、吸引装置を様々な方法で駆動することが好ましい。
【0042】
本発明に係る器具において、どの構造によって面積的な吸引が実現されるかにかかわらず、空気案内層は、前記流体案内通路の領域の外部の1つ以上の地点において吸引装置に連通することが好ましい。本発明においては、吸引が結合面に沿って行われるため、吸引装置との連通を流体案内通路の領域において直接利用可能にする必要性がなくなる。
【0043】
本発明に係る器具において、前記吸引は、前記処理装置の結合面に配置された少なくとも1つの弁を介して行われることが好ましい。前記弁は、例えばカセットを処理装置の結合面へと押し付けることにより、プランジャのような手段によって開放され、空気は、空気案内層から自動的に吸い出される。
【0044】
代替案として、カセットを通じて吸引を行うことも可能である。これに関し、疎水性膜を有する吸引用開口をカセットに設けることができる。そして、吸引は、カセットの硬質部品に配置されるとともに疎水性膜を備えている1つ以上の吸引用開口を介して行うことが好ましい。これにより、空気案内層に対する流体の連絡を容易に行うことが可能となる。
【0045】
本発明に係る器具が、具体的には散乱光による濡れの検出によって漏れを認識するための光学センサを備えていることが好ましい。この構成によれば、流体の排出により光学センサで検出可能な反射特性の変化を生じさせるフィルム表面の構造との組み合わせによって、簡潔で非接触の漏れ検出が実現される。
【0046】
本発明に係る器具は、空気の自動吸引を実行する制御部を有することが好ましい。これに関連して、制御部は、吸引装置を制御して、医療用カセットの空気を含まない結合を自動的に提供する。
【0047】
前記制御部は、医療用カセットに漏れがないことを自動的にチェックすることが好ましい。これは、後述するように、空気を吸引するときに真空をチェックすることによって実行可能である。
【0048】
以下に示される医療用カセットが、上述した本発明に係る器具において使用されることがさらに好ましい。
【0049】
これに関連して、本発明の医療用カセットは、可撓性フィルムで覆われた流体案内通路を有する硬質部品を含み、処理装置の結合面に結合可能である。さらに、本発明では、所定の構造が前記可撓性フィルム上に配置され、前記カセットの結合プロセスにおいておよび/または前記カセットを結合させた状態において、前記構造を通して前記可撓性フィルムの表面の平面に沿って空気を吸い出すことができる。これにより、医療流体を処理するための器具に関してすでに詳しく示したとおり、可撓性フィルムとマットまたは処理装置の結合面との間の空気の確実かつ信頼できる吸引を保証することができる。これに関連して、前記構造が医療用カセットの構成要素を構成することが、とくに有利である。なぜならば、医療用カセットは、使い捨ての部品であり、使用後の清掃を必要としないからである。すなわち、空気の吸引のための構造は、清掃性に関するいかなる特別な条件も満足する必要がない。
【0050】
空気透過性の材料(具体的には、多孔質材料)の層は、少なくとも一部の領域において前記可撓性フィルム上に配置され、カセットの結合状態において、前記多孔性材料の層を通して前記多孔性材料の層の平面に沿って空気を面積的に吸い出すことができることが好ましい。そのような構成の利点は、すでに器具に関連して上述した通りである。可撓性フィルム上に配置された空気透過性の材料(具体的には、多孔質材料)の層は、空気の確実かつ一様な面積的な吸引を可能にする。
【0051】
空気透過性の多孔質材料の層は、前記可撓性フィルム上の全領域にわたって配置されることが好ましい。このようにすれば、可撓性フィルムと処理装置の結合面との間の全面積にわたって空気を吸い出すことができる安価かつ単純な構成を実現することができる。
【0052】
空気透過性の材料の層は、外周縁領域においてカセットに溶接されていることが好ましい。これにより、空気透過性材料の層は、カセットと一体のユニットを構成し、カセットにしっかりと保持される。空気透過性材料の層の溶接は、硬質部品に対するフィルムの溶接とともに単一の作業段階において行われることがさらに好ましい。その結果、費用効率の高い製造を実現することができる。
【0053】
前記溶接は、前記材料の層の平面に沿った気体の流れに対する障壁を形成することが好ましい。この構成によれば、前記溶接によって、カセットが処理装置に押し付けられている領域においてのみ空気が前記材料の層の平面に沿って吸い出されることになる。そうでなければ、空気が側方領域から吸い出され、結果として可撓性フィルムと処理装置との間の領域の排気が妨げられる可能性がある。この事実は、空気透過性材料の層をフィルムへと溶接するときに気体を通さない障壁が生成されるように、多孔質材料の層の構造を変更することが好ましいということを意味する。したがって、可撓性マットまたは結合面により、この地点において、空気を通さないように作られた材料層に対してシールを行うことができる。空気透過性材料の層は、カセットの硬質部品に溶接されていることが好ましい。この目的のために、空気透過性材料の層は、カセットの硬質部品をもたらしているプラスチックに対する溶接が可能な材料を含むことが好ましい。
【0054】
これに代え、あるいはこれに加えて、カセットの硬質部品が、前記構造(具体的には、空気透過性材料の層)が延びていない外周縁領域を有し、この縁領域が、押し付け時にシール用ウェブを形成する。これにより、構造を持たない縁領域により形成されたシール用ウェブによって、フィルムとマットまたは処理装置の結合面との間の空間を確実に排気できることが保証される。この目的のために、特にカセットの縁領域において、空気透過性材料の層または構造を省略することができる。
【0055】
可撓性フィルムは、外周縁領域においてカセットの硬質部品に溶接されていることが好ましい。この構成によれば、外周縁領域を従来技術と同様に可撓性フィルムに対する溶接に使用することができるとともに、この外周領域を前記構造のためのシール用ウェブとして機能させることができる。
【0056】
本発明において、空気透過性の材料の層は、前記可撓性フィルムに対して接続され、具体的には接着剤によって接合され、且つ/またはスポット溶接され、且つ/または貼り付けされ、且つ/または積層され、且つ/または留め鋲で留められていることが好ましい。この構成によれば、例えば、空気透過性材料の層が縁領域において硬質部品に溶接されない場合においても、空気透過性材料の層が可撓材料に対して確実に保持される。
【0057】
本発明に係る医療用カセットにおいて、前記カセットの結合プロセスにおいておよび/または前記カセットを結合させた状態において、前記構造(具体的には、空気透過性の材料の層)を介して、その平面に垂直に伝達される圧力は、前記可撓性フィルムを流体を漏らさない状態でカセットの硬質部品の前記流体案内通路に押し付けることが好ましい。さらに、前記構造(具体的には、空気透過性の材料の層)は、その平面に沿った気体の透過性を保持する。この構成によれば、流体案内通路の間での漏れが生じないが、それでもなお面積的な構造を介した確実な空気の吸い出しが可能であるフィルムと硬質部品との確実な押し付けが可能になる。このことは、例えば不織布からなる材料層を相応に構成することによって達成され、あるいは可撓性フィルムの表面の構造を相応に構成することによって達成される。
【0058】
前記空気透過性の多孔質材料の層は、不織布を含んでいることが好ましい。そのような不織布は、圧力の一様な伝達および自身の平面に沿った吸引に理想的である。
【0059】
さらなる実施の形態において、本発明に係る医療用カセットの可撓性フィルムの表面は、構造を有しており、カセットを結合させた状態において、前記構造を通して前記可撓性フィルムの平面に沿って空気を吸い出すことができることが好ましい。これにより、空気の噛み込みまたは空気のアイランドを形成することなく、フィルムとマットとの間またはフィルムと処理装置の結合面との間の領域から空気を確実に除去することができるとともに、この除去を容易な方法で達成することができる。これに関し、前記構造は、フィルムの表面に配置されることがきわめて有利である。なぜならば、カセットは、いずれにせよ使用後に廃棄され、したがって清掃を必要としないからである。
【0060】
医療流体を処理するための器具に関してすでに示したように、前記構造は、網状構造および/または曲がりくねった構造および/または直線状の構造を有することが好ましい。さらに、前記構造は、異方性および/または不均一にされていることが好ましい。ここで、前記構造によって形成される通路の幅をそれら通路の深さよりも小さくすることがさらに有利である。なぜならば、そのようにすることで、処理装置を押し付けたときに通路が閉じられることがなく、さらにフィルムの平滑な後面を硬質部品のウェブに一様に押し付けることができるからである。
【0061】
さらなる実施の形態においては、前記構造は、具体的には曲がりくねった構造および/または直線状の構造を使用して、前記流体案内通路に沿って延びていることが好ましい。これにより、排気しなければならない容積を少なくすることができる。
【0062】
前記構造は、吸引地点を形成する前記流体案内通路の外部の1つ以上の領域に収束していることが好ましい。これにより、この領域において単純な吸引を行うことができる一方で、前記構造を介して流体案内通路に沿った空気を含まない結合がこの領域に保証される。
【0063】
前記構造は、流体案内通路を有する領域から流体案内通路の外部の領域への移行部分において、前記流体案内通路のウェブ縁に対して略垂直に延びていることが好ましい。これにより、通路のウェブ縁に対するフィルムの一様な押し付けが、良好な空気の吸引と同時に保証される。
【0064】
前記構造は、前記流体案内通路のウェブ縁を横切っていない領域において、前記流体案内通路のウェブ縁から所定の間隔をあけて設けられていることが好ましい。これにより、フィルムの破れが生じた場合に前記構造に沿って流体がカセット全体に広がることを防止することができる。さらに、フィルムの通路のウェブ縁に対するフィルムの良好な押し付けが達成される。
【0065】
さらに、前記構造が、前記可撓性フィルムにおいて異なる流体案内通路を有する領域の間の直接的な接続が存在しないように形成されていることが好ましい。これは、フィルムが破れたときに、前記構造に沿って流体がカセット全体に広がることがあり得ないという利点を有する。したがって、流体案内通路を有しない領域における破れは、重要性を有さないことに変わりない。たとえ、流体案内通路の領域においてフィルムが破れても、前記構造に沿って流体が吸引地点へと吸い出されるだけであり、流体案内通路の間の通路のウェブ縁を越える漏れは防止される。
【0066】
本発明に係る医療用カセットの硬質部品は、通路の縁のシール用ウェブを接続するとともに、きつく押し付けられることにより閉じた領域を形成する閉じ込めウェブを有することが好ましい。吸引地点は、そのようなきつく押し付けられた状態で閉じられた領域に配置され、フィルムが破れたとき、漏れた流体は、この領域に達するだけであり、個々の流体案内領域の間の直接的な接触は生じえない。
【0067】
本発明に係る医療用カセットは、前記カセットの硬質部品に配置された少なくとも1つの吸引用開口を有することがさらに好ましい。フィルムとマットまたは結合面との間の空間は、この吸引用開口を介した吸引のための流体の接触を持つことができる。これにより、可撓性マットを完全体として形成することができ、装置側を理想的に清掃可能にすることができる。
【0068】
これに関連して、吸引用開口は、流体案内通路の領域の外部に配置されることが好ましい。これにより、溶接部に不具合があっても、同時に通路の地点においてフィルムが破れ、あるいは同時にシール用ウェブに不具合が生じない限り、吸引装置または吸引通路に配置された疎水性膜の汚染につながらないため、安全性が向上する。
【0069】
前記可撓性フィルムは、吸引用開口の周囲においてカセットの硬質部品に溶接されていることが好ましい。
【0070】
これに関連して、吸引用開口の周囲の溶接による環状の継ぎ目は、溶接による継ぎ目によって空気の吸引が損なわれることがないような構造を有することが好ましい。これは、フィルムの表面の構造においてとくに重要であり、例えば溶接の型の相応の構造によって実現可能である。
【0071】
これに代え、あるいはこれに加えて、溶接による継ぎ目の領域は、カセットの押し付けの平面に比べて低くすることができる。この構成においても、溶接の継ぎ目による空気の吸引の悪化を防止することができる。これは、空気透過性材料の層が使用される場合にきわめて有利である。
【0072】
疎水性フィルタが吸引用開口に配置されることが好ましい。これに関連して、1つ以上の吸引用開口が1つ以上の疎水性フィルタによって流体を漏らさない状態で閉じられていることが好ましい。疎水性フィルタは、流体を通さないと同時に、気体を通すことができる。
【0073】
さらに、本発明は、カセットを処理装置に結合させるための方法であって、信頼性の高い空気の噛み込みのない結合を可能にする方法を包含する。
【0074】
これに関連して、本発明は、可撓性フィルムで覆われた流体案内通路を有している硬質部品で作られたカセットを、医療流体を処理するための処理装置の結合面へと結合するための方法であって、前記医療用カセットを前記処理装置の結合面へと結合させるステップと、前記カセットの結合プロセスにおいておよび/または前記カセットを結合させた状態において、前記可撓性フィルムと前記処理装置の結合面との間の空気を吸い出すステップとを含み、前記吸い出すステップは、前記可撓性フィルムと前記結合面との間の少なくとも一部の領域に配置された空気透過性の多孔質材料の層を介して面積的に行われる方法を包含する。このプロセスにおいて、結合のステップおよび吸い出すステップは、順に実行することができ、または結合プロセスがまだ続いている間に吸い出しを開始することにより、少なくとも部分的に同時に実行することもできる。
【0075】
前記方法に代えて、吸い出すステップを、可撓性フィルムの表面の構造および/またはカセットを結合面に結合される可撓性フィルムに面する可撓性マットの表面の構造に沿って行うこともできる。これにより、器具に関してすでに示した利点、特には可撓性フィルムと処理装置の結合面との間の領域からの空気の確実な吸い出しを行うことができる。
【0076】
さらに、本発明は、可撓性フィルムで覆われた流体案内通路を有する硬質部品からなるカセットを、医療流体を処理するための処理装置の結合面へと結合するための方法であって、前記結合面上に配置された可撓性マットを介して前記医療用カセットと前記処理装置の結合面とを結合するステップと、前記カセットの結合プロセスにおいておよび/または前記カセットを結合させた状態において、前記可撓性フィルムと前記可撓性マットとの間の空気を吸い出すステップとを含み、前記吸い出すステップは、前記可撓性マットの領域において妨害なく行われ、実際には前記可撓性マットの平面に沿って且つ/または前記可撓性マットを通って行われ、この目的のために、前記マットは、空気透過性の材料を含んでいる方法を包含する。
【0077】
さらに、本発明は、可撓性フィルムで覆われた流体案内通路を有する硬質部品からなるカセットを、医療流体を処理するための処理装置の結合面に結合するための方法であって、前記結合面に配置される可撓性マット(具体的には、シリコーンマット)を介して前記医療用カセットと前記処理装置の結合面とを結合するステップと、前記カセットの結合プロセスにおいておよび/または前記カセットを結合させた状態において、前記可撓性フィルムと前記可撓性マットとの間の空気を吸い出すステップとを含み、前記吸い出すステップは、前記可撓性フィルムと前記可撓性フィルムに面する前記可撓性マットの表面との間の平面に沿って行われる方法を包含する。これにより、すでに上述した利点がもたらされる。特に、これに関連して、可撓材料を、安価かつ清掃容易に製作することができる。
【0078】
これに関連して、本発明に係る方法において、上述した医療用カセットおよび/または医療流体を処理するための器具が使用されることが好ましい。
【0079】
さらに本発明は、可撓性フィルムで覆われた流体案内通路を有する硬質部品からなる医療用カセットについて、特には当該医療用カセットを満たす前に、漏れがないことをチェックするための方法であって、前記医療用カセットを処理装置の結合面に結合するステップと、前記カセットの結合プロセスにおいておよび/または前記カセットを結合させた状態において、前記可撓性フィルムと前記処理装置の前記結合面との間の空気を吸い出す、特には面積的に吸い出すステップと、生成される真空を使用して前記医療用カセットに漏れがないことをチェックするステップとを含み、前記漏れがないことのチェックするステップは、カセットの結合の間および/または後に行われる方法に関する。フィルムに漏れがある場合、空気の吸引時に真空の蓄積が生じえないため、本発明によれば、真空の監視および空気の吸い出しによる真空の排気によって、高すぎる漏れの比率を検出し、表示することが可能である。このようにして、使い捨てフィルムの漏れを、ディスポーザブルを満たす前および処理を開始する前に、最初に認識することができる。これにより、欠陥のあるディスポーザブル品を、無傷のディスポーザブルと交換することができる。このようにして、連続的な排気によってフィルムの漏れを検出し、欠陥のあるディスポーザブルを交換することができる。
【0080】
これは、特には、本発明の面積的な吸引によって促進される。これに対し、面積的な吸引ではない場合、フィルムとマットとの間に自動シールが生じ、チェックがより困難になると考えられる。このようなプロセスにおいて、上述したような医療用カセットおよび/または医療流体を処理するための装置を、好適に使用することができる。
【0081】
次に、本発明を、実施の形態および図面を参照して、さらに詳しく示す。