特許第6118853号(P6118853)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6118853医療流体を処理するための器具および方法ならびに医療用カセット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6118853
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】医療流体を処理するための器具および方法ならびに医療用カセット
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20170410BHJP
   A61M 1/28 20060101ALI20170410BHJP
   A61M 1/36 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   A61M1/16 165
   A61M1/28 110
   A61M1/36 111
【請求項の数】33
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2015-159479(P2015-159479)
(22)【出願日】2015年8月12日
(62)【分割の表示】特願2013-265851(P2013-265851)の分割
【原出願日】2008年5月16日
(65)【公開番号】特開2015-231561(P2015-231561A)
(43)【公開日】2015年12月24日
【審査請求日】2015年9月11日
(31)【優先権主張番号】102007042964.0
(32)【優先日】2007年9月10日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501276371
【氏名又は名称】フレセニウス・メディカル・ケア・ドイチュラント・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター ゲッツ
(72)【発明者】
【氏名】ヘッカー ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ケーラー マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ラウアー マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー ハンス−ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ウェーバー トビアス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイス マンフレッド
【審査官】 川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−528168(JP,A)
【文献】 特開2003−180834(JP,A)
【文献】 特表平07−506520(JP,A)
【文献】 特開平09−066495(JP,A)
【文献】 特開2000−241501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/16
A61M 1/28
A61M 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性フィルムで覆われた流体案内通路を有する硬質部品からなり、処理装置の結合面へと結合可能な医療用カセットであって、
少なくとも一部の領域において前記可撓性フィルム上に配置された空気透過性の材料の層を有し、前記医療用カセットの結合プロセスにおいておよび/または前記医療用カセットを結合させた状態において、前記空気透過性の材料の層の平面に沿って空気を吸い出すことができることを特徴とする医療用カセット。
【請求項2】
前記空気透過性の材料は、多孔質材料であり、
前記医療用カセットの結合状態において、前記多孔質材料の層を通して前記多孔質材料の層の平面に沿って空気を面積的に(areally)吸い出すことができる請求項1に記載の医療用カセット。
【請求項3】
前記空気透過性の材料の層は、前記可撓性フィルム上の全領域に配置されている請求項1又は2に記載の医療用カセット。
【請求項4】
前記空気透過性の材料の層は、外周縁において前記医療用カセットに溶接されている請求項1〜3の何れか1項に記載の医療用カセット。
【請求項5】
前記溶接は、前記空気透過性の材料の層の平面に沿った気体の流れに対する障壁を形成している請求項4に記載の医療用カセット。
【請求項6】
前記空気透過性の材料の層は、前記医療用カセットの硬質部品に溶接されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の医療用カセット。
【請求項7】
前記医療用カセットの硬質部品が、造、具体的には前記空気透過性の材料の層が延びていない外周縁領域を有していることにより、この縁領域は、押し付けられたときにシール用ウェブを形成する請求項1又は2に記載の医療用カセット。
【請求項8】
前記可撓性フィルムは、前記外周縁領域において前記医療用カセットの硬質部品に溶接されている請求項7に記載の医療用カセット。
【請求項9】
前記空気透過性の材料の層は、前記可撓性フィルムに対して接続され、具体的には接着剤によって接合され、且つ/またはスポット溶接され、且つ/または貼り付けされ、且つ/または積層され、且つ/または留め鋲で留められている請求項1に記載の医療用カセット。
【請求項10】
前記医療用カセットの結合プロセスにおいておよび/または前記医療用カセットを結合させた状態において、造を介して、具体的には空気透過性の材料の層を介して、その平面に垂直に伝達される圧力は、前記可撓性フィルムを流体を漏らさない状態で前記医療用カセットの硬質部品の前記流体案内通路に押し付けるが、
前記構造、具体的には空気透過性の材料の層は、その平面に沿った気体の透過性を保持する請求項1又は2に記載の医療用カセット。
【請求項11】
前記空気透過性の材料の層は、不織布を含んでいる請求項1に記載の医療用カセット。
【請求項12】
前記硬質部品は、前記流体案内通路の縁のシール用ウェブを接続するとともに、押し付けられることにより閉じられるシール領域を形成する閉じ込めウェブを有している請求項1〜11のいずれか項に記載の医療用カセット。
【請求項13】
前記医療用カセットの硬質部品に配置された少なくとも1つの吸引用開口を備え、前記吸引用開口は、前記処理装置の結合面に向けて配置される第1端部と、前記処理装置の吸引チャネルに接続可能な第2端部と、前記硬質部品を通じて前記第1端部から前記第2端部まで延びる部分と、を有し、前記硬質部品内に前記流体案内通路から分離された通路を形成する請求項1〜12のいずれか1項に記載の医療用カセット。
【請求項14】
前記吸引用開口は、前記流体案内通路の領域の外部に配置されている請求項13に記載の医療用カセット。
【請求項15】
前記可撓性フィルムは、前記吸引用開口の周囲において前記医療用カセットの硬質部品に溶接されている請求項14に記載の医療用カセット。
【請求項16】
前記吸引用開口の周囲に、溶接による環状の継ぎ目を有している請求項15に記載の医療用カセット。
【請求項17】
溶接による環状の継ぎ目は、前記吸引用開口の周囲の構造を有している請求項16に記載の医療用カセット。
【請求項18】
溶接による継ぎ目の領域は、前記医療用カセットの押し付け面に比べて低くされている請求項16に記載の医療用カセット。
【請求項19】
疎水性フィルタが前記吸引用開口に配置されている請求項13に記載の医療用カセット。
【請求項20】
結合面と前記結合面に配置された可撓性マット、具体的にはシリコーンマットとを有する処理装置と、前記可撓性マットを介して前記処理装置の結合面に結合可能な可撓性フィルムで覆われた流体案内通路を有する硬質部品を有する請求項1〜19の何れか1項に記載の医療用カセットとを備えた医療流体を処理するための器具であって、
前記医療用カセットの結合プロセスにおいておよび/または前記医療用カセットを結合させた状態において、前記可撓性フィルムと前記可撓性フィルムに面する前記可撓性マットの表面との間の平面に沿って、空気を吸い出すことができることを特徴とする器具。
【請求項21】
少なくとも1つの吸引装置を備えている請求項20に記載の器具。
【請求項22】
空気案内層は、前記流体案内通路の領域の外部の1つ以上の地点において吸引装置に連通する請求項21に記載の器具。
【請求項23】
吸引は、前記処理装置の結合面に配置された少なくとも1つの弁を介して行われる請求項20〜22のいずれか項に記載の器具。
【請求項24】
吸引は、前記医療用カセットの硬質部品に配置された1つ以上の吸引用開口を介して行われる請求項20〜23のいずれか1項に記載の器具。
【請求項25】
散乱光による濡れの検出によって漏れを検出するための光学センサを備えている請求項20〜24のいずれか1項に記載の器具。
【請求項26】
空気の自動吸引を実行する制御部を備えている請求項20〜25のいずれか1項に記載の器具。
【請求項27】
前記制御部は、前記医療用カセットに漏れがないことを自動的にチェックする請求項26に記載の器具。
【請求項28】
可撓性フィルムで覆われた流体案内通路を有する硬質部品を有する請求項1〜19の何れか1項に記載の医療用カセットを、医療流体を処理するための処理装置の結合面に結合するための方法であって、
前記結合面上に配置された可撓性マットを介して前記医療用カセットと前記処理装置の結合面とを結合するステップと、
前記医療用カセットの結合プロセスにおいておよび/または前記医療用カセットを結合させた状態において、前記可撓性フィルムと前記可撓性マットとの間の空気を吸い出すステップとを含み、
前記吸い出すステップは、前記可撓性フィルムと前記可撓性フィルムに面する前記可撓性マットの表面との間の平面に沿って行われることを特徴とする方法。
【請求項29】
前記吸い出すステップは、前記医療用カセットの硬質部品に配置された少なくとも1つの吸引用開口を介して行われる請求項2に記載の方法。
【請求項30】
前記吸引用開口は、前記医療用カセットの結合状態で前記処理装置の結合面に向けて配置される第1端部と、前記処理装置の吸引チャネルに接続される第2端部と、前記硬質部品を通じて前記第1端部から前記第2端部まで延びる部分と、を有し、前記硬質部品内に前記流体案内通路から分離された通路を形成する請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記処理装置の吸引チャネルに対して前記吸引用開口の第2端部を接続するステップをさらに含み、
前記吸い出すステップは、前記処理装置の吸引チャネル及び前記医療用カセットの硬質部品の吸引用開口を介して行われ、前記可撓性フィルムと前記可撓性フィルムに面する前記可撓性マットの表面との間の平面から空気を移動させる請求項3に記載の方法。
【請求項32】
請求項20〜2のいずれか項に記載医療流体を処理するための器具を含んでいる請求項2〜3のいずれか項に記載の方法。
【請求項33】
可撓性フィルムで覆われた流体案内通路を有する硬質部品からなる医療用カセットについて、特には前記医療用カセットを満たす前に、漏れがないことをチェックするための、請求項2〜3のいずれか項に記載の方法であって、
前記医療用カセットを処理装置の結合面に結合するステップと、
前記可撓性フィルムと前記処理装置の前記結合面との間の空気を吸い出す、特には前記医療用カセットの結合プロセスにおいておよび/または前記医療用カセットを結合させた状態において、面積的に吸い出す(areal suction)ステップと、
生成される真空に関して前記医療用カセットに漏れがないことをチェックするステップとを含み、
前記漏れがないことをチェックするステップは、前記医療用カセットの結合の間および/または後に行われる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結合面を有する処理装置と、前記処理装置の結合面に結合可能な可撓性フィルムによって覆われた流体案内通路を有する硬質部品からなるカセットとを備えた医療流体を処理するための器具に関する。さらに、本発明は、可撓性フィルムによって覆われた流体案内通路を有する硬質部品からなり、処理装置の結合面に結合可能な医療用カセットに関する。さらに、本発明は、可撓性フィルムによって覆われた流体案内通路を有する硬質部品からなるカセットを、医療流体を処理するための処理装置の結合面に結合するための方法、ならびに、そのような医療カセットについて漏れがないことをチェックするための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
処理装置は、血液透析または腹膜透析において使用されるような血液処理装置であってもよい。そのような用途において、医療用カセットは、血液案内通路または透析液案内通路を備えており、結合面を介して処理装置のアクチュエータおよびセンサと連絡する。このようにして、医療用カセットは、費用対効果に優れた使い捨ての部品として構成される一方で、カセットを通過する流体の流れを制御するためのアクチュエータおよびセンサは、レベルの検出または圧力の測定のために処理装置に組み込まれる。
【0003】
これに関し、使い捨ての物品として構成されたそのような医療用カセットは、平坦な外周の接触縁と種々の凹所(チャンバ、ウェブ、および通路)とを有する薄肉の三次元の硬質プラスチック部品を備える。透析液または血液などの医療流体は、硬質プラスチック部品のこれらの三次元構造によって形成されるチャンバおよび通路に案内される。カセットの接触面は、外周において硬質部品の接触縁に接続(特には、溶接および/または接着剤によって接合)される可撓性フィルム(好都合には、ポリマーフィルム)によって流体を漏らさない状態で閉じられる。この医療用カセットは、使用時に、処理装置のアクチュエータおよびセンサがポリマーフィルム上に位置するように、可撓性フィルムを介して処理装置の結合面に押し付けられる。さらに、この押し付けによって、可撓性フィルムがカセットのウェブと一体に押し合わされ、ウェブと可撓性フィルムとによって硬質部品において流体を漏らさない流体案内通路の分離がもたらされる。
【0004】
したがって、処理装置の結合面は、通常、アクチュエータ、センサ、および押し付け力の伝達面を有している。これに関連して、血液処理装置のアクチュエータおよびセンサは、カセットが接続された状態において、カセットの流体案内通路に対向するように配置される。これにより、可撓性フィルムが流体案内通路の領域へと押し込まれて流体案内通路を閉じるという点で、アクチュエータは、フィルムを押し下げることによって弁を形成することができる。センサは、例えば、流体案内通路内に位置する流体の圧力または温度を測定する。押し付け力の伝達面は、流体案内通路を囲んでいる硬質部品のシール用ウェブに対して可撓性フィルムを押し付け、流体案内通路を互いにシールし、かつカセットの残りの部分に対してシールされる。これに関し、結合面は、例えば金属からなる支持部材の平坦な表面(センサおよびアクチュエータのための受入れ部が、この表面に設けられている)と、これらの受入れ部に平坦な状態で挿入されたセンサとによって形成される。
【0005】
例えば、シリコーンまたは他のエラストマー材料からなる可撓性マットは、通常、処理装置の結合面に配置される。これは、センサの表面が環境の影響から保護され、装置の表面がさらに流体を通さなくなり、したがって理想的かつ衛生的に清掃できるという利点を持つ。これに関連して、可撓性マットは、カセットが使い捨ての部品として結合する処理装置の一部分をなす。アクチュエータの動作は、マットの可撓性によって保証される。さらに、可撓性フィルムは、可撓性マットを介して結合面に対して良好に押し付けられ、この可撓性マットによりアクチュエータ、センサ、および押し付け力の伝達面に対する良好な接触が許容される。しかしながら、処理装置は、可撓性フィルムが結合面に直接に当接するとともにセンサおよびアクチュエータがフィルムに直接結合されるように、可撓性マットを省略して動作させることも可能である。
【0006】
しかしながら、公知のシステムにおいては、センサをフィルムの表面に結合させるときに正しい測定値を得るための良好な結合を達成するのが困難だった。特に、カセットの挿入時に可撓性フィルムとセンサの表面との間の伝達経路に捕らえられた空気は、測定結果に歪曲を生じさせる。これは、圧力センサ(特には、周囲の圧力よりも低い圧力を測定するとき)に当てはまるが、例えばレベルの検出にも当てはまり、弁などのアクチュエータにも同様に当てはまる。したがって、可撓性フィルムの外表面とその上に位置する可撓性マットのマット表面(あるいは、マットが使用されない場合には、可撓性フィルムの外表面とその上に位置する処理装置の結合面)との間の望ましくない空気の噛み込みは、結合時に排除されなければならない。これは、通常は、空気の吸引によって行われる。しかしながら、これに関連して、この空間における流体の接触が面倒である。具体的に、フィルムをマットまたは結合面に適用することによって自動的なシールが生じ、空気のアイランドが残ってしまうという問題が存在する。
【0007】
そこで、装置側の装置マットの後側に一体化されたマット通路によって、予め設定された手順で空気の輸送を実現することが、特許文献1および特許文献2により知られている。マットを通じた可撓性フィルムの表面から装置側に配置された空気通路までの空気のラインは、マットの通路の領域における妨げのないスロットを通って局所的に生じる。しかしながら、これによると、空気の輸送は、カセットの可撓性フィルムの正確に定められた地点(空気がマットのスロットを通って装置側に配置されたマットの通路へと吸い出される地点)のみにおいて生じる。したがって、これらのマットの通路は、良好な吸引を保証するためにカセットの流体案内通路の領域に配置しなければならないが、このことは、安全上の問題につながりかねない。さらに、マット通路とスロットと一体に有するこのような装置マットは、製造コストが高くつき、清掃に際し構造が複雑でかつ/またはコストが高くつく。さらには、結果的に、センサの表面について、マットによる環境の影響からの保護および気密なシールがもはや理想的でなくなり、衛生上の問題も生じる。さらに、スロットを通じた局所的な吸引に起因して空気のアイランドの噛み込みが依然として生じうるため、空気の吸引の信頼性をさらに向上させる必要も存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許発明第10157924号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10224750号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、費用効率および信頼性が高く、かつ衛生的な空気の吸引を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、本発明によれば、医療流体を処理するための請求項1に記載の器具によって解決される。器具は、結合面を有する処理装置と、硬質部品からなり、前記処理装置の結合面に結合可能な可撓性フィルムによって覆われた流体案内通路を有するカセットとを備えている。本発明では、これに関連して、空気透過性の多孔質材料の層が前記カセットを結合させた状態において前記可撓性フィルムと前記結合面との間の少なくとも一部の領域に配置されており、前記カセットの結合プロセスにおいておよび/または前記カセットを結合させた状態において、前記多孔質材料の層を通って空気を面積的に(areally)吸い出すことができる。本発明によれば、もはや従来技術のように空気が可撓性マットのスロットを通じたいくつかの地点において選択的にのみ吸い出される(その結果、空気のアイランドが残りかねない)のではなく、むしろ空気透過性の多孔質材料の層を通って面積的に吸い出される。これにより、可撓性フィルムと結合面との間の領域から空気の全面積にわたる吸い出しが可能になり、局所的な吸い出しのみでは決して排除できない空気の噛み込みを、確実に防止することができる。さらに、マット通路を有する可撓性マットのように清掃性に乏しい設計を避けることが可能であり、実質的に開口のない可撓性マットを使用することができ、あるいはマットをまったく使用しなくてもよい。
【0011】
これに関連して、本発明によれば、きわめて好都合なことに、結合プロセスの間(特には、結合プロセスの終わりの直前)に空気を吸い出すことができる。接触圧力は、カセットの結合時に最大値まで高められる。ここで、カセットが最大の押し付け力で押し付けられるよりも前に、カセットが結合面に触れるや否や吸引は開始される。この短い段階の間に吸引されて真空となる。具体的に、多孔質材料または構造は、この段階においてはそれほど強くは圧縮されてため、空気をより良好に導く。しかしながら、空気の吸引は、カセットが完全に結合した状態でも行うことができる。
【0012】
空気透過性の多孔質材料の層の平面に沿ってかつ当該層を通じて好都合に空気を吸い出すことができる。これにより、結合の平面に沿った空気の除去が可能にされる一方で、同時に、アクチュエータおよびセンサは、結合の平面に垂直な方向に機能を発揮することができる。これに関して、1つ以上の吸引地点においてフィルムと結合面との間の空間に対して流体を接触させるとともに、この空間を吸引器具へと接続すれば充分であり、空気がそこから結合の平面に沿って面積的に吸い出される。マットが設けられる場合、穿孔を基本的には有していない可撓性マットが、1つまたは少数の地点に、空気透過性の多孔質層の流体の接触のための開口を有することができる。
【0013】
空気透過性の材料(具体的には、多孔質材料)で製作された層に起因して、吸引のための真空は、空気透過性の多孔質材料からなる層の全領域で作用することになり、このことが、全面積の確実な吸引を可能にする。この層の材料は、この層の主平面に沿う方向およびこの層の主平面を横切る方向の両方に空気透過性であることが好ましい。これにより、空気は、この材料層において当該材料層の主平面に沿って輸送されるため、可撓性フィルムの表面と結合面との間の空気は、確実に吸い出される。
【0014】
空気透過性の多孔質材料の層は、前記カセットを結合させた状態において、前記可撓性フィルム上に直接的に配置されていることが好ましい。これにより、可撓性フィルムの表面から空気が直接的に吸引されるため、結果として確実な結合が可能になる。
【0015】
空気透過性の多孔質材料からなる層は、不織布を含んでいることがさらに好ましい。そのような不織布は、上述のような空気の輸送を許容するとともに、結合面とフィルムとの間、したがってセンサおよびアクチュエータとフィルムとの間に、一様な接触をもたらすが、同時に、可撓性フィルムと結合面または可撓性マットとの間の平面に面積的な吸引(areal suction)を保証する。
【0016】
空気透過性材料の層は、前記可撓性フィルムの全領域にわたって配置されることがさらに好ましい。このように、空気透過性材料からなる層の全表面にわたって空気の吸引を可能にするために、費用効率の向上及び簡潔化の可能性がもたらされる。しかしながら、特定の用途においては、そのような空気透過性材料の層を一部の領域のみに設けることも可能である。
【0017】
カセットは、前記カセットの結合プロセスにおいておよび/または前記カセットを結合させた状態において、空気透過性の材料からなる層の平面に直角な方向に当該層を超えて伝達される圧力によって、結合状態において前記結合面に押し付けられているとともに、前記可撓性フィルムは、流体を漏らさない状態で前記カセットの硬質部品の前記流体案内通路に押し付けられているが、空気透過性の材料で作られた層は、その平面に沿って空気透過性を保持していることが好ましい。前記空気透過性の多孔質材料からなる層は、硬質部品のウェブとウェブに押し付けられるフィルムとの間の相互作用により流体案内通路をシールするのに必要な圧力を伝達することができる。しかしながら、同時に、空気透過性の多孔質材料からなる層は、その平面に沿った気体の透過性を保持することができるため、フィルムと結合面との間の空気の面積的な吸引を提供できる。
【0018】
処理装置は、前記結合面に配置された可撓性マット(具体的には、シリコーンマット)を有しており、前記カセットは、前記可撓性マットを介して処理装置の結合面に結合可能であることがさらに好ましい。
【0019】
好都合な実施の形態においては、処理装置は、前記結合面上に配置された可撓性マットを有しており、前記カセットが前記可撓性マットを介して前記処理装置の結合面に結合可能とされ、空気透過性の材料の層は、前記カセットを結合させた状態において、前記可撓性フィルムと前記可撓性マットとの間に配置されている。これにより、可撓性マットが流体を漏らさない状態で結合面に対してシールされるため、きわめて清掃が簡単であって衛生的である構成を提供することができる。一方、可撓性マットと可撓性フィルムとの間に配置された空気透過性の層を介して吸引が行われる。これに関連して、シリコーンまたは他の適切なエラストマーを可撓性マットのための材料として使用することができる。これに関連して、不織布などの多孔質材料の層が、空気透過性の層として提供される。
【0020】
しかしながら、本発明においては、結合面に沿った空気の面積的な吸引に起因して、カセットの可撓性フィルムと処理装置の結合面との間の可撓性マットを省略し、不織布などの空気透過性の多孔質材料の層だけを設けることも可能である。その結果、医療用カセットの可撓性フィルムが、マットを間に介在させずに、空気透過性材料からなる層を介して処理装置の結合面上に直接に位置し、結合面と可撓性フィルムとの間の空気の吸い出しが直接的に行われる。
【0021】
さらに本発明は、医療流体を処理するための器具であって、結合面と前記結合面上に配置された可撓性マットとを有する処理装置と、前記可撓性マットを介して前記処理装置の結合面へと結合可能な可撓性フィルムで覆われた流体案内通路を有する硬質部品からなるカセットとを備え、前記可撓性マットが、空気透過性の材料を含み、前記カセットの結合プロセスにおいておよび/または前記カセットを結合させた状態において、前記可撓性マットの平面に沿って、且つ/または前記可撓性マットを通って、開口を有しない前記可撓性マットの一領域において空気が吸い出されるように構成されている器具を提供する。空気透過性のマット材料を使用することにより、可撓性マットそのものを介して面積的な吸引が行われるため、空気透過性材料からなる追加の層を省略することが可能になる。このとき、真空の供給は、処理装置の結合面の該当する通路を介して行うことができる。薄いシリコーン層は、空気に関して特定の透過性を有するため、相応に高い真空を加えることによりマットを通って直接的に空気を吸い出すことができるように、可撓性マットをシリコーンで形成でき、空気を吸い出すべき領域をきわめて薄くすることができる。したがって、清掃をより困難にするマットを貫くスロットを省略することができる。さらに、結合面が、流体を漏らさない状態でさらにシールされる。
【0022】
しかしながら、空気透過性の多孔質材料からなる上述の層または空気透過性材料からなる可撓性マットに代えて、あるいはこれらに加えて、フィルムの表面または可撓性マットのフィルムに面する表面が、空気の吸い出しを可能にする構造を有してもよい。
【0023】
したがって、さらに本発明は、結合面を有する処理装置と、可撓性フィルムで覆われた流体案内通路を有する硬質部品からなり、前記処理装置の結合面に結合可能なカセットとを備える医療流体を処理するための器具である。これに関して、本発明では、前記可撓性フィルムの表面が前記カセットの結合プロセスにおいておよび/または前記カセットを結合させた状態において前記フィルムの構造に沿って空気を吸い出すことが可能な構造を有する。このように、フィルム表面の構造により形成される通路を通って空気が吸い出されることによって、フィルムと結合面またはマットとの間の領域からの空気の確実な吸い出しが結合の平面に沿って可能となる。したがって、この構造により空気の面積的な吸い出しが許容され、空気のアイランドの形成が妨げられ、この構成は、少なくとも空気なしの結合が要求される領域に形成される。これに関連して、フィルムの表面の構造は、可撓性フィルムと硬質部品のウェブとの間の押し付け力に変動が生じず、あるいは最小限の変動しか生じないように、充分に小さいことが好ましい。しかし、前記構造によって形成される通路が結合面またはマットとフィルムとの間の圧力によって完全に閉じられてしまうことがなく、空気の透過性を保持するように、前記構造は充分に大きいことが好ましい。
【0024】
これに関して、前記構造をフィルム表面の型押しによって形成することができる。あるいは、前記構造をフィルムの押し出しにおいて直接導入することも可能である。
【0025】
さらには、可撓材料のフィルムに面する側に構造を適用することが可能である。したがって、本発明は、結合面と前記結合面上に配置された可撓性マット(具体的には、シリコーンマット)とを有する処理装置と、可撓性フィルムで覆われた流体案内通路を有する硬質部品からなり、前記可撓性マットを介して前記処理装置の結合面に結合可能なカセットとを備えた医療流体を処理するための器具をさらに包含する。本発明によれば、前記可撓性フィルムに面する前記可撓性マットの表面が構造を有しており、前記カセットの結合プロセスにおいておよび/または前記カセットを結合させた状態において、前記可撓性マットの構造に沿って空気を吸い出すことができる。可撓性マットの表面の構造を通した吸引は、上述したような可撓性フィルムの構造を通した吸引と同様の方法で行われる。
【0026】
しかしながら、フィルムに構造を設ける場合、フィルムに面するマットの表面に構造を設ける場合に比べて、フィルムに面するマットの表面を滑らかにでき、したがって清掃を容易にできるという明白な利点を有している。これに対し、カセットはいずれにせよ使い捨てであり、したがって使用後に捨てればよく、清掃の必要がない。
【0027】
可撓性フィルムの構造およびマット表面の構造の両者のために使用することができる構造の好ましい実施の形態が、以下で説明される。
【0028】
前記構造は、網状構造および/または曲がりくねった構造および/または直線状の構造を有することが好ましい。網状構造(特に好ましくは、ハニカム構造)を通って簡単かつ確実に面積的に空気を吸い出すことができる。これに対し、曲がりくねった構造によって、特定の領域における直接的な吸引を達成することができる。
【0029】
前記構造は、異方性および/または不均一にされることがさらに好ましい。具体的に、例えば、上方から下方へ向かう方向に比べて左方から右方へ向かう方向について通路を大きくするなど、適切な構造を選択することによって、異方性の吸引が実現可能である。表面上の構造を、不均一にすることも可能である。これにより、たとえフィルムとマットとの間の空間が1つの地点においてのみ吸引器具に流通している場合でも、表面の空気の一様な吸引を実現することが可能である。
【0030】
設けられたチャネルのアスペクト比(aspect ratio)は、そのような構造によって実現される吸引力について重要である。これに関連して、通路の幅は、深さよりも小さいことが好ましい。そのような狭くて深い通路によれば、フィルムおよびマットの押し付け時に通路が閉じられることがなく、吸引可能な状態が保持される。通路が浅くなるほど、マットに対するフィルムの部分的接触による封止の恐れが大きくなると考えられる。通路が広すぎると、硬質部品のウェブのフィルムの平滑な後面に対する押し付けが不均一になり、この面において流体案内通路の間の漏れが生じる危険がさらに増加する。
【0031】
さらなる実施の形態において、フィルム表面またはマット表面の構造は、流体案内通路に沿って延びることができる。これにより、より小さな容積を排気すれば足りることになり、吸引または初期の漏れなしの確認試験に要する時間が短縮される。加えて、フィルムと可撓性マットとの間で空気なしの接続が実際に必要となる場所においてのみ空気が吸い出される。これに対し、そのような空気を含まない接続は、流体案内通路の存在しない領域においては不要である。したがって、前記構造は、流体案内通路に沿って曲がりくねった形態および/または直線状の形態で延びることが好ましい。
【0032】
しかしながら、これに関連して、前記構造は、吸引地点を形成している前記流体案内通路の外部の1つ以上の領域に収束することが好ましい。これにより、これらの流体案内通路の外部の領域において、例えば吸引装置を単純に接続することができる一方で、吸引地点から流体案内通路の領域へと延びる構造により、これらの領域からの空気の確実な吸い出しが提供される。
【0033】
前記構造は、前記流体案内通路を有している領域から流体案内通路の外部の領域への移行部分において、前記流体案内通路のウェブ縁に対して略垂直に延びることが好ましい。これにより、押し付けに起因して構造の空気案内機能を失うことなく、通路のウェブ縁によるフィルムの一様な押し付けを保証することができる。
【0034】
前記構造は、前記流体案内通路のウェブ縁を横切っていない領域において、前記流体案内通路のウェブ縁から所定の間隔をあけて設けられていることが好ましい。これにより、構造が、技術的プロセスの側面から必要とされるとともに流体で濡れるフィルム領域においてのみドレインを行うことができる。これに対し、残りの領域においては、フィルムと硬質部品との間の接触圧力が大きいため、空気の吸引が不要である。
【0035】
前記構造は、前記可撓性フィルムにおいて異なる流体案内通路を有する領域の間の直接的な接続が存在しないように形成されることが好ましい。これは、フィルムが破れたときに、流体が構造に沿ってカセット全体に広がることができないという利点を有する。したがって、流体案内通路を有さない領域における破れも、重要性を有さないことに変わりはない。たとえ流体案内通路の領域においてフィルムが破れても、流体は、前記構造に沿って吸引地点へと吸い出されるだけであり、通路のウェブ縁を越えた流体案内通路の間の漏れは防止される。
【0036】
しかしながら、流体案内通路に沿って延びるわけではなく、その構造が通路のウェブ縁に常に垂直というわけではないハニカム構造を使用しても、良好かつ確実な押し付けおよび空気の吸引を達成することができる。簡単かつ費用効率に優れた製造が、そのような設計の利点である。
【0037】
本発明に係る方法におけるカセットは、結合状態において前記結合面に押し付けられ、前記可撓性フィルムは、流体を漏らさない状態で前記カセットの硬質部品の前記流体案内通路に押し付けられているが、前記構造は、その平面に沿った空気の移動を許容することが好ましい。
【0038】
さらに、本発明は、結合面と前記結合面に配置された可撓性マット(具体的には、シリコーンマット)とを有する処理装置と、可撓性で覆われた流体案内通路を有する硬質部品からなり、前記可撓性マットを介して前記処理装置の結合面に結合可能なカセットとを備えた医療流体を処理するための器具を包含する。本発明では、前記カセットの結合プロセスにおいておよび/または前記カセットを結合させた状態において、前記可撓性フィルムと前記可撓性フィルムに面する前記可撓性マットの表面との間の平面に沿って、空気を吸い出すことができる。これにより、複雑かつ/または高価であって清掃も困難であるマット通路またはスロットを可撓性マットに備えることを、避けることが可能である。むしろ、マット表面と可撓性フィルムとの間から確実かつ簡単に空気を吸い出すことができる。吸引は、少なくとも一部の領域に配置された空気透過性材料の層を介して、または可撓性フィルムもしくはマット表面の構造を介して行われる。これにより、すでに上述した利点がもたらされる。
【0039】
したがって、本発明によれば、従来技術のように可撓材料のスロットを通して選択的にのみ空気を吸い出すのではなく、むしろフィルムとマットとの間の平面に沿って面積的に吸い出す。これにより、フィルムと結合面との間の空間に対して1つ以上の地点において流体を接触させるとともに、この空間を吸引器具に接続すれば充分であり、フィルムとマットとの間の結合の平面に沿って空気が面積的に吸い出される。したがって、マット通路を有する可撓性マットのコスト効率の高い設計を避けることが可能である。さらに、マットにスロットを持たせることなく、確実に空気を含まない接続がフィルムとマットとの間に保証され、その結果として、流体を漏らさず、したがって理想的かつ衛生的に清掃できる装置表面を提供することが可能になる。
【0040】
空気の吸引は、可撓性フィルムと可撓性マットとの間の領域に配置された構造を介して行われることが好ましい。これにより、結合面に沿った空気の案内が可能にされる一方で、同時に、アクチュエータおよびセンサは、結合面に垂直な方向に機能を発揮することができる。このような効果を奏するのは、上述した空気透過性材料からなる層や、フィルムまたはマットの表面の構造など、面積的な構造の場合である。これにより、この領域からの空気の全面積にわたる吸い出しが可能になり、局所的な吸い出しのみでは決して排除できない空気の噛み込みを容易に防止することができる。
【0041】
本発明に係る器具は、少なくとも1つの吸引装置を有することが好ましい。この吸引装置によって真空が利用可能になり、この真空が可撓性フィルムと可撓性マットまたは結合面との間の領域に接続されることにより、吸引が可能になる。これに関連して、吸引装置の試験の能力を改善するために、吸引装置を様々な方法で駆動することが好ましい。
【0042】
本発明に係る器具において、どの構造によって面積的な吸引が実現されるかにかかわらず、空気案内層は、前記流体案内通路の領域の外部の1つ以上の地点において吸引装置に連通することが好ましい。本発明においては、吸引が結合面に沿って行われるため、吸引装置との連通を流体案内通路の領域において直接利用可能にする必要性がなくなる。
【0043】
本発明に係る器具において、前記吸引は、前記処理装置の結合面に配置された少なくとも1つの弁を介して行われることが好ましい。前記弁は、例えばカセットを処理装置の結合面へと押し付けることにより、プランジャのような手段によって開放され、空気は、空気案内層から自動的に吸い出される。
【0044】
代替案として、カセットを通じて吸引を行うことも可能である。これに関し、疎水性膜を有する吸引用開口をカセットに設けることができる。そして、吸引は、カセットの硬質部品に配置されるとともに疎水性膜を備えている1つ以上の吸引用開口を介して行うことが好ましい。これにより、空気案内層に対する流体の連絡を容易に行うことが可能となる。
【0045】
本発明に係る器具が、具体的には散乱光による濡れの検出によって漏れを認識するための光学センサを備えていることが好ましい。この構成によれば、流体の排出により光学センサで検出可能な反射特性の変化を生じさせるフィルム表面の構造との組み合わせによって、簡潔で非接触の漏れ検出が実現される。
【0046】
本発明に係る器具は、空気の自動吸引を実行する制御部を有することが好ましい。これに関連して、制御部は、吸引装置を制御して、医療用カセットの空気を含まない結合を自動的に提供する。
【0047】
前記制御部は、医療用カセットに漏れがないことを自動的にチェックすることが好ましい。これは、後述するように、空気を吸引するときに真空をチェックすることによって実行可能である。
【0048】
以下に示される医療用カセットが、上述した本発明に係る器具において使用されることがさらに好ましい。
【0049】
これに関連して、本発明の医療用カセットは、可撓性フィルムで覆われた流体案内通路を有する硬質部品を含み、処理装置の結合面に結合可能である。さらに、本発明では、所定の構造が前記可撓性フィルム上に配置され、前記カセットの結合プロセスにおいておよび/または前記カセットを結合させた状態において、前記構造を通して前記可撓性フィルムの表面の平面に沿って空気を吸い出すことができる。これにより、医療流体を処理するための器具に関してすでに詳しく示したとおり、可撓性フィルムとマットまたは処理装置の結合面との間の空気の確実かつ信頼できる吸引を保証することができる。これに関連して、前記構造が医療用カセットの構成要素を構成することが、とくに有利である。なぜならば、医療用カセットは、使い捨ての部品であり、使用後の清掃を必要としないからである。すなわち、空気の吸引のための構造は、清掃性に関するいかなる特別な条件も満足する必要がない。
【0050】
空気透過性の材料(具体的には、多孔質材料)の層は、少なくとも一部の領域において前記可撓性フィルム上に配置され、カセットの結合状態において、前記多孔性材料の層を通して前記多孔性材料の層の平面に沿って空気を面積的に吸い出すことができることが好ましい。そのような構成の利点は、すでに器具に関連して上述した通りである。可撓性フィルム上に配置された空気透過性の材料(具体的には、多孔質材料)の層は、空気の確実かつ一様な面積的な吸引を可能にする。
【0051】
空気透過性の多孔質材料の層は、前記可撓性フィルム上の全領域にわたって配置されることが好ましい。このようにすれば、可撓性フィルムと処理装置の結合面との間の全面積にわたって空気を吸い出すことができる安価かつ単純な構成を実現することができる。
【0052】
空気透過性の材料の層は、外周縁領域においてカセットに溶接されていることが好ましい。これにより、空気透過性材料の層は、カセットと一体のユニットを構成し、カセットにしっかりと保持される。空気透過性材料の層の溶接は、硬質部品に対するフィルムの溶接とともに単一の作業段階において行われることがさらに好ましい。その結果、費用効率の高い製造を実現することができる。
【0053】
前記溶接は、前記材料の層の平面に沿った気体の流れに対する障壁を形成することが好ましい。この構成によれば、前記溶接によって、カセットが処理装置に押し付けられている領域においてのみ空気が前記材料の層の平面に沿って吸い出されることになる。そうでなければ、空気が側方領域から吸い出され、結果として可撓性フィルムと処理装置との間の領域の排気が妨げられる可能性がある。この事実は、空気透過性材料の層をフィルムへと溶接するときに気体を通さない障壁が生成されるように、多孔質材料の層の構造を変更することが好ましいということを意味する。したがって、可撓性マットまたは結合面により、この地点において、空気を通さないように作られた材料層に対してシールを行うことができる。空気透過性材料の層は、カセットの硬質部品に溶接されていることが好ましい。この目的のために、空気透過性材料の層は、カセットの硬質部品をもたらしているプラスチックに対する溶接が可能な材料を含むことが好ましい。
【0054】
これに代え、あるいはこれに加えて、カセットの硬質部品が、前記構造(具体的には、空気透過性材料の層)が延びていない外周縁領域を有し、この縁領域が、押し付け時にシール用ウェブを形成する。これにより、構造を持たない縁領域により形成されたシール用ウェブによって、フィルムとマットまたは処理装置の結合面との間の空間を確実に排気できることが保証される。この目的のために、特にカセットの縁領域において、空気透過性材料の層または構造を省略することができる。
【0055】
可撓性フィルムは、外周縁領域においてカセットの硬質部品に溶接されていることが好ましい。この構成によれば、外周縁領域を従来技術と同様に可撓性フィルムに対する溶接に使用することができるとともに、この外周領域を前記構造のためのシール用ウェブとして機能させることができる。
【0056】
本発明において、空気透過性の材料の層は、前記可撓性フィルムに対して接続され、具体的には接着剤によって接合され、且つ/またはスポット溶接され、且つ/または貼り付けされ、且つ/または積層され、且つ/または留め鋲で留められていることが好ましい。この構成によれば、例えば、空気透過性材料の層が縁領域において硬質部品に溶接されない場合においても、空気透過性材料の層が可撓材料に対して確実に保持される。
【0057】
本発明に係る医療用カセットにおいて、前記カセットの結合プロセスにおいておよび/または前記カセットを結合させた状態において、前記構造(具体的には、空気透過性の材料の層)を介して、その平面に垂直に伝達される圧力は、前記可撓性フィルムを流体を漏らさない状態でカセットの硬質部品の前記流体案内通路に押し付けることが好ましい。さらに、前記構造(具体的には、空気透過性の材料の層)は、その平面に沿った気体の透過性を保持する。この構成によれば、流体案内通路の間での漏れが生じないが、それでもなお面積的な構造を介した確実な空気の吸い出しが可能であるフィルムと硬質部品との確実な押し付けが可能になる。このことは、例えば不織布からなる材料層を相応に構成することによって達成され、あるいは可撓性フィルムの表面の構造を相応に構成することによって達成される。
【0058】
前記空気透過性の多孔質材料の層は、不織布を含んでいることが好ましい。そのような不織布は、圧力の一様な伝達および自身の平面に沿った吸引に理想的である。
【0059】
さらなる実施の形態において、本発明に係る医療用カセットの可撓性フィルムの表面は、構造を有しており、カセットを結合させた状態において、前記構造を通して前記可撓性フィルムの平面に沿って空気を吸い出すことができることが好ましい。これにより、空気の噛み込みまたは空気のアイランドを形成することなく、フィルムとマットとの間またはフィルムと処理装置の結合面との間の領域から空気を確実に除去することができるとともに、この除去を容易な方法で達成することができる。これに関し、前記構造は、フィルムの表面に配置されることがきわめて有利である。なぜならば、カセットは、いずれにせよ使用後に廃棄され、したがって清掃を必要としないからである。
【0060】
医療流体を処理するための器具に関してすでに示したように、前記構造は、網状構造および/または曲がりくねった構造および/または直線状の構造を有することが好ましい。さらに、前記構造は、異方性および/または不均一にされていることが好ましい。ここで、前記構造によって形成される通路の幅をそれら通路の深さよりも小さくすることがさらに有利である。なぜならば、そのようにすることで、処理装置を押し付けたときに通路が閉じられることがなく、さらにフィルムの平滑な後面を硬質部品のウェブに一様に押し付けることができるからである。
【0061】
さらなる実施の形態においては、前記構造は、具体的には曲がりくねった構造および/または直線状の構造を使用して、前記流体案内通路に沿って延びていることが好ましい。これにより、排気しなければならない容積を少なくすることができる。
【0062】
前記構造は、吸引地点を形成する前記流体案内通路の外部の1つ以上の領域に収束していることが好ましい。これにより、この領域において単純な吸引を行うことができる一方で、前記構造を介して流体案内通路に沿った空気を含まない結合がこの領域に保証される。
【0063】
前記構造は、流体案内通路を有する領域から流体案内通路の外部の領域への移行部分において、前記流体案内通路のウェブ縁に対して略垂直に延びていることが好ましい。これにより、通路のウェブ縁に対するフィルムの一様な押し付けが、良好な空気の吸引と同時に保証される。
【0064】
前記構造は、前記流体案内通路のウェブ縁を横切っていない領域において、前記流体案内通路のウェブ縁から所定の間隔をあけて設けられていることが好ましい。これにより、フィルムの破れが生じた場合に前記構造に沿って流体がカセット全体に広がることを防止することができる。さらに、フィルムの通路のウェブ縁に対するフィルムの良好な押し付けが達成される。
【0065】
さらに、前記構造が、前記可撓性フィルムにおいて異なる流体案内通路を有する領域の間の直接的な接続が存在しないように形成されていることが好ましい。これは、フィルムが破れたときに、前記構造に沿って流体がカセット全体に広がることがあり得ないという利点を有する。したがって、流体案内通路を有しない領域における破れは、重要性を有さないことに変わりない。たとえ、流体案内通路の領域においてフィルムが破れても、前記構造に沿って流体が吸引地点へと吸い出されるだけであり、流体案内通路の間の通路のウェブ縁を越える漏れは防止される。
【0066】
本発明に係る医療用カセットの硬質部品は、通路の縁のシール用ウェブを接続するとともに、きつく押し付けられることにより閉じた領域を形成する閉じ込めウェブを有することが好ましい。吸引地点は、そのようなきつく押し付けられた状態で閉じられた領域に配置され、フィルムが破れたとき、漏れた流体は、この領域に達するだけであり、個々の流体案内領域の間の直接的な接触は生じえない。
【0067】
本発明に係る医療用カセットは、前記カセットの硬質部品に配置された少なくとも1つの吸引用開口を有することがさらに好ましい。フィルムとマットまたは結合面との間の空間は、この吸引用開口を介した吸引のための流体の接触を持つことができる。これにより、可撓性マットを完全体として形成することができ、装置側を理想的に清掃可能にすることができる。
【0068】
これに関連して、吸引用開口は、流体案内通路の領域の外部に配置されることが好ましい。これにより、溶接部に不具合があっても、同時に通路の地点においてフィルムが破れ、あるいは同時にシール用ウェブに不具合が生じない限り、吸引装置または吸引通路に配置された疎水性膜の汚染につながらないため、安全性が向上する。
【0069】
前記可撓性フィルムは、吸引用開口の周囲においてカセットの硬質部品に溶接されていることが好ましい。
【0070】
これに関連して、吸引用開口の周囲の溶接による環状の継ぎ目は、溶接による継ぎ目によって空気の吸引が損なわれることがないような構造を有することが好ましい。これは、フィルムの表面の構造においてとくに重要であり、例えば溶接の型の相応の構造によって実現可能である。
【0071】
これに代え、あるいはこれに加えて、溶接による継ぎ目の領域は、カセットの押し付けの平面に比べて低くすることができる。この構成においても、溶接の継ぎ目による空気の吸引の悪化を防止することができる。これは、空気透過性材料の層が使用される場合にきわめて有利である。
【0072】
疎水性フィルタが吸引用開口に配置されることが好ましい。これに関連して、1つ以上の吸引用開口が1つ以上の疎水性フィルタによって流体を漏らさない状態で閉じられていることが好ましい。疎水性フィルタは、流体を通さないと同時に、気体を通すことができる。
【0073】
さらに、本発明は、カセットを処理装置に結合させるための方法であって、信頼性の高い空気の噛み込みのない結合を可能にする方法を包含する。
【0074】
これに関連して、本発明は、可撓性フィルムで覆われた流体案内通路を有している硬質部品で作られたカセットを、医療流体を処理するための処理装置の結合面へと結合するための方法であって、前記医療用カセットを前記処理装置の結合面へと結合させるステップと、前記カセットの結合プロセスにおいておよび/または前記カセットを結合させた状態において、前記可撓性フィルムと前記処理装置の結合面との間の空気を吸い出すステップとを含み、前記吸い出すステップは、前記可撓性フィルムと前記結合面との間の少なくとも一部の領域に配置された空気透過性の多孔質材料の層を介して面積的に行われる方法を包含する。このプロセスにおいて、結合のステップおよび吸い出すステップは、順に実行することができ、または結合プロセスがまだ続いている間に吸い出しを開始することにより、少なくとも部分的に同時に実行することもできる。
【0075】
前記方法に代えて、吸い出すステップを、可撓性フィルムの表面の構造および/またはカセットを結合面に結合される可撓性フィルムに面する可撓性マットの表面の構造に沿って行うこともできる。これにより、器具に関してすでに示した利点、特には可撓性フィルムと処理装置の結合面との間の領域からの空気の確実な吸い出しを行うことができる。
【0076】
さらに、本発明は、可撓性フィルムで覆われた流体案内通路を有する硬質部品からなるカセットを、医療流体を処理するための処理装置の結合面へと結合するための方法であって、前記結合面上に配置された可撓性マットを介して前記医療用カセットと前記処理装置の結合面とを結合するステップと、前記カセットの結合プロセスにおいておよび/または前記カセットを結合させた状態において、前記可撓性フィルムと前記可撓性マットとの間の空気を吸い出すステップとを含み、前記吸い出すステップは、前記可撓性マットの領域において妨害なく行われ、実際には前記可撓性マットの平面に沿って且つ/または前記可撓性マットを通って行われ、この目的のために、前記マットは、空気透過性の材料を含んでいる方法を包含する。
【0077】
さらに、本発明は、可撓性フィルムで覆われた流体案内通路を有する硬質部品からなるカセットを、医療流体を処理するための処理装置の結合面に結合するための方法であって、前記結合面に配置される可撓性マット(具体的には、シリコーンマット)を介して前記医療用カセットと前記処理装置の結合面とを結合するステップと、前記カセットの結合プロセスにおいておよび/または前記カセットを結合させた状態において、前記可撓性フィルムと前記可撓性マットとの間の空気を吸い出すステップとを含み、前記吸い出すステップは、前記可撓性フィルムと前記可撓性フィルムに面する前記可撓性マットの表面との間の平面に沿って行われる方法を包含する。これにより、すでに上述した利点がもたらされる。特に、これに関連して、可撓材料を、安価かつ清掃容易に製作することができる。
【0078】
これに関連して、本発明に係る方法において、上述した医療用カセットおよび/または医療流体を処理するための器具が使用されることが好ましい。
【0079】
さらに本発明は、可撓性フィルムで覆われた流体案内通路を有する硬質部品からなる医療用カセットについて、特には当該医療用カセットを満たす前に、漏れがないことをチェックするための方法であって、前記医療用カセットを処理装置の結合面に結合するステップと、前記カセットの結合プロセスにおいておよび/または前記カセットを結合させた状態において、前記可撓性フィルムと前記処理装置の前記結合面との間の空気を吸い出す、特には面積的に吸い出すステップと、生成される真空を使用して前記医療用カセットに漏れがないことをチェックするステップとを含み、前記漏れがないことのチェックするステップは、カセットの結合の間および/または後に行われる方法に関する。フィルムに漏れがある場合、空気の吸引時に真空の蓄積が生じえないため、本発明によれば、真空の監視および空気の吸い出しによる真空の排気によって、高すぎる漏れの比率を検出し、表示することが可能である。このようにして、使い捨てフィルムの漏れを、ディスポーザブルを満たす前および処理を開始する前に、最初に認識することができる。これにより、欠陥のあるディスポーザブル品を、無傷のディスポーザブルと交換することができる。このようにして、連続的な排気によってフィルムの漏れを検出し、欠陥のあるディスポーザブルを交換することができる。
【0080】
これは、特には、本発明の面積的な吸引によって促進される。これに対し、面積的な吸引ではない場合、フィルムとマットとの間に自動シールが生じ、チェックがより困難になると考えられる。このようなプロセスにおいて、上述したような医療用カセットおよび/または医療流体を処理するための装置を、好適に使用することができる。
【0081】
次に、本発明を、実施の形態および図面を参照して、さらに詳しく示す。
【発明の効果】
【0082】
本発明によれば、費用効率および信頼性が高く、かつ衛生的な空気の吸引を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
図1】医療流体を処理するための従来技術による器具である。
図2】医療流体を処理するための本発明の第1の実施の形態による器具である。
図3】医療流体を処理するための本発明の第2の実施の形態による器具である。
図4】本発明の第3の実施の形態による構造の平面図および断面図である。
図5】(a)は本発明の第4の実施の形態による医療用カセットの平面図であり、(b)はシール用ウェブを有する領域の構造の断面図であり、(c)は本発明による吸引用開口の実施の形態の断面図である。
図6】医療流体を処理するための本発明の第5の実施の形態による器具である。
【発明を実施するための形態】
【0084】
図1は、従来技術において例えば血液透析または腹膜透析のために使用される医療流体を処理するための器具を示している。しかしながら、このような器具は、使い捨てのカセット(ディスポーザブルとも呼ばれる)が使用されるとともに結合面を介して処理装置のセンサおよびアクチュエータに接続される複数の他の用途の分野においても使用される。
【0085】
処理装置1は、例えばセンサ11が配置される結合面10を有している。カセット2は、可撓性フィルム25によって覆われた流体案内通路21を有する硬質部品20を備え、流体案内通路は、側方に配置されたシール用ウェブ22が可撓性フィルム25に押し付けられることによって、カセットの内部に流体を漏らさない状態で隔てられている。これに関連して、センサ11は、流体案内通路21に対向して配置されている。したがって、流体案内通路21は、測定室(圧力センサの場合には、圧力測定室)を形成している。
【0086】
さらに、可撓シリコーンマット15は、センサ11のセンサ面を環境の影響から保護するために、フィルム25と処理装置1の結合面10との間において装置側に配置されている。これにより、装置表面は、気密にシールされ、したがって理想的かつ衛生的に清掃可能となる。しかしながら、これに代えて、フィルム25が処理装置1の結合面10に直接接触するように、シリコーンマット15を省略することも可能である。
【0087】
しかしながら、正しい測定値が得られるようにセンサをフィルムディスポーザブル2へと結合させるとともに、フィルム25をセンサ11のセンサ面へと接続することは、困難である。具体的に、カセットの挿入時に使い捨てフィルム25とセンサ面との間の伝達経路に封入された空気は、測定結果に歪曲を生じさせる。これは、圧力センサに当てはまるが、例えばレベルの検出にも当てはまり、可撓性フィルム25を硬質部品20の流体案内通路21へと押し込むことによってカセット内の流体の流れを制御する弁などのアクチュエータにも同様に当てはまる。
【0088】
ここで、本発明の第1の実施の形態が、図2に示されている。これに関連して、フィルム25とマット15との間の領域の構造が結合面に沿った領域の空気の吸引を可能にしている。これにより、フィルム25をマット15に添えることによる自動的な封止に起因して、空気のアイランドが封入されたままになって測定結果を歪めることがないように、フィルム25とマット15との間の空間の確実な排気が保証される。
【0089】
図2に示した実施の形態においては、空気透過性の材料(具体的には、多孔質材料)の層30(この場合には、不織布層)がフィルム25とマット15との間に挿入されることによって、前記領域の吸引が実現される。そのような不織布層は、その構造に起因して多孔性であるため、フィルム25、不織布30、およびマット15からなる全体としての複合体は、例えばシール用ウェブ22によって強く押されても、この層の表面を空気が流れることができる。
【0090】
したがって、流体を漏らさない状態で押し付けられる接続がフィルム25と硬質部品20との間に得られても、空気透過性の材料(特には、多孔質材料)の層30は、空気の透過性を保持する。したがって、フィルム25とマット15との間の全空間について確実かつ面積的に排気するためには、吸引用開口28を介して流体を通すことができる状態で、フィルム25とマット15との間の空間に対して単一の地点で真空システム13を接触すれば充分である。これにより、複数のセンサ11またはアクチュエータは、確実に、かつ空気を噛み込むことなくフィルム25に結合可能となる。このような真空システムに対する不織布空間の接続は、押し付けの直後にフィルムに漏れがないことを試験するために使用可能であるが、そのようなことは、このような空気案内層がなければ不可能であったと考えられる。
【0091】
吸引用開口28は、第1の実施の形態においては、カセットの硬質部品20に一体化され、この吸引用開口28は、同様に硬質部品に一体化された吸引通路に疎水性膜24を有している。これにより、フィルム破れの欠陥の場合に、装置の汚染を防止することができる。カセットの硬質部品20の吸引用開口28は、装置のドア12に一体化されるとともに処理装置に対するカセットの挿入時に真空システム13に連通する吸引チャネルに対し、シール部材14を介して接続される。フィルムは、吸引用開口28の周囲の硬質部品に対する周状の溶接部を有している。これに関連して、硬質部品に対する不織布30の溶接部が空気の吸引に対する障壁とならないように、周状の溶接部の領域は、カセットの押し付けのレベルに比べて低くされている。
【0092】
不織布空間の流体の接触は、通路構造21の流体案内領域の外側において行われる。したがって、吸引用開口の周囲におけるフィルムと硬質部品との間の溶接部に不具合があり、同時に通路の地点においてフィルムが破れ、あるいは同時にシール用ウェブ22に不具合が生じても、疎水性膜24の汚染につながるだけである。
【0093】
本発明の第2の実施の形態が図3に示されている。この実施の形態において、流体の接触は、硬質部品20から出発して行われるのではなく、マット側から行われている。これに関し、マット15に開口が設けられ、この開口は、弁16を介して真空システム13に連通している。ここで、空気案内層30の接触は、通路構造21の流体案内領域の外部で行われている。硬質部品20は、カセットが処理装置に挿入されるときに弁16を開くプランジャ29を有している。外部に対して閉じられた空間をフィルム25とマット15との間に生じさせるとともに、外部から空気が漏れることなくこの空間から空気を吸い出すことができるように、カセットは、不織布層30が設けられていない外周のシール用ウェブ27を有している。
【0094】
図3に示した構成の代替案として、システムに対する漏れ空気の過度の侵入は、外周のシール用リムの他の設計によって生じる可能性もある。これに関連して、不織布30をフィルム25へと溶接するときに気体を通さない障壁が生成されるように、不織布構造を設計変更することができる。つまり、空気を通さないように形成された不織布30を、この地点において気密な状態でシリコーンマット15に押し付けることができる。この溶接は、理想的には、硬質部品20に対するフィルムの溶接とともに単一の作業段階にて実行される。この目的のために、不織布30は、硬質部品20に対する溶接が可能な材料(例えば、PP)により製造することが好ましい。
【0095】
さらなる可能性として、外周のシールをフィルムとシリコーンマットとの間に直接形成することができるように、不織布をフィルムよりも小さく切断することが挙げられる。この場合に、フィルムに対する不織布30の固定は、例えば接着剤による接合および/またはスポット溶接および/または貼り付けおよび/または積層および/または留め鋲によって行うことができる。さらに、第1の作業段階においてフィルムと不織布とを接続し、続く第2の段階において硬質部品に対する接続を達成することも可能である。
【0096】
第1および第2の実施の形態に示した不織布の使用に代えて、フィルムそのものに空気案内層が生じるようにフィルム25の表面を構成することにより、所定の平面における空気の輸送を実現することが可能である。これは、例えば、フィルムに対して構造を型押しすることによって行うことができる。
【0097】
これに関連して、第3の実施の形態においては、より厚い材料の領域によって互いに隔てられた通路のネットワークがフィルムに生じるように、フィルムに対して格子状の構造をプレスすることができる。さまざまな形状を考えることができるが、図4においては、例としてハニカム構造が示されている。また、例えば左方から右方への通路を上方から下方への通路よりも大きくするなど、適切な構造を選択することによって、異方性の吸引を実現することも可能である。さらに、表面の構造は、不均一な設計であってもよい。同様に、構造は、曲がりくねった形状でもよい。
【0098】
これに関連して、生成される通路の形状は、達成可能な吸引力について重要である。狭くて深い通路は、押し付けられたときにシリコーンマットによって閉じられることがなく、通路を通った吸引が可能な状態を保持する。通路が浅くなるほど、通路においてマットに対するフィルムの部分的な適用による封止の危険性が大きくなる。通路が広くなりすぎると、フィルムの滑らかな面を(血液側および硬質部品に向かって)押すことが不均一になりすぎ、この側において漏れが生じる危険が大きくなる。型押しに加えて、さらなる製造プロセスを、フィルムの表面の構造の製造に利用することができる。例えば、フィルムの押し出しにおいて、直接フィルムの表面に構造を導入することも可能である。
【0099】
あるいは、フィルム30に面するマット15の表面にそのような構造を配置することも可能である。これにより、確実な空気の吸引が可能となる。しかしながら、そのような構成の欠点として、マットの表面がもはや平滑でなくなり、マット表面の清掃が難しくなることが挙げられる。
【0100】
代替案として、不織布30またはフィルム表面の構造の使用時に、不織布30がフィルム25と処理装置の結合面10との間に直接的に配置される、またはフィルム25の構造化された表面が処理装置の結合面10に直接接触するように、シリコーンマット15を省略することも同様に可能である。
【0101】
カセットのフィルムを全面積にわたり構造化し、またはフィルムの面と結合面との間に全面積にわたるドレイン層を生成することにより、外周のフィルムの溶接の継ぎ目Aに至るまで、または外周のシール用ウェブB(カセット側または装置側に生成される)に至るまでのカセットのフィルムの全面積について、すべての通路の縁のシール用ウェブCを超えて、気体および流体が通過可能になる。したがって、最初の完全性の試験において全面積について排気することが必要となり、処理が可能となるように、外周のシール用ウェブに漏れがないことも実際に望まれる通路の縁の漏れと並行して保証されなければならない。したがって、この目的のために最初に吸い出されるべき空気の量およびこの目的のために必要とされる時間が増加し、関連のあるフィルムの破れの検出の信頼性が低くなる。
【0102】
ここで、フィルムの構造化された表面の内部構造が使用されている本発明の第4の実施の形態を図5(a)に示す。技術プロセスの側面から必要とされるとともに流体で濡れるフィルム領域だけが、内部構造においてドレイン可能とされている。フィルムの外面と結合面との間の押し付けは、通路の縁のシール用ウェブに対する押し付けおよび非流体の領域GおよびHにおける押し付けよりも大幅に低い。これらの後者の領域において、カセットは、フィルムに平行な平坦なシール用ベースを有している。通路のリムのシール用ウェブは、通常の状態において流体が溢れることがないように構成されている一方で、領域GおよびHは、ゴム製マットの押し付けによってカセットの平面および下げられたゴムの平面の両者に対するフィルムのほぼ完全な接触が達成されるため、進入した流体がいかなる空間も見つけることがないように構成されている。
【0103】
フィルムとゴム製マットとの間の押し付けは、フィルム領域の他のすべての領域における押し付けと比較して、流体で濡れる内部領域S1、S2、およびS3の方が大幅に軽い。そのため、完璧なフィルムの結合の保証、および、生じうる破れに関して対応するフィルム表面の完璧な検出の保証の双方のために、それほど目立たないドレイン構造がこの領域においては充分である。したがって、内部構造において通路のウェブの縁Cに対して、最大でほぼ1mmという構造Dの安全間隔Eを設けることが可能である。
【0104】
領域GおよびHは、殺菌プロセスによって覆われ、外界に対して気密に封じられる。ここで、最初の完全性の試験において発見されなかった破れが処理の際に領域Gの領域に生じた場合、一般に、問題となる領域Sに影響が及ぶことがなく、かつ、流体が領域Gに侵入する可能性がないため、処理に対して結果を残さないことに変わりはない。Fによって図示されているように、破れが通路のシール用ウェブにおいて当該シール用ウェブを超えて生じる場合、平滑なフィルムと平滑なゴム製マットとの間の強い押し付けに起因し、さらには外周のリムの追加の押し付けに起因して、自動シールの機能が働く。処理の際に、破れが内部の領域Sにおいて生じる場合、漏れた流体がフィルムとゴム製マットとの間の空間に侵入し、さらに押し付けを減少させ、最終的には、異方性構造Dに沿って吸引点Kの方向に向けて当該吸引点Kまで押される。これに関連して、吸引点Kまでの直接の案内経路Iによる経路における流れに対する抵抗が最も小さいため、収集領域Hでさえも漏れた流体でわずかに満たされるにすぎない。
【0105】
この内部構造は、処理液の注入前の完全性の試験において、検出時間の短縮および検出精度の向上をもたらす。内部構造は、処理の間のフィルムの破れという最初の欠陥の場合に、冗長の受動的な漏れ保護をもたらす。内部構造は、フィルムが破れたときに濡れる可能性があるとともに処理液内の処理面の汚染に寄与する可能性があるフィルムおよびゴム製マットとの領域をはるかに小さくする。内部構造は、信頼性を向上させることができるとともに、処理の間に生じるフィルムの破れの検出時間を短縮し、したがって汚染および二次汚染に対する安全性を向上させる。内部構造は、生じうる外部への流体の喪失の可能性および程度を軽減することができる。
【0106】
さらに、異方性構造の可能性がもたらされる。異方性のフィルム構造または点在させられるドレイン層の異方性の設計は、ドレイン効果の強度、方向、機能、および不在を局所的に異なるように設計することを意味する。これは、通路のシール用ウェブに向かって構造化されていない縁領域を有する上述の内部構造を含む。
【0107】
次の可能性は、通路のシール用ウェブの領域の交差Iの数を最小限にしつつ、別々の構造領域S1、・・・、S3を意図的に設けることである。交差Iは、最初の試験の場合および漏れの場合に、最適化された構造に起因して、吸い出されるべき容積または濡れる容積を如何にして最小にしなければならないかも示す。
【0108】
断面図である図5(b)は、通路の縁のシール用ウェブを直交して横切る直線状構造の最適化効果を示している。この構成により、押し付けによる流体側の漏れ防止の最適化は、装置側のドレイン構造の深さの最適な獲得に関連する。前記構造の2つの基本的な負の設計、すなわち構造の通路Dにおける部分的な圧迫による閉鎖Uおよび通路の縁のシール用ウェブCにおける不均一な力の伝達によって中断された押し付けVは、図において極端に誇張して示されている。シール用ウェブを平行にまたは斜めに横切る構造は、ウェブおよびゴム製マットへとさらに進入し(penetrate)、ドレイン効果および押し付け効果をさらに大きく減じると考えられる。
【0109】
例えば、流体の濁度の光学的測定のための地点や、超音波のための通過点において、フィルムが平滑および/または半透明なままである必要があることも、考慮されなければならない。この場合、構造またはドレイン層の省略によってウインドウが設けられる。
【0110】
さらなる可能性が、閉じ込めウェブの使用によってもたらされる。接続ウェブJが通路およびチャンバの配置の適切な地点で通路の縁のシール用ウェブの間に追加されると、押し付けられて閉じられる新たなシール領域Hが得られる。ドレイン構造がこの領域に収束していると、この領域Hは、流体の領域S1、・・・、S3とともに、処理の前および間にフィルムの破れの検出が行われるとともに、考えられる漏れ流体または考えられる汚染および二次汚染についての面積的境界として受動的にシールする押し付けられた通路の縁を有する全面積を形成する。各々の漏れは、最終的にこの領域Hに達しなければならず、これは、漏れ検出器および疎水性の汚染膜を有する吸引地点Kのための好ましい位置である。
【0111】
さらに、閉じ込めウェブは、通路のシール縁を横切るドレイン構造の交差Iの地点において、信頼できる押し付けによる漏れ防止の効果を外見上減らすことなく、より良好なドレイン効果が働くように(例えば、通路の縁のシール用ウェブを広げることによって)、押しのシール効果をいくらか減らす可能性をもたらす。
【0112】
さらに、本発明は、非侵襲的な血液の漏れ検出の可能性を提供する。装置の結合の平面を例えばゴム製の閉じられた保護層で覆うという決定は、非侵襲な方法で動作する装置として処理の間のフィルムの破れの早期発見のための漏れ検出器を形成するという結果も必要とする。これは、例えば、容量センサ、超音波センサ、または漏れ時の真空の崩壊の検出によって、薄いゴム製マットを介して可能である。これは、対向する結合面の側(カセットの非フィルム側)に反射の構成を有する光センサによって可能である。これに関連して、カラーセンサは、例えば血液が出たのか、あるいは通常の水分であるかを区別することができる。ここで、フィルムの構造は、散乱光による濡れの検出を設定するために利用可能である。乾いたフィルムにおいては、散乱光が構造において反射して戻るが、これは、構造が流体で濡れている場合には存在しない。したがって、非ゴム製マット側のこのような構造によれば、ゴム製マットについて、センサに気を配る特別な設計の必要性が省略される。
【0113】
特別に構成された溶接の継ぎ目およびゴム製マットに起因して、さらなる可能性がもたらされる。特には、この目的のために必要とされる疎水性膜の周囲ならびにフィルムの疎水性膜の切り抜きまたは吸引穴の切り抜きの周囲の環状の溶接の継ぎ目に起因して、フィルムの構造およびその上方に配置されるドレイン層(例えば、不織布で作られる)の溶接が、環状の溶接の継ぎ目によって平らにされ、領域HおよびKの間に環状の障壁が形成されるという問題が吸引地点Kで生じる。
【0114】
これらの障壁の可能性をなくすために、図5(c)には、考えられる4つの対策の組み合わせが示されている。ゴム製マットのくぼみQは、カセット表面のくぼみRと同様に、環状の溶接の継ぎ目に対するシールの押し付けを減少させる。さらに、ドレイン効果を有する複数の地点において溶接の継ぎ目を放射状にまたぐ溝およびパターンを有するくぼみの領域におけるゴム製マットの局所構造Sによって同様の効果が達成される。
【0115】
ゴム製マットの両対策においては、ゴム製マットの清掃性が悪化するという欠点が生じる。吸引地点の領域におけるゴム製マットの構造に対応する部分は、環状の溶接による継ぎ目の構造である。この目的のため、溶接の型が環状に構成されるが、このリングが、カセットの対応する溶接面よりも顕著な円錐状に形成される。さらに、環状の面Mには、溶接の際にカセットベースおよびフィルムの共通の構造を残す放射状に配置されたドレインリブが設けられている。前記共通の構造は、環状面の組み合わせの円錐形状に起因する溶接後のフィルムの非溶接領域まで延びる半径方向外向きの直線構造を有する鋸歯状の環状面を有している。前記直線構造は、すでにそこに存在する放射状の構造と協働して、もはや環状のシール溶接領域によって中断されていない全体構造を形成する。
【0116】
ここで、図6は、本発明の医療流体を処理するための器具の第5の実施の形態を示している。ここでは、可撓性フィルム25と可撓性マット15との間の追加の不織布や、それに相当する構造によって吸引が行われるのではなく、マット材料を適切に選択することによって可撓性マット15そのものを介して吸引が行われる。この目的のために、吸引通路40へと加えられる真空によって、可撓性マット15と可撓性フィルム25との間の空気がマット15自体を通って直接的に吸い出し可能となるように、可撓性マットは、空気透過性の材料(例えば、シリコーン)を含んでいる。これに関連しては、装置のプレートの空気通路40を介して広い面積に対する真空の分布が生じる一方で、透過性のマットは、全表面にわたる面積的な吸引を許容する。この面積的な設計により、吸引の完全な閉鎖も、事実上生じることがない。
【0117】
この実施の形態において、流体案内通路21を有する硬質部品20で製作されているとともに可撓性フィルム25によって封じられたすでに公知の医療用カセット2が使用可能である。この目的のため、公知のシステムと同様に、医療用カセット2は、処理装置の可撓性マット15に押し付けられ、シール用ウェブ22によってシールがもたらされる。しかしながら、本発明によれば、装置側の真空通路40および透過性のマット材料によって生じる面積的な吸引が可能である。
【0118】
マット材料は、これに関連して、結合面の汚染を回避するとともに清掃を容易にするために、空気透過性であるが流体を通さないことが好ましい。
【0119】
さらに、本発明によれば、可撓性フィルム25と結合面10との間で連続的に空気を吸い出すことができることにより、フィルムの漏れを検出することが可能となる。面積的な排気に起因して充分に大きい漏れがフィルムに存在する場合には、ドアを押し付けた後で真空が高まることができない。その結果、未だ満たされていないディスポーザブルから、フィルムとマットまたは結合面との間の中間空間に対して空気が継続的に吸い出される。これにより、真空の監視および真空の評価によって、過剰の高い漏れ速度を検出および記録することができる。漏れがないことのチェックは、カセットの結合の間および/または後に行うことができる。
【0120】
このようにして、ディスポーザブルを満たして処理を開始するよりも前に、ディスポーザブルのフィルムの漏れを最初に知ることができる。したがって、欠陥のあるディスポーザブルを無傷のディスポーザブルと交換することができる。
【0121】
これに対し、面積的な吸引がない場合、そのようなチェックは、信頼性が低くなると考えられる。なぜならば、フィルムとマットとの間に自動シールが生じる可能性があり、封入された空気のアイランドの領域にフィルムの漏れが存在しても、そのような漏れは、真空の監視および真空の評価によって検出することができないからである。しかしながら、基本的に、本発明に係るチェックは、任意の種類の排気によって行うことが可能である。
【0122】
これに関し、本発明の中心的な考え方は、可撓性フィルムと結合面との間の空気の面積的な吸引であり、これは、空気透過性の層、可撓性フィルムおよび/またはマットの表面の構造、可撓性マットと可撓性フィルムとの間の平面における吸引、ならびに/あるいは透過性のマット材料を通じての吸引が用意される様々な実施の形態によって、実現可能となる。
【0123】
なお、上述した実施形態は、以下の技術的思想を具体化したものである。
【0124】
第1の思想は、結合面を有する処理装置と、前記処理装置の結合面に結合可能な可撓性フィルムで覆われた流体案内通路を有する硬質部品からなるカセットとを備えた医療流体を処理するための器具であって、前記カセットを結合させた状態で、空気透過性の多孔質材料の層は、前記可撓性フィルムと前記結合面との間の少なくとも一部の領域において配置されており、前記カセットの結合プロセスにおいておよび/または前記カセットを結合させた状態において、前記多孔質材料の層を通って空気を面積的に(areally)吸い出すことができることを特徴とする器具を提供する。
【0125】
第2の思想は、前記空気透過性の多孔質材料の層の平面に沿ってこの層を通って空気を吸い出すことができる第1の思想に係る器具を提供する。
【0126】
第3の思想は、前記空気透過性の多孔質材料の層は、前記カセットを結合させた状態において、前記可撓性フィルム上に直接に配置されている第1または第2の思想に係る器具を提供する。
【0127】
第4の思想は、前記空気透過性の多孔質材料の層は、不織布を含んでいる第1〜3のいずれか1つの思想に係る器具を提供する。
【0128】
第5の思想は、前記空気透過性の多孔質材料の層は、前記可撓性フィルムの全領域にわたって配置されている第1〜4のいずれか1つの思想に係る器具を提供する。
【0129】
第6の思想は、前記カセットは、前記カセットの結合プロセスにおいておよび/または前記カセットを結合させた状態において、空気透過性の材料からなる層の平面に直角な方向に前記層を超えて伝達される圧力によって、前記結合状態において前記結合面に押し付けられているとともに、前記可撓性フィルムは、流体を漏らさない状態で前記カセットの硬質部品の前記流体案内通路に押し付けられているが、前記空気透過性の材料からなる層は、その平面に沿って空気透過性を保持している第1〜5のいずれか1つの思想に係る器具を提供する。
【0130】
第7の思想は、前記処理装置は、前記結合面に配置された可撓性マットを有しており、前記カセットは、前記可撓性マットを介して前記処理装置の結合面に結合することができ、前記空気透過性の材料の層は、前記カセットと結合した状態で前記可撓性フィルムと前記可撓性マットとの間に配置されている第1〜6のいずれか1つの思想に係る器具を提供する。
【0131】
第8の思想は、結合面と前記結合面に配置された可撓性マットとを有する処理装置と、前記可撓性マットを介して前記処理装置の結合面に結合可能な可撓性フィルムで覆われた流体案内通路を有する硬質部品からなるカセットとを備えた医療流体を処理するための器具であって、前記可撓性マットは、空気透過性の材料を含み、前記カセットの結合プロセスにおいておよび/または前記カセットを結合させた状態において、前記可撓性マットの平面に沿って、且つ/または前記可撓性マットを通って、前記可撓性マットの一領域において空気が妨害なく吸い出されるように構成されていることを特徴とする器具を提供する。
【0132】
第9の思想は、結合面を有する処理装置と、前記処理装置の結合面に結合可能な可撓性フィルムで覆われた流体案内通路を有する硬質部品からなるカセットとを備えた医療流体を処理するための器具であって、前記可撓性フィルムの表面は、所定の構造を有し、前記カセットの結合プロセスにおいておよび/または前記カセットを結合させた状態において、前記可撓性フィルムの当該構造に沿って空気を吸い出すことができることを特徴とする器具を提供する。
【0133】
第10の思想は、結合面と前記結合面に配置された可撓性マットとを有する処理装置と、前記可撓性マットを介して前記処理装置の結合面に結合可能な可撓性フィルムで覆われた流体案内通路を有する硬質部品からなるカセットとを備えた医療流体を処理するための器具であって、前記可撓性フィルムに面する前記可撓性マットの表面は、構造を有するとともに、前記カセットの結合プロセスにおいておよび/または前記カセットを結合させた状態において、前記可撓性マットの構造に沿って空気を吸い出すことができることを特徴とする器具を提供する。
【0134】
第11の思想は、前記構造が、網状構造および/または曲がりくねった構造および/または直線状の構造を有している第9または10の思想に係る器具を提供する。
【0135】
第12の思想は、前記構造は、異方性および/または不均一にされている第9または10の思想に係る器具を提供する。
【0136】
第13の思想は、前記構造は、前記流体案内通路に沿って延びている第9または10の思想に係る器具を提供する。
【0137】
第14の思想は、前記構造は、吸引地点を形成する前記流体案内通路の外部の1つ以上の領域に収束している第13の思想に係る器具を提供する。
【0138】
第15の思想は、前記構造は、前記流体案内通路を有している領域から流体案内通路の外部の領域への移行部分において、前記流体案内通路のウェブ縁に対して略垂直に延びている第9〜14のいずれか1つの思想に係る器具を提供する。
【0139】
第16の思想は、前記構造は、前記流体案内通路のウェブ縁を横切っていない領域において、前記流体案内通路のウェブ縁から所定の間隔をあけて設けられている第13〜15のいずれか1つの思想に係る器具を提供する。
【0140】
第17の思想は、前記構造は、前記可撓性フィルムにおいて異なる流体案内通路を有する領域の間の直接的な接続が存在しないように形成されている第13〜16のいずれか1つの思想に係る器具を提供する。
【0141】
第18の思想は、前記カセットは、前記結合状態において前記結合面に押し付けられ、前記可撓性フィルムは、流体を漏らさない状態で前記カセットの硬質部品の前記流体案内通路に押し付けられているが、前記構造は、その平面に沿った空気の移動を許容する第9〜17のいずれか1つの思想に係る器具を提供する。
【0142】
第19の思想は、結合面と前記結合面に配置された可撓性マット、具体的にはシリコーンマットとを有する処理装置と、前記可撓性マットを介して前記処理装置の結合面に結合可能な可撓性フィルムで覆われた流体案内通路を有する硬質部品からなるカセットとを備えた医療流体を処理するための器具であって、前記カセットの結合プロセスにおいておよび/または前記カセットを結合させた状態において、前記可撓性フィルムと前記可撓性フィルムに面する前記可撓性マットの表面との間の平面に沿って、空気を吸い出すことができることを特徴とする器具を提供する。
【0143】
第20の思想は、少なくとも1つの吸引装置を備えている第1〜19のいずれか1つの思想に係る器具を提供する。
【0144】
第21の思想は、空気案内層は、前記流体案内通路の領域の外部の1つ以上の地点において吸引装置に連通する第20の思想に係る器具を提供する。
【0145】
第22の思想は、前記吸引は、前記処理装置の結合面に配置された少なくとも1つの弁を介して行われる第1〜21のいずれか1つの思想に係る器具を提供する。
【0146】
第23の思想は、前記吸引は、前記カセットの硬質部品に配置された1つ以上の吸引用開口を介して行われる第1〜22のいずれか1つの思想に係る器具を提供する。
【0147】
第24の思想は、散乱光による濡れの検出によって漏れを検出するための光学センサを備えている第1〜23のいずれか1つの思想に係る器具を提供する。
【0148】
第25の思想は、空気の自動吸引を実行する制御部を備えている第1〜24のいずれか1つの思想に係る器具を提供する。
【0149】
第26の思想は、前記制御部は、前記医療用カセットに漏れがないことを自動的にチェックする第25の思想に係る器具を提供する。
【0150】
第27の思想は、後述する第28〜53のいずれか1つの思想に係る医療用カセットを備えている第1〜26のいずれか1つに係る器具を提供する。
【0151】
第28の思想は、可撓性フィルムで覆われた流体案内通路を有する硬質部品からなり、処理装置の結合面へと結合可能な医療用カセットであって、前記可撓性フィルム上に配置された所定の構造を有し、前記カセットの結合プロセスにおいておよび/または前記カセットを結合させた状態において、前記構造を通して前記可撓性フィルムの表面の平面に沿って空気を吸い出すことができることを特徴とする医療用カセットを提供する。
【0152】
第29の思想は、空気透過性の材料、具体的には多孔質材料の層は、少なくとも一部の領域において前記可撓性フィルム上に配置され、前記カセットの結合状態において、前記多孔質材料の層を通して前記多孔質材料の層の平面に沿って空気を面積的に(areally)吸い出すことができる第28の思想に係る医療用カセットを提供する。
【0153】
第30の思想は、前記空気透過性の多孔質材料の層は、前記可撓性フィルム上の全領域に配置されている第29の思想に係る医療用カセットを提供する。
【0154】
第31の思想は、前記空気透過性の材料の層は、外周縁において前記カセットに溶接されている第29または30の思想に係る医療用カセットを提供する。
【0155】
第32の思想は、前記溶接は、前記空気透過性の材料の層の平面に沿った気体の流れに対する障壁を形成している第31の思想に係る医療用カセットを提供する。
【0156】
第33の思想は、前記空気透過性の材料の層は、前記カセットの硬質部品に溶接されている第28〜32のいずれか1つの思想に係る医療用カセットを提供する。
【0157】
第34の思想は、前記カセットの硬質部品が、前記構造、具体的には前記空気透過性の材料の層が延びていない外周縁領域を有していることにより、この縁領域は、押し付けられたときにシール用ウェブを形成する第28または29の思想に係る医療用カセットを提供する。
【0158】
第35の思想は、前記可撓性フィルムは、前記外周縁領域においてカセットの硬質部品に溶接されている第34の思想に係る医療用カセットを提供する。
【0159】
第36の思想は、前記空気透過性の材料の層は、前記可撓性フィルムに対して接続され、具体的には接着剤によって接合され、且つ/またはスポット溶接され、且つ/または貼り付けされ、且つ/または積層され、且つ/または留め鋲で留められている第29の思想に係る医療用カセットを提供する。
【0160】
第37の思想は、前記カセットの結合プロセスにおいておよび/または前記カセットを結合させた状態において、前記構造を介して、具体的には空気透過性の材料の層を介して、その平面に垂直に伝達される圧力は、前記可撓性フィルムを流体を漏らさない状態で前記カセットの硬質部品の前記流体案内通路に押し付けるが、前記構造、具体的には空気透過性の材料の層は、その平面に沿った気体の透過性を保持する第28または29の思想に係る医療用カセットを提供する。
【0161】
第38の思想は、前記空気透過性の多孔質材料の層は、不織布を含んでいる第29の思想に係る医療用カセットを提供する。
【0162】
第39の思想は、前記可撓性フィルムの表面は、構造を有しており、前記カセットを結合させた状態において、前記構造を通して前記可撓性フィルムの平面に沿って空気を吸い出すことができる第28の思想に係る医療用カセットを提供する。
【0163】
第40の思想は、前記構造は、網状構造および/または曲がりくねった構造および/または直線状の構造を有している第39の思想に係る医療用カセットを提供する。
【0164】
第41の思想は、前記構造は、異方性および/または不均一にされている第39または40の思想に係る医療用カセットを提供する。
【0165】
第42の思想は、前記構造は、前記流体案内通路に沿って延びている第39または40の思想に係る医療用カセットを提供する。
【0166】
第43の思想は、前記構造は、吸引地点を形成する前記流体案内通路の外部の1つ以上の領域に収束している第42の思想に係る医療用カセットを提供する。
【0167】
第44の思想は、前記構造は、流体案内通路を有する領域から流体案内通路の外部の領域への移行部分において、前記流体案内通路のウェブ縁に対して略垂直に延びている第28〜43のいずれか1つの思想に係る医療用カセットを提供する。
【0168】
第45の思想は、前記構造は、前記流体案内通路のウェブ縁を横切っていない領域において、前記流体案内通路のウェブ縁から所定の間隔をあけて設けられている第42〜44のいずれか1つの思想に係る医療用カセットを提供する。
【0169】
第46の思想は、前記構造は、前記可撓性フィルムにおいて異なる流体案内通路を有する領域の間の直接的な接続が存在しないように形成されている第42〜45のいずれか1つの思想に係る医療用カセットを提供する。
【0170】
第47の思想は、前記硬質部分は、前記流体案内通路の縁のシール用ウェブを接続するとともに、押し付けられることにより閉じられるシール領域を形成する閉じ込めウェブを有している第28〜46のいずれか1つの思想に係る医療用カセットを提供する。
【0171】
第48の思想は、前記カセットの硬質部品に配置された少なくとも1つの吸引用開口を備えている第28〜47のいずれか1つの思想に係る医療用カセットを提供する。
【0172】
第49の思想は、前記吸引用開口は、前記流体案内通路の領域の外部に配置されている第48の思想に記載の医療用カセットを提供する。
【0173】
第50の思想は、前記可撓性フィルムは、前記吸引用開口の周囲において前記カセットの硬質部品に溶接されている第48の思想に係る医療用カセットを提供する。
【0174】
第51の思想は、溶接による環状の継ぎ目は、前記吸引用開口の周囲の構造を有している第50の思想に係る医療用カセットを提供する。
【0175】
第52の思想は、溶接による継ぎ目の領域は、前記カセットの押し付け面に比べて低くされている第50の思想に係る医療用カセットを提供する。
【0176】
第53の思想は、疎水性フィルタが前記吸引用開口に配置されている第48の思想に係る医療用カセットを提供する。
【0177】
第54の思想は、可撓性フィルムで覆われた流体案内通路を有する硬質部品からなるカセットを、医療流体を処理するための処理装置の結合面に結合するための方法であって、前記医療用カセットを前記処理装置の結合面に結合するステップと、前記カセットの結合プロセスにおいておよび/または前記カセットを結合させた状態において、前記可撓性フィルムと前記処理装置の結合面との間の空気を吸い出すステップとを含み、前記吸い出すステップは、前記可撓性フィルムと前記結合面との間の少なくとも一部の領域に配置された空気透過性の多孔質材料の層を介して面積的に(areally)行われることを特徴とする方法を提供する。
【0178】
第55の思想は、可撓性フィルムで覆われた流体案内通路を有する硬質部品からなるカセットを、医療流体を処理するための処理装置の結合面に結合するための方法であって、前記結合面上に配置された可撓性マットを介して前記医療用カセットと前記処理装置の結合面とを結合するステップと、前記カセットの結合プロセスにおいておよび/または前記カセットを結合させた状態において、前記可撓性フィルムと前記可撓性マットとの間の空気を吸い出すステップとを含み、前記吸い出すステップは、前記可撓性マットの領域において妨害なく行われ、実際には前記可撓性マットの平面に沿って且つ/または前記可撓性マットを通って行われ、この目的のために、前記マットは、空気透過性の材料を含んでいることを特徴とする方法を提供する。
【0179】
第56の思想は、可撓性フィルムで覆われた流体案内通路を有する硬質部品からなるカセットを、医療流体を処理するための処理装置の結合面に結合するための方法であって、前記医療用カセットを前記処理装置の結合面に結合するステップと、前記カセットの結合プロセスにおいておよび/または前記カセットを結合させた状態において、前記可撓性フィルムと前記処理装置の結合面との間の空気を吸い出すステップとを含み、前記吸い出すステップは、前記可撓性フィルムの表面の構造に沿って行われ、さらには/または前記カセットと前記結合面との結合に介在する可撓性マットの前記可撓性フィルムに面する表面の構造に沿って行われることを特徴とする方法を提供する。
【0180】
第57の思想は、可撓性フィルムで覆われた流体案内通路を有する硬質部品からなるカセットを、医療流体を処理するための処理装置の結合面に結合するための方法であって、前記結合面上に配置された可撓性マットを介して前記医療用カセットと前記処理装置の結合面とを結合するステップと、前記カセットの結合プロセスにおいておよび/または前記カセットを結合させた状態において、前記可撓性フィルムと前記可撓性マットとの間の空気を吸い出すステップとを含み、前記吸い出すステップは、前記可撓性フィルムと前記可撓性フィルムに面する前記可撓性マットの表面との間の平面に沿って行われることを特徴とする方法を提供する。
【0181】
第58の思想は、第1〜53のいずれか1つの思想に係る医療カセットおよび/または医療流体を処理するための器具を含んでいる第54〜57のいずれか1つの思想に係る方法を提供する。
【0182】
第59の思想は、可撓性フィルムで覆われた流体案内通路を有する硬質部品からなる医療用カセットについて、特には前記医療用カセットを満たす前に、漏れがないことをチェックするための方法であって、前記医療用カセットを処理装置の結合面に結合するステップと、前記可撓性フィルムと前記処理装置の前記結合面との間の空気を吸い出す、特には前記カセットの結合プロセスにおいておよび/または前記カセットを結合させた状態において、面積的に吸い出す(areal suction)ステップと、生成される真空に関して前記医療用カセットに漏れがないことをチェックするステップとを含み、前記漏れがないことをチェックするステップは、カセットの結合の間および/または後に行われる方法を提供する。
【0183】
第60の思想は、第1〜53のいずれか1つの思想に係る医療カセットおよび/または医療流体を処理するための器具を含んでいる第59の思想に係る方法を提供する。
【符号の説明】
【0184】
1 処理装置
2 医療用カセット
10 結合面
11 センサ
13 真空システム
15 可撓性マット
16 弁
20 硬質部品
21 流体案内通路
22、27 シール用ウェブ
24 疎水性膜
25 可撓性フィルム
28 吸引用開口
30 空気案内層
図1
図2
図3
図4
図5
図6