特許第6118895号(P6118895)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6118895
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】封止膜に孔をあけるためのシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/02 20060101AFI20170410BHJP
【FI】
   G01N35/02 B
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-514569(P2015-514569)
(86)(22)【出願日】2013年5月31日
(65)【公表番号】特表2015-518159(P2015-518159A)
(43)【公表日】2015年6月25日
(86)【国際出願番号】FR2013051231
(87)【国際公開番号】WO2013178961
(87)【国際公開日】20131205
【審査請求日】2016年5月13日
(31)【優先権主張番号】1255032
(32)【優先日】2012年5月31日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514226279
【氏名又は名称】ディアメド ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】DiaMed GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100143236
【弁理士】
【氏名又は名称】間中 恵子
(72)【発明者】
【氏名】ブリズブラ,ジャン−ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ガニュパン,セドリック
(72)【発明者】
【氏名】バルテロン,パスカル
【審査官】 長谷 潮
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−28561(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/116069(WO,A1)
【文献】 特開2007−003350(JP,A)
【文献】 特表2006−505803(JP,A)
【文献】 特開2011−027731(JP,A)
【文献】 特開2006−177961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00−35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器(12、60)の少なくとも1つのキャビティ(14、62)を塞いでいる少なくとも1つの封止膜(18、64)に孔をあけるための孔あけシステム(100、600)であって、
前記封止膜(18、64)を穿刺する孔あけ部材(110、604)と、
前記キャビティ(14、62)が有している可能性がある静電荷を取り除くためのイオン化装置(108、602)と、を備え、
前記イオン化装置(108、602)が、イオン化特性を示すように構成された前記孔あけ部材(110、604)を含んでいる、孔あけシステム。
【請求項2】
前記孔あけ部材(110、604)が、前記封止膜(18、64)を貫通することによって、前記容器(12、60)の前記キャビティ(14、62)に貫入するように設計された孔あけスパイクを含んでいる、請求項1に記載の孔あけシステム。
【請求項3】
前記容器(12、60)が、前記封止膜(18、64)によって塞がれた複数のウェルを含むゲルカードであって、前記ウェルのそれぞれが1つ又は複数の試薬(R)を収容しており、及び前記キャビティ(14、62)が、前記ゲルカードにおける1つのウェルである、請求項1又は2に記載の孔あけシステム。
【請求項4】
前記孔あけ部材(110、604)が、コロナ作用を発生させる電位となるように構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の孔あけシステム。
【請求項5】
容器(12、60)の少なくとも1つのキャビティ(14、62)を塞いでいる少なくとも1つの封止膜(18、64)に孔をあけるための孔あけ方法であって、
前記キャビティ(14、62)を開口するために、前記封止膜(18、64)に孔をあけることと、
前記キャビティ(14、62)が有している可能性がある静電荷を除去することと、を含み、
前記封止膜(18、64)の孔あけ及び前記静電荷の除去が、1つの共通部材、すなわちイオン化特性を示すように構成された孔あけ部材(110、604)によって実施される、孔あけ方法。
【請求項6】
前記封止膜(18、64)の孔あけ及び前記静電荷の除去が、同時に実施される、請求項5に記載の孔あけ方法。
【請求項7】
少なくとも、
前記孔あけ部材(110、604)及び前記容器(12、60)を入口位置に設置する工程と、
前記孔あけ部材(110、604)を、前記キャビティ(14、62)内の、前記封止膜(18、64)に孔があけられる押し込み位置まで挿入する工程と、
前記キャビティ(14、62)から前記孔あけ部材(110、604)を引き抜き、前記孔あけ部材(110、604)及び前記容器(12、60)を出口位置に設置する工程と、を連続して含んでいる、請求項5又は6に記載の孔あけ方法。
【請求項8】
前記キャビティへの前記孔あけ部材(110、604)の挿入開始から、前記キャビティ(14、62)からの前記孔あけ部材(110、604)の引き抜き終了まで、前記孔あけ部材(110、604)が、連続して、又は実質的に連続してイオン化特性を示す、請求項7に記載の孔あけ方法。
【請求項9】
少なくとも、
前記孔あけ部材(110)を前記封止膜(18)上方の入口位置に設置する工程と、
前記孔あけ部材(110)を、前記キャビティ(14)内の、前記封止膜(18)に孔があけられる押し込み位置まで下げる工程と、
前記孔あけ部材(110)を、前記押し込み位置から前記キャビティ(14)上方に位置する出口位置まで引き上げる工程と、を連続して含んでいる、請求項5〜8のいずれか1項に記載の孔あけ方法。
【請求項10】
少なくとも、
前記容器(60)を、前記孔あけ部材(604)に対向する入口位置に設置する工程と、
前記孔あけ部材(604)が、前記キャビティ(62)内の、前記封止膜(64)に孔があけられる押し込み位置まで貫入するように、前記孔あけ部材(604)に前記容器(60)を近づける工程と、
前記孔あけ部材に対向して位置する出口位置に前記容器を運ぶことによって、前記孔あけ部材(604)から前記容器(60)を遠ざける工程と、を連続して含んでいる、請求項5〜8のいずれか1項に記載の孔あけ方法。
【請求項11】
前記孔あけ部材(110、604)及び前記容器(12、60)が、前記押し込み位置で所定の時間保持される、請求項7〜10のいずれか1項に記載の孔あけ方法。
【請求項12】
前記孔あけ部材(110、604)を前記キャビティ(14、62)内に挿入する工程及び前記キャビティ(14、62)から前記孔あけ部材を引き抜く工程が、連続した往復動作で実施される、請求項7〜10のいずれか1項に記載の孔あけ方法。
【請求項13】
前記封止膜(18、64)に孔があけられた後に、前記孔あけ部材(110、604)及び前記容器(12、60)が、前記出口位置で所定の時間静止状態に保持される、請求項7〜12のいずれか1項に記載の孔あけ方法。
【請求項14】
前記孔あけ部材(110、604)を挿入することが、第一の所定速度で実施され、前記孔あけ部材(110、604)が、前記第一の所定速度と比べて、小さい、等しい又は大きい第二の所定速度で引き抜かれる、請求項7〜13のいずれか1項に記載の孔あけ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療分析を行うための機器の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、「自動分析器」とも呼ばれるこのような機器は、例えば容器の封止膜に孔をあけること及び、液体、特に血液サンプルや他の種類の人的サンプルを、あらかじめ1つ又は複数の試薬を収容している当該容器へピペットで分配することなどの一定の手順を自動化することができる。
【0003】
本発明の装置及び方法は、ゲルカードの封止膜に孔をあけるのに特に適している。
【0004】
周知の方法では、ゲルカードは、1つ又は複数の反応ウェルを備える容器であり、反応ウェルはあらかじめ封止膜によって封止され、それぞれが試薬を収容しており、1つのゲルカードにおける1つのウェルと他のウェルとで、当該試薬が異なっていてもよい。
【0005】
そのようなゲルカードへの充填には、一定の基準が満たされなければならず、特に、計量された量又は「1ドース(dose)」の分注された液体と、ゲルカードにおけるウェルの底に前もって存在する試薬との間に、空隙が形成されなければならない。当該空隙の存在は、分注された1ドースの液体と試薬との間の物理的接触を一時的に防ぐ。当該空隙の利点は、化学反応の開始時点を制御することである。
【0006】
1ドースの液体の一部が、ウェルの壁に付着したままになることで、インキュベートされ、および遠心分離されるべき反応混合物から除外されることを防ぐため、充填に対して満たされるべき他の基準は、ウェルの内壁上に液体の飛沫があってはならないことである。そのような飛沫は、ほとんどの場合、ウェル内に分注された1ドースの液体がさまざまな範囲で、しかし常に不規則に分裂することに由来する。
【0007】
現在では、ウェルの内壁上での飛沫の形成は、上記の容器から静電荷を取り除くことによって防がれることが知られている。1ドースの液体が充填手段から離れるときに、容器が有している静電荷が、1ドースの液体を分散させる傾向にある。結果として、静電荷によって発生する引力のために、1ドースの液体の一部が、ウェルの内壁に付着するようになる。分注された1ドースの液体と、容器の底に前もって存在する試薬との間での空隙の形成もまた、充填手段によって滴下された1ドースの液体を偏向させる傾向のある静電力が欠如することによって促進される。国際公開第2010/116069号の公開された特許出願では、あらかじめ封止膜によって塞がれたゲルカードに充填するための方法及び装置が記載されている。上記の装置は、膜に孔をあけるための手段及び、分注作業の前に、ゲルカードのウェルが有している可能性がある静電荷を取り除くために設計された別の手段を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2010/116069号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、先行技術の装置と比較して改善されたシステムを提供することを目的とする。
【0010】
特に本発明は、膜によってあらかじめ塞がれたゲルカードタイプの容器が、充填される前に、先行技術の装置と比べてより速く、およびより効率的にコンディショニングされることを可能にするシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、容器の少なくとも1つのキャビティを塞いでいる少なくとも1つの封止膜に孔をあけるための孔あけシステムであって、
前記封止膜を穿刺する孔あけ部材と、
前記キャビティが有している可能性がある静電荷を取り除くためのイオン化装置と、を備え、
前記イオン化装置が、イオン化特性を示すように構成された前記孔あけ部材を含んでいる、孔あけシステムによって達成される。
【0012】
本発明のシステムでは、容器を塞いでいる封止膜に孔をあける作業及び当該容器をイオン化する作業は、本明細書中において「イオン化装置」と呼ばれる1つの共通部材によって実施される。
【0013】
まず、イオン化装置は、交互に正の電荷と負の電荷を帯びたイオンの流れを発生させるように構成され、このイオンの流れは、周囲の空気によって容器に伝わる。この電荷符号の交互変化は、容器の壁が有している静電荷を取り除くことを可能にする。
【0014】
さらに、イオン化装置は、充填されるべき容器の封止膜に孔をあけることができるように形成されている。
【0015】
したがって、これら2つの作業は、同時に、又は少なくとも1つの共通の工程の間に、実施されることが可能である。
【0016】
さらに、これらの設定によって、イオン化装置はまた、封止膜と接触し、ひいては容器のキャビティに非常に接近する、又は実際に当該キャビティに貫入する。さらに、イオン化装置の中心軸は、容器の中心軸と一直線に並びうる。したがってこのイオン化は、イオン化スパイクの一片がゲルカードのウェルから離れて、かつウェルに対して傾斜していることが必要であった先行技術の装置と比べて、より効率的で、より速い。
【0017】
ある実施形態において、前記孔あけ部材は、前記封止膜を貫通することによって、前記容器の前記キャビティに貫入するように設計された孔あけスパイクを含んでいる。
【0018】
ある実施形態において、イオン化装置はさらに、孔あけスパイクの周りに、孔をあけないイオン化スパイクを含んでいる。
【0019】
ある実施形態において、前記容器は、前記封止膜によって塞がれた複数のウェルを含むゲルカードであって、前記ウェルのそれぞれが1つ又は複数の試薬を収容しており、及び前記キャビティは、前記ゲルカードにおける1つのウェルである。
【0020】
1つの実施形態において、孔あけ部材は、電圧源に接続されている。好ましくは、前記孔あけ部材は、コロナ作用を発生させる電位となるように構成されている。
【0021】
本発明はまた、容器の少なくとも1つのキャビティを塞いでいる少なくとも1つの封止膜に孔をあけるための孔あけ方法であって、
前記キャビティを開口するために、前記封止膜に孔をあけることと、
前記キャビティが有している可能性がある静電荷を除去することと、を含み、
前記封止膜の孔あけ及び前記静電荷の除去が、1つの共通部材、すなわちイオン化特性を示すように構成された孔あけ部材によって実施される、孔あけ方法を提供する。
【0022】
本発明によると、容器のキャビティからの静電荷の除去(すなわちイオン化)は、孔あけの間及び/又は後に実施される。
【0023】
一般的に、前記封止膜の孔あけ及び前記静電荷の除去は、同時に実施される。
【0024】
1つの実施において、孔あけ部材及び容器のキャビティが互いに対向して設置され、当該孔あけ部材が、キャビティ内に挿入され、その後キャビティから引き抜かれ、それによって当該キャビティを塞いでいる封止膜に孔があけられ、キャビティへの孔あけ部材の挿入開始と、キャビティからの孔あけ部材の引き抜き終了との間の少なくとも一瞬に、当該孔あけ部材がイオン化特性を示す。
【0025】
通常、当該孔あけ部材は、ある電位、特にコロナ作用を発生させる電位となった場合にイオン化特性を有する導体素子を含んでいる。当該孔あけ部材に加えられる電位は、上記方法の実施の間、必要に応じて制御及び調節されてもよい。したがって、当該孔あけ部材は、ある時点で、又は連続的にイオン化特性を示してもよい。
【0026】
有利な実施において、前記キャビティへの前記孔あけ部材の挿入開始から、前記キャビティからの前記孔あけ部材の引き抜き終了まで、前記孔あけ部材は連続して、又は実質的に連続してイオン化特性を示す。
【0027】
ある実施において、前記方法は、少なくとも、
前記孔あけ部材及び前記容器を入口位置に設置する工程と、
前記孔あけ部材を、前記キャビティ内の、前記封止膜に孔があけられる押し込み位置まで挿入する工程と、
前記キャビティから前記孔あけ部材を引き抜き、前記孔あけ部材及び前記容器を出口位置に設置する工程と、を連続して含んでいる。
【0028】
入口位置は、孔あけ部材がキャビティの注入口付近に位置する位置であり、具体的には孔あけ部材がキャビティと対向する位置であり、より具体的には孔あけ部材がキャビティの中心軸と一直線に並ぶ位置である。
【0029】
同様に、出口位置は、孔あけ部材がキャビティの排出口付近に位置する位置であり、具体的には孔あけ部材がキャビティと対向する位置であり、より具体的には孔あけ部材がキャビティの中心軸と一直線に並ぶ位置である。
【0030】
ある実施では、前記方法は、
前記孔あけ部材を前記封止膜上方の入口位置に設置する工程と、
前記孔あけ部材を、前記キャビティ内の、前記封止膜に孔があけられる押し込み位置まで下げる工程と、
前記孔あけ部材を、前記押し込み位置から前記キャビティ上方に位置する出口位置まで引き上げる工程と、を含んでいる。
【0031】
ある実施では、前記方法は、
前記容器を、前記孔あけ部材に対向する入口位置に設置する工程と、
前記孔あけ部材が、前記キャビティ内の、前記封止膜に孔があけられる押し込み位置まで貫入するように、前記孔あけ部材に前記容器を近づける工程と、
前記孔あけ部材に対向して位置する出口位置に前記容器を運ぶことによって、前記孔あけ部材から前記容器を遠ざける工程と、を含んでいる。
【0032】
いずれにしても、続く工程において、容器を孔あけ部材から遠ざけることが可能であり、逆もまた同様に可能である。
【0033】
ある実施では、前記孔あけ部材及び前記容器が、前記押し込み位置で所定の時間保持される。
【0034】
ある実施では、前記孔あけ部材を前記キャビティ内に挿入すること及び前記キャビティから前記孔あけ部材を引き抜くこと、すなわち前記孔あけ部材を下げて及び上げること、又は、前記容器を上げて及び下げることが、連続した往復動作で実施される。言い換えれば、孔あけ部材又は容器は、当該孔あけ部材が、当該容器のキャビティにおける押し込み位置で静止状態に保持されていない間、連続した往復動作で移動する。
【0035】
ある実施では、前記封止膜に孔があけられた後に、前記孔あけ部材及び前記容器は、前記出口位置で所定の時間静止状態に保持される。
【0036】
ある実施では、前記孔あけ部材を挿入すること(すなわち、入口位置から押し込み位置に、孔あけ部材を下げること又は容器を上げること)は、第一の所定速度で実施され、前記孔あけ部材を引き抜くこと(すなわち、押し込み位置から出口位置に、孔あけ部材を上げること又は容器を下げること)は、第一の所定速度と等しくてもよく、小さくてもよく、又は大きくてもよい第二の所定速度で実施される。
【0037】
種々の実施形態及び実施が、本明細書に記載されている。しかし、特別の定めのない限り、1つの実施形態又は実施を参照して記載された特徴は、他の実施形態又は実施に適用されてもよい。
【0038】
本発明の他の特徴及び利点は、非限定的な例として挙げられた本発明における実施形態に関連する以下の記述を読むことで明らかになる。この記述は、添付している図面を参照して与えられている。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】ヒトから得られたサンプルを処理するように構成され、本発明の孔あけシステムの第一実施形態を備える多連結式ロボットを含んでいる、自動医療分析器の概略図である。
図2図1の自動分析器と共に用いるために設計されたゲルカードタイプの容器の正面図である。
図3】本発明の孔あけシステムの第一実施形態の詳細図である。
図4A】完全に格納された位置における孔あけ部材を示した、本発明の孔あけシステムの第一実施形態の断面図である。
図4B】本発明の孔あけシステムの第一実施形態による、ゲルカードの封止膜の孔あけ開始時の断面図である。
図4C】孔あけ部材が押し込み位置にある、本発明の孔あけシステムの第一実施形態の断面図である。
図5】本発明のイオン化装置の第一実施形態における一変形例の詳細図である。
図6】本発明の孔あけシステムの第二実施形態の詳細図である。
図7A】孔あけ部材の下方の入口位置におけるゲルカードタイプの容器を示した、本発明の孔あけシステムの第二実施形態の断面図である。
図7B】孔あけシステムの第二実施形態による、ゲルカードの封止膜の孔あけ開始時の断面図である。
図7C】容器が押し込み位置にある、本発明の孔あけシステムの第二実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、自動医療分析器10の一例の概略図である。
【0041】
この自動医療分析器10は、ゲルカードを扱う。図2に示すとおり、ゲルカード12は、当該ゲルカードの上部壁12aを開口する複数のウェル又はキャビティ14、具体的には6つのウェルを備えている。これらのウェル14は、ゲルカード12の上部壁12aに形成された開口16を有しており、当該開口16は、ゲルカード12の左右方向Lに伸びる封止膜18によってあらかじめ封止されている。本例では、封止膜18は、ゲルカード12の上部壁を封止する長くて薄い帯状片である。
【0042】
上記のゲルカード12のウェル14は、それぞれ試薬Rで満たされており、ゲルカード12における1つのウェルと他のウェルとで、当該試薬Rが異なっていることも可能である。さらに、それぞれのウェル14は、円錐台形状の中間キャビティを介して、実質的に円筒形状の下部キャビティ14bと接続された、実質的に円筒形状の上部キャビティ14aによって形成されている。上部キャビティ14aは、下部キャビティ14bの直径よりも十分に大きい直径を有し、下部及び上部キャビティは、共通の中心軸Aにおいて相互に一致する。試薬レベルは、下部キャビティ14bの上端よりわずかに下に位置しており、一方で、最初は空である上部キャビティ14aがゲルカード12の上部壁12aに開口する。
【0043】
再度図1を参照すると、自動分析器10は、多連結式ロボット102の腕部の遠位末端(又は「末端部材」)106に取り付けられた本発明の孔あけシステム100の第一実施形態と、ゲルカードを充填するための充填装置200と、充填装置200によってウェル14に注がれた液体の位置を確認するためのモニタリングステーション300と、遠心分離機400と、特にビューイングステーションによって構成される手段である、ゲルカード12のウェル14内で起こりうる化学反応を分析するための手段500とを含んでいる。
【0044】
ゲルカード12はプラスチック製であり、静電荷C+、C−を帯びる傾向がある(図2)。
【0045】
すでに上述した理由のため、分析を実施するために選ばれたウェル14内に分析されるべきサンプルを導入する前に、ウェル14上に位置する膜18の一部は穿刺される必要があり、ウェル14は、静電荷を除去するためにイオン化される必要がある。
【0046】
図3、4A、4B及び4Cを参照して、より詳細に説明された本発明の孔あけ装置100の第一実施形態により、孔あけ及びイオン化作業は、1つの共通部材を用いて、通常同時に実施される。しかし、この実施は限定的でなく、代わりに又は追加で、イオン化作業が孔あけ作業の後に実施されてもよい。
【0047】
図3に示されるように、孔あけシステム100は、孔あけ部材を形成するスパイク110を備え、取り外し可能な方法で円筒形のスリーブ112に固定されたイオン化装置108を含んでおり、この配置は当該スパイク110の定期的な洗浄を可能にする。
【0048】
本発明によると、孔あけスパイク110は、ウェル14上に位置する膜18の一部に孔をあける作業及び当該ウェル14をイオン化する作業のどちらも実施する。
【0049】
上記のウェル14をイオン化するため、孔あけスパイク110は、ゲルカードが有している静電荷を取り除くコロナ作用を発生させる電位となるように構成されている。この例において、孔あけスパイク110は、ゲルカードのウェルに電界Eを発生させる。この目的のため、例えば、孔あけスパイク110のために、250ヘルツ(Hz)の周波数、4.2キロボルト(kV)の最小電位差及び3.5ミリアンペア(mA)未満の電流を送る能力を有する、ほぼ正弦波を送る電源を選ぶことができる。
【0050】
電気アークがないことにより、イオン化装置108がゲルカード12と接触することも可能となる。
【0051】
図示された例では、孔あけスパイク110は、ゲルカード12におけるウェルの上部キャビティ14aの内径と実質的に等しい外径を有している。しかし、この例は限定的でなく、孔あけスパイク110の外径は、ゲルカードにおけるウェル14の上部キャビティ14aの内径と比べて十分に小さくてもよい。
【0052】
さらに、孔あけスパイク110は、斜面110aを備えていてもよい。孔あけスパイク110の斜面110aの数と、当該斜面110aの、孔あけスパイク110の主軸に対する傾斜角とは、封止膜18が作られた材料の性質に応じて調整することができる。
【0053】
本発明の一変形例において、孔をあけないイオン化スパイク114が、図5に示されるように、孔あけスパイク110の周りにリング構造となるように配置されてもよく、これによりゲルカード12におけるウェル14のイオン化の効果を強めることが可能となる。
【0054】
ゲルカード12の封止膜18に孔をあけるための本発明の方法が、図4Aから4Cを参照して以下に説明されている。
【0055】
第一工程の間、孔あけスパイク110はまず、図4Aに示されるように、ゲルカード12のウェル14の中心軸Aと一直線に並べられる。この時、孔あけスパイク110は、封止膜18上方の「入口」位置に設置されている。
【0056】
本方法の第二工程では、図4B及び4Cに示されるように、孔あけスパイク110は、メンブレン18に完全に孔があけられる「押し込み」位置まで、垂直移動の動作でウェル14の上部キャビティ14a内に下げられる。スリーブ112は、上部壁12a上におけるウェル14の両側に隣接する位置となることがわかる。
【0057】
上記のとおり、孔あけスパイク110は、ゲルカード12におけるウェルの上部キャビティ14aの内径と実質的に等しい外径を有している。よって、図4B及び4Cで示すとおり、ウェル14の封止膜に孔があけられている間、孔あけスパイク110はウェルの上部キャビティ14aの壁に沿って動き、当該上部キャビティ14aの壁に沿って膜18aの孔があけられた部分が押しのけられる。この場合、孔あけスパイク110が封止膜18と接触しているため、孔あけスパイク110の周りの閉環境は、イオン化の残留効果が得られる。
【0058】
孔あけスパイク110は、ウェル14上方に位置するゲルカード12の膜18の一部を穿刺し、ウェル14をイオン化もする。
【0059】
その後、第三工程では、孔あけスパイク110は、押し込み位置からウェル14上方に位置する出口位置まで引き上げられる。
【0060】
好ましくは、孔あけスパイク110は、孔あけ作業の間(すなわち、第二工程及び第三工程の間)に、ゲルカードが有している静電荷を連続的に取り除くことを可能にするコロナ作用を発生させる電位となることである。
【0061】
最後に第四工程では、孔あけスパイク110は、ゲルカード12の他のウェルにおいて上述した工程を繰り返し行うために、任意にゲルカード12から遠ざけられる。
【0062】
このように、本発明の孔あけ方法は、ゲルカード12におけるウェル14の封止膜18に孔をあけること及び当該ウェル14をイオン化することを可能にする。これは、複数の分析中に部分的に使用されるゲルカード12にとって特に有利である。ある場合には、特定のウェルが第一分析に使用され、他のウェルが第二分析に使用される。しかし、それぞれの分析において、ゲルカード12のウェル14に存在する試薬Rの品質が保証される必要がある。このため、ウェル14は、充填される直前の間際に開口されることが望ましい。
【0063】
本発明の孔あけ方法の1つの実施において、孔あけスパイク110は、押し込み位置で所定の時間、例えば1秒間、静止状態に保持されてもよい。
【0064】
孔あけ方法の他の実施において、孔あけスパイク110は、連続した往復運動で下げられ及び上げられることもできる。そのとき、当該スパイクは押し込み位置で静止状態に保持されない。
【0065】
有利な方法では、選択されたウェル14上方に位置する膜の一部に孔をあけた後に、孔あけスパイク110は出口位置で所定の時間、例えば1秒のような間、静止状態に保持されうる。この実施は、分注された1ドースの液体と試薬との間での空隙の形成に関して、良好な結果を与える。
【0066】
孔あけスパイク110が、入口位置から押し込み位置に第一の所定速度で下げられ、出口位置に第一の所定速度より小さい第二の所定速度で引き上げられる場合に、空隙の形成が更に促進される。例えば、孔あけスパイク110は、押し込み位置から出口位置に1秒間で上げられることができるので、孔あけ作業が1秒未満の時間で実施できる。
【0067】
図1に示されるように、孔あけ及びイオン化作業の後に、ゲルカード12は、一般的に充填手段200に供される。これらの充填手段200は、1ドースの液体を注ぐために、封止膜18に形成された孔を通してウェル14の上部キャビティ14aに挿入される、少なくとも1つのピペット202を含んでいる。好ましくは、上記のとおり、試薬と注がれた1ドースの液体との間に空隙が形成されるように設定されていることである。
【0068】
そして充填工程の後、ゲルカード12は、空隙が存在することを確認するため、モニタリングステーション300に運ばれる。そのとき、ゲルカード12はインキュベートされ、および遠心分離機400を用いて遠心分離される。最後に、化学反応の結果が、化学反応を分析するための手段500を用いて分析される。
【0069】
本発明の孔あけシステムの第二実施形態は、図6〜7Cを参照して説明されている。本発明の第二実施形態は、主に、孔あけシステム600が自動医療分析器10において静止している点及び自動医療分析器10によって扱われるゲルカード60が、孔あけシステム600に対して動くように取り付けられている点において、第一実施形態と異なる。
【0070】
図6に示されるゲルカード60は、第一実施形態におけるゲルカードと実質的に同一であるため、以下では詳細に説明しない。他に示さない限り、上述のゲルカードの特徴は全て第二実施形態でも有効である。
【0071】
孔あけシステム100の第一実施形態と同様に、ゲルカード60のウェル62の孔あけ及びイオン化の作業が、この例において、1つの共通部材によって実施される。
【0072】
図6は、孔あけ部材を形成するスパイク604を備えるイオン化装置602を含む孔あけシステム600を示している。示された例では、孔あけスパイク604は、自動分析器10の枠に固定されている、この例においては三角形の部材(a set square)である支持部606に取り外し可能な形態で取り付けられた、取付器具608に取り付けられている。孔あけシステム600の取り付けはこのように単純であり、自動医療分析器10にあらかじめ包含されうる。孔あけスパイク604の取り外し可能な取付は、当該スパイクの定期的な洗浄も可能にする。
【0073】
第一実施形態と同様に、孔あけスパイク604は、連続的にコロナ作用を発生する電位となるように構成されている。
【0074】
ゲルカード60は、自動分析器10の多連結式ロボット610によって孔あけシステムに対して動かされうる。図6に示されるように、ゲルカード60は、実質的にL字型であり、多連結式ロボット610の末端部材612の一部を形成する顎部614a、614bによって両末端が固定されている。
【0075】
上述した孔あけシステムを用いるゲルカード60の封止膜64に孔をあける方法は、孔あけ部材が静止している一方で、容器が動くように取り付けられている点のみにおいて、図4A〜4Cを参照して記載された孔あけ方法と異なる。
【0076】
したがって、図7Aに示された第一工程において、ゲルカード60は、多連結式ロボット610によって、孔あけスパイク604の下方に位置する入口位置に移動され、当該カードのウェル62の中心軸Aは孔あけスパイク604と一直線に並ぶ。
【0077】
図7B及び7Cに示されるように、本方法の第二工程において、ゲルカード60は、膜64に孔があけられる押し込み位置まで移動(この例では垂直移動)の動作で、孔あけスパイク604に近づけられる。
【0078】
なお、この例において、孔あけスパイク604の径は、ゲルカード60の上部キャビティ62aの径と比べて十分に小さい。他の例では、孔あけスパイク604の径は、ゲルカード60の上部キャビティ62aの径と比べてより小さい又は実質的に等しい場合もある。
【0079】
ゲルカード60は、最終的に押し込み位置から、孔あけスパイク604の下方に位置する出口位置まで下げられる。
【0080】
一般的に、ウェル62の孔あけ及びイオン化の作業は同時に起こり、より具体的には、イオン化は孔あけ作業の間に実施される。しかし、この実施は限定的でなく、イオン化は、例えば孔あけ作業の間及び後、又は孔あけ作業の後のみに実施されてもよい。
【0081】
第一実施形態を参照して記載された、様々に設定された構成の孔あけ作業が、この第二実施形態にも適用することが可能である。
【0082】
したがって、ゲルカード60を押し込み位置及び/又は出口位置に所定の時間静止状態に保持する、又は反対に、上部キャビティ62a内への動作を連続した往復運動で実施する、又は孔あけスパイク604に押し込む速度を、そこから引き抜く速度より大きくなるように設定してもよい。
【0083】
本発明は、特定の実施形態及び実施を参照して記載されているが、請求項によって定められた本発明の一般的な範囲を超えないで、これらの例について様々な修正及び変更が行われてもよいことが明らかである。特に、示された/言及された様々な実施形態及び実施の個々の特徴は、追加の実施形態及び実施において組み合わされてもよい。したがって、本明細書及び図面は、制限的というより実例的に与えられているとして考慮されるべきである。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7A
図7B
図7C