特許第6118911号(P6118911)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6118911
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】投写型映像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/28 20060101AFI20170410BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20170410BHJP
   H04N 5/74 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   G03B21/28
   G03B21/00 D
   H04N5/74 A
   H04N5/74 E
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-536402(P2015-536402)
(86)(22)【出願日】2013年9月13日
(86)【国際出願番号】JP2013074890
(87)【国際公開番号】WO2015037137
(87)【国際公開日】20150319
【審査請求日】2016年2月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】日立マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】的場 浩介
(72)【発明者】
【氏名】石橋 厚
(72)【発明者】
【氏名】守屋 俊行
(72)【発明者】
【氏名】石津 貴史
(72)【発明者】
【氏名】金子 一臣
(72)【発明者】
【氏名】平田 浩二
【審査官】 小野 博之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/042613(WO,A1)
【文献】 特開2003−237178(JP,A)
【文献】 特開平11−119343(JP,A)
【文献】 特開2012−155203(JP,A)
【文献】 特開2009−042371(JP,A)
【文献】 特開2011−150064(JP,A)
【文献】 特開2010−160296(JP,A)
【文献】 特開2012−116586(JP,A)
【文献】 特開平08−020139(JP,A)
【文献】 特開2009−226836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 21/00−21/10
21/12−21/13
21/134−21/30
33/00−33/16
H04N 5/66−5/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示手段の画像を拡大して投写する投写型映像表示装置であって、
電源部と光源部と前記光源部からの光を前記画像表示手段に導いた後に拡大するレンズユニットとを内部に有する筐体と、前記筐体の上面に形成される投写光用の開口部を覆い前記筐体に対して回動可能に設けられ内面側に凸面ミラーを有する開閉式ミラーとを備え、 前記開閉式ミラーで前記筐体の上面を覆ったときに、前記投写型映像表示装置の上面が前記開閉式ミラーの端部と前記開口部の前縁との間で上下方向に段差がないように滑らかに接続され、中央部が盛り上がった凸曲面となるとともに、前記開閉式ミラーの回動軸の方向における両側面に半擂り鉢状の窪みが形成され、
前記開閉式ミラーは回動軸方向の両側面部が上下方向に延びる面を形成しており、前記窪みは、前記開閉式ミラーの前記両側面部と筐体の上面部とで形成されており、前記両側面部は前記開閉式ミラーを手動で回動するときの把持部として利用可能であることを特徴とする投写型映像表示装置。
【請求項2】
前記両側面部に、前記投写型映像表示装置の操作者の指が把持する凹みを形成したことを特徴とする請求項に記載の投写型映像表示装置。
【請求項3】
前記筐体の上面に形成される開口部の前縁部は、前記開閉式ミラーを開いたときに、前記レンズユニットを経て前記開閉式ミラーの凸面ミラーで反射される反射光の下限光の光路よりも映像範囲の外側で下限光近傍に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の投写型映像表示装置。
【請求項4】
前記開閉式ミラーの側面側に形成される前記窪みの前縁側は、前記下限光の光路よりも映像範囲の外側で下限光近傍に形成されていることを特徴とする請求項に記載の投写型映像表示装置。
【請求項5】
前記開閉式ミラーの側面側に形成される前記窪みの底面形状は、前記開閉式ミラーの凸面ミラーで反射される反射光の下限光の光路よりも映像範囲の下側で、下限光近傍に形成されていることを特徴とする請求項に記載の投写型映像表示装置。
【請求項6】
前記開閉式ミラーを閉じた状態では、前記凸面ミラーの上端部と前記レンズユニットの最終段である投写レンズの上端部がほぼ同じ高さとなるように、前記開閉式ミラーの回動中心位置を前記筐体内に定めたことを特徴とする請求項1に記載の投写型映像表示装置。
【請求項7】
前記開閉式ミラーの回動軸方向長さの最大が、操作者が一方の手だけで把持できる長さであることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の投写型映像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示手段からの映像を拡大して投写表示する投写型映像表示装置に係り、特に開閉式ミラー備えた短焦点の投写型映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の投写型映像表示装置(プロジェクタ装置)の例が、特許文献1から3に記載されている。これらの特許文献に記載のプロジェクタ装置では、装置上面に背面側がほぼ平板状のミラーを開閉可能に設けている。そして、プロジェクタ装置を使用する時にはミラーを開いて、ミラー面と異なる角度方向に画像を投写する。プロジェクタ装置の不使用時にはミラーを閉じてプロジェクタ装置の上面にほぼ平らな面を形成している。特許文献2,3に記載のプロジェクタではさらに、ミラーの開閉を、駆動モータを用いて自動化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−119343号公報
【特許文献2】特開2009−42371号公報
【特許文献3】特開2011−150064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
短焦点のプロジェクタ装置において、横置きで使用する場合には、投写ミラーを垂直よりもさらに傾けて位置させることにより、プロジェクタ装置の近傍の水平面に拡大した映像を提供できる。
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載の液晶プロジェクタ装置では、ミラー閉じた状態で装置上面がほぼ真っ平らになる開閉可能なミラー手段を設けている。これにより、液晶プロジェクタのミラーが意図せずに開くのを防止できる。しかしながら、プロジェクタ装置の上面をほぼ真っ平らにしたことにより、各種光学レンズやミラーで構成される光学系との関係から相対的に高さ方向距離が大きくなってしまい、可搬性や小型化の面でさらなる改善が求められている。また、この上記特許文献1に記載の液晶プロジェクタでは、ミラー部に指の把持部が無く開閉を手動で行い難いという課題がある。
【0006】
特許文献2や3に記載のプロジェクタ装置では、縦置きで使用することにより投写ミラーから水平面に拡大画像がゆがみなく提供されている。そして、ミラー部を開閉するために、ミラー開閉用の駆動モータや制御系を備えている。その結果、ミラーが意図せずに開くのを防止できるものの、ミラー駆動系を備えることにより、プロジェクタ装置が大型化するのを免れざるを得ないという課題がある。
【0007】
本発明は上記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、ミラー開閉可能な投写型映像表示装置(プロジェクタ装置)において、装置の大型化を招くことなく、ミラーの開閉を容易にすることにある。また、投写型映像表示装置の不使用時に、開閉ミラーが意図せずに開閉するのを防止することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明の特徴は、画像表示手段の画像を拡大して投写する投写型映像表示装置が、電源部と光源部と前記光源部からの光を前記画像表示手段に導いた後に拡大するレンズユニットとを内部に有する筐体と、前記筐体の上面に形成される投写光用の開口部を覆い前記筐体に対して回動可能に設けられ内面側に凸面ミラーを有する開閉式ミラーとを備え、前記開閉式ミラーで前記筐体上面を覆ったときに、前記投写型映像表示装置の上面が前記開閉式ミラーの端部と前記開口部の前縁との間で上下方向に段差のない滑らかに接続された凸曲面となるとともに、前記開閉式ミラーの回動軸の方向における少なくとも一方側の側面に半擂り鉢状の窪みが形成されることにある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、投写型映像表示装置の開閉式ミラーの軸方向の少なくとも一側面側に筐体との間で窪みを形成したので、ミラー開閉可能な投写型映像表示装置(プロジェクタ装置)の大型化を招くことなく、ミラーを容易に開閉できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る投写型映像表示装置の一実施例の斜視図である。
図2図1に示した投写型映像表示装置の斜視図であり、ミラー開状態を示す図である。
図3A図1に示した投写型映像表示装置の上面図である。
図3B図1に示した投写型映像表示装置の前面図である。
図3C図1に示した投写型映像表示装置の背面図である。
図4A図3のA−A断面における輪郭図である。
図4B図3のB−B断面における輪郭図である。
図4C図3のA−A断面におけるミラー開状態での輪郭図である。
図5図1に示した投写型映像表示装置のミラー開閉機構を示す図であり、投写型映像表示装置の正面断面図である。
図6図1に示した投写型映像表示装置の斜視図であり、ミラーを開く動作(開く前の動作)を説明する図である。
図7図1に示した投写型映像表示装置の斜視図であり、ミラーを開く動作(開いた後の動作)を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る投写型映像表示装置(プロジェクタ装置)の一実施例を、図面を用いて説明する。
【0012】
図1及び図2は、本発明に係る開閉式ミラー30を備えた投写型映像表示装置100の斜視図である。そして、図1は開閉式ミラー30を閉じて筐体10の上面を滑らかな曲面とした図であり、図2は開閉式ミラー30を開いて投写型映像表示装置100の使用に供する図である。
【0013】
本実施例の投写型映像表示装置100は、例えば、A4サイズ以下にして、30〜50インチもの拡大映像をひずみの無い状態で提供するものである。この投射型映像表示装置100は、A4サイズ以下としたので可搬性が高まり、会議や出張にも対応できる。なお、投写ミラー部の開閉を手動で実施することで、駆動機構の省略により小型化を図っている。具体的には、A4ケースに収納可能なように、A4サイズより一回り小さい大きさとなっており、長辺方向(開閉式ミラー30の回動軸方向)の長さが約270mm、短辺方向が約200mm、厚さ方向が約70mm程度の箱型であり、持ち運びがしやすいように角部の無い丸みを帯びた形状としている。なお、この投写型映像表示装置100は、図1、2に示したように横置きでも、また脚部11を下側にして縦置きでも使用可能である。横置きにして使用した場合には、映像面は壁面等の垂直面を利用でき、縦置きにして使用した場合には机上面などの水平面を利用できる。
【0014】
投写型映像表示装置100を横置きとし、開閉式ミラー30を閉じた状態では、投写型映像表示装置100の筐体10の上面には、ほとんど突起が無く、全体として中央部が盛り上がった形状となっている。筐体10の盛り上がった中央部には、詳細を後述するレンズセット83のフォーカスを調整するフォーカス調整つまみ23とフォーカス調整つまみ23の前側に位置する人感センサ22が設けられている。フォーカス調整つまみ23はダイヤル型で左右方向に指でなぞることによりフォーカスが調整される。人感センサ22は、この投射型映像表示装置100の操作者がゼスチャーにより頁めくり操作等をする場合に使用される。なお、人感センサ―22を、必ずしも備える必要はない。
【0015】
筐体10の開口部26を覆って配置される開閉式ミラー30の後ろ側には、リモコン受光部24が設けられており、図示しないリモコンから入力信号が入射される。これにより投写される映像を制御可能にする。筐体10の上面であって開閉式ミラー30の一方の側には、複数のタッチパネル式操作部21が設けられている。タッチパネル式操作部21は、電源のオン/オフや投写画像の位置矯正等に使用される。
【0016】
投写型映像表示装置100の左側面には、商用電源からの交流電力をこの投写型映像表示装置100に供給する場合などに電源ケーブルが差し込まれる電源インレット部が、右側面には、筐体10の内部を冷却するための空気を外部に吸入し排気するための吸入・排気口、および投写型映像表示装置100により投写表示される画像を外部から入力するための端子部12等が設けられている。また、底面や背面にも、図示しないが、冷却空気の吸入・排気口は設けられており、底面には投写型映像表示装置100の設置角度を調整可能とする脚用ノブ15(図4A参照)などが取り付けられている。
【0017】
ここで、筐体10と開閉式ミラー30とは、筐体10の開口部26の前縁と開閉式ミラー30の上端部42で接続部を形成している。接続部を含む筐体10の中央部で、筐体10全体が上側に滑らかな凸状であり、接続部において上下方向の段差をなくしている。開閉式ミラー30の開閉端部の横方向長さは、後述する凸面ミラー110の大きさから決定される長さとなっており、その横方向端部ではほぼ直角に下方向に折れ曲がった形状となっている。
【0018】
すなわち、開閉式ミラー30の両端部には側面31が形成されており、この側面31と筐体上面の開口部26に連続する面との間に窪み45が形成される。この窪み45は半擂り鉢状となっており、後述するように操作者が開閉式ミラー30を開閉する際の把持空間として利用される。窪み45は、筐体10と大きく2つの曲線により区切られている。窪み45の前側を形成する前縁部41と後ろ側を形成する後縁部46である。これらの形成については、詳細を後述する。
【0019】
図示しない回動機構を利用して操作者が開閉式ミラー30を外側に開くと、凸面ミラー110が所定の角度だけ垂直方向から後傾して保持される。この凸面ミラーの保持のために、筐体10の内部であって開閉式ミラー30の下辺近傍にミラー固定用ヒンジ112が設けられている(図5参照)。
【0020】
凸面ミラー110は、開閉式ミラー30の内側にミラーカバー32により保持されている。凸面ミラー110は、中央部が外側に突き出た形状をしており、回転非対称に形成された反射ミラー(自由曲面ミラー)である。凸面ミラー110の外形形状は、上辺側が下辺側よりも長い角部が丸みを帯びた台形状をしている。
【0021】
次に、図3A図3C及び図4A図4C図5を用いて、本発明に係る投写型映像表示装置100の筐体10内部構造の概略を説明する。図3Aは、投写型映像表示装置100を横置きした場合の上面図であり、図3Bはその前面図、図3Cはその背面図である。図4A図3AのA−A線断面図、図4BはB−B線断面図である。図4Cは、図3AのA−A線断面図に相当する図であり、開閉式ミラー30を開いた状態を示す図である。なお、図4A図4Cは、主として輪郭線を記載した図である。図5は、図4Bに対応する図であり、開閉式ミラー30を開いた状態を示す図である。
【0022】
図3Aに示すように、投写型映像表示装置100の筐体10内には、長手方向の中間部であって前側端から開閉式ミラー30の中間部まで延びて光学系120が配置されており、この光学系120の一方の側には、光源を有するLED照明ユニット130が配置されている。LED照明ユニット130の手前側、すなわちタッチパネル式操作部21の下方には、冷却手段が配置されている。光学系の他方の側には、電源部150が配置されている(図5参照)。
【0023】
開閉式ミラー30は、上述したように弧状の上端部42を有する接続部で、筐体10の開口部26に滑らかに連続している。開閉式ミラー30の根元部は、図3Aに示すように、上端部42よりも短い底辺部48と、直立部47とから形成されている。開閉式ミラー30を開いて使用する際には、図4Aに示す回動中心軸90を中心に開閉式ミラー30が図示しない回動機構により回動する。ここで、回動中心軸90は、図4Aに示すように開閉式ミラー30を閉じた状態で、筐体10の内部であって、高さ方向も筐体10の上面10b及びミラーカバー32と底面10dとの間に位置している。
【0024】
回動中心軸を図4Aのように定めたので、図4Cに示すように開閉式ミラー30の根元部は、筐体10の後側10aとの間に形成される空間内を回動して、内部に潜り込む。その結果、凸面ミラー110の下端部と投写レンズ85の下端部をほぼ同じ高さにすることが可能になる。より正確には、レンズユニット83を経過した投写光における下限側の光である下限光71を、凸面ミラー110の下限近傍で反射させることが可能になる。
【0025】
本実施例では、開閉式ミラー30を閉じたときには開閉式ミラー30の根元部を上側に、開閉式ミラー30を開いたときには根元部が下側に移動するので、開閉式ミラー30の根元部で開閉式ミラー30を回動させた場合に比べ、投写型映像表示装置100の高さが大きくなるのを回避できる。
【0026】
図4Bの長手方向の断面に示すように、開閉式ミラー30を閉じた状態では、筐体10の上面は、窪み45部を除いて、左右の筐体上面10b,10bに開閉式ミラー30のミラーカバー32bに接続するような曲面となっている。なお、図3B図3Cに示すように、筐体10の上面と開閉式ミラー30との接続は滑らかになっており、携行時等において意図せずに開閉式ミラー30が開くのを防止できる形状となっている。開閉式ミラー30の内面側では、ミラーカバー32aが凸面レンズ110の四辺を保持している。筐体の側面10e,10eは、筐体上面10b,10bに接続しており、冷却手段のための吸排気スリット等が形成されている。
【0027】
図4A及び図4Cを用いて、光学系120の概要を説明する。LED照明ユニット130が有する半導体レーザからなる光源からの光を、外部からの映像信号(例えば、携帯端末からの映像信号)に応じて、液晶パネル等からなる透過式の光変調装置(画像表示手段)81により変調する。なお画像表示手段81は、マイクロミラーや反射型液晶パネルからなる反射式であってもよい。透過式の場合、画像表示手段81は通常3枚用いるが、図4Cでは簡単のため1枚のみを示している。画像表示手段81は、筐体10の前側10c近傍に配置されている。
【0028】
画像表示手段81で得られた映像は、プリズム82で合成され、複数のレンズからなるレンズユニット83を介して、投写レンズ85から凸面ミラー110に投写される。投写レンズ85を経過した投写光は、凸面ミラー110の表面で反射されて拡大投写される。
【0029】
なお、上述した複数のレンズからなるレンズユニット83は、映像の拡大投写に伴う各種の歪み、例えば、斜め入射による歪みや台形歪みなどを補正するために必要な、回転対称でない自由曲面形状のレンズ等を含めて、各種のレンズを含んで構成されている。また、レンズユニット83は、図示しないベースに移動可能に搭載されている。筐体10の上部に設けたフォーカス調整つまみ23を操作することにより、図4Cの上下方向にレンズユニット83の一部のレンズまたはレンズ群が移動し、フォーカス性能が調整される。
【0030】
ところで、画像表示手段81からプリズム82およびレンズユニット83を経て、投写レンズ85から凸面ミラー110に投写される投写光は、凸面ミラー32上で反射する。そして、図4Cにおける下限光71と上限光72の範囲θc内において、映像を形成する。凸面ミラー32で反射した光は、例えば、スクリーンや壁面や机やテーブルなどの表面に投写されて、映像光を形成する。
【0031】
図4Cから明らかなように、投写レンズ85から出射される投写光及び凸面レンズ110で反射される反射光の上限側である上限光72の光路に、投写型映像表示装置100は何ら影響を及ぼさない。一方、凸面レンズ110で反射された下限光71は、投写型映像表示装置100を小型化するために、開口部26の前縁部27近傍を通過する。換言すれば、開口部26の前縁27は、下限光71と干渉するのを避ける大きさに形成されている。
【0032】
以上は、投写映像の上下方向に関してであるが、投写映像の横方向に関しても光路を確保する必要がある。図5を用いて、凸面レンズ110で反射される反射光の光路の横方向の広がりを説明する。レンズユニット83を構成するレンズ121から出射される光の広がりを示している。歪の無い映像を得るために、下限光は、左限界の光71bから右限界の光71aの間で角度θbだけの空間を光路として必要とする。一方上限光は、左限界の光72bから右限界の光72aの間で角度θaだけの空間を光路として必要とする。
【0033】
この横方向に関しても上下方向と同様に、上限光72a,72bの光路は、投写型映像表示装置100により遮られることはない。一方、下限光71a、71bは、開閉式ミラー30の側部で、筐体10の上面と干渉する。この干渉部分を切り取って窪み45を形成することにより、下限光71a、71bは干渉の無いきれいな映像をスクリーン等の上に再現できる。
【0034】
したがって、窪み45の形状は、開閉式ミラー30の側面31と筐体10の上面10b,10bの曲面と下限光71(71a、71b)の光路形状に応じた擂り鉢形状となる。なお、窪み45の後縁部46は光路形状には直接関係しないが、窪み45を開閉式ミラー30の操作時の把持部空間として使用することから、指の大きさに応じた形状とする。
【0035】
上述したように、凸面ミラー110と自由曲面レンズを含むレンズユニット83からなる光学系を採用したので、投写型映像表示装置100から映像投写面までの距離が短くても、歪の無く十分拡大された映像を表示可能な投写性能を確保している。例えば、投写型映像表示装置100を、映像を投写する面にその先端部を当接した状態で配置した状態で映像を投写した場合、29.7インチ×18.5インチ(対角35インチの画面サイズ16:10)の画面を得ることが出来た。
【0036】
次に、図6及び図7を用いて開閉式ミラー30の開閉動作について説明する。図6は、開閉式ミラー30を開く直前の動作状態を示す斜視図であり、図7は開閉式ミラー30を所定角度まで開いた動作状態を示す斜視図である。これらの図では右手での操作を示しているが、左手で操作してもよいことは言うまでもない。
【0037】
操作者200は、一方の窪み45を利用して、開閉式ミラー30のタッチパネル式操作部21側からカバー側面部31を親指201で把持し、他方の窪み45を利用して、開閉式ミラー30の他方のカバー側面部31を人差し指202や、中指203、薬指等で把持する。その後、図示しない回動機構を利用して、ミラー固定用ヒンジ112が停止させる位置まで開閉式ミラー30を回動させる。開閉式ミラー30を閉じる場合は、これと逆の動作をする。これにより、手動ではあるが確実に凸面ミラー110の位置を固定保持でき、安定した投写映像を得ることができる。
【0038】
本実施例によれば、投写型映像表示装置に開閉可能な開閉式ミラーを備え、この開閉式ミラーを手動で操作可能にするとともに、開閉式ミラーの回動中心軸を投写型映像表示装置内としたので、回動用の駆動手段が不要となり、投写型映像表示装置を小型化できる。それとともに、開閉式ミラーと筐体上面との間にくぼみを形成し、かつ筐体と開閉式ミラーとの間の接続部を滑らかな曲面としたので、意図せずに開閉式ミラーが開くのを防止できる。これにより、投写型映像表示装置を携行中に、筐体と開閉式ミラーの間から文房具等が入り込んで凸面ミラーを破損する等の不具合の発生が完全に回避される。
【0039】
なお、上記構成において、開閉式ミラー30の把持部となる左右のカバー側面部31に、僅かな凹み等を設けて指での把持を確実にするようにしてもよい。また、開閉式ミラーを閉じた状態では、凸面ミラーの上端部とレンズユニットの最終段である投写レンズの上端部がほぼ同じ高さとなるようにしてもよい。これにより、投写型映像表示装置の小型化が可能になる。さらに、開閉式ミラーの回動軸方向長さの最大は、操作者が一方の手だけで把持できる長さ程度にすることが望ましい。開閉式ミラーの回動軸方向長さは、凸面ミラーで反射される反射光の光路により定まるが、この大きさは例えば10cm程度あれば、十分に映像も実現できるし、操作者が把持できる大きさでもある。
【0040】
また上記実施例においては、光学系が筐体の長手方向ほぼ中央部に位置し、その両側にそれぞれ電源とLED照明ユニットを配置しているが、光学系を長手方向一方端側に配置し、電源やLED照明ユニットを空きスペースに配置するようにしてもよい。この場合、筐体上面には窪みは1個しか形成されないが、この1個の窪みを利用して親指またはその他の指を開閉式ミラーの把持に用いればよい。そして開閉式ミラーの他方の側面を同様に把持手段として使用すれば、上記実施例と同様の効果が得られる。
【0041】
本明細書に記載した実施例は例示的なものであり、限定的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示されており、この範囲に入る全ての変形例は本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
10…筐体、10a…後側、10b〜10b上面、10c…前側、10d…底面、10e、10e…側面、11…脚部、12…端子部、15…脚用ノブ、21…タッチパネル式操作部、22…人感センサ、23…フォーカス調整つまみ、24…リモコン受光部、26…開口部、27…前縁部、30…開閉式ミラー、31…カバー側面部、32〜32b…ミラーカバー、41…窪み前縁部、42…ミラー上端部、45…窪み(干渉回避部)、46…窪み後縁部、47…直立部、48…底辺部、71〜71b…下限光、72〜72b…上限光、81…画像表示手段、82…プリズム、83…レンズユニット、85…投写レンズ、90…ミラー回転中心、100…投写型映像表示装置、110…凸面ミラー、112…ミラー固定用ヒンジ、120…光学系、121…レンズ、130…LED照明ユニット、150…電源部、160…冷却手段、200…操作者の手、201…親指、202…人差し指、203…中指、θa…上限光左右映像範囲、θb…下限光左右映像範囲、θc…上下方向映像範囲。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7