【実施例1】
【0016】
まず、先の
図1のほかに
図2と
図3を参照して、第1実施例における台形歪補正の動作概要を説明する。
【0017】
図2は、第1実施例に係る表示装置のブロック図である。
【0018】
図3は、第1実施例に係るスクリーン周辺を表す図である。なお、
図2と
図3は、図中の(A)において接続されており、本来は一体で図示すべきであるが、ここでは図面の煩雑化を避けるため光路の途中で分離されている。また、
図3は第1乃至第5実施例において共通に使用される。
【0019】
図2のCPU(Central Processing Unit)4は、装置の動作を制御する制御部であって、傾斜角θωと投射距離Dと表示サイズDispに係る例えばユーザの指示を実現するよう、ミラー制御部8に制御・駆動条件を設定し、波形LUT(LookUp Table)10と補正量LUT20に記憶するテーブルデータを生成して記憶させる。テーブルデータの生成方法の詳細は後述する。
【0020】
ミラーアドレス生成部9は、ミラー制御部8から供給されたH軸方向表示周期HFreq、V軸方向表示周期VFreq、H軸方向位相情報Hphas、V軸方向位相情報Vphasと、走査位置判定部17から供給されたミラー15のH軸方向走査位置情報Hpositionに基づき、波形LUT10からH軸方向の駆動波形HwvとV軸方向の駆動波形Vwvを読み出して、前者を乗算器11に後者を乗算器12に供給する。なお、駆動波形HwvとVwvは、ミラーアドレス生成部9が生成したH軸方向のアドレスHaddとV軸方向のアドレスVaddに基づいて、その値をアドレス単位で波形LUT10から読み出すことにより、生成される。
【0021】
補正量LUT20は、走査位置判定部17から供給されたミラー16のV軸方向走査位置情報Vpositionに基づき、保持するテーブルデータからV軸方向走査位置に対するH軸方向補正情報Hcorrectionを求めて乗算器11に供給する。乗算器11は先のHwvとHcorresctionを乗算して、次の乗算器13に供給する。これにより、前記した台形歪が補正される。
【0022】
乗算器13は、所望の表示サイズDispを実現するためのH軸方向の増幅率HAMPをミラー制御部8から供給され、先の乗算器11から供給された信号と乗算する。乗算器12は、所望の表示サイズDispを実現するためのV軸方向の増幅率VAMPをミラー制御部8から供給され、先のVwvと乗算する。その後、AMP14で電圧あるいは電流に換算したH軸方向の駆動信号Hdriveはミラー15を、V軸方向の駆動信号Vdriveはミラー16を駆動する。
【0023】
走査位置判定部17は、V軸方向の駆動波形Vwvと、ミラー15、16から供給されたミラー傾き情報Hsensor/Vsensorからミラー15、16によるビーム光の走査位置を判定して、H軸方向走査位置情報Hpositionをミラーアドレス生成部9と画素アドレス生成部18に、V軸方向走査位置情報Vpositionを補正量LUT20と画素アドレス生成部18に供給する。なお、V軸方向走査位置情報Vpositionは、前記したVwvかVsensorのうちのいずれか一方を用いれば生成することができる。例えば、Vsensorの信号にノイズが多い時はVwvを用いて生成すると良い。
【0024】
画素アドレス生成部18は、入力端子5、6から供給された入力信号のH軸方向とV軸方向の周期Hsync/Vsyncで生成した書き込みアドレス情報Waddに基づいて、入力端子7から供給された映像信号iVideoをRAM19に書き込み、先の走査位置情報Hposition/Vpositionより生成したアドレス情報Raddに基づいて、映像信号videoをRAM19から読み出す。
【0025】
画像補正処理部21は、輝度や色補正等の画像処理を施した映像信号LDvideoを生成し、光源制御・駆動部22は、映像信号LDvideoを電圧あるいは電流値に換算してレーザ光源24を駆動する。レーザ光源24で発生されたレーザ光は、集光レンズ25によりビーム光とされ、揺動するミラー15、16で反射され、
図3に示すスクリーン3の上を2次元走査することで映像を投影表示する。
【0026】
図4と
図5A乃至
図5Cは、ビームスポットの大きさと距離の関係(ビームウエスト)の概略図、そのうち
図5A乃至
図5Cはビームスポット断面の模式図であり、集光レンズ25のレンズ位置Lenspositionを3点(レンズ位置a/b/c)挙げて示す。
【0027】
図5A乃至
図5Cにおいて、例えば、PT/P(D)/PB点を走査時、レンズ位置a/b/cをそれぞれ選択することでビーム焦点はfvt/fp/fvb、即ち、スクリーン上でスポットサイズが略均等あるいは最小となる。これにより、入射方向に向けてビームスポットが太くなる現象が解決される。
【0028】
補正量LUT20は、走査位置判定部17から供給されたV軸の走査位置情報Vpositionに基づき、CPU4にて予めスクリーン3での投射位置を求め、これを所望の焦点位置とするレンズ位置情報Lenspositionを上記
図4、5A乃至5Cのビームウエストの関係から導き保持する。この場合、さらにH軸の走査位置情報Hpositionを用いてレンズ位置情報Lenspositionの精度向上を図っても良い。
【0029】
補正量LUT20は、走査位置情報Vpositionを参照してレンズ位置情報Lenspositionを得て、レンズ制御・駆動部23により集光レンズ25の位置を調整する。調整方法は、集光レンズの位置を光路方向に前後に移動させるものであり、レンズの可動手段として圧電素子、電磁駆動等の微調整かつ駆動信号Vdriveの周波数である60Hz級の緩やかな周期で応答できれば良い。
【0030】
次に
図1を用いて波形LUT10の生成方法を説明する。まず、ミラー15、16のV軸側は、駆動信号Vdriveの電圧あるいは電流値と揺動角との関係が比例関係にあり、駆動信号Hdriveは24.975kHz、駆動信号Vdriveは周波数60Hzであり、映像表示期間DTを80%とするデューティ比8:2のノコギリ波であることを前提とする。
【0031】
映像表示期間DTの走査ライン数N(666本)は次の関係より定まる。
N=2・DT・HFreq/VFreq (式1)
V軸の走査ライン位置nとMEMS(Micro Electro-Mechanical System)の揺動ミラー16の振れ角θvnは次の関係より定まる。
θvn=arctan[tan(θω-θv)+(tan(θω+θv)-tan(θω-θv))・n/(N-1))]-θω+θv (式2)
図1のθvnは、n=0〜N-1の走査範囲の途中にあるn=jの時を示す。
【0032】
これにより、走査ラインn=0〜N-1でスクリーン3上を、前記したV軸方向の走査線密度のムラを発生させずに等間隔で走査する関係となる。CPU4の制御により、波形LUT10は、先に述べたV軸方向のアドレスVadd(何本目の走査線であるかを表す)をnとし、MEMSの揺動ミラー16の振れ角θvnを実現する駆動波形Vwv値を保持する。
【0033】
もちろん、波形LUT10の容量次第ではN、n、θvnを正規化しうえで駆動波形Vwvの値を保持しても良く、後段の乗算器12においてVampにより波形振幅を調整しても良い。
【0034】
図6A乃至
図6Cは、第1実施例に係る動作例を示す第1乃至第3の図である。
【0035】
図6Aは、
図1における表示装置1の状態であり、揺動ミラー15、16は表示領域で直線となるデューティ比8:2のノコギリ波の駆動波形で駆動される。その駆動波形は
図6Aの右端に示されている。
【0036】
同一の駆動条件で
図1における表示装置2を動作させた場合、H軸側(ライン表示)の表示領域が手前側で小となる台形歪と、V軸側のライン表示が手前側で密となる走査線の粗密が生じ、さらにV軸方向へビームスポットの太りが生じる。これは
図6Bと
図6Cに示されている。
図6Bに傾斜角θω=70度、θv=10度の場合であり、
図6Cは、傾斜角θω=70度、θv=3.3度を示している。
【0037】
図6Bと
図6Cの右端には、本実施例を適用した場合の駆動波形Vwvの一例が示されている。即ち、手前側ほどV軸方向の駆動を速めることで、奥側よりもライン表示が密となる問題を解消できることが分かる。前記したとおり、駆動波形Vwvは波形LUT10に記憶されている。
【0038】
尚、H軸方向の駆動波形Hwvは、水平同期周波数の近傍で共振動作を実現するものであれば良く、SIN波、矩形波、三角波など何れの波形でも良い。
【0039】
次に補正量LUT10におけるH軸駆動波形の振幅補正量の生成方法を説明する。
図1の配置関係の場合、台形歪は手前側の走査ラインが短く、奥側が長い関係にあり、手前側の短い走査ラインHtに一致するよう、奥側の走査ラインの振幅を狭めるよう、補正量LUT20がH軸方向補正情報Hcorrectionを乗算器11に供給することで、台形歪補正を実現する。
【0040】
手前側の短い走査ラインHtのサイズは、次の式で表わされる。
Ht = 2D・cosθω/cos(θω-θv)・tanθh (式3)
走査ラインnのH軸の揺動角θhnと水平サイズHnは次の関係にある。
Hn = 2D・cosθω/cos(θω-θv+θvn)・tanθhn (式4)
つまり、振れ角θhn がHn=Htとなる関係であれば良い。
θhn=arctan(cos(θω-θv+θvn)/cos(θω-θv)・tanθh) (式5)
補正量LUT20は、走査位置情報Vposition(=n)に対する歪補正量θhn/θhをCPU4により求め保持する。
【0041】
レンズ25は、傾斜角θωに関わらず焦点距離を1つとするように制御されても良い。この場合は、奥側fvbに焦点を有するよう制御する。台形歪補正量は例えば、
図6Bで約65%、
図6Cで約27%である。
【0042】
実施例1によれば、ミラーのV軸は、スクリーン3上での移動速度が均等になるよう非線形で動作すると同時に、H軸の駆動波形振幅を変調するため台形歪が無くなる。また、ライン太りによる光分散と、台形歪補正による点灯時間の低減による輝度の低下を抑えることが可能である。
【0043】
台形歪をなくすために揺動ミラーに対して行われるH軸の駆動波形振幅の変調は、H軸方向の高速な走査周期には関係なく、V軸方向の低速な走査周期に応じて行われる。V軸方向に走査線密度のムラが発生する現象もまた、V軸方向の低速な走査を変調することで解決される。また、入射方向に向けてビームスポットが太くなる現象は、揺動ミラーの駆動とは関わらずに解決される。このため、映像を斜めに投影する際にも、ミラーの揺動速度を急速に変化させなくとも画質を保持でき、斜め投影時の傾斜角の拡大を図ることができるという効果がある。また、揺動ミラーに代わって、他の構成要素の仕様が厳しくなる問題は発生しないという効果もある。
【実施例5】
【0056】
図9は、第5実施例に係る表示装置のブロック図であり、実施例4と同様にレーザ光源24は赤(R)/緑(G)/青(B)の3原色で構成されるが、実施例4とは異なり集光レンズ25は固定とされている。さらに、合波後のビーム光の光軸上に第2の集光レンズ27が配され、実施例1と同様にレンズ制御・駆動部23でそのレンズ位置が調整される。
【0057】
実施例5によれば、レンズの調整機構を少なくすることができる。
[実施例1乃至5に共通する事項の説明]
以上の実施例では、CPU4に供給する傾斜角θωや投射距離Dの指定方法は言及しなかったが、ボタン操作で行っても良く、傾斜センサや距離センサを用いても良い。
【0058】
また、集光レンズ25、27は、ガラスやプラスチックのレンズに限らず、例えば焦点距離を制御できる液体レンズであっても良い。
【0059】
また、
図5A乃至
図5Cで示したような焦点距離を変更できるビーム径可変光学素子は、H軸方向のビーム径も可変する構成であっても良い。
【0060】
HUD(Head Up Display)向け、HMD(Head Mounted Display)向け、アミューズ向け等、設置条件が制約される場合であっても、本実施例で示した構成により表示装置の配置の自由度を向上することができる。
【0061】
上記実施例によれば、ミラーの低速側の軸(V軸方向の軸)は、スクリーン上での移動速度が均等になるよう非線形で動作する。画像処理により解像度を変換し、画素クロックを変調して表示領域を増減し、或いは、ミラーの駆動振幅を増減して表示領域を変化する。又、レンズ制御・駆動手段でレーザ光の光束を束ね、所望の位置に焦点を有するよう調整する。具体的には集光レンズの位置が光路方向に移動されることで、スクリーン上の表示領域でスポットサイズが略均等あるいは最小となるよう表示装置を動作させる。
【0062】
これにより、所望の傾斜角でスクリーンに投射する場合にあっても、本実施例は台形歪や画素密度の均一性を保つと共に、スクリーン上の表示領域でビームスポットの大きさが略均等あるいは最小となるよう動作することで、ビームスポットの広がりによる画質劣化の影響を低減できる技術を提供するものである。これにより、表示装置の配置自由度を向上、即ち、利用する形態の拡張が可能な表示装置を提供できる。
【0063】
以上、手段を限定して示したが、これに限らず、ミラーの構成や駆動方法、レンズ調整法、演算器の演算方法、或いは補正量LUTは、適用する装置や用途に応じて定められれば良い。