特許第6118913号(P6118913)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6118913
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/02 20060101AFI20170410BHJP
   G02B 26/10 20060101ALI20170410BHJP
   H04N 5/74 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   G09G3/02 A
   G02B26/10 C
   G02B26/10 104Z
   G02B26/10 B
   H04N5/74 H
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-538648(P2015-538648)
(86)(22)【出願日】2013年9月24日
(86)【国際出願番号】JP2013075617
(87)【国際公開番号】WO2015044995
(87)【国際公開日】20150402
【審査請求日】2015年10月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】日立マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小堀 智生
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 欣穂
(72)【発明者】
【氏名】大木 佑哉
(72)【発明者】
【氏名】大内 敏
【審査官】 中村 直行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−124880(JP,A)
【文献】 特開2011−049865(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/111698(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/00 − 3/38
G02B 26/10
H04N 5/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された映像信号によって変調されたレーザ光を、前記映像信号が基づく画像の垂直方向及び水平方向に走査して出射し、表示部に前記画像を表示する表示装置であって、
前記レーザ光を発生するレーザ光源と、
前記映像信号に基づき前記レーザ光源にレーザ光を発生させる光源制御駆動部と、
前記レーザ光源が発生したレーザ光を前記表示部に集光するための集光レンズと、
該集光レンズを駆動して位置を調整するレンズ制御駆動部と、
前記集光レンズを介したレーザ光が入射され該レーザ光を前記画像の垂直方向及び水平方向に走査しながら反射して前記表示部に出射する揺動ミラーと、
該揺動ミラーの垂直方向及び水平方向の走査位置を判定する走査位置判定部と、
前記表示装置の前記表示部に対する傾斜角、投射距離、表示サイズを含む情報に基づき前記表示装置の動作を制御する制御部と、
該制御部が前記情報に基づいて算出した、前記揺動ミラーの垂直方向及び水平方向の走査波形を記憶するための波形LUTと、
前記制御部が前記情報に基づいて算出した、前記揺動ミラーの走査位置に応じた前記表示装置の構成要素に係る補正量を記憶するための補正量LUTと、
前記波形LUTから読み出された水平方向の走査波形と、前記補正量LUTから読み出された前記揺動ミラーの垂直方向の走査位置に応じた前記水平方向の走査波形の補正量とを乗算して前記揺動ミラーに供給する乗算器と、
を有し、
前記制御部は、供給された前記表示装置の前記表示部に対する傾斜角、投射距離、表示サイズを含む情報に応じて、
前記波形LUTが有する前記走査波形を読み出して、前記表示部の垂直方向における走査線密度が均等となるよう前記揺動ミラーを制御し、
前記補正量LUTが有する前記集光レンズの位置に係る補正量を読み出して、前記走査位置判定部が判定した前記揺動ミラーの垂直方向の走査位置に応じて前記集光レンズが前記表示部に焦点を有するよう前記レンズ制御駆動部を制御し、
前記表示部における表示画像の水平方向の表示サイズが、前記垂直方向の走査位置に係らず均等となるよう前記揺動ミラーを制御する
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
入力された映像信号によって変調されたレーザ光を、前記映像信号が基づく画像の垂直方向及び水平方向に走査して出射し、表示部に前記画像を表示する表示装置であって、
前記レーザ光を発生するレーザ光源と、
前記映像信号に基づき前記レーザ光源にレーザ光を発生させる光源制御駆動部と、
前記レーザ光源が発生したレーザ光を前記表示部に集光するための集光レンズと、
該集光レンズを駆動して位置を調整するレンズ制御駆動部と、
前記集光レンズを介したレーザ光が入射され該レーザ光を前記画像の垂直方向及び水平方向に走査しながら反射して前記表示部に出射する揺動ミラーと、
該揺動ミラーの垂直方向及び水平方向の走査位置を判定する走査位置判定部と、
前記表示装置の前記表示部に対する傾斜角、投射距離、表示サイズを含む情報に基づき前記表示装置の動作を制御する制御部と、
該制御部が前記情報に基づいて算出した、前記揺動ミラーの垂直方向及び水平方向の走査波形を記憶するための波形LUTと、
前記制御部が前記情報に基づいて算出した、前記揺動ミラーの走査位置に応じた前記表示装置の構成要素に係る補正量を記憶するための補正量LUTと、
該表示装置に入力された映像信号が供給され、前記補正量LUTから読み出された補正量に応じて水平方向の画素数を低減して前記光源制御駆動部に供給する画像補正処理部と、
を有し、
前記制御部は、供給された前記表示装置の前記表示部に対する傾斜角、投射距離、表示サイズを含む情報に応じて、
前記波形LUTが有する前記走査波形を読み出して、前記表示部の垂直方向における走査線密度が均等となるよう前記揺動ミラーを制御し、
前記補正量LUTが有する前記集光レンズの位置に係る補正量を読み出して、前記走査位置判定部が判定した前記揺動ミラーの垂直方向の走査位置に応じて前記集光レンズが前記表示部に焦点を有するよう前記レンズ制御駆動部を制御し、
前記表示部における表示画像の水平方向の表示サイズが、前記垂直方向の走査位置に係らず均等となるよう前記画像補正処理部を制御する
ことを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の表示装置において、
前記補正量LUTは、走査位置情報Vposition(=n)に対する歪補正量θhn/θhを画像変換率sizeとして求め、更に、ライン数Nから走査位置情報Vposition(=n)を減算した値に応じた輝度補正dimを求め、
前記画像補正処理部は、H軸方向のvideo画素数を画像変換率sizeに相当数する分少なくして、走査ラインセンタを中心とする領域でLDvideoを生成し、さらに、輝度補正dimでLDvideoの輝度レベルを調整して、前記光源制御駆動部に供給する
ことを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項3に記載の表示装置において、前記入力された映像信号を格納する記憶部を有し、
前記した水平方向の画素数は、前記記憶部から映像信号を読み出す時に、前記補正量に応じて読み出しクロックのクロックレートを変化することにより低減される
ことを特徴とする表示装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の表示装置において、
前記レーザ光源は少なくとも赤(R)/緑(G)/青(B)の3原色のレーザ光源を有し、前記集光レンズは前記複数のレーザ光源に応じて複数備えられ、
前記制御部は、前記揺動ミラーの垂直方向の走査位置に応じて前記複数の集光レンズが前記表示部に焦点を有するよう前記レンズ制御駆動部を制御する
ことを特徴とする表示装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の表示装置において、
前記レーザ光源は少なくとも赤(R)/緑(G)/青(B)の3原色のレーザ光源を有し、前記集光レンズは前記複数のレーザ光源に応じて複数備えられ、
前記複数の集光レンズを通過した前記3原色のレーザ光の光路を同じ光軸上に合わせる合成器と、
該合成器を通過した3原色のレーザ光を前記表示部に集光するための第2の集光レンズと、を有し、
前記制御部は、前記揺動ミラーの垂直方向の走査位置に応じて前記第2の集光レンズが前記表示部に焦点を有するよう前記レンズ制御駆動部を制御する
ことを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スクリーンに対し光を斜めに投影して映像を表示する表示装置の場合、発生する台形歪を低減するため、予め画像処理により台形歪補正を施した画像を投影する方法が一般的である。例えば特許文献1は、レーザビームを1軸或いは2軸の揺動ミラーで走査して描画する表示装置において、揺動ミラーの駆動方法を制御することで、スクリーン上で光学的に台形歪補正を行い、画素配置の均一性を保つ方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−199251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によれば、投射型の表示装置が映像を斜めに投影する際、スクリーンに対し光が斜めに入射することから、投影される画素は真円とはならず入射方向に拡大される。例えばレーザ走査型の表示装置でのビームスポットの入射方向への拡大率は、傾斜角が60度で約2倍、70度で約3倍となる。したがって、画質を優先する場合には、斜め投影時の傾斜角は或る角度以内に限定される。
【0005】
さらに、前記したように特許文献1では、1次元或いは2次元走査するためのミラーの揺動速度を変化させることにより、台形歪補正を行っている。しかし、高速で揺動するミラー軸側の振幅を変化させることになるため、ミラーが応答できる範囲内で制御する必要があり、投影時の傾斜角は、やはり或る角度以内に限定される。
【0006】
そこで、本発明の目的は、映像を斜めに投影する際にも画質を保持できるようにして、斜め投影時の傾斜角の拡大を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、特許請求の範囲に記載された構成を特徴とするものである。即ち、入力された映像信号によって変調されたレーザ光を、前記映像信号が基づく画像の垂直方向及び水平方向に走査して出射し、表示部に前記画像を表示する表示装置であって、前記レーザ光を発生するレーザ光源と、前記映像信号に基づき前記レーザ光源にレーザ光を発生させる光源制御駆動部と、前記レーザ光源が発生したレーザ光を前記表示部に集光するための集光レンズと、該集光レンズを駆動して位置を調整するレンズ制御駆動部と、前記集光レンズを介したレーザ光が入射され該レーザ光を前記画像の垂直方向及び水平方向に走査しながら反射して前記表示部に出射する揺動ミラーと、該揺動ミラーの垂直方向及び水平方向の走査位置を判定する走査位置判定部と、前記表示装置の前記表示部に対する傾斜角、投射距離、表示サイズを含む情報に基づき前記表示装置の動作を制御する制御部と、該制御部が前記情報に基づいて算出した、前記揺動ミラーの垂直方向及び水平方向の走査波形を記憶するための波形LUTと、前記制御部が前記情報に基づいて算出した、前記揺動ミラーの走査位置に応じた前記表示装置の構成要素に係る補正量を記憶するための補正量LUTとを有し、前記制御部は、供給された前記表示装置の前記表示部に対する傾斜角、投射距離、表示サイズを含む情報に応じて、前記波形LUTが有する前記走査波形を読み出して、前記表示部の垂直方向における走査線密度が均等となるよう前記揺動ミラーを制御し、前記補正量LUTが有する前記集光レンズの位置に係る補正量を読み出して、前記走査位置判定部が判定した前記揺動ミラーの垂直方向の走査位置に応じて前記集光レンズが前記表示部に焦点を有するよう前記レンズ制御駆動部を制御することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、映像を斜めに投影する際にも画質を保持でき、斜め投影時の傾斜角の拡大を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施例に係る表示装置の配置図。
図2】第1実施例に係る表示装置のブロック図。
図3】第1乃至第5実施例に係るスクリーン周辺を表す図。
図4】第1実施例に係る集光レンズの仕様を示す図。
図5A】第1実施例に係る集光レンズの動作を示す第1の図。
図5B】第1実施例に係る集光レンズの動作を示す第2の図。
図5C】第1実施例に係る集光レンズの動作を示す第3の図。
図6A】第1実施例に係る動作例を示す第1の図。
図6B】第1実施例に係る動作例を示す第2の図。
図6C】第1実施例に係る動作例を示す第3の図。
図7】第2及び第3実施例に係る表示装置のブロック図。
図8】第4実施例に係る表示装置のブロック図。
図9】第5実施例に係る表示装置のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について、添付の図面を用いて説明する。尚、各図または各実施例において、同一の構成、機能または作用を有する要素には同じ番号を付し、重複した説明を省略するものとする。尚、次の実施例では数値を限定して示すが、これに限らず、傾斜角やミラーの揺動角度、画像の解像度、等の大小はいずれでも良く、適用する装置や用途に応じ、本実施例で示した方法にて定めれば良いことはいうまでもない。
【0011】
本実施例の表示装置は、1024x600(水平1024画素、垂直600画素)の表示解像度であって、ビーム光を出射し、高速で光量変調が容易な半導体レーザを光源に用いている。もちろん、LED光源を、ビーム状に集光させる光学部品や光量の変調部品と共に用いても良い。また、2軸の揺動ミラーはφL=1.5mmの大きさで、高速側(以下、H軸)と低速側(以下、V軸)の揺動軸を有し、例えば、H軸方向には24.975kHzの駆動信号Hdrive、V軸方向には60Hzの駆動信号Vdriveで、それぞれ揺動角±θhと±θv(光学振れ角で例えば±17度/±10度)で駆動される。駆動方式は電磁誘導、圧電駆動、静電駆動等、ミラーを揺動するものであれば何れであっても良い。尚、揺動角は本実施例における駆動信号の振幅により調整される。
【0012】
ここで、説明の為、ビームの放射強度がピーク値または光軸上の値の1/e2(13.5%)と成る所をスポット径(ビーム径)とする一般的な定義にて、スポット径がφ1mm以下の大きさであって、表示する映像が所望の解像度を満足するサイズであるとする。さらにビームの波長は、λr=640nm、λg=530nm、λb=450nmであり、三原色である赤(r)緑(g)青(b)の可視光とする。
【0013】
図1は、本実施例に係る表示装置の配置図であって、表示装置1、2とスクリーン3の配置関係を示している。表示装置1は、スクリーン3のP点に対し距離D(例えば500mm)の位置から垂直に映像を投影(以下、正投射)する状態にある。表示装置2は、P点基準に図中の矢印で示すV軸方向に表示装置1を傾斜角θω(例えば70度)傾け、映像を投影する状態にある。当然ながら、実際に映像を投影する際には表示装置1又は2のうちのいずれか一つが存在すれば良く、以下で述べる本実施例は、特に表示装置が表示装置2のようにスクリーン3に対して傾けて配置された場合に効果を発揮する。
【0014】
2軸の揺動ミラー15、16(図1では図示せず、図2で図示)がV軸方向に揺動されて、図下側(奥側)Vbから図上側(手前側)Vtに走査する際に映像を表示する。尚、VSはスクリーン3でのV軸側のV軸表示サイズ、Sは表示装置2からスクリーン3までの距離である。本実施例ではS=171.0mm、PT=342.0mm、PB=984.8mm、VS=673.6mmである。
【0015】
表示装置が表示装置1のように配置された場合と比較して、同じ表示装置が表示装置2のように配置された場合には、距離Sが短縮されて表示装置の設置空間を小さくすることができる。しかし、スクリーン3における画像は次のように表示される。即ち、図1の紙面に対して垂直なH軸方向において、スクリーン3の手前側Vtでは奥側Vbと比較して表示領域が狭くなるという台形歪が発生する。また、図中のV軸方向に向けてライン表示が密となるという走査線密度のムラが発生する。さらには、図中の入射方向に向けてビームスポットが太くなる現象も発生する。これらの課題を解決するための実施形態を以下で説明する。
【実施例1】
【0016】
まず、先の図1のほかに図2図3を参照して、第1実施例における台形歪補正の動作概要を説明する。
【0017】
図2は、第1実施例に係る表示装置のブロック図である。
【0018】
図3は、第1実施例に係るスクリーン周辺を表す図である。なお、図2図3は、図中の(A)において接続されており、本来は一体で図示すべきであるが、ここでは図面の煩雑化を避けるため光路の途中で分離されている。また、図3は第1乃至第5実施例において共通に使用される。
【0019】
図2のCPU(Central Processing Unit)4は、装置の動作を制御する制御部であって、傾斜角θωと投射距離Dと表示サイズDispに係る例えばユーザの指示を実現するよう、ミラー制御部8に制御・駆動条件を設定し、波形LUT(LookUp Table)10と補正量LUT20に記憶するテーブルデータを生成して記憶させる。テーブルデータの生成方法の詳細は後述する。
【0020】
ミラーアドレス生成部9は、ミラー制御部8から供給されたH軸方向表示周期HFreq、V軸方向表示周期VFreq、H軸方向位相情報Hphas、V軸方向位相情報Vphasと、走査位置判定部17から供給されたミラー15のH軸方向走査位置情報Hpositionに基づき、波形LUT10からH軸方向の駆動波形HwvとV軸方向の駆動波形Vwvを読み出して、前者を乗算器11に後者を乗算器12に供給する。なお、駆動波形HwvとVwvは、ミラーアドレス生成部9が生成したH軸方向のアドレスHaddとV軸方向のアドレスVaddに基づいて、その値をアドレス単位で波形LUT10から読み出すことにより、生成される。
【0021】
補正量LUT20は、走査位置判定部17から供給されたミラー16のV軸方向走査位置情報Vpositionに基づき、保持するテーブルデータからV軸方向走査位置に対するH軸方向補正情報Hcorrectionを求めて乗算器11に供給する。乗算器11は先のHwvとHcorresctionを乗算して、次の乗算器13に供給する。これにより、前記した台形歪が補正される。
【0022】
乗算器13は、所望の表示サイズDispを実現するためのH軸方向の増幅率HAMPをミラー制御部8から供給され、先の乗算器11から供給された信号と乗算する。乗算器12は、所望の表示サイズDispを実現するためのV軸方向の増幅率VAMPをミラー制御部8から供給され、先のVwvと乗算する。その後、AMP14で電圧あるいは電流に換算したH軸方向の駆動信号Hdriveはミラー15を、V軸方向の駆動信号Vdriveはミラー16を駆動する。
【0023】
走査位置判定部17は、V軸方向の駆動波形Vwvと、ミラー15、16から供給されたミラー傾き情報Hsensor/Vsensorからミラー15、16によるビーム光の走査位置を判定して、H軸方向走査位置情報Hpositionをミラーアドレス生成部9と画素アドレス生成部18に、V軸方向走査位置情報Vpositionを補正量LUT20と画素アドレス生成部18に供給する。なお、V軸方向走査位置情報Vpositionは、前記したVwvかVsensorのうちのいずれか一方を用いれば生成することができる。例えば、Vsensorの信号にノイズが多い時はVwvを用いて生成すると良い。
【0024】
画素アドレス生成部18は、入力端子5、6から供給された入力信号のH軸方向とV軸方向の周期Hsync/Vsyncで生成した書き込みアドレス情報Waddに基づいて、入力端子7から供給された映像信号iVideoをRAM19に書き込み、先の走査位置情報Hposition/Vpositionより生成したアドレス情報Raddに基づいて、映像信号videoをRAM19から読み出す。
【0025】
画像補正処理部21は、輝度や色補正等の画像処理を施した映像信号LDvideoを生成し、光源制御・駆動部22は、映像信号LDvideoを電圧あるいは電流値に換算してレーザ光源24を駆動する。レーザ光源24で発生されたレーザ光は、集光レンズ25によりビーム光とされ、揺動するミラー15、16で反射され、図3に示すスクリーン3の上を2次元走査することで映像を投影表示する。
【0026】
図4図5A乃至図5Cは、ビームスポットの大きさと距離の関係(ビームウエスト)の概略図、そのうち図5A乃至図5Cはビームスポット断面の模式図であり、集光レンズ25のレンズ位置Lenspositionを3点(レンズ位置a/b/c)挙げて示す。
【0027】
図5A乃至図5Cにおいて、例えば、PT/P(D)/PB点を走査時、レンズ位置a/b/cをそれぞれ選択することでビーム焦点はfvt/fp/fvb、即ち、スクリーン上でスポットサイズが略均等あるいは最小となる。これにより、入射方向に向けてビームスポットが太くなる現象が解決される。
【0028】
補正量LUT20は、走査位置判定部17から供給されたV軸の走査位置情報Vpositionに基づき、CPU4にて予めスクリーン3での投射位置を求め、これを所望の焦点位置とするレンズ位置情報Lenspositionを上記図4、5A乃至5Cのビームウエストの関係から導き保持する。この場合、さらにH軸の走査位置情報Hpositionを用いてレンズ位置情報Lenspositionの精度向上を図っても良い。
【0029】
補正量LUT20は、走査位置情報Vpositionを参照してレンズ位置情報Lenspositionを得て、レンズ制御・駆動部23により集光レンズ25の位置を調整する。調整方法は、集光レンズの位置を光路方向に前後に移動させるものであり、レンズの可動手段として圧電素子、電磁駆動等の微調整かつ駆動信号Vdriveの周波数である60Hz級の緩やかな周期で応答できれば良い。
【0030】
次に図1を用いて波形LUT10の生成方法を説明する。まず、ミラー15、16のV軸側は、駆動信号Vdriveの電圧あるいは電流値と揺動角との関係が比例関係にあり、駆動信号Hdriveは24.975kHz、駆動信号Vdriveは周波数60Hzであり、映像表示期間DTを80%とするデューティ比8:2のノコギリ波であることを前提とする。
【0031】
映像表示期間DTの走査ライン数N(666本)は次の関係より定まる。
N=2・DT・HFreq/VFreq (式1)
V軸の走査ライン位置nとMEMS(Micro Electro-Mechanical System)の揺動ミラー16の振れ角θvnは次の関係より定まる。
θvn=arctan[tan(θω-θv)+(tan(θω+θv)-tan(θω-θv))・n/(N-1))]-θω+θv (式2)
図1のθvnは、n=0〜N-1の走査範囲の途中にあるn=jの時を示す。
【0032】
これにより、走査ラインn=0〜N-1でスクリーン3上を、前記したV軸方向の走査線密度のムラを発生させずに等間隔で走査する関係となる。CPU4の制御により、波形LUT10は、先に述べたV軸方向のアドレスVadd(何本目の走査線であるかを表す)をnとし、MEMSの揺動ミラー16の振れ角θvnを実現する駆動波形Vwv値を保持する。
【0033】
もちろん、波形LUT10の容量次第ではN、n、θvnを正規化しうえで駆動波形Vwvの値を保持しても良く、後段の乗算器12においてVampにより波形振幅を調整しても良い。
【0034】
図6A乃至図6Cは、第1実施例に係る動作例を示す第1乃至第3の図である。
【0035】
図6Aは、図1における表示装置1の状態であり、揺動ミラー15、16は表示領域で直線となるデューティ比8:2のノコギリ波の駆動波形で駆動される。その駆動波形は図6Aの右端に示されている。
【0036】
同一の駆動条件で図1における表示装置2を動作させた場合、H軸側(ライン表示)の表示領域が手前側で小となる台形歪と、V軸側のライン表示が手前側で密となる走査線の粗密が生じ、さらにV軸方向へビームスポットの太りが生じる。これは図6B図6Cに示されている。図6Bに傾斜角θω=70度、θv=10度の場合であり、図6Cは、傾斜角θω=70度、θv=3.3度を示している。
【0037】
図6B図6Cの右端には、本実施例を適用した場合の駆動波形Vwvの一例が示されている。即ち、手前側ほどV軸方向の駆動を速めることで、奥側よりもライン表示が密となる問題を解消できることが分かる。前記したとおり、駆動波形Vwvは波形LUT10に記憶されている。
【0038】
尚、H軸方向の駆動波形Hwvは、水平同期周波数の近傍で共振動作を実現するものであれば良く、SIN波、矩形波、三角波など何れの波形でも良い。
【0039】
次に補正量LUT10におけるH軸駆動波形の振幅補正量の生成方法を説明する。図1の配置関係の場合、台形歪は手前側の走査ラインが短く、奥側が長い関係にあり、手前側の短い走査ラインHtに一致するよう、奥側の走査ラインの振幅を狭めるよう、補正量LUT20がH軸方向補正情報Hcorrectionを乗算器11に供給することで、台形歪補正を実現する。
【0040】
手前側の短い走査ラインHtのサイズは、次の式で表わされる。
Ht = 2D・cosθω/cos(θω-θv)・tanθh (式3)
走査ラインnのH軸の揺動角θhnと水平サイズHnは次の関係にある。
Hn = 2D・cosθω/cos(θω-θv+θvn)・tanθhn (式4)
つまり、振れ角θhn がHn=Htとなる関係であれば良い。
θhn=arctan(cos(θω-θv+θvn)/cos(θω-θv)・tanθh) (式5)
補正量LUT20は、走査位置情報Vposition(=n)に対する歪補正量θhn/θhをCPU4により求め保持する。
【0041】
レンズ25は、傾斜角θωに関わらず焦点距離を1つとするように制御されても良い。この場合は、奥側fvbに焦点を有するよう制御する。台形歪補正量は例えば、図6Bで約65%、図6Cで約27%である。
【0042】
実施例1によれば、ミラーのV軸は、スクリーン3上での移動速度が均等になるよう非線形で動作すると同時に、H軸の駆動波形振幅を変調するため台形歪が無くなる。また、ライン太りによる光分散と、台形歪補正による点灯時間の低減による輝度の低下を抑えることが可能である。
【0043】
台形歪をなくすために揺動ミラーに対して行われるH軸の駆動波形振幅の変調は、H軸方向の高速な走査周期には関係なく、V軸方向の低速な走査周期に応じて行われる。V軸方向に走査線密度のムラが発生する現象もまた、V軸方向の低速な走査を変調することで解決される。また、入射方向に向けてビームスポットが太くなる現象は、揺動ミラーの駆動とは関わらずに解決される。このため、映像を斜めに投影する際にも、ミラーの揺動速度を急速に変化させなくとも画質を保持でき、斜め投影時の傾斜角の拡大を図ることができるという効果がある。また、揺動ミラーに代わって、他の構成要素の仕様が厳しくなる問題は発生しないという効果もある。
【実施例2】
【0044】
図7は、第2及び第3実施例に係る表示装置のブロック図である。図7を用いて、実施例2による台形歪補正を説明する。先の実施例1においては、補正量LUT20がH軸方向補正情報Hcorrectionを乗算器11に供給することで、台形歪補正を行っていた。即ち、走査速度を緩やかに変化させることにより、台形歪補正を行っていた。これに対して実施例2においては、画像信号を補正することにより台形歪補正を行う。従って、揺動ミラーの速度を変化させる必要はない。
【0045】
実施例2において補正量LUT20は、走査位置情報Vposition(=n)に対する歪補正量θhn/θhを画像変換率sizeとして求め、画像補正処理部21に供給する。さらに補正量LUT20は、ライン数Nから走査位置情報Vposition(=n)を減算した値に応じた輝度補正dimを求め、画像補正処理部21に供給する。
【0046】
画像補正処理部21は、H軸方向のvideo画素数を画像変換率sizeに相当数する分少なくして、即ちスケーリングして、走査ラインセンタを中心とする領域でLDvideoを生成し、さらに、輝度補正dimでLDvideoの輝度レベルを調整し、光源制御・駆動部22に供給する。
【0047】
これにより、台形歪補正と輝度補正を実現する。
【0048】
本実施例の台形歪補正により、解像度が犠牲となり、また発光時間の減少により明るさが犠牲となるが、ミラー15、16のH軸の応答性能に依存せず補正を実現できる。
【実施例3】
【0049】
再び図7を用いて、実施例3による台形歪補正を説明する。先の実施例2で説明した画像補正処理部21は、H軸方向のvideo画素数をスケーリングして台形歪補正をしていた。これに対して実施例3においては、クロックレートを変化させることにより台形歪補正を行う。
【0050】
実施例3において画像補正処理部21は、画像変換率sizeの逆数にて、LDvideoの読み出しクロックのレートを変化し、走査ラインセンタを中心とする領域でLDvideoを生成する。さらに実施例2と同様に補正量LUT20から供給された輝度補正dimに応じて、LDvideoの輝度レベルを調整する。
【0051】
これにより、台形歪補正と輝度補正を実現する。
【0052】
本実施例の台形歪補正により、発光時間の減少により明るさが犠牲となるが、実施例2とは異なり、解像度を保つことが可能となる。
【実施例4】
【0053】
図8は、第4実施例に係る表示装置のブロック図であり、レーザ光源24は赤(R)/緑(G)/青(B)の3原色で構成され、それぞれ可動式の集光レンズ25は、実施例1で示した動作と同様に調整される。合波部26は、それぞれの光路を同一軸上に集めるものである。
【0054】
この場合、補正量LUT20は、R/G/B毎に補正量を有しても良く、所望の位置に焦点を有するよう調整する。
【0055】
実施例4によれば、R/G/Bによる映像表示が可能となる。
【実施例5】
【0056】
図9は、第5実施例に係る表示装置のブロック図であり、実施例4と同様にレーザ光源24は赤(R)/緑(G)/青(B)の3原色で構成されるが、実施例4とは異なり集光レンズ25は固定とされている。さらに、合波後のビーム光の光軸上に第2の集光レンズ27が配され、実施例1と同様にレンズ制御・駆動部23でそのレンズ位置が調整される。
【0057】
実施例5によれば、レンズの調整機構を少なくすることができる。
[実施例1乃至5に共通する事項の説明]
以上の実施例では、CPU4に供給する傾斜角θωや投射距離Dの指定方法は言及しなかったが、ボタン操作で行っても良く、傾斜センサや距離センサを用いても良い。
【0058】
また、集光レンズ25、27は、ガラスやプラスチックのレンズに限らず、例えば焦点距離を制御できる液体レンズであっても良い。
【0059】
また、図5A乃至図5Cで示したような焦点距離を変更できるビーム径可変光学素子は、H軸方向のビーム径も可変する構成であっても良い。
【0060】
HUD(Head Up Display)向け、HMD(Head Mounted Display)向け、アミューズ向け等、設置条件が制約される場合であっても、本実施例で示した構成により表示装置の配置の自由度を向上することができる。
【0061】
上記実施例によれば、ミラーの低速側の軸(V軸方向の軸)は、スクリーン上での移動速度が均等になるよう非線形で動作する。画像処理により解像度を変換し、画素クロックを変調して表示領域を増減し、或いは、ミラーの駆動振幅を増減して表示領域を変化する。又、レンズ制御・駆動手段でレーザ光の光束を束ね、所望の位置に焦点を有するよう調整する。具体的には集光レンズの位置が光路方向に移動されることで、スクリーン上の表示領域でスポットサイズが略均等あるいは最小となるよう表示装置を動作させる。
【0062】
これにより、所望の傾斜角でスクリーンに投射する場合にあっても、本実施例は台形歪や画素密度の均一性を保つと共に、スクリーン上の表示領域でビームスポットの大きさが略均等あるいは最小となるよう動作することで、ビームスポットの広がりによる画質劣化の影響を低減できる技術を提供するものである。これにより、表示装置の配置自由度を向上、即ち、利用する形態の拡張が可能な表示装置を提供できる。
【0063】
以上、手段を限定して示したが、これに限らず、ミラーの構成や駆動方法、レンズ調整法、演算器の演算方法、或いは補正量LUTは、適用する装置や用途に応じて定められれば良い。
【符号の説明】
【0064】
1,2…表示装置、3…スクリーン、4…CPU、5,6,7…映像信号、8…ミラー制御部、9…ミラーアドレス生成、10…波形LUT、11,12,13…乗算器、14…AMP、15,16…2軸ミラー、17…走査位置判定部、18…画素アドレス生成部、19…RAM、20…補正量LUT、21…画像補正処理部、22…光源制御・駆動部、23…レンズ制御・駆動部、24…光源、25…集光レンズ、26…合波部、27…第2の集光レンズ。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9