特許第6118914号(P6118914)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6118914-放出制御型の固体ポリマーナノ粒子 図000068
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6118914
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】放出制御型の固体ポリマーナノ粒子
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/50 20170101AFI20170410BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20170410BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20170410BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20170410BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20170410BHJP
   A61K 31/70 20060101ALI20170410BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20170410BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20170410BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20170410BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20170410BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20170410BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20170410BHJP
   A61K 51/00 20060101ALI20170410BHJP
   C07K 7/52 20060101ALN20170410BHJP
【FI】
   A61K47/48ZNM
   A61K45/00
   A61K9/14
   A61K49/00 A
   A61K37/02
   A61K31/70
   A61K31/337
   A61K31/282
   A61K47/34
   A61K47/32
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61K43/00
   !C07K7/52
【請求項の数】28
【全頁数】82
(21)【出願番号】特願2015-550852(P2015-550852)
(86)(22)【出願日】2013年12月30日
(65)【公表番号】特表2016-505609(P2016-505609A)
(43)【公表日】2016年2月25日
(86)【国際出願番号】US2013078361
(87)【国際公開番号】WO2014106208
(87)【国際公開日】20140703
【審査請求日】2015年6月26日
(31)【優先権主張番号】61/746,866
(32)【優先日】2012年12月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515176450
【氏名又は名称】ターベダ セラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TARVEDA THERAPEUTICS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ビロドー、マーク ティ.
(72)【発明者】
【氏名】カディヤラ、スダカル
(72)【発明者】
【氏名】シンデ、ラジェシュ アール.
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト、ブライアン エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ウースター、リチャード
(72)【発明者】
【氏名】バーダー、ティモシー エドワード
(72)【発明者】
【氏名】モロー、ブノワ
【審査官】 伊藤 清子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/030745(WO,A1)
【文献】 Mol. Pharm., 2012 Jun, Vol.9, No.6, p.1590-1598
【文献】 Bioconjug. Chem., 2008, Vol.19, No.1, p.39-49
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/50
A61K 9/14
A61K 31/282
A61K 31/337
A61K 31/70
A61K 38/00
A61K 45/00
A61K 47/32
A61K 47/34
A61K 49/00
A61K 51/00
A61P 35/00
A61P 35/02
C07K 7/52
CAplus(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放出制御型の固体ポリマーナノ粒子であって、前記固体ポリマーナノ粒子は、リンカーにより標的化部分にカップリングされた活性剤を含むコンジュゲートを封入した固体ポリマーマトリックスを有し、前記活性剤は、タンパク質;ペプチド;脂質;炭水化物;糖;ポリマー性でもオリゴマー性でもない小分子;およびこれらの組合せのうちから選択される、固体ポリマーナノ粒子。
【請求項2】
前記コンジュゲートが基X−Y−Z、X−Y−Z−Y−X、X−(Y−Z)、(X−Y)−Z、X−Y−Z、および(X−Y−Z−Y)−Zのうちから選択される式を含み、
式中、Xは標的化部分であり、
Yはリンカーであり、
Zは活性剤であり、かつ
nは2〜1,000の間の整数である、
請求項1に記載の固体ポリマーナノ粒子。
【請求項3】
前記コンジュゲートが式X−Y−Zを含み、
式中、Xは標的化部分であり、
Yはリンカーであり、かつ
Zは活性剤である、
請求項1に記載の固体ポリマーナノ粒子。
【請求項4】
各リンカーが独立して、置換および非置換C〜C30アルキル、置換および非置換C〜C30アルケニル、置換および非置換C〜C30アルキニル、置換および非置換C〜C30シクロアルキル、置換および非置換C〜C30ヘテロシクロアルキル、置換および非置換C〜C30シクロアルケニル、置換および非置換C〜C30ヘテロシクロアルケニル、置換および非置換アリール、ならびに置換および非置換ヘテロアリールからなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の固体ポリマーナノ粒子。
【請求項5】
各リンカーが独立して、C〜C30カルボン酸、C〜C30ジカルボン酸、およびそれらの誘導体からなる群から選択される、請求項4に記載の固体ポリマーナノ粒子。
【請求項6】
前記リンカーが、−O−、−C(=O)−、−NR、−O−C(=O)−NR−、−S−、および−S−S−(ここで、Rは、直鎖もしくは分岐型アルキルまたはヘテロアルキル基である)からなる群から選択される原子または原子群を含むC〜C30カルボン酸またはC〜C30ジカルボン酸の誘導体である、請求項5に記載の固体ポリマーナノ粒子。
【請求項7】
前記リンカーが、骨格にジチオ(−S−S−)基を含有するC〜C30カルボン酸およびジカルボン酸からなる群から選択される、請求項4に記載の固体ポリマーナノ粒子。
【請求項8】
前記リンカーがポリマー性でない、請求項4に記載の固体ポリマーナノ粒子。
【請求項9】
前記活性剤が治療薬、予防薬、栄養補助剤、および診断薬からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の固体ポリマーナノ粒子。
【請求項10】
前記活性剤が化学療法薬、抗感染症薬、およびそれらの組合せのうちから選択される、請求項9に記載の固体ポリマーナノ粒子。
【請求項11】
前記活性剤が有機金属化合物である、請求項9に記載の固体ポリマーナノ粒子。
【請求項12】
前記活性剤が白金化合物である、請求項11に記載の固体ポリマーナノ粒子。
【請求項13】
前記活性剤がカバジタキセルである、請求項12に記載の固体ポリマーナノ粒子。
【請求項14】
前記標的化部分がペプチドおよびポリペプチド、抗体模倣物、核酸、糖タンパク質、小分子、炭水化物、および脂質からなる群から選択される、請求項1〜13のいずれか一項に記載の固体ポリマーナノ粒子。
【請求項15】
前記標的化部分が癌細胞を標的とする、請求項14に記載の固体ポリマーナノ粒子。
【請求項16】
前記標的化部分が、CD19、CD70、CD56、PSMA、αインテグリン、CD22、CD138、EGFR、EphA2、AGS−5、ネクチン−4、HER2、GPMNB、CD74、およびLeからなる群から選択されるマーカーを標的とする、請求項14に記載の固体ポリマーナノ粒子。
【請求項17】
前記標的化部分がRGD、Cy5.5、およびPSMAからなる群から選択される、請求項14に記載の固体ポリマーナノ粒子。
【請求項18】
前記コンジュゲートが、下記のうちのいずれか:
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

を有する、請求項3に記載の固体ポリマーナノ粒子。
【請求項19】
前記固体ポリマーマトリックスが、疎水性ポリマー、親水性ポリマー、およびそれらのコポリマーからなる群から選択される1つ以上のポリマーを含む、請求項1〜18のいずれか一項に記載の固体ポリマーナノ粒子。
【請求項20】
前記疎水性ポリマーがポリヒドロキシ酸、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリカプロラクトン、ポリ(オルトエステル)、ポリ無水物、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)、ポリカーボネート、ポリエステルアミド、ポリエステル、およびそれらのコポリマーからなる群から選択される、請求項19に記載の固体ポリマーナノ粒子。
【請求項21】
前記親水性ポリマーがポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリ(オキシエチル化ポリオール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリビニルピロリドン、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカライド)、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、およびそれらのコポリマーからなる群から選択される、請求項19に記載の固体ポリマーナノ粒子。
【請求項22】
前記固体ポリマーマトリックスが、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、およびそれらのコポリマーからなる群から選択される1つ以上のポリマーを含む、請求項1〜18のいずれか一項に記載の固体ポリマーナノ粒子。
【請求項23】
前記固体ポリマーナノ粒子が10nm〜500nmの間の直径を有する、請求項1〜22のいずれか一項に記載の固体ポリマーナノ粒子。
【請求項24】
前記固体ポリマーマトリックスが2つ以上の異なるポリマーを含む、請求項1〜23のいずれか一項に記載の固体ポリマーナノ粒子。
【請求項25】
前記コンジュゲートが固体ポリマーナノ粒子の重量に基づき0.1%〜10%(w/w)の間の量で存在する、請求項1〜24のいずれか一項に記載の固体ポリマーナノ粒子。
【請求項26】
請求項1〜25のいずれか一項に記載の固体ポリマーナノ粒子と薬学上許容される賦形剤とを含む医薬製剤。
【請求項27】
請求項1〜25のいずれか一項に記載の放出制御型の固体ポリマーナノ粒子を作製する方法であって、
リンカーにより標的化部分に連結された活性剤を含むコンジュゲートを形成するステップと、
前記コンジュゲートを封入する固体ポリマーマトリックスを含む粒子を形成するステップとを含む、方法。
【請求項28】
前記コンジュゲートが、C〜C30カルボン酸および置換カルボン酸、C〜C30ジカルボン酸および置換ジカルボン酸、ならびにそれらの酸無水物、酸エステル、および酸ハロゲン化物からなる群から選択されるリンカー前駆体から形成される、請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、薬物送達のための標的化配位子およびそれらのコンジュゲートの分野にある。
【背景技術】
【0002】
ナノ医療の進展は、薬物の医薬特性を改良することおよび標的化送達を細胞特異的に増強することに向けられている。いくつかの細胞特異的薬物が文献で知られており、モノクローナル抗体、アプタマー、ペプチド、および小分子が含まれる。これらの薬物のいくつかの潜在的利点にもかかわらず、大きさ、安定性、製造コスト、免疫原性、不十分な薬物動態およびその他の要因を含む多くの問題がそれらの臨床応用を制限してきた。
【0003】
ナノ粒子薬物送達システムは、薬物循環半減期を延長し、非特異的取り込みを低減し、かつ、EPR(enhanced permeation and retention)効果を介して腫瘍においてより良く蓄積するそれらの能力のために全身性薬物送達に魅力的である。結果として、ドキシル(DOXIL)(登録商標)(リポソーム封入ドキシルビシン(doxyrubicin))およびアブラキサン(ABRAXANE)(登録商標)(アルブミン結合パクリタキセルナノ粒子)などの数種の治療製剤が第一療法として使用されている。
【0004】
特定の器官または組織において、特定の罹患細胞および組織、例えば癌細胞に、時空間的に調節された様式で薬物または薬物候補を効果的に送達するためのナノテクノロジーの開発は、これまでに直面した、全身毒性などの治療課題を克服できる可能性がある。しかしながら、送達システムの標的化は治療が必要とされる部位へ薬物を送達するものの、放出される薬物は標的化された細胞の領域には有効な量で留まらないことがある。従って、当技術分野では、薬物ターゲッティングおよび送達の改良の必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、時空間的薬物送達のための改良された化合物、組成物、および製剤を提供することである。
さらに、本発明の目的は、時空間的薬物送達のための改良された化合物、組成物、および製剤を製造する方法を提供することである。
【0006】
また、本発明の目的は、改良された化合物、組成物、および製剤を、それを必要とする個体に投与する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
リンカーを介して標的化部分に結合された治療薬、予防薬、または診断薬などの活性剤のコンジュゲートを含有する、ポリマーナノ粒子およびマイクロ粒子を含めた粒子、ならびにそれらの医薬製剤が設計され、これらは活性剤の改良された時空間的送達および/または改良された生体分布を提供することができる。前記コンジュゲート、前記粒子、およびそれらの製剤を作製する方法が提供される。例えば、癌または感染性疾患を治療または予防するために、前記製剤をそれを必要とする対象者に投与する方法が提供される。
【0008】
該コンジュゲートは、粒子の投与後に放出される。これらの標的化された薬物コンジュゲートは、標的化された粒子または封入された、標的化されていない薬物の投与に比べてより大きな有効性および忍容性を提供するために、EPR効果および粒子の全体的な生体分布の改良と組み合わせた活性分子ターゲテッィングを利用している。
【0009】
該コンジュゲートは、リンカーにより連結された標的化配位子と活性剤を含み、該コンジュゲートは、いくつかの実施形態では、式:
(X−Y−Z)
を有し、
式中、Xは標的化部分であり;Yはリンカーであり;かつZは活性剤である。
【0010】
1つの配位子を2つ以上の活性剤にコンジュゲートさせることができ、この場合、コンジュゲートは式:X−(Y−Z)を有する。他の実施形態では、1つの活性剤分子を2つ以上の配位子に連結することができ、この場合、コンジュゲートは式:(X−Y)−Zを有する。nは、1に等しいか1より大きい整数である。
【0011】
標的化部分Xは、ソマトスタチン、オクテオチド(octeotide)、上皮細胞増殖因子(「EGF」)もしくはRGD含有ペプチドなどのペプチド;RNA、DNAもしくは人工核酸などのアプタマー;小分子;マンノース、ガラクトースもしくはアラビノースなどの炭水化物;アスコルビン酸、ナイアシン、パントテン酸、カルニチン、イノシトール、ピリドキサール、リポ酸、葉酸(葉酸塩)、リボフラビン、ビオチン、ビタミンB12、ビタミンA、E、およびKなどのビタミン;トロンボスポンジン、腫瘍壊死因子(TNF)、アネキシンV、インターフェロン、アンギオスタチン、エンドスタチン、サイトカイン、トランスフェリン、GM−CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)などのタンパク質;または血管内皮増殖因子(VEGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、および上皮細胞増殖因子(EGF)などの増殖因子のような分子であり得る。好ましい実施形態では、標的化部分は、抗体フラグメント、RGDペプチド、葉酸または前立腺特異的膜抗原(PSMA)である。
【0012】
リンカーYは、活性剤および標的化配位子に結合されてコンジュゲートを形成する。リンカーは、C〜C10直鎖アルキル、C〜C10直鎖O−アルキル、C〜C10直鎖置換アルキル、C〜C10直鎖置換O−アルキル、C〜C13分岐鎖アルキル、C〜C13分岐鎖O−アルキル、C〜C12直鎖アルケニル、C〜C12直鎖O−アルケニル、C〜C12直鎖置換アルケニル、C〜C12直鎖置換O−アルケニル、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリカプロラクトン、ポリシアノアクリレート、ケトン、アリール、複素環式、コハク酸エステル、アミノ酸、芳香族基、エーテル、クラウンエーテル、エステル、尿素、チオ尿素、アミド、プリン、ピリミジン、ビピリジン、架橋剤として働くインドール誘導体、キレーター、アルデヒド、ケトン、ビスアミン、ビスアルコール、複素環式環構造、アジリン、ジスルフィド、チオエーテル、ヒドラゾンおよびそれらの組合せを含み得る。例えば、リンカーは、C直鎖アルキルまたはケトンであり得る。リンカーは、所望の放出部位で活性剤を放出することができる。
【0013】
活性剤Zは、好ましくは、化学療法薬、抗微生物薬、またはそれらの組合せである。例えば、活性剤Zは、カバジタキセル、白金(IV)錯体、またはその類似体もしくは誘導体であり得る。
【0014】
一実施形態では、式IのRGDペプチド−SS−カバジタキセルコンジュゲートは以下のように示される。
【0015】
【化1】
【0016】
別の実施形態では、式IIの葉酸−白金(IV)コンジュゲートは以下のように示される。
【0017】
【化2】
【0018】
さらなる実施形態では、式IIIのPSMA−カバジタキセルコンジュゲートは以下のように示される。
【0019】
【化3】
【0020】
別の実施形態では、PSMA−白金(IV)コンジュゲートは以下のように示される。
【0021】
【化4】
【0022】
さらに別の実施形態では、葉酸−カバジタキセルコンジュゲートは以下のように示される。
【0023】
【化5】
【0024】
さらに別の実施形態では、PSMA−カバジタキセルコンジュゲートは以下のように示される。
【0025】
【化6】
【0026】
さらに別の実施形態では、PSMA−カバジタキセルコンジュゲートは以下のように示される。
【0027】
【化7】
【0028】
さらに別の実施形態では、葉酸−Pt(IV)コンジュゲートは以下のように示される。
【0029】
【化8】
【0030】
さらに別の実施形態では、Pt(IV)−ジ−二葉酸コンジュゲートは以下のように示される。
【0031】
【化9】
【0032】
さらに別の実施形態では、PSMA−ジ−Pt(IV)コンジュゲートは以下のように示される。
【0033】
【化10】
【0034】
さらに別の実施形態では、RGDペプチド−SS−カバジタキセルコンジュゲートは以下のように示される。
【0035】
【化11】
【0036】
薬学上許容されるビヒクル中に本明細書に記載のナノ粒子コンジュゲートまたはそれらの薬学上許容される塩を含有する医薬製剤が提供される。好ましい実施形態では、これらの製剤は注射により投与される。
【0037】
コンジュゲートおよび該コンジュゲートを含有する粒子を作製する方法が提供される。また、疾患または病態を治療するための方法も提供され、該方法は、治療上有効な量のコンジュゲート含有粒子をそれを必要とする対象者に投与することを含む。好ましい実施形態では、該コンジュゲートは、リンパ腫、腎細胞癌、白血病、前立腺癌、肺癌、膵臓癌、黒色腫、結腸直腸癌、卵巣癌、乳癌、多形性膠芽腫、胃癌、肝臓癌、肉腫、膀胱癌、精巣癌、食道癌、頭頸部癌、子宮内膜癌および髄膜癌腫症を含む癌または増殖性疾患に対して標的化される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】ラットにおける尾静脈注射後の時間(h)の関数としての、実施例2のカバジタキセル−RDGコンジュゲートの血漿濃度(μM)のグラフである。注射した製剤は、遊離型のカバジタキセル−RDGコンジュゲートか実施例3のカバジタキセル−RDGナノ粒子のいずれかを含んでいた。
【発明を実施するための形態】
【0039】
I.定義
用語「対象者」または「患者」は、本明細書で使用する場合、当該粒子が、例えば、実験目的、治療目的、診断目的、および/または予防目的で投与され得る、任意の生物を指す。典型的な対象者としては、動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、およびヒトなどの哺乳動物)および/または植物が含まれる。
【0040】
用語「治療する」または「予防する」とは、本明細書で使用する場合、ある疾患、障害および/または病態に対して疾病素因を持ち得るがそれに罹患しているという診断を受けたことがない動物において前記疾患、障害または病態が発生しないように回避すること;前記疾患、障害または病態を阻害すること、例えば、その進行を妨げること;および前記疾患、障害、または病態を緩和すること、例えば、前記疾患、障害および/または病態の緩解を生じることを含み得る。前記疾患、障害、または病態を治療するとは、基礎にある病態生理が影響を受けないとしても特定の疾患、障害、または病態の少なくとも1つの症状を改善すること、例えば、鎮痛薬が疼痛の原因を治療しないとしてもこのような薬剤の投与により対象者の疼痛を治療することなどを含み得る。
【0041】
「標的」は、本明細書で使用する場合、標的化された構築物が結合する部位を意味するものとする。標的はin vivoまたはin vitroのいずれにおけるものでもよい。特定の実施形態では、標的は、白血病または腫瘍(例えば、脳、肺(小細胞および非小細胞)、卵巣、前立腺、乳房および結腸の腫瘍ならびにその他の癌腫および肉腫)に見られる癌細胞であり得る。他の実施形態では、標的は、感染(例えば、細菌、ウイルス(例えば、HIV、ヘルペス、肝炎)および病原性真菌(例えば、カンジダ種)による)の部位であり得る。特定の標的感染性生物としては、薬剤耐性であるもの(例えば、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、腸球菌(Enterococcus)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenza)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae))が含まれる。さらに他の実施形態では、標的は、ハプテン、エピトープ、受容体、dsDNAフラグメント、炭水化物または酵素などの、標的化部分または配位子が結合する分子構造を指す場合もある。さらに、標的は、あるタイプの組織、例えば、神経組織、腸管組織、膵臓組織などであってもよい。
【0042】
本方法または配位複合体に関する標的として働き得る「標的細胞」としては、酵母、植物細胞および動物細胞を含む、原核生物および真核生物が含まれる。本方法は、in vitro、すなわち、細胞培養において、あるいはin vivo、すなわち、それらの細胞が植物組織もしくは動物組織の一部を形成するか、または他の様式で植物組織もしくは動物組織中に存在する場合において、生細胞の細胞機能を改変するために使用することができる。よって、標的細胞としては、例えば、血液、リンパ組織、口腔および咽頭粘膜などの消化管を裏打ちしている細胞、小腸の絨毛を形成している細胞、大腸を裏打ちしている細胞、動物の呼吸器系(鼻道/肺)を裏打ちしている細胞(本発明の吸入により接触可能)、皮膚/表皮細胞、膣および直腸の細胞、胎盤およびいわゆる血液/脳関門の細胞を含む内部器官の細胞などを含み得る。
【0043】
用語「治療効果」は、当技術分野で認知されており、薬理活性物質により引き起こされる、動物、特に、哺乳動物、より詳しくは、ヒトにおける局所的または全身的効果を指す。従って、この用語は、疾患の診断、治癒、緩和、治療もしくは予防において、または動物もしくはヒトにおける望ましい身体的もしくは精神的発達および状態の増進において使用することを意図される任意の物質を意味する。
【0044】
用語「調節」は、当技術分野で認知されており、ある応答のアップレギュレーション(すなわち、活性化または刺激)、ダウンレギュレーション(すなわち、阻害または抑制)、または両者の組合せもしくは単独を指す。
【0045】
「非経口投与」は、本明細書で使用する場合、経消化管または非侵襲的局所もしくは領域経路以外の任意の方法による投与を意味する。例えば、非経口投与としては、患者への注射による、および注入による、静脈内、皮内、腹膜内、胸腔内、気管内、筋肉内、皮下、結膜下投与を含み得る。
【0046】
「局所投与」は、本明細書で使用する場合、皮膚、開口部、または粘膜への非侵襲的投与を意味する。局所投与は、局部的に投与することができ、すなわち、それらは全身曝露なく、適用領域に局部的効果をもたらすことができる。局所用製剤は、個体の血流中への吸収によって全身効果を提供することができる。局所投与としては、限定されるものではないが、皮膚および経皮投与、頬側投与、鼻腔内投与、腟内投与、膀胱内投与、点眼投与、および直腸投与を含み得る。
【0047】
「経腸投与」は、本明細書で使用する場合、消化管からの吸収による投与を意味する。経腸投与としては、経口および舌下投与、胃投与、または直腸投与を含み得る。
「肺投与」は、本明細書で使用する場合、吸入または気管内投与による肺への投与を指す。本明細書で使用する場合、用語「吸入」は、肺胞への空気の取り込みを意味する。空気の取り込みは口または鼻を介して起こり得る。
【0048】
本明細書で互換的に使用される用語「十分な」および「有効な」は、1つ以上の所望の結果を達成するために必要とされる量(例えば、質量、体積、用量、濃度、および/または時間)を指す。「治療上有効な量」は、任意の症状もしくは特定の病態もしくは障害の測定可能な改善もしくは予防を果たすため、平均余命の測定可能な増大を果たすため、または一般に患者の生活の質を向上させるために必要とされる少なくとも最小の濃度である。従って、治療上有効な量は、特定の生物活性分子および治療される特定の病態または障害によって決まる。抗体などの多くの活性剤の治療上有効な量は、当技術分野で周知である。以下に開示される陰イオン性タンパク質、タンパク質類似体、もしくは核酸の、または付加的障害を治療するための既知のタンパク質、タンパク質類似体、もしくは核酸で特定の障害を治療するための、治療上有効な量は、医師などの当業者の技術の十分に範囲内にある標準的な技術によって決定することができる。
【0049】
本明細書で互換的に使用される用語「生物活性剤」および「活性剤」は、限定されるものではないが、身体において局所的または全身的に作用する生理学的または薬理学的に活性な物質を含む。生物活性剤は、疾患もしくは疾病の治療(例えば、治療薬)、予防(例えば、予防薬)、診断(例えば、診断薬)、治癒もしくは緩和のために使用される物質、身体の構造もしくは機能に影響を与える物質、または所定の生理学的環境に置かれた後に生物学的に活性となる、もしくはより活性を増すプロドラッグである。
【0050】
用語「プロドラッグ」は、in vitroおよび/またはin vivoで生物活性型に変換される、核酸またはタンパク質を含む薬剤を指す。プロドラッグは、場合によっては親化合物よりも投与が容易となることがあるので有用であり得る。例えば、プロドラッグは、親化合物がそうではないところ、経口投与によるバイオアベイラビリティを得られる場合がある。プロドラッグはまた、親薬物に比べて医薬組成物中で溶解度の向上を示す場合もある。プロドラッグは、酵素的プロセスおよび代謝的加水分解を含む様々な機序によって親薬物へと変換され得る。Harper,N.J.(1962)Drug Latentiation in Jucker,ed.Progress in Drug Research,4:221−294;Morozowich et al.(1977)Application of Physical Organic Principles to Prodrug Design in E.B.Roche ed.Design of Biopharmaceutical Properties through Prodrugs and Analogs,APhA; Acad.Pharm.Sci.;E.B.Roche,ed.(1977)Bioreversible Carriers in Drug in Drug Design,Theory and Application,APhA;H.Bundgaard,ed.(1985)Design of Prodrugs,Elsevier;Wang et al.(1999)Prodrug approaches to the improved delivery of peptide drug,Curr.Pharm.Design.5(4):265−287;Pauletti et al.(1997)Improvement in peptide bioavailability:Peptidomimetics and Prodrug Strategies,Adv.Drug.Delivery Rev.27:235−256;Mizen et al.(1998).The Use of Esters as Prodrugs for Oral Delivery of β−Lactam antibiotics,Pharm.Biotech.11:345−365;Gaignault et al.(1996)Designing Prodrugs and Bioprecursors I.Carrier Prodrugs,Pract.Med.Chem.671−696;M.Asgharnejad(2000).Improving Oral Drug Transport Via Prodrugs,in G.L.Amidon,P.I.Lee and E.M.Topp,Eds.,Transport Processes in Pharmaceutical Systems,Marcell Dekker,p.185−218;Balant et al.(1990)Prodrugs for the improvement of drug absorption via different routes of administration,Eur.J.Drug Metab.Pharmacokinet.,15(2):143−53;Balimane and Sinko(1999).Involvement of multiple transporters in the oral absorption of nucleoside analogues,Adv.Drug Delivery Rev.,39(1−3):183−209;Browne(1997).Fosphenytoin(Cerebyx),Clin.Neuropharmacol.20(1):1−12;Bundgaard(1979).Bioreversible derivatization of drugs−−principle and applicability to improve the therapeutic effects of drugs,Arch.Pharm.Chemi.86(1):1−39;H.Bundgaard,ed.(1985)Design of Prodrugs,New York:Elsevier;Fleisher et al.(1996)Improved oral drug delivery:solubility limitations overcome by the use of prodrugs,Adv.Drug Delivery Rev.19(2):115−130;Fleisher et al.(1985)Design of prodrugs for improved gastrointestinal absorption by intestinal enzyme targeting,Methods Enzymol.112:360−81;Farquhar D,et al.(1983)Biologically Reversible Phosphate−Protective Groups,J.Pharm.Sci.,72(3):324−325;Han,H.K.et al.(2000)Targeted prodrug design to optimize drug delivery,AAPS PharmSci.,2(1):E6;Sadzuka Y.(2000)Effective prodrug liposome and conversion to active metabolite,Curr.Drug Metab.,1(1):31−48;D.M.Lambert(2000)Rationale and applications of lipids as prodrug carriers,Eur.J.Pharm.Sci.,11 Suppl.2:S15−27;Wang,W.et al.(1999)Prodrug approaches to the improved delivery of peptide drugs.Curr.Pharm.Des.,5(4):265−87。
【0051】
用語「生体適合性」は、本明細書で使用する場合、一般にレシピエントに無毒であり、かつ、レシピエントに顕著な有害作用を引き起こさない、その任意の代謝産物または分解産物を伴う材料を指す。一般に言えば、生体適合性材料は、患者に投与した際に、顕著な炎症応答または免疫応答を誘発しない材料である。
【0052】
用語「生分解性」は、本明細書で使用する場合、一般に、生理学的条件下で、対象者により代謝、排除、または排出され得るより小さな単位または化学種へと分解または侵食される材料を指す。分解時間は組成および形態に依存する。分解時間は数時間〜数週間であり得る。
【0053】
用語「薬学上許容される」は、本明細書で使用する場合、健全な医学的判断の範囲内で、米国食品医薬品局などの機関のガイドラインに従い、妥当な利益/リスク比に対して過度な毒性、刺激作用、アレルギー反応、またはその他の問題もしくは合併症を伴わずに、ヒトおよび動物の組織と接触させて使用するために好適な化合物、材料、組成物、および/または剤形を指す。「薬学上許容される担体」は、本明細書で使用する場合、in vivoにおいて組成物の送達を助長する医薬製剤のあらゆる成分を指す。薬学上許容される担体としては、限定されるものではないが、希釈剤、保存剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、甘味剤、増量剤、安定剤、およびそれらの組合せが含まれる。
【0054】
用語「分子量」は、本明細書で使用する場合、一般に、材料の質量または平均質量を指す。ポリマーまたはオリゴマーの場合、分子量は、バルクポリマーの相対的平均鎖長または相対的鎖質量を意味し得る。実際に、ポリマーおよびオリゴマーの分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)または毛細管粘度測定を含む様々な方法で評価または特性決定を行うことができる。GPC分子量は、数平均分子量(Mn)とは対照的に重量平均分子量(Mw)と報告されている。毛細管粘度測定は、濃度、温度、および溶媒条件の特定のセットを用いて希釈ポリマー溶液から決定された固有粘度として分子量の評価を提供する。
【0055】
用語「小分子」は、本明細書で使用する場合、一般に、分子量が2000g/mol未満、1500g/mol未満、1000g/mol未満、800g/mol未満、または500g/mol未満の有機分子を意味する。小分子は非ポリマー性および/または非オリゴマー性である。
【0056】
用語「親水性」は、本明細書で使用する場合、水と容易に相互作用する強い極性基を有する物質を指す。
用語「疎水性」は、本明細書で使用する場合、水に対する親和性を欠き、水と反発して水を吸収しない傾向があるとともに、水に溶けない、または水と混ざらない物質を指す。
【0057】
用語「親油性」は、本明細書で使用する場合、脂質に対する親和性を有する化合物を指す。
用語「両親媒性」は、本明細書で使用する場合、親水性と親油性(疎水性)を組み合わせた分子を指す。「両親媒性材料」は、本明細書で使用する場合、疎水性のまたはより疎水性のオリゴマーまたはポリマー(例えば、生分解性オリゴマーまたはポリマー)および親水性のまたはより親水性のオリゴマーまたはポリマーを含有する材料を指す。
【0058】
用語「標的化部分」は、本明細書で使用する場合、特定の場所に結合する、または局在する部分を指す。該部分は、例えば、タンパク質、核酸、核酸類似体、炭水化物、または小分子であり得る。該場所は、組織、特定の細胞種、または細胞内区画であり得る。いくつかの実施形態では、標的化部分は、選択された分子と特異的に結合することができる。
【0059】
用語「反応性カップリング基」は、本明細書で使用する場合、第2の官能基と反応して共有結合を形成することができる任意の化学官能基を指す。反応性カップリング基の選択は、当業者の能力の範囲内にある。反応性カップリング基の例としては、第一級アミン(−NH)およびアミン反応性架橋基、例えば、イソチオシアネート、イソシアネート、アシルアジド、NHSエステル、塩化スルホニル、アルデヒド、グリオキサール、エポキシド、オキシラン、カーボネート、ハロゲン化アリール、イミドエステル、カルボジイミド、無水物、およびフルオロフェニルエステルを挙げることができる。これらのほとんどのものは、アシル化またはアルキル化のいずれかによりアミンとコンジュゲートする。反応性カップリング基の例としては、アルデヒド(−COH)およびアルデヒド反応性架橋基、例えば、ヒドラジド、アルコキシアミン、および第一級アミンを挙げることができる。反応性カップリング基の例としては、チオール基(−SH)およびスルフヒドリル反応性基、例えば、マレイミド、ハロアセチル、およびピリジルジスルフィドを挙げることができる。反応性カップリング基の例としては、光反応性カップリング基、例えば、アリールアジドまたはジアジリンを挙げることができる。カップリング反応は、触媒、熱、pH緩衝剤、光、またはそれらの組合せの使用を含み得る。
【0060】
用語「保護基」は、本明細書で使用する場合、所望の官能基を特定の反応条件から保護するために別の所望の官能基に付加することができ、かつ/または別の所望の官能基と置換することができ、さらに選択的に除去および/または置換して所望の官能基を脱保護または露出することができる官能基を指す。保護基は当業者に公知である。好適な保護基としては、Greene,T.W.and Wuts,P.G.M.,Protective Groups in Organic Synthesis,(1991)に記載されているものを含み得る。酸感受性保護基としては、ジメトキシトリチル(DMT)、tert−ブチルカルバメート(tBoc)およびトリフルオロアセチル(tFA)が含まれる。塩基感受性保護基としては、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、イソブチリル(iBu)、ベンゾイル(Bz)およびフェノキシアセチル(pac)が含まれる。他の保護基としては、アセトアミドメチル、アセチル、tert−アミルオキシカルボニル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル、2−(4−ビフェニリル)−2−プロピルオキシカルボニル、2−ブロモベンジルオキシカルボニル、tert−ブチルtert−ブチルオキシカルボニル、l−カルボベンゾキサミド−2,2.2−トリフルオロエチル、2,6−ジクロロベンジル、2−(3,5−ジメトキシフェニル)−2−プロピルオキシカルボニル、2,4−ジニトロフェニル、ジチアスクシニル、ホルミル、4−メトキシベンゼンスルホニル、4−メトキシベンジル、4−メチルベンジル、o−ニトロフェニルスルフェニル、2−フェニル−2−プロピルオキシカルボニル、α−2,4,5−テトラメチルベンジルオキシカルボニル、p−トルエンスルホニル、キサンテニル、ベンジルエステル、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、p−ニトロベンジルエステル、p−ニトロフェニルエステル、フェニルエステル、p−ニトロカーボネート、p−ニトロベンジルカーボネート、トリメチルシリルおよびペンタクロロフェニルエステルが含まれる。
【0061】
用語「活性化エステル」は、本明細書で使用する場合、カルボン酸のアルキルエステルを指し、この場合、アルキルは、カルボニルをアミノ基担持分子による求核作用に感受性とする良好な脱離基である。従って、活性化エステルはアミノ分解感受性であり、アミンと反応してアミドを形成する。活性化エステルは、カルボン酸エステル基−CORを含み、式中、Rは脱離基である。
【0062】
用語「アルキル」は、直鎖アルキル基、分岐鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、およびシクロアルキル置換アルキル基を含む、飽和脂肪族基の基を指す。
【0063】
いくつかの実施形態では、直鎖または分岐鎖アルキルは、その骨格に30個以下(例えば、直鎖ではC〜C30、分岐鎖ではC〜C30)、20個以下、12個以下、または7個以下の炭素原子を有する。同様に、いくつかの実施形態では、シクロアルキルは、それらの環構造に3〜10個の炭素原子を有し、例えば、その環構造に5、6または7個の炭素を有する。本明細書、実施例、および特許請求の範囲を通して使用される用語「アルキル」(または「低級アルキル」)は、「非置換アルキル」および「置換アルキル」の両方を含むことが意図され、後者は、炭化水素骨格の1つ以上の炭素上の水素が1つ以上の置換基に置換しているアルキル部分を指す。このような置換基としては、限定されるものではないが、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(例えば、カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミル、またはアシル)、チオカルボニル(例えば、チオエステル、チオアセテート、またはチオホルメート)、アルコキシル、ホスホリル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキル、または芳香族もしくは複素芳香族部分が含まれる。
【0064】
炭素の数がそうではないことが明示されない限り、「低級アルキル」は、本明細書で使用する場合、その骨格構造において1〜10個の炭素、または1〜6個の炭素原子を有すること以外は上記で定義されたアルキル基を意味する。同様に、「低級アルケニル」および「低級アルキニル」も同様の鎖長を有する。本出願を通して、好ましいアルキル基は低級アルキルである。いくつかの実施形態では、本明細書においてアルキルと表記される置は、低級アルキルである。
【0065】
当業者には、炭化水素鎖上で置換された部分はそれら自体、適当であれば置換され得ることが理解されるであろう。例えば、置換アルキルの置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、チオール、アミノ、アジド、イミノ、アミド、ホスホリル(ホスホネートおよびホスフィネートを含む)、スルホニル(スルフェート、スルホンアミド、スルファモイルおよびスルホネートを含む)、およびシリル基、ならびにエーテル、アルキルチオ、カルボニル(ケトン、アルデヒド、カルボキシレート、およびエステルを含む)、−CF、−CNなどを含み得る。シクロアルキルも同様に置換することができる。
【0066】
用語「ヘテロアルキル」は、本明細書で使用する場合、少なくとも1つのヘテロ原子を含有する直鎖もしくは分岐鎖、または環式炭素含有基、またはそれらの組合せを指す。好適なヘテロ原子としては、限定されるものではないが、O、N、Si、P、Se、B、およびSが含まれ、ここで、リンおよび硫黄原子は場合により酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は場合により四級化されていてもよい。ヘテロアルキルは、アルキル基に関して上記で定義されたように置換することができる。
【0067】
用語「アルキルチオ」は、硫黄基が結合された上記で定義されるアルキル基を指す。いくつかの実施形態では、「アルキルチオ」部分は、−S−アルキル、−S−アルケニル、および−S−アルキニルのうちの1つにより表される。代表的アルキルチオ基としては、メチルチオ、およびエチルチオが含まれる。用語「アルキルチオ」はまた、シクロアルキル基、アルケンおよびシクロアルケン基、およびアルキン基も包含する。「アリールチオ」は、アリールまたはヘテロアリール基を指す。アルキルチオ基は、アルキル基に関して上記で定義されたように置換することができる。
【0068】
用語「アルケニル」および「アルキニル」は、少なくともそれぞれが1つの二重結合または三重結合を含むこと以外は、長さおよび潜在的置換が上記のアルキルに類似する不飽和脂肪族を指す。
【0069】
用語「アルコキシル」または「アルコキシ」は、本明細書で使用する場合、酸素基が結合している上記のアルキル基を指す。代表的アルコキシル基としては、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、およびtert−ブトキシが含まれる。「エーテル」は、1個の酸素によって共有結合的に連結された2つの炭化水素である。よって、アルキルをエーテルとするアルキルの置換基は、アルコキシルであるか、またはアルコキシル様であり、例えば、−O−アルキル、−O−アルケニル、および−O−アルキニルのうちに1つによって表すことができる。アロキシは−O−アリールまたはO−ヘテロアリールにより表すことができ、ここで、アリールおよびヘテロアリールは、下記で定義される通りである。アルコキシおよびアロキシ基は、アルキルに関して上記されたように置換することができる。
【0070】
用語「アミン」および「アミノ」は、当技術分野で認知されており、非置換および置換の両方のアミン、例えば、一般式:
【0071】
【化12】
【0072】
により表すことができる部分を指し、式中、R、R10、およびR’10はそれぞれ独立に水素、アルキル、アルケニル、−(CH−Rを表すか、またはRとR10は、それらが結合しているN原子と一緒になって、その環構造に4〜8個の原子を有する複素環を完成し;Rは、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、複素環または多環を表し;かつ、mは0または1〜8の範囲の整数である。いくつかの実施形態では、RまたはR10の一方だけがカルボニルを表すことができ、例えば、R、R10および窒素が一緒にイミドを形成することはない。さらに他の実施形態では、用語「アミン」はアミドを包含せず、例えば、式中、RおよびR10の一方はカルボニルを表す。さらなる実施形態では、RおよびR10(および場合によりR’10)はそれぞれ独立に、水素、アルキルまたはシクロアルキル、アルケニルまたはシクロアルケニル、またはアルキニルを表す。従って、用語「アルキルアミン」は、本明細書で使用する場合、置換(アルキルについては上記の通り)または非置換アルキルが結合している、すなわち、RおよびR10の少なくとも一方がアルキル基である、上記で定義されたアミン基を意味する。
【0073】
用語「アミド」は、当技術分野でアミノ置換カルボニルと認知されており、一般式:
【0074】
【化13】
【0075】
により表すことができる部分を含み、式中、RおよびR10は上記で定義された通りである。
「アリール」は、本明細書で使用する場合、C〜C10員芳香族、複素環式、縮合芳香族、縮合複素環式、二芳香族、または二複素環式環系を指す。広義に定義すれば、「アリール」は、本明細書で使用する場合、0〜4個のヘテロ原子を含み得る5員、6員、7員、8員、9員、および10員の単環芳香族基、例えば、ベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジンおよびピリミジンなどを含む。その環構造にヘテロ原子を有するアリール基はまた「アリール複素環」または「複素芳香族」とも呼ばれる場合がある。芳香環は、1つ以上の環の位置において、限定されるものではないが、ハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ(または第四級化アミノ)、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族または複素芳香族部分、−CF、−CN;およびそれらの組合せを含む1つ以上の置換基で置換することができる。
【0076】
用語「アリール」はまた、2個以上の炭素が2つの隣接する環に共通している二環式以上の環(すなわち、「縮合環」)を有し、前記環の少なくとも1つが芳香族であり、例えば、他の1つまたは複数の環式環がシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールおよび/または複素環であり得る、多環式環系も含む。複素環式環の例としては、限定されるものではないが、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾキサゾリル、ベンゾキサゾリニル、ベンズチアゾリル、ベンズトリアゾリル、ベンズテトラゾリル、ベンズイソキサゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンズイミダゾリニル、カルバゾリル、4aH−カルバゾリル、カルボリニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、デカヒドロキノリニル、2H,6H−1,5,2−ジチアジニル、ジヒドロフロ[2,3−b]テトラヒドロフラン、フラニル、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、1H−インダゾリル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、3H−インドリル、イサチノイル、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、メチレンジオキシフェニル、モルホリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキシインドリル、ピリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリドニル、4−ピペリドニル、ピペロニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾール、ピリドイミダゾール、ピリドチアゾール、ピリジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリニル、2H−ピロリル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、4H−キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラゾリル、6H−1,2,5−チアジアジニル、1,2,3−チアジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオフェニルおよびキサンテニルが挙げられる。1つ以上の環を、「アリール」に関して上記で定義した通りに置換することができる。
【0077】
用語「アラルキル」とは、本明細書で使用する場合、アリール基(例えば、芳香族または複素芳香族基)で置換されたアルキル基を指す。
用語「炭素環」は、本明細書で使用する場合、環の各原子が炭素である芳香環または非芳香環を指す。
【0078】
「複素環」または「複素環式」は、本明細書で使用する場合、炭素とそれぞれ非過酸化酸素、硫黄、およびN(Y)(ここで、Yは存在しないか、またはH、O、(C〜C10)アルキル、フェニルまたはベンジルである)からなる群から選択される1〜4個のヘテロ原子からなる3〜10個の環原子、好ましくは5〜6個の環原子を含有し、場合により1〜3個の二重結合を含有してもよく、場合により1つ以上の置換基で置換されていてもよい、単環式または二環式環の環炭素または窒素を介して結合した環式基を指す。複素環式環の例としては、限定されるものではないが、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾキサゾリル、ベンゾキサゾリニル、ベンズチアゾリル、ベンズトリアゾリル、ベンズテトラゾリル、ベンズイソキサゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンズイミダゾリニル、カルバゾリニル、4aH−カルバゾリニル、カルボリニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、デカヒドロキノリニル、2H,6H−1,5,2−ジチアジニル、ジヒドロフロ[2,3−b]テトラヒドロフラン、フラニル、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、1H−インダゾリル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、3H−インドリル、イサチノイル、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、メチレンジオキシフェニル、モルホリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキセパニル、オキセタニル、オキシインドリル、ピリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリドニル、4−ピペリドニル、ピペロニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾール、ピリドイミダゾール、ピリドチアゾール、ピリジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリニル、2H−ピロリル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、4H−キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロキノリニル、テトラゾリル、6H−1,2,5−チアジアジニル、1,2,3−チアジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオフェニルおよびキサンテニルが挙げられる。複素環式基は、アルキルおよびアリールに関して上記で定義されたように、1つ以上の位置において1つ以上の置換基、例えば、ハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族または複素芳香族部分、−CF、および−CNで場合により置換することもできる。
【0079】
用語「カルボニル」は、当技術分野で認知されており、一般式:
【0080】
【化14】
【0081】
により表すことができるような部分を含み、式中、Xは結合であるか、または酸素もしくは硫黄を表し、かつR11は水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、またはアルキニルを表し、R’11は水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、またはアルキニルを表す。Xが酸素であって、R11またはR’11が水素でない場合、前記の式は「エステル」を表す。Xが酸素であって、R11が上記で定義された通りである場合、前記の部分は、本明細書おいてはカルボキシル基と呼ばれ、特に、R11が水素である場合、前記の式は「カルボン酸」を表す。Xが酸素であって、R’11が水素である場合、前記の式は「ホルメート」を表す。一般に、上式の酸素原子が硫黄で置換される場合、前記の式は「チオカルボニル」基を表す。Xが硫黄であって、R11またはR’11が水素でない場合、前記の式は「チオエステル」を表す。Xが硫黄であって、R11が水素である場合、前記の式は「チオカルボン酸」を表す。Xが硫黄であって、R’11が水素である場合、前記の式は「チオホルメート」を表す。他方、Xが結合であって、R11が水素でない場合、上式は「ケトン」基を表す。Xが結合であって、R11が水素である場合、上式は「アルデヒド」基を表す。
【0082】
用語「モノエステル」は、本明細書で使用する場合、それらのカルボン酸の一方がエステルとして官能基化され、他方のカルボン酸が遊離カルボン酸またはカルボン酸の塩である、ジカルボン酸の類似体を指す。モノエステルの例としては、限定されるものではないが、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シュウ酸およびマレイン酸のモノエステルが挙げられる。
【0083】
用語「ヘテロ原子」は、本明細書で使用する場合、炭素または水素以外の任意の元素の原子を意味する。ヘテロ原子の例は、ホウ素、窒素、酸素、リン、硫黄およびセレンである。他のヘテロ原子としては、ケイ素およびヒ素が含まれる。
【0084】
本明細書で使用する場合、用語「ニトロ」は−NOを意味し、用語「ハロゲン」は−F、−Cl、−Brまたは−Iを表し、用語「スルフヒドリル」は−SHを意味し、用語「ヒドロキシル」は−OHを意味し、用語「スルホニル」は−SO−を意味する。
【0085】
用語「置換」は、本明細書で使用する場合、本明細書に記載の化合物の許容される全ての置換基を指す。最も広義では、許容される置換基としては、有機化合物の非環式および環式、分岐型および非分岐型、炭素環式および複素環式、芳香族および非芳香族置換基が含まれる。例示的置換基としては、限定されるものではないが、ハロゲン、ヒドロキシル基、または任意の数の炭素原子、好ましくは1〜14個の炭素原子を含有する任意の他の有機群を含み、場合により、直鎖、分岐型、または環式構造形式で、酸素、硫黄、または窒素群などの1つ以上のヘテロ原子を含んでもよい。代表的置換基としては、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、フェニル、置換フェニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ハロ、ヒドロキシル、アルコキシ、置換アルコキシ、フェノキシ、置換フェノキシ、アロキシ、置換アロキシ、アルキルチオ、置換アルキルチオ、フェニルチオ、置換フェニルチオ、アリールチオ、置換アリールチオ、シアノ、イソシアノ、置換イソシアノ、カルボニル、置換カルボニル、カルボキシル、置換カルボキシル、アミノ、置換アミノ、アミド、置換アミド、スルホニル、置換スルホニル、スルホン酸、ホスホリル、置換ホスホリル、ホスホニル、置換ホスホニル、ポリアリール、置換ポリアリール、C〜C20環式、置換C〜C20環式、複素環式、置換複素環式、アミノ酸、ペプチド、およびポリペプチド基が挙げられる。
【0086】
窒素などのヘテロ原子は、水素置換基および/またはヘテロ原子の原子価を満たす本明細書に記載の有機化合物の許容される任意の置換基を有してよい。「置換」または「置換された」は、このような置換が置換原子および置換基の許容される原子価に従うものであり、置換が安定な化合物、すなわち、転位、環化、脱離などによる変換を自発的に受けない化合物をもたらすという暗黙の条件を含むと理解される。
【0087】
広い態様において、許容される置換基としては、有機化合物の非環式および環式、分岐型および非分岐型、炭素環式および複素環式、芳香族および非芳香族置換基が含まれる。例示的置換基としては、例えば、本明細書に記載のものが含まれる。許容される置換基は、適当な有機化合物に対して1つ以上、および同じまたは異なるものであり得る。窒素などのヘテロ原子は、水素置換基および/またはヘテロ原子の原子価を満たす本明細書に記載の有機化合物の許容される任意の置換基を有してよい。
【0088】
様々な実施形態では、置換基は、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、ニトロ、ホスフェート、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、およびチオケトンから選択され、これらはそれぞれ場合により1つ以上の好適な置換基で置換されていてもよい。いくつかの実施形態では、置換基は、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ケトン、ホスフェート、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、およびチオケトンから選択され、前記アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ケトン、ホスフェート、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、およびチオケトンのそれぞれは1つ以上の好適な置換基でさらに置換することができる。
【0089】
置換基の例としては、限定されるものではないが、ハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、チオケトン、エステル、ヘテロシクリル、−CN、アリール、アリールオキシ、ペルハロアルコキシ、アラルコキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアラルコキシ、アジド、アルキルチオ、オキソ、アシルアルキル、カルボキシエステル、カルボキサミド、アシルオキシ、アミノアルキル、アルキルアミノアリール、アルキルアリール、アルキルアミノアルキル、アルコキシアリール、アリールアミノ、アラルキルアミノ、アルキルスルホニル、カルボキサミドアルキルアリール、カルボキサミドアリール、ヒドロキシアルキル、ハロアルキル、アルキルアミノアルキルカルボキシ、アミノカルボキサミドアルキル、シアノ、アルコキシアルキル、ペルハロアルキル、アリールアルキルオキシアルキルなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、置換基はシアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、およびニトロから選択される。
【0090】
用語「コポリマー」は、本明細書で使用する場合、一般に、2つ以上の異なるモノマーから構成される単一のポリマー材料を指す。コポリマーは、ランダム、ブロック、グラフトなどの任意の形態であり得る。コポリマーは、キャップまたは酸末端基を含む任意の末端基を持ち得る。
【0091】
用語「平均粒径」は、本明細書で使用する場合、一般に、組成物中の粒子の統計的平均粒径(直径)を指す。本質的に球形の粒子の直径は物理的または流体力学的直径と称することができる。非球形粒子の直径は、優先的に流体力学的直径を指し得る。本明細書で使用する場合、非球形粒子の直径は、粒子の表面上の2点間の最大直線距離を指し得る。平均粒径は、動的光散乱などの当技術分野で公知の方法を用いて測定することができる。第1のナノ粒子集団の統計的平均粒径が第2のナノ粒子集団の統計的平均粒径の20%以内、より好ましくは15%以内、最も好ましくは10%以内であるとき、その2つの集団は「実質的に同等の平均粒径」を有するということができる。
【0092】
本明細書で互換的に使用される用語「単分散」および「均質な粒度分布」は、いずれも同じまたはほぼ同じ粒径を有する粒子、マイクロ粒子、またはナノ粒子の集団を表す。本明細書で使用する場合、単分散分布は、その分布の90%が平均粒径の5%以内にある粒子分布を指す。
【0093】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、一般に、アミノ酸残基のポリマーを指す。本明細書で使用する場合、この用語はまた、1つ以上のアミノ酸が、対応する天然アミノ酸の化学類似体または修飾誘導体であるアミノ酸ポリマーにも当てはまる。本明細書で一般に使用される用語「タンパク質」は、ペプチド結合によって互いに結合されて、その鎖長が三次元および/または四次元構造を作るために十分であるポリペプチドを形成するアミノ酸のポリマーを指す。用語「タンパク質」は、定義により小ペプチドを除外し、この小ペプチドは、タンパク質と見なされるために必要な必須高次構造を欠く。
【0094】
用語「核酸」、「ポリヌクレオチド」、および「オリゴヌクレオチド」は、直鎖または環状コンフォメーションで、一本鎖または二本鎖のいずれかの形態のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーを指して互換的に使用される。これらの用語は、ポリマーの長さに関する制限と解釈されるべきでない。この用語は、天然ヌクレオチドの既知の類似体、ならびに塩基、糖および/またはリン酸部分(例えば、ホスホロチオエート骨格)が修飾されているヌクレオチドを包含し得る。一般に、特に断りのない限り、特定のヌクレオチドの類似体は、同じ塩基対形成特異性を有し、すなわち、Aの類似体はTと塩基対を形成する。用語「核酸」は、一連の少なくとも2つの塩基−糖−リン酸モノマー単位を指す技術用語である。ヌクレオチドは核酸ポリマーのモノマー単位である。この用語は、メッセンジャーRNA、アンチセンス、プラスミドDNA、プラスミドDNAの部分またはウイルス由来の遺伝物質の形態のデオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)を含む。アンチセンスは、DNAおよび/またはRNAの機能に干渉するポリヌクレオチドである。用語核酸は、一連の少なくとも2つの塩基−糖−リン酸の組合せを指す。天然核酸はリン酸骨格、人工核酸は他のタイプの骨格を含み得るが、同じ塩基を含む。この用語はまた、PNA(ペプチド核酸)、ホスホロチオエート、および天然核酸のリン酸骨格の他の変異体を含む。
【0095】
タンパク質、ポリペプチドまたは核酸の「機能的フラグメント」は、その配列は全長タンパク質、ポリペプチドまたは核酸と同一でないが、全長タンパク質、ポリペプチドまたは核酸としての少なくとも1つの機能を保持するタンパク質、ポリペプチドまたは核酸である。機能的フラグメントは、対応する天然分子より多い、少ない、もしくは同じ数の残基を持つことができ、かつ/または1つ以上のアミノ酸もしくはヌクレオチド置換を含むことができる。核酸の機能(例えば、コード機能、別の核酸とのハイブリダイズ能)を決定するための方法は当技術分野で周知である。同様に、タンパク質機能を決定するための方法も周知である。例えば、ポリペプチドのDNA結合機能は、例えば、フィルター結合アッセイ、電気泳動移動度シフトアッセイ、または免疫沈降アッセイにより決定することができる。DNA切断はゲル電気泳動によってアッセイすることができる。タンパク質の別のタンパク質との相互作用能は、例えば、共免疫沈降法、ツーハイブリッドアッセイ、または例えば、遺伝的または化学的相補性によって決定することができる。例えば、Fields et al.(1989)Nature 340:245−246;米国特許第5,585,245号およびPCT WO98/44350参照。
【0096】
本明細書で使用する場合、用語「リンカー」は、ヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、硫黄など)を含むことができ、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50原子の長さであり得る炭素鎖を指す。リンカーは、限定されるものではないが、水素原子、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリアルキルアミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロゲン、アリール、複素環式、芳香族複素環式、シアノ、アミド、カルバモイル、カルボン酸、エステル、チオエーテル、アルキルチオエーテル、チオール、およびウレイド基を含む様々な置換基で置換されていてもよい。当業者ならば、これらの基のそれぞれがさらに置換され得ることを認識するであろう。リンカーの例としては、限定されるものではないが、pH感受性リンカー、プロテアーゼで切断可能なペプチドリンカー、ヌクレアーゼ感受性核酸リンカー、リパーゼ感受性脂質リンカー、グリコシダーゼ感受性炭水化物リンカー、低酸素感受性リンカー、光で切断可能なリンカー、易熱性リンカー、酵素で切断可能なリンカー(例えば、エステラーゼで切断可能なリンカー)、超音波感受性リンカー、およびX線で切断可能なリンカーが挙げられる。
【0097】
用語「薬学上許容される対イオン」は、薬学上許容される陰イオンまたは陽イオンを指す。様々な実施形態では、薬学上許容される対イオンは、薬学上許容されるイオンである。例えば、薬学上許容される対イオンは、クエン酸イオン、リンゴ酸イオン、酢酸イオン、シュウ酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、重硫酸イオン、リン酸イオン、過リン酸イオン、イソニコチン酸イオン、酢酸イオン、乳酸イオン、サリチル酸イオン、酒石酸イオン、オレイン酸イオン、タンニン酸イオン、パントテン酸イオン、二酒石酸イオン、アスコルビン酸イオン、コハク酸イオン、マレイン酸イオン、ゲンチジン酸イオン、フマル酸イオン、グルコン酸イオン、グルクロン酸イオン、サッカリン酸イオン、ギ酸イオン、安息香酸イオン、グルタミン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、エタンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオンおよびパモ酸イオン(すなわち、1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸)イオン)から選択される。いくつかの実施形態では、薬学上許容される対イオンは、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、重硫酸イオン、リン酸イオン、過リン酸イオン、クエン酸イオン、リンゴ酸イオン、酢酸イオン、シュウ酸イオン、酢酸イオン、および乳酸イオンから選択される。特定の実施形態では、薬学上許容される対イオンは、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、重硫酸イオン、およびリン酸イオンから選択される。
【0098】
用語「薬学上許容される塩」は、本組成物中に使用される化合物中に存在し得る酸性基または塩基性基の塩を指す。本来塩基性である本組成物中に含まれる化合物は、様々な無機酸および有機酸とともに多様な塩を形成することができる。このような塩基性化合物の薬学上許容される酸付加塩を作製するために使用可能な酸は、非毒性酸付加塩、すなわち、限定されるものではないが、硫酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、過リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、二酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチジン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩およびパモ酸塩(すなわち、1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸))塩を含む薬理学上許容される陰イオンを含有する塩を形成するものである。アミノ部分を含む本組成物中に含まれる化合物は、上述の酸に加えて様々なアミノ酸とともに薬学上許容される塩を形成し得る。本来酸性である本組成物中に含まれる化合物は、様々な薬理学上許容される陽イオンとともに塩基塩を形成することができる。このような塩の例としては、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、特に、カルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、リチウム塩、亜鉛塩、カリウム塩、および鉄塩が挙げられる。
【0099】
本明細書に記載の化合物が酸付加塩として得られる場合、遊離塩基は、酸塩の溶液を塩基性化することによって得ることができる。逆に、生成物が遊離塩基である場合、付加塩、特に、薬学上許容される付加塩は、塩基化合物から酸付加塩を作製するための従来の手順に従い、その遊離塩基を好適な有機溶媒中に溶かし、その溶液を酸で処理することによって作製することができる。当業者ならば、非毒性の薬学上許容される付加塩を作製するために使用可能な様々な合成方法論を認識するであろう。
【0100】
薬学上許容される塩は、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2,2−ジクロロ酢酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、2−オキソグルタル酸、4−アセトアミド安息香酸、4−アミノサリチル酸、酢酸、アジピン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、樟脳酸、カンファー−10−スルホン酸、カプリン酸(デカン酸)、カプロン酸(ヘキサン酸)、カプリル酸(オクタン酸)、炭酸、桂皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチジン酸、グルコヘプタン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、イソ酪酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、プロピオン酸、ピログルタミン酸、サリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、チオシアン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、およびウンデシレン酸から選択される酸から誘導することができる。
【0101】
用語「バイオアベイラビリティを得られる」は、当技術分野で認知されており、それを可能とする本発明の形態、または投与された薬剤の量のうちの、それが投与される対象者または患者に吸収される、組み込まれる、もしくは他の様式で生理学的に利用可能な部分を指す。
【0102】
II.コンジュゲート
コンジュゲートは、リンカーにより標的化部分に結合された活性剤またはそのプロドラッグを含む。コンジュゲートは、単一の活性剤と単一の標的化部分との間のコンジュゲートであり得、例えば、コンジュゲートは、構造X−Y−Zを有し、式中、Xは標的化部分であり、Yはリンカーであり、Zは活性剤である。
【0103】
いくつかの実施形態では、コンジュゲートは、2つ以上の標的化部分、2つ以上のリンカー、2つ以上の活性剤、またはそれらの任意の組合せを含有する。コンジュゲートは、いずれの数の標的化部分、リンカー、および活性剤も有することができる。コンジュゲートは、構造X−Y−Z−Y−X、(X−Y)−Z、X−(Y−Z)、X−Y−Z、(X−Y−Z)、(X−Y−Z−Y)−Zを有することができ、式中、Xは標的化部分であり、Yはリンカーであり、Zは活性剤であり、nは1〜50の間、2〜20の間、より好ましくは1〜5の間の整数である。X、Y、およびZの各存在は同じであっても異なっていてもよく、例えば、コンジュゲートは、2つ以上の標的化部分、2つ以上のリンカー、および/または2つ以上の活性剤を含むことができる。
【0104】
コンジュゲートは、単一の活性剤に結合された2つ以上の標的化部分を含有することができる。例えば、コンジュゲートは、活性剤を、異なるリンカーを介してそれぞれ結合された複数の標的化部分とともに含むことができる。コンジュゲートは、構造X−Y−Z−Y−Xを有することができ、ここで、各Xは同じであっても異なっていてもよい標的化部分であり、各Yは同じであっても異なっていてもよいリンカーであり、Zは活性剤である。
【0105】
コンジュゲートは、単一の標的化部分に結合された2つ以上の活性剤を含有することができる。例えば、コンジュゲートは、標的化部分を、異なるリンカーを介してそれぞれ結合された複数の活性剤とともに含むことができる。コンジュゲートは構造Z−Y−X−Y−Zを有することができ、ここで、Xは標的化部分であり、各Yは同じであっても異なっていてもよいリンカーであり、各Zは同じであっても異なっていてもよい活性剤である。
【0106】
A.活性剤
コンジュゲートは、少なくとも1つの活性剤を含有する。コンジュゲートは、同じであっても異なっていてもよい2つ以上の活性剤を含有することができる。活性剤は、治療薬、予防薬、診断薬、または栄養補助剤であり得る。多様な活性剤が当技術分野で公知であり、本コンジュゲート中で使用可能である。活性剤は、タンパク質またはペプチド、小分子、核酸または核酸分子、脂質、糖、糖脂質、糖タンパク質、リポタンパク質、またはそれらの組合せであり得る。いくつかの実施形態では、活性剤は、抗原またはアジュバント、放射性薬剤またはイメージング剤(例えば、蛍光部分)またはポリヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、活性剤は有機金属化合物である。
【0107】
抗感染症薬
活性剤は、抗感染症薬であり得る。ある種の治療薬は、腫瘍または感染の確立または増殖(全身性または局部的)を防ぐことができる。例としては、ホウ素含有化合物(例えば、カルボラン)、化学療法ヌクレオチド、薬物(例えば、抗生物質、抗ウイルス薬、抗真菌薬)、エンジイン(例えば、カリケアマイシン、エスペラマイシン、ダイネマイシン、ネオカルジノスタチン発色団、およびケダルシジン発色団)、重金属錯体(例えば、シスプラチン)、ホルモン拮抗薬(例えば、タモキシフェン)、非特異的(非抗体)タンパク質(例えば、糖オリゴマー)、オリゴヌクレオチド(例えば、標的核酸配列(例えば、mRNA配列)に結合するアンチセンスオリゴヌクレオチド)、ペプチド、光線力学的薬剤(例えば、ローダミン123)、放射性核種(例えば、I−131、Re−186、Re−188、Y−90、Bi−212、At−211、Sr−89、Ho−166、Sm−153、Cu−67およびCu−64)、毒素(例えば、リシン)、および転写に基づく薬剤が挙げられる。治療薬は、小分子、放射性核種、毒素、ホルモン拮抗薬、重金属錯体、オリゴヌクレオチド、化学療法ヌクレオチド、ペプチド、非特異的(非抗体)タンパク質、ホウ素化合物またはエンジインであり得る。
【0108】
活性剤は、細菌感染の確立または増殖を治療または予防することができる。治療薬は、抗生物質、放射性核種またはオリゴヌクレオチドであり得る。活性剤は、ウイルス感染の確立または増殖を治療または予防することができ、例えば、活性剤は、抗ウイルス化合物、放射性核種またはオリゴヌクレオチドであり得る。活性剤は、真菌感染の確立または増殖を治療または予防することができ、例えば、活性剤は、抗真菌化合物、放射性核種またはオリゴヌクレオチドであり得る。
【0109】
抗癌剤
活性剤は、癌治療薬であり得る。癌治療薬は、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL:TNF−related apoptosis−inducing ligand)もしくはFasリガンドなどのデスレセプターアゴニスト、またはデスレセプターに結合するか、デスレセプターを活性化するか、または他の方法でアポトーシスを誘導する任意の配位子もしくは抗体を含み得る。好適なデスレセプターとしては、限定されるものではないが、TNFR1、Fas、DR3、DR4、DR5、DR6、LTβRおよびそれらの組合せが挙げられる。
【0110】
化学療法薬、サイトカイン、ケモカイン、および放射線療法などの従来の癌治療薬を活性剤として使用することができる。化学療法薬の大多数は、アルキル化剤、代謝拮抗物質、アントラサイクリン、植物アルカロイド、トポイソメラーゼ阻害剤、およびその他の抗腫瘍薬に分類することができる。これらの薬物は全て、何らかの方法で細胞分裂またはDNA合成および機能に影響を及ぼす。活性剤として使用可能なさらなる治療薬としては、モノクローナル抗体およびチロシンキナーゼ阻害剤、例えば、ある特定のタイプの癌(慢性骨髄性白血病、消化管間質腫瘍)における分子の異常を直接標的とするメシル酸イマチニブ(グリーベック(登録商標)(GLEEVEC)またはグリベック(GLIVEC)(登録商標))が含まれる。
【0111】
代表的な化学療法薬としては、限定されるものではないが、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、メクロレタミン、シクロホスファミド、クロラムブシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン、タキソールおよびその誘導体、イリノテカン、トポテカン、アムサクリン、エトポシド、リン酸エトポシド、テニポシド、エピポドフィロトキシン、トラスツズマブ(ハーセプチン(HERCEPTIN)(登録商標))、セツキシマブ、およびリツキシマブ(リツキサン(RITUXAN)(登録商標)またはマブセラ(MABTHERA)(登録商標))、ベバシズマブ(アバスチン(AVASTIN)(登録商標))、およびそれらの組合せが挙げられる。これらのうちのいずれをコンジュゲートにおける活性剤として使用してもよい。
【0112】
活性剤は、20−epi−1,25ジヒドロキシビタミンD3、4−イポメアノール、5−エチニルウラシル、9−ジヒドロタキソール、アビラテロン、アシビシン、アクラルビシン、塩酸アコダゾール、アクロニン、アシルフルベン、アデシペノール、アドゼレシン、アルデスロイキン、全てのtkアンタゴニスト、アルトレタミン、アンバムスチン、アンボマイシン、酢酸アメタントロン、アミドックス、アミフォスチン、アミノグルテチミド、アミノレブリン酸、アムルビシン、アムサクリン、アナグレリド、アナストロゾール、アンドログラホリド、血管新生阻害剤、アンタゴニストD、アンタゴニストG、アンタレリクス、アントラマイシン、抗背方化形態形成タンパク質−1、抗エストロゲン作用薬、アンチネオプラストン、アンチセンスオリゴヌクレオチド、グリシン酸アフィジコリン、アポトーシス遺伝子調節剤、アポトーシスレギュレーター、アプリン酸、ARA−CDP−DL−PTBA、アルギニンデアミナーゼ、アスパラギナーゼ、アスペルリン、アスラクリン、アタメスタン、アトリムスチン、アキシナスタチン1、アキシナスタチン2、アキシナスタチン3、アザシチジン、アザセトロン、アザトキシン、アザチロシン、アゼテパ、アゾトマイシン、バッカチンIII誘導体、バラノール、バチマスタット、ベンゾクロリン、ベンゾデパ、ベンゾイルスタウロスポリン、βラクタム誘導体、β−アレチン、βクラマイシンB、ベツリン酸、BFGF阻害剤、ビカルタミド、ビサントレン、塩酸ビサントレン、ビスアジリジニルスペルミン、ビスナフィド、二メシル酸ビスナフィド、ビストラテンA、ビゼレシン、ブレオマイシン、硫酸ブレオマイシン、BRC/ABLアンタゴニスト、ブレフラート、ブレキナルナトリウム、ブロピリミン、ブドチタン、ブスルファン、ブチオニンスルフォキシミン、カバジタキセル、カクチノマイシン、カルシポトリオール、カルフォスチンC、カルステロン、カンプトテシン、カンプトテシン誘導体、カナリア痘IL−2、カペシタビン、カラセミド、カルベチマー、カルボプラチン、カルボキサミド−アミノ−トリアゾール、カルボキシアミドトリアゾール、カレスト(carest)M3、カルムスチン、アーン(earn)700、軟骨由来阻害剤、塩酸カルビシン、カルゼレシン、カゼインキナーゼ阻害剤、カスタノスペルミン、セクロピンB、セデフィンゴール、セトロレリクス、クロラムブシル、クロリン、クロロキノキサリンスルホンアミド、シカプロスト、シロレマイシン、シスプラチン、シス−ポルフィリン、クラドリビン、クロミフェン類似体、クロトリマゾール、コリスマイシンA、コリスマイシンB、コンブレタスタチンA4、コンブレタスタチン類似体、コナゲニン、クラムベシジン816、クリスナトール、メシル酸クリスナトール、クリプトフィシン8、クリプトフィシンA誘導体、キュラシンA、シクロペントアントラキノン、シクロホスファミド、シクロプラタム、シペマイシン、シタラビン、シタラビンオクホスファート、細胞溶解因子、シトスタチン、ダカルバジン、ダクリキシマブ、ダクチノマイシン、塩酸ダウノルビシン、デシタビン、デヒドロジデムニンB、デスロレリン、デキシホスファミド、デキソルマプラチン、デクスラゾキサン、デクスベラパミル、デザグアニン、メシル酸デザグアニン、ジアジコン、ジデムニンB、ジドックス、ジエチルノルスペルミン、ジヒドロ−5−アザシチジン、ジオキサマイシン、ジフェニルスピロムスチン、ドセタキセル、ドコサノール、ドラセトロン、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、塩酸ドキソルビシン、ドロロキシフェン、クエン酸ドロロキシフェン、プロピオン酸ドロモスタノロン、ドロナビノール、ジュアゾマイシン、デュオカルマイシンSA、エブセレン、エコムスチン、エダトレキサート、エデルホシン、エドレコロマブ、エフロルニチン、塩酸エフロルニチン、エレメン、エルサミトルシン、エミテフル、エンロプラチン、エンプロマート、エピプロピジン、エピルビシン、塩酸エピルビシン、エプリステリド、エルブロゾール、赤血球遺伝子療法ベクター系、塩酸エソルビシン、エストラムスチン、エストラムスチン類似体、リン酸エストラムスチンナトリウム、エストロゲンアゴニスト、エストロゲンアンタゴニスト、エタニダゾール、エトポシド、リン酸エトポシド、エトプリン、エキセメスタン、ファドロゾール、塩酸ファドロゾール、ファザラビン、フェンレチニド、フィルグラスチム、フィナステリド、フラボピリドール、フレゼラスチン、フロクスウリジン、フルアステロン、フルダラビン、リン酸フルダラビン、塩酸フルオロダウノルビシン、フルオロウラシル、フルロシタビン、ホルフェニメクス、フォルメスタン、ホスキドン、フォストリエシン、フォストリエシンナトリウム、フォテムスチン、ガドリニウムテキサフィリン、硝酸ガリウム、ガロシタビン、ガニレリックス、ゼラチナーゼ阻害剤、ゲムシタビン、塩酸ゲムシタビン、グルタチオン阻害剤、ヘプスルファム、ヘレグリン、ヘキサメチレンビスアセトアミド、ヒドロキシ尿素、ヒペリシン、イバンドロン酸、イダルビシン、塩酸イダルビシン、イドキシフェン、イドラマントン、イフォスファミド、イルモホシン、イロマスタット、イミダゾアクリドン、イミキモド、免疫賦活ペプチド、インスリン様増殖因子−1受容体阻害剤、インターフェロンアゴニスト、インターフェロンα−2A、インターフェロンα−2B、インターフェロンα−N1、インターフェロンα−N3、インターフェロンβ−IA、インターフェロンγ−IB、インターフェロン、インターロイキン、イオベングアン、ヨードドキソルビシン、イプロプラチン、イリノテカン、塩酸イリノテカン、イロプラクト、イルソグラジン、イソベンガゾール、イソホモハリコンドリンB、イタセトロン、ジャスプラキノリド、カハラリドF、三酢酸ラメラリン−N、ランレオチド、ラロタキセル、酢酸ランレオチド、レイナマイシン、レノグラスチム、硫酸レンチナン、レプトルスタチン、レトロゾール、白血病抑制因子、白血球αインターフェロン、酢酸ロイプロリド、ロイプロリド/エストロゲン/プロゲステロン、ロイプロレリン、レバミゾール、リアロゾール、塩酸リアロゾール、直鎖ポリアミン類似体、親油性二糖ペプチド、親油性白金化合物、リッソクリナミド7、ロバプラチン、ロンブリシン、ロメトレキソール、ロメトレキソールナトリウム、ロムスチン、ロニダミン、ロソキサントロン、塩酸ロソキサントロン、ロバスタチン、ロキソリビン、ルルトテカン、ルテチウムテキサフィリン、リソフィリン、溶解性ペプチド、メイタンシン、マンノスタチンA、マリマスタット、マソプロコール、マスピン、マトリライシン阻害剤、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、メイタンシン、塩酸メクロレタミン、酢酸メゲストロール、酢酸メレンゲストロール、メルファラン、メノガリル、メルバロン、メルカプトプリン、メテレリン、メチオニナーゼ、メトトレキサート、メトトレキサートナトリウム、メトクロプラミド、メトプリン、メツレデパ、微細藻類タンパク質キナーゼC阻害剤、MIF阻害剤、ミフェプリストン、ミルテホシン、ミリモスチム、ミスマッチ二本鎖RNA、ミチンドミド、ミトカルシン、ミトクロミン、ミトジリン、ミトグアゾン、ミトラクトール、ミトマルシン、マイトマイシン、マイトマイシン類似体、ミトナフィド、ミトスペル、ミトタン、マイトトキシン線維芽細胞増殖因子−サポリン、ミトキサントロン、塩酸ミトキサントロン、モファロテン、モルグラモスチム、モノクローナル抗体、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、モノホスホリル脂質a/マイコバクテリア細胞壁SK、モピダモール、多剤耐性遺伝子阻害剤、多腫瘍抑制因子1に基づく療法、マスタード抗癌剤、ミカペルオキシドB、マイコバクテリア細胞壁抽出物、ミコフェノール酸、ミリアポロン、n−アセチルジナリン、ナファレリン、ナグレスチップ、ナロキソン/ペンタゾシン、ナパビン、ナフテルピン、ナルトグラスチム、ネダプラチン、ネモルビシン、ネリドロン酸、中性エンドペプチダーゼ、ニルタミド、ニサマイシン、酸化窒素調節剤、ニトロキシド抗酸化剤、ニトルリン、ノコダゾール、ノガラマイシン、n−置換ベンズアミド、06−ベンジルグアニン、オクトレオチド、オキセノン、オリゴヌクレオチド、オナプリストン、オンダンセトロン、オラシン、経口サイトカイン誘導因子、オルマプラチン、オサテロン、オキサリプラチン、オキサウノマイシン、オキシスラン、パクリタキセル、パクリタキセル類似体、パクリタキセル誘導体、パラウアミン、パルミトイルリゾキシン、パミドロン酸、パナキシトリオール、パノミフェン、パラバクチン、パゼリプチン、ペグアスパラガーゼ、ペルデシン、ペリオマイシン、ペンタムスチン、ペントサン多硫酸ナトリウム、ペントスタチン、ペントロゾール、硫酸ペプロマイシン、パーフルブロン、ペルホスファミド、ペリリルアルコール、フェナジノマイシン、フェニルアセテート、ホスファターゼ阻害剤、ピシバニール、塩酸ピロカルピン、ピポブロマン、ピポスルファン、ピラルビシン、ピリトレキシム、塩酸ピロキサントロン、プラセチンA、プラセチンB、プラスミノーゲンアクチベーター阻害剤、白金(IV)錯体、白金化合物、白金−トリアミン錯体、プリカマイシン、プロメスタン、ポリフィマーナトリウム、ポルフィロマイシン、プレドニムスチン、塩酸プロカルバジン、プロピルビス−アクリドン、プロスタグランジンJ2、前立腺癌抗アンドロゲン作用薬、プロテアソーム阻害剤、プロテインAに基づく免疫調節剤、タンパク質キナーゼC阻害剤、タンパク質チロシンホスファターゼ阻害剤、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤、ピューロマイシン、塩酸ピューロマイシン、プルプリン、ピラゾフリン、ピラゾロアクリジン、ピリドキシル化ヘモグロビンポリオキシエチレンコンジュゲート、RAFアンタゴニスト、ラルチトレキセド、ラモセトロン、RASファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、RAS阻害剤、RAS−GAP阻害剤、脱メチル化レテリプチン、エチドロン酸レニウムRE186、リゾキシン、リボプリン、リボザイム、RIIレチナミド、RNAi、ログレチミド、ロヒツキン、ロムルチド、ロキニメックス、ルビギノンB1、ルボキシル、サフィンゴール、塩酸サフィンゴール、サイントピン、sarcnu、サルコフィトールA、サルグラモスチム、SDI 1模倣物、セムスチン、老化由来阻害剤1、センスオリゴヌクレオチド、siRNA、シグナル伝達阻害剤、シグナル伝達調節剤、シムトラゼン、一本鎖抗原結合タンパク質、シゾフィラン、ソブゾキサン、ボロカプテイトナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム、ソルベロール、ソマトメジン結合タンパク質、ソネルミン、スパルフォセートナトリウム、スパルホス酸、スパルソマイシン、スピカマイシンD、塩酸スピロゲルマニウム、スピロムスチン、スピロプラチン、スプレノペンチン、スポンギスタチン1、スクアラミン、幹細胞阻害剤、肝細胞分裂阻害剤、スチピアミド、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ストロメリシン阻害剤、スルフィノシン、スロフェヌル、超活性血管作動性腸管ペプチドアンタゴニスト(superactive vasoactive intestinal peptide antagonist)、スラジスタ、スラミン、スワインソニン、合成グリコサミノグリカン、タリソマイシン、タリムスチン、タモキシフェンメチオジド、タウロムスチン、タザロテン、テコガランナトリウム、テガフール、テルラピリリウム、テロメラーゼ阻害剤、塩酸テロキサントロン、テモポルフィン、テモゾロミド、テニポシド、テロキシロン、テストラクトン、テトラクロロデカオキシド、テトラゾミン、タリブラスチン、サリドマイド、チアミプリン、チオコラリン、チオグアニン、チオテパ、トロンボポエチン、トロンボポエチン模倣物、チマルファシン、チモポエチン受容体アゴニスト、チモトリナン、甲状腺刺激ホルモン、チアゾフリン、エチルエチオプルプリンスズ、チラパザミン、二塩化チタノセン、塩酸トポテカン、トプセンチン、トレミフェン、クエン酸トレミフェン、全能性幹細
胞因子、翻訳阻害剤、酢酸トレストロン、トレチノイン、トリアセチルウリジン、トリシリビン、リン酸トリシリビン、トリメトレキサート、グルクロン酸トリメトレキサート、トリプトレリン、トロピセトロン、塩酸ツブロゾール、ツロステリド、チロシンキナーゼ阻害剤、チルホスチン、UBC阻害剤、ウベニメクス、ウラシルマスタード、ウレデパ、尿生殖洞由来増殖阻害因子、ウロキナーゼ受容体アンタゴニスト、バプレオチド、バリオリンB、ベラレソール、ベラミン、ベルジン、ベルテポルフィン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ビンデシン、硫酸ビンデシン、硫酸ビンエピジン、硫酸ビングリシナート、硫酸ビンロイロシン、ビノレルビン、酒石酸ビノレルビン、硫酸ビンロシジン、ビンキサルチン、硫酸ビンゾリジン、ビタキシン、ボロゾール、ザノテロン、ゼニプラチン、ジラスコブ、ジノスタチン、ジノスタチンスチマラマー、または塩酸ゾルビシンであり得る。
【0113】
好ましい実施形態では、活性剤は、カバジタキセル、またはその類似体、誘導体、プロドラッグ、もしくは薬学上許容される塩である。
活性剤は、1つ以上の中心金属、好ましくは、1つの中心金属を含有する無機または有機金属化合物であり得る。活性剤は、白金化合物(本明細書に記載の通り)、ルテニウム化合物(例えば、トランス−[RuCl(DMSO)]、またはトランス−[RuCl(イミダゾール)など)、コバルト化合物、銅化合物、鉄化合物などであり得る。
【0114】
いくつかの実施形態では、活性剤は、4+酸化状態の白金複合体(Pt(IV)複合体)である。活性剤は、式I:
【0115】
【化15】
【0116】
の化合物またはその薬学上許容される塩であり得、R、R、R、およびRのうちの2つはそれぞれ独立にハライド、カルボキシレート、スルホネート、スルフェート、ホスフェート、またはニトレートであり;R、R、R、およびRのうちの残りの2つはそれぞれ独立にアンモニアまたはアミンであり;R5およびR6はそれぞれ独立に水素、R、または
【0117】
【化16】
【0118】
であり;ここで、Xは存在しないか、C(R、O、S、またはNRであり、RおよびRは、各存在において独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールから選択され、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリール基のそれぞれは、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、エステル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、オキソ、ホスホノ、ホスフェート、スルフィド、スルフィニル、スルフィノ、スルホニル、スルホ、およびスルホンアミドからそれぞれ独立に選択される1つ以上の基で場合により置換されていてもよく、前記エステル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ホスホノ、ホスフェート、スルフィド、スルフィニル、スルフィノ、スルホニル、スルホ、およびスルホンアミドのそれぞれは、1つ以上の好適な置換基で場合により置換されていてもよい。
【0119】
いくつかの実施形態では、化合物は、エタクラプラチン(ethacraplatin)、シス,シス,トランス−[Pt(NHCl(OH)]、シス,シス,トランス−[Pt(NH(イソプロピル))Cl(OH)]、シス,シス,トランス−[Pt(NHCl(OC(CHCH]、シス,シス,トランス−[Pt(NHCl(OC(CHCOH)]、シス,シス,トランス−[Pt(NHCl(OCCF]、(シス,シス,トランス−[Pt(NHCl(OCCHCl]、シス,シス,トランス−[Pt(NHCl(OCCH]、シス,シス,トランス[PtNH(NH(イソプロピル))Cl(OCCH]、シス,シス,トランス−[PtNH(NH(シクロヘキシル))Cl(OCCH]、シス,シス,トランス[PtNH(NH(アダマンチル))Cl(OCCH]、シス,シス,トランス−[PtNH(NH(シクロヘキシル))Cl(OC(CHCH]、シス,シス,トランス−[Pt(NHCl(OCNHC(CH]、シス,シス,トランス−[Pt(NHCl(OCNH(シクロペンチル))]、またはシス,シス,トランス−[Pt(NHCl(OCNH(シクロヘキシル))]ではない。
【0120】
いくつかの実施形態では、R、R、R、およびRのうちの少なくとも1つはハライドである。例えば、R、R、R、およびRのうちの少なくとも1つはClである。いくつかの実施形態では、R、R、R、およびRのうちの2つはそれぞれハライドである。いくつかの実施形態では、R、R、R、およびRのうちの2つはそれぞれClである。
【0121】
いくつかの実施形態では、R、R、R、およびRのうちの少なくとも1つは−O(C=O)Rであり、およびRは水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、またはシクロアルキルであり、アルキル、アリール、アリールアルキル、およびシクロアルキルのそれぞれは1つ以上の好適な置換基で場合により置換されていてもよい。例えば、R、R、R、およびRのうちの少なくとも1つは、ホルミル、アセテート、プロピオネート、ブチレート、ベンゾエート、スルホネート(トシレートを含む)、ホスフェート、またはスルフェートであり得る。
【0122】
いくつかの実施形態では、R、R、R、およびRのうちの2つはそれぞれ−O(C=O)Rであり、Rは水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、またはシクロアルキルであり、前記アルキル、アリール、アリールアルキル、およびシクロアルキルのそれぞれは、1つ以上の好適な置換基で場合により置換されていてもよい。いくつかの実施形態では、R、R、R、およびRのうちの2つはそれぞれホルミル、アセテート、プロピオネート、ブチレート、またはベンゾエートである。いくつかの実施形態では、R、R、R、およびRのうちの2つはそれぞれスルホネート、ホスフェート、またはスルフェートである。例えば、R、R、R、およびRのうちの2つはそれぞれトシレートであり得る。
【0123】
様々な実施形態では、R、R、R、およびRのうちの少なくとも1つはアンモニアである。いくつかの実施形態では、R、R、R、およびRのうちの2つはそれぞれアンモニアである。
【0124】
様々な実施形態では、R、R、R、およびRのうちの少なくとも1つはアミンである。いくつかの実施形態では、R、R、R、およびRのうちの2つはそれぞれアミンである。
【0125】
いくつかの実施形態では、活性剤は、シス配置に位置する2つの配位子(例えば、R、R、R、およびR)を有し、すなわち、この化合物はシス異性体であり得る。しかしながら、本教示の化合物はまたトランス配置に位置する2つの配位子(例えば、R、R、R、およびR)を有してもよく、すなわち、この化合物はトランス異性体であり得る、と理解されるべきである。当業者ならば、これらの用語の意味を理解するであろう。
【0126】
活性剤は、式Ia:
【0127】
【化17】
【0128】
に従う化合物であってよく、式中、R、R、R、R、R、およびRは本明細書で定義される通りである。
いくつかの実施形態では、RおよびRの少なくとも一方は、ハライド、ヒドロキシル、ホルミル、アセテート、プロピオネート、ブチレート、ベンゾエート、スルホネート(トシレートを含む)、ホスフェート、またはスルフェートである。特定の実施形態では、RおよびRの少なくとも一方はハライドである。特定の実施形態では、RおよびRは両方ともClである。特定の実施形態では、RおよびRの少なくとも一方はヒドロキシルである。特定の実施形態では、RおよびRは両方ともヒドロキシルである。
【0129】
いくつかの実施形態では、RおよびRの少なくとも一方はアンモニアである。いくつかの実施形態では、RおよびRの少なくとも一方はアミンである。例えば、RおよびRの少なくとも一方は、アルキルアミン、アルケニルアミン、アルキニルアミン、アリールアミン、アリールアルキルアミン、シクロアルキルアミン、ヘテロシクロアルキルアミン、またはヘテロアリールアミンである。特定の実施形態では、RおよびRの一方は、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、tertブチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、またはアダマンチルアミンである。特定の実施形態では、RおよびRは両方ともアンモニアである。
【0130】
いくつかの実施形態では、任意の2つの配位子(例えば、R、R、R、およびR)が相互に連結されて、それぞれ二座または三座配位子を形成し得る。当業者に知られているように、本明細書で使用する二座配位子は、1つの中心金属と結合した際に、その中心金属とともに、キレート環としても知られるメタラサイクル(metallacycle)構造を形成する。本教示において使用するために好適な二座配位子としては、1つの中心金属に結合することができる少なくとも2つの部位を有する種が含まれる。例えば、二座配位子は、中心金属に配位する少なくとも2つのヘテロ原子、または中心金属に配位する1つのヘテロ原子と1つの陰イオン性炭素原子を含み得る。
【0131】
本教示において使用するために好適な二座配位子の例としては、限定されるものではないが、アミン、ホスフィン、ホスファイト、ホスフェート、イミン、オキシム、エーテル、アルコール、チオレート、チオエーテル、それらのハイブリッド、それらの置換誘導体、アリール基(例えば、ビス−アリール、ヘテロアリール置換アリール)、ヘテロアリール基など部分のアルキルおよびアリール誘導体が挙げられる。二座配位子の特定の例としては、エチレンジアミン、2,2’−ビピリジン、アセチルアセトネート、オキサレートなどが挙げられる。二座配位子の他の限定されない例としては、ジイミン、ピリジルイミン、ジアミン、イミンアミン、イミンチオエーテル、イミンホスフィン、ビスオキサゾリン、ビスホスフィンイミン、ジホスフィン、ホスフィンアミン、サレンおよびその他のアルコキシイミン配位子、アミドアミン、イミドチオエーテルフラグメントおよびアルコキシアミドフラグメント、および上記配位子の組合せが挙げられる。
【0132】
三座配位子は、本明細書で使用する場合、一般に、1つの中心金属に結合することができる少なくとも3つの部位を有する種を含む。例えば、三座配位子は、中心金属に配位する少なくとも3つのヘテロ原子、または中心金属に配位する1つまたは複数のヘテロ原子と1つまたは複数の陰イオン性炭素原子の組合せを含み得る。三座配位子の限定されない例としては、2,5−ジイミノピリジル配位子、トリピリジル部分、トリイミダゾイル部分、トリスピラゾイル部分、および上記配位子の組合せが挙げられる。
【0133】
様々な実施形態では、RおよびRの一方は水素である。様々な実施形態では、RおよびRの少なくとも一方はRである。例えば、Rは水素であって、RはRであり得るか、またはRは水素であって、RはRであり得る。いくつかの実施形態では、RおよびRは両方ともRである。
【0134】
いくつかの実施形態では、RおよびRの少なくとも一方は、
【0135】
【化18】
【0136】
である。例えば、Rが水素でR
【0137】
【化19】
【0138】
であってもよいし、Rが水素でR
【0139】
【化20】
【0140】
であってもよい。いくつかの実施形態では、RおよびRは両方とも
【0141】
【化21】
【0142】
である。
いくつかの実施形態では、Xは存在しない。
いくつかの実施形態では、XはC(Rであり、Rは本明細書で定義される通りである。様々な実施形態では、XはNRであり、Rは本明細書で定義される通りである。
【0143】
いくつかの実施形態では、Rは、各存在において、それぞれ独立にハロゲン、シアノ、ニトロ、エステル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミド、カルバメート、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、およびオキソから選択される1つ以上の基で場合により置換されていてもよい水素またはアルキルであり、前記エステル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミド、カルバメート、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルのそれぞれは1つ以上の好適な置換基で場合により置換されていてもよい。いくつかの実施形態では、Rは、少なくとも1つの存在において、水素である。いくつかの実施形態では、Rは、少なくとも1つの存在において、場合により置換されていてもよいアルキルである。例えば、Rは、少なくとも1つの存在において、アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、またはイソプロピル)である。
【0144】
特定の実施形態では、XはCHまたはC(CHである。特定の実施形態では、XはNHである。
いくつかの実施形態では、Rはアルキルまたはシクロアルキルである。例えば、Rは、それぞれ独立にハロゲン、ヒドロキシル、エステル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルから選択される1つ以上の基で場合により置換されていてもよいアルキルであり、エステル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルのそれぞれは1つ以上の好適な置換基で場合により置換されていてもよい。いくつかの実施形態では、Rは、それぞれ独立にハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールアルコキシ、アミノ、アミド、およびアリールから選択される1つ以上の基で場合により置換されていてもよいアルキルであり、アルコキシ、アリールオキシ、アリールアルコキシ、アミノ、アミド、およびアリールのそれぞれは、それぞれ独立に1つ以上の好適な置換基から選択される1つ以上の置換基で場合により置換されていてもよい。特定の実施形態では、Rは、それぞれ独立にF、Cl、フェニル、ベンジルオキシ、t−ブチルフェニル、アミノ、およびビストリフルオロメチルフェニルから選択される1つ以上の基で場合により置換されていてもよいアルキルである。特定の実施形態では、Rはベンジルである。特定の実施形態では、Rは、ブチル、tert−ブチル、オクチル、ドデカニル、1,1,3,3,−テトラメチルブチル、2−エチルヘキシル、2,2−ジメチルプロピル、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル、アミノメチル、tert−ブトキシカルボニルアミノメチル、ヒドロキシルカルボニルメチル、ジフェニルメチル、4’−t−ブチルベンジル、2−ベンジルオキシルエチル、または3’,5’−ジトリフルオロメチルベンジルである。
【0145】
いくつかの実施形態では、Rはシクロアルキルである。例えば、Rは、3〜14個の環炭素を有する単環式、二環式、または架橋環式シクロアルキルであり得る。いくつかの実施形態では、Rは、それぞれ独立にハロゲン、ヒドロキシル、エステル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルから選択される1つ以上の基で場合により置換されていてもよいシクロアルキルであり、エステル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルのそれぞれは1つ以上の好適な置換基で場合により置換されていてもよい。例えば、Rは、それぞれ独立にハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールアルコキシ、アミノ、アミド、アルキル、アルケニル、およびアリールから選択される1つ以上の基で場合により置換されていてもよいシクロアルキルであり得、アルコキシ、アリールオキシ、アリールアルコキシ、アミノ、アミド、アルキル、アルケニル、およびアリールのそれぞれは、それぞれ独立に1つ以上の好適な置換基から選択される1つ以上の置換基で場合により置換されていてもよい。
【0146】
特定の実施形態では、Rは、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロペンチル、シクロデカニル、シクロウンデカニル、シクロドデカニル、カンファニル、カンフェニル、またはアダマンチルから選択される。特定の実施形態では、Rはシクロヘキシル、シクロドデカニル、またはアダマンチルである。
【0147】
いくつかの実施形態では、Rは、各存在において、アリールおよびヘテロアリールから選択され、前記アリールおよびヘテロアリール基のそれぞれは、それぞれ独立にハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、エステル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ホスホノ、ホスフェート、スルフィド、スルフィニル、スルフィノ、スルホニル、スルホ、およびスルホンアミドから選択される1つ以上の基で場合により置換されていてもよく、前記エステル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ホスホノ、ホスフェート、スルフィド、スルフィニル、スルフィノ、スルホニル、スルホ、およびスルホンアミドのそれぞれは1つ以上の好適な置換基で場合により置換されていてもよい。いくつかの実施形態では、Rは、各存在において、それぞれ独立にハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、エステル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルから選択される1つ以上の基で場合により置換されていてもよいアリールであり、前記エステル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルのそれぞれは1つ以上の好適な置換基で場合により置換されていてもよい。例えば、Rは、それぞれ独立にハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、エステル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、アルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルから選択される1つ以上の基で場合により置換されていてもよいアリールである。特定の実施形態では、Rは、それぞれ独立にハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、エステル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、アルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルから選択される1つ以上の基で場合により置換されていてもよいフェニルである。特定の実施形態では、Rはフェニルである。
【0148】
様々な実施形態では、RとRは異なる。例えば、本教示の化合物は、
【0149】
【化22】
【0150】
から選択することができる。
様々な実施形態では、RとRは同じであり得る。例えば、本教示の化合物は、
【0151】
【化23】
【0152】
から選択することができる。
特定の実施形態では、本コンジュゲートの活性剤は、コンジュゲートの成分のモル重量パーセンテージの合計が100%となるように、約1%〜10%、または約10%〜約20%、または約20%〜約30%、または約30%〜40%、または約40%〜50%、または約50%〜60%、または約60%〜70%、または約70%〜80%、または約80%〜90%、または約90%〜99%の所定モル重量パーセンテージを含む。本コンジュゲートの1つまたは複数の活性剤の量はまた、1つまたは複数の標的化配位子に対する割合として表すこともできる。例えば、本教示は、活性剤と配位子の比として約10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、または1:10を提供する。
【0153】
B.標的化部分
本コンジュゲートは、1つ以上の標的化部分および/または標的化配位子を含有する。標的化配位子または部分は、ペプチド、抗体模倣物、核酸(例えば、アプタマー)、ポリペプチド(例えば、抗体)、糖タンパク質、小分子、炭水化物、または脂質であり得る。標的化部分Xは、ソマトスタチン、オクトレオチド、EGFR結合ペプチドまたはRGD含有ペプチドなどのペプチド、核酸(例えば、アプタマー)、ポリペプチド(例えば、抗体またはそのフラグメント)、糖タンパク質、小分子、炭水化物、または脂質であり得る。標的化部分Xは、RNAまたはDNAまたは人工核酸のいずれかであるアプタマー;小分子;マンノース、ガラクトースおよびアラビノースなどの炭水化物;アスコルビン酸、ナイアシン、パントテン酸、カルニチン、イノシトール、ピリドキサール、リポ酸、葉酸(葉酸塩)、リボフラビン、ビオチン、ビタミンB12、ビタミンA、E、およびKなどのビタミン;トロンボスポンジン、腫瘍壊死因子(TNF)、アネキシンV、インターフェロン、サイトカイン、トランスフェリン、GM−CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)、または増殖因子、例えば、血管内皮増殖因子(VEGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、および上皮細胞増殖因子(EGF)の受容体などの細胞表面受容体に結合するタンパク質またはペプチドであり得る。
【0154】
いくつかの実施形態では、標的化部分は、モノボディ、例えば、アドネクチン(ADNECTIN)(商標)(Bristol−Myers Squibb、ニューヨーク、ニューヨーク州)、アフィボディ(Affibody)(登録商標)(Affibody AB、ストックホルム、スウェーデン)、アフィリン、ナノフィチン(WO2012/085861に記載されているものなどのアフィチン、アンチカリン(Anticalin)(商標)、アビマー(アビディティーマルチマー)、DARPin(商標)、フィノマー(Fynomer)(商標)、およびクニッツ(Kunitz)ドメインペプチドなどの抗体模倣物である。ある特定の場合、このような模倣物は、分子量が約3〜20kDaの人工ペプチドまたはタンパク質である。核酸および小分子は、抗体模倣物であり得る。
【0155】
いくつかの実施形態では、標的化部分は、L−アルギニン、グリシン、およびL−アスパラギン酸から構成されるトリペプチドであるアルギニルグリシルアスパラギン酸(RGDペプチド)である。この配列は、細胞認識に共有の要素である。アルギニルグリシルアスパラギン酸は、腫瘍細胞に見られるα−V−β−3インテグリンに強い親和性および選択性を示す。
【0156】
別の例では、標的化部分はアプタマーであり得、アプタマーは一般に、ポリペプチドなどの特定の標的に結合するオリゴヌクレオチド(例えば、DNA、RNA、またはその類似体または誘導体)である。いくつかの実施形態では、標的化部分はポリペプチド(例えば、腫瘍マーカーに特異的に結合し得る抗体)である。特定の実施形態では、標的化部分は、抗体またはそのフラグメントである。特定の実施形態では、標的化部分は、抗体のFcフラグメントである。
【0157】
いくつかの実施形態では、標的は、標的細胞、または1つ以上の組織種、1つ以上の細胞種、1つ以上の疾患、および/または1つ以上の発達段階に、排他的にまたは基本的に関連するマーカーであり得る。いくつかの実施形態では、標的は、タンパク質(例えば、細胞表面受容体、膜貫通タンパク質、糖タンパク質など)、炭水化物(例えば、グリカン部分、グルコカリックスなど)、脂質(例えば、ステロイド、リン脂質など)、および/または核酸(例えば、DNA、RNAなど)を含み得る。
【0158】
さらに他の実施形態では、Xは、治療標的データベース(例えば、Zhu et al.,Update of TTD: Therapeutic Target Database,Nucleic Acids Res.38(1):787−91(2010)参照)に記載されている部分、またはそこに記載されているタンパク質、核酸、疾患または経路の1つ以上を標的とする部分である。
【0159】
いくつかの実施形態では、標的、標的細胞またはマーカーは、悪性細胞上に排他的にまたは主要に存在する分子、例えば、腫瘍抗原である。いくつかの実施形態では、マーカーは、前立腺癌マーカーである。特定の実施形態では、前立腺癌マーカーは、ほとんどの前立腺組織で発現されるが正常組織よりも前立腺癌組織でより高く発現される100kDaの膜貫通糖タンパク質である前立腺特異的膜抗原(PSMA)である。PSMAは、前立腺癌、特に、進行性、ホルモン非依存的および転移性疾患でアップレギュレートされている、十分に確立された腫瘍マーカーである(Ghosh and Heston,2004,J.Cell.Biochem.,91 :528−539)。PSMAは、転移性前立腺癌のイメージング用の腫瘍マーカーとして、また試験的免疫治療薬の標的として使用されている。PSMAは、前立腺癌転移の画像診断に承認されているモノクローナル抗体に基づくイメージング剤であるPROSTASCINT(商標)の分子標的である。PSMAは、乳癌および肺癌を含むほとんどの非前立腺固形腫瘍の新生血管系に差次的に高レベルで発現される。非前立腺癌に対するPSMA標的は、臨床試験で実証されている(Morris et al.,2007,Clin.Cancer Res.,13:2707−13;Milowsky et al,2007,J.Clin.Oncol,25:540−547)。従って、この前立腺癌細胞および非前立腺固形腫瘍の新生血管系における限定性の高いPSMAの存在は、PSMAを、ほとんどの固形腫瘍に対する細胞傷害性薬剤の送達のための魅力的な標的とする。
【0160】
他の実施形態では、マーカーは、乳癌マーカー、結腸癌マーカー、直腸癌マーカー、肺癌マーカー、膵臓癌マーカー、卵巣癌マーカー、骨癌マーカー、腎臓癌マーカー、肝臓癌マーカー、神経系癌マーカー、胃癌マーカー、精巣癌マーカー、頭頸部癌マーカー、食道癌マーカー、または子宮頸癌マーカーである。
【0161】
他の細胞表面マーカーは、例えば、HER−2、HER−3、EGFR、および葉酸受容体を含む腫瘍ホーミング治療薬の潜在的標的として有用である。
他の実施形態では、標的化部分は、CD19、CD70、CD56、PSMA、αインテグリン、CD22、CD138、EphA2、AGS−5、ネクチン−4、HER2、GPMNB、CD74およびLeなどの標的に結合する。
【0162】
特定の実施形態では、本コンジュゲートの1つまたは複数の標的化部分は、コンジュゲートの成分のモル重量パーセンテージの合計が100%となるように、約1%〜10%、または約10%〜約20%、または約20%〜約30%、または約30%〜40%、または約40%〜50%、または約50%〜60%、または約60%〜70%、または約70%〜80%、または約80%〜90%、または約90%〜99%の所定モル重量パーセンテージで存在する。本コンジュゲートの標的化部分の量はまた、1つまたは複数の活性剤に対する割合として表すこともでき、例えば、配位子と活性剤の比は約10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、または1:10である。
【0163】
C.リンカー
本コンジュゲートは、活性剤と標的化部分をつなぐ1つ以上のリンカーを含有する。リンカーYは、活性剤および標的化配位子と結合させてコンジュゲートを形成することができ、この場合、コンジュゲートは標的細胞に送達された際に少なくとも1つの活性剤を放出する。リンカーは、C〜C10直鎖アルキル、C〜C10直鎖O−アルキル、C〜C10直鎖置換アルキル、C〜C10直鎖置換O−アルキル、C〜C13分岐鎖アルキル、C〜C13分岐鎖O−アルキル、C〜C12直鎖アルケニル、C〜C12直鎖O−アルケニル、C〜C12直鎖置換アルケニル、C〜C12直鎖置換O−アルケニル、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリカプロラクトン、ポリシアノアクリレート、ケトン、アリール、複素環式、コハク酸エステル、アミノ酸、芳香族基、エーテル、クラウンエーテル、尿素、チオ尿素、アミド、プリン、ピリミジン、ビピリジン、架橋剤として働くインドール誘導体、キレーター、アルデヒド、ケトン、ビスアミン、ビスアルコール、複素環式環構造、アジリン、ジスルフィド、チオエーテル、ヒドラゾンおよびそれらの組合せであり得る。例えば、リンカーは、C直鎖アルキルまたはケトンであり得る。リンカーのアルキル鎖は、1つ以上の置換基またはヘテロ原子で置換することができる。いくつかの実施形態では、リンカーは、−O−、−C(=O)−、−NR、−O−C(=O)−NR−、−S−、−S−S−から選択される1つ以上の原子または基を含有する。リンカーは、コハク酸、グルタル酸またはジグリコール酸のジカルボン酸誘導体から選択され得る。
【0164】
いくつかの実施形態では、リンカーのアルキル鎖は、場合により、−O−、−C(=O)−、−NR、−O−C(=O)−NR−、−S−、−S−S−から選択される1つ以上の原子または基が挿入されていてもよい。リンカーは、コハク酸、グルタル酸またはジグリコール酸のジカルボン酸誘導体から選択され得る。
【0165】
III.粒子
1つ以上のコンジュゲートを含有する粒子は、ポリマー粒子、脂質粒子、固体脂質粒子、無機粒子、またはそれらの組合せ(例えば、脂質安定化ポリマー粒子)であり得る。好ましい実施形態では、粒子はポリマー粒子であるか、またはポリマーマトリックスを含有する。粒子は、本明細書に記載のポリマーまたはそれらの誘導体もしくはコポリマーのいずれかを含有することができる。粒子は一般に1つ以上の生体適合性ポリマーを含有する。前記ポリマーは生分解性ポリマーであり得る。前記ポリマーは、疎水性ポリマー、親水性ポリマー、または両親媒性ポリマーであり得る。いくつかの実施形態では、粒子は、付加的な標的化部分が結合されている1つ以上のポリマーを含有することができる。
【0166】
粒子の大きさは、意図される適用のために調整することができる。粒子はナノ粒子またはマイクロ粒子であり得るが、ナノ粒子が好ましい。粒子は、約10nm〜約10μm、約10nm〜約1μm、約10nm〜約500nm、約20nm〜約500nm、または約25nm〜約250nmの直径を有し得る。好ましい実施形態では、粒子は、約25nm〜約250nmの直径を有するナノ粒子である。
【0167】
様々な実施形態では、粒子はナノ粒子であり得、すなわち、前記粒子は、約1マイクロメーター未満の特性寸法を有し、ここで、粒子の特性寸法は、粒子と同じ体積を有する完全な球体の直径である。大多数の粒子は、平均直径(例えば、大多数の粒子の平均直径)によって特徴付けることができる。いくつかの実施形態では、粒子の直径はガウス型分布を有し得る。いくつかの実施形態では、大多数の粒子は、約300nm未満、約250nm未満、約200nm未満、約150nm未満、約100nm未満、約50nm未満、約30nm未満、約10nm未満、約3nm未満、または約1nm未満の平均直径を有する。いくつかの実施形態では、粒子は、少なくとも約5nm、少なくとも約10nm、少なくとも約30nm、少なくとも約50nm、少なくとも約100nm、少なくとも約150nm、またはそれを超える平均直径を有する。特定の実施形態では、大多数の粒子は、約10nm、約25nm、約50nm、約100nm、約150nm、約200nm、約250nm、約300nm、約500nmなどの平均直径を有する。いくつかの実施形態では、大多数の粒子は、約10nm〜約500nmの間、約50nm〜約400nmの間、約100nm〜約300nmの間、約150nm〜約250nmの間、約175nm〜約225nmの間などの平均直径を有する。いくつかの実施形態では、大多数の粒子は、約10nm〜約500nmの間、約20nm〜約400nmの間、約30nm〜約300nmの間、約40nm〜約200nmの間、約50nm〜約175nmの間、約60nm〜約150nmの間、約70nm〜約130nmの間などの平均直径を有する。例えば、平均直径は、約70nm〜130nmの間であり得る。いくつかの実施形態では、大多数の粒子は、約20nm〜約220nmの間、約30nm〜約200nmの間、約40nm〜約180nmの間、約50nm〜約170nmの間、約60nm〜約150nmの間、または約70nm〜約130nmの間の平均直径を有する。一実施形態では、粒子は40〜120nmの大きさを有し、低〜0のイオン強度(1〜10mM)において0mVに近いゼータ電位を有し、ゼータ電位値は+5〜−5mVの間であり、0/中性または小さい負の表面電荷を有する。
【0168】
A.コンジュゲート
本粒子は、上記のように1つ以上のコンジュゲートを含有する。これらのコンジュゲートは、粒子の内部または粒子の外部またはその両方に存在することができる。
【0169】
B.ポリマー
本粒子は、以下のポリエステル:本明細書において「PGA」と呼ばれるグリコール酸単位、およびポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸、ポリ−D,L−乳酸、ポリ−L−ラクチド、ポリ−D−ラクチド、およびポリ−D,L−ラクチドなどの本明細書において「PLA」と総称される乳酸単位、およびポリ(ε−カプロラクトン)などの本明細書において「PCL」と総称されるカプロラクトン単位を含むホモポリマー;ならびに様々な形態のポリ(乳酸−コ−グリコール酸)およびポリ(ラクチド−コ−グリコリド)などの、乳酸:グリコール酸の比により特徴付けられ、本明細書において「PLGA」と総称される、乳酸およびグリコール酸単位を含むコポリマー;ならびにポリアクリレートおよびそれらの誘導体のうち1つ以上を含有することができる。例示的ポリマーとしてはまた、本明細書において「ペグ化ポリマー」と総称される、ポリエチレングリコール(PEG)と上記のポリエステルのコポリマー、例えば、様々な形態のPLGA−PEGまたはPLA−PEGコポリマーが含まれる。特定の実施形態では、PEG領域は切断可能なリンカーによりポリマーと共有結合されて「ペグ化ポリマー」を生じ得る。
【0170】
本粒子は1つ以上の親水性ポリマーを含有し得る。親水性ポリマーとしては、デンプンおよび多糖類などのセルロースポリマー;疎水性ポリペプチド;ポリ−L−グルタミン酸(PGS)、γ−ポリグルタミン酸、ポリ−L−アスパラギン酸、ポリ−L−セリン、またはポリ−L−リシンなどのポリ(アミノ酸);ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、およびポリ(エチレンオキシド)(PEO)などのポリアルキレングリコールおよびポリアルキレンオキシド;ポリ(オキシエチル化ポリオール);ポリ(オレフィンアルコール);ポリビニルピロリドン);ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド);ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート);ポリ(サッカライド);ポリ(ヒドロキシ酸);ポリ(ビニルアルコール)、およびそれらのコポリマーが含まれる。
【0171】
本粒子は、1つ以上の疎水性ポリマーを含有し得る。好適な疎水性ポリマーの例としては、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、およびポリ(乳酸−コ−グリコール酸)などのポリヒドロキシ酸;ポリ3−ヒドロキシブチレートまたはポリ4−ヒドロキシブチレートなどのポリヒドロキシアルカノエート;ポリカプロラクトン;ポリ(オルトエステル);ポリ無水物;ポリ(ホスファゼン);ポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン);チロシンポリカーボネートなどのポリカーボネート;ポリアミド(合成および天然ポリアミドを含む)、ポリペプチド、およびポリ(アミノ酸);ポリエステルアミド;ポリエステル;ポリ(ジオキサノン);ポリ(アルキレンアルキレート);疎水性ポリエーテル;ポリウレタン;ポリエーテルエステル;ポリアセタール;ポリシアノアクリレート;ポリアクリレート;ポリメチルメタクリレート;ポリシロキサン;ポリ(オキシエチレン)/ポリ(オキシプロピレン)コポリマー;ポリケタール;ポリホスフェート;ポリヒドロキシバレレート;ポリアルキレンオキサレート;ポリアルキレンスクシネート;ポリ(マレイン酸)、ならびにそれらのコポリマーが挙げられる。
【0172】
特定の実施形態では、疎水性ポリマーは、脂肪族ポリエステルである。いくつかの実施形態では、疎水性ポリマーは、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、またはポリ(乳酸−コ−グリコール酸)である。
【0173】
本粒子は、1つ以上の生分解性ポリマーを含み得る。生分解性ポリマーとしては、水に不溶または難溶であるが体内で水溶性材料へと化学的または酵素的に変換されるポリマーを含み得る。生分解性ポリマーとしては、可溶性ポリマーを加水分解可能な架橋基で架橋してその架橋されたポリマーを水に不溶性または難溶性としたものを含み得る。
【0174】
粒子内の生分解性ポリマーは、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ハロゲン化ポリビニル、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタンおよびそれらのコポリマー、アルキルセルロース(例えば、メチルセルロースおよびエチルセルロース)、ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびヒドロキシブチルメチルセルロース)、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシルエチルセルロース、三酢酸セルロース、硫酸セルロースナトリウム塩、アクリル酸およびメタクリル酸エステルのポリマー[例えば、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)、ポリエチレン、ポリプロピレン ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルアセテート,ポリ塩化ビニルポリスチレンおよびポリビニルピロリドン]、それらの誘導体、それらの直鎖および分岐型コポリマーおよびそれらのブロックコポリマー、およびそれらのブレンドを含み得る。例示的生分解性ポリマーとしては、ポリエステル、ポリ(オルトエステル)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリ無水物、ポリ(アクリル酸)、ポリグリコリド、ポリ(ウレタン)、ポリカーボネート、ポリリン酸エステル、ポリホスファゼン、それらの誘導体、それらの直鎖および分岐型コポリマーおよびブロックコポリマー、およびそれらのブレンドが挙げられる。特に好ましい実施形態では、ナノ粒子は、生分解性ポリエステルまたはポリ無水物、例えば、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、およびポリ(乳酸−コ−グリコール酸)を含有する。
【0175】
本粒子は、1つ以上の両親媒性ポリマーを含有し得る。両親媒性ポリマーは、疎水性ポリマーブロックと親水性ポリマーブロックを含有するポリマーであり得る。疎水性ポリマーブロックは、1つ以上の上記疎水性ポリマーまたはそれらの誘導体もしくはコポリマーを含有し得る。親水性ポリマーブロックは、1つ以上の上記親水性ポリマーまたはそれらの誘導体もしくはコポリマーを含有し得る。いくつかの実施形態では、両親媒性ポリマーは、疎水性ポリマーから形成される疎水性末端と親水性ポリマーから形成される親水性末端を含有するジブロックポリマーである。いくつかの実施形態では、疎水性末端、親水性末端、またはその両方に、ある部分を結合させることができる。ナノ粒子は、2つ以上の両親媒性ポリマーを含有することができる。
【0176】
C.脂質
本粒子は、1つ以上の脂質または両親媒性化合物を含有し得る。例えば、本粒子は、リポソーム、脂質ミセル、固体脂質粒子、または脂質安定化ポリマー粒子であり得る。本脂質粒子は、1種類の脂質または異なる脂質の混合物から作製することができる。脂質粒子は、生理学的pHにおいて中性、陰イオン性または陽イオン性であり得る1つ以上の脂質から形成される。脂質粒子は好ましくは、1つ以上の生体適合性脂質から形成される。脂質粒子は、2つ以上の脂質の組合せから形成されてよく、例えば、荷電脂質は、生理学的pHにおいて非イオン性または非荷電である脂質と組み合わせてよい。
【0177】
本粒子は、脂質ミセルであり得る。薬物送達用の脂質ミセルは当技術分野で公知である。脂質ミセルは、例えば、脂質界面活性剤を伴って油中水型エマルションとして形成され得る。エマルションは、分散された液滴を安定化させるために界面活性剤が添加された2つの不混和相のブレンドである。いくつかの実施形態では、脂質ミセルはマイクロエマルションである。マイクロエマルションは、液滴径が1μm未満、約10nm〜約500nm、または約10nm〜約250nmの透明で熱力学的に安定な系を生成する、少なくとも水、油および脂質界面活性剤から構成される熱力学的に安定な系である。脂質ミセルは一般に、疎水性治療薬、疎水性予防薬、または疎水性診断薬を含む疎水性活性剤を封入するために有用である。
【0178】
本粒子は、リポソームであり得る。リポソームは、球形の二層に配置された脂質に取り囲まれた水性媒体から構成される小型の小胞である。リポソームは、小単ラメラ小胞、大単ラメラ小胞、または多重ラメラ小胞として分類することができる。多重ラメラリポソームは、複数の同心性脂質二重層を含有する。リポソームは、水性の内部もしくは二層の間に親水性薬剤を捕捉させることにより、または二層内に疎水性薬剤を捕捉させることにより、薬剤の封入のために使用することができる。
【0179】
脂質ミセルおよびリポソームは一般に、水性中心を有する。水性中心は、水または水とアルコールの混合物を含有し得る。好適なアルコールとしては、限定されるものではないが、メタノール、エタノール、プロパノール(例えば、イソプロパノール)、ブタノール(例えば、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール)、ペンタノール(例えば、アミルアルコール、イソブチルカルビノール)、ヘキサノール(例えば、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール)、ヘプタノール(例えば、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノールおよび4−ヘプタノール)またはオクタノール(例えば、1−オクタノール)またはそれらの組合せが挙げられる。
【0180】
本粒子は、固体脂質粒子であり得る。固体脂質粒子は、コロイドミセルおよびリポソームの代替となる。固体脂質粒子は一般にサブミクロンサイズすなわち、約10nm〜約1μm、10nm〜約500nm、または10nm〜約250nmである。固体脂質粒子は、室温において固体である脂質から形成される。それらは水中油型エマルションから、液体の油を固体脂質に置き換えることによって誘導される。
【0181】
好適な中性および陰イオン性脂質としては、限定されるものではないが、ステロールおよび脂質、例えば、コレステロール、リン脂質、リゾ脂質、リゾリン脂質、スフィンゴ脂質またはペグ化脂質が挙げられる。中性および陰イオン性脂質としては、限定されるものではないが、1,2−ジアシル−グリセロ−3−ホスホコリンを含むホスファチジルコリン(PC)(例えば、卵黄PC、ダイズPC);ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール(PI);糖脂質;スフィンゴリン脂質、例えば、スフィンゴミエリンおよびスフィンゴ糖脂質(1−セラミジルグルコシドとしても知られる)、例えば、セラミドガラクトピラノシド、ガングリオシドおよびセレブロシド;脂肪酸、カルボン酸基を含有するステロール、例えば、コレステロール;限定されるものではないが、1,2−ジオレイルホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2−ジヘキサデシルホスホエタノールアミン(DHPE)、1,2−ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、1,2−ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、および1,2−ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)を含む、1,2−ジアシル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミンが挙げられる。脂質はまた、脂質の様々な天然(例えば、組織由来L−α−ホスファチジル:卵黄、心臓、脳、肝臓、ダイズ)および/または合成(例えば、飽和および不飽和1,2−ジアシル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、1−アシル−2−アシル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、1,2−ジヘプタノイル−SN−グリセロ−3−ホスホコリン)誘導体も含み得る。
【0182】
好適な陽イオン性脂質としては、限定されるものではないが、TAP脂質とも呼ばれるN−[1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウム塩、例えば、メチル硫酸塩が挙げられる。好適なTAP脂質としては、限定されるものではないが、DOTAP(ジオレオイル−)、DMTAP(ジミリストイル−)、DPTAP(ジパルミトイル−)、およびDSTAP(ジステアロイル−)が挙げられる。リポソーム中の好適な陽イオン性脂質としては、限定されるものではないが、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)、1,2−ジアシルオキシ−3−トリメチルアンモニウムプロパン、N−[1−(2,3−ジオロイルオキシ)プロピル]−Ν,Ν−ジメチルアミン(DODAP)、1,2−ジアシルオキシ−3−ジメチルアンモニウムプロパン、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、1,2−ジアルキルオキシ−3−ジメチルアンモニウムプロパン、ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS)、3−[N−(N’,N’−ジメチルアミノ−エタン)カルバモイル]コレステロール(DC−Chol);2,3−ジオレオイルオキシ−N−(2−(スペルミンカルボキサミド)−エチル)−N,N−ジメチル−1−プロパンアミニウムトリフルオロ−アセテート(DOSPA)、β−アラニルコレステロール、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、ジC4−アミジン、N−ferf−ブチル−N’−テトラデシル−3−テトラデシルアミノ−プロピオンアミジン、N−(α−トリメチルアンモニオアセチル)ジドデシル−D−グルタメートクロリド(TMAG)、ジテトラデカノイル−N−(トリメチルアンモニオ−アセチル)ジエタノールアミンクロリド、1,3−ジオレオイルオキシ−2−(6−カルボキシ−スペルミル)−プロピルアミド(DOSPER)、およびN,N,N’,N’−テトラメチル−,N’−ビス(2−ヒドロキシルエチル)−2,3−ジオレオイルオキシ−1,4−ブタンジアンモニウムヨージドが挙げられる。一実施形態では、陽イオン性脂質は、1−[2−(アシルオキシ)エチル]2−アルキル(アルケニル)−3−(2−ヒドロキシエチル)−イミダゾリニウムクロリド誘導体、例えば、1−[2−(9(Z)−オクタデセノイルオキシ)エチル]−2−(8(Z)−ヘプタデセニル−3−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾリニウムクロリド(DOTIM)、および1−[2−(ヘキサデカノイルオキシ)エチル]−2−ペンタデシル−3−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾリニウムクロリド(DPTIM)であり得る。一実施形態では、陽イオン性脂質は、第四級アミン上にヒドロキシアルキル部分を含有する2,3−ジアルキルオキシプロピル第四級アンモニウム化合物誘導体、例えば、1,2−ジオレオイル−3−ジメチル−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORI)、1,2−ジオレイルオキシプロピル−3−ジメチル−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、1,2−ジオレイルオキシプロピル−3−ジメチル−ヒドロキシプロピルアンモニウムブロミド(DORIE−HP)、1,2−ジオレイル−オキシ−プロピル−3−ジメチル−ヒドロキシブチルアンモニウムブロミド(DORIE−HB)、1,2−ジオレイルオキシプロピル−3−ジメチル−ヒドロキシペンチルアンモニウムブロミド(DORIE−Hpe)、1,2−ジミリスチルオキシプロピル−3−ジメチル−ヒドロキシルエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、1,2−ジパルミチルオキシプロピル−3−ジメチル−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DPRIE)、および1,2−ジステリルオキシプロピル−3−ジメチル−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DSRIE)であり得る。
【0183】
好適な固体脂質としては、限定されるものではないが、高級飽和アルコール、高級脂肪酸、スフィンゴ脂質、合成エステル、ならびに高級飽和脂肪酸のモノ、ジおよびトリグリセリドが挙げられる。固体脂質としては、10〜40個、好ましくは12〜30個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、例えば、セトステアリルアルコールを含み得る。固体脂質としては、10〜40個、好ましくは12〜30個の炭素原子の高級脂肪酸、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、デカン酸、およびベヘン酸を含み得る。固体脂質としては、10〜40個、好ましくは12〜30個の炭素原子を有する高級飽和脂肪酸の、モノグリセリド、ジグリセリド、およびトリグリセリドを含むグリセリド、例えば、モノステアリン酸グリセリル、ベヘン酸グリセロール、パルミトステアリン酸グリセロール、トリラウリン酸グリセロール、トリカプリン、トリラウリン、トリミリスチン、トリパルミチン、トリステアリン、および水素化ヒマシ油を含み得る。好適な固体脂質としては、パルミチン酸セチル、密蝋、またはシクロデキストリンを含み得る。
【0184】
両親媒性化合物としては、限定されるものではないが、0.01〜60(脂質重量/ポリマー重量)、最も好ましくは0.1〜30(脂質重量/ポリマー重量)の間の比で組み込まれる、1,2ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DSPE)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジアラキドイルホスファチジルコリン(DAPC)、ジベヘノイルホスファチジルコリン(DBPC)、ジトリコサノイルホスファチジルコリン(DTPC)、およびジリグノセロイルファチジルコリン(DLPC)などのリン脂質が挙げられる。使用可能なリン脂質としては、限定されるものではないが、ホスファチジン酸、飽和および不飽和両方の脂質を伴うホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジル誘導体、カルジオリピン、およびβ−アシル−y−アルキルリン脂質が挙げられる。リン脂質の例としては、限定されるものではないが、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジペンタデカノイルホスファチジルコリン ジラウロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジアラキドイルホスファチジルコリン(DAPC)、ジベヘノイルホスファチジルコリン(DBPC)、ジトリコサノイルホスファチジルコリン(DTPC)、ジリグノセロイルファチジルコリン(DLPC)などのホスファチジルコリン;およびジオレオイルホスファチジルエタノールアミンまたは1−ヘキサデシル−2−パルミトイルグリセロホスホエタノールアミンなどのホスファチジルエタノールアミンが挙げられる。非対称アシル鎖(例えば、炭素6個の1本のアシル鎖と炭素12個の別のアシル鎖)を有する合成リン脂質も使用可能である。
【0185】
D.付加的活性剤
本粒子は、コンジュゲート内のものに加えて1つ以上の付加的活性剤を含有し得る。付加的活性剤は、上記に列挙されているような治療薬、予防薬、診断薬、または栄養補助剤であり得る。付加的活性剤は、任意の量、例えば、粒子の重量に基づき1%〜90%、1%〜50%、1%〜25%、1%〜20%、1%〜10%、または5%〜10%(w/w)の量で存在することができる。一実施形態では、活性剤は1%〜10%添加w/wで組み込まれる。
【0186】
E.付加的標的化部分
本粒子は、コンジュゲート内の標的化部分に加えて、粒子を特定の器官、組織、細胞種、または細胞内区画へ標的化する1つ以上の標的化部分を含有し得る。付加的標的化部分は、粒子の表面、粒子の内部、またはその両方に存在することができる。付加的標的化部分は、粒子の表面に固定化することができ、例えば、粒子中のポリマーまたは脂質に共有結合させることができる。好ましい実施形態では、付加的標的化部分は、標的化部分が粒子の表面に配向するように両親媒性ポリマーまたは脂質に共有結合される。
【0187】
IV.製剤
本明細書に記載の製剤は、それを必要とする個体に投与するために適当な医薬担体中に有効量のナノ粒子を含有する。製剤は一般に、非経口的に(例えば、注射または注入により)投与される。本製剤またはそれらの変形形態は、経腸、局所(例えば、眼に対する)、または肺経由の投与を含むいずれの方法で投与してもよい。いくつかの実施形態では、製剤は局所投与される。
【0188】
A.非経口製剤
本ナノ粒子は、注射または注入などの経口送達用に、溶液、懸濁液またはエマルションの形態で調剤することができる。本製剤は、治療する器官または組織に全身的、領域的、または直接的に投与することができる。
【0189】
非経口製剤は、当技術分野で公知の技術を用いて水性組成物として調製することができる。一般に、このような組成物は、例えば、溶液または懸濁液などの注射製剤;注射前に再構成媒体の添加時に溶液または懸濁液を調製するために使用するのに好適な固体形態;油中水型(w/o)エマルション、水中油型(o/w)エマルションなどのエマルション、およびそれらのマイクロエマルション、リポソーム、またはエマルソームとして調製することができる。
【0190】
担体は、例えば、水、エタノール、1つ以上のポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール)、植物油(例えば、落花生油、トウモロコシ油、ゴマ油など)などの油、およびそれらの組合せを含有する溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散液の場合には必要な粒径の維持により、かつ/または界面活性剤の使用により、維持することができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。
【0191】
ナノ粒子の溶液および分散液は、限定されるものではないが、界面活性剤、分散剤、乳化剤、pH改変剤、およびそれらの組合せを含む1つ以上の薬学上許容される賦形剤を適宜混合した水または他の溶媒または分散媒中に調製することができる。
【0192】
好適な界面活性剤は、陰イオン性、陽イオン性、両性または非イオン性界面活性剤であり得る。好適な陰イオン性界面活性剤としては、限定されるものではないが、カルボン酸イオン、スルホン酸イオンおよび硫酸イオンを含有するものが含まれる。陰イオン性界面活性剤の例としては、長鎖アルキルスルホン酸およびアルキルアリールスルホン酸のナトリウム、カリウム、アンモニウム、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム;スルホコハク酸ジアルキルナトリウム、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム;スルホコハク酸ジアルキルナトリウム、例えば、ビス−(2−エチルチオキシル)−スルホコハク酸ナトリウム;およびアルキル硫酸塩、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。陽イオン性界面活性剤としては、限定されるものではないが、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、臭化セトリモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、ポリオキシエチレンおよびココナッツアミンなどの第四級アンモニウム化合物が挙げられる。非イオン性界面活性剤の例としては、モノステアリン酸エチレングリコール、ミリスチン酸プロピレングリコール、モノステアリン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル、ポリグリセリル−4−オレエート、ソルビタンアシレート、スクロースアシレート、ラウリン酸PEG−150、モノラウリン酸PEG−400、モノラウリン酸ポリオキシエチレン、ポリソルベート、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、PEG−1000セチルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリプロピレングリコールブチルエーテル、ポロキサマー(Poloxamer)(商標)401、ステアロイルモノイソプロパノールアミド、およびポリオキシエチレン水素化樹脂アミドが挙げられる。両性界面活性剤の例としては、N−ドデシル−β−アラニンナトリウム、N−ラウリル−β−イミノジプロピオン酸ナトリウム、ミリストアンホアセテート(myristoamphoacetate)、ラウリルベタインおよびラウリルスルホベタインが挙げられる。
【0193】
本製剤は、微生物の増殖を防ぐ保存剤を含有し得る。好適な保存剤としては、限定されるものではないが、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、およびチメロサールが挙げられる。本製剤はまた、活性剤またはナノ粒子の分解を防ぐ抗酸化剤も含み得る。
【0194】
本製剤は一般に、非経口投与用としては、再構成時にpH3〜8で緩衝化される。好適な緩衝剤としては、限定されるものではないが、リン酸バッファー、酢酸バッファー、およびクエン酸バッファーが挙げられる。10%スクロースまたは5%デキストロースを使用する場合にが、バッファーは必要でない場合がある。
【0195】
水溶性ポリマーが非経口投与用の製剤に使用される場合が多い。好適な水溶性ポリマーとしては、限定されるものではないが、ポリビニルピロリドン、デキストラン、カルボキシメチルセルロース、およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0196】
無菌注射溶液は、適当な溶媒または分散媒中に必要量のナノ粒子を、必要ならば、上記に列挙した1つ以上の賦形剤とともに配合した後に濾過除菌を行うことによって調製することができる。一般に、分散液は、基本分散媒と上記に列挙したものからの必要な他の成分を含有する無菌ビヒクル中に、様々な滅菌ナノ粒子を配合することによって調製される。無菌注射溶液の調製のための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、予め濾過除菌したその溶液からナノ粒子と任意の付加的な所望の成分の粉末を得る真空乾燥技術およびフリーズドライ技術である。粉末は粒子が本質的に多孔質となるような方法で調製することができ、このことにより粒子の溶解性を高めることができる。多孔質粒子を作製するための方法は当技術分野で周知である。
【0197】
非経口投与用の医薬製剤は、1つ以上のポリマー−薬物コンジュゲートから形成された粒子の無菌水溶液または懸濁液の形態であり得る。許容される溶媒としては、例えば、水、リンゲル溶液、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、および等張塩化ナトリウム溶液が挙げられる。本製剤はまた、無毒の非経口的に許容される希釈剤または1,3−ブタンジオールなどの溶媒中の無菌溶液、懸濁液、またはエマルションであってもよい。
【0198】
ある場合には、本製剤は液体の形態で分配またはパッケージされる。あるいは、非経口投与用製剤は、例えば、好適な液体製剤の凍結乾燥によって得られた固体としてパックすることもできる。この固体は、投与前に適当な担体または希釈剤で再構成することができる。
【0199】
非経口投与用の溶液、懸濁液、またはエマルションは、眼球投与に好適なpHを維持するために必要な有効量のバッファーで緩衝化してもよい。好適なバッファーは当業者に周知であり、有用なバッファーのいくつかの例は、酢酸バッファー、ホウ酸バッファー、炭酸バッファー、クエン酸バッファー、およびリン酸バッファーである。
【0200】
非経口投与用の溶液、懸濁液、またはエマルションはまた、製剤の等張範囲を調整するために1つ以上の等張化剤を含有してもよい。好適な等張化剤は当技術分野で周知であり、いくつかの例として、グリセリン、スクロース、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウム、およびその他の電解質が挙げられる。
【0201】
非経口投与用の溶液、懸濁液、またはエマルションはまた、眼用製剤の細菌汚染を防ぐために1つ以上の保存剤を含有してもよい。好適な保存剤は当技術分野で公知であり、ポリヘキサメチレンビグアニジン(PHMB)、塩化ベンザルコニウム(BAK)、安定化オキシクロロ複合体(ピューリット(Purite)(登録商標)とも称する)、酢酸フェニル水銀、クロロブタノール、ソルビン酸、クロルヘキシジン、ベンジルアルコール、パラベン、チメロサール、およびそれらの混合物が含まれる。
【0202】
非経口投与用の溶液、懸濁液、またはエマルションはまた、分散剤、湿潤剤、および沈殿防止剤などの技術分野で公知の1つ以上の賦形剤を含有してもよい。
B.粘膜用局所製剤
本ナノ粒子は、粘膜表面への局所投与用に調剤することができる。局所的投与に好適な投与形としては、クリーム、軟膏、膏薬、スプレー、ゲル、ローション、エマルション、液体および経皮パッチが挙げられる。製剤は、経粘膜、経上皮、または経内皮投与用に調剤してもよい。該組成物は、1つ以上の化学浸透促進剤、膜透過性因子、膜輸送因子、軟化剤、界面活性剤、安定剤、およびそれらの組合せを含有する。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、溶液もしくは懸濁液などの液体製剤、ローションもしくは軟膏などの半固体製剤、または固体製剤として投与することができる。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、点眼剤などの溶液および懸濁液を含む液体として、または眼または膣または直腸などの粘膜に対する半固体製剤として調剤される。
【0203】
「界面活性剤」は、表面張力を低下させ、それにより生成物の乳化、発泡、分散、拡散および湿潤特性を増強する表面活性剤である。好適な非イオン性界面活性剤としては、乳化ワックス、モノオレイン酸グリセリル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリソルベート、ソルビタンエステル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、シクロデキストリン、モノステアリン酸グリセリン、ポロキサマー、ポビドンおよびそれらの組合せが挙げられる。一実施形態では、非イオン性界面活性剤はステアリルアルコールである。
【0204】
「乳化剤」は、ある液体の別の液体中への懸濁を促進し、かつ、油と水の安定な混合物、またはエマルションの形成を促進する表面活性物質である。一般的な乳化剤は、金属石鹸、特定の動物油および植物油、ならびに様々な極性化合物である。好適な乳化剤としては、アラビアガム、陰イオン性乳化ワックス、ステアリン酸カルシウム、カルボマー、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、コレステロール、ジエタノールアミン、パルミトステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸グリセリル、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ラノリン、含水物、ラノリンアルコール、レシチン、中鎖トリグリセリド、メチルセルロース、鉱油およびラノリンアルコール、第一リン酸ナトリウム、モノエタノールアミン、非イオン性乳化ワックス、オレイン酸、ポロキサマー、ポロキサマー類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシエチレン、アルギン酸プロピレングリコール、自己乳化モノステアリン酸グリセリル、クエン酸ナトリウム脱水物、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタンエステル、ステアリン酸、ヒマワリ油、トラガカントガム、トリエタノールアミン、キサンタンガムおよびそれらの組合せが挙げられる。一実施形態では、乳化剤はステアリン酸グリセロールである。
【0205】
浸透促進剤の好適な種は当技術分野で公知であり、限定されるものではないが、脂肪アルコール、脂肪酸エステル、脂肪酸、脂肪アルコールエーテル、アミノ酸、リン脂質、レシチン、コール酸塩、酵素、アミンおよびアミド、錯化剤(リポソーム、シクロデキストリン、修飾セルロース、およびジイミド)、大環状ラクトン、ケトン、および無水物などの大環状分子および環状尿素、界面活性剤、N−メチルピロリドンおよびそれらの誘導体、DMSOおよび関連化合物、イオン性化合物、アゾンおよび関連化合物、ならびにアルコール、ケトン、アミド、ポリオール(例えば、グリコール)などの溶媒が含まれる。これらの種の例は当技術分野で公知である。
【0206】
V.コンジュゲートの作製方法
本コンジュゲートは、多くの異なる合成手順により作製することができる。本コンジュゲートは、1つ以上の反応性カップリング基を有するリンカーから、または活性剤もしくは標的化部分上の反応性カップリング基と反応して共有結合を形成することができる1つ以上のリンカー前駆体から作製することができる。
【0207】
本コンジュゲートは、活性剤または標的化部分上の反応性カップリング基と反応して、活性剤または標的化部分に共有結合されたリンカーを形成することができるリンカー前駆体から作製することができる。
【0208】
リンカー前駆体は、二酸または置換二酸であり得る。二酸は、本明細書で使用する場合、好ましくは2〜50個の間、2〜30個の間、2〜12個の間、または2〜8個の間の炭素原子を有する2つ以上のカルボン酸基を有する置換または非置換アルキル、ヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリール化合物を指し得る。好適な二酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、およびそれらの誘導体を含み得る。
【0209】
リンカー前駆体は、二酸無水物、二酸エステル、または二酸ハロゲン化物などの活性化二酸誘導体であり得る。二酸無水物は、上記のものなどの二酸または二酸誘導体の分子内脱水から得られる環状無水物であり得る。二酸無水物は、無水マロン酸、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水ピメリン酸、無水フタル酸、無水ジグリコール酸、またはそれらの誘導体、好ましくは、無水コハク酸、無水ジグリコール酸、またはそれらの誘導体であり得る。二酸エステルは、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、およびそれらの誘導体のメチルおよびブチルジエステルまたはビス−(p−ニトロフェニル)ジエステルを含む、上記の二酸のいずれかの活性化エステルであり得る。二酸ハロゲン化物としては、上記の二酸の対応する酸フッ化物、酸塩化物、酸臭化物、または酸ヨウ化物を含み得る。好ましい実施形態では、二酸ハロゲン化物は、塩化スクシニルまたは塩化ジグリコリルである。例えば、反応性(−OH)カップリング基を有する治療薬および反応性(−NH2)カップリング基を有する標的化部分を用い、下記の一般スキームに従ってジコハク酸リンカーを有するコンジュゲートを調製することができる。
【0210】
【化24】
【0211】
上記のスキームIを参照すると、コンジュゲートは、ヒドロキシル基を有する活性剤を提供し、それを無水コハク酸リンカー前駆体と反応させて活性剤−コハク酸−SSPyのコンジュゲートを形成することによって調製することができる。利用可能な−NH基を有する標的化部分をカップリング試薬および活性剤−コハク酸−SSPyと反応させて標的化部分−リンカー−活性剤コンジュゲートを形成する。
【0212】
連結可能な他の官能基としては、限定されるものではないが、−SH、−COOH、アルケニル、リン酸基、硫酸基、複素環式NH、アルキンおよびケトンが挙げられる。
カップリング反応は、活性化剤、例えば、カルボジイミド(例えば、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC))の存在下、ジメチルアミノピリジン(DMAP)などの触媒を伴うまたは伴わないなどの当業者に知られたエステル化条件下で行うことができる。この反応は、ジクロロメタン、クロロホルムまたは酢酸エチルなどの適当な溶媒中、約0℃〜溶媒の還流温度の間の温度(例えば、周囲温度)で行うことができる。カップリング反応は一般に、ピリジンなどの溶媒中、または塩素化溶媒中、DMAPまたはピリジンなどの触媒の存在下、約0℃〜溶媒の還流温度の間の温度(例えば、周囲温度)で行われる。好ましい実施形態では、カップリング試薬は、塩素化溶媒、エーテル系溶媒またはアミド系溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド)中、DMAPなどの触媒の存在下、約0℃〜溶媒の還流温度の間の温度(例えば、周囲温度)での、4−(2−ピリジルジチオ)−ブタン酸、およびカルボジイミドカップリング試薬、例えば、DCCからなる群から選択される。
【0213】
本コンジュゲートは、1つ以上の反応性カップリング基を有する活性剤および/または標的化部分を、前記活性剤または標的化部分上の反応性カップリング基と反応し得る相補的反応性基を有するリンカーとカップリングさせて共有結合を形成することによって調製することができる。例えば、第一級アミン基を有する活性剤または標的化部分を、イソチオシアネート基または別のアミン反応性カップリング基を有するリンカーとカップリングすることができる。いくつかの実施形態では、リンカーは、活性剤上の相補的官能基と反応し得る第1の反応性カップリング基と、標的化部分上の相補的基と反応し得る、第1の基とは異なる第2の反応性カップリング基を含有する。いくつかの実施形態では,前記リンカー上の反応性カップリング基の一方または両方は、本合成の一部として、好適な保護基で保護することができる。
【0214】
VI.粒子の作製方法
様々な実施形態では、粒子の作製方法は、コンジュゲートを提供すること;粒子を形成するためのPLA−PEGまたはPLGA−PEGなどの基本成分を提供すること;有機溶液中で前記コンジュゲートと基本成分を合わせて第1の有機相を形成すること;第1の有機相と第1の水溶液を合わせて第2の相を形成すること;第2の相を乳化させてエマルション相を形成すること;および粒子を回収することを含む。様々な実施形態では、エマルション相をさらにホモジナイズする。
【0215】
いくつかの実施形態では、第1の相は、約5〜約50重量%、例えば、約1〜約40%の固体、または約5〜約30%の固体、例えば、約5%、10%、15%、および20%のコンジュゲートおよび基本成分を含む。特定の実施形態では、第1の相は、約5重量%のコンジュゲートおよび基本成分を含む。様々な実施形態では、有機相は、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、酢酸イソプロピル、ジメチルホルムアミド、塩化メチレン、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトン、ベンジルアルコール、ツィーン(TWEEN(登録商標))80、スパン(SPAN(登録商標))80、またはそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、有機相は、ベンジルアルコール、酢酸エチル、またはそれらの組合せを含む。
【0216】
様々な実施形態では、水溶液は、水、コール酸ナトリウム、酢酸エチル、またはベンジルアルコールを含む。様々な実施形態では、界面活性剤が第1の相、第2の相、またはその両方に添加される。界面活性剤は、場合によっては、本明細書に開示される組成物の乳化剤または安定剤として働き得る。好適な界面活性剤は、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、または非イオン性界面活性剤であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物を作製するために好適な界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルおよびステアリン酸ポリオキシエチレンが含まれる。このような脂肪酸エステル非イオン性界面活性剤の例は、ICIからのツィーン(TWEEN(登録商標))80、スパン(SPAN(登録商標))80、およびMYJ(商標)界面活性剤である。スパン(SPAN(登録商標))界面活性剤は、C12〜C18ソルビタンモノエステルを含む。ツィーン(TWEEN(登録商標))界面活性剤は、ポリ(エチレンオキシド)C12〜C18ソルビタンモノエステルを含む。MYJ(商標)界面活性剤は、ステアリン酸ポリ(エチレンオキシド)を含む。特定の実施形態では、水溶液はまた、ポリソルベートを含む界面活性剤(例えば、乳化剤)も含む。例えば、水溶液は、ポリソルベート80を含み得る。いくつかの実施形態では、好適な界面活性剤としては、脂質に基づく界面活性剤が含まれる。例えば、本組成物は、1,2−ジヘキサノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、1,2−ジヘプタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、PEG化1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(PEG5000−DSPEを含む)、PEG化1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−5000](アンモニウム塩)を含む)を含み得る。
【0217】
第2の相の乳化によるエマルション相の形成は、1段階または2段階の乳化工程で行い得る。例えば、一次エマルションを調製し、次いで、乳化して微細エマルションを形成することができる。一次エマルションは、例えば、単純混合、高圧ホモジナイザー、プローブソニケータ、撹拌子、またはロータ・ステータ・ホモジナイザーを用いて形成することができる。一次エマルションは、例えば、プローブソニケータまたは高圧ホモジナイザーの使用により、例えば、ホモジナイザーに1回または複数回通すことによって微細エマルションとすることができる。例えば、高圧ホモジナイザーを使用する場合、使用圧力は約27.6〜約55.2MPa(約4000〜約8000psi)、約27.6〜約34.5MPa(約4000〜約5000psi)、または27.6または34.5MPa(4000または5000psi)であり得る。
【0218】
溶媒の抽出を完遂し、粒子を凝固させるために溶媒の蒸発または希釈が必要な場合がある。抽出速度をより良く制御し、よりスケーラブルなプロセスとするために、水性クエンチによる溶媒希釈が使用可能である。例えば、エマルションを、有機溶媒の全てが溶解するために十分な濃度まで冷水で希釈し、クエンチ相を形成することができる。クエンチングは、約5℃以下の温度で少なくとも部分的に行えばよい。例えば、クエンチングに使用する水は、室温より低い温度(例えば、約0〜約10℃、または約0〜約5℃)であり得る。
【0219】
様々な実施形態では、粒子は濾過により回収される。例えば、限外濾過膜を使用することができる。例示的な濾過は、タンジェンシャルフロー濾過システムを用いて行うことができる。例えば、ナノ粒子は保持するが溶質、ミセル、および有機溶媒は通すために好適な孔径を有する膜を使用することにより、ナノ粒子を選択的に分離することができる。分子量カットオフが約300〜500kDa(−5〜25nm)の例示的な膜を使用することができる。
【0220】
様々な実施形態では、粒子は、場合によってはそれらの貯蔵寿命を延長するためにフリーズドライまたは凍結乾燥させる。いくつかの実施形態では、組成物はまた凍結防止剤も含む。特定の実施形態では、凍結防止剤は、糖、ポリアルコール、またはそれらの誘導体から選択される。特定の実施形態では、凍結防止剤は、単糖類、二糖類、またはそれらの混合物から選択される。例えば、凍結防止剤は、スクロース、ラクツロース、トレハロース、ラクトース、グルコース、マルトース、マンニトール、セロビオース、またはそれらの混合物であり得る。
【0221】
1つ以上のコンジュゲートを含有する粒子の作製方法が提供される。粒子は、ポリマー粒子、脂質粒子、またはそれらの組合せであり得る。本明細書に記載の様々な方法は、粒子のサイズおよび組成を制御するために調整可能であり、例えば、マイクロ粒子を調製するために最も適合している方法もあれば、ナノ粒子を調製するためにより適合している方法もある。記載の特徴を有する粒子を調製するための方法の選択は、当業者ならば過度な実験を用いずに行うことができる。
【0222】
i.ポリマー粒子
ポリマー粒子の作製方法は当技術分野で公知である。ポリマー粒子は、当技術分野で公知の任意の好適な方法を用いて調製することができる。一般的なマイクロカプセル化技術としては、限定されるものではないが、噴霧乾燥、界面重合、ホットメルトカプセル化、相分離カプセル化(自発的エマルションマイクロカプセル化、溶媒蒸発マイクロカプセル化、および溶媒除去マイクロカプセル化)、コアセルベーション、低温マイクロスフェア形成、および転相ナノカプセル化(PIN:phase inversion nanoencapsulation)が含まれる。これらの方法の簡単な概要を以下に示す。
【0223】
1.噴霧乾燥
噴霧乾燥技術を用いたポリマー粒子形成法は、米国特許第6,620,617号に記載されている。この方法では、ポリマーを、塩化メチレンなどの有機溶媒、または水に溶解させる。粒子に組み込む既知量の1つ以上のコンジュゲートまたは付加的活性剤を前記ポリマー溶液に懸濁させる(不溶性活性剤の場合)か、または共溶解させる(可溶性活性剤の場合)。この溶液または分散液を、圧縮ガス流によって駆動する微粒化ノズルに送り込み、生じたエアロゾルを加熱エアサイクロン中に浮遊させ、これらの微粒液滴から溶媒を蒸発させて粒子を形成する。この方法を用いて、0.1〜10μmの範囲のマイクロスフェア/ナノスフェアを得ることができる。
【0224】
2.界面重合
界面重合もまた、1つ以上のコンジュゲートおよび/または活性剤をカプセル化するために使用可能である。この方法を用いて、モノマーおよびコンジュゲートまたは1つまたは複数の活性剤を溶媒に溶解させる。第2のモノマーを、第1のモノマーと不混和性の第2の溶媒(一般に、水性)に溶解させる。撹拌により第1の溶液を第2の溶液に懸濁させることによってエマルションを形成する。エマルションが安定化したところで、開始剤を水相に添加して、エマルションの各液滴の界面で界面重合を生じさせる。
【0225】
3.ホットメルトマイクロカプセル化
ポリエステルおよびポリ無水物などのポリマーから、Mathiowitz et al.,Reactive Polymers,6:275(1987)に記載されているホットメルトマイクロカプセル化法を用いてマイクロスフェアを形成することができる。この方法では、3,000〜75,000ダルトンの間の分子量を有するポリマーの使用が好ましい。この方法では、ポリマーをまず融解し、次いで、50μm未満となるように篩いにかけた組み込み対象の1つ以上の活性剤の固体粒子と混合する。この混合物を不混和性溶媒(シリコーン油など)に懸濁させ、絶えず撹拌しながら、そのポリマーの融点より5℃高く加熱する。エマルションが安定化したところで、ポリマー粒子が凝固するまでそれを冷却する。得られたマイクロスフェアを石油エーテルでのデカンテーションにより洗浄し、自由流動性の粉末を生産する。
【0226】
4.相分離マイクロカプセル化
相分離マイクロカプセル化技術では、場合により、カプセル化対象の1つ以上の活性剤の存在下で、ポリマー溶液を撹拌する。撹拌により、材料を均一に懸濁させ続けながら、前記ポリマーの非溶媒を前記溶液にゆっくり加えてポリマーの溶解度を低下させる。溶媒および非溶媒中のポリマーの溶解度に応じて、ポリマーは沈殿するか、またはポリマー濃厚相とポリマー希薄相に相分離する。適正な条件下では、ポリマー濃厚相中のポリマーは連続相との界面に移動して、外部ポリマーシェルを有する液滴内に1つまたは複数の活性剤を封入する。
【0227】
a.自発的エマルションマイクロカプセル化
自発的乳化は、上記で形成された、乳化した液体のポリマー液滴を、温度を変化させることによって凝固させること、溶媒を蒸発させること、または化学架橋剤を加えることを含む。封入材料の物理的および化学的特性、ならびに形成中の粒子に場合により組み込まれる1つ以上の活性剤の特性が好適なカプセル化法を決める。疎水性、分子量、化学安定性、および温度安定性などの要因がカプセル化に影響を及ぼす。
【0228】
b.溶媒蒸発マイクロカプセル化
溶媒蒸発技術を用いてマイクロスフェアを形成するための方法は、Mathiowitz et al.,J.Scanning Microscopy,4:329(1990);Beck et al.,Fertil.Steril.,31:545(1979);Beck et al.,Am.J.Obstet.Gynecol.135(3)(1979);Benita et al.,J.Pharm.Sci.,73:1721(1984);および米国特許第3,960,757号に記載されている。ポリマーを塩化メチレンなどの揮発性有機溶媒に溶解させる。場合により、組み込み対象の1つ以上の活性剤を前記溶液に加え、この混合物を、ポリ(ビニルアルコール)などの界面活性剤を含有する水溶液に懸濁させる。得られたエマルションを、有機溶媒の大部分が蒸発するまで撹拌すると固体マイクロ粒子/ナノ粒子が残る。この方法は、ポリエステルおよびポリスチレンなどの比較的安定したポリマーに有用である。
【0229】
c.溶媒除去マイクロカプセル化
溶媒除去マイクロカプセル化技術は、主としてポリ無水物向けに設計され、例えば、WO93/21906に記載されている。この方法では、組み込み対象の物質を、塩化メチレンなどの揮発性有機溶媒中、選択されたポリマーの溶液に分散または溶解させる。この混合物を、シリコーン油などの有機油中で撹拌することにより懸濁させてエマルションを形成する。この手順によって1〜300μmの範囲のマイクロスフェアを得ることができる。マイクロスフェア中に組み込み可能な物質としては、医薬、農薬、栄養素、イメージング剤、および金属化合物が挙げられる。
【0230】
5.コアセルベーション
コアセルベーション技術を用いた様々な物質のカプセル化手順は、例えば、GB−B−929 406;GB−B−929 40 1;および米国特許第3,266,987号、同第4,794,000号、および同第4,460,563号において、当技術分野で公知である。コアセルベーションは、高分子溶液の、2つの不混和性液相への分離を含む。一方の相は、高濃度のポリマー封入材料(および場合により、1つ以上の活性剤)を含有する濃厚なコアセルベート相であり、第2の相は低濃度のポリマーを含有する。濃厚なコアセルベート相内では、ポリマー封入材料はナノスケールまたはマイクロスケールの液滴を形成する。コアセルベーションは、温度変化、非溶媒の添加またはマイクロ塩の添加により(単純コアセルベーション)、または別のポリマーを添加してポリマー内複合体を形成することにより(複合コアセルベーション)誘発することができる。
【0231】
6.マイクロスフェアの低温キャスティング
放出制御粒子の極低温キャスティングのための方法は、米国特許第5,019,400号に記載されている。この方法では、ポリマーを、場合により1つ以上の活性剤を溶解または分散させた溶媒に溶解させる。次に、この混合物を、ポリマー液滴を凍らせるポリマー物質溶液の凍結点より低い温度で、液体の非溶媒を含有する容器に噴霧する。液滴およびポリマーの非溶媒が温まると、液滴中の溶媒は解け、非溶媒中に抽出され、マイクロスフェアの硬化が起こる。
【0232】
7.転相ナノカプセル化(PIN)
ナノ粒子はまた、転相ナノカプセル化(PIN)法を用いて形成することもでき、この方法では、ポリマーを「良」溶媒に溶解させ、薬物などの組み込み対象の物質の微細粒子を前記ポリマー溶液に混合するかまたは溶解させ、この混合物をそのポリマーの強力な非溶媒に注ぎ、有利な条件下で、ポリマーマイクロスフェアを自発的に形成させる(この場合、ポリマーが粒子でコーティングされるか、または粒子がポリマー中に分散される)。例えば、米国特許第6,143,211号参照。この方法は、例えば、約100ナノメートル〜約10マイクロメートルを含む広範なサイズのナノ粒子およびマイクロ粒子の単分散集団を生産するために使用することができる。
【0233】
エマルションは沈殿前に形成される必要がないことが有利である。この方法は、熱可塑性ポリマーからマイクロスフェアを形成するために使用することができる。
8.エマルション法
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、エマルション溶媒蒸発法を用いて調製される。例えば、ポリマー材料を水不混和性有機溶媒に溶解させ、1種の薬物溶液または薬物溶液の組合せと混合する。いくつかの実施形態では、カプセル化対象の治療薬、予防薬、または診断薬の溶液をポリマー溶液と混合する。ポリマーは、限定されるものではないが、下記のうちの1つ以上であり得る:PLA、PGA、PCL、それらのコポリマー、ポリアクリレート、上記のペグ化ポリマー。薬物分子は、上記のような1つ以上のコンジュゲートおよび1つ以上の付加的活性剤を含み得る。水不混和性有機溶媒は、限定されるものではないが、下記のうちの1つ以上であり得る:クロロホルム、ジクロロメタン、および酢酸アシル。薬物は、限定されるものではないが、下記のうちの1つ以上に溶解させることができる:アセトン、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、アセトニトリルおよびジメチルスルホキシド(DMSO)。
【0234】
得られたポリマー溶液に水溶液を加えると、乳化によりエマルション溶液が生じる。乳化技術は、限定されるものではないが、プローブソニケーションまたはホモジナイザーによるホモジナイゼーションであり得る。
【0235】
9.ナノ沈殿
別の実施形態では、コンジュゲート含有ナノ粒子は、ナノ沈殿法またはマイクロ流体デバイスを用いて調製される。コンジュゲート含有ポリマー材料を、場合により付加的ポリマーを含有する水混和性有機溶媒中で薬物または薬物の組合せと混合する。付加的ポリマーは、限定されるものではないが、下記のうちの1つ以上であり得る:PLA、PGA、PCL、それらのコポリマー、ポリアクリレート、上記のペグ化ポリマー。水混和性有機溶媒は、限定されるものではないが、下記のうちの1つ以上であり得る:アセトン、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、アセトニトリルおよびジメチルスルホキシド(DMSO)。得られた混合物溶液を、次に、水溶液などのポリマー非溶媒に加えると、ナノ粒子溶液が得られる。
【0236】
10.マイクロ流体
マイクロ流体を用いるナノ粒子の作製方法は当技術分野で公知である。好適な方法としては、米国特許出願公開第2010/0022680A1号に記載されているものが含まれる。一般に、マイクロ流体デバイスは、混合装置に収束する少なくとも2つのチャネルを含む。これらのチャネルは一般に、ポリマー表面のリソグラフィー、エッチング、エンボス加工、またはモールディングによって形成される。流体供給源を各チャネルに接続し、その供給源に圧力をかけてチャネル内の流体を流動させる。圧力はシリンジ、ポンプ、および/または重力によってかけることができる。ポリマー、標的化部分、脂質、薬物、搭載物などを含む溶液のインレット流は収束および混合し、得られた混合物がポリマー非溶媒溶液と合流し、表面上に所望のサイズおよび密度の部分を有するナノ粒子を形成する。インレットチャネルにおける圧力および流速ならびに流体供給源の性質および組成物を変更することにより、再現性のあるサイズおよび構造を有するナノ粒子が生産できる。
【0237】
ii.脂質粒子
脂質粒子の作製方法は当技術分野で公知である。脂質粒子は、当技術分野で公知の任意の好適な方法を用いて調製された脂質ミセル、リポソーム、または固体脂質粒子であり得る。活性剤を封入した脂質粒子を作出するための一般的な技術としては、限定されるものではないが、高圧ホモジナイゼーション技術、超臨界流体法、エマルション法、溶媒拡散法、および噴霧乾燥法が含まれる。これらの方法の簡単な概要を以下に示す。
【0238】
1.高圧ホモジナイゼーション(HPH:High pressure homogenization)法
高圧ホモジナイゼーションは、脂質ミセル、リポソーム、および固体脂質粒子を含む、粒度分布の狭い、より小さな脂質粒子の生成に使用される、信頼性のある有力な技術である。高圧ホモジナイザーは、狭い間隙(数μmの範囲)から高圧(10MPa〜200MPa(100〜2000bar))で液体を押し出す。この流体は、室温で液体である脂質または室温で固体である脂質の融解物を含有し得る。この流体は、極めて短距離で極めて高速(1000Km/時超)に加速する。これが粒子を一般にサブミクロン範囲に粉砕する高剪断応力とキャビテーション力を生み出す。一般に、5〜10%の脂質含量が使用されるが、最大40%の脂質含量も検討されている。
【0239】
HPHの2つのアプローチが高温ホモジナイゼーションと低温ホモジナイゼーションであり、脂質溶液または融解物のバルクに薬物を混合するという同じコンセプトで機能する。
【0240】
a.高温ホモジナイゼーション:
高温ホモジナイゼーションは、脂質の融点より高い温度で実施され、従って、エマルションのホモジナイゼーションと見なすことができる。高剪断混合により、薬物添加脂質融解物と水性乳化剤相のプレエマルションが得られる。このプレエマルションのHPHを、脂質の融点より高い温度で行う。温度、圧力、およびサイクル数を含むいくつかのパラメーターを、所望のサイズを有する脂質粒子を生成するように調節することができる。一般に、温度が高いほど、内相の粘度が低下するために粒径が小さくなる。しかしながら、高温では薬物および担体の分解速度が増す。ホモジナイゼーション圧力を大きくするか、またはサイクル数を増やすと、多くの場合、粒子の運動エネルギーが高くなるために粒径が増す。
【0241】
b.低温ホモジナイゼーション
低温ホモジナイゼーションは、高温ホモジナイゼーションに代わるものとして開発された。低温ホモジナイゼーションは、温度誘発性の薬物分解またはホモジナイゼーション中の薬物の水相への分布などの問題がない。低温ホモジナイゼーションは、固体脂質粒子に特に有用であるが、若干の修正を行えば、リポソームおよび脂質ミセルを生産するために適用することができる。この技術では、薬物を含有する脂質融解物を冷却し、固体脂質を摩砕して脂質マイクロ粒子とし、これらの脂質マイクロ粒子を低温の界面活性剤溶液に分散させてプレ懸濁液を得る。このプレ懸濁液を室温以下でホモジナイズするが、ここでの重力は、脂質マイクロ粒子を直接、固体脂質ナノ粒子へと粉砕するために十分な強さである。
【0242】
2.超音波処理/高速ホモジナイゼーション法
脂質ミセル、リポソーム、および固体脂質粒子を含む脂質粒子は、超音波処理/高速ホモジナイゼーションによって調製することができる。超音波処理と高速ホモジナイゼーションの両方の組合せは、より小さな脂質粒子の生産のために特に有用である。リポソームは、このプロセスにおいて10nm〜200nm、好ましくは50nm〜100nmの範囲のサイズで形成される。
【0243】
3.溶媒蒸発法
脂質粒子は、溶媒蒸発アプローチによって調製することができる。親油性材料を水不混和性有機溶媒(例えば、シクロヘキサン)に溶解させ、これを水相に乳化させる。溶媒を蒸発させると、水性媒体中に脂質が沈殿することにより、ナノ粒子分散液が形成される。温度、圧力、溶媒選択などのパラメーターを用いて粒径および分布を制御することができる。溶媒蒸発速度は、圧力の増/減または温度の上昇/低下によって調整することができる。
【0244】
4.溶媒乳化拡散法
脂質粒子は、溶媒乳化拡散法によって調製することができる。脂質をまず、エタノールおよびアセトンなどの有機相に溶解させる。酸性水相を用いてゼータ電位を調整し、脂質コアセルベーションを誘発する。連続流動モードにより水およびアルコールの連続的拡散が可能となり、脂溶性を低下させ、これが熱力学的不安定性を生じ、リポソームを形成する。
【0245】
5.超臨界流体法
リポソームおよび固体脂質粒子を含む脂質粒子は、超臨界流体法から調製することができる。超臨界流体アプローチは、他の調製方法に使用される有機溶媒に取って代わる、またはその量を減らすという利点を有する。脂質、封入対象の活性剤、および賦形剤は超臨界溶媒中、高圧で溶媒和させることができる。この超臨界溶媒は、最も一般的にはCOであるが、他の超臨界溶媒も当技術分野で公知である。脂質の溶解度を高めるために、少量の補助溶媒を使用することができる。エタノールが一般的な補助溶媒であるが、一般に製剤に安全であると見なされる他の少量の有機溶媒も使用可能である。脂質粒子、脂質ミセル、リポソーム、または固体脂質粒子は、超臨界溶液の膨張により、または非溶媒水相への注入により得ることができる。粒子形成および粒度分布は、超臨界溶媒、補助溶媒、非溶媒、温度、圧力などを調整することにより制御することができる。
【0246】
6.マイクロエマルションに基づく方法
脂質粒子を作製するためのマイクロエマルションに基づく方法は当技術分野で公知である。これらの方法は、多相系、通常には二相系の希釈に基づく。脂質粒子の生産のためのエマルション法は一般に、脂質を含有する多量の不混和性有機溶液に少量の水性媒体を加えることによる油中水型エマルションの形成を含む。この混合物を振盪して、水性媒体を小液滴として有機溶媒中に分散させ、脂質はそれ自体、有機相と水相との境界に単層として整列する。液滴のサイズは、圧力、温度、適用される振盪および存在する脂質の量によって制御される。
【0247】
油中水型エマルションは、ダブルエマルションの形成を介してリポソーム懸濁液へと転化され得る。ダブルエマルションでは、水滴を含有する有機溶液を多量の水性媒体に加えて振盪すると、水中油中水型エマルションが生じる。形成される脂質粒子のサイズおよびタイプは、脂質、温度、圧力、補助界面活性剤、溶媒などの選択および量によって制御することができる。
【0248】
7.噴霧乾燥法
ポリマー粒子を作製するための上記の方法と類似の噴霧乾燥法は、固体脂質粒子を作出するために使用することができる。これは70℃より高い融点を有する脂質に対して最も良好に機能する。
【0249】
VI.コンジュゲートおよびナノ粒子の使用方法
本製剤は、必要に応じて増殖性疾患、代謝性疾患、感染性疾患、または癌を治療するために投与することができる。本製剤は免疫誘導のために使用することができる。製剤は、注射、経口、または一般に粘膜表面(肺、鼻腔、口腔、頬側、舌下、膣、直腸)へ、もしくは眼へ(眼内または経眼)局所的に投与される。本明細書に記載のコンジュゲート含有粒子の製剤は、それを必要とする個体または患者への治療薬、予防薬、または診断薬の選択的組織送達のために使用することができる。投与計画は、最も望ましい奏功(例えば、治療奏功または予防奏功)を提供するように調整することができる。例えば、単回ボーラスを投与してもよく、数回の分割用量を経時的に投与してもよく、または治療現場の緊急性によって指示される場合には、用量を比例的に増減させてもよい。単位剤形とは、本明細書で使用する場合、治療する哺乳動物対象にとって単位用量として適した物理的に別個の単位を指し、各単位は、所望の治療薬をもたらすように計算された所定量の有効化合物を含有する。
【0250】
様々な実施形態では、粒子内に含有されるコンジュゲートは、制御された様式で放出される。放出はin vitroまたはin vivoにおけるものであり得る。例えば、粒子に、米国薬局方およびその改変法に明示されたものを含め、ある特定の条件下で放出試験を行うことができる。
【0251】
様々な実施形態では、粒子が放出試験の条件に曝された後1時間以内に放出されるのは、粒子内に含有されるコンジュゲートのうち約90%未満、約80%未満、約70%未満、約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満である。いくつかの実施形態では、粒子が放出試験の条件に曝された後1時間以内に放出されるのは、粒子内に含有されるコンジュゲートのうち約90%未満、約80%未満、約70%未満、約60%未満、または約50%未満である。特定の実施形態では、粒子が放出試験の条件に曝された後1時間以内に放出されるのは、粒子内に含有されるコンジュゲートのうち約50%未満である。
【0252】
in vivoにおいて放出されるコンジュゲートに関して、例えば、対象者に投与される粒子内に含有されるコンジュゲートは対象者の身体から保護され得るものであり、身体はまた、コンジュゲートが粒子から放出されるまで隔離され得る。
【0253】
よって、いくつかの実施形態では、本コンジュゲートは、粒子が対象者の身体に送達されるまで、粒子内に実質的に含有され得る。例えば、粒子が対象者の身体、例えば、治療部位に送達される前に粒子から放出されるのは、全コンジュゲートの約90%未満、約80%未満、約70%未満、約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、または約1%未満である。いくつかの実施形態では、コンジュゲートは、長期にわたって、またはバースト(例えば、コンジュゲートの量が短時間のうちに放出され、その後、コンジュゲートが実質的に放出されない期間が続く)により放出され得る。例えば、コンジュゲートを、6時間、12時間、24時間、または48時間にわたって放出させることができる。特定の実施形態では、コンジュゲートは、1週間または1か月にわたって放出される。
【0254】
例示的実施形態
例示的実施形態1:葉酸−白金(IV)コンジュゲートの合成
【0255】
【化25】
【0256】
式II(上記)の葉酸−白金(IV)標的化コンジュゲートは、以下の反応スキームまたはその改変法に従って調製される。
【0257】
【化26】
【0258】
ジヒドロキシシスプラチン(IV)を周囲温度でDMSO中、無水コハク酸と反応させる。得られた単離スクシネートを、周囲温度でN,N,−ジメチルホルムアミド中、無水ヘキサン酸と反応させて、モノコハク酸モノヘキサン酸シスプラチン(IV)を得る。この中間体を、文献に記載の葉酸誘導アミンとカップリングさせ、示されている葉酸−Pt(IV)コンジュゲートを得る。このコンジュゲートを本明細書に記載のようにナノ粒子中に調剤する。
【0259】
例示的実施形態2:PSMA−カバジタキセルコンジュゲートの合成
【0260】
【化27】
【0261】
式III(上記)のPSMA−カバジタキセル標的化コンジュゲートは、下記の反応スキームまたはその軽微改変法に従って調製される。
【0262】
【化28】
【0263】
カバジタキセルを、周囲温度で、触媒量のN,N−ジメチル−4−アミノピリジンを含むジクロロメタン中、無水コハク酸と反応させる。得られたスクシネートを、塩素化溶媒またはN,N−ジメチルホルムアミド中、カルボジイミドカップリング条件を用い、特許文献に記載のアミンと反応させて、保護型のコンジュゲートを得る。このコンジュゲートを、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)およびモルホリンを用いて脱保護し、目的のカバジタキセル−PSMA配位子コンジュゲートを得る。
【0264】
このコンジュゲートを本明細書に記載のようにナノ粒子中に調剤する。
例示的実施形態3:PSMA−白金(IV)コンジュゲートの合成
【0265】
【化29】
【0266】
式IV(上記)のPSMA−白金(IV)標的化コンジュゲートは、下記の反応スキームに従って調製される。
【0267】
【化30】
【0268】
ジヒドロキシシスプラチン(IV)を、周囲温度でDMSO中、無水コハク酸と反応させる。得られた単離スクシネートを、周囲温度でN,N,−ジメチルホルムアミド中、無水ヘキサン酸と反応させて、モノコハク酸モノヘキサン酸シスプラチン(IV)を得る。得られたスクシネートを、塩素化溶媒またはN,N−ジメチルホルムアミド中、カルボジイミドカップリング条件を用い、特許文献に記載のアミンと反応させて、保護型のコンジュゲートを得る。このコンジュゲートを、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)およびモルホリンを用いて脱保護し、目的のシスプラチン(IV)−PSMA配位子コンジュゲートを得る。
【0269】
このコンジュゲートを本明細書に記載のようにナノ粒子中に調剤する。
例示的実施形態4:葉酸−カバジタキセルコンジュゲートの合成
【0270】
【化31】
【0271】
式V(上記)の葉酸−カバジタキセル標的化コンジュゲートは、下記の反応スキームまたはその軽微改変法に従って調製される。
【0272】
【化32】
【0273】
カバジタキセルを、周囲温度で、触媒量のN,N−ジメチル−4−アミノピリジンを含むジクロロメタン中、無水コハク酸と反応させる。この中間体を、文献に記載の葉酸誘導アミンとカップリングさせ、示されている葉酸−カバジタキセルコンジュゲートを得る。
【0274】
このコンジュゲートを本明細書に記載のようにナノ粒子中に調剤する。
例示的実施形態5:PSMA−カバジタキセルコンジュゲートの合成
【0275】
【化33】
【0276】
式VIのPSMA−カバジタキセル標的化薬物コンジュゲートは、下記の合成手順またはその改変法に従って調製される。
【0277】
【化34】
【0278】
カバジタキセルを、周囲温度で、触媒量のN,N−ジメチル−4−アミノピリジンを含むジクロロメタン中、無水コハク酸と反応させる。得られたスクシネートを、塩素化溶媒またはN,N−ジメチルホルムアミド中、カルボジイミドカップリング条件を用い、特許文献に記載のアミンと反応させて、保護型のコンジュゲートを得る。このコンジュゲートを、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)およびモルホリンを用いて脱保護し、目的のカバジタキセル−PSMA配位子コンジュゲートを得る。このコンジュゲートを本明細書に記載のようにナノ粒子中に調剤する。
【0279】
例示的実施形態6:PSMA−カバジタキセルコンジュゲートの合成
【0280】
【化35】
【0281】
式VII(上記)のPSMA−カバジタキセル標的化コンジュゲートは、下記の反応スキームまたはその軽微改変法に従って調製される。
【0282】
【化36】
【0283】
実施例1で調製されたカバジタキセルジスルフィドを、チオアセトアミドとしてのPSMA配位子と反応させて、ジスルフィドコンジュゲートPSMA−カバジタキセルを得る。このコンジュゲートを本明細書に記載のようにナノ粒子中に調剤する。
【0284】
例示的実施形態7:葉酸−Pt(IV)コンジュゲートの合成
【0285】
【化37】
【0286】
式VIII(上記)の葉酸−Pt(IV)標的化コンジュゲートは、下記の反応スキームまたはその軽微改変法に従って調製される。
【0287】
【化38】
【0288】
ジヒドロキシシスプラチン(IV)を、周囲温度でDMSO中、無水コハク酸と反応させる。得られた単離スクシネートを、周囲温度でN,N,−ジメチルホルムアミド中、無水ヘキサン酸と反応させて、モノコハク酸モノヘキサン酸シスプラチン(IV)を得る。この中間体を、文献に記載の葉酸誘導アミンとカップリングさせ、示されている葉酸−Pt(IV)コンジュゲートを得る。このコンジュゲートを本明細書に記載のようにナノ粒子中に調剤する。
【0289】
例示的実施形態8:二葉酸−Pt(IV)コンジュゲートの合成
【0290】
【化39】
【0291】
式IXの二葉酸−Pt(IV)標的化コンジュゲートは、下記の反応スキームまたはその軽微改変法に従って調製される。
【0292】
【化40】
【0293】
ジヒドロキシシスプラチン(IV)を、周囲温度でDMSO中、Boc−β−アラニン無水物と反応させ、得られた生成物を周囲温度、DCM中、TFAを用いて脱保護する。得られたジアミンを、DMSO中、ジシクロヘキシルカルボジイミド、N−ヒドロキシスクシンイミドの存在下で、過剰量の葉酸と反応させて、二葉酸−Pt(IV)コンジュゲートを得る。このコンジュゲートを本明細書に記載のようにナノ粒子中に調剤する。
【0294】
例示的実施形態9:PSMA−ジ−Pt(IV)コンジュゲートの合成
【0295】
【化41】
【0296】
式XのPSMA−ジ−Pt(IV)標的化コンジュゲートは、下記の反応スキームまたはその軽微改変法に従って調製される。
【0297】
【化42】
【0298】
ジヒドロキシシスプラチン(IV)を、周囲温度でDMSO中、無水コハク酸と反応させる。得られた単離スクシネートを、周囲温度でN,N,−ジメチルホルムアミド中、無水ヘキサン酸と反応させて、モノコハク酸モノヘキサン酸シスプラチン(IV)を得る。得られたスクシネートを、塩素化溶媒またはN,N−ジメチルホルムアミド中、カルボジイミドカップリング条件を用い、特許文献に記載のアミンと過剰量で反応させて、保護型のコンジュゲートを得る。このコンジュゲートを、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)およびモルホリンを用いて脱保護し、目的のジ−シスプラチン(IV)−PSMA配位子コンジュゲートを得る。このコンジュゲートを本明細書に記載のようにナノ粒子中に調剤する。
【0299】
実施例
実施例1:RGD−SS−カバジタキセルコンジュゲートの合成
式IのRGDペプチド−カバジタキセル標的化薬物コンジュゲートを、下記の合成手順(スキームII)に従って調製した。
【0300】
【化43】
【0301】
手順
ステップ1 γ−チオラクトン(3g、29.4mmol)を、撹拌子を含む100mL丸底フラスコに加えた。THF(30mL)および脱イオン水(20mL)を加え、この混合物を室温で撹拌した。5分後、5N NaOH(10mL)を加え、得られた混合物を室温で3時間撹拌した。次に、真空下、40℃で溶媒を除去した。次いで、この粗混合物に30mLの脱イオン水を加えた後、濃HClをpH2となるまで加えた。生成物を各回30mLの酢酸エチルで3回抽出した。酢酸エチルを合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。次に、この溶液を、30mLの無水エタノール中、2,2’−ジチオピリジン(6.5g、29.6mmol)の撹拌混合物に1時間かけて滴下した。添加が完了した後、反応混合物を室温でさらに16時間撹拌し、この時点で、真空下、30℃で溶媒を除去した。この粗反応混合物をシリカゲルクロマトグラフィー(2:1:0.02 ヘプタン:酢酸エチル:酢酸)によって精製し、目的生成物を収率76%で得た(5.1g)。
【0302】
ステップ2.カバジタキセル(100mg、0.12mmol)、4−(2−ピリジルジチオ)−ブタン酸(27mg、0.12mmol)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(25mg、0.12mmol)、および4−ジメチルアミノピリジン(1.5mg、0.012mmol)を、撹拌子を含む8mLバイアルに加えた。ジクロロメタン(2mL)を加え、得られた溶液を室温で16時間撹拌した。この時点で、反応混合物を濾過してジシクロヘキシル尿素を除去し、真空下、25℃で溶媒を除去して無色の固体を得た。この粗材料をシリカゲルクロマトグラフィー(1:1 酢酸エチル:ヘプタン)によって精製し、白色粉末を収率83%で得た(104mg)。この生成物をHPLC−MS(方法1)により分析した。7.03分のピークは、1047Da(M+H)(Waters ZQ Micromass)の生成物親イオンを示し、これは式Iの化合物に相当する。
【0303】
ステップ3.カバジタキセルブチレートピリジルジスルフィド(SSPy)(18mg、17.2μmol)およびc(RGDfC)(10mg、17.2μmol)を、撹拌子を含む8mLバイアルに加えた。1mLのジメチルホルムアミド(DMF)を加え、この反応混合物を室温で16時間撹拌した。次いで、真空下、40℃で溶媒を除去して黄色オイルを得、5mLのジクロロメタンで3回追い出し(chased)、黄色粉末を得た(25mg、収率96%)。この生成物をHPLC−MS(方法1)により分析した。5.20分のピークは、1515Da(M+H)(Waters ZQ Micromass)の生成物親イオンを示し、これは式Iの化合物に相当する。
【0304】
【化44】
【0305】
C18逆相HPLCによる生成物の分析(方法1)
RGD−SS−カバジタキセル薬物コンジュゲートのHPLC分析は、Zorbax Eclipse XDB−C18逆相カラム(4.6×100mm、3.5μm、Agilent PN:961967−902)にて、水+0.1%TFA(溶媒A)およびアセトニトリル+0.1%TFA(溶媒B)からなる移動相を用い、流速1.5mL/分およびカラム温度35℃で行った。注入量は10μLとし、分析物は220および254nmのUVを用いて検出した。
【0306】
【表1】
【0307】
実施例2.カバジタキセル−RGDコンジュゲートの合成
【0308】
【化45】
【0309】
コンジュゲートの調製
【0310】
【化46】
【0311】
メタノール(20mL)中、2,2’−ジピリジルジスルフィド(1.51g、6.85mmol)の溶液に、2−(ブチルアミノ)エタンチオール(500μL、3.38mmol)を加えた。この反応物を室温で18時間撹拌した後、溶媒を真空除去した。残った材料をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製してジスルフィド2(189mg、0.780mmol、収率23%)を得、これを使用まで−18℃で保存した。
【0312】
【化47】
【0313】
−40℃に冷却したジクロロメタン(10mL)およびピリジン(0.50mL)中、カバジタキセル(410mg、0.490mmol)の溶液に、ジクロロメタン(10mL)中、p−ニトロフェニルクロロホルメート(600mg、2.98mmol)の溶液を加えた。この反応物を−40℃で2時間撹拌し、反応物を室温まで温め、0.1N HCl(20mL)で洗浄した。水層をジクロロメタン(2×20mL)で抽出し、合わせた有機層をMgSOで乾燥させ、溶媒を真空除去した。残った材料をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、カバジタキセル−2’−p−ニトロフェニルカーボネート(390mg、0.390mmol、収率80%)を得た。
【0314】
【化48】
【0315】
ジクロロメタン(15mL)中、カバジタキセル−2’−p−ニトロフェニルカーボネート(390mg、0.390mmol)の溶液を2(190mg、0.784mmol)に加えた。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(1.0mL、5.74mmol)を加え、この反応物を30℃18時間撹拌した後、溶媒を真空除去し、残った材料をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、BT−375(326mg、0.295mmol、収率78%)を得た。ESI MS:理論値1103.4、実測値1103.9[M+1]。
【0316】
【化49】
【0317】
バイアルにシクロ(RGDfC)(66.0mg、0.114mmol)およびBT−375(121mg、0.110mmol)を装填した。DMF(2mL)およびジイソプロピルエチルアミン(100μL)を加え、この反応物を室温で30分間撹拌し、反応物を40g C18 Iscoカラムにロードした。0.2%酢酸を含む水中5%〜95%のアセトニトリルで溶出させ、BT−568(71.0mg、0.0452mmol、収率41%)を得た。
【0318】
実施例3.カバジタキセル−RGD封入ナノ粒子の調製
カバジタキセル−RGD(アルギニン−グリシン−アスパラギン酸ペプチド)コンジュゲートを合成し(実施例2のカバジタキセル−RGDコンジュゲートの合成を参照)、単一水中油エマルション法を用いてコポリマー中に上手くカプセル化された(下記表1参照)。具体的には、PLA74−b−PEG5コポリマーを、所望の総固体濃度となるように酢酸エチルに溶解させた。コポリマー/溶媒溶液を、所望の有効濃度となるようにカバジタキセル−RGDコンジュゲートに加えた。次に、この油相を、乳化剤(例えば、Tween(登録商標)80)を含有する、連続的に撹拌した水相に、10/90%v/v 油/水の比でゆっくり加え、ロータ・ステータ・ホモジナイザーまたは超音波槽を用いて粗エマルションを調製した。次に、この粗エマルションを高圧ホモジナイザー(68.9MPa(10,000psi)で作動)に2回通して処理し、ナノエマルションを形成した。その後、このナノエマルションを、注射用水品質の冷水(0〜5℃)で10倍希釈して、大部分の酢酸エチル溶媒を除去することによりクエンチしたところ、エマルション滴の硬化およびナノ粒子懸濁液の形成が生じた。タンジェンシャルフロー濾過(500kDa MWCO、mPES膜)を用いてナノ粒子懸濁液を濃縮し、注射用水品質の水で(界面活性剤を伴う、または伴わない)洗浄した。このナノ粒子懸濁液に凍結防止剤(例えば、10%スクロース)を加え、この製剤を0.22μmのフィルターで濾過除菌した。この製剤を−20℃以下で冷凍保存した。ナノ粒子の粒径(Z−avg.)および多分散性指数(PDI:polydispersity index)は、下表にまとめるように、動的光散乱により特定した。実際の薬物負荷量はHPLCを用いて決定した。カプセル化効率は、実際の薬物負荷量と理論的薬物負荷量の比として計算した。
【0319】
【表2】
【0320】
実施例4.カバジタキセル−RGDナノ粒子薬物動態
ナノ粒子は一般に10%スクロースおよび様々な遊離薬物製剤中に調剤されるが、一般に10%ソルトール(商標)/10%スクロース、または生理食塩水中で投与される。
【0321】
PK試験では、0.1mg/mL溶液を10mL/kgで投与し、従って、1mg/kg IVボーラス用量をラットに尾静脈注射により導入した。化合物の投与後、投与0.083時間、0.25時間、0.5時間、1時間、2時間、4時間、8時間、および24時間後に、リチウムヘパリンをコーティングした真空チューブに血液を採取した。これらのチューブを5分間転倒混和させた後、4℃、6000rpmで5分間の遠心分離を行うまでウェットアイス上に置いた。血漿を採取し、−80℃で冷凍し、生物分析のためにドライアイス上で運搬した。
【0322】
50μLのラット血漿を、300μLのDMFを用いて沈降させ、得られた上清に対して、LC−MS/MSエレクトロスプレーイオン化法のポジティブモードによって化合物含量の測定を行った。
【0323】
この分析により、本ナノ粒子製剤は、ナノ粒子を用いずに投与した化合物での5.3μM・hに対して11.6μM・hと、有意に高いAUCを示すことが示された。
また、この試験は、本ナノ粒子製剤のより良好な忍容性を実証した。遊離薬物を投与した場合、1mg/kgの投与後に、3個体のラット全てで投与直後に嗜眠および呼吸困難が見られ、3個体のうち1個体が死に至った。ナノ粒子製剤の場合には毒性の徴候は見られなかった。図1参照。
【0324】
実施例5.オクトレオチド−Cy5.5コンジュゲートの合成
【0325】
【化50】
【0326】
【化51】
【0327】
0℃に冷却したDMF(8mL)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(175 L、1.00mmol)を溶媒とする酢酸オクトレオチド(540mg、0.501mmol)の溶液に、DMF(7mL)を溶媒とする二炭酸ジ−tert−ブチル(109mg、0.499mmol)の溶液を加えた。この反応物を0℃で1時間、次いで室温で1時間撹拌した。その後、S−トリチル−3−メルカプトプロピオン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(668mg、1.50mmol)を固体として加え、反応物を室温で16時間撹拌した。溶媒を真空除去し、残った材料をシリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン中0%〜8%のメタノール)により精製し、1(560mg、0.386mmol、収率77%)を得た。
【0328】
【化52】
【0329】
バイアルに1(58.0mg、0.0400mmol)を装填し、水(60 L)、次いでトリフルオロ酢酸(3.0mL)を加えた。トリイソプロピルシラン(30μL)を加え、この反応物が無色となるまで撹拌し、全溶媒を真空除去した。残った残渣をアセトニトリル(4.0mL)に溶解させ、Cy5.5マレイミド(33.0mg、0.0445mmol)を加えた。ジイソプロピルエチルアミン(400μL)を加え、この反応物を室温で30分間撹拌した。この反応混合物にDMF(2mL)を加えて残った固体材料を可溶化し、反応混合物を分取HPLC(0.1%トリフルオロ酢酸を含有する水中30%〜85%のアセトニトリル)により精製し、コンジュゲートをトリフルオロ酢酸塩として得た(24.2mg、0.0119mmol、収率30%)。ESI MS:理論値1811.8、実測値906.5[(M+1)/2]。
【0330】
実施例6.オクトレオチド−Cy5.5封入ナノ粒子の調製
オクトレオチド−Cy5.5コンジュゲート(化合物BT−558)を合成し(実施例5のオクトレオチド−Cy5.5コンジュゲートの合成を参照)、単一水中油エマルション法を用いてポリマーナノ粒子中に上手くカプセル化された(下記表2参照)。具体的には、PLA74−b−PEG5、またはPLA35−b−PEG5コポリマーを、所望の総固体濃度となるように酢酸エチルに、PLA57とともに溶解させた。オクトレオチド−Cy5.5コンジュゲートは、疎水性イオン対形成(HIP:hydrophobic ion−pairing)技術を使用することにより親油性とした。このコンジュゲートは2つの正電荷部分を有し、一方はリシンアミノ酸上に、他方はCy5.5色素上にある。HIPを形成するために、コンジュゲート1分子当たりに2つの負電荷ジオクチルナトリウムスルホスクシネート(AOT)分子を用いた。このコンジュゲートとAOTを、メタノール、ジクロロメタンおよび水の混合物に加え、1時間振盪した。この混合物にさらにジクロロメタンと水を加えた後、オクトレオチド−Cy5.5/AOT HIPをジクロロメタン相から抽出し、乾燥させた。ポリマー/溶媒溶液を、所望の有効濃度となるようにオクトレオチド−Cy5.5コンジュゲートに加えた。次に、この油相を、乳化剤(例えば、Tween(登録商標)80)を含有する、連続的に撹拌した水相に、10/90%v/v 油/水の比でゆっくり加え、ロータ・ステータ・ホモジナイザーまたは超音波槽を用いて粗エマルションを調製した。次に、この粗エマルションを高圧ホモジナイザー(68.9MPa(10,000psi)で作動)に4回通して処理し、ナノエマルションを形成した。その後、このナノエマルションを、注射用水品質の冷水(0〜5℃)で10倍希釈して、大部分の酢酸エチル溶媒を除去することによりクエンチしたところ、エマルション滴の硬化およびナノ粒子懸濁液の形成が生じた。タンジェンシャルフロー濾過(500kDa MWCO、mPES膜)を用いてナノ粒子懸濁液を濃縮し、0.2%Tween(登録商標)80/注射用水品質の水で(界面活性剤を伴う、または伴わない)洗浄した。このナノ粒子懸濁液に凍結防止剤(例えば、10%スクロース)を加え、この製剤を0.22μmのフィルターで濾過除菌した。この製剤を−20℃以下で冷凍保存した。ナノ粒子の粒径(Z−avg.)および多分散性指数(PDI)は、下表にまとめるように、動的光散乱により特定した。実際の薬物負荷量はHPLCおよびUV−Vis吸光度を用いて決定した。カプセル化効率は、実際の薬物負荷量と理論的薬物負荷量の比として計算した。
【0331】
【表3】
【0332】
実施例7.マウス腫瘍モデルにおけるオクトレオチド−Cy5.5封入ナノ粒子のin vivo特性評価
封入ナノ粒子の局在を示す画像研究を行った。
【0333】
6〜8週齢の雌NCrヌードマウス(Taconic、ハドソン、ニューヨーク州)マウスを購入し、水および低蛍光マウス飼料を備えた病原体フリーの動物施設で維持した。マウスの取り扱いおよび試験手順はIACUCガイドラインおよび動物飼育および使用に関する承認済みの獣医要件に準拠した。腫瘍増殖を誘導するために、SW480(ヒト結腸腺癌細胞株)およびH524(ヒト肺癌細胞株)を含む種々のヒト由来腫瘍タイプをマウスの側腹部皮下腔内に移植し、1〜10週間腫瘍塊を増殖させた。本研究では、腫瘍モデルはH69であった。
【0334】
In vivoFMT 4000断層撮像および解析
マウスをイソフルラン吸入により麻酔した。マウスに、イメージングコンジュゲートのナノ粒子製剤を静注により投与した。
【0335】
次に、FMT 4000蛍光断層撮影in vivoイメージングシステム(PerkinElmer、ウォルサム、マサチューセッツ州)を用いて、2D表面蛍光反射率イメージ(FRI:surface fluorescence reflectance image)ならびに3D蛍光分子断層撮影(FMT:fluorescence molecular tomographic)イメージングデータセットの両方を収集し、マウスのイメージングを行った。
【0336】
FMT再構成および解析
収集した蛍光データを、FMT 4000システムソフトウエア(TrueQuant v3.0、PerkinElmer、ウォルサム、マサチューセッツ州)により、腫瘍および肺内の三次元蛍光シグナルの定量に関して再構成した。三次元関心領域(ROI:regions of interest)を関連の生物学を含めて描写する。
【0337】
これらのデータは、蛍光標的化コンジュゲートを含有するナノ粒子製剤からの方が、ナノ粒子製剤を用いずに投与したコンジュゲートよりも、正常組織に比べてより高いレベルの血液および腫瘍蛍光を示す。組織において毒性に関するレベルはより低い。
【0338】
特に断りのない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、開示されている本発明が属する技術分野の熟練者により共通に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に引用されている刊行物およびそれらが引用されている資料は、本明細書の一部として援用する。
【0339】
当業者ならば、本明細書に記載の本発明の具体例に対する多くの等価物を認識し、または慣例の実験だけを用いて確認することができるであろう。このような等価物は以下の特許請求の範囲により包含されるものとする。
図1