(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6118917
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】声帯粘膜運動状態を分析するための平面スキャンビデオキモグラフィーシステム及びこれを利用した声帯粘膜運動状態の分析方法
(51)【国際特許分類】
A61B 1/267 20060101AFI20170410BHJP
A61B 1/273 20060101ALI20170410BHJP
A61B 1/04 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
A61B1/26
A61B1/04 370
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-561255(P2015-561255)
(86)(22)【出願日】2013年10月10日
(65)【公表番号】特表2016-509885(P2016-509885A)
(43)【公表日】2016年4月4日
(86)【国際出願番号】KR2013009052
(87)【国際公開番号】WO2014148712
(87)【国際公開日】20140925
【審査請求日】2015年9月4日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0030086
(32)【優先日】2013年3月21日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515243822
【氏名又は名称】キム テウ
【氏名又は名称原語表記】KIM,Tae Woo
(73)【特許権者】
【識別番号】515243833
【氏名又は名称】ワン ヨンジン
【氏名又は名称原語表記】WANG,Yong Jin
(74)【代理人】
【識別番号】100200528
【弁理士】
【氏名又は名称】水村 香穂里
(72)【発明者】
【氏名】キム テウ
(72)【発明者】
【氏名】ワン ヨンジン
【審査官】
▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2006/0235693(US,A1)
【文献】
韓国登録特許第10−0260383(KR,B1)
【文献】
特開2009−136459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 − 1/32
G02B 23/24 − 23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
声帯粘膜運動状態を分析するための平面走査ビデオキモグラフィーシステムであって、
声帯を観察する喉頭鏡と、
声帯を照射するための光源と、
前記喉頭鏡から観察された映像を録画して記憶するローリングシャッター方式のビデオカメラと、
前記ビデオカメラから転送されるビデオ信号をデジタル映像信号に変換するイメージキャプチャー部、デジタル映像信号を記憶する記憶部、前記記憶部の映像信号を分析してモニターに分析結果を表示させる制御部、前記記憶部の映像信号を分析する分析ソフトウェアを含むコンピュータと、及び
撮影映像及び分析結果を表示するモニターと、を含み、
前記ビデオカメラはローリングシャッターを含んでおり、声帯粘膜をスキャンすることにより、声帯全体の平面走査ビデオキモグラフィーを得て、
前記分析ソフトウェアを含むコンピュータは、前記声帯全体の平面走査ビデオキモグラフィーと、前記声帯全体の平面走査ビデオキモグラフィーを分析して観察された声帯に対する正規化された指標として声紋の縦軸の長さに対する平均声帯幅、声帯開放期間と全体期間の比率である声紋開放率、両側声帯の開かれる程度の差の非対称指数、基本周波数、振動強度、振動規則性、粘膜波動、振動対称性、外側境界模様、内側境界模様、周期異常、または声帯粘膜の振動消失のいずれかを表示する、ことを特徴とする平面走査ビデオキモグラフィーシステム。
【請求項2】
前記ビデオカメラはシャッタースピードを1/1000秒以上にする、ことを特徴とする請求項1に記載の平面走査ビデオキモグラフィーシステム。
【請求項3】
前記光源はキセノン(Xenon)連続光源である、ことを特徴とする請求項1に記載の平面走査ビデオキモグラフィーシステム。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の声帯粘膜運動状態を分析するための平面走査ビデオキモグラフィーシステムの作動方法であって、
(a)喉頭鏡と光源、及びビデオカメラを利用して声帯の動きを撮影した平面走査キモグラム映像をイメージキャプチャー部により、記憶部に記憶させる段階と、
(b)制御部により記憶部の所定個数の映像フレームをフレーム別に停止画面で構成してモニターに表示し、使用者が観察を必要とするフレームをマウスまたはキーボードで選択できるようにメニュー画面を構成して表示する段階と、及び
(c)分析ソフトウェアにより映像を分析して観察された声帯に対する正規化された指標を表示する段階と、を含むことを特徴とする声帯粘膜運動状態を分析するための平面走査ビデオキモグラフィーシステムの作動方法。
【請求項5】
前記(a)段階において、発声しない状態で声帯の全部位を撮影した後、"イ"あるいは"エ"を発声させて声帯振動部の全部位の動きを撮影する、ことを特徴とする請求項4に記載の声帯粘膜運動状態を分析するための平面走査ビデオキモグラフィーシステムの作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は声帯粘膜状態を分析するためのビデオキモグラフィーシステムに関し、声帯の一部ではなく声帯の全領域の振動状態をリアルタイムで抽出し、声帯の全領域の粘膜の運動状態を分析する平面スキャンビデオキモグラフィーシステム及びその分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人の喉頭は言語を通して意志を伝えるための発声器官であり、発声時に吐き出す空気の流れに従って喉頭内声帯(vocal cords)が秒当たり約100回から350回振動する。しかし、声が変わる病気にかかった状態では声帯粘膜の運動が不規則、かつ非対称になり、または振動が減少し、更に振動が存在しない場合もある。
【0003】
発声時に下気道で吸入された空気は声紋の下部の閉じられている声帯によって、圧力が増加し、その圧力が声帯の抵抗より大きくなると、声帯の下縁(inferior margin)から上縁(superior margin)へ向かう空気の流れが形成されて声帯が開かれるようになっている。この空気の流れによって、声帯粘膜に粘膜波が生じ、粘膜派の速度や強度などの特徴により声の質が決まる。すなわち、声帯は数十〜数百Hzで対称的に迅速に振動して、声紋の下部で生じる声紋下部の圧力(sub-glottal pressure)を音エネルギーに変換する役割を果たす。しかし、声帯結節または声帯麻痺等が存在する場合、粘膜派の対称性が低下し、効果的なエネルギーの転換が不可能になり、嗄声(かすれ声)を招くことがある。
【0004】
従って、声の異常を診察する時、声帯粘膜の運動状態、すなわち声帯振動を把握することが非常に必要になっている。そのため、現在使用されている方法の1つとして、喉頭ストロボスコープ(laryngeal stroboscope)を利用している。前記喉頭ストロボスコープを利用する場合、声帯の秒当たり100回から350回の速い動きを遅い動きで観察できる喉頭ビデオストロボスコープ(laryngeal videostroboscope)を利用する方法が主に使用されている。しかし、喉頭ビデオストロボスコープで観察できる映像は実際、1つの正確なサイクル(周期)声帯の振動を見せているのではなく、複数の周期の一部分が合成された映像であるという根本的な問題点が生じている。更に、声帯運動の各周期の間の変動が大きく、または発声時に声帯の間の間隔が大きくなることにより、周期的な反復性が欠如した非周期性の発声障害患者に対しては意味を有する解釈が不可能になり、全体的な声帯粘膜の動きを定性的に記述しなければならない。更に、一部または全てまたは所定の部位の細かな声帯粘膜の動きを個別的に識別することはできないなどの問題点を解決する必要があった。更に、喉頭ストロボスコープ映像は多分主観的に観察しなければならないため、正確に解釈する場合は熟練した経験者の判断が必要になっている。
【0005】
このような短所を克服するため、他の声帯振動の検査方法で線走査ビデオキモグラフィー(line scanning videokymography)技術が1996年シュベックなど(Svec JG、Schutte HK)により開発された。この方法は検査途中で検者の任意に選択された声帯の一部、すなわち1つの線走査に対して秒当たり約8000フレームの連続した線走査の動きに対する映像を得てモニターで表示する方法である。すなわち、
図1に示されるように、スリット(slit)を有する声帯の一部を高速撮影することで、その部分のみの動きを撮影する。しかし、この短所は声帯全体の観察ができなくて評価が一部分のみに限られることである。すなわち、被検者が一回発声する時、単に1つのラインに対するキモグラム(kymogram)のみが得られており、これを得る間に全体領域の動きを観察できないため、患者の動きなどによる歪みを正しく判断できる基準が存在しないなどの問題点があった
【0006】
更に、超高速撮影方法(ultra-high speed digital image)を利用して撮影した映像を再調整して、積層の線走査ビデオキモグラフィー(multi-line videokymography)を利用する方法もあるが、声帯全体が観察できない点はビデオキモグラフィーと同様で、特に考案された高価なCCDカメラなどの付加装置が必要であるため、現実的には使用が制限されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述の問題点に鑑みてなされている。本発明の目的は、声帯の一部ではなく声帯全体の振動状態をリアルタイムで抽出し、声帯全体の粘膜の運動状態を分析できる平面走査ビデオキモグラフィーシステム及びその分析方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するため、本発明による声帯粘膜の運動状態を分析するための平面走査ビデオキモグラフィーシステムは、声帯を観察する喉頭鏡、声帯を照射するための光源、喉頭鏡から観察された映像を録画及び保存するビデオカメラ、ビデオカメラから転送されるビデオ信号をデジタル映像信号に変換するイメージキャプチャー部、デジタル映像信号を保存する記憶部、記憶部の映像信号を分析してモニターに分析結果を表示させる制御部、及び記憶部の映像信号を分析する分析ソフトウェアを含むコンピュータ及び、撮影映像及び分析結果を表示するモニターを含む。
【0009】
好ましくは、ビデオカメラはローリングシャッターを具備し、声帯粘膜をスキャンすることで平面走査ビデオキモグラフィーが得られ、ビデオカメラはシャッタースピードを1/1000秒以上にすることができる。
【0010】
好ましくは、光源はキセノン(Xenon)連続光源である。
【0011】
本発明による平面走査ビデオキモグラフィーシステムに付随する声帯粘膜の運動状態の分析方法は、(a)喉頭鏡と光源、及びビデオカメラを利用して声帯の動きを撮影したキモグラム映像をイメージキャプチャー部により記憶部に記憶させる段階、(b)制御部が記憶部の所定個数の映像フレームをフレーム別に静止画面で構成して、モニターに表示し、使用者が観察しようとするフレームをマウスまたはキーボードで選択できるようにメニュー画面を構成して表示する段階、及び(c)分析ソフトウェアが映像を分析して観察された声帯に対する正規化された指標を表示する段階を含む。
【0012】
このとき、好ましくは、(a)段階で、発声しない状態で声帯の全体部位を撮影した後、"イ"または"エ"を発声させて、声帯振動部の全体部位の動きを撮影することができる。
【0013】
望ましくは、(c)段階は、正規化された指標として声紋の縦長さに対する平均声帯幅、声帯開放期間と全体期間の比率の声紋開放率、両側声帯の開かれる程度の差の非対称指数、基本周波数、振動強度、振動の規則性、粘膜波動、振動の対称性、外側境界模様、内側境界模様、周期異常、または声帯粘膜の振動消失を含む。
【発明の効果】
【0014】
前記のように、本発明によれば、すでに保存されたビデオ映像を分析する従来の方式と声帯の1つのラインのみを観察できるリアルタイム ラインスキャン方式を離れて、平面スキャン(2Dスキャン)ビデオキモグラフィーシステムを利用して、リアルタイムで声帯の全領域でのキモグラムを比較することができるため、声帯粘膜の運きに対する診断と今後の予後追跡が容易であるという効果がある。また平面キモグラム映像を保存して、検者がビデオを通して、映像を注意深く反復観察できて、もう少し正確で意味あるパラメーターの基本周波数、粘膜波動、振動の対称性、振動強度、振動の規則性、位相差、声帯粘膜の振動消失(absence of vibration of the vocal fold)、周辺環境に伴う干渉(interference of surroundings with the vocal folds)、声門閉鎖持続期間(duration of glottal closure)、左右非対称性(left-right asymmetry)、粘膜波動(presence of mucosal waves)、周期多様性(type of cycle-to-cycle variability)、左右非対称性(left-right asymmetry)、外側及び内側ピークの模様(shapes of the lateral and medial peaks)、周期異常(cycle aberrations)等の指標の客観的分析が可能になり、検査結果が保存できるという効果を有する。更に、本発明により正規化された指標群は声帯の振動状態を可視化かつ定量化することに役に立ち、喉頭機能の客観的評価が可能であるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、従来技術によるラインスキャニングビデオキモグラフィー(line scanning videokymography)の原理を説明するための概略図である。
【
図2】
図2は、従来技術によるラインスキャニングビデオキモグラフィーシステムにより撮影された映像画面を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の好ましい実施態様による平面走査ビデオキモグラフィー(2D scanning videokymography)システムの概略ブロック図である。
【
図4】
図4は、本発明で使用される平面スキャニングビデオキモグラフィーの原理を説明するための概略図で、声帯全体、すなわち平面スキャニング原理を示している。
【
図5】
図5は、本発明で使用される平面スキャニングビデオキモグラフィーの原理を説明するための概略図で、平面スキャニングされた声帯全体の映像を示している。
【
図6】
図6は、本発明の好ましい実施態様における平面走査ビデオキモグラフィーシステムによる声帯粘膜運動状態の分析方法を説明するための流れ図である。
【
図7】
図7は、健常者の喉頭内視鏡映像画面を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の平面走査ビデオキモグラフィーシステムにより撮影された正常成人男性の映像画面を示し、低音発声(low pitch voice)時を示す図である。
【
図9】
図9は、本発明の平面走査ビデオキモグラフィーシステムにより撮影された正常成人男性の映像画面を示し、正常発声(normal voice) 時を示す図である。
【
図10】
図10は、本発明の平面走査ビデオキモグラフィーシステムにより撮影された正常成人男性の映像画面を示し、仮声発声(falsetto voice)時を示す図である。
【
図11】
図11は、従来技術のラインスキャニングビデオキモグラフィー(a)と本発明の平面走査ビデオキモグラフィー(b)の比較映像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。しかし、以下の実施例は本技術分野で通常の知識を有する者に対して本発明が十分に理解できるように提供されることであるため、いろんな形態に変形されることができ、本発明の範囲が次に記述される実施例に限定されるものではない。
【0017】
図3は、本発明の好ましい実施態様の平面走査ビデオキモグラフィーシステムの概略的ブロック図を示している。本発明の好ましい実施例の声帯粘膜運動状態を分析するための平面走査ビデオキモグラフィー(2D scanning videokymography)システムは喉頭鏡(10)、光源(20)、ビデオカメラ(30)、コンピュータ(40)及び、モニター(50)を含む。
図3の構成において、喉頭鏡(10)は声帯を観察できる機構として、ビデオカメラ(30)と連結して、声帯の映像を撮影することができる。喉頭鏡は剛直形または屈曲形でもよい。
【0018】
ビデオカメラ(30)は喉頭鏡(10)で観察された映像を録画及び記憶するための装置である。本発明でビデオカメラは従来技術によるラインスキャニングキモグラフ方式ではなく、平面走査キモグラフを抽出する。
図4乃至
図5は、本発明で使用される平面スキャニングビデオキモグラフィーの原理を説明するための図である。
図4に示されるように、平面スキャニングビデオキモグラフィーのためにビデオカメラを停止状態にして移動スリットを通して、声帯粘膜をスキャンすることで声帯全体、すなわち、平面的なスキャニングができる。具体的には、
図5に示されるように、細いスリットシャッターが声帯映像の平面で移動し、フィルムはその間に露出されている。このような手順で得られた映像は喉頭の全体イメージに対して他の時間段階でキャプチャーした複数のイメージ行を順次一つの全体イメージにして見せるため、全体喉頭のダイナミックなイメージを示している。
【0019】
このため、ビデオカメラは高解像度を有し、ローリングシャッター(rolling shutter)を具備する。好ましくは、ビデオカメラはローリングシャッター方式のCMOSカメラモジュールを利用し、映像の解像度を高めるためにシャッタースピードは1/1000秒以上の高速に設定される。この場合、画面が非常に暗くなる可能性があるため、画面を明るくするために光源(20)として高感度及び高輝度の光源を使用している。好ましくは、声帯を照射する光源(20)として非常に明るい キセノン(Xenon)光源を使用する。更に、本発明は、光源(20)は従来のストロボスコープ方式で使用される単束光源(ストロボ光源)ではない連続光源を利用する。
【0020】
このような喉頭鏡(10)と光源(20)及び
ローリングシャッター方式によるビデオカメラ(30)を利用して、正常な人または声帯機能に異常がある患者を対象に安静状態で特定音("イ"あるいは"エ")を発声させて、声帯を撮影する。これにより、所定のフォーマット、例えばAVI方式で録画した映像で連続した所定の個数、例えば秒当たり30フレームの動画を録画・再生して出力する。
【0021】
コンピュータ(40)は汎用のパーソナルコンピュータとして、イメージキャプチャー部(42)、記憶部(44)、制御部(46)、及び分析ソフトウェア(48)を含む。イメージキャプチャー部(42)はイメージキャプチャーボード(image capture board)の形態として、ビデオカメラ(30)から転送されるビデオ信号をコンピュータ(40)が処理するデジタル映像信号に変換する役割をし、各種の映像編集などが容易な汎用の映像信号処理ボードを使用する。通常、スロット形態でコンピュータ(40)の本体基板の拡張バスに挿入して使用できる補助基板形態を利用することができる。
【0022】
コンピュータ(40)の制御部(46)はイメージキャプチャー部(42)から転送された連続する秒当たり30フレームのデジタル映像信号を記憶部(44)に記憶させた後、声帯粘膜運動状態を分析するために分析ソフトウェア(48)を制御する。すなわち、制御部(46)は記憶部(44)に移動された映像信号を分析して、モニター(50)に分析結果である声帯の振動状態を表面化し、かつ精密化された臨床指標を表示させる。
【0023】
次に、上述の構成を有する平面走査ビデオキモグラフィー(2D scanning videokymography)システムで本発明の好ましい実施態様による声帯粘膜運動状態の分析方法について図面を用いて詳細に説明する。
【0024】
図6は本発明の好ましい実施態様における平面走査ビデオキモグラフィーシステムによる声帯粘膜運動状態の分析方法を説明するための流れ図である。
図6に示すように、先に喉頭鏡(10)と光源(20)、及びローリングシャッター方式のビデオカメラ(30)を利用して、声帯の動きを撮影したキモグラム映像をイメージキャプチャー部(42)を通じてコンピュータ(40)の記憶部(44)に保存する(第210段階)。
【0025】
声帯粘膜運動状態を分析するために、例えば、発声しない状態で声帯の全部位を撮影した後、"イ"あるいは"エ"を発声させて、声帯振動部の全部位の動きを撮影して、平面走査キモグラムに変換させることができる。
【0026】
次に、コンピュータ(40)の制御部(46)は記憶部(44)の所定個数のフレームをフレーム別に停止画面で構成してモニターに表示し、使用者が観察を必要とするフレームをマウスまたはキーボードで選択できるようにメニュー画面を構成して表示する(第220段階)。
【0027】
次に、コンピュータ(40)の分析ソフトウェア(48)が映像を分析して観察された声帯に対して正規化された各種の指標、例えば、声紋の縦軸長さに対する平均声帯の幅、声帯開放期間と全体期間の比率の声開放率、両側声帯の開かれる程度の差の非対称指数、基本周波数、振動強度、振動規則性、振動対称性、粘膜波動、外側境界模様、内側境界模様、周期異常、声帯粘膜の振動消失などを正規化して、表示する(第230段階)。これを利用して客観的な状態評価を行うことができる。
【0028】
以下、
図7〜
図11に示すように、本発明の平面走査ビデオキモグラフィーシステムにより得られた映像を従来の技術に比べて説明する。
【0029】
図7は正常な人の喉頭内視鏡映像画面を示し、
図8乃至
図10は本発明の平面走査ビデオキモグラフィーシステムにより撮影された映像画面を示す。
図8乃至
図10は正常成人男の発声時の平面走査キモグラム映像画面で、デジタル(NTSC映像信号で1秒当たり30個のフレーム、すなわち60フィールドで構成されている)形式で保存されたビデオ映像の連続した30フレームをイメージキャプチャー部によりコンピュータ記憶部に記憶させた後、モニターに表示している。
【0030】
具体的には、
図8は正常男性の低音発声時の平面走査キモグラム映像画面を示し、
図9は正常男性の正常発声時の平面走査キモグラム映像画面を示し、
図10は正常男性の仮声(falsetto voice)発声時の平面走査キモグラム映像画面を示している。
【0031】
図11は、従来技術によるラインスキャニングビデオキモグラフィー(a)と本発明による平面走査ビデオキモグラフィー(b)を比較する映像を示している。
【0032】
図11(a)は、声帯の一部分の動きを撮影するラインスキャンキモグラフィーである。従来技術による映像(a)の短所は声帯全体が観察できず、一部分についてしか評価できないことである。すなわち、被検者が一回発声する場合、単に1つのラインに対するキモグラム(kymogram)のみが得られており、これを得る間に全体領域の動きを観察できないため、患者の動きなどによる歪みを正しく判断できる基準が存在しないなどの問題点があった。
図11(b)は、声帯全体の部分に対する動きを撮影する本発明における平面走査キモグラフィー映像である。(b)映像により(a)映像の短所を補完し、声帯全体の動きをリアルタイムで観察できるため、患者の動きなどによる歪みを最小にすることができる。