(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6118946
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】改善された殺外部寄生生物性製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/415 20060101AFI20170410BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20170410BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20170410BHJP
A61P 33/14 20060101ALI20170410BHJP
A01N 43/56 20060101ALI20170410BHJP
A01N 25/22 20060101ALI20170410BHJP
A01P 7/04 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
A61K31/415
A61K47/22
A61K47/10
A61P33/14
A01N43/56 D
A01N25/22
A01P7/04
【請求項の数】18
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-508972(P2016-508972)
(86)(22)【出願日】2014年4月11日
(65)【公表番号】特表2016-521271(P2016-521271A)
(43)【公表日】2016年7月21日
(86)【国際出願番号】US2014033713
(87)【国際公開番号】WO2014172186
(87)【国際公開日】20141023
【審査請求日】2015年12月10日
(31)【優先権主張番号】61/812,905
(32)【優先日】2013年4月17日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/242,178
(32)【優先日】2014年4月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/242,226
(32)【優先日】2014年4月1日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596137069
【氏名又は名称】ザ ハーツ マウンテン コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169971
【弁理士】
【氏名又は名称】菊田 尚子
(72)【発明者】
【氏名】ヘムザース,ランス,ダブリュ
(72)【発明者】
【氏名】ゴールドマン,キース
(72)【発明者】
【氏名】マクガーヴェイ,エレン
【審査官】
常見 優
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−539090(JP,A)
【文献】
米国特許第06090751(US,A)
【文献】
特開平09−249502(JP,A)
【文献】
特開2012−102133(JP,A)
【文献】
特開平07−242510(JP,A)
【文献】
特表2012−521978(JP,A)
【文献】
国際公開第1998/006780(WO,A1)
【文献】
特開平09−169644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00−33/44
A61P 1/00−43/00
A01N 1/00−55/08
57/00−65/48
A01P 1/00−23/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物における外部寄生生物の寄生を治療するための組成物であって、(a)一般名フィプロニルのN-フェニルピラゾール、(b)結晶化阻害剤としてN-オクチルピロリドン、及び(c)少なくとも1種の有機溶媒を含み、前記組成物が、ネオニコチノイド、クロラントラニリプロール及びシアントラニリプロールを含まない、前記組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種の有機溶媒が、ジエチレングリコールモノエチルエーテルを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記N-フェニルピラゾールが、組成物総量の1重量%〜20重量%を構成する量で存在し、前記結晶化阻害剤が、組成物総量の1重量%〜90重量%を構成する量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記N-フェニルピラゾールが、組成物総量の7重量%〜11重量%を構成する量で存在し、前記結晶化阻害剤が、組成物総量の10重量%〜20重量%を構成する量で存在する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種の有機溶媒が、アセトン、ベンジルアルコール、ブチルジグリコール、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、エタノール、イソプロパノール、メタノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール、環状カーボネート、ラクトン、及び前記溶媒の少なくとも2種の混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
エタノール、イソプロパノール、及びメタノールからなる群から選択される、少なくとも1種の有機共溶媒をさらに含み、ここで、前記少なくとも1種の有機溶媒は、前記少なくとも1種の有機共溶媒と1:99〜99:1の範囲の比率で存在する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1種の有機溶媒が、ジエチレングリコールモノエチルエーテルを含み、前記少なくとも1種の有機共溶媒が、エタノールを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも1種の昆虫成長制御剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記有機溶媒も、N-オクチルピロリドンであり、前記組成物が追加の溶媒又は追加の結晶化阻害剤を含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が、N-メチルピロリドン及び2-ピロリドンを含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
動物における外部寄生生物の寄生を治療するための組成物であって、(a)一般名フィプロニルのN-フェニルピラゾール、(b)N-オクチルピロリドン、及び(c)少なくとも1種の有機溶媒を含む、前記組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1種の有機溶媒が、ジエチレングリコールモノエチルエーテルを含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記N-フェニルピラゾールが、組成物総量の7.0重量%〜11.0重量%を構成する量で存在し、前記N-オクチルピロリドンが、組成物総量の10重量%〜20重量%を構成する量で存在する、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記少なくとも1種の有機溶媒が、アセトン、ベンジルアルコール、ブチルジグリコール、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、エタノール、イソプロパノール、メタノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール、環状カーボネート、ラクトン、及び前記溶媒の少なくとも2種の混合物からなる群から選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
(a)前記N-フェニルピラゾールが、組成物総量の1重量%〜20重量%を構成する量で存在し、(b)前記N-オクチルピロリドンが、組成物総量の1重量%〜90重量%を構成する量で存在する、請求項11に記載の組成物。
【請求項16】
少なくとも1種の昆虫成長制御剤をさらに含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項17】
前記少なくとも1種の有機溶媒がジエチレングリコールモノエチルエーテルであり、前記組成物が、N-メチルピロリドン及び2-ピロリドンを含まない、請求項11に記載の組成物。
【請求項18】
前記有機溶媒が、組成物総量の67重量%〜85重量%を構成する量で存在する、請求項13に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、35 U.S.C. セクション119(e)の下、先の同時係属中の2013年4月17日に出願された米国仮特許出願第61/812,905号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、広くは、寄生生物に寄生された動物を治療するための組成物及び方法に関し、特には、一般の外部寄生生物に寄生されたコンパニオンアニマルを治療するのに有用な局所用組成物に関する。より具体的には、本発明は、ノミに寄生された家庭用ペットを治療するための改善された殺外部寄生生物性組成物、それを使用する方法、及びそれを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
コンパニオンアニマル、特に家庭用ペット、例えばイヌやネコの、外部寄生生物、例えばノミ、マダニなど(これらは、吸血動物として(すなわち、動物の血を吸引することによって)生きている)による寄生は、非常に望ましくない。先行技術では、このような寄生を治療するために、多数の即時使用可能な局所用製剤及び組成物を開発させてきており、これらの多くが、動物の皮膚上への付着(deposition)により適用される「スポットオン」又は「ポアオン」型製剤であり、これらは、N-フェニルピラゾール、特に、1-[2,6-Cl
2-4-CF
3-フェニル]-3-CN-4-[SO-CF
3]-5-NH
2-ピラゾール(一般名、フィプロニル)を活性成分として含有する。フィプロニルは、ノミやマダニの成虫を防除及び/又は除去するのに特に有効である殺虫剤であり、局所的に適用される場合、イヌやネコなどのコンパニオンアニマル上に使用するために許容できるだけの安全性を有する。
【0004】
エシュガレー(Etchegaray)による米国特許第6,395,765号(これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)は、特に、(a)活性成分としてのN-フェニルピラゾール、例えばフィプロニルを、不活性な、(b)結晶化阻害剤、(c)有機溶媒及び(d)有機共溶媒を含む不活性成分と共に含む、殺外部寄生生物性組成物を記載し、特許請求している。様々な特定の結晶化阻害剤、有機溶媒及び有機共溶媒が記載されている。
【0005】
特に、好ましい結晶化阻害剤系は、重合性膜形成剤と界面活性剤との組み合わせであると記載され、該重合性膜形成剤は、最も好ましいものとして、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール及び酢酸ビニルとビニルピロリドンの共重合体が例示され、該界面活性剤は、最も好ましいものとして、ポリオキシエチレン化されたソルビタンエステル、特にポリソルベート80が例示されている。これらの結晶化阻害剤は、膜マトリックスを形成することにより作用し、これは、場合により小さな結晶を形成させることもあるが、それらの続いて起こる成長を阻害するものとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,395,765号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この種の結晶化阻害剤系を含む殺有害生物性組成物は有効ではあるが、ノミなどの外部寄生生物の根絶率が最適でないことが判明しており、異なるクラスの結晶化阻害剤、特に重合性膜形成剤ではないものを利用することにより改善される可能性がある。
【0008】
したがって、本発明の主要な目的は、増強された効能を有する、コンパニオンアニマルの治療及び保護のための殺外部寄生生物性製剤を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、使用するのが容易である殺外部寄生生物性組成物を提供することである。
【0010】
本発明のよりさらなる目的は、現在利用可能な組成物を使用することにより達成することができる寄生生物の致死率よりも高い致死率を有する殺外部寄生生物性製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のこれらの目的及び別の目的は、驚くべきことに、著しく増強された死滅速度をもたらす殺外部寄生生物性製剤を提供することにより達成される。改善された製剤は、殺有害生物活性成分として、殺外部寄生生物剤、好ましくはフィプロニル、並びにアルキル置換ピロリドンからなる群から選択される結晶化阻害剤、及び任意に1種又は複数種の有機溶媒及び/又は共溶媒を含む。
【0012】
結晶化阻害剤は、N-オクチルピロリドンが好ましく、N-オクチルピロリドンを、(活性成分を除く)殺外部寄生生物性組成物に対して0.1%〜100%含むことが好ましい。場合により、組成物はまた、1種又は複数種の追加の溶媒、並びに1種又は複数種の適切な担体、増量剤、及び/又は賦形剤を含み得る。
【0013】
本発明の方法は、改善された殺外部寄生生物性組成物をスプレーオン、ストライプオン、又はスポットオン型製剤として、動物の皮膚に、好ましくは局所的な方式で、投与することによる、コンパニオンアニマルのための寄生生物を防除する方法を含む。
【0014】
したがって、本発明の1つの態様は一般に、1種又は複数種の外部寄生生物の寄生に苦しむコンパニオンアニマルを治療するための改善された製剤に関する。この態様の1つの実施形態は、活性成分、例えばフィプロニルを、N-オクチルピロリドンを含む結晶化阻害剤と組み合わせて含む製剤を提供する。
【0015】
本発明の別の態様は一般に、1種又は複数種の外部寄生生物の寄生に苦しむコンパニオンアニマルを治療するための改善された方法に関する。本発明のこの態様の1つの実施形態では、寄生された動物に殺外部寄生生物性製剤を投与する方法が提供される。本発明のこの態様の別の実施形態では、殺外部寄生生物性製剤を製造する方法が提供される。
【0016】
本発明の特徴は、組成物が同じ殺外部寄生生物剤を含有する従来の組成物と比較して、著しく改善された外部寄生生物の死滅率をもたらすことである。死滅率は、従来の製剤を使用した場合と比較して、動物に適用した直後の初期にだけ増強されるのではなく、最初の治療の後でも、より長い期間、高い死滅率が維持される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明におけるそれぞれの態様の好ましい別の実施形態を以下にさらに記載する。
本発明は、アルキル置換ピロリドン、特に、N-オクチルピロリドンが、殺外部寄生生物性組成物において活性成分であるフィプロニルと組み合わせて使用される場合に、フィプロニルの活性を、より迅速、かつ持続したものへと助長するという発見に基づく。いかなる特定の理論にも束縛されることなく、この増強された活性は、フィプロニルの溶解性がN-オクチルピロリドン中で改善され、その結果、動物上に存在している間、活性成分のアベイラビリティ(利用能)が増強され、フィプロニルの節足動物のクチクラに浸透する性能を増強し、それにより、昆虫の中枢神経系の破壊によるフィプロニルの殺有害生物作用がより迅速、かつ持続したものになると考えられる。
【0018】
本発明の1つの実施形態にしたがって、組成物は、殺有害生物活性成分としてのフィプロニルを、好ましい結晶化阻害剤であるN-オクチルピロリドン単独(すなわち、殺有害生物活性成分のための追加溶媒を全く含まない)と組み合わせて含む。一般に、組成物は、組成物総量の約1重量%〜約20重量%の量であるフィプロニルを含有するべきであり、さらに組成物は、組成物総量の約80重量%〜約99重量%の量であるN-オクチルピロリドンを含有するべきである。
【0019】
本発明のより好ましい別の実施形態にしたがって、組成物は、殺有害生物活性成分としてのフィプロニルを、好ましい結晶化阻害剤であるN-オクチルピロリドン及び少なくとも1種の有機溶媒と組み合わせて含む。一般に、この組成物は、組成物総量の約1重量%〜約20重量%の量であるフィプロニルを含有するべきであり、さらに組成物は、組成物総量の約1重量%〜約90重量%の量であるN-オクチルピロリドンを含有するべきである。有機溶媒は、選択されたフィプロニル及びN-オクチルピロリドンの重量パーセントによって定まる、組成物100%に対する補数を表す、組成物総量における重量パーセントで存在し得る。
【0020】
より好ましくは、組成物は、組成物総量の約5.0重量%〜約11.0重量%の量であるフィプロニル、及び組成物総量の約10重量%〜約20重量%の量であるN-オクチルピロリドンを含む。最も好ましくは、組成物は、組成物総量の約10重量%の量であるフィプロニルを、組成物総量の約15%の量であるN-オクチルピロリドンと組み合わせて含む。
【0021】
N-オクチルピロリドンは本発明の好ましい結晶化阻害剤ではあるが、本発明の別の実施形態において、別のアルキル置換ピロリドンが結晶化阻害剤として役に立ち得る。好ましいアルキル置換ピロリドンの例は、N-メチルピロリドン及びN-ドデシルピロリドンを含む。これらのアルキル置換ピロリドンのいずれもポリマーではなく、それらのいずれも膜形成性ではない。
【0022】
選択される有機溶媒は、10〜35、好ましくは20〜30の比誘電率を有するべきである。使用され得る有機溶媒の中では、以下のもの:アセトン、ベンジルアルコール、ブチルジグリコール、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、エタノール、イソプロパノール、メタノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール、環状カーボネート及びラクトンが好ましく、場合により、これらの溶媒の少なくとも2種類の混合物を利用してもよい。最も好ましくは、有機溶媒はジエチレングリコールモノエチルエーテルを含む。
【0023】
場合により、組成物はまた、100℃未満、好ましくは80℃未満の沸点を有し、10〜40、好ましくは20〜30の比誘電率を有する、有機共溶媒を含有してもよい。有機共溶媒は揮発性であるべきであり、そのため、乾燥促進剤として作用し、水及び/又は上記有機溶媒と混和性であるべきである。有機共溶媒を含む場合、有機溶媒及び有機共溶媒は、選択されたフィプロニル及びN-オクチルピロリドンの重量パーセントによって定まる、組成物100%に対する補数を表す、組成物総量における重量パーセントで存在し得る。さらに、有機溶媒は、組成物総量において、有機共溶媒と約1:99〜約99:1の範囲の比率で存在し得る。使用され得る有機溶媒の中では、以下のもの:エタノール、イソプロパノール、及びメタノールが好ましく、場合により、これらの共溶媒の2種以上を利用してもよい。最も好ましくは、有機共溶媒はエタノールを含む。
【0024】
場合により、組成物はまた、当業者に明らかなように、別の追加成分、例えば担体、増量剤、及び/又は賦形剤を含有してもよく、それらの1種又は複数種を加工及び/又は審美的理由により添加してもよい。このような追加成分の例は、担体又は増量剤、例えば、サフラワー油、コーン油、ゴマ油、グリセリン、グリコール、エステル、アルコール、環状カーボネート、ラクトン、さらには水を含む。サフラワー油は、ノミのクチクラの外側表面上に存在し得るワックス状及び油性の物質の可溶化を助け、したがって、フィプロニルの浸透をさらにより助長し、それにより、フィプロニルが昆虫の中枢神経系に作用することができる速度をさらに増強するので、サフラワー油が本発明に使用するのに特に好ましい天然担体/増量剤である。
【0025】
一般に、本発明の組成物は、構成成分を一緒に、単に混合することによって製造することができる。好ましくは、殺有害生物活性成分(例えば、フィプロニル)を、単一の液体成分、又は2種以上の液体成分の組み合わせのいずれかに加える。全てのフィプロニルが可溶化するまで、単に撹拌することにより成分を混合する。その後、得られた溶液を、当業者に周知の技術に従って、コンパニオンアニマルへの投与用に便利なスプレーオン、又はスポットオン型組成物として製造することができる。
【0026】
殺有害生物活性成分としてのフィプロニル及び結晶化阻害剤としてのN-オクチルピロリドンを含有する以下の製剤例は、説明の目的のみに示すものであり、本発明の範囲を限定して解釈することを何ら意図するものではない。
【実施例】
【0027】
実施例1
本発明の好ましい実施形態に一致する製剤Iは、74.95重量%のジエチレングリコールモノエチルエーテルと15重量%のN-オクチルピロリドンとを混合し、その後、10.05重量%の工業用フィプロニルを添加し、フィプロニルが完全に溶解するまで混合することによって調製した。
【0028】
実施例2
本発明の別の実施形態に一致する製剤IIは、66.95重量%のジエチレングリコールモノエチルエーテルと15重量%のN-オクチルピロリドンとを混合し、その後、10.05重量%の工業用フィプロニルを添加し、フィプロニルが完全に溶解するまで混合することによって調製した。その後、組成物総量の8重量%となるのに十分なエタノールを添加し、その後、さらに混合して製剤を完成させた。
【0029】
実施例3
本発明のさらに別の実施形態に一致する製剤IIIは、72.95重量%のジエチレングリコールモノエチルエーテルと15重量%のN-オクチルピロリドンとを混合し、その後、10.05重量%の工業用フィプロニルを添加し、フィプロニルが完全に溶解するまで混合することによって調製した。その後、組成物総量の2重量%となるのに十分なサフラワー油を添加し、その後、さらに混合して製剤を完成させた。
【0030】
現在市販されている2種類の殺外部寄生生物性製品(その両方が殺有害生物活性成分としてフィプロニルを含有する)と比較した、本発明の効果を実証するインビボ実験での死滅速度の試験データを、以下の表1に示す。
【0031】
試験は4つの動物群で行い、各群8匹のイヌから構成され、イヌの体重は9.3〜48.1 lbs(ポンド)の範囲であった。1つの群は対照として未治療のままであり、一方で、他の3つの群のイヌそれぞれについて、3種の試験品の内の1種による治療を割り当てた。
【0032】
評価した試験品は、商標Pet Armor(登録商標)のもと市販されている製品、商標Frontline Top Spot(登録商標)のもと市販されている製品、及び本発明の好ましい組成物(前述の実施例1に従い調製した製剤Iを使用)を含んだ。これらの3つの試験品は全て、純粋なフィプロニルを9.7%含有していた。
【0033】
試験0日において、治療に指定した3つの群の試験イヌに、以下の用量を使用して試験品を適用した:体重が22 lbsまでのイヌには0.67 mlの投薬量を投与し、体重が23〜44 lbsのイヌには1.34 mlの投薬量を投与し、体重が45〜88 lbsのイヌには2.68 mlの投薬量を投与した。Pet Armor(登録商標)及びFrontline Top Spot(登録商標)試験品は、商品ラベルの指示に従い、スポット型治療を使用して適用し、一方で、本発明の好ましい組成物を含む試験品は、適用の好ましい代替方法としてFrontline Top Spot(登録商標)試験品の商品ラベルの指示で特定されている、ストライプ型(stripe)治療を使用して適用した。
【0034】
試験品の適用から48時間後、それぞれの試験イヌに100匹のノミを置いた;ここで、ノミは、試験品を適用した部位から離れた部位に置いた。ノミの暴露から2時間後、試験イヌを櫛でとかし、全てのノミを取り除き、生きているノミと死んでいるノミの両方のノミの数を記録した。ノミの減少率(% RED.)を、試験イヌに対して、未治療のイヌのノミのカウント数に対する治療したイヌのノミのカウント数で計算した。
【0035】
その後1週間ごとに、試験イヌに再度ノミを寄生させ、ノミの暴露から2時間後に生きているノミの数を数えた。試験品の適用後4週間にわたって、ノミの減少率を記録した。
【表1】
【0036】
表1に示すデータは、4週間の期間にわたって本発明により得られたノミの死滅率が、同じ期間での2種類の市販のフィプロニル含有殺外部寄生生物性製品により得られたノミの死滅率を大きく超えることを示している。特に、本発明の製剤は、治療直後に高い死滅率を提供するだけでなく、本発明の製剤は、最初の治療から3週間後においても、90%よりも大きい死滅率を維持し、これは、従来の製剤によっては達成されない。
【0037】
フィプロニルは、殺有害生物活性成分として好ましいが、アルキル置換ピロリドン、特に、N-オクチルピロリドンは、結晶化阻害剤として、外部寄生生物に対して活性であることが知られる別の殺有害生物性成分、例えば、別のN-フェニルピラゾール(例えば、アセトプロール、エチプロール、フルフィプロール、ピラフルプロール、ピリプロール、ピロラン、バニリプロール)、天然ピレトリン、合成ピレスロイド(例えば、ペルメトリン、エトフェンプロックス、フェノトリン、フルメトリン、テトラメトリン)、昆虫成長制御剤(例えば、メトプレン、ピリプロキシフェン、ジミリン、ノバルロン、ルフェヌロン、エトキサゾール)、共力剤(例えば、PBO、n-オクチルビシクロヘプテンジカルボキシイミド)、有機ホスフェート、カルバメート、ジアミド(クロラントラニリプロール及びシアントラニリプロールを特に除外する)、オキサジアジン(例えば、インドキサカルブ)、大環状ラクトン(例えば、アベルメクチン)、ホルムアミジン(例えば、アミトラズ)、バイオ殺有害生物剤、及び植物抽出物、と組み合わせて、それらの再結晶を阻止し、それにより同様にそれらの死滅速度を増強するために利用することができる。アルキル置換ピロリドンを、1種又は複数種のこれらの別の殺有害生物活性成分と一緒に含む組成物は、必要であるか、又は望まれる場合には、好適な安定剤、例えばブチルヒドロキシトルエン(BHT)などをさらに含んでもよい。しかしながら、ネオニコチノイド(例えば、イミダクロプリド、チアクロプリド、ジノテフアン、チアメトキサム)は殺有害生物活性成分のクラスであり、外部寄生生物に対して活性であることが知られているが、本発明の範囲から特に除外される。
【0038】
ここまで、本発明の好ましい実施形態であると考えられるものを記載してきたが、本明細書に記載した実施形態が説明のためであり、限定するものでないことは当業者にとって明らかである。記載した実施形態の様々な変形、並びに本発明の代替の実施形態が、本発明の明細書を参照することにより当業者に明らかになる。したがって、本明細書に記載される実施形態において、別添の特許請求の範囲に記載した本発明の真の精神及び範囲から逸脱することなく様々な変更及び変形を行うことができるものと理解され、別添の特許請求の範囲がこのような変形又は実施形態に及ぶものと考えられる。