(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のブロアー機構は、前記第1の気体流が前記ボンディング用開口に入り込まない第1の角度に前記第1の気体流を形成するものである、請求項1または2に記載のボンディング装置。
第2のブロワー機構は、周囲の気体に対する障壁となるような第2の角度に前記第2の気体流を形成するものである、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のボンディング装置。
前記第2のブロアー機構は、前記ボンディング用開口の幅より広い範囲に前記第2の気体流を形成するものである、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のボンディング装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本願発明者らの観察によると、陽炎にエアーを吹き付ける際に周囲の加熱された空気が負圧により巻き込まれて、撮影部が基板を撮影する空間である撮影空間に入り込んで別の陽炎を発生させてしまい、撮影部による画像に揺らぎを生じていることが判った。画像に揺らぎが発生すると、ボンディング対象物の認識精度を悪化させボンディング位置に誤差が生ずるため、結果としてスループットを悪化させるといった問題を生ずるのである。
【0007】
そこで本発明は、上述の問題点に鑑み、基板やリードフレーム等のボンディング対象物を加熱することによって生じる陽炎の影響を抑制することによって、ボンディング精度を向上させることを課題のひとつとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の実施形態の一態様であるボンディング装置は、ボンディング対象物の酸化を防止する密閉炉を有するボンディング装置であって、上記密閉炉に形成されているボンディング用開口から上記ボンディング対象を認識するための撮影空間を横切るように第1の気体流を形成する第1のブロアー機構と、上記撮影空間に沿って第2の気体流を形成する第2のブロアー機構と、を備え、上記第2のブロアー機構は、上記第1の気体流によって周囲の気体が上記撮影空間に巻き込まれることを抑制するように上記第2の気体流による障壁を形成することを特徴とする。
【0009】
また本発明の実施形態の一態様であるボンディング方法は、ボンディング対象物の酸化を防止する密閉炉を有するボンディング装置に適用され、上記密閉炉に形成されているボンディング用開口から上記ボンディング対象を認識するための撮影空間を横切るように第1の気体流を形成する第1のブロアーステップと、上記撮影空間に沿って第2の気体流を形成する第2のブロアーステップと、を備え、上記第2のブロアーステップは、上記第1の気体流によって周囲の気体が上記撮影空間に巻き込まれることを抑制するように上記第2の気体流による障壁を形成することを特徴とする。
【0010】
本実施形態に係る上記ボンディング装置は、所望により以下の構成を備えていてもよい。
(2)例えば、上記ボンディング用開口から上記ボンディング対象物のボンディングを行うボンディングアームを備え、上記ボンディングアームは、上記第1の気体流の乱れを抑制する形状を備えるようにしてもよい。
【0011】
(3)例えば、上記第1のブロアー機構は、上記第1の気体流が上記ボンディング用開口に入り込まない第1の角度に上記第1の気体流を形成するものとしてもよい。
【0012】
(4)例えば、上記第1の角度は、上記ボンディング用開口の開口面から15°〜80°の範囲としてもよい。
【0013】
(5)例えば、上記第1のブロワー機構は、上記密閉炉の中の上記ボンディング対象物の搬送方向と反対方向に向けて上記第1の気体流を形成するものとしてもよい。
【0014】
(6)例えば、上記第2のブロワー機構は、周囲の気体に対する障壁となるような第2の角度に上記第2の気体流を形成するものとしてもよい。
【0015】
(7)例えば、上記第2の角度は、上記ボンディング用開口の開口面から70°〜135°の範囲としてもよい。
【0016】
(8)例えば、上記第2のブロアー機構は、上記ボンディング用開口の幅より広い範囲に上記第2の気体流を形成するものとしてもよい。
【0017】
(9)例えば、上記第2の気体流の流速は、上記第1の気体流の流速より小さいこととしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、撮影空間を横切るように第1の気体流が形成されるのでボンディング用開口から吹き出す陽炎を撮影空間から排除するとともに、撮影空間に沿って第2の気体流による障壁が形成されるので、第1の気体流によって周囲の気体が撮影空間に巻き込まれることを抑制することができ、撮影空間内へ陽炎が入り込む可能性を大幅に抑制し、撮影画像に揺らぎが発生することを防止可能である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はその要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。例えば、以下の実施形態における「…部」や「…機構」は、総てをハードウェアで構成しても、総てをコンピューターに所定のソフトウェアプログラムを実行させることにより機能的に実現してもよい。また一部をハードウェアで構成し、残りをソフトウェアプログラムの実行により機能的に実現するように構成してもよい。さらに、必要に応じて示す上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図示の表示に基づくものとする。さらにまた、図面における各種の寸法比率は、その図示の比率に限定されるものではない。
【0021】
(構成)
図1に、本発明の実施形態に係るボンディング装置の概要を説明する斜視図を示す。
図1に示すように、本実施形態に係るボンディング装置1は、密閉炉20、撮影部14、およびボンディングアーム16等を概略備えて構成されている。
【0022】
密閉炉20は、ボンディング対象物の酸化を防止する酸化防止手段であり、不活性ガスが供給される搬送通路25にベルト22が収容されており、ボンディング対象物32を載置したベルト22が移動することによりボンディング対象物32を搬送可能に構成されている。ボンディング対象物は、例えばリードフレームや基板であるが、本実施形態では、ボンディング対象物として、複数のチップ34からなるリードフレーム32を例示する。チップ34は、半導体チップ等である。なお、
図1では、密閉炉20の上部カバーの図示を一部省略してあるため、移動中のベルト22および搬送中のリードフレーム32が見えるように図示されている。密閉炉20には、上面にボンディング用開口26が設けられており、当該開口を通して内部を搬送されるリードフレーム32の各チップ34を観察したり物理的に処理したりすることが可能になっている。
【0023】
図2に密閉炉20のボンディング用開口26付近の拡大斜視図・部分断面図を示し、
図3に密閉炉20の概念断面図を示す。
図2および
図3に示すように、密閉炉20は、搬送通路25を挟んで上部と下部とに分けて構成されており、密閉炉20の上部には上記ボンディング用開口26が形成されており、密閉炉20の下部には加熱部28が敷設されている。
【0024】
具体的に
図2に示すように、密閉炉20の上部には、不活性ガス流通路20hが設けられおり、通路の下面に搬送通路25と貫通するように複数の孔が設けられている。
図3に示すように、密閉炉20には、外部の不活性ガス供給部23(
図4参照)からガス導入口24を介して不活性ガス流通路20hに不活性ガスが供給され、上記複数の孔を介して搬送通路25に不活性ガスが供給されるようになっている。供給された不活性ガスは、
図2および
図3に示す矢印の方向に流れてボンディング用開口26から吹き出るようになっている。
【0025】
不活性ガスが流通する密閉炉20の搬送通路25では、外部の搬送機構21(
図4参照)により駆動されるベルト22がボンディング対象となるリードフレーム32を搬送するようになっている。リードフレーム32が搬送される搬送通路25は上述の機構により不活性ガスが流通しているので、酸素等の酸化剤ガスがボンディング用開口26を介して搬送通路25へ入り込むことが防止される。よって、ボンディング対象物であるリードフレーム32の酸化を効果的に防止することができるようになっている。
【0026】
また
図2および
図3に示すように、密閉炉20の下部に敷設された加熱部28は、搬送通路25を搬送されるリードフレーム32を加熱可能に設けられている。リードフレーム32は、加熱されることにより還元作用が促進され、酸化の進行が抑制されるようになっている。
【0027】
なお、ボンディング用開口26には、抑え部材27が取り付けられている。抑え部材27は、複数のスリットを備えており、不活性ガスが吹き出すための経路を与えるとともに、リードフレーム32を最小限度露出させるようになっている。
【0028】
図1に戻り、密閉炉20の上面であってボンディング用開口26の近傍には、本発明に係る第1ブロアー機構11の一部である第1パイプ11pと第2ブロアー機構12の一部である第2パイプ12pとが設けられている。第1ブロアー機構11と第2ブロアー機構12とについては、後ほど詳述する。
【0029】
撮影部14は、CCD(Charge Coupled Device)カメラ等の2次元撮像手段であり、本実施形態では位置検出手段として機能する。撮影部14は、撮影部駆動機構13によって上下方向および左右方向に移動可能に設けられており、ボンディング用開口26上に搬送されて、開口を通してリードフレーム32のいずれかのチップ34を撮影して、ボンディング対象となるチップ34の位置を検出するようになっている。
【0030】
ボンディングアーム16は、位置検出されたチップ34に対してボンディングを行うボンディングツールである。ボンディングアーム16は、ボンディングアーム駆動機構15により上下方向および左右方向に移動可能に設けられており、ボンディング用開口26上に搬送されて、開口を通して位置が検出されたチップ34に対してボンディングを実施するようになっている。
【0031】
図4にボンディング装置10の機能を説明するブロック図を示す。
図4に示すように、ボンディング装置10は、機能ブロックとして、ブロワー制御部100とボンディング制御部200とを備える。これらの制御部は、マイクロプロセッサを備えるコンピューター装置が所定のソフトウェアプログラムを実行することにより機能的に実現されるものであり、本発明のボンディング方法を含むものである。
【0032】
ブロワー制御部100は、第1ブロワー機構11および第2ブロワー機構12を制御する機能ブロックである。第1ブロワー機構11は、第1パイプ11p(
図1参照)、図示しない第1コンプレッサ、および第1コンプレッサから第1パイプ11pへ空気を供給する第1供給路17−1(
図6参照)等から構成される。第2ブロワー機構12は、第2パイプ12p(
図1参照)、図示しない第2コンプレッサ、および第2コンプレッサから第2パイプ12pへ空気を供給する第2供給路17−2(
図6参照)等から構成される。
【0033】
ボンディング制御部200は、撮影部駆動機構13、ボンディングアーム駆動機構15、搬送機構21、不活性ガス供給部23、および加熱部28を制御する機能ブロックである。具体的に、ボンディング制御部200は、撮影部駆動機構13に制御信号を供給して、撮影部駆動機構13に設けられた撮影部14を密閉炉20のボンディング用開口26に対して相対的に移動させ、ボンディング用開口26を通じて観察されるリードフレーム32の一つのチップ34上に撮影部14を位置させる。そして撮影部14が撮影したチップ34の画像に基づいて当該チップ34の位置を検出する。またボンディング制御部200は、ボンディングアーム駆動機構15に制御信号を供給して、ボンディングアーム駆動機構15に設けられたボンディングアーム16を検出されたチップ34の位置に対応するように移動させる。そしてボンディングアーム16に制御信号を供給してチップ34のボンディングをさせる。
【0034】
さらにボンディング制御部200は、密閉炉20の搬送機構21に制御信号を供給してベルト22を駆動させる。リードフレーム32はベルト22とともに密閉炉20の搬送通路25に沿って搬送される。またボンディング制御部200は、不活性ガス供給部23に制御信号を供給してガス導入口24(
図3参照)から搬送通路25の内部に不活性ガスを流通させる。さらにボンディング制御部200は、加熱部28に制御信号を供給して搬送通路25を搬送されるリードフレーム32の酸化を抑制する。
【0035】
(ブロワー機構の構成)
次に
図5〜
図7を参照しながら、本実施形態のブロワー機構の構成を説明する。
図5に密閉炉20のボンディング用開口26付近の拡大平面図を示す。
図6に密閉炉20のボンディング用開口26付近の拡大平面図を示す。
【0036】
図5および
図6に示すように、密閉炉20のボンディング用開口26に隣接させて、第1ブロアー機構11の第1パイプ11pおよび第2パイプ12pが配置されている。第1パイプ11pには、所定の間隙で複数の第1ノズル11hが設けられており、第2パイプ12pには、所定の間隙で複数の第2ノズル12hが設けられている。
【0037】
図6に示すように、第1パイプ11pは、第1供給路17−1を介して図示しない第1コンプレッサと接続されており、第1コンプレッサから供給された空気が第1パイプ11pの第1ノズル11hから噴き出し、第1の気体流を形成するように構成されている。第2パイプ12pは、第2供給路17−2を介して図示しない第2コンプレッサと接続されており、第2コンプレッサから供給された空気が第2パイプ11pの第2ノズル11hから噴き出し、第2の気体流を形成するように構成されている。
【0038】
このように、独立した別個のコンプレッサから第1パイプ11pおよび第2パイプ12pのそれぞれに空気を供給するように構成することにより、それぞれのパイプに供給する空気圧を異なるものとすることができ、それぞれのノズルから噴き出す気体流の流速を異ならせることができる。しかし、第1パイプ11pおよび第2パイプ12pを共通の供給路に接続し、一つのコンプレッサから空気を供給するように構成してもよい。この場合、第1ノズル11hおよび第2ノズル12hのノズル径を異ならせたり、オリフィスのような流量制限手段を途中に設けたりすることで、第1ノズル11hから噴き出す気体流の流速と第2ノズル12hから噴き出す気体流の流速とを異ならせることが好ましい。
【0039】
なお、
図6に示すように、第1パイプ11pとボンディング用開口26との距離Lbwは、なるべく小さくした方が好ましい。第1パイプ11pの第1ノズル11hからの距離が遠ければ遠いほど、提供される第1の気体流D1の速度が低下する。このため、ボンディング用開口26から第1ノズル11hまでの距離が大きい場合、ボンディング用開口26の上部における流速より大きな流速で第1の気体流D1を供給しなければならない。この点、第1ノズル11hがボンディング用開口26に近ければ近いほど、より低い初速で第1の気体流D1を供給すればよいことになり、第1の気体流D1の気体供給にかかる第1ブロワー機構11の消費エネルギーを削減することができるからである。
【0040】
図7の拡大断面図に基づいて上記ブロワー機構の具体的な設定と作用効果を説明する。
図7は、撮影部14がボンディング用開口26の上部に搬送され、リードフレーム32の特定のチップ34について位置を検出するために撮影している場合を示している。撮影部14に画像として撮像される空間が撮影空間VSとして示されている。
【0041】
ここで、密閉炉20では、リードフレーム32および搬送通路25の空間が加熱部28により加熱されており、搬送通路25内に流通する不活性ガスは大気圧に比べて高圧となっているので、ボンディング用開口26からは不活性ガスの加熱ガス流G1が吹き出ている。この加熱ガス流G1は、周囲の空気より高温のため、加熱ガス流G1が撮影空間VSに入り込むと、陽炎となって撮影される画像に揺らぎを与えてしまう。このため本実施形態では、撮影空間VSを横切るように第1の気体流D1を供給する第1ブロワー機構11を設けて、ボンディング用開口26から噴き出す加熱ガス流G1を撮影空間VSから吹き払って排除するようになっている。なお、本発明の実施形態では、密閉路に流通させるガスとしては、上述のような不活性ガスのほかに、コンプレッサから空気を供給したり、不活性ガスに少量の水素を含ませたフォーミングガスを供給したりすることが可能である。密閉路に流通させるガスとして少量の水素を含ませたフォーミングガスを用いれば、酸化還元作用を促進させることも可能である。
【0042】
ところが、第1の気体流D1は加熱ガス流G1を排除するために所定以上の流速を有しておりその周囲が負圧となるため、第1の気体流D1へ向けて周囲の空気が吸い込まれるような別の気体流G0が生じる。密閉炉20はその全体が加熱されているため、このような気体流G0も若干加熱されており、この気体流G0が撮影空間VSに入り込むと、加熱ガス流G1とは別の陽炎となって、撮影される画像に揺らぎを与えてしまう。
【0043】
そこで本実施形態では、さらに撮影空間VSに沿って第2の気体流D2を形成する第2ブロアー機構12を設けて、第1の気体流D1によって周囲の気体が撮影空間VSに巻き込まれることを抑制するように第2の気体流D2による障壁を形成するようになっている。
【0044】
第1ブロワー機構11について、具体的には、
図7に示すように、第1パイプ11pの第1ノズル11hは、ボンディング用開口26の上部空間に向けて第1の気体流D1を形成するような向きに形成されている。すなわち、第1ノズル11hは、形成される第1の気体流D1がボンディング用開口26に入り込まない第1の角度θ1に第1の気体流D1を形成するように形成されている。第1の角度θ1が小さすぎると、第1の気体流D1がボンディング用開口26から密閉炉20の中の搬送通路25に入り込んでしまい、リードフレーム32のチップ34の酸化反応を進行させてしまう。第1の角度θ1が大きすぎると、ボンディング用開口26から吹き出る加熱ガス流G1が撮影空間VSの内部に多く入り込んで、画像に揺らぎを与えてしまう。例えば、このような第1の角度θ1は、ボンディング用開口26の開口面から15°〜80°の範囲、より好ましくは25°〜30°の範囲とすることが好適である。
【0045】
ここで、第1パイプ11pの第1ノズル11hは、
図7に示すように、密閉炉20の中のボンディング対象物(リードフレーム32)の搬送方向と反対方向に向けて第1の気体流D1を形成するように形成されていることが好ましい。このような向きに設定されていれば、万一第1の気体流D1の一部がボンディング用開口26から密閉炉20の内部に入り込んでも、搬送通路25の上流側に入り込むことになる。ボンディング対象物は搬送通路25に沿って搬送される間に加熱によって還元反応が進行するので、気体流の流入により若干の酸化が生じたとしても、搬送通路25の上流側で酸化が生じるのであれば、その後の還元反応が生じる時間を長くすることができ、ボンディング対象物に対する酸化反応の進行を抑制できるからである。
【0046】
また第2ブロワー機構12について、具体的には、
図7に示すように、第2パイプ12pの第2ノズル12hは、ボンディング用開口26に介して撮影部14が撮影する撮影空間VSに沿って第2の気体流D2を形成するような向きに形成されている。すなわち、第2ノズル12hは、周囲の気体に対する障壁となるような第2の角度θ2に第2の気体流D2を形成するように形成されている。第2の角度θ2が小さすぎると、撮影空間VS内に第2の気体流D2が形成されてしまい、撮影空間VSの一部に周囲の空気が気体流G0として入り込んで、陽炎となって撮影される画像に揺らぎを生じてしまう。第2の角度θ2が大きすぎると、撮影空間VSと第2の気体流D2との間が離れすぎて、両者の間の空気が気体流G0として撮影空間VSに入り込んでしまうからである。例えば、このような第2の角度θ2は、ボンディング用開口26の開口面から70°〜135°の範囲とすることが好適である。
【0047】
ここで、第2パイプ12pの第2ノズル12hは、ボンディング用開口26の幅より広い範囲に第2の気体流D2を形成するように配置されていることが好ましい。このように配置すれば、ボンディング用開口26の幅を超えて第2の気体流D2による障壁が形成され、周囲の空気が回り込んで、撮影空間VSに陽炎のもととなる空気流G0を形成することを防止できるからである。例えば、
図5に示すように、本実施形態では、第2パイプ12pおよび第2ノズル12hが、ボンディング用開口26の幅よりも幅Lex1+Lex2だけ広くなるように設けられている。第1パイプ11pおよび第1ノズル11hについても、同様にボンディング用開口26より幅広に第1の空気流D1を形成可能に設けてもよい。ボンディング用開口26から噴き出して来た加熱ガス流G1をより確実に排除可能だからである。
【0048】
ここで、第2の気体流D2の流速は、第1の気体流D1の流速より小さいこととしてもよい。噴き出してくる加熱ガス流G1を強制的に排除する第1の気体流D1に比べ、第2の気体流D2は、第1の気体流D1に向けて巻き込まれる比較的流れの穏やかな空気流G2の撮影空間VSへの流入を阻止すればよいので、第1の気体流D1の流速より相当程度低い流速で十分だからである。例えば、第1の気体流D1の流速は、0.5〜10m/s程度の範囲が好ましいところ、第2の気体流D2の流速は、その10分の1程度で十分である。
【0049】
(ボンディングアームの構成)
次に
図8および
図9を参照しながら、本実施形態のボンディングアーム16の構成を説明する。
図8に実施形態に係るボンディングアーム16を用いた場合の概念断面図を示し、
図9に実施形態に係るボンディングアーム16を用いた場合の概念平面図を示す。また
図10に従来のボンディングアームを用いた場合の概念断面図を示し、
図11に従来のボンディングアームを用いた場合の概念平面図を示す。
【0050】
従来、ボンディングアームは、特段、筐体が気体流に晒されることを意図して設計されてはいなかった。このため、このような従来型本ディイングアーム16PAが、
図10および
図11に示すように、ボンディング用開口26から挿入されてボンディング対象物のボンディング処理をしている間に、上記したような第1の気体流D1が供給されたとすれば、第1の気体流D1は、従来型ボンディングアーム16PAの筐体の一部に直接的に衝突し、急激に方向を曲げられ、ボンディング用開口26から噴き出す加熱ガス流を除去することが妨げられてしまう。また第1の気体流D1が筐体の一部に衝突することによって乱流が発生して、周囲の加熱された空気に陽炎を生じさせる可能性もあった。
【0051】
これに対し、本発明のボンディングアームでは、
図8および
図9に示すように、本実施形態のボンディングアーム16は、第1の気体流D1の乱れを抑制する形状を備えている。乱れを抑制する形状としては、第1に、ボンディングアームの径が相対的に小さいことが好ましい。第2に、第1の気体流D1に対向する面が気体流を妨げて乱流を生ずることを防止可能な形状、例えば流線形状をしていることが好ましい。
図8および
図9に示した例では、ボンディングアーム16の尖端部分は径を縮小させた円筒に形成されている。このため、第1パイプ11pの第1ノズル11hから供給された第1の気体流D1は、おおよその進行方向を変更することなく、また、乱流を発生させることなく、ボンディングアーム16の周囲を回り込んでいく。よって、ボンディングアーム16がボンディング用開口26から挿入されているような場合であっても、第1の気体流D1による加熱ガス流が効果的に除去されるようになっている。
【0052】
以上、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、ボンディング用開口26から噴き出す加熱ガス流G1を第1の気体流D1が吹き払って、加熱ガス流G1が撮影空間VSに入り込むことを抑制するとともに、第2の気体流D2が撮影空間VSに沿って障壁を形成するので、周囲の気体が撮影空間VSに巻き込まれることを抑制することが可能である。
【0053】
(2)本実施形態によれば、上記ボンディングアーム16が第1の気体流D1の乱れを抑制する形状を備えているので、ボンディングアーム16がボンディング用開口26に挿入されている期間中でも、第1の気体流D1による加熱ガス流G1の除去が可能である。
【0054】
(3)本実施形態によれば、第1の気体流D1がボンディング用開口26に入り込まない第1の角度θ1に第1の気体流D1を形成するので、ボンディング対象物の酸化を抑制しながら効果的に陽炎の発生を抑制可能である。
【0055】
(4)本実施形態によれば、密閉炉20の中のボンディング対象物32の搬送方向と反対方向に向けて第1の気体流D1を形成するので、万一第1の気体流D1の一部がボンディング用開口26から密閉炉20の内部に入り込んでも、加熱による還元作用により、酸化の進行を抑制することが可能である。
【0056】
(5)本実施形態によれば、周囲の気体に対する障壁となるような第2の角度θ2に第2の気体流D2を形成するので、周囲の気体が撮影空間VSに巻き込まれることを効果的に抑制することが可能である。
【0057】
(6)本実施形態によれば、第2ブロアー機構12は、ボンディング用開口26の幅より広い範囲に第2の気体流D2を形成するので、ボンディング用開口26の幅を超えて第2の気体流D2による障壁が形成され、周囲の空気が回り込んで、撮影空間VSに陽炎のもととなる空気流G0が形成されることを防止可能である。
【0058】
(7)本実施形態によれば、第2の気体流D2の流速は、第1の気体流D1の流速より小さいので、送風に係る過剰なエネルギー消費を削減することが可能である。
【0059】
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、種々に変形して適用することが可能である。
(1)上記実施形態では、密閉炉20を使用していたが、必ずしも密閉炉は必須ではない。例えば、密閉炉のボンディング用開口のような加熱ガス流ではなくても、局部的に対象物が加熱されることによって対象物の撮影空間に陽炎が発生するような環境であれば、本発明の第1のブロワー機構および第2のブロワー機構を撮影空間の周辺に適用可能である。
【0060】
(2)上記実施形態では、第1パイプ11pおよび第2パイプ12pは直線的なパイプ形状であったが、これに限定されない。例えば、これらパイプは、撮影空間VSを取り囲むように形成されていてもよい。
【0061】
(3)上記実施形態では、第1パイプ11pと第2パイプ12pとを隣接して配置していたが、これに限定されない。例えば、第2パイプ12pを第1パイプ11pから離間した位置に配置して、異なる方向から第2の気体流D2を供給するように構成してもよい。本発明では、撮影空間VSに周囲の空気が巻き込まれて陽炎を引き起こすことを防止すればよいため、周囲の空間と撮影空間VSとの間にエアーカーテンを形成するような構成であれば、本発明の適用範囲である。
【0062】
(4)上記実施形態では、第1の気体流D1を第1パイプ11pから供給し、第2の気体流D2を第2パイプ12pから供給するように構成していたが、これに限定されない。例えば、異なる方向に向けて気体流を供給可能な複数のノズル列を一つのパイプに配置し、一つのパイプに供給した空気が、複数のノズル列からそれぞれ供給されるように構成してもよい。例えば2つのノズル列を一つのパイプに設け、それぞれから第1の気体流および第2の気体流として供給されるように構成することが可能である。このような構成では、ノズルの形態、例えばノズル列に設けられるノズル数やノズルの穴径を調整することで、それぞれの気体流の供給速度や供給量を変更することが可能である。