特許第6119005号(P6119005)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6119005非オーム性を有する樹脂材料及びその製造方法、並びに該樹脂材料を用いた非オーム性抵抗体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6119005
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】非オーム性を有する樹脂材料及びその製造方法、並びに該樹脂材料を用いた非オーム性抵抗体
(51)【国際特許分類】
   H01C 7/10 20060101AFI20170417BHJP
【FI】
   H01C7/10
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-539196(P2015-539196)
(86)(22)【出願日】2014年9月22日
(86)【国際出願番号】JP2014075032
(87)【国際公開番号】WO2015046125
(87)【国際公開日】20150402
【審査請求日】2015年9月7日
(31)【優先権主張番号】特願2013-200595(P2013-200595)
(32)【優先日】2013年9月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000123354
【氏名又は名称】音羽電機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 稔彦
(72)【発明者】
【氏名】樋渡 謙太
(72)【発明者】
【氏名】塚本 直之
(72)【発明者】
【氏名】沖中 秀行
【審査官】 五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−510040(JP,A)
【文献】 特表2008−544455(JP,A)
【文献】 特開2009−152399(JP,A)
【文献】 特表2012−504870(JP,A)
【文献】 特表2014−527713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧の増加に伴って急激に電流が増加する非オーム性を有する樹脂材料であって、
a) 第1樹脂材料から成る絶縁性のマトリックスと、
b) 前記第1樹脂材料とは非相溶であって、且つ該第1樹脂材料よりも後記マイクロバリスタに対する濡れ性が高い導電性の第2樹脂材料から成り、前記マトリックス内に島状に分散し、全樹脂材料中の体積率が16%未満である島状導電性分散相と、
c) 非オーム性を有するセラミックス製の粒子であって、前記マトリックス内に分散し、前記島状導電性分散相を介して該粒子同士が電気的に接触しているマイクロバリスタと
を備えることを特徴とする樹脂材料。
【請求項2】
全樹脂材料中における前記島状導電性分散相の体積率が1%以上であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂材料。
【請求項3】
前記マイクロバリスタの少なくとも一部が非球形であることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂材料。
【請求項4】
前記第2樹脂材料が、主相樹脂に導電性粉末を混入させたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂材料。
【請求項5】
前記第1樹脂材料が無極性樹脂であり、前記主相樹脂が極性樹脂であることを特徴とする請求項4に記載の樹脂材料。
【請求項6】
前記第1樹脂材料がポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルファイド、ポリスチレンから選択される樹脂であり、前記主相樹脂がナイロン、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリカーボネートから選択される樹脂であり、前記導電性粉末がカーボン、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、白金、酸化スズ、酸化物超伝導材料、炭化ケイ素、窒化チタンから選択される材料から成るものであることを特徴とする請求項5に記載の樹脂材料。
【請求項7】
電圧の増加に伴って急激に電流が増加する非オーム性を有する樹脂材料の製造方法であって、
絶縁性の第1樹脂材料と、該第1樹脂材料とは非相溶であって該第1樹脂材料よりもマイクロバリスタに対する濡れ性が高い導電性の第2樹脂材料と、、該第2樹脂材料の全樹脂材料中の体積率が16%未満となるように混練し、それらの混練物とマイクロバリスタを混練することを特徴とする樹脂材料製造方法。
【請求項8】
電圧の増加に伴って急激に電流が増加する非オーム性を有する樹脂材料の製造方法であって、
絶縁性であって無極性である第1樹脂材料と、第2樹脂材料の主原料であって前記第1樹脂材料とは非相溶である主相樹脂と、該主相樹脂とともに該第2樹脂材料を構成する導電性粉末と、、前記第2樹脂材料の全樹脂材料中の体積率が16%未満となるように同時に混練し、それらの混練物とマイクロバリスタを混練することを特徴とする樹脂材料製造方法。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂材料が所定の形状に成形されていることを特徴とする非オーム性抵抗体。
【請求項10】
前記所定の形状が、電子部品又は電気機器のハウジング、電気回路用の基板、電気ケーブルのシース及び電線の被覆のうちのいずれかの形状であることを特徴とする請求項9に記載の非オーム性抵抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雷や回路の開閉等により生じるサージ電圧から電気機器を保護する、サージ耐性に優れた非オーム性を有する樹脂材料及びその製造方法、並びに該樹脂材料を用いた非オーム性抵抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
バリスタは、電圧の増加に伴って急激に電流が増加するという非オーム性を有するデバイスである。バリスタは、このような非オーム性を利用して、サージ電圧から電気回路を保護する目的で用いられる。具体的には、バリスタを被保護機器に対して並列に接続しておくことにより、バリスタは正常な電圧下では接地に対して絶縁を保つが、電気回路にサージ電圧が生じると、バリスタの両端電圧を上昇させることなく電流を接地に逃がすことができるため、電気回路の電圧が被保護機器の耐電圧以上になることを防ぐ。
【0003】
バリスタの材料は、従来より種々のものが知られているが、その一例として、主成分たるZnO(酸化亜鉛)に、Bi, Sb, Co, Mn等の金属酸化物を添加して焼成したセラミックスが挙げられる。この材料は、主相たる酸化亜鉛粒子と酸化ビスマスを主成分とする粒界層とから成る多結晶体であり、ZnとSbからなるスピネル粒子が多結晶体内に不規則に点在した微細構造を有しており、Co, Mnなどの遷移金属酸化物がこれら主相、粒界層、及びスピネル粒子に固溶して存在する。この材料では、電流が酸化亜鉛粒子と粒界層との界面を通過することにより、非オーム性を発現する。しかし、このような材料は、セラミックスであるが故に、成形の自由度が低く、且つ、堅くて脆いため耐衝撃性も低い、という欠点を有する。
【0004】
そこで、樹脂材料とバリスタの粉末を混練することにより、成形の自由度が高く、且つ耐衝撃性が高い非オーム性抵抗体を作製することが検討されている。特許文献1には、エポキシ樹脂等のポリマーをベースとする絶縁性のマトリックスと、そのマトリックスに埋め込まれた粉末状の充填剤を含有する非オーム性抵抗体が記載されている。ここで充填剤は、非オーム性を有する粒子であるマイクロバリスタと導電性粒子を混合したうえで熱処理することにより、マイクロバリスタの表面に接触した導電性粒子を該マイクロバリスタと結合させたものが用いられている。特許文献1では、マイクロバリスタには上述のセラミックスから成る球形に近い粒子が用いられている。また、導電性粒子にはマイクロバリスタよりもサイズが小さく且つ導電性が高い(例えばNi製)粒子であって、マイクロバリスタの表面に接触し易い板状、フレーク状、短繊維状等のアスペクト比が高い形状を有するものが用いられている。
【0005】
この非オーム性抵抗体では、電流の経路を形成する手段としてマイクロバリスタの数を多くすると共に、粒径の異なる2種類のマイクロバリスタを用いることによって、大きい方のマイクロバリスタの間隙に小さい方のマイクロバリスタが入り込み、それによってマイクロバリスタの濃度を高めている。このようにマイクロバリスタの濃度を高めることにより、マイクロバリスタ同士の(導電性粒子を介した)接触点の数を増加させている。その結果、電流の経路が形成され非オーム性が発揮される。
【0006】
この非オーム性抵抗体はポリマーをベースとするマトリックスを含有するため、スイッチ等の電気機器の部品の表面を、キャスティング法を用いて該非オーム性抵抗体で被覆したり、該表面に該非オーム性抵抗体を塗装したりすることにより、当該部品自体をバリスタとして用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4921623号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「導電性コンポジットのパーコレーション現象のメカニズム(第I講)」、技術情報協会編、第6頁
【非特許文献2】「パーコレーション理論(浸透理論)」、[online]、平成22年8月8日、[平成25年8月21日検索]、インターネット<URL:http://d.hatena.ne.jp/miyubinamakemono/20100808/1281142704>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に記載の非オーム性抵抗体では、バルク品を製造することは難しい。なぜならば、マトリックスよりもマイクロバリスタの方が比重が高いため、作製時にマイクロバリスタが沈降してしまい、マイクロバリスタの濃度が不均一になってしまうからである。そこで、粘度の高いマトリックスを用いて沈降速度を下げ、充填剤(マイクロバリスタ及び導電性粒子)を十分に混練分散させた上で短時間で硬化させれば、マイクロバリスタの濃度の不均一という点は解消する。しかし、混練し過ぎると、隣接するマイクロバリスタ間にマトリックスが侵入してしまうため、マイクロバリスタ間の接触抵抗が大きくなり、大電流に対するサージ特性が低下してしまう。そこでさらに、マイクロバリスタに対する濡れ性が低い樹脂をマトリックスに用いれば、隣接するマイクロバリスタ間にマトリックスが侵入することは軽減できるが、そうすると、マイクロバリスタの表面に、マトリックスで覆われていない部分が存在することとなり、小電流に対する良好な絶縁特性が得られなくなってしまう。さらには、マトリックスで覆われていない部分は空隙(気泡)となり、放電による絶縁破壊の原因となってしまう。
【0010】
また、特許文献1に記載の非オーム性抵抗体では、電流の経路を得るためにマイクロバリスタの濃度を高めているため、固形分の含有率が高くなる。そのため、この非オーム抵抗体では、樹脂の成形加工に一般的に用いられている射出成型法を適用することが困難になってしまう上に耐衝撃性も低下してしまう。
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、バリスタとしての良好な特性を有し、且つ、射出成型が可能であって成形の自由度が高く、しかも耐衝撃性が高い、非オーム性を有する樹脂材料及びその製造方法、並びに該樹脂材料を用いた非オーム性抵抗体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために成された本発明は、電圧の増加に伴って急激に電流が増加する非オーム性を有する樹脂材料であって、
a) 第1樹脂材料から成る絶縁性のマトリックスと、
b) 前記第1樹脂材料とは非相溶であって、且つ該第1樹脂材料よりも後記マイクロバリスタに対する濡れ性が高い導電性の第2樹脂材料から成り、前記マトリックス内に島状に分散し、全樹脂材料中の体積率が16%未満である島状導電性分散相と、
c) 非オーム性を有するセラミックス製の粒子であって、前記マトリックス内に分散し、前記島状導電性分散相を介して該粒子同士が電気的に接触しているマイクロバリスタと
を備えることを特徴とする。
【0013】
ここで、樹脂材料中の島状導電性分散相の体積率が16%以上であると、理論上、パーコレーションが生じてしまうため、バリスタとしての特性を得ることができない。そのため、本発明では、島状導電性分散相の体積率を16%未満とした。
【0014】
第1樹脂材料と第2樹脂材料を混練すると、第1樹脂材料と第2樹脂材料が互いに非相溶であることにより、第1樹脂材料による「海」の中に、第2樹脂材料による「島」が形成される。本発明では、第1樹脂材料による海を「マトリックス」、第2樹脂材料による島を「島状導電性分散相」と呼ぶ。そして、この混練物(ポリマーアロイ)とマイクロバリスタを混練すると、第2樹脂材料の方が第1樹脂材料よりもマイクロバリスタに対する濡れ性が高いため、マイクロバリスタと島状導電性分散相の間にマトリックスが侵入することが防止される。そのため、マイクロバリスタ同士は、島状導電性分散相を介して、マトリックスで絶縁されることなく電気的に接触することとなる。それゆえ、本発明の樹脂材料では、大電流に対するサージ耐性に優れた特性が得られる。
【0015】
また、第2樹脂材料の方が第1樹脂材料よりもマイクロバリスタに対する濡れ性が高いという条件を満たしさえすれば、マイクロバリスタに対する濡れ性が低いものを第1樹脂材料に用いる必要がないため、マイクロバリスタの表面に空隙(気泡)が形成されず、マイクロバリスタ表面の良好な絶縁特性を得られるとともに、放電による絶縁破壊の発生を防止することができる。
【0016】
この樹脂材料を用いて、電子部品や電気機器のハウジング、電気回路用の基板、電気ケーブルのシース及び電線の被覆等、所望の形状を有する非オーム性抵抗体を得ることができる。これらの物の作製には射出成型を好適に用いることができる。
【0017】
島状導電性分散相を介してマイクロバリスタ同士を電気的に十分に接触させるために、樹脂材料中の島状導電性分散相はコントロールされる必要があり、その体積率は1%以上であることが望ましい。
【0018】
第1樹脂材料及び第2樹脂材料には、熱可塑性樹脂を用いることが望ましい。その場合には、第1樹脂材料と第2樹脂材料を混練したものとマイクロバリスタを混練した材料を用いて、架橋剤を混合したうえで成形することにより、樹脂材料を当該形状で硬化させることができる。
【0019】
第2樹脂材料には、それ自体が導電性を有する樹脂(例えばポリアセチレン)を用いることができるが、絶縁性樹脂に導電性粉末を添加し導電性を付与した樹脂を用いることもできる。
高い導電率を得るには導電性粉末を高濃度に混ぜ込む必要があるが、微小な粉末は吸油量も大きくなるため高濃度混練は容易ではない。
そこで導電性粉末が極性を持った樹脂に偏在しやすいといった性質を利用し、本発明ではマトリックスとなる第1樹脂材料に無極性樹脂を、分散相となる第2樹脂材料に極性樹脂を使用し、これら無極性樹脂及び極性樹脂と導電性粉末を同時に混練する手法で、一旦マトリックスの樹脂に混ぜ込まれた導電性粉末が次第に分散相内に取り込まれ分散相に導電性を持たせるといった方法を採用することができる。そうすることで容易に高い導電率を持った分散相を得ることが可能となる。
第1樹脂材料である無極性樹脂には、ポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンスルファイド、ポリスチレン等を用いることができる。ここでポリオレフィン系樹脂として、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。第2樹脂材料となる極性樹脂には、ナイロン、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリカーボネート等が挙げられる。導電性粉末は、特段の処理を行うことなくそのまま用いることもできるが、導電性粉末の粒子の表面にカップリング剤によって表面処理を行い、極性樹脂になじみやすくしたものを用いてもよい。
また、導電性粉末には、カーボンの粉末、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、白金などの金属粉末、酸化スズや酸化物超伝導材料などの導電性酸化物の粉末、炭化ケイ素などの導電性炭化物の粉末、窒化チタンなどの導電性窒化物の粉末などを用いることができる。
【0020】
前記マイクロバリスタには、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、炭化珪素、酸化錫等を主成分とするものを用いることができる。
【0021】
前記マイクロバリスタは、少なくとも一部が非球形であることが望ましい。これにより、マイクロバリスタが球形である場合よりも、マイクロバリスタ同士の(島状導電性分散相を介した)接触点の数を増加させることができる。
【0022】
本発明に係る樹脂材料の製造方法は、電圧の増加に伴って急激に電流が増加する非オーム性を有する樹脂材料の製造方法であって、絶縁性の第1樹脂材料と、該第1樹脂材料とは非相溶であって該第1樹脂材料よりもマイクロバリスタに対する濡れ性が高い導電性の第2樹脂材料を混練し、それらの混練物とマイクロバリスタを混練することを特徴とする。
【0023】
本発明ではマトリックスとなる第1樹脂材料に無極性樹脂を、分散相となる第2樹脂材料に極性樹脂を使用し、導電性粉末と同時に混練する手法で、一旦マトリックス樹脂に混ぜ込まれた導電性粉末が次第に分散相内に取り込まれ分散相に導電性を持たせるといった方法を採用することができる。そうすることで容易に高い導電率を持った分散相を得ることが可能となった。
なお、第1樹脂材料内に微量の導電性粉末が残留することがあるが、そのような微量の導電性粉末によってパーコレーションが生じることはないため、バリスタとしての特性は維持される。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、バリスタとしての良好な特性を有し、且つ、射出成型が可能であって成形の自由度が高く、しかも耐衝撃性が高い、非オーム性を有する樹脂材料及びその製造方法、並びに該樹脂材料を用いた非オーム性抵抗体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施例である樹脂材料の製造方法を示すフローチャート。
図2】本実施例の樹脂材料の模式図(a)、及び該樹脂材料における主な電流の経路を示す図(b)。
図3】実験1で作製した試料の電圧−電流(V-I)特性の測定結果を示すグラフ。
図4】実験2で作製した試料のV-I特性の測定結果を、マイクロバリスタ粒径の相違により比較するように示すグラフ。
図5】実験2で作製した試料のV-I特性の測定結果を、マイクロバリスタの体積率により比較するように示すグラフ。
図6】実験3で作製した試料のV-I特性の測定結果を示すグラフ。
図7】実験4で作製した、島状導電性分散相12の体積率が異なる複数の試料につき、樹脂材料全体の体積抵抗率を測定した結果を示すグラフ。
図8】実験4で作製した試料につき、島状導電性分散相12の平均粒径(中央値)を測定した結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係る非オーム性を有する樹脂材料(以下、単に「樹脂材料」とする)及びその製造方法、並びに非オーム性抵抗体の実施例を、図1図8を用いて説明する。
【実施例】
【0027】
まず、樹脂材料及び非オーム性抵抗体の製造方法の実施例を、図1を用いて説明する。本実施例では、第1樹脂材料にはポリエチレンを、第2樹脂材料にはナイロン(主相樹脂)にカーボンの粉末(導電性粉末)を混入させたものを、マイクロバリスタにはZnOを添加物と共に焼結反応させて得られた多結晶体の粒子を用いた。カーボンの粉末は、粒子の表面に対してカップリング剤によって親水性の表面処理を施したものを用いてもよいが、そのような処理を行わずにそのまま用いてもよい。マイクロバリスタは、一般的な噴霧乾燥法で得られたものを焼成し、所定の大きさの目(後述)を有する篩を通過したものを用いた。第2樹脂材料の体積は、該第2樹脂材料と第1樹脂材料を合わせた体積の16%未満とした。
【0028】
これら第1樹脂材料と第2樹脂材料を190〜230℃の温度下において混練する(ステップS1)。その際、主相樹脂と導電性粉末を混合して第2樹脂材料を作製した後に第1樹脂材料と当該第2樹脂材料を混合するという2段階の混合を行ってもよいが、第1樹脂材料と主相樹脂と導電性粉末の3種を同時に混練した方が、時間を短縮することができる上に、容易に導電性粉末の濃度の高い分散相を得ることができる。
【0029】
その後、得られた混合物をペレットに成形する(ステップS2)。次に、このペレットとマイクロバリスタを混練する(ステップS3)。これにより、本実施例の樹脂材料10が得られる。その後、架橋剤を添加したうえで射出成型を行うことにより、非オーム性抵抗体が得られる(ステップS4)。
【0030】
第1樹脂材料であるポリエチレンと第2樹脂材料の主相樹脂であるナイロンが互いに非相溶であることにより、第1樹脂材料と第2樹脂材料は、混合しても互いに分離する。また、ポリエチレンが無極性樹脂であってナイロンが極性樹脂であることにより、導電性材料であるカーボンはナイロンの方に偏在する。これにより、得られた樹脂材料10内には、図2(a)に示すように、第1樹脂材料によるマトリックス11の中に、第1樹脂材料よりも体積が小さい第2樹脂材料による島状導電性分散相12が分散して形成される。
【0031】
樹脂材料10では、図2(b)に示すように、島状導電性分散相12とマイクロバリスタ13が接触して、島状導電性分散相12を介してマイクロバリスタ13同士を電気的に接続する電流19の経路が形成される。樹脂材料10の電気的特性(すなわち、非オーム性)は、マイクロバリスタ13内におけるZnO粒子131と粒界層132の界面を電流が流れることにより発現する。
【0032】
本実施例の樹脂材料10では、第1樹脂材料のポリエチレンよりも第2樹脂材料のナイロンの方が、マイクロバリスタ13に対する濡れ性が高い。そのため、マイクロバリスタ13と島状導電性分散相12の間にマトリックス11が侵入することが防止され、マイクロバリスタ13同士は、島状導電性分散相12を介して電気的に接触することとなる。こうして、本実施例の樹脂材料10では、大電流に対するサージ耐性に優れた特性が得られる。
【0033】
また、第1樹脂材料のポリエチレンは、マイクロバリスタ13に対する濡れ性が、上述のように第2樹脂材料よりは低いものの、マイクロバリスタ13の表面で弾かれるほどではない。そのため、島状導電性分散相12を介してマイクロバリスタ13同士が接触している接触点以外では、マトリックス11はマイクロバリスタ13の表面を覆うことができる。これにより、マイクロバリスタ13の表層に電流が流れることを防止することができ、小電流に対する良好な絶縁特性を得ることができる。
【0034】
さらに、島状導電性分散相12は、球形に近いため島状導電性分散相12同士のパーコレーションが生じ難く、高濃度にすることができる。それゆえ、固形分であるマイクロバリスタ13の体積比率を小さくすることができるため、射出成型が可能となり、成形の自由度を高めることができる。さらに、耐衝撃性も高めることができる。
【0035】
以下、本実施例で作製した試料に対して行った実験の結果を説明する。
[実験1]
実験1では、材料に関する以下の(1)〜(3)のパラメータが異なる4種類の試料を作製した。なお、マイクロバリスタ13は、目の大きさが45μmである篩を通過したものを使用した。
<材料パラメータ>
(1) 原料全体に占める第2樹脂材料の濃度(体積百分率)
(2) カーボンが全て第2樹脂材料に偏在したと想定した場合における、第2樹脂材料に占めるカーボンの濃度(重量百分率)
(3) 原料全体に占めるマイクロバリスタ13の濃度(体積百分率)
各試料における材料パラメータの値を表1に示す。
【表1】
【0036】
表1の各試料についてV-I特性を測定した。本実施例では、得られる電流がおおむね1×10-2A/10cm2以下の範囲内では試料に直流電圧を印加し、電流がおおむね1×10-2A/10cm2を超える範囲内では、大電流を流すことができるよう、試料にインパルス電圧を印加した。測定結果を図3に示す。いずれの試料においても、電流がほぼ0のときにも、電圧が1mmあたり数十〜数百Vという高い値を有する。これは、小電流に対する良好な絶縁特性を有していることを意味する。また、図3では、対数スケールの電流に対して、電圧を線形スケールで示しており、電流が増加しても電圧の上昇が抑えられることを意味している。すなわち、この測定結果は、試料1〜4が非オーム性を有することを示している。
【0037】
[実験2]
次に、実験1よりも第2樹脂材料の含有率が高い試料を作製し、V-I特性を測定した結果を示す。試料の作製の際には、まず、ポリエチレンを91.3体積%、ナイロンを8.0体積%、カーボンを0.680体積%(有効数字の関係上、これらの数値の合計は100体積%にはならない)、200℃で同時混練することにより、ポリマーアロイを作製した。次に、このポリマーアロイとZnOのマイクロバリスタ13を表2に示した体積割合で190℃の温度条件において混合することにより、試料を得た。マイクロバリスタ13は、篩にかけることにより、粒径がそれぞれ10〜20μm、20〜30μm、及び30〜44μmの範囲内にある3種類のものを用いた。
【表2】
【0038】
V-I特性の実験結果を図4及び図5のグラフに示す。これらのグラフでは電流、電圧共に対数スケールで示しており、V-I特性がI=(V/C)α(α:非オーム性指数、C:定数)で表せる場合に、グラフが直線になり、該直線の傾きの逆数が非オーム性指数αに対応する。非オーム性指数αが大きいほど、電流が増加しても電圧の上昇が抑えられて非オーム性に優れていることを意味する。
【0039】
図4では、マイクロバリスタ13の体積率が等しい試料同士を1つのグラフにまとめ(グラフの数は3つ)、各グラフにおいてマイクロバリスタ13の粒径の相違によるV-I特性の相違を示した。図4のグラフより、マイクロバリスタ13の体積率が等しい試料同士を比較すると、いずれの場合にも、マイクロバリスタ13の粒径が3種のうちの中位である20〜30μmの試料が、小電流における絶縁特性が最も良い(電圧が高い)上に、非オーム性指数αが大きい。
【0040】
図5では、マイクロバリスタ13の粒径が等しい試料同士を1つのグラフにまとめ(グラフの数は3つ)、各グラフにおいてマイクロバリスタ13の体積率の相違によるV-I特性の相違を示した。図5のグラフより、マイクロバリスタ13の粒径が等しい試料同士を比較すると、いずれの場合にも、作製した試料におけるマイクロバリスタ13の体積率の範囲内(10〜30体積%)では、当該体積率が低くなるほど、小電流における絶縁特性が最も良い(電圧が高い)といえる。非オーム性指数αは、マイクロバリスタ13の体積率が3種のうちの中位である20体積%の試料が最も大きい。
【0041】
[実験3]
次に、表3に示すようにポリエチレン、ナイロン、及びカーボンの体積率が異なる3種類のポリマーアロイを作製し、それらポリマーアロイをそれぞれZnOのマイクロバリスタ13と混合することにより、3種類の試料(試料21〜23)を作製した。ポリマーアロイの作製時には200℃で各材料を混合した。また、マイクロバリスタは粒径10〜20μmのものを用い、ポリマーアロイとマイクロバリスタ13は190℃で混合し、その混合比は、ポリマーアロイを70体積%、マイクロバリスタ13を30体積%とした。なお、これら3種類の試料のうちの1つ(表3中の試料23)は、表2の試料17と同じものである。
【表3】
【0042】
試料21〜23のV-I特性の実験結果を図6のグラフに示す。この実験結果より、ナイロンの含有量が少なくなるほど、小電流における電圧が最も高く、且つ、非オーム性指数αが大きい。
【0043】
[実験4]
次に、島状導電性分散相12の濃度の上限値、及び望ましい下限値を定めるために、島状導電性分散相12の体積率(濃度)が0.5体積%〜16体積%の範囲内で異なる、マトリックス11と島状導電性分散相12から成る試料を作製した。なお、この試料にはマイクロバリスタ13は混練されていない。マトリックス11、島状導電性分散相12の原料には、実験1〜3と同じものを用いた。
【0044】
図7に、各試料における樹脂材料全体の体積抵抗率を測定した結果を示す。体積抵抗率は、島状導電性分散相12の体積率が16体積%である試料(以下、「16%試料」とする)では108Ωcmのオーダーであるのに対して、16%試料以外(島状導電性分散相12の体積率が0.5〜12体積%)の試料ではいずれも1015〜1017Ωcmという7〜9桁高い値が得られた。16%試料以外の試料同士では、島状導電性分散相12の体積率に依存した体積抵抗率の有意な相違は見られない。これらの結果は、16%試料以外では島状導電性分散相12同士が電気的に分離しているのに対して、16%試料では、島状導電性分散相12によるパーコレーションが生じていることを示唆している。
【0045】
図8に、各試料における島状導電性分散相12の平均粒径を測定した結果を示す。ここで平均粒径は、樹脂材料10の走査電子顕微鏡(SEM)画像を解析することにより求めた、累積度数分布における50%の値(中央値)を用いた。島状導電性分散相12の体積率が大きいほど、平均粒径も大きくなる。なお本実施例ではSEMによる2次元画像から島状導電性分散相のサイズを読み取っているので形状が球状から崩れると実際のサイズを正確に測定できない。理論上は16%ではサイズが無限大となる。平均粒径が急激に増加する16%付近の領域では島状導電性分散相12によるパーコレーションが生じるおそれがあるため、そのような範囲内を避けて島状導電性分散相12の体積率を設定することが望ましい。
一方、島状導電性分散相が極端に少ないと、マトリックス内における島状導電性分散相の不均質性が増大する。図8では島状導電性分散相12の体積率が1%付近になると体積率の減少に伴い粒径が極端に減少することが示されている。
このように1%未満の領域では島状導電性分散相の体積率がわずかに変化しただけで粒径が大幅に変化してしまうため、島状導電性分散相の粒径のコントロールは難しく、島状導電性分散相の不均質性はより顕著になってしまう。そのため、島状導電性分散相の体積率は1%以上であることが望ましい。
【0046】
次に、マイクロバリスタ13の濃度x、島状導電性分散相12(第2樹脂材料)の濃度y、マイクロバリスタ13の半径r1、及び島状導電性分散相12の半径r2の関係について理論的に考察する。なお、島状導電性分散相12の径r2は、樹脂材料10の作製時における第1樹脂材料と第2樹脂材料の混練の条件、並びに第1樹脂材料及び第2樹脂材料のMFR(Melt Flow Rate:流動性指数)及び表面エネルギーに左右される値である。
【0047】
まず、樹脂材料10全体に含まれるマイクロバリスタ13の総数をn1、島状導電性分散相12の総数をn2とする。1個のマイクロバリスタ13に接触する島状導電性分散相12の平均個数をn、島状導電性分散相12のうちマイクロバリスタ13に接触している個数比をpとすると、
n=p・n2/n1 …式(1)
となる。ここで、n2/n1をx, y, r1, 及びr2で表すと、
n2/n1=(y/x)・(r1/r2)3 …式(2)
となる。1個のマイクロバリスタ13に平均で1個以上の島状導電性分散相12が接触することが望ましいことから、式(1)及び(2)より、
1≦n=p・n2/n1=p・(y/x)・(r1/r2)3
1/p≦n2/n1=(y/x)・(r1/r2)3 …式(3)
となる。
【0048】
次に、マイクロバリスタ13を半径r1の球体、島状導電性分散相12を半径r2の円、とそれぞれ近似し、当該球体の表面を複数の当該円で埋めるというモデルを考える。当該球体の表面積S1のうち、当該円が付着する面積S2の割合が一定の値φを超えると、多数のマイクロバリスタ13が島状導電性分散相12を介して連続的に繋がるパーコレーションが生じ、バリスタとしての特性を発揮できる、電流の経路が形成される。その条件は、
φ>n・S2/S1=(n・πr22)/(4πr12) …式(4)
である。
【0049】
式(1), (3)及び(4)より、
(1/p)・(r2/r1)2≦(y/x)・(r1/r2)<(1/p)・4φ …式(5)
となる。従って、コンピュータシミュレーション等によりパラメータp及びφを求めることができれば、x、y、r1及びr2の適切な値の範囲を求めることができる。
【0050】
本発明は上記実施例のものには限られない。例えば、第1樹脂材料、第2樹脂材料及びマイクロバリスタ13の材料は実施例で挙げたものだけではなく、上述の種々の組み合わせを用いることができる。また、マイクロバリスタ13自身の粒径、マイクロバリスタ13内の結晶粒の粒径を左右する焼成温度、あるいは島状導電性分散相12の粒径を左右するMFRも上記のものには限られない。
【0051】
上記実施例では焼成したマイクロバリスタ13をそのまま用いていたが、ZnOナノロッドに加熱処理によってCoやMnを熱拡散させたものを酸化ビスマスでコートして得られるマイクロバリスタを用いてもよい。これにより、マイクロバリスタ13が球形である場合よりも、マイクロバリスタ13同士の(島状導電性分散相12を介した)接触点の数を増加させることができる。
【0052】
島状導電性分散相12は、その一部が、カーボン等の導電性粉末から成る粒子に置き換えられていてもよい。この粒子には、マイクロバリスタと同程度の大きさのもの、用いることが望ましい。また、パーコレーションが生じ難いという点において、この粒子は球形であることが望ましい。
【0053】
マイクロバリスタと共に、以下に示す熱伝導率の高い絶縁材料をマトリックスに加えることで、マトリックス内の均熱化を図ることができる。そのような絶縁材料として、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、酸化マグネシウム等が挙げられる。これにより、バリスタとしての特性をより良好にすることができる。
【0054】
さらには、マイクロバリスタ13を、高熱伝導性絶縁材料等、他の機能性粉末に置き換えることにより、樹脂材料10をバリスタ以外に用いることができる。
【符号の説明】
【0055】
10…樹脂材料
11…マトリックス
12…島状導電性分散相
13…マイクロバリスタ
131…ZnO粒子
132…粒界層
19…電流
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8