特許第6119009号(P6119009)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6119009
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】産業資材シート
(51)【国際特許分類】
   A01M 29/12 20110101AFI20170417BHJP
   A01N 25/10 20060101ALI20170417BHJP
   A01N 53/08 20060101ALI20170417BHJP
   A01N 53/04 20060101ALI20170417BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20170417BHJP
   A01M 1/20 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
   A01M29/12
   A01N25/10
   A01N53/00 508C
   A01N53/00 504B
   A01P7/04
   A01M1/20 A
   A01M1/20 C
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-105013(P2013-105013)
(22)【出願日】2013年5月17日
(65)【公開番号】特開2014-223043(P2014-223043A)
(43)【公開日】2014年12月4日
【審査請求日】2016年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000239862
【氏名又は名称】平岡織染株式会社
(72)【発明者】
【氏名】狩野 俊也
【審査官】 竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−310275(JP,A)
【文献】 特開2003−201626(JP,A)
【文献】 特開平03−044305(JP,A)
【文献】 特開2012−001533(JP,A)
【文献】 実開昭59−191977(JP,U)
【文献】 特開2008−013508(JP,A)
【文献】 特開昭61−060602(JP,A)
【文献】 特開2010−241704(JP,A)
【文献】 特開2011−127018(JP,A)
【文献】 特開平09−263502(JP,A)
【文献】 特開2011−254784(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0085647(US,A1)
【文献】 特表2014−534894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維織物を基布として含み、その表裏を被覆する熱可塑性樹脂層とで構成された可撓性シートであって、前記熱可塑性樹脂層に、ピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子を、前記熱可塑性樹脂層に対して0.1〜10質量%含み、この複合粒子の一部が前記熱可塑性樹脂層表面に露出していることを特徴とする、飛翔性害虫の防除効果を有する産業資材シート。
【請求項2】
前記ピレスロイド系化合物が、ペルメトリン、シペルメトリン、シフェノトリン、d−フェノトリン、レスメトリン、フラメトリン、d−レスメトリン、テフルトリン、エンペントリン、フェンバレレート、エスフェンバレレート、エスビオトリン、フェンプロパトリン、エトフェンプロックス、トラロメトリン、デルタメトリン、シラフルオフェン、シフルトリン、ビフェントリン、ブラトリン、アレスリン、d−アレスリン、ピレトリン、d−テトラメスリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、ジメフルトリン、プロフルトリン、シネリン、ジャスモリンから選ばれた1種以上である請求項1に記載の産業資材シート。
【請求項3】
前記シクロデキストリン−シリカ複合粒子が、助触媒添加(担持)型光触媒、アニオンドープ型光触媒、カチオンドープ型光触媒、共ドープ型光触媒、金属ハロゲン化物担持型光触媒、酸素欠損型光触媒から選ばれた1種以上の光触媒物質をさらに担持している請求項1に記載の産業資材シート。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂層に、シクロデキストリンに包接された防黴剤を含み、この防黴剤が、イミダゾール系化合物、チアゾール系化合物、N−ハロアルキルチオ系化合物、ピリチオン系化合物、ピリジン系化合物、イソチアゾリン系化合物、トリアジン系化合物、有機金属系化合物から選ばれた1種以上である請求項1に記載の産業資材シート。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂層の一部または全部が2層構造を有し、最外層が表面塗工によって形成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の産業資材シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は飛翔性害虫の防除効果を有する産業資材シートに関する。詳しく述べると、本発明の産業資材シートは、スポーツスタジアムなど大型施設の屋根や庇、店舗の日除けテント、日除けモニュメント、シート倉庫、トラック幌、建築養生シート、建築防音シート、建築養生メッシュ、電照式フレキシブル看板、天井膜材、空間仕切りシート、シートシャッター、シートカバー、フレキシブルコンテナなどに用い、特に小型羽虫などの防虫効果(忌避効果)が長期間安定持続するターポリン、帆布、メッシュシートなどに関する。
【背景技術】
【0002】
スタジアムなど大型施設の屋根や庇、店舗の日除けテント、日除けモニュメント、シート倉庫、トラック幌、建築養生シート、建築防音シート、建築養生メッシュ、電照式フレキシブル看板、空間仕切りシート、シートシャッター、シートカバーなどの産業資材シートの汎用素材には、繊維織物を基材として、その表面に軟質塩化ビニル樹脂で被覆してなるターポリン、帆布、メッシュシートなどが使用されている。これらに用いる軟質塩化ビニル樹脂はその配合に可塑剤、液状安定剤、液状防炎剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、金属石鹸、界面活性剤、分散剤、滑剤、有機顔料、染料、防黴剤、香料など様々な化学物質を含有することによって、機能的かつ耐久性に富んだ産業資材シート設計を可能としている。このような軟質塩化ビニル樹脂で被覆された産業資材シートは、太陽光や降雨に長期間晒されるうちに配合中に含む化学物質(そのままの成分もしくは劣化成分)がシート表面に移行(揮発)するなどしてシート本体の臭気を増すことがある。特に化学構造の特定は定かではないが、可塑剤の劣化揮発物質などは蚊などの小型羽虫を誘引して無数の蚊がシート表面に群がることがある。また、これら産業資材シートは印刷の自在性を付与するために白色〜アイボリー色の着色を汎用としているが、白着色に使用する酸化チタン顔料などは熱線反射効果を有することでシート表面が暖かくなり、蚊などの飛翔性害虫が羽休めに好んで群がる傾向がある。
【0003】
具体的に、殺虫剤成分が第1の樹脂糸の表面にコーティングされ、共力剤成分が第2の樹脂糸の表面にコーティングされ、これらを編んで又は織って形成した害虫防除ネット(特許文献1)。樹脂製のバリア層(防虫成分不透過層)と、紙製の中間層(防虫成分保持層)と、樹脂製の薬剤徐放層(防虫成分透過層)とがこの順番に積層された三層構造を有する防虫シート(特許文献2)などが開示されているが、これらのネットやシートでは防虫効果の長期安定持続性が不十分である。薬剤効果を長期間安定持続させる手段として例えば、イソチオシアネート類化合物やテルペン類化合物などをサイクロデキストリンで包接した化合物微粒子が、合成樹脂フィルムに分散された抗菌性フィルム(特許文献3)。防虫剤成分を含浸したシリカ系多孔質粒子を、水系樹脂、多官能モノマー、及びレドックスラジカル開始剤からなるバインダー成分でシート状基材に付着させた防虫シート(特許文献4)などが開示されているが、これでも屋外で長期間防虫効果を安定持続させるには不十分であった。従って軟質塩化ビニル樹脂製の産業資材シートにおいて、その防除効果が長期間安定持続するようなターポリン、帆布、メッシュシートなどが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−057476号公報
【特許文献2】特開2012−111707号公報
【特許文献3】特開平06−191562号公報
【特許文献4】特開平10−286914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、スタジアムなど大型施設の屋根や庇、店舗の日除けテント、日除けモニュメント、シート倉庫、トラック幌、建築養生シート、建築防音シート、建築養生メッシュ、電照式フレキシブル看板、空間仕切りシート、シートシャッター、シートカバーなどの産業資材シートで、飛翔性害虫の防除効果(忌避)が長期間安定持続するターポリン、帆布、メッシュシートなどを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、繊維織物を基布として含み、その表裏を被覆する熱可塑性樹脂層とで構成された可撓性シートにおいて、熱可塑性樹脂層の表面に、ピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子が露出していることによって、飛翔性害虫の防除効果が長期間安定持続するターポリン、帆布、メッシュシートなどの産業資材シートが得られることを見出して本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明の産業資材シートは、繊維織物を基布として含み、その表裏を被覆する熱可塑性樹脂層とで構成された可撓性シートであって、前記熱可塑性樹脂層に、ピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子を、前記熱可塑性樹脂層に対して0.1〜10質量%含み、この複合粒子の一部が前記熱可塑性樹脂層表面に露出していることが好ましい。これによって飛翔性害虫の防除効果が長期間安定持続するターポリン、帆布、メッシュシートなどを得ることができる。
【0008】
本発明の産業資材シートは、前記ピレスロイド系化合物が、ペルメトリン、シペルメトリン、シフェノトリン、d−フェノトリン、レスメトリン、フラメトリン、d−レスメトリン、テフルトリン、エンペントリン、フェンバレレート、エスフェンバレレート、エスビオトリン、フェンプロパトリン、エトフェンプロックス、トラロメトリン、デルタメトリン、シラフルオフェン、シフルトリン、ビフェントリン、ブラトリン、アレスリン、d−アレスリン、ピレトリン、d−テトラメスリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、ジメフルトリン、プロフルトリン、シネリン、ジャスモリンから選ばれた1種以上であることが好ましい。これによって飛翔性害虫のより高い防除効果を得ることを可能とする。
【0009】
本発明の産業資材シートは、前記シクロデキストリン−シリカ複合粒子が、助触媒添加(担持)型光触媒、アニオンドープ型光触媒、カチオンドープ型光触媒、共ドープ型光触媒、金属ハロゲン化物担持型光触媒、酸素欠損型光触媒から選ばれた1種以上の光触媒物質をさらに担持していることが好ましい。この光触媒物質の励起作用によってシクロデキストリンに包接されたピレスロイド系化合物を経時的に除放することで長期間安定した飛翔性害虫の防除効果を維持することを可能とする。
【0010】
本発明の産業資材シートは、前記熱可塑性樹脂層に、シクロデキストリンに包接された防黴剤を含み、この防黴剤が、イミダゾール系化合物、チアゾール系化合物、N−ハロアルキルチオ系化合物、ピリチオン系化合物、ピリジン系化合物、イソチアゾリン系化合物、トリアジン系化合物、有機金属系化合物から選ばれた1種以上であることが好ましい。これによってシクロデキストリンに寄生しようとする黴菌を長期間防除することを可能とし、得られるターポリン、帆布、メッシュシートなどに黴が生えることを抑止することができる。
【0011】
本発明の産業資材シートは、前記熱可塑性樹脂層の一部または全部が2層構造を有し、最外層が表面塗工によって形成されていることが好ましい。これによってターポリン、帆布、メッシュシートなど、どのような産業資材シートの態様においても自在な飛翔性害虫の防除効果をコントロールして付帯させることを可能とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の産業資材シートは、ターポリン、帆布、メッシュシートなどの態様で、特に飛翔性害虫などの防除効果(忌避効果)を長期間安定持続することができるので、スポーツスタジアムなど大型施設の屋根や庇、店舗の日除けテント、日除けモニュメント、シート倉庫、トラック幌、建築養生シート、建築防音シート、建築養生メッシュ、電照式フレキシブル看板、天井膜材、空間仕切りシート、シートシャッター、シートカバー、フレキシブルコンテナなど幅広い用途に使用することができ、さらに住居や店舗のエクステリア及びインテリアの素材のパーツ、宿営テント、リュック、レジャーシートなどキャンプ用品、その他、園芸ハウス、畜舎、ペットケージなどのパーツなどに使用することもできる。本発明の産業資材シートはアカイエカ、コガタアカイエカなどのイエカ類;ネッタイシマカ、ヒトスジシマカなどのヤブカ類;シナハマダラカなどのハマダラカ類;ユスリカ類;イエバエ、オオイエバエ、ヒメイエバエなどのイエバエ類;クロバエ類;ニクバエ類;ショウジョウバエ類;チョウバエ類;ノミバエ類;アブ類;ブユ類;サシバエ類;ヌカカ類などの飛翔性害虫の防除効果(忌避効果)を有している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の産業資材シートの断面を示す図
図2】本発明の産業資材シートの断面を示す図
図3】本発明に用いる「ピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン− シリカ複合粒子」の製造手段の一例を示す図
図4】本発明に用いる「ピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン− シリカ複合粒子」の製造手段の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の産業資材シートは、繊維織物を基布として含み、その表裏を被覆する熱可塑性樹脂層とで構成された可撓性シートであって、熱可塑性樹脂層に、ピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子を含み、この複合粒子の一部が熱可塑性樹脂層表面に露出しているもので、必要に応じて熱可塑性樹脂層の一部または全部に2層構造を有するものである。
【0015】
本発明において基布とする繊維織物は織布、編布、不織布の何れであってもよい。織布は、平織、綾織、繻子織、模紗織など公知の織布が挙げられるが、中でも平織織布が、得られるシートの経緯強度及び経緯伸張バランスが同等となり好ましい。織布は経糸条及び緯糸条で織製され、糸条間隙を均等において平行に配置した経糸、及び緯糸を含んで構成された空隙率10〜40%の目開織布(糸条打込本数10〜35本/inch)、または空隙率10%未満の非目開織布(糸条打込本数40〜100本/inch)であり、これらの厚さや質量に特に制限はない。目開織布はメッシュシート及びターポリンの基布に適し、特に空隙率10〜40%の目開織布全体に対して熱可塑性樹脂溶液による含浸・被覆(熱処理を伴う)を施すことにより空隙率8〜38%のメッシュシートを得ることができる。また、空隙率10〜40%の目開織布に対してその両面に熱可塑性樹脂フィルムの熱ラミネートを施すことによってターポリンを得ることができる。また、空隙率10%未満、特に5%未満の非目開織布の全体に対して熱可塑性樹脂溶液による含浸と被覆(熱処理を伴う)の処理を施すことにより帆布を得ることができる。また、この帆布を基材としてさらにこの両面に熱可塑性樹脂フィルムの熱ラミネートを施すことによって積層タイプの帆布を得ることもできる。
【0016】
上記繊維織物を形成する経糸条及び緯糸条はマルチフィラメント糸条または短繊維紡績糸条が好ましく、マルチフィラメント糸条の場合、フィラメント数30〜300本、繊度138〜2223dtex(デシテックス)、好ましくは277〜1112dtexのマルチフィラメント糸条繊維により、1インチ当たり10〜35本の打ち込み本数で製織された織物で、その打ち込み本数は、メッシュシート(特に好ましい打込本数8〜20本/inch)、ターポリン(特に好ましい打込本数12〜25本/inch)などシートの態様により任意設計することができる。また短繊維紡績糸条は特に帆布用基布に用い、10番手(591dtex)、14番手(422dtex)、16番手(370dtex)、20番手(295dtex)、30番手(197dtex)、40番手(148dtex)、60番手(97dtex)の範囲の単糸または双糸が特に好ましく、打込本数45〜90本/inchの範囲で製織されたスパン織物である。また本発明において特にメッシュシートの場合はモノフィラメント糸条を、特にターポリンの場合にテープヤーン、スプリットヤーンを用いることもできる。
【0017】
繊維布帛を形成する繊維の種類は具体的に、ケナフ、コットンなどの天然繊維群(短繊維紡績糸条として使用)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、ナイロン、ビニロン、アクリル、芳香族ポリエステル系、芳香族ポリアミド系、芳香族ヘテロ環ポリマー(ポリイミダゾール系、ポリオキサゾール系など)の合成繊維群、ガラス、シリカ、バサルト、アルミナ、ボロン、炭素、ステンレスなどの無機繊維群、及びこれらの混用繊維、芯鞘繊維などが挙げられる。汎用的にはポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)、ポリプロピレン、ナイロン繊維、ビニロン繊維などによるマルチフィラメント糸条、モノフィラメント糸条、短繊維紡績糸条、テープヤーンの形態である。特に芳香族ポリエステル系、芳香族ポリアミド系、芳香族ヘテロ環ポリマー系などによる繊維糸条を用いることで得られる産業資材シート本体の物理的破壊強度を増すことができる。またガラス、シリカ、バサルト、アルミナ、炭素などによる無機繊維糸条を用いることで得られる産業資材シートに耐火性や不燃性を付与することができる。また繊維織物には特にマルチフィラメント糸条の断面からの水の毛管現象による浸入を防止するための撥水処理、また、着炎時に自己消火性を付与するための防炎処理、あるいは被覆樹脂層との密着性を向上させるための接着処理を施すことが好ましい。
【0018】
本発明の産業資材シートにおいて熱可塑性樹脂層を形成する樹脂は、塩化ビニル樹脂(可塑剤含有)、塩化ビニル系共重合体樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリプロピレン樹脂と水素添加型スチレン系共重合体樹脂とのブレンド、ウレタン樹脂、ウレタン系エラストマー、アクリル樹脂、アクリル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、フッ素系エラストマー、シリコーン系エラストマーなど、及びこれらの熱可塑性樹脂やエラストマーの架橋体、及びこれらの併用(ブレンドまたは複層構造)などである。特に産業資材シートの汎用性の観点においては塩化ビニル樹脂(可塑剤含有)、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ウレタン樹脂など好ましい。熱可塑性樹脂層はカレンダー法、Tダイス押出法、キャスティング法、デッピング法、またはコーティング法による着色フィルムまたはシートで、厚さが0.1mm〜2.0mm、好ましくは0.2mm〜1.0mmを用いる。本発明で最も好ましい例は、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)マルチフィラメント糸条による繊維布帛を基材として、この両面に着色軟質ポリ塩化ビニル樹脂による被覆層を形成(コーティング、デッピング、熱ラミネート、または接着剤による接着処理)して得たメッシュシート、ターポリンまたは帆布である。
【0019】
熱可塑性樹脂層には、公知の有機系顔料及び無機系顔料を単独使用または併用により任意の着色が可能で、熱可塑性樹脂層は光透過性であっても光不透過性であってもよい。特に酸化チタン、酸化アンチモン、酸化ケイ素(シリカ)、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルムニウムなどの金属塩、カオリン、クレー、タルク、雲母、及びモンモリロナイトなどの粘土鉱物などを配合して得た白色〜白色半透明の熱可塑性樹脂層、または主として熱可塑性樹脂のみからなる透明の熱可塑性樹脂層であってもよい。
【0020】
熱可塑性樹脂層には、ピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子を、熱可塑性樹脂層の質量に対して0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%含み、複合粒子の一部が熱可塑性樹脂層の表面に露出していることが、ピレスロイド系化合物を層外に放散させる目的に効果的である。ピレスロイド系化合物は、合成ピレスロイドとしてアレスリン、D−テトラメトリン(フタルスリン)C1925NO、レスメトリンC2225、フラメトリンC18223、フェノトリンC2326、ペルメトリンC2120Cl、シフェノトリンC2425NO、ブラトリンC1821Cl、エトフェンプロックス(ベクトロン)C2528、シフルトリンC2218ClFNO、テフルトリンC1717ClF、ビフェントリンC2322ClFから選ばれた1種以上の殺虫性有機化合物である。また天然ピレスロイドとして菊酸、ピレトリン、シネリン、ジャスモリンなどの殺虫性有機化合物であってもよい。
【0021】
上記ピレスロイド系化合物は、シクロデキストリン−シリカ複合粒子に担持され、特にシクロデキストリンの円筒状分子構造の空洞部に包接されて担持される。シクロデキストリンは、α−シクロデキストリン(ブドウ糖分子数6、分子量973、空洞内径0.45〜0.5nm、空洞深さ0.7〜0.8nm)、β−シクロデキストン(ブドウ糖分子数7、分子量1135、空洞内径0.7〜0.8nm、空洞深さ0.7〜0.8nm)、γ−シクロデキストリン(ブドウ糖分子数8、分子量1287、空洞内径0.85〜1.0nm、空洞深さ0.7〜0.8nm)、メチル−β−シクロデキストリン、ジメチル−β−シクロデキストリン、トリメチル−β−シクロデキストリン、カルボキシメチル−β−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン、モノアセチル−β−シクロデキストリン、モノクロロトリアジノシクロデキストリンなどのシクロデキストリンに官能基を導入した変性物及びシクロデキストリンをグラフト担持する誘導体が挙げられ、これらは複数種を併用することもできる。これらシクロデキストリンの円筒状分子構造の内部に包接されるピレスロイド系化合物の状態は、ピレスロイド系化合物の分子構造全体、またはその一部がシクロデキストリンの円筒状分子構造の内部に取り込まれた状態である。また、ピレスロイド系化合物はシクロデキストリン−シリカ複合粒子におけるシリカ粒子の有する空孔中に担持されていてもよい。ピレスロイド系化合物がシクロデキストリン及びシリカ粒子の両方に担持されることによって、シクロデキストリン担持が長期持続性、シリカ粒子担持が即効性と、それぞれ異なる徐放効果を発現することができる。
【0022】
シクロデキストリンの有する円筒状分子構造の内部にピレスロイド系化合物を包接する方法には、上記シクロデキストリン類から選ばれた1種以上を溶解して含む水溶液、または分散して含む懸濁水溶液に、ピレスロイド系化合物を溶解して含む親水性溶媒を投じて攪拌混合することにより、ピレスロイド系化合物を包接するシクロデキストリン溶液または沈殿物を得ることができる。ここで包接とはピレスロイド系化合物の官能基の一部が、シクロデキストリンの円筒状分子構造の内部に取り込まれたものを包含する。得られたシクロデキストリン包接化合物の溶液から溶媒を除去してピレスロイド系化合物を包接するシクロデキストリン粉体を単離することができる。しかし本発明においては、シクロデキストリン包接化合物を含む溶液中、または懸濁液中にさらに多孔質シリカ粒子を投じて攪拌混合することにより、ピレスロイド系化合物を包接するシクロデキストリンを担持する多孔質シリカ粒子を分散して含む溶液とすることが好ましい。この溶液から溶媒を除去することによって、ピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子を得ることができる。
【0023】
ピレスロイド系化合物の担持方法は、1)シクロデキストリン−シリカ複合粒子を形成した後に、この複合粒子全体に対して担持処理を行い、複合粒子のシクロデキストリン部にピレスロイド系化合物を担持させる方法(図3)、2)予めシクロデキストリンにピレスロイド系化合物を担持させた後、多孔質シリカに物理的吸着によって、あるいは化学的結合によって一体化させる方法(図4)が挙げられる。特に1)では多孔質シリカ粒子の有する空孔の中にもピレスロイド系化合物が担持されていてもよい。ピレスロイド系化合物がシクロデキストリン及びシリカ粒子の両方に担持されることによって、シクロデキストリン担持が長期持続性、シリカ粒子担持が即効性と、それぞれ異なる徐放効果を発現することができる。
【0024】
上記ピレスロイド系化合物の担持方法1)及び2)において、ピレスロイド系化合物を包接一体化するシクロデキストリンは、1個分子のシクロデキストリンに少なくとも1個分子のピレスロイド系化合物が包接されていればよい。ピレスロイド系化合物を包接一体化するシクロデキストリンを得るための仕込み比(シクロデキストリンの質量:ピレスロイド系化合物の質量)は、4:1〜1:1、特に4:1〜2:1の範囲が好ましい。また使用環境での必要に応じて香料や芳香剤を担持させたシクロデキストリンを併用することもできる。
【0025】
シクロデキストリン−シリカ複合粒子は、1)ピレスロイド系化合物を包接するシクロデキストリンがシリカ粒子の表面に化学結合した担持体、2)多孔質シリカ粒子にピレスロイド系化合物を包接するシクロデキストリンが吸着された担持体、3)これら双方の担持体の混在物であってもよい。シリカ粒子は粒子表面にシラノール基(Si−OH基)を有するものがシクロデキストリンを化学修飾するための結合手として好ましい。シラノール基と結合するシクロデキストリンは、シクロデキストリンに官能基を導入したものが好ましいが、シクロデキストリン固有の水酸基との反応であってもよい。4)さらに、シクロデキストリン化合物とシリカ粒子とがシランカップリング剤、ジイソシアネート化合物、ポリイソシアネート化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物などの架橋剤によって結合された担持体であってもよい。シリカの粒径は平均凝集粒径(コールカウンター法)が1〜30μmのもの、好ましくは3〜15μmの範囲が好ましい。これらのシリカ粒子は上記シランカップリング剤により表面処理が施され、シリカ表面に官能基を保持するものが好ましい。
【0026】
シクロデキストリン−シリカ複合粒子には、助触媒添加(担持)型光触媒、アニオンドープ型光触媒、カチオンドープ型光触媒、共ドープ型光触媒、金属ハロゲン化物担持型光触媒、酸素欠損型光触媒から選ばれた1種以上の光触媒物質をさらに担持することで、シクロデキストリンに包接されたピレスロイド系化合物を強制的に放散させることができる。これらの光触媒としては、(1).酸化チタン、酸化タングステン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化バナジウム、酸化ビスマス、鉄−タングステン酸化物等の金属酸化物に、銀、プラチナ、金、銅、ロジウム、パラジウム、ルテニウム、イリジウムなどの金属およびそれらの金属の化合物を助触媒として添加(担持)した助触媒添加(担持)型光触媒、(2).上述の光触媒性金属酸化物に窒素、炭素、硫黄、リン、ホウ素、フッ素等をドープしたアニオンドープ型光触媒、(3).上述の光触媒性金属酸化物にクロム、ニオブ、マンガン、コバルト、バナジウム、鉄、ニッケル等の遷移金属イオンをドープしたカチオンドープ型光触媒、(4).アニオンとカチオンの両方をドープした共ドープ型光触媒、(5).白金、パラジウム、ロジウムなど貴金属のハロゲン化物を担持させた金属ハロゲン化物担持型光触媒、(6).光触媒性金属酸化物から部分的に酸素を引き抜いた酸素欠損型光触媒、等で、これら光触媒はシリカ粒子表面に吸着され、シリカ粒子に対して0.01〜1質量%の吸着率である。
【0027】
本発明の産業資材シートは、熱可塑性樹脂層の一部または全部が2層構造を有し、最外層が表面塗工によって形成された仕様であってもよい。この仕様は、1)シクロデキストリン−シリカ複合粒子を含む熱可塑性樹脂層上に、アクリル樹脂(共重合体樹脂を包含する)、ウレタン樹脂(共重合体樹脂を包含する)、酢酸ビニル樹脂(共重合体樹脂を包含する)、塩化ビニル樹脂(共重合体樹脂を包含する)、フッ素樹脂(共重合体樹脂を包含する)などを主体とする有機溶剤型塗料、あるいは水系樹脂塗料(エマルジョンまたはディスパージョン)を表面塗工して最外層を形成したもので、これら塗料の中にはシクロデキストリン−シリカ複合粒子を0.1〜10質量%濃度で含むものである。このような2層構成とすることで長期間安定した防虫効果を得ることができる。2)シクロデキストリン−シリカ複合粒子を含まない熱可塑性樹脂層上に、上記シクロデキストリン−シリカ複合粒子を0.1〜10質量%濃度で含む塗料を表面塗工して防虫効果を有する最外層を形成したものである。このような2層構成とすることで容易に防虫効果を附帯させることができる。3)シクロデキストリン−シリカ複合粒子を含む熱可塑性樹脂層上の面積10〜50%の総領域に、熱可塑性樹脂層と相溶性に乏しい塗料をマスク塗工して部分的に不安定な最外層を形成したものである。このような2層構成とすることで、経時的に不安定な最外層が徐々に脱落し、この脱落によってフレッシュな表面が新たに露出し、この露出部分からシクロデキストリン−シリカ複合粒子が露出することで、経時的に減衰した防虫効果を補完することができる。このマスク最外層にはシクロデキストリン−シリカ複合粒子を含んでもいてもよい。(必ずしも含んでいる必要はない)
【0028】
また、熱可塑性樹脂層にはシクロデキストリンに寄生しようとする黴菌を長期間抑止する目的で、熱可塑性樹脂層が、シクロデキストリンに包接された防黴剤を含むことが好ましく、この防黴剤として、イミダゾール系化合物、チアゾール系化合物、N−ハロアルキルチオ系化合物、ピリチオン系化合物、ピリジン系化合物、イソチアゾリン系化合物、トリアジン系化合物、有機金属系化合物から選ばれた1種以上が挙げられる。これらの防黴剤をシクロデキストリンに包接させた化合物として、熱可塑性樹脂層の質量に対して0.1〜5質量部含むことが好ましい。具体的にイミダゾール系化合物の代表例として2−(4−チアゾリル)−ベンズイミダゾール(略称TBZ)、チアゾール系化合物の代表例として2−メルカプトベンゾチアゾール、N−ハロアルキルチオ系化合物の代表例としてN−トリクロロメチルチオテトラヒドロフタルイミド、ピリジン系化合物の代表例として2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジン、ピリチオン系化合物の代表例としてビス(ピリジン−2−チオール−1−オキシド)亜鉛塩(略称ZPT)、イソチアゾリン系化合物の代表例として1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、トリアジン系化合物の代表例としてヘキサヒドロ−N,N′,N″−トリス(2−ヒドロキシエチル)−S−トリアジン、有機金属系化合物の代表例として10,10−オキシビスフェノキシアルシン(略称OBPA)、などが挙げられる。これらの防黴剤はシリカ粒子に吸着担持されたもの、シクロデキストリン−シリカ複合粒子に吸着担持されたものを併用してもよい。
【0029】
また、熱可塑性樹脂層(2層構造を包含する)の耐光性を向上させるために、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤など公知の紫外線吸収剤を含み、更に公知のヒンダードアミン系光安定剤を併用し、更に必要に応じて公知の酸化防止剤を用いることができる。さらに熱可塑性樹脂層の表面に、微粒子シリカ(特にコロイダルシリカ)、光触媒性物質(特に二酸化チタン)、有機シリケート化合物(メチル、またはエチルシリケートの加水分解縮合物)から選ばれた1種以上による薄膜を形成することによって汚れ防止性に優れた産業資材シートを得ることができる。
【0030】
本発明の産業資材シート(1)について図1及び2により説明する。図1は産業資材シート(1)の断面の一例を示す図で、繊維織物(2)を基布として含み、その表裏を被覆する熱可塑性樹脂層(3)とで構成され、熱可塑性樹脂層(3)に、ピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子(4)を含むものである。図2は産業資材シート(1)の断面の一例を示す図で、繊維織物(2)を基布として含み、その表裏を被覆する熱可塑性樹脂層(3−1)とで構成され、この熱可塑性樹脂層(3−1)が2層構造(外層:3−1−1及び内層:3−1−2)を有し、外層:3−1−1にピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子(4)を含むものである。
【0031】
本発明に用いる「ピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子(4)」について図3及び4により説明する。図3はシリカ粒子(4−1)にシクロデキストリン(4−2)を反応または吸着させることで、シクロデキストリン−シリカ複合粒子(4−3)を形成した後に、この複合粒子全体に対して担持処理を行い、複合粒子のシクロデキストリン部にピレスロイド系化合物(4−4)を担持させることで「ピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子(4)」を得る方法(図3)である。図4は予めシクロデキストリン(4−2)にピレスロイド系化合物(4−4)を担持させた後、ピレスロイド系化合物担持シクロデキストリン(4−5)をシリカ粒子(4−1)に反応または吸着させることで「ピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子(4)」を得る方法(図4)である。
【実施例】
【0032】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記実施例及び比較例において、試験シートによる飛翔性害虫の防除効果は下記の試験方法により測定し、評価した。
【0033】
1)飛翔性害虫の防除効果(KT50)
試験1
6cm×6cmの正方形のシート片を直径8.5cmのガラスシャーレ内に敷き、蓋を被せた状態で25℃、太陽光直射の環境に30分間馴染ませた。このシャーレ内にユスリカ(揺蚊)の成虫10匹を放ち、この時点からノックダウンしたユスリ蚊の数の計測を開始し、ユスリカのノックダウン数が半数の5匹目となった時間(秒)を「KT50値」として求めた。
※KT50=Median knock-down time(50%の供試虫が抑転(生死に拘らず起き上がれなくなる)に要する時間。)
試験2
上記試験1後のシート片を3月〜8月の6ヶ月間室内に放置した。このシート片を用いて再度試験1と同じ試験を行い、ユスリカに対する防除効果「KT50値」を求めた。
試験3
上記試験1後のシート片を3月〜8月の6ヶ月間屋外に放置した。このシート片を用いて再度試験1と同じ試験を行い、ユスリカに対する防除効果「KT50値」を求めた。
2)防黴性の評価
シ−ト片(5cm×5cm)を下記カビの胞子を含む寒天培地に静置し、シャーレ中で
28℃×7日間カビの発生状況を観察し、以下の判定基準で評価を行った。
1:外観観察では黴の発生が認められない。
2:部分的に黴の発生を認める。(φ3mm未満のコロニーの散在)
3:シート片の面積の半分以上に黴が発生した。
〈試験用カビ〉(1)+(2)+(3)の混合カビ
(1).Aspergillus niger FERM S−1(黒カビ)
(2).Penicillium citrinum FERM S−5(青カビ)
(3).Cladosporium cladosporioides FERM S−8(クロカワカビ)
【0034】
[実施例1]
繊維織物(基布)として下記織組織を有するポリエステルスパン平織織布を用いた。
(591dtex×591dtex)/(48本/25.4mm×43本/25.4mm)、質量230g/m、空隙率0%

このスパン基布を下記[配合1]の軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル浴中に浸漬し、スパン基布にペースト塩化ビニル樹脂組成物を含浸させ、これを引き上げると同時に1対のゴムロールで圧搾した後、180℃の熱風乾燥炉内で2分間熱処理を行い、ペースト塩化ビニル樹脂組成物をゲル化させてスパン基布の両面に熱可塑性樹脂層を形成し防水帆布を得た。この熱可塑性樹脂層の質量は300g/mであった。
[配合1]:軟質ポリ塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1700) 100質量部
DOP(可塑剤) 65質量部
エポキシ化大豆油 3質量部
Ba−Zn系複合安定剤 2質量部
炭酸カルシウム(充填材) 15質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 0.3質量部
酸化チタン(着色剤) 5質量部
2-(4-チアゾリル)-ベンズイミダゾール(防黴剤)を担持するシクロデキストリン
2質量部
ピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子 5質量部

<ピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子の調製>
1)水1000質量部にβ−シクロデキストリン10質量部を溶解し、この水溶液にペルメトリン2.5質量部/メタノール100質量部からなる溶液を加え24時間攪拌し、ペルメトリン包接シクロデキストリン化合物を得た。(シクロデキストリン:ピレスロイド系化合物=4:1)
【化1】
ペルメトリン

2)上記のペルメトリン包接シクロデキストリン化合物を含む水溶液中に、親水性シリカ粒子(BET比表面積:200m/g、平均凝集粒子径1.5〜2.5μm)10質量部と、結合剤としてシランカップリング剤(β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン)1質量部、ヘキサメチレンジイソシアネート1質量部、光触媒物質として酸化タングステン(WO)ナノ粒子1質量部を加え24時間攪拌し、ピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子を含む分散液を得た。この分散液よりピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子を乾燥単離した。
〈防黴剤を担持するシクロデキストリンの調製〉
水1000質量部にβ−シクロデキストリン10質量部を溶解し、この水溶液に2−(4−チアゾリル)−ベンズイミダゾール2.5質量部/ジメチルホルムアミド100質量部からなる溶液を加え24時間攪拌し、2−(4−チアゾリル)−ベンズイミダゾール包接シクロデキストリン化合物を得た。
【0035】
[実施例2]
実施例1で用いたポリエステルスパン平織織布を次のポリエステルフィラメント平織織布に基布変更した以外は実施例1と同様に加工した。(配合1)
(277dtex×277dtex)/(12本/25.4mm×13本/25.4mm)、質量65g/m、空隙率34%
こうして空隙率34%のポリエステルフィラメント平織織布の両面に熱可塑性樹脂層を形成し空隙率32%のメッシュシートを得た。この熱可塑性樹脂層の質量は82g/mであった。
【0036】
[実施例3]
実施例1で用いたポリエステルスパン平織織布を次のポリエステルフィラメント平織織布に基布変更し、下記[配合2]より得た厚さ0.15mm、質量200g/mの軟質塩化ビニル樹脂フィルムを積層した。
(1111dtex×1111dtex)/(17本/25.4mm×18本/25.4mm)、質量150g/m、空隙率12%

[配合2]:軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム組成
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
DOP(可塑剤) 55質量部
エポキシ化大豆油 3質量部
Ba−Zn系複合安定剤 2質量部
炭酸カルシウム(充填材) 15質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 0.3質量部
酸化チタン(着色剤) 5質量部
2-(4−チアゾリル)-ベンズイミダゾール(防黴剤)を担持するシクロデキストリン
2質量部
ピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子 5質量部
※ピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子は実施例1と同じものを使用

この[配合2]の組成物を170℃の熱ロール対で溶融混練し、厚さ0.15mmのカレンダーフィルムを製造し、これをポリエステルフィラメント平織織布の両面に170℃で熱ラミネートして熱可塑性樹脂層を形成して質量550g/mのターポリンを得た。
【0037】
[実施例4]
実施例1の熱可塑性樹脂層を下記2層構造とし、実施例1のスパン基布を下記[配合3]の軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル浴中に浸漬し、スパン基布にペースト塩化ビニル樹脂組成物を含浸させ、これを引き上げると同時に1対のゴムロールで圧搾した後、180℃の熱風乾燥炉内で2分間熱処理を行い、ペースト塩化ビニル樹脂組成物をゲル化させた。この[配合3]による熱可塑性樹脂層1(両面併せて質量300g/m)をベース層として、この上にアクリル樹脂層(熱可塑性樹脂層2)を設けた。このアクリル樹脂層は下記[配合4]のアクリル樹脂塗料を80メッシュのグラビアロールで転写塗工したもので付着固形分量は片面当たり7g/mである。このようにして質量544g/mの防水帆布を得た。

[配合3]:軟質ポリ塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成(熱可塑性樹脂層1)
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1700) 100質量部
DOP(可塑剤) 65質量部
エポキシ化大豆油 3質量部
Ba−Zn系複合安定剤 2質量部
炭酸カルシウム(充填材) 15質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 0.3質量部
酸化チタン(着色剤) 5質量部
2-(4−チアゾリル)-ベンズイミダゾール(防黴剤)を担持するシクロデキストリン
2質量部
[配合4]:アクリル樹脂組成(熱可塑性樹脂層2)
アクリル樹脂 100質量部
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 0.2質量部
ピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子 10質量部
※ピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子は実施例1と同じものを使用
【0038】
[実施例5]
実施例2の熱可塑性樹脂層を2層構造とし、実施例2のポリエステルフィラメント平織基布を[配合3]の軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル浴中に浸漬し、基布にペースト塩化ビニル樹脂組成物を含浸させ、これを引き上げると同時に1対のゴムロールで圧搾した後、180℃の熱風乾燥炉内で2分間熱処理を行い、ペースト塩化ビニル樹脂組成物をゲル化させた。この[配合3]による熱可塑性樹脂層1(両面併せて質量82g/m)をベース層として、この上にアクリル樹脂層(熱可塑性樹脂層2)を設けた。このアクリル樹脂層は[配合4]のアクリル樹脂塗料を80メッシュのグラビアロールで転写塗工したもので片面当たりの付着固形分量は3g/mである。このようにして空隙率32%、質量150g/mのメッシュシートを得た。
【0039】
[実施例6]
実施例3の熱可塑性樹脂層を2層構造とし、下記[配合5]より得た厚さ0.15mm、質量200g/mの軟質塩化ビニル樹脂フィルムを実施例3の基布の両面に積層した。この[配合5]による熱可塑性樹脂層1(両面併せて質量400g/m)をベース層として、この上にアクリル樹脂層(熱可塑性樹脂層2)を設けた。このアクリル樹脂層は[配合4]のアクリル樹脂塗料を80メッシュのグラビアロールで転写塗工したもので片面当たりの付着固形分量は7g/mである。このようにして質量564g/mのターポリンを得た。
[配合5]:軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム組成
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
DOP(可塑剤) 55質量部
エポキシ化大豆油 3質量部
Ba−Zn系複合安定剤 2質量部
炭酸カルシウム(充填材) 15質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 0.3質量部
酸化チタン(着色剤) 5質量部
2-(4−チアゾリル)-ベンズイミダゾール(防黴剤)を担持するシクロデキストリン
2質量部
【0040】
[実施例7]
実施例2の熱可塑性樹脂層に使用した[配合1]の「ピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子」を変更した以外は実施例2と同様にして空隙率32%のメッシュシートを得た。この熱可塑性樹脂層の質量は82g/mであった。

<ピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子の調製>
1)水1000質量部にβ−シクロデキストリン10質量部を溶解し、この水溶液にフラメトリン2.5質量部/メタノール100質量部からなる溶液を加え24時間攪拌し、フラメトリン包接シクロデキストリン化合物を得た。(シクロデキストリン:ピレスロイド系化合物=4:1)
【化2】
フラメトリン

2)上記のフラメトリン包接シクロデキストリン化合物を含む水溶液中に、親水性シリカ粒子(BET比表面積:200m/g、平均凝集粒子径1.5〜2.5μm)10質量部と、結合剤としてシランカップリング剤(β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン)1質量部、ヘキサメチレンジイソシアネート1質量部、光触媒物質として酸化タングステン(WO)ナノ粒子1質量部を加え24時間攪拌し、ピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子を含む分散液を得た。この分散液よりピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子を乾燥単離した。
【0041】
[実施例8]
実施例2の熱可塑性樹脂層に使用した[配合1]の「ピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子」を変更した以外は実施例2と同様にして空隙率32%のメッシュシートを得た。この熱可塑性樹脂層の質量は82g/mであった。

<ピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子の調製>
1)水1000質量部にβ−シクロデキストリン10質量部を溶解し、この水溶液にレスメトリン2.5質量部/メタノール100質量部からなる溶液を加え24時間攪拌し、レスメトリン包接シクロデキストリン化合物を得た。(シクロデキストリン:ピレスロイド系化合物=4:1)
【化3】
レスメトリン

2)上記のレスメトリン包接シクロデキストリン化合物を含む水溶液中に、親水性シリカ粒子(BET比表面積:200m/g、平均凝集粒子径1.5〜2.5μm)10質量部と、結合剤としてシランカップリング剤(β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン)1質量部、ヘキサメチレンジイソシアネート1質量部、光触媒物質として酸化タングステン(WO)ナノ粒子1質量部を加え24時間攪拌し、ピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子を含む分散液を得た。この分散液よりピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子を乾燥単離した。
【0042】
[実施例9]
実施例2の熱可塑性樹脂層に使用した[配合1]の「ピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子」を変更した以外は実施例2と同様にして空隙率32%のメッシュシートを得た。この熱可塑性樹脂層の質量は82g/mであった。

<ピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子の調製>
1)水1000質量部にβ−シクロデキストリン10質量部を溶解し、この水溶液に親水性シリカ粒子(BET比表面積:200m/g、平均凝集粒子径1.5〜2.5μm)10質量部と、結合剤としてシランカップリング剤(β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン)1質量部、ヘキサメチレンジイソシアネート1質量部、光触媒物質として酸化タングステン(WO)ナノ粒子1質量部を加え24時間攪拌しシクロデキストリン−シリカ複合粒子を含む分散液を得た。
2)上記のシクロデキストリン−シリカ複合粒子を含む水溶液中に、ペルメトリン2.5質量部/メタノール100質量部からなる溶液を加え24時間攪拌し、ペルメトリンを包接するシクロデキストリン−シリカ複合粒子を得た。(シクロデキストリン:ピレスロイド系化合物=4:1)このようにして得られたシクロデキストリン−シリカ複合粒子はシクロデキストリンがペルメトリンを包接し、さらにシリカ粒子の多孔質部にもペルメトリンを吸着して担持するもので、実施例2で用いたピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子よりもピレスロイド系化合物量の多いもので、さらに除放性の発現効果及び持続効果の異なるものであった。この分散液よりピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子を乾燥単離した。
【0043】
[実施例10]
実施例7のピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子の調製を実施例9の工程と同様にして行った。このようにして得られたシクロデキストリン−シリカ複合粒子はシクロデキストリンがフラメトリンを包接し、さらにシリカ粒子の多孔質部にもフラメトリンを吸着して担持するもので、実施例2で用いたピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子よりもピレスロイド系化合物量の多いもので、さらに除放性の発現効果及び持続効果の異なるものであった。
【0044】
[実施例11]
実施例8のピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子の調製を実施例9の工程と同様にして行った。このようにして得られたシクロデキストリン−シリカ複合粒子はシクロデキストリンがレスメトリンを包接し、さらにシリカ粒子の多孔質部にもレスメトリンを吸着して担持するもので、実施例2で用いたピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子よりもピレスロイド系化合物量の多いもので、さらに除放性の発現効果及び持続効果の異なるものであった。
【0045】
[実施例12]
実施例2の熱可塑性樹脂層に使用した[配合1]を[配合6]に変更した以外は実施例2と同様にして空隙率32%のメッシュシートを得た。この熱可塑性樹脂層の質量は73g/mであった。
[配合6]:ポリウレタン樹脂組成物
ポリウレタン樹脂(固形分40wt%のエマルジョン) 100質量部
ポリリン酸アンモニウム(難燃剤) 7質量部
メラミンシアヌレート(難燃剤) 7質量部
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 0.3質量部
酸化チタン(着色剤) 2.5質量部
2-(4-チアゾリル)-ベンズイミダゾール(防黴剤)を担持するシクロデキストリン
2質量部
ピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子 4質量部
※ピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子は[配合1]
に使用のもの
【0046】
[実施例13]
実施例3の熱可塑性樹脂層に使用した[配合2]を[配合7]に変更した以外は実施例3と同様にしてターポリンを得た。この熱可塑性樹脂層の質量は片面当たり165g/mであった。
[配合7]:低密度ポリエチレン樹脂フィルム組成
低密度ポリエチレン樹脂 100質量部
水酸化アルミニウム(難燃剤) 10質量部
臭素置換化合物(難燃剤) 10質量部
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 0.3質量部
酸化チタン(着色剤) 5質量部
2-(4-チアゾリル)-ベンズイミダゾール(防黴剤)を担持するシクロデキストリン
2質量部
ピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子 5質量部
※ピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子は実施例1と同じものを使用
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
実施例1〜13で得た産業資材シート(防水帆布:実施例1、4、ターポリン:実施例3、6、13、メッシュシート:実施例2、5、7〜12)は何れもユスリカの防除効果を有するもので、その6ヶ月後の防除効果(屋内外)にも優れていた。この効果は本発明において用いる「ピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子」によるもので、ユスリカなどの飛翔性害虫の防除効果に有効であるピレスロイド系化合物をシクロデキストリンが包接することで、シクロデキストリンから長期間安定して除放される効果、及びそのシクロデキストリンがシリカ粒子と複合化されることでピレスロイド系化合物包接シクロデキストリンがさらに長期間安定化されることによる相乗効果である。このような飛翔性害虫の防除効果の長期安定効果の実体は、実施例1〜13の産業資材シートの全てにおいて、その表面に「シクロデキストリン−シリカ複合粒子」が多数露出していることにあることを500倍率の光学顕微鏡で確認した。また特に「ピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子」は、実施例9〜11で使用した、シクロデキストリンがピレスロイド系化合物を包接し、さらにシリカ粒子の多孔質部にもピレスロイド系化合物を吸着して担持することで、他の実施例で用いたピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子よりもピレスロイド系化合物量が多く、さらに除放性の発現効果及び持続効果が複雑となることで、より一段と長期間安定した防除効果が得られることが明らかとなった。またシクロデキストリン−シリカ複合粒子が、さらに光触媒物質を担持することで、光触媒物質の励起作用によってシクロデキストリンが包接するピレスロイド系化合物を安定的に放出させる効果を認めた。そしてさらに熱可塑性樹脂層にシクロデキストリンに包接された防黴剤を含むことによってシクロデキストリンに寄生しようとする黴菌を長期間防除することを可能とし、得られるターポリン、帆布、メッシュシートなどの産業資材シートに黴が生えることを抑止する効果を認めた。
【0050】
[比較例1]
実施例1の防水帆布の熱可塑性樹脂層から「ペルメトリンを担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子5質量部」を省略し、新たにペルメトリン0.5質量部を配合した以外は実施例1と同様として防水帆布を得た。※ペルメトリンの配合量を同一に設定
【0051】
[比較例2]
実施例2のメッシュシートの熱可塑性樹脂層から「ペルメトリンを担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子5質量部」を省略し、新たにペルメトリン0.5質量部を配合した以外は実施例2と同様としてメッシュシートを得た。※ペルメトリンの配合量を同一に設定
【0052】
[比較例3]
実施例1の防水帆布の熱可塑性樹脂層から「ペルメトリンを担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子5質量部」を省略し、「ペルメトリンを担持するシクロデキストリン」2質量部を新たに配合した以外は実施例1と同様として防水帆布を得た。※ペルメトリンの配合量を同一に設定
【0053】
[比較例4]
実施例2のメッシュシートの熱可塑性樹脂層から「ペルメトリンを担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子5質量部」を省略し、「ペルメトリンを担持するシクロデキストリン」2質量部を新たに配合した以外は実施例2と同様としてメッシュシートを得た。※ペルメトリンの配合量を同一に設定
【0054】
[比較例5]
実施例1の防水帆布の熱可塑性樹脂層から「ペルメトリンを担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子5質量部」を省略し、「ペルメトリンを担持するシリカ粒子」3質量部を新たに配合した以外は実施例1と同様として防水帆布を得た。※ペルメトリンの配合量を同一に設定
【0055】
[比較例6]
実施例2のメッシュシートの熱可塑性樹脂層から「ペルメトリンを担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子5質量部」を省略し、「ペルメトリンを担持するシリカ粒子」3質量部を新たに配合した以外は実施例2と同様としてメッシュシートを得た。※ペルメトリンの配合量を同一に設定
【0056】
【表3】
【0057】
比較例1の防水帆布と比較例2のメッシュシートは製造直後ではユスリカの防除効果を有しKT50値に優れていたが、屋内外に晒した6ヶ月後にはその効果が消失していた。またペルメトリンを直接配合に使用したことで、防水帆布やメッシュシートの製造時に掛けられる加工熱180℃の高温に晒されることで有効成分が揮散し、特異的な臭気を発散するものであった。比較例3、5の防水帆布と比較例4、6のメッシュシートは屋内に晒した6ヶ月後にもその効果を持続していたが、屋外に晒した6ヶ月後にはその効果を消失していた。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明により得られる産業資材シートはターポリン、帆布、メッシュシートなどの態様で、特に飛翔性害虫などの防除効果(忌避効果)を長期間安定持続することができるので、スポーツスタジアムなど大型施設の屋根や庇、店舗の日除けテント、日除けモニュメント、シート倉庫、トラック幌、建築養生シート、建築防音シート、建築養生メッシュ、電照式フレキシブル看板、天井膜材、空間仕切りシート、シートシャッター、シートカバー、フレキシブルコンテナなど幅広い用途に使用することができ、さらに住居や店舗のエクステリア及びインテリアの素材のパーツ、宿営テント、リュック、レジャーシートなどキャンプ用品、その他、園芸ハウス、畜舎、ペットケージなどのパーツなどに使用することもできる。また本発明の産業資材シートは長期使用で飛翔性害虫の防除効果が消失したとしても、通常のターポリン、帆布、メッシュシートの基本性能は維持するので産業資材として使用継続することに何ら問題を有するものではない。
【符号の説明】
【0059】
1:産業資材シート(ターポリン、帆布、メッシュシート)
2:繊維織物(基布)
3:熱可塑性樹脂層(4を含有)
3−1:2層構造の熱可塑性樹脂層
3−1−1:(4)を含有する熱可塑性樹脂層(外層)
3−1−2:(4)を含有しない熱可塑性樹脂層(内層)
4:ピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン−シリカ複合粒子
4−1:シリカ粒子
4−2:シクロデキストリン
4−3:シクロデキストリン−シリカ複合粒子
4−4:ピレスロイド系化合物
4−5:ピレスロイド系化合物を担持するシクロデキストリン
図1
図2
図3
図4