特許第6119042号(P6119042)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6119042
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】空気処理装置
(51)【国際特許分類】
   A62D 9/00 20060101AFI20170417BHJP
   A62D 7/00 20060101ALI20170417BHJP
   A62B 19/02 20060101ALI20170417BHJP
   A62B 23/02 20060101ALI20170417BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20170417BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20170417BHJP
   B01J 23/89 20060101ALI20170417BHJP
   B01J 37/03 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
   A62D9/00
   A62D7/00
   A62B19/02
   A62B23/02
   B01D53/86 245
   B01D53/62 100
   B01J23/89 M
   B01J37/03 B
【請求項の数】17
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-540549(P2014-540549)
(86)(22)【出願日】2012年11月6日
(65)【公表番号】特表2015-502776(P2015-502776A)
(43)【公表日】2015年1月29日
(86)【国際出願番号】GB2012052764
(87)【国際公開番号】WO2013068737
(87)【国際公開日】20130516
【審査請求日】2015年11月2日
(31)【優先権主張番号】1119171.5
(32)【優先日】2011年11月7日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】61/556,329
(32)【優先日】2011年11月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515207293
【氏名又は名称】アングロ プラチナム マーケティング リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ポールストン, ステファン
(72)【発明者】
【氏名】スミス, アンドリュー ウィリアム ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ベネット, ステファン チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】ラウセル, エリザベス
【審査官】 松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−517614(JP,A)
【文献】 特開2004−305355(JP,A)
【文献】 特開平01−159058(JP,A)
【文献】 国際公開第91/001175(WO,A1)
【文献】 特表2003−522012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62D 9/00
A62D 7/00
A62B 18/00− 19/02
A62B 23/00− 23/06
B01D 53/86
B01J 23/89
B01D 53/62
B01J 23/89
B01J 37/03
B01J 20/00− 20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の一酸化炭素濃度を有する空気が装置に入り、第2の一酸化炭素濃度を有する呼吸可能な空気が装置から出る、空気処理のための装置であって、前記第1の濃度が前記第2の濃度より高く、
i)パラジウムと酸化鉄を含む一酸化炭素酸化触媒と、
ii)アミン又は、アミン若しくはアンモニアを放出し得る物質を含浸した吸収剤材料
を含むガス処理手段を備えた、装置。
【請求項2】
触媒が0.5から10重量%のパラジウムを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
触媒が、可溶性の鉄及びパラジウム化合物を含む酸溶液由来の、鉄とパラジウムを含む混合酸化物及び水酸化物の沈殿物を含む、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記酸化鉄及びパラジウムが、多孔性担体材料に担持されている、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項5】
触媒が、300〜1000μmの範囲の大きさの粒子を含む、請求項1から4の何れか一項に記載の装置。
【請求項6】
触媒が粒子の床として存在し、該触媒床の空気の流れ方向の最大厚みが10mm未満である、請求項1から5の何れか一項に記載の装置。
【請求項7】
触媒がコーティング中に存在する、請求項1から6の何れか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記吸収剤材料が、粒子の床、布又はフォームの形態の活性炭を含む、請求項に記載の装置。
【請求項9】
ホプカライトを含まない、請求項1からの何れか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記触媒と前記吸収剤材料との間に触媒毒除去用保護床が設置されていない、請求項1からの何れか一項に記載の装置。
【請求項11】
フィルターアセンブリの形態である、請求項1から10の何れか一項に記載の装置。
【請求項12】
ガスフィルター、フィルターカートリッジ、ガスマスク、自給式自己救命器、避難フード、個人用呼吸装置、又は空気洗浄システムの形態である、請求項1から11の何れか一項に記載の装置。
【請求項13】
9cm/秒の空気線流速で、20℃で、10分間の連続した時間にわたって、酸素含有ガス中の一酸化炭素の濃度を3600ppmから500ppm未満にまで減少可能である、請求項1から12の何れか一項に記載の装置。
【請求項14】
第1の濃度の一酸化炭素を含む空気の流れを、
i)パラジウムと酸化鉄を含む一酸化炭素酸化触媒と、
ii)アミン又は、アミン若しくはアンモニアを放出し得る物質を含浸した吸収剤材料
を含むガス処理手段に通して、前記空気に含まれる一酸化炭素の少なくとも一部を酸化させ、前記ガス処理手段の下流の空気が前記第1の濃度よりも低い第2の濃度の一酸化炭素を含むようにする工程を含む、呼吸可能な空気を形成するための空気処理方法。
【請求項15】
前記第1の濃度の一酸化炭素を含む空気の流れを、20℃で15分間、前記ガス処理手段に通し、前記第1の一酸化炭素濃度が少なくとも3600ppmである場合、前記第2の一酸化炭素濃度の最大瞬時値が500ppm未満である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
第1の一酸化炭素濃度が3600ppmであり、空気流を、9cm/秒の線速度で15分間連続して前記ガス処理装置に通した場合、ガス処理手段の下流の空気のCOのCT値が6000ppm分未満である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
第1の濃度の一酸化炭素を含む空気の流れを、パラジウムと酸化鉄を含む一酸化炭素酸化触媒と接触させ、前記空気に含まれる一酸化炭素の少なくとも一部を酸化させ、前記ガス処理手段の下流の空気が前記第1の濃度よりも低い第2の濃度の一酸化炭素を含むようにする工程を含み、前記空気を、アミン又は、アミン若しくはアンモニアを放出し得る物質を含浸した吸収剤材料とも接触させる、呼吸可能な空気を形成するための空気処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は装置に関し、詳細には、排他的ではないが、保護ガスマスク又は人工呼吸器等の呼吸装置のための空気清浄化に使用するのに適したガスフィルター、及び一酸化炭素(CO)を酸化するためのガス処理装置に使用される触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
公知であり、かつガスフィルターでCOを酸化するために使用される触媒としては、銅及びマンガン酸化物の混合物であるホプカライト、並びにアルミナ及びチタニア等の担体材料上の金及び白金等の貴金属が挙げられる。ホプカライトは一酸化炭素の酸化に有用であるが、ガスマスクフィルターでのその使用は、水分に対する感受性及びまたホプカライトが助長する相対的に発熱を伴う反応(それにより、フィルターから出る清浄化されたガスを呼吸にとって不快なほど高温にする)に起因する欠点を有することが知られている。
【0003】
JP57084744に記載された触媒は、アルミナをPd又はPt塩溶液に含浸し、次いでヒドラジン溶液を使用して金属化合物を還元することにより、市販のアルミナ担体に担持した白金又はパラジウムからなる。US4623637は、五酸化バナジウムを生成するためにバナジウム化合物で処理し、加熱したアルミナ材料に含浸したパラジウム化合物の空気浄化剤触媒としての使用を記載している。JP01159058は、特定の細孔構造を有するアルミナ支持体が、Pt又はPdとともに、Fe、Co、Ni、Mn、Cu、Cr、Sn又はCeの少なくとも1種及びPt又はPdを備えた、一酸化炭素除去触媒を記載している。触媒は水分に非常に耐性であると言われている。JP602381848は、金と、Mn、Fe、Co及びNiから選択される酸化物とからなる触媒を提供している。EP0129406は、1種又は複数の白金族金属を酸化スズ(IV)と組み合わせて含有する、COを含有する雰囲気を清浄化するための触媒装置を記載している。US4536375では、プロモーターが周期表の1b、3b、7b及び8族の1種又は複数の金属(特に、銅、ニッケル、マンガン、シリカ又はランタン)であり、貴金属が白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム又はルテニウムである、貴金属を担持した、酸化スズIV促進触媒を含む触媒を使用して、COで汚染された呼吸可能ガスを清浄化している。B.Qiaoら(Journal of Catalysis 261(2009)241〜244)は、COを酸化するための、水酸化第二鉄担持パラジウム触媒を調製した。しかし、著者らは、前記触媒が、同じ方法で調製した金触媒よりも活性が低いと結論づけた。
【0004】
ガスマスクフィルターは、一般的には、環境中に存在している可能性のある有害化合物を処理及び低減又は除去するための化学的化合物を多くの場合含浸させた活性炭等の吸収剤を含有している。ベースとなる活性炭は、通常木炭又はココナツ原料に由来する。活性炭は、有毒ガスを除去するために、銀、亜鉛、銅、クロム及び/又はモリブデン化合物等の様々な金属化合物、アルカリ金属水酸化物等の無機化合物、及びアミン、ホスフィン又は酸等の有機化合物を含浸させることができる。我々は、ガスマスクに、含浸活性炭、特に、トリエチレンジアミン等のアミン、及び/又はアンモニアもしくはアミン等の窒素含有ガスを放出し得る物質を含有する活性炭が存在すると、一酸化炭素酸化触媒の活性に悪影響を有し得ることを見出した。CO酸化触媒が、アミン化合物の存在下で安定でありその活性を維持し得ることが重要である。
【発明の概要】
【0005】
このような揮発性窒素含有材料を含む空気処理装置の製造に有用な、COを酸化するための代替触媒材料を提供することが、本発明の目的である。
【0006】
本発明によれば、我々は、第1の一酸化炭素濃度を有する空気が装置に入り、第2の一酸化炭素濃度を有する呼吸可能な空気が装置から出る、空気処理のための装置であって、前記第1の濃度が前記第2の濃度より高く、
i)パラジウムと酸化鉄を含む一酸化炭素酸化触媒と、
ii)揮発性窒素含有化合物源と
を含むガス処理手段を備えた、装置を提供する。
【0007】
前記装置は、パラジウムと酸化鉄を含む触媒を含む、一酸化炭素の除去により空気を清浄化するのに適したガス処理装置を備える。
【0008】
前記装置は、個人の防御設備(PPE)で使用されようと、潜水艦又は他の閉鎖環境等の画定された空間内で空気をきれいにするために集団防御システムで使用されようと、様々なガスマスク、呼吸装置及び空気清浄設備で使用される、ガスフィルター及びガス洗浄器を含む多様な形態をとり得る。本発明の装置は、ガスフィルター及びろ過ユニット、並びに活性ガス洗浄ユニットを備えることが意図される。本発明が適用されるガス処理装置の例としては、空気清浄用独立型システム、ガスマスク用ガスフィルター及びフィルターカートリッジ、自給式自己救命器(SCSR)、避難フード、並びにガス流からの一酸化炭素除去を必要とする他のタイプの呼吸装置が挙げられる。
【0009】
本発明の第2の態様において、我々は、
i)パラジウムと酸化鉄を含む触媒と、
ii)揮発性窒素含有化合物源と
を含む、呼吸可能な空気を生成するための空気清浄装置で使用するのに適した、ガス処理装置を提供する。
【0010】
揮発性窒素含有化合物源は、標準的にはアミンであり、一般的には活性炭である吸収剤に通常含浸されている。吸収剤は、粒子又はフォーム(発泡体)もしくは布(クロス)の形態で存在していてもよい。通常、活性炭吸収剤は、特定の最大圧力低下を有するガスの通気を提供し得る大きさ及び粒度分布の粒子の床の形態として提供される。ガスマスク又は避難フード用フィルターにおいて使用するために、通常、約300〜1000μm、特に400〜850μm(20×40メッシュ)の範囲の粒径の含浸活性炭が提供される。ガス処理装置において使用するのに適した含浸活性炭の特定の等級は、様々な供給業者から市販されている。このような材料の例は、Calgon Carbon Corporation又はChemvironから入手できる、RESPCARB(商標)及びASZM−TEDAである。
【0011】
従って、本発明の好ましい実施態様では、前記装置は、
i)パラジウムと酸化鉄を含む触媒と、
ii)1〜10重量%、特に1〜5重量%のアミン、特にトリエチレンジアミンを含浸した活性炭と
を含む、呼吸可能な空気を生成するための空気清浄装置で使用するのに適した、ガスフィルターを備える。
【発明を実施するための形態】
【0012】
金触媒は一酸化炭素の除去に有効であり、より古いホプカライト触媒に代わるものとして、ガスマスク用に市販されている。しかし、公開された情報源によると、金触媒は、アンモニア及びアミンが触媒作用を阻害し触媒活性を低下させる傾向があるので、それらから保護する必要がある。従って、金触媒は、ガスを触媒と接触させる前に、ガス流から触媒毒を取り除くために、保護床(ホプカライトであってもよい)と組み合わせて使用することが推奨される。保護床の使用によりガスフィルターの費用、複雑度及び容積が増大し、これは、フィルターが、例えば、小型のフィルターを必要とするガスマスク又は避難フードでの使用を意図する場合の特有の問題である。触媒が窒素含有化合物による阻害に対して耐性であることは、本発明のフィルターの特定の利点である。従って、保護床がない場合には、前記フィルターは、好ましくは触媒と、少なくとも窒素含有化合物を充填した吸収剤及び場合により他の活性ガス処理化合物とを含む。窒素含有化合物による阻害に対するパラジウム−酸化鉄触媒の耐性は、必要であれば、触媒を窒素含有化合物源(例えば、アミン含浸活性炭の粒子)と混合することを可能にするが、ガス透過性膜、メッシュ、ガーゼ又は類似のガス透過性バリアにより、窒素含有化合物源から触媒を物理的に分離することがより通例である。例えば、ガスフィルターの形態のガス処理装置は、含浸活性炭粒子の床を含む第1の層と、パラジウムと酸化鉄を含む触媒の粒子の床を含む第2の層とを備えていてもよく、前記第1及び第2の層はガーゼにより分離されている。
【0013】
好ましくは、触媒は0.5から10重量%、更に好ましくは1から4重量%のPdを含む。好ましくは、組成物の残りは鉄及び酸素を含む。本発明の一実施態様では、触媒は、本質的にパラジウム、鉄及び酸素からなる。好ましい実施態様では、触媒は本質的に0.5〜10重量%のパラジウム、更に好ましくは1から4重量%のPdからなり、残りは本質的に鉄及び酸素である。「本質的になる」により、我々は、パラジウム、鉄及び酸素以外の元素が存在する場合には、一酸化炭素酸化触媒の活性に重大な影響を与えない程度に存在することを意味する。
【0014】
触媒は、共沈法により製造することができる。好ましい共沈法では、パラジウム化合物の溶液を鉄化合物の溶液と混合した後、好ましくは約25〜100℃の間、特に25〜80℃の温度で、混合しながらゆっくりとアルカリ沈殿剤の溶液に混合溶液を添加する。添加が完了したら、混合物を少なくとも30分間、標準的には約30分〜2時間、約30〜80℃の温度でエージングさせることができる。適切なパラジウム化合物としては、硝酸パラジウム、塩化パラジウムが挙げられる。適切な鉄化合物としては、硝酸鉄、塩化鉄、硫酸第一鉄が挙げられる。沈殿剤の溶液は、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム、炭酸ナトリウム又は炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム又は重炭酸カリウム)、水酸化アンモニウム、及び水酸化テトラメチルアンモニウム等の有機塩基等の、触媒調製の分野で周知のものから選択することができる。次いで、沈殿した混合金属オキシ水酸化物生成物を上清から分離し、水で洗浄し、存在する場合には微量のアルカリ金属を除去する。好ましくは、洗浄は、沈殿物が0.5%未満のアルカリ金属、更に好ましくは0.2%未満、特には0.1%未満のアルカリ金属を含有するまで続ける。次いで、乾燥し、還元工程に供される。場合により、乾燥した材料を空気中、高温下、例えば300〜600℃で少なくとも30分間、焼成する。我々は、約50℃を超えるが、通常は約300℃未満、特に150℃未満、例えば70〜100℃の温度で、水素を含有するガス流、例えばN中の約5%Hと接触させることにより実施した場合に、還元が効果的であることを見出した。場合により、連続又は半連続沈殿プロセスを使用することができ、半連続プロセスの場合には一緒又は別個の段階で、アルカリ沈殿剤とパラジウム及び鉄の塩との溶液を、羽根車等の混合手段を備えた沈殿容器に供給する。連続又は半連続沈殿法においては、沈殿段階の滞留時間は、好ましくは1分未満である。次いで、混合物を別の容器に移し、エージング、加熱、洗浄、ろ過、乾燥、及び/又は他のプロセス工程に供することができる。
【0015】
乾燥後、沈殿は、酸化状態が2+のPdを有する、パラジウム−鉄オキシ水酸化物である。試料は、X線回折(XRD)に対して非晶質である。水素中で還元した後、XRDによりわかるように、低結晶化度のマグネタイトの広いピークの試料はPd/Feオキシ水酸化物とPd/Feとの混合物であると思われる。Fe3+の一部はPd2+によりFe2+及びPd金属に還元されている。我々はこの種をPd−FeOxと呼ぶ。試料を最初に500℃まで加熱すると、我々は、マグネタイトの代わりにヘマタイトを観察する。本明細書においては、我々が、空気中の一酸化炭素の酸化に使用する触媒中の「酸化鉄」又は「FeOx」に言及する場合、我々は、あらかじめ焼成しようがしまいが、上述したような鉄酸化物/水酸化物種の還元形態を意味する。我々が、「Pd−FeOxの非還元形態」もしくは「沈殿Pd−FeOx」又は類似の用語に言及する場合、我々は、上記の還元形態ではないが、その前駆体である、沈殿、乾燥等の後の物質を意味する。
【0016】
本発明による装置は、少なくとも6cm/秒のガス線流速で、更に好ましくは少なくとも9cm/秒の線流速で、20℃(更に好ましくは0から25℃の範囲の任意の温度)で、10分間の連続した時間で、酸素含有ガス中の一酸化炭素の濃度を、3600ppmから500ppm未満に低減することができる。好ましくは、前記第1の濃度の一酸化炭素を含有する空気流を、20℃で15分間、更に好ましくは1時間までの時間、ガス処理手段に通し、前記第1の一酸化炭素濃度が少なくとも3600ppmである場合、ガス処理手段は、前記第2の一酸化炭素濃度の最大瞬時値を500ppm未満となるように空気を処理することができる。好ましくは、本発明による装置は、少なくとも6cm/秒の直線ガス流速度、更に好ましくは9cm/秒の線流速、20℃(更に好ましくは0から25℃の範囲の任意の温度)で、10分間の連続した時間で、酸素含有ガス中の一酸化炭素の濃度を10000ppmから500ppm未満に低減することができる。好ましくは、前記第1の濃度の一酸化炭素を含有する空気流を20℃で15分間、更に好ましくは1時間までの時間ガス処理手段に通し、前記第1の一酸化炭素濃度が少なくとも9000ppmであると、ガス処理手段は、前記第2の一酸化炭素濃度の最大瞬時値が500ppm未満であるように、空気を処理することができる。
【0017】
本発明のガス処理装置で使用される触媒は、約0から約50℃の温度範囲にわたってCOを酸化するのに効果的である。当該技術分野で使用される、CO処理触媒の有効性の度合いは、ppm分で表されるCT値として知られている。CTは、所与の第1の濃度のCOを含有する処理されるべき空気の所与の流量について、試験の期間(分)にわたる、触媒床のガス流の下流のCOの累計濃度(ppm)を表す。特定の試験期間にわたるCOの累計濃度は、時間に対して、下流のCO濃度をppmでプロットした部分の下の面積として計算することができる。CT値は、その蓄積された濃度を測定する際の時間(分)を乗じた累計濃度(ppm)として表される。第1の一酸化炭素濃度が3600ppmで、空気流が、9cm/秒の線速度で15分間の連続した時間でガス処理装置を通される場合、ガス処理手段の下流の空気内のCOのCT値は6000ppm分未満である。本発明の特定の利点は、約20℃での標準的使用で装置から出る処理されたガスが、過度の不快感なしに呼吸できるように45℃未満の温度を有することである。
【0018】
触媒は、粒子又はフォームもしくは布の形態で存在していてもよい。触媒材料が顆粒の形態で必要とされる場合、沈殿を、使用されることが意図されるガスフィルター装置で使用するために適切な大きさ及び形状の粒子に形成してもよい。適切な粒径及び形状は、触媒粒子の意図される用途に依存する。ある種のガスマスクフィルターの用途では、2mm未満の最大寸法の粒径を必要とするが、他の用途では、異なる大きさ又は粒度分布を必要とする。通常、触媒は、特定の最大圧力低下によりガスの貫流を実現することができる大きさ及び粒度分布の粒子の床の形態で提供される。ガスマスク又は避難フード用のフィルターで使用するために、触媒は好ましくは、約300〜1000μm、特に400〜840μm(20×40メッシュ)の範囲の粒径を有する顆粒の形態で存在する。より大きな粒子は触媒の床を通して溝を形成することにつながる可能性があり、そのため一部のガスが適切に処理されずにフィルターを通過し得る。粒子があまりに小さい場合、触媒床を通した圧力低下が増大し、そのため空気がフィルターを通して吸い込まれることがより困難になる。ガスフィルター床を形成する粒径についての仕様は、呼吸装置に関する適用規格に示されており、ガス処理装置が意図される特定の用途に適合するように当業者は選択することができる。適切な大きさ及び形状の粒子は、乾燥及び/もしくは焼成された沈殿を粉砕及び/又はふるいにかけることにより、さもなければ乾燥したもしくは湿潤した沈殿についての乾式圧縮、造粒、錠剤化、又は押し出し成形等の他の形成方法を使用することにより、形成してもよい。好ましい方法において、触媒は乾式圧縮を使用して、例えば、圧延圧縮法により粒子に形成され、必要であれば、その後圧縮された材料を粒子に砕き、次いで粒子を必要な粒度分布にふるいわける。我々は圧縮法により製造された粒子が、摩耗による損傷に耐久性を有することを見出した。触媒は、粒子に形成された後、標準的には還元され、場合により不動態化される。
【0019】
触媒が粒子の床として存在する場合、好ましくは、触媒床は10mm未満、更に好ましくは5mmを超えない空気流の方向の最大厚みを有する。一酸化炭素を酸化するための触媒の活性が相対的に高いので、必要なCO濃度の低下が相対的に薄い触媒床を使用して達成することができることは、本発明の触媒を使用することの特定の利点である。これにより、装置を相対的に小型にすることが可能である。
【0020】
形成された触媒粒子は、無機又は有機バインダー、潤滑剤等の追加の物質を含んでもよい。しかし、我々は、通例使用されているバインダーは、エージング後に、特に、アミン又はアンモニア等の揮発性窒素含有化合物の存在下でのエージング後には、触媒のCO酸化活性を弱めることを発見したので、現在は配合に有機又は無機バインダーをまったく含まないことが好ましい。ある種のバインダーは、機械処理からの損傷に対して耐性をあまり有さない軟性粒子を生成することもわかっている。従って、ベーマイト、コロイド状シリカ、アルミナセメント(ciment fondue)、セメント、セルロース誘導体、キサンタンガム、アラビアゴム、又はポリビニルアルコール等の有機もしくは無機バインダーを含有しないことが好ましい。
【0021】
触媒は代替として、触媒支持材、例えば、一枚岩、ミニリス、球体、フォーム又は他の形状の支持材の粒子をコーティングするために使用されるコーティング組成物中に配合してもよい。また、コーティングは、本発明のガス処理装置の一部に直接塗布してもよい。
【0022】
代替として、CO酸化触媒は、含浸法により調製してもよい。適切な含浸法は、金属化合物を含有するある容量(容量は支持材の孔の容積を満たすように計算され、通常は10%未満の過剰で使用する)の溶液を、噴霧又は回転により多孔質支持材に含浸する、周知の初期湿式含浸法を使用する。この方法では、貴金属及び鉄化合物が、混合溶液中で一緒に、又は適切な支持材中に別個に含浸される。含浸法を使用する利点は、ガスフィルター又は洗浄器媒体中に形成するために適切な特性を有する支持材を選択できることである。硬度、粒径及び形状等の特性、また最終的な触媒の多孔率は、適切な支持材の選択により得ることができる。例えば、2mm未満の寸法で高表面積の粒子は、ガスマスクフィルターを製造するための使用に望ましいと、我々は考えている。更に粒子は、触媒の調製、取り扱い及び充填の際に、微粒子及び粉末を形成しないように硬く耐久性を有するべきである。我々は、アルミナ、特にガンマアルミナ粒子が、触媒支持体として使用するのに特に適していることを見出した。含浸により形成される触媒中の鉄の量は、好ましくは1〜10%、例えば1〜5%である。
【0023】
CO酸化触媒は、分離触媒床、例えば多層配置における触媒の層として、あるいは活性炭材料、場合により、窒素含有化合物を含浸した吸収剤等の空気清浄システムの他の要素構成成分と混合され、ガスフィルター中で使用することができる。
【0024】
本発明を、添付図面を参照し、以下の実施例において更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の触媒を使用した、時間に対するCO及びCO濃度のプロットである。
図2】比較例の触媒を使用した、時間に対するCO及びCO濃度のプロットである。
図3】比較例の触媒を使用した、時間に対するCO及びCO濃度のプロットである。
図4】本発明の触媒を使用した、時間に対するCO濃度のプロットである。
図5】本発明の触媒を使用した、時間に対するCO濃度のプロットである。
【実施例】
【0026】
実施例1:沈殿によるPd−FeOx触媒の調製
オーバーヘッドスターラー及び還流冷却器を備えた10Lのガラス容器中で、KCO(1577.86g)を脱塩水5Lに溶解し、この溶液を300rpmに設定した撹拌機により60℃まで加熱した。これとは別に、Fe(NO.9HO(2529.90g)及びPd(NO(152.44g)を水5Lに溶解した。Pd/Fe溶液を、60分間かけ、ポンプによりKCO溶液の表面より下に添加した。すべてのPd/Feを添加した後、得られた褐色のスラリーを60℃に1時間保持した後、ろ過により固体を集めた。固体を、伝導率が50μS未満になるまで、60℃の脱塩水2Lずつで入念に洗浄した。洗浄後、フィルター上で固体触媒を乾燥させ、ゲル状の褐色固体を得、その後、この固体を空気乾燥器中、105℃で48時間乾燥させた。乾燥した固体を破砕し、425から850μmの間にふるい分けし、2つの部分に分けた。乾燥粒子の1つの部分を、空気中、500℃で2時間焼成し(10℃/分の加熱勾配、500℃に2時間保持し、次いで30℃/分で80℃まで冷却)、その後、80℃で、N中5%Hを流しながら、3時間還元した。次いで、試料を30℃より低く冷却し、酸素含有ガスを徐々に導入することにより不動態化した。第2の部分は焼成せず、2℃/分の勾配速度で加熱した後、80℃で還元し、上述のように不動態化しただけであった。XRDによる焼成粒子の一部の解析により、試料の結晶化度が低いことが分かった。還元後、XRDによる解析により、この材料の結晶化度は低いが、一部のPd金属及び一部のマグネタイトのピークが示される。この材料の誘導結合プラズマ発光分光分析装置による元素分析により、この材料がPd2.35%及びK0.08%を含むことが分かった。他のすべての金属元素は0.1%未満で存在した。
【0027】
実施例2(比較例)Pt−FeOx触媒の調製
硝酸パラジウムの代わりに、硝酸白金を使用し、実施例1に記載した方法に従い、触媒を製造した。オーバーヘッドスターラー及び還流冷却器を備えた2Lの丸底フラスコ中で、KCO(47.39g)を脱塩水500mLに溶解した。次いで、得られた溶液を、300rpmに設定したスターラーを使用して60℃まで加熱した。これとは別に、Fe(NO.9HO(75.90g)及びPt(NO(2.45g)を水500mLに溶解した。Pt/Fe溶液を、60分間かけ、ポンプによりKCO溶液の表面より下に添加した。すべてのPt/Feを添加した後、得られた褐色のスラリーを60℃に1時間保持し、ろ過により固体を集めた。固体を、伝導率が50μS未満になるまで、60℃で脱塩水2Lずつで入念に洗浄した。洗浄後、フィルター上で固体触媒を乾燥させ、ゲル状の褐色固体を得、その後、この固体を空気乾燥器中、105℃で48時間乾燥させた。乾燥した固体を425から850μmの間にふるい分けし、2℃/分の勾配速度で加熱した後、80℃で還元し、実施例1に記載したように不動態化した。この材料の誘導結合プラズマ発光分光分析装置による元素分析により、この材料がPt2.39%及びK0.08%を含むことが分かった。
【0028】
実施例3(比較例):Au−FeOx触媒の調製
硝酸パラジウムの代わりに、四塩化金酸を使用し、実施例1に記載した方法に従い、触媒を製造した。
オーバーヘッドスターラー及び還流冷却器を備えた2Lの丸底フラスコ中で、KCO(47.55g)を脱塩水500mLに溶解した。次いで、得られた溶液を、300rpmに設定したスターラーを使用して60℃まで加熱した。これとは別に、Fe(NO.9HO(75.90g)及びHAuCl(0.78g)を水500mLに溶解した。Au/Fe溶液を、60分間かけ、ポンプによりKCO溶液の表面より下に添加した。すべてのAu/Feを添加した後、得られた褐色のスラリーを60℃に1時間保持し、ろ過により固体を集めた。実施例2に記載したように、個体を入念に洗浄し、乾燥し、破砕し、ふるい分けした。この材料の誘導結合プラズマ発光分光分析装置による元素分析により、この材料がAu2.22%及びK0.06%を含むことが分かった。
【0029】
実施例4 CO酸化試験
約21℃及び約90%の相対湿度で、実施例1で製造した、ふるい分けした顆粒(ふるい分けサイズ850〜425μm)0.05gを、内径4mmの管状の栓流反応器に入れた。N中20%O、CO3600ppmで構成されるガス流を50秒後に導入し、反応器を通しガス流を100mL/分に維持した。赤外線ガス分析装置を使用し、排出ガスの組成を分析し、CO及びCO濃度のグラフを10分間記録した。結果を図1に示し、10分間の試験の間、COの破過(breakthrough)は認められない。図1において、上部の線(実線)は、反応器チューブから出るガス中のCOの濃度を表し、下部の線(点線)はCO濃度を表す。
【0030】
実施例5 CO酸化試験
実施例2及び3に記載したAu及びPt触媒について、実施例4に記載したように試験を行い、結果を図2に示した。10分間の試験の間に、COの顕著な破過が明らかとなった。これは、Pd/FeOxが他の2種の触媒より優れていることを示す。
【0031】
実施例6(比較例):Au/TiOの調製
室温で、HAuCl(4.05g)を脱塩水4.5Lに溶解し、0.1MのNaOH溶液を、溶液のpHが約10.75になるまで室温で添加した。pHが安定した時点で、約5分かけてDegussa P25 TiO(100g)を添加した。TiOの添加により、pHが7.81に低下したので、更に多少の0.1MのNaOH溶液を添加し、pHを9〜10に上昇させた。得られた混合物を1時間撹拌し、pHを9から10の間に維持するのに必要な0.1MのNaOHを添加した。TiOを添加した後、合計で78mLの0.1MのNaOHを混合物に添加した。
1時間撹拌した後、ろ過により固体を集めた。ろ液の伝導率が10μS未満になるまで、固体を脱塩水で洗浄した。次いで、固体を、オーブン中一晩105℃で乾燥し、生成物96.02gを薄紫色の粉末として得た。
【0032】
触媒エージング手順
エージング手順A:ガスマスクフィルターで一般的に見られるタイプの、アミンを含浸させた活性炭の存在下、触媒のエージングを実施した。エージング試験で使用される活性炭は、トリエチレンジアミン(TEDA)1重量%を含有する、市販の活性炭であった。触媒のかさ容積の3倍に相当するかさ容積を有する量の活性炭と一緒に、触媒をガラスバイアルに入れた。脱脂綿により、触媒層を活性炭層から分離した。窒素で流したフォイルバッグ中、減圧下で、バイアルを密封した。バッグを70℃に5週間維持した。エージング後、試験のために触媒(活性炭なし)をバイアルから取り出した。
活性炭及びエージングプロセスの効果を確認するために、2つの比較試験を実施した:
C1:Aに記載されたエージング手順は、活性炭の非存在下に実施された。
C2:触媒試料を、空気中、ガラス瓶に密封し、室温で5週間貯蔵した。
【0033】
実施例7:(比較例)Au/TiO上の活性炭によるエージングの効果
実施例6で調製したAu/TiO触媒の試料を、前述した手順に従いエージングした。更なる試料を比較手順C1及びC2に従って処理した。エージング及び比較手順に続き、実施例4に記載した試験を使用してCO酸化について、触媒の試験を行った。エージングしていない触媒試料についても試験を行った。結果を図3に示す。結果により、エージングしていないC2試料は、COスリップをほとんど生じなかったが、70℃でエージングした試料は、活性炭の存在下でエージングしたエージング手順Aの試料とともにかなりのスリップを示し、CO酸化活性がほとんどないことを示したことがわかる。
【0034】
実施例8:活性炭Pd/FeOxによるエージングの効果
Pdの装填量をいろいろ変化させて、実施例1に記載した調製手順を使用して、異なる量のPdを含有する一連の触媒を調製した。500℃の空気中で2時間還元する前に、各触媒試料を焼成した(10℃/分の加熱勾配、500℃に2時間保持、次いで30℃/分で80℃まで冷却)。各触媒の第2の試料について、焼成せずに、実施例1に記載したように水素を還元した後に試験を行った。あらかじめ焼成した触媒及び焼成していない触媒のそれぞれの試料を前述のエージング手順Aに従ってエージングさせた。それぞれの第2の試料は、エージングしていないものについて試験を行った。実施例4の記載に従い、CO酸化活性について、エージングしていない触媒及びエージングした触媒の試験を行った。
【0035】
触媒を通して最大瞬間COスリップ(ppm)を測定した。これを表1に示す。Pdの装填量は標準的な装填量である。データによれば、低いPd装填量(4重量%未満)では、焼成していない触媒は焼成した触媒よりもCOスリップが低く、2重量%未満のPd装填量のエージングした触媒は、エージングしていない触媒よりもかなり多くのCOスリップが示されることがわかる。
【0036】
【0037】
実施例9:粒状Pd/FeOxの調製及び機械試験
実施例1に従って製造した、乾燥した2.5%のPd/FeOx触媒を、0.40mmのConidur(商標)スクリーンを備えた、Alexanderwerk RAN 70卸し金/シュレッダーによりあらかじめ破砕した。次いで、破砕した粒子を、50から140バールの間の圧縮力を使用し、ロール圧縮器(Alexanderwerk WP120)を通過させた。得られた触媒粒子を0.4〜0.8mmの粒径にふるい分けし、実施例1に記載したように、80℃で還元した。次いで、触媒を約108mm×75mmの面積寸法を有するガスマスクフィルターアセンブリ中に密封し、TEDAを含有する、12mmの厚さの床の活性炭と共に4.5mmの厚みの床を得た。次いで、フィルターアセンブリを、振動条件についてのEscape HoodsのNIOSH要件、及びNIOSH Standard Test Procedure:CET−APRS−STP−CBRN−0411:「Laboratory Durability Conditioning Process for Environmental,Transportation and Rough Handling Use Conditions on Chemical,Biological,Radiological and Nuclear(CBRN)(Air−Purifying or Self−Contained)Escape Respirator」に記載された、乱暴な取り扱いによる落下試験(rough handling drop test)をシミュレーションするために処理した。次いで、フィルターアセンブリを通過する32L/分の流速で、90%の相対湿度の空気中、3600ppmのCOのガス組成物について、25℃で、フィルターアセンブリのCO酸化試験を行った。出口のCO濃度により、たったの4ppmのCOの破過が示される。試験の間に触媒粒子が破壊されると、空隙及びチャネリングの外観により、COがフィルターを通過したことが予想される。結果により、少量のCOがフィルターを通過しただけであることがわかる。
【0038】
実施例10:有機バインダーを含む組成物
乾燥した、非還元Pd/FeOxと、アラビアゴム、キサンタンガム、ポリビニルアルコール(PVA)及びヒドロキシプロピルセルロース(HPC)から選択される有機バインダーとを含有する4種の異なる組成物を顆粒に製造した。上記バインダーは、試料の性能に悪影響を及ぼす可能性のある高温での処理を必要としないので、これらを選択した。乾燥した時にバインダー2.5重量%を含有する粒状組成物を得るのに十分な量で、Pd2.5%を含む、乾燥した非還元Pd−FeOx触媒粉末の別個の試料に、各バインダーを水溶液として添加した。触媒及びバインダー溶液を、Speed Mixer中、3000rpmで1分間混合し、粒状生成物を得た後、105℃で乾燥し、425〜850μmにふるい分けし、上記実施例1に記載したように80℃で還元した。得られた粒状触媒材料の試料を、上記エージング手順Aを使用し、3週間エージングさせた。エージングした後、CO酸化試験を行った。エージング後のすべてのバインダーの対応する最大COスリップを表2に示す。これらの結果により、バインダーを使用して粒状とすると、活性炭と接触させてエージングした後に、触媒の性能に悪影響を及ぼすことがわかる。
【0039】
【0040】
実施例11:無機バインダーを含む組成物
Pd2.5%を含む乾燥した非還元Pd−FeOx触媒粉末を包含する、別個の組成物を、乾燥した時に2種の異なる無機バインダー2.5重量%を含有するように形成した。スラリーの形態でバインダーを触媒に添加し、混合し、乾燥し、実施例9に記載したように還元した。エージングさせない試料、並びに1週間及び2週間エージングした後の試料について試験を行った。試料についての対応する最大COスリップを表3に示す。
【0041】
【0042】
実施例12:含浸による触媒調製
表面積が100m/gより大きいガンマアルミナ粉末10gを、Pd相当物(0.5g)及びFe(0.25g、硝酸鉄として)、並びに水2mLを含有する、硝酸パラジウム及び硝酸鉄の混合溶液に、初期湿式含浸法を使用して含浸し、ここで、含浸溶液の容量は、アルミナの全細孔容積±10%を満たすように計算される。粉末を、105℃のオーブン中で12時間乾燥し、0.4〜0.8mmまでペレット化した。次いで、形成した試料を、N中の5%H下で2時間還元させた。最終的に、触媒を空気中で不動態化した。得られた触媒は、ガンマアルミナに対し、Pd5重量%及びFe2.5重量%を含有していた。上記実施例4に記載した試験法を使用し、CO酸化性能について触媒の試験を行った。10分間の試験の間、COの破過がないことは明らかだった。
【0043】
実施例13:貯蔵に続く、より高い入口濃度のCOでのCO酸化試験
還元温度を90℃にした以外は、実施例1に従って製造した触媒を使用し、実施例9に記載したように、ガスマスクフィルターアセンブリを製造した。次いで、アセンブリを、密封したフォイルパック中、N雰囲気下に、周囲温度で6ヶ月間貯蔵した。貯蔵後、パックを開き、アセンブリから触媒を抽出した。ある量の触媒を、室温(約21〜25℃)で約90%の相対湿度で、内径4mmの管状栓流反応器に入れた。触媒の使用量は、反応器中に、4mm長の床(0.05g)又は6mmの床(0.075g)を形成するのに十分であった。N中20%Oのガス混合物中9600ppmのCOで構成されるガス流を50秒後に導入し、反応器を通して、13cm/秒の線速度でガス流を維持した。出口のガス組成を、赤外線ガス分析装置を使用して分析し、1時間にわたってCO濃度のグラフを記録した。結果を図4に示す。
【0044】
実施例14:貯蔵に続くCO酸化試験
室温(約21〜25℃)及び約90%の相対湿度で、貯蔵後にガスフィルターアセンブリから抽出した触媒0.05gを、内径4mmの管状の栓流反応器に入れた。N中20%Oのガス混合物中3600ppmのCOで構成されるガス流を50秒後に導入し、反応器を通して、13cm/秒の線速度でガス流を維持した。赤外線ガス分析装置を使用し、出口のガス組成を分析し、CO及びCO濃度のグラフを1時間にわたって記録した。結果を図5に示す。
図1
図2
図3
図4
図5