(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
利用側との間で循環する熱媒体を加熱または冷却するための、第1熱交換器(58a)を有する第1熱源機(50a)と、第2熱交換器(58b,58c)を有する第2熱源機(50b,50c)と、
前記第1熱交換器(58a)によって前記熱媒体が加熱または冷却されるように前記熱媒体を導く第1流路(40a)と、
前記第2熱交換器(58b,58c)によって前記熱媒体が加熱または冷却されるように前記熱媒体を導く第2流路(40b,40c)と、
前記利用側から流れてくる前記熱媒体を、前記第1流路(40a)と前記第2流路(40b,40c)とに分けて送ることが可能となるように接続された上流側接続部(14)と、
前記第1流路(40a)の下流側を流れる前記熱媒体と、前記第2流路(40b)の下流側を流れる前記熱媒体と、を合流させて、前記利用側に送ることが可能となるように接続された下流側接続部(21)と、
前記下流側接続部(21)、前記上流側接続部(14)、前記第1流路(40a)、および、前記第2流路(40b)の間で前記熱媒体を循環させる循環手段(25,26)と、
前記第1流路(40a)における前記熱媒体の流量と、前記第2流路(40b)における前記熱媒体の流量と、の流量比率を調節可能な流量調節手段(41a、41b,41c)と、
を備え、
前記第1熱源機(50a)と前記第2熱源機(50b,50c)とは、運転効率が異なっており、
前記流量調節手段(41a、41b,41c)は、
前記流量比率を調節して、前記第1流路(40a)における前記第1熱交換器(58a)の出口の前記熱媒体の温度と、前記第2流路(40b,40c)における前記第2熱交換器(58b,58c)の出口の前記熱媒体の温度と、を相違させることで、
前記第1流路(40a)の前記熱媒体の流量を第1最低流量以上に維持しつつ、前記第2流路(40b,40c)の前記熱媒体の流量を第2最低流量以上に維持しつつ、前記下流側接続部(21)で合流した後の前記熱媒体の温度を目標温度に維持させたままであっても、前記第1熱源機(50a)の消費電力と前記第2熱源機(50b,50c)の消費電力の合計値を小さくさせる、
空調システム(100)。
前記下流側接続部(21)から前記上流側接続部(14)に向けて、加熱手段および冷却手段を通過させることなく前記熱媒体を送るバイパス回路(49)をさらに備えた、
請求項1または2に記載の空調システム(100)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように、従来の空調設備では、利用側で要求される負荷を処理できるように、複数の熱源のそれぞれの出力および各一次ポンプの出力が調整されている。
【0006】
ここで、各一次ポンプは、それぞれ、複数の熱源のうち対応して設けられている熱源を通過した後の熱媒体の温度が目標温度で一致するように、出力制御されている。各分岐された配管の上流側は、還ヘッダでまとめられているため、複数の熱源のそれぞれに送られる熱媒体の温度は、いずれの配管においても同じ温度となっている。そして、複数の熱源のそれぞれを通過して出てくる熱媒体の温度は、各一次ポンプの出力制御によって、いずれの配管においても目標温度で一致させている。これにより、往ヘッダにおいてまとめられた熱媒体の温度についても目標温度とすることができている。
【0007】
また、各分岐された配管を通過する熱媒体の流量には、熱源を通過する部分において凍結が生じるため、定格流量に対して所定の率を乗じて得られる下限流量が設定されている。したがって、各分岐された配管には、少なくとも下限流量以上の熱媒体を通過させることが求められる。
【0008】
他方で、複数の熱源は、それぞれ消費電力を小さく抑えつつ必要な能力を発揮できるように制御されることが求められる。特に、複数の熱源について容量やタイプが異なる等によって種類が異なる熱源が組み合わされて採用された設備を用いた場合には、熱源の合計の消費電力を小さく抑えるための運転状態では、各熱源の能力が異なる状態になることがある。
【0009】
ところが、消費電力を小さく抑えるために各熱源の能力が異なる状況を実現しようとして、各一次ポンプの出力を制御しようとすると、熱源の入口の熱媒体の温度と熱源の出口の熱媒体の温度が各分岐された配管で一致させる制御を行う場合には、熱媒体の下限流量を下回ってしまう配管が生じてしまい、消費電力を小さく抑えることができない。
【0010】
本発明は上記上述した点に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、複数の互いに容量または種類の異なる熱源を用いて利用側で要求される負荷を処理する場合に、熱源を通過する熱媒体が流れる配管における流量が下限流量を下回ることなく、必要な電力を小さく抑えることが可能な空調システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1観点に係る空調システムは、第1熱源機、第2熱源機、第1流路、第2流路、上流側接続部、下流側接続部、循環手段、および、流量調節手段を備えている。第1熱源機は、利用側との間で循環する熱媒体を加熱または冷却するための第1熱交換器を有している。第2熱源機は、利用側との間で循環する熱媒体を加熱または冷却するための第2熱交換器を有している。第1流路は、第1熱交換器によって熱媒体が加熱または冷却されるように熱媒体を導く。第2流路は、第2熱交換器によって熱媒体が加熱または冷却されるように熱媒体を導く。上流側接続部は、利用側から流れてくる熱媒体を、第1流路と第2流路とに分けて送ることが可能となるように接続されている。下流側接続部は、第1流路の下流側を流れる熱媒体と、第2流路の下流側を流れる熱媒体と、を合流させて、利用側に送ることが可能となるように接続されている。循環手段は、下流側接続部、上流側接続部、第1流路、および、第2流路の間で熱媒体を循環させる。流量調節手段は、第1流路における熱媒体の流量と、第2流路における熱媒体の流量と、の流量比率を調節可能である。第1熱源機と第2熱源機とは、運転効率が異なっている。流量調節手段は、流量比率を調節して、第1流路における第1熱交換器の出口の熱媒体の温度と、第2流路における第2熱交換器の出口の熱媒体の温度と、を相違させることで、第1流路の熱媒体の流量を第1最低流量以上に維持しつつ、第2流路の熱媒体の流量を第2最低流量以上に維持しつつ、下流側接続部で合流した後の熱媒体の温度を目標温度に維持させたままであっても、第1熱源機の消費電力と第2熱源機の消費電力の合計値を小さくさせる。
【0012】
この空調システムでは、第1熱源機と第2熱源機の複数台の熱源機が設けられており、第1熱源機と第2熱源機とは運転効率が異なっている。ここで、利用側熱交換器における負荷を処理できるように熱源機において熱媒体を加熱もしくは冷却する場合に、第1熱源機の消費電力と第2熱源機の消費電力の合計値が小さく抑えられることが望まれる。
【0013】
しかし、仮に、第1熱源機を通過した後の第1流路を流れる熱媒体の温度と第2熱源機を通過した後の第2流路を流れる熱媒体の温度が同じ温度になるように制御しようとすると、第1熱源機の消費電力と第2熱源機の消費電力の合計値を小さく抑えた運転状況では、第1流路を流れる熱媒体の流量が第1最低流量を下回るか、もしくは、第2流路を流れる熱媒体の流量が第2最低流量を下回る状況が生じうる。
【0014】
これに対して、上記空調システムでは、流量調節手段が、流量比率を調節することで、第1流路における第1熱交換器の出口の熱媒体の温度と、第2流路における第2熱交換器の出口の熱媒体の温度と、を共通の温度にするのではなく、相違した温度にさせている。このため、第1熱源機の消費電力と第2熱源機の消費電力の合計値を小さく抑えた運転状況であっても、第1熱交換器の出口の熱媒体の温度と第2流路における第2熱交換器の出口の熱媒体の温度とが相違することが許容されているため、第1流路の熱媒体の流量を第1最低流量以上に維持しつつ、第2流路の熱媒体の流量を第2最低流量以上に維持することが容易になる。
【0015】
したがって、第1流路の熱媒体の流量を第1最低流量以上に維持し、第2流路の熱媒体の流量を第2最低流量以上に維持しつつ、下流側接続部で合流した後の熱媒体の温度を目標温度に維持させながら、第1熱源機の消費電力と第2熱源機の消費電力の合計値を小さくさせることが可能になる。
【0016】
第2観点に係る空調システムは、第1観点に係る空調システムであって、第1最低流量の値は、第1流路を流れる熱媒体の凍結を予防するために特定された値である。第2最低
流量の値は、第
2流路を流れる熱媒体の凍結を予防するために特定された値である。
【0017】
この空調システムでは、第1流路を流れる熱媒体の流量を第1最低流量以上の値に維持して第2流路を流れる熱媒体の流量を第2最低流量以上の値に維持することで凍結を防止しつつ、利用側で要求される負荷を処理する際に必要な消費電力を小さく抑えることが可能になる。
【0018】
第3観点に係る空調システムは、第1観点または第2観点に係る空調システムであって、バイパス回路をさらに備えている。バイパス回路は、下流側接続部から上流側接続部に向けて、加熱手段および冷却手段を通過させることなく熱媒体を送る。
【0019】
この空調システムでは、利用側で要求される負荷を処理する際に必要な消費電力を小さく抑えた状態に熱源を制御した状態で、下流側接続部に送られて来る熱媒体の流量が、利用側に送られる熱媒体の流量よりも多い過剰な状況になったとしても、バイパス回路を介して下流側接続部から上流側接続部に熱媒体を送ることが可能になる。
【発明の効果】
【0020】
第1観点に係る空調システムでは、第1流路の熱媒体の流量を第1最低流量以上に維持し、第2流路の熱媒体の流量を第2最低流量以上に維持しつつ、下流側接続部で合流した後の熱媒体の温度を目標温度に維持させながら、第1熱源機の消費電力と第2熱源機の消費電力の合計値を小さくさせることが可能になる。
【0021】
第2観点に係る空調システムでは、凍結を防止しつつ、利用側で要求される負荷を処理する際に必要な消費電力を小さく抑えることが可能になる。
【0022】
第3観点に係る空調システムでは、下流側接続部の熱媒体の量が過剰になったとしても、バイパス回路を介して上流側接続部に送ることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、実施形態に係る空調システム100について、図面を参照しながら説明する。
【0025】
(1)空調システムの全体構成
空調システム100は、室内空間RMの顕熱負荷および潜熱負荷を必要量だけ処理し、室内空間RMの湿度と温度とを調節することができるように構成されたシステムであり、例えば、半導体の製造工場などのクリーンルームに設置される。
【0026】
図1は、空調システム100の全体を示す概略図である。
図2は、空調システム100のうち特に利用側の概略構成を示した図である。
図3は、空調システム100のうち特に熱源側の概略構成を示した図である。
図4は、空調システム100のブロック構成図である。
【0027】
図2に示すように、室内空間RMの室内空気RAは、室内ユニットに取り込まれて、湿度や温度が調節される。調整された空気は、供給空気SAとして室内空間RAへ送られる。
【0028】
この空調システム100は、主として、第1チラーユニット50a,第2チラーユニット50b,第3チラーユニット50cと、第1空調ユニット30a,第2空調ユニット30b,第3空調ユニット30cとを備えている。この空調システム100は、複数の冷媒回路51a,51b,51cと、複数の放熱回路60a,60b,60cと、第1熱源側回路48a,第2熱源側回路48b,第3熱源側回路48cと、第1利用側回路46a,第2利用側回路46b,第3利用側回路46cと、往ヘッダ部20、還ヘッダ部10、および、バイパス回路49等を有している。
【0029】
(2)空調システムの詳細構成
(2−1)冷媒回路
冷媒回路51aは、
図3に示すように、第1チラーユニット50aに含まれており、冷媒を循環させて蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う閉回路である。冷媒回路51aには、圧縮機52a、放熱器54a、膨張弁56a、蒸発器58aなどが接続されている。
【0030】
圧縮機52aは、運転容量の調節が可能である。圧縮機52aのモータには、インバータを介して電力が供給される。インバータの出力周波数を変更すると、モータの回転数(回転速度)が変更され、圧縮機52aの運転容量が変わる。
【0031】
放熱器54aは、冷媒回路51aと接続されている第1伝熱管と、放熱回路60aと接続されている第2伝熱管とを有しており、冷媒回路51a側の第1伝熱管を流れる冷媒と放熱回路60a側の第2伝熱管を流れる熱媒体との間で熱交換を行わせる。
【0032】
蒸発器58aは、冷媒回路51aと接続されている第1伝熱管と、第1熱源側流路40aと接続されている第2伝熱管とを有しており、冷媒回路51a側の第1伝熱管を流れる冷媒と第1熱源側流路40a側の第2伝熱管を流れる熱媒体との間で熱交換を行わせる。
【0033】
また、冷媒回路51bは、冷媒回路51aと同様であり、
図3に示すように、第2チラーユニット50bに含まれており、圧縮機52b、放熱器54b、膨張弁56b、蒸発器58bなどが接続されている。放熱器54bは、冷媒回路51bと接続されている第1伝熱管と、放熱回路60bと接続されている第2伝熱管とを有しており、冷媒回路51b側の第1伝熱管を流れる冷媒と放熱回路60b側の第2伝熱管を流れる熱媒体との間で熱交換を行わせる。蒸発器58bは、冷媒回路51bと接続されている第1伝熱管と、第2熱源側流路40bと接続されている第2伝熱管とを有しており、冷媒回路51b側の第1伝熱管を流れる冷媒と第2熱源側流路40b側の第2伝熱管を流れる熱媒体との間で熱交換を行わせる。
【0034】
さらに、冷媒回路51cについても、冷媒回路51aと同様であり、
図3に示すように、第3チラーユニット50cに含まれており、圧縮機52c、放熱器54c、膨張弁56c、蒸発器58cなどが接続されている。放熱器54cは、冷媒回路51cと接続されている第1伝熱管と、放熱回路60cと接続されている第2伝熱管とを有しており、冷媒回路51c側の第1伝熱管を流れる冷媒と放熱回路60c側の第2伝熱管を流れる熱媒体との間で熱交換を行わせる。蒸発器58cは、冷媒回路51cと接続されている第1伝熱管と、第3熱源側流路40cと接続されている第2伝熱管とを有しており、冷媒回路51c側の第1伝熱管を流れる冷媒と第3熱源側流路40c側の第2伝熱管を流れる熱媒体との間で熱交換を行わせる。
【0035】
なお、冷媒回路51aを含む第1チラーユニット50a、冷媒回路51bを含む第2チラーユニット50b、冷媒回路51cを含む第3チラーユニット50cは、圧縮機52a,52b,52cの容量が異なる等によって、互いに容量が異なって構成されている。
【0036】
(2−2)放熱回路
放熱回路60aには、熱媒体としての水が充填されている。放熱回路60aには、
図3に示すように、上述した放熱器54aと水ポンプ62aとクーリングタワー70aとが接続されている。水ポンプ62aは、吐出流量の調節が可能であり、放熱回路60aの水を循環させる。クーリングタワー70aでは、放熱回路60aを循環する水が冷却される。なお、
図3において、水ポンプ62aに付した矢印は、放熱回路60aにおける水の流れる方向を意味している。
【0037】
また、放熱回路60bは、放熱回路60aと同様であり、
図3に示すように、放熱器54bと水ポンプ62bとクーリングタワー70bとが接続されている。さらに、放熱回路60cについても、放熱回路60aと同様であり、
図3に示すように、放熱器54cと水ポンプ62cとクーリングタワー70cとが接続されている。
【0038】
(2−3)熱源側流路
第1熱源側回路48aには、熱媒体としての水が流れている。第1熱源側流路40aは、熱媒体としての水が流れている。第1熱源側回路48aは、第1熱源側流路40aと、第1熱源側流路40aの途中に設けられた第1の一次ポンプ41aと、第1熱源側流路40aに接続されている蒸発器58aの伝熱管部分と、を有している。第1の一次ポンプ41aは、インバータ駆動式のポンプであるため、容量調整が可能であって吐出流量を調節することができ、第1熱源側流路40aの水を上流側から下流側に向けて送り出すことができる。第1の一次ポンプ41aは、第1チラーユニット50aが駆動している状態においては、蒸発器58aの凍結を防止するために、第1最低流量以上の流量が確保された状態が維持されるように、コントローラ80によって制御されている。この凍結を防止するために定められた第1最低流量は、蒸発器58aの性能等に基づいて予め定められており(特に限定されないが、本実施形態では、定格
流量の4割として定められている)、後述するメモリ85に格納されている。蒸発器58aでは、第1熱源側流路40aを循環する熱媒体としての水が冷却される。なお、
図3において、第1の一次ポンプ41aに付した矢印は、第1熱源側流路40aにおける水の流通方向を意味している。
【0039】
また、第2熱源側回路48bは、第1熱源側回路48aと同様であり、熱媒体としての水が流れている。第2熱源側回路48bは、第2熱源側流路40bと、第2熱源側流路40bの途中に設けられた第2の一次ポンプ41bと、第2熱源側流路40bに接続されている蒸発器58bの伝熱管部分と、を有している。第2の一次ポンプ41bも、インバータ駆動式のポンプである。第2の一次ポンプ41bは、第2チラーユニット50bが駆動している状態においては、蒸発器58bの凍結を防止するために、第2最低流量以上の流量が確保された状態が維持されるように、コントローラ80によって制御されている。この凍結を防止するために定められた第2最低流量についても、蒸発器58bの性能等に基づいて予め定められており(特に限定されないが、本実施形態では、定格
流量の4割として定められている)、後述するメモリ85に格納されている。蒸発器58bでは、第2熱源側流路40bを循環する熱媒体としての水が冷却される。
【0040】
さらに、第3熱源側回路48cについても、第1熱源側回路48aと同様であり、熱媒体としての水が流れている。第3熱源側回路48cは、第3熱源側流路40cと、第3熱源側流路40cの途中に設けられた第3の一次ポンプ41cと、第3熱源側流路40cに接続されている蒸発器58cの伝熱管部分と、を有している。第3の一次ポンプ41cも、インバータ駆動式のポンプである。第3の一次ポンプ41cは、第3チラーユニット50cが駆動している状態においては、蒸発器58cの凍結を防止するために、第3最低流量以上の流量が確保された状態が維持されるように、コントローラ80によって制御されている。この凍結を防止するために定められた第3最低流量は、蒸発器58cの性能等に基づいて予め定められており(特に限定されないが、本実施形態では、定格
流量の4割として定められている)、後述するメモリ85に格納されている。蒸発器58cでは、第3熱源側流路40cを循環する熱媒体としての水が冷却される。
【0041】
(2−4)還ヘッダ部
第1利用側回路46a,第2利用側回路46bおよび第3利用側回路46cを通過した水は、還ヘッダ部10を介して、第1熱源側回路48a,第2熱源側回路48bおよび第3熱源側回路48cと、に送られる。
【0042】
上述した第1熱源側回路48a,第2熱源側回路48bおよび第3熱源側回路48cの上流側は、下流側還ヘッダ14に接続されている。
【0043】
下流側還ヘッダ14からは、上流側に向けて還ヘッダ接続配管12が伸びだしており、上流側還ヘッダ11に接続されている。
【0044】
上流側還ヘッダ11からは、後述する第2利用下流側合流管45bが上流側に向けて伸びだしている。
【0045】
なお、還ヘッダ接続配管12の途中には、通過する水の流量を計測する流量センサ13が設けられている。
【0046】
(2−5)往ヘッダ部
第1熱源側回路48a,第2熱源側回路48bおよび第3熱源側回路48cを通過した水は、往ヘッダ部20を介して、第1利用側回路46a,第2利用側回路46bおよび第3利用側回路46c側に送られる。
【0047】
上述した第1熱源側回路48a,第2熱源側回路48bおよび第3熱源側回路48cの下流側は、上流側往ヘッダ21に接続されている。
【0048】
上流側往ヘッダ21からは、下流側に向けて、第1往ヘッダ接続配管22、第2往ヘッダ接続配管23、および、ヘッダバイパス管24が互いに並列に伸びだしており、いずれも下流側往ヘッダ28に接続されている。
【0049】
第1往ヘッダ接続配管22には、第1の二次ポンプ25が設けられており、上流側の上流側往ヘッダ21から下流側の下流側往ヘッダ28に向けて水を送ることができる。第2往ヘッダ接続配管23には、第2の二次ポンプ26が設けられており、同様に、上流側の上流側往ヘッダ21から下流側の下流側往ヘッダ28に向けて水を送ることができる。なお、これらの第1の二次ポンプ25および第2の二次ポンプ26は、いずれもインバータ駆動式のポンプであり、容量調整が可能であって吐出流量を調節することができる。
【0050】
ヘッダバイパス管24には、途中に開閉弁27が設けられている。開閉弁27は、開状態では、下流側往ヘッダ28に対して過剰に送られた水を、下流側往ヘッダ28から上流側往ヘッダ21に向けて戻すことができるようになっている。
【0051】
下流側往ヘッダ28からは、下流側に向けて、後述する第1利用上流側合流管42aが伸びだしている。
【0052】
また、下流側往ヘッダ28における水の圧力と、上流側還ヘッダ11における水の圧力と、の差圧を計測する差圧センサ82が設けられている。
【0053】
(2−6)バイパス回路
バイパス回路49は、上流側往ヘッダ21から伸びだしており、第1熱源側回路48a,第2熱源側回路48b,第3熱源側回路48c、第1利用側回路46a,第2利用側回路46bおよび第3利用側回路46cと合流することなく、下流側還ヘッダ14まで伸びている。
【0054】
バイパス回路49は、上流側往ヘッダ21に対して過剰に送られた水を、上流側往ヘッダ21から下流側還ヘッダ14に向けて戻すことができるようになっている。
【0055】
(2−7)利用側回路
下流側往ヘッダ28から下流側に向けて伸びだした第1利用上流側合流管42aの下流側端部は、第2利用上流側合流管42bと第1利用側回路46aとに分流している。第2利用上流側合流管42bの下流側端部は、さらに、第2利用側回路46bと第3利用側回路46cとに分流している。
【0056】
第2利用側回路46bの下流側端部と第3利用側回路46cの下流側端部とは、合流しており、その合流点からは第1利用下流側合流管45aが伸びだしている。第1利用側回路46aの下流側端部と第1利用下流側合流管45aの下流側端部とは、合流しており、その合流点からは第2利用下流側合流管45bが伸びだしており、上流側還ヘッダ11に接続されている。
【0057】
以上により、第1利用側回路46a、第2利用側回路46bおよび第3利用側回路46cは、互いに並列に接続されている。
【0058】
第1利用側回路46aは、第1利用側配管43aと、第1利用側配管43aの途中に設けられた第1流量調節弁44aと、第1利用側配管43aの途中であって第1流量調節弁44aの上流側の部分に接続されている第1空気冷却熱交換器32aを含んでいる。
【0059】
また、第2利用側回路46bは、第1利用側回路46aと同様であり、第2利用側配管43bと、第2利用側配管43bの途中に設けられた第2流量調節弁44bと、第2利用側配管43bの途中であって第2流量調節弁44bの上流側の部分に接続されている第2空気冷却熱交換器32bを含んでいる。
【0060】
さらに、第3利用側回路46cについても、第1利用側回路46aと同様であり、第3利用側配管43cと、第3利用側配管43cの途中に設けられた第3流量調節弁44cと、第3利用側配管43cの途中であって第3流量調節弁44cの上流側の部分に接続されている第3空気冷却熱交換器32cを含んでいる。
【0061】
互いに並列に接続されている第1利用側配管43a、第2利用側配管43bおよび第3利用側配管43cを流れる水の各流量の比率は、第1流量調節弁44a、第2流量調節弁44bおよび第3流量調節弁44cの弁開度が制御されることによって調節される。
【0062】
なお、以上により、上流側還ヘッダ11、還ヘッダ接続配管12、下流側還ヘッダ14、第1熱源側回路48a,第2熱源側回路48b,第3熱源側回路48c、バイパス回路49、上流側往ヘッダ21、第1往ヘッダ接続配管22、第2往ヘッダ接続配管23、ヘッダバイパス管24、下流側の下流側往ヘッダ28、第1利用上流側合流管42a、第2利用上流側合流管42b、第1利用側回路46a、第2利用側回路46b、第3利用側回路46c、第1利用下流側合流管45a、および、第2利用下流側合流管45bは、熱媒体としての水が充填された閉回路を構成している。
【0063】
(2−8)空調ユニットの構成
第1空調ユニット30aは、
図2に示すように、概ね直方体形状のケーシング31aを有している。ケーシング31aの内部には、空気が流通する空気通路が形成されている。空気通路の流入端には、吸込ダクトYの一端が接続している。吸込ダクトYの他端は室内空間RMにつながっている。空気通路の流出端には、給気ダクトZの一端が接続している。給気ダクトZの他端は室内空間RMにつながっている。
【0064】
ケーシング31a内の空気通路には、上流側から下流側に向かって順に、第1空気冷却熱交換器32a、電気ヒータ34a、散水式加湿器36a、及び送風ファン38aが配備されている。電気ヒータ34aは、第1空気冷却熱交換器32aを通過した空気を加熱する。電気ヒータ34aは、空気の温度を上げるための機器であり、出力を段階的に変化させることが可能で、空気の加熱量を調節できる。散水式加湿器36aは、ケーシング31aの外部に設置されたタンク(図示省略)の水をノズルから空気中へ散布することで、ケーシング31a内を流れる空気を加湿する。散水式加湿器36aは、空気の湿度を高めるための機器であり、空気への加湿量を調節できる。送風ファン38aは、インバータ制御によって回転数を段階的に変化させることが可能で、送風量を調節できる送風機である。送風ファン38aは、第1空気冷却熱交換器32a、電気ヒータ34aおよび散水式加湿器36aを経て室内空間RMへと吹き出される空気の流れを生成する。
【0065】
第1空気冷却熱交換器32aは、空気を冷却して、空気の温度を下げたり空気を除湿して湿度を低めたりする機器である。すなわち、第1空気冷却熱交換器32aは、空気の冷却機能および除湿機能を併せ持っており、空気を露点温度以下まで冷却することができる。第1空気冷却熱交換器32aは、複数の伝熱フィンと、それらの伝熱フィンを貫通する伝熱管とを有する、フィンアンドチューブ式の熱交換器である。前述のように、第1空気冷却熱交換器32aの伝熱管には、第1熱源側回路48a,第2熱源側回路48bおよび第3熱源側回路48c等との間で循環している熱媒体としての水(ここでは冷水)が流れ、伝熱管および伝熱フィンを介して冷水の冷熱が空気に供給されることで空気が冷却される。
【0066】
また、第2空調ユニット30bは、第1空調ユニット30aと同様であり、
図2に示すように、ケーシング31bと、その内部に配備された第2空気冷却熱交換器32b、電気ヒータ34b、散水式加湿器36b、及び送風ファン38bを有している。
【0067】
さらに、第3空調ユニット30cは、第1空調ユニット30aと同様であり、
図2に示すように、ケーシング31cと、その内部に配備された第3空気冷却熱交換器32c、電気ヒータ34c、散水式加湿器36c、及び送風ファン38cを有している。
【0068】
なお、
図2においては、第2空調ユニット30bおよび第3空調ユニット30cの室内空間RMとの関係については、図示を省略している。
【0069】
(2−9)空調システムコントローラの構成
空調システム100は、制御手段としての空調システムコントローラ80をさらに備えている。
【0070】
コントローラ80は、
図4に示すように、各センサの検知値を取得できるように接続されており、各制御対象に制御指令を送って制御可能なように接続されている。
【0071】
具体的には、コントローラ80には、流量センサ13が接続されているため流量の情報を取得でき、差圧センサ82が接続されているため差圧の情報を取得できる。また、コントローラ80は、第1の一次ポンプ41a、第2の一次ポンプ41b、第3の一次ポンプ41c、第1の二次ポンプ25、第2の二次ポンプの各インバータ周波数の情報を取得できるとともに、一次ポンプの運転台数の情報および二次ポンプの運転台数の情報を取得できる。
【0072】
また、コントローラ80は、第1の一次ポンプ41a、第2の一次ポンプ41b、第3の一次ポンプ41c、第1の二次ポンプ25、第2の二次ポンプ26の各インバータ周波数を制御することができ、開閉弁27の開閉制御が可能である。さらに、コントローラ80は、圧縮機52a,52b,52cの各インバータの出力周波数を制御して、運転容量を調節することができると共に、膨張弁56a,56b,56cの各弁開度を制御することができる。また、コントローラ80は、水ポンプ62a,62b,62cの流量を制御することができると共に、クーリングタワー70a,70b,70cの出力も制御することができる。
【0073】
また、コントローラ80は、各種情報の記録が行われ、予め与えられている情報が記憶されているメモリ85を有している。
【0074】
コントローラ80には、メモリ85等に書き込まれているプログラムをCPUが実行することにより各機器の制御を行う。このように、CPUがプログラムを実行することで、コントローラ80は種々の機能を持つことになる。
【0075】
なお、本実施形態に係る空調システム100では、第1流量調節弁44aの弁開度、第2流量調節弁44b、第3流量調節弁44cの弁開度、送風ファン38a、38b、38cは、いずれも制御対象ではなく、図示しない別のコントローラ(コントローラ80との通信も行われない)が制御を行う。当該別のコントローラは、ユーザーによって入力された室内空間RMの設定温度や設定湿度が記憶しており、室内空間RMに対して吹き出される空気が各設定温度等の条件を満たすことになるように、第1流量調節弁44a,第2流量調節弁44b,第3流量調節弁44cの弁開度を制御する。これにより、室内空間RM毎の負荷が処理される。
【0076】
(3)空調システムの基本動作
次に、空調システム100の運転動作について説明する。
【0077】
空調システム100は、空気の冷却と除湿を行う冷房除湿運転、空気の冷却と加湿を行う冷房加湿運転、空気の除湿と加熱とを行う除湿暖房運転、および、空気の加熱と加湿とを行う暖房加湿運転のいずれかを行うことで、例えば室内空間RMの温度および湿度を、設定温度および設定湿度になるように空気調和を行う。
【0078】
なお、本実施形態に係る空調システム100では、利用側における負荷を処理することができるという条件を満たす限りにおいて、圧縮機52aを含む第1チラーユニット50aの消費電力と、圧縮機52bを含む第2チラーユニット50bの消費電力と、圧縮機52cを含む第3チラーユニット50cの消費電力と、の合計値(「熱源側消費電力の合計値」)が小さく抑えられるように、コントローラ80が熱源側の各機器の制御を行っている。
【0079】
冷房除湿運転では、圧縮機52a,52b,52c、水ポンプ62a,62b,62c、第1の一次ポンプ41a,第2の一次ポンプ41b,第3の一次ポンプ41c、および送風ファン38a,38b,38cの運転が行われる。冷房除湿運転では、基本的には、電気ヒータ34a,34b,34cが停止状態となり、散水式加湿器36a,36b,36cの散水も停止状態となる。冷房除湿運転では、冷媒回路51a,51b,51cにおいて冷凍サイクルが行われる。具体的に、圧縮機52a,52b,52cで圧縮された冷媒が、それぞれ放熱器54a,54b,54cにおいて、放熱回路60a,60b,60cを流れる水に放熱して凝縮する。放熱器54a,54b,54cで冷却された冷媒は、膨張弁56a,56b,56cで減圧された後に、蒸発器58a,58b,58cにおいて、第1熱源側回路48a,第2熱源側回路48b,第3熱源側回路48cを流れる水から吸熱して蒸発する。蒸発器58a,58b,58cで蒸発した冷媒は、圧縮機52a,52b,52cに吸入されて圧縮される。なお、放熱器54a,54b,54cで加熱された放熱回路60a,60b,60cを流れる水は、クーリングタワー70a,70b,70cにおいて室外空気へ放熱する。第1熱源側回路48a,第2熱源側回路48b,第3熱源側回路48cでは、冷媒回路51a,51b,51cの蒸発器58a,58b,58cで冷却された水が、第1空気冷却熱交換器32a,第2空気冷却熱交換器32b,第3空気冷却熱交換器32cにおいて、ケーシング31a,31b,31c内の空気通路を流れる空気を冷却する。第1空気冷却熱交換器32a,第2空気冷却熱交換器32b,第3空気冷却熱交換器32cを通過した水は、冷媒回路51a,51b,51cの蒸発器58a,58b,58cに戻って再び冷却される。第1熱源側回路48a,第2熱源側回路48b,第3熱源側回路48cでは、蒸発器58a,58b,58cにおいて水が冷媒から得た冷熱が、第1空気冷却熱交換器32a,第2空気冷却熱交換器32b,第3空気冷却熱交換器32cに搬送され空気に供給される。第1空調ユニット30a,第2空調ユニット30b,第3空調ユニット30cでは、吸込ダクトYによって室内空間RMから取り込まれた室内空気RAが、ケーシング31a,31b,31c内の空気通路を流れる。この空気は、第1空気冷却熱交換器32a,第2空気冷却熱交換器32b,第3空気冷却熱交換器32cにおいて第1熱源側回路48a,第2熱源側回路48b,第3熱源側回路48cで冷やされた水によって冷却されて除湿される。第1空気冷却熱交換器32a,第2空気冷却熱交換器32b,第3空気冷却熱交換器32cで冷却/除湿された空気は、給気ダクトZを経由して、供給空気SAとして室内空間RMへ供給される。なお、室内空気の顕熱負荷および潜熱負荷が、第1空気冷却熱交換器32a,第2空気冷却熱交換器32b,第3空気冷却熱交換器32cによる冷却/除湿によって必要量だけ丁度処理され、空気の再加熱や加湿が必要ない場合に、この冷房除湿運転が行われることになる。
【0080】
冷房加湿運転は、冷房除湿運転に加えて散水式加湿器36a,36b,36cの散水による加湿が行われる運転である。第1空気冷却熱交換器32a,第2空気冷却熱交換器32b,第3空気冷却熱交換器32cにおいて第1熱源側回路48a,第2熱源側回路48b,第3熱源側回路48cで冷やされた水によって空気が冷却されて除湿されるまでは、上述の冷房除湿運転と同じであり、その冷却/除湿された空気に散水式加湿器36a,36b,36cによる散水が行われる。この冷房加湿運転は、第1空気冷却熱交換器32a,第2空気冷却熱交換器32b,第3空気冷却熱交換器32cによる冷却/除湿で、設定温度は達成されるが、冷却に伴う除湿効果によって室内空間RMの湿度が設定湿度を下回るようなときに行われる運転である。
【0081】
除湿暖房運転は、再熱除湿運転とも呼ばれる運転で、第1空気冷却熱交換器32a,第2空気冷却熱交換器32b,第3空気冷却熱交換器32cによる除湿/冷却で、設定湿度は達成されるが、除湿に伴う冷却効果によって室内空間RMの温度が設定温度を下回るようなときに行われる運転である。この除湿暖房運転では、第1空気冷却熱交換器32a,第2空気冷却熱交換器32b,第3空気冷却熱交換器32cにおいて除湿のために空気に供給された冷熱量が大きく、必要以上に空気が冷やされた場合に、電気ヒータ34a,34b,34cが作動して空気を再加熱する。
【0082】
暖房加湿運転では、電気ヒータ34a,34b,34c、散水式加湿器36a,36b,36c及び送風ファン38a,38b,38cの運転が行われる。一方、圧縮機52a,52b,52c、水ポンプ62a,62b,62c、及び第1の一次ポンプ41a,第2の一次ポンプ41b,第3の一次ポンプ41cは、停止される。暖房加湿運転では、第1空調ユニット30a,第2空調ユニット30b,第3空調ユニット30cにおいて、室内空間RMから取り込まれた空気が、まず電気ヒータ34a,34b,34cによって加熱され、次に散水式加湿器36a,36b,36cによって加湿されて、供給空気SAとして室内空間RMへ供給される。
【0083】
(4)空調システムの省エネ運転
上述のように、圧縮機52aを含む第1チラーユニット50aの消費電力と、圧縮機52bを含む第2チラーユニット50bの消費電力と、圧縮機52cを含む第3チラーユニット50cの消費電力と、の合計値である熱源側消費電力の合計値を小さく抑えた状態で、第1利用側回路46aと第2利用側回路46bと第3利用側回路46cにおける負荷を処理できるように、コントローラ80による各機器の制御が行われる。
【0084】
なお、コントローラ80は、第1熱源側回路48a,第2熱源側回路48bおよび第3熱源側回路48cを流れる水が、上述した第1利用側回路46aと第2利用側回路46bと第3利用側回路46cにおける負荷を処理するために必要な温熱または冷熱を得るように、第1の一次ポンプ41a、第2の一次ポンプ41b、第3の一次ポンプ41c、圧縮機52a,52b,52c、水ポンプ62a,62b,62c、および、クーリングタワー70aの制御を行う。
【0085】
ここで、第1利用側回路46aと第2利用側回路46bと第3利用側回路46cにおける利用側の負荷を処理することが可能であれば、例えば、第1の二次ポンプ25や第2の二次ポンプ26の消費電力が小さいことが好ましいため、第1利用側回路46aと第2利用側回路46bと第3利用側回路46cにおける流量が小さい方が好ましいことになる。すなわち、第1流量調節弁44aや第2流量調節弁44bや第3流量調節弁44cにおいて流路を絞る程度をできるだけ小さく抑えつつ(すなわち、全開に近い状態で)、第1利用側回路46aと第2利用側回路46bと第3利用側回路46cにおける流量が小さく抑えられた状態で、第1利用側回路46aと第2利用側回路46bと第3利用側回路46cにおける負荷が処理されていることが望ましい。第1の二次ポンプ25や第2の二次ポンプ26については、このような観点から消費電力が小さくなるように制御が行われてもよい。
【0086】
なお、ここで、第1の二次ポンプ25および第2の二次ポンプ26の出力制御を行う主体(コントローラ80)と、第1流量調節弁44a、第2流量調節弁44bおよび第3流量調節弁44cの開度制御を行う主体(別のコントローラ)とが、異なる場合には、コントローラ80は、第1流量調節弁44a、第2流量調節弁44bおよび第3流量調節弁44cの開度状況を直接把握することはできない。しかし、コントローラ80は、例えば、第1の二次ポンプ25および第2の二次ポンプ26の出力を下げる制御をした場合であっても、第1流量調節弁44a、第2流量調節弁44bおよび第3流量調節弁44cの開度が上げられることによって、第1利用側回路46aと第2利用側回路46bと第3利用側回路46cにおける負荷が処理可能な状態が維持される場合には、第1の二次ポンプ25および第2の二次ポンプ26の出力を下げることで消費電力を小さくすることができる状況にあると判断することができる。すなわち、第1の二次ポンプ25および第2の二次ポンプ26の出力を下げる制御をした場合であっても、第1流量調節弁44a、第2流量調節弁44bおよび第3流量調節弁44cの開度が上げられることによって、結果的に、第1利用側回路46aと第2利用側回路46bと第3利用側回路46cにおける流量が、第1の二次ポンプ25および第2の二次ポンプ26の出力を下げる制御を行う直前の流量と同じ値に戻るのであれば、コントローラ80は、第1の二次ポンプ25および第2の二次ポンプ26の出力を下げる余裕のある状況であったことを把握できる。コントローラ80は、例えば、上述のようにして、消費電力をできるだけ小さくしつつ、第1利用側回路46aと第2利用側回路46bと第3利用側回路46cにおける負荷の処理が行われるように、第1の二次ポンプ25および第2の二次ポンプ26の出力を制御する。
【0087】
(5)空調システムの熱源側回路における異温度制御等
本実施形態に係る空調システム100では、第1熱源側回路48aにおける蒸発器58aの出口を流れる水温と、第2熱源側回路48bにおける蒸発器58bの出口を流れる水温と、第3熱源側回路48cの蒸発器58cの出口を流れる水温と、の目標温度を一致させるような制限をかけない、異温度制御が行われている。
【0088】
そして、本実施形態に係る空調システム100では、利用側における負荷を処理することができるという条件を満たす限りにおいて、圧縮機52aを含む第1チラーユニット50aの消費電力と、圧縮機52bを含む第2チラーユニット50bの消費電力と、圧縮機52cを含む第3チラーユニット50cの消費電力と、の合計値である熱源側消費電力の合計値が小さく抑えられるように、コントローラ80が「熱源省エネ制御」を行っている。
【0089】
また、本実施形態に係る空調システム100では、蒸発器58a,58b,58cの凍結防止のため、第1チラーユニット50aの駆動時の第1の一次ポンプ41aの流量が第1最低流量以上確保されていること、第2チラーユニット50bの駆動時の第2の一次ポンプ41bの流量が第2最低流量以上確保されていること、および、第3チラーユニット50aの駆動時の第3の一次ポンプ41cの流量が第3最低流量以上確保されていること、をいずれも満たすように、コントローラ80が「最低流量制御」を行っている。
【0090】
ここで、コントローラ80は、「最低流量制御」を、「熱源省エネ制御」よりも優先して行っている。具体的には、コントローラ80は、「最低流量制御」を行うことができている状態であれば、利用側における負荷を処理することができる範囲内で熱源側消費電力の合計値が可能な限り小さく抑えられるように「熱源省エネ制御」を行う。
【0091】
この「熱源省エネ制御」では、例えば、第1チラーユニット50aの運転効率が、第2チラーユニット50bの運転効率よりも良い構成である場合には、第2チラーユニット50bの出力よりも第1チラーユニット50aの出力が多めになるようにコントローラ80が制御を行う等によって、消費電力を削減させることができる。
【0092】
(6)第1実施形態の特徴
従来の空調システムでは、上記空調システム100とは異なり、各熱源側の熱交換器の出口を流れる水温が一致するように制御されている。
【0093】
例えば、本実施形態の空調システム100の構成を用いて、従来の制御例を説明すると、以下のようになる。
【0094】
簡単のため、中間期において、第1チラーユニット50aのCOPが10であり、第2チラーユニット50bのCOPが5であり、負荷が変動しない場合を想定し、第1チラーユニット50aおよび第2チラーユニット50bの消費電力にのみ着目する。そして、上流側還ヘッダ11の水温が12(℃)であり、下流側往ヘッダ28の水温を7(℃)にするとする。ここで、第1チラーユニット50aおよび第2チラーユニット50bの定格能力がそれぞれ100(kW)であるとすると、定格
流量は286(kg/min)となり、4割の最低流量の値は286(kg/min)に0.4を乗じて114(kg/min)となる。
【0095】
ここで、負荷が100(kW)とすると、COPの高い第1チラーユニット50aのみが運転されるように台数制御を行い、他のチラーユニットは停止し、第1の一次ポンプ41aのみが駆動し、第2の一次ポンプ41bおよび第3の一次ポンプ41cは停止し、COPの高い第1チラーユニット50aのみが運転することで効率の高い運転が行われる。
【0096】
他方で、負荷が105(kW)になると、COPの高い第1チラーユニット50aだけでなく、COPの低い第2チラーユニット50bも運転されるように台数制御が行われ、第1の一次ポンプ41aおよび第2の一次ポンプ41bが駆動することになる。
【0097】
以上の条件において、負荷が105(kW)である状況で従来の制御が行われた場合には、以下のようになる。すなわち、105(kW)の負荷を処理するために、下流側還ヘッダ14に向かう流量は、286(kg/min)×105/100となり、これを計算して300(kg/min)であることが分かる。ここで、COPの低い第2チラーユニット50b側における駆動をできるだけ小さく抑えた運転が望まれるが、第2熱源側流路40bにおいて第2最低流量以上の流量を確保する必要が生じるため、第2熱源側流路40bの流量は第2最低流量に調節される。また、COPの高い第1チラーユニット50a側をより駆動させたいため、第1熱源側流路40aを流れる
流量は、上記定格
流量となる。そうすると、流量センサ13の計測値が300(kg/min)となり、第1熱源側流路40aの流量が286(kg/min)となり、第2熱源側流路40bの流量が114(kg/min)となるため、バイパス回路49の流量が286+114−300(kg/min)を計算することで100(kg/min)となることが分かる。これにより、下流側還ヘッダ14を通過する水の温度は、7+(12−7)×300/400(℃)を計算して10.75(℃)であることが分かる。そうすると、第1チラーユニット50a側の能力については、上述した
流量について10.75℃の水温を7℃まで下げるため、4.2(kJ/kg℃)×286(kg/min)×(10.75−7)(℃)であり、これを計算すると75(kW)となることが分かる。この場合の第1チラーユニット50aの電力は、能力/COPとして算出すると、7.5kWとなる。また、第2チラーユニット50b側の能力については、同様に上述した
流量について10.75℃の水温を7℃まで下げるため、4.2(kJ/kg℃)×114(kg/min)×(10.75−7)(℃)であり、これを計算すると30(kW)となることが分かる。この場合の第2チラーユニット50bの電力は、能力/COPとして算出すると、6kWとなる。以上により、従来の出口温度と揃える制御では、消費電力が7.5+6=13.5(kW)となる。
【0098】
これに対して、以上の同じ条件において、上記実施形態の空調システム100において、負荷が105(kW)の状況で異温度制御が行われると、以下のようになる。すなわち、流量センサ13の計測値は上記同様に300(kg/min)となり、第1熱源側流路40aの流量が190(kg/min)であって、第2熱源側流路40bの流量が114(kg/min)であって、バイパス回路49の流量が4(kg/min)であって、下流側還ヘッダ14を通過する水の温度が7+(12−7)×300/304(℃)を計算して11.93(℃)となっていたとする。この場合、第1チラーユニット50a側の能力については、4.2(kJ/kg℃)×190(kg/min)×(11.93−5.2)(℃)であり、これを計算すると89.5(kW)となることが分かる。この場合の第1チラーユニット50aの電力は、能力/COPとして算出すると、8.95kWとなる。また、第2チラーユニット50b側の能力については、4.2(kJ/kg℃)×114(kg/min)×(11.93−10)(℃)であり、これを計算すると15.5(kW)となることが分かる。この場合の第2チラーユニット50bの電力は、能力/COPとして算出すると、3.1kWとなる。以上により、上記実施形態の空調システム100による異温度制御では、消費電力が8.95+3.1=12.05(kW)となる。
【0099】
このように、第1熱源側流路40a、第2熱源側流路40bおよび第3熱源側流路40cの各流量が、駆動中においてそれぞれの最低
流量以上に維持されているという条件を満たす場合において、上記実施形態の空調システム100の異温度制御では、従来の制御と比較して、消費電力を小さく抑えることが可能になっていることが分かる。
【0100】
(7)他の実施形態
上記実施形態は、その要旨を逸脱しない範囲で、例えば、以下のように、適宜変更してもよい。
【0101】
(7−1)
上記実施形態では、第1流量調節弁44aの弁開度、第2流量調節弁44b、第3流量調節弁44cの弁開度、送風ファン38a、38b、38cが、いずれもコントローラ80の制御対象ではない場合を例に挙げて説明した。
【0102】
これに対して、他の実施形態に係る空調システムとしては、第1流量調節弁44aの弁開度、第2流量調節弁44b、第3流量調節弁44cの弁開度、送風ファン38a、38b、38cをコントローラ80の制御対象に含まれていてもよい。
【0103】
これにより、コントローラ80は、各室内空間RMに対して吹き出される空気が各設定温度等の条件を満たすことになるように、第1流量調節弁44a,第2流量調節弁44b,第3流量調節弁44cの弁開度を制御して、室内空間RM毎の負荷の処理を行ってもよい。
【0104】
(7−2)
上記実施形態では、還ヘッダ接続配管12の途中において、通過する水の流量を計測する流量センサ13が設けられている場合を例に挙げて説明した。
【0105】
これに対して、流量センサは、第1利用上流側合流管42aに設けられていてもよい。この場合であっても、分岐部分の個別の流量ではなく、循環している全流量を把握することができる。
【0106】
(7−3)
上記実施形態では、第1チラーユニット50aの容量と第2チラーユニット50bの容量と第3チラーユニット50cの容量とが互いに異なる場合を例に挙げて説明した。
【0107】
これに対して、例えば、容量の違いではなく、冷媒の違いや冷媒回路構成の違い等によって種類が異なる関係にある複数の熱源が用いられた空調システムとしてもよい。
【0108】
(7−4)
上記実施形態では、水ポンプ62a、62b、62c等を含む放熱回路60a、60b、60cの消費電力およびクーリングタワー70a、70b、70cの消費電力が、各チラーユニット50a、50b、50cの合計消費電力に対して相対的に低い場合を前提として、もっぱら、第1チラーユニット50aの消費電力と、第2チラーユニット50bの消費電力と、第3チラーユニット50cの消費電力と、の合計値に着目し、当該合計値を小さくさせることができるように、蒸発器58aと蒸発器58bと蒸発器58cとの出口の水温を相違させた場合を例に挙げて説明した。
【0109】
これに対して、例えば、第1チラーユニット50aの消費電力と、第2チラーユニット50bの消費電力と、第3チラーユニット50cの消費電力に加えて、第1の一次ポンプ41aの消費電力と、第2の一次ポンプ41bの消費電力と、第3の一次ポンプ41cの消費電力と、第1の二次ポンプ25の消費電力と、第2の二次ポンプ26の消費電力と、水ポンプ62a、62b、62c等を含む放熱回路60a、60b、60cの消費電力の合計値を小さくさせることができるように、蒸発器58aと蒸発器58bと蒸発器58cとの出口の水温を相違させるようにしてもよい。
【0110】
(7−5)
上記実施形態では、熱源ユニットの例として、第1チラーユニット50a、第2チラーユニット50bおよび第3チラーユニット50cがいずれも水冷チラーユニットである場合を例に挙げて説明した。
【0111】
しかし、熱源ユニットの種類はこれに限られず、例えば、空冷チラーユニットであってもよい(すなわち、放熱回路60a、60b、60cを有しない構成であってもよい。)。また、熱源ユニットとしては、温水ボイラなどのように冷媒回路を有しないものであってもよい。また、これらの熱源ユニットのうち種類の異なるものが空調システムにおいて採用されてもよい。